逆行者+突破者

 

 

 

 俺の親という人の墓を数秒ほど眺める

 

「……思えば災難な人たちでしたよね。

 親だって、子供を選べないんだ。

 死を望むなんて明らかに狂ってる人間を自分の子供として認め、

 健気に理解しようと限り無い徒労を重ね、

 そして自分の子供を捨てるという苦渋の選択をしたのに、

 こうやって先に事故で死んでしまったんですから」

 

 ……死を望むという存在だったツバキ アヤト。

 ツバキでも、アヤトでもない、元々この世界にいたオリジナル。

 そいつに対する複雑な感情を、俺は理解したくなかった。

 

 その墓の近くに穴を掘る。

 そして、バックから細長い物を取り出して埋める。

 深雪に渡された、俺の……人だった時の壊れた片腕。

 

「罪滅ぼしのつもりか?」

 

 後ろから、天城さんが話し掛けてくる。

 

「……ええ、元のツバキ アヤトの精神を殺し、

 身体すら、鬼となるために人の身を殺した。

 もはや、元々のツバキ アヤトはこの世界から死んでしまった」

 

 だからせめて、ツバキ アヤトという人間の欠片は、

 人間として墓に埋めるのが妥当だろう。

 

「なら本当に、お前はイレギュラーになったんだな」

 

「ええ、もはやこの世界と俺は完全に切り離された。

 いくら世界の干渉力でも無から有となった俺を捕まえることは出来ない。

 俺が歴史を変える分には、世界の修正能力も発動されない」

 

 いくらアキトが未来から来たからとて、

 アキトはこの世界の一部だ。

 他の皆も、新たに出てきた西欧の人達や木連の人達も、

 元々現存していた人たちが、アキトにかかわってきただけの事。

 それでは歴史を変えようとしても無理な歪みが出来る。

 

「………鬼になって嬉しいか?」

 

「嬉しいというか……これが普通ですから。

 いままでが、違和感だらけでぬいぐるみを着ているみたいだったんですよ」

 

「……力の制御の方はどうだ?」

 

「……ちゃんと制御できてますよ。

 『鬼は強大な力を持つ、ゆえに制御しなければならない』

 もう、耳にタコが出来るくらい聞いてますからね」

 

 そう言って天城さんの方を……、

 『神殺し』の綽名を持つ鬼の方を見た。

 

 

 

 

 

 あたしは、真っ白な中で生まれた。

 

 何も知らない私は、真似る事から学んでいった。

 白い人たちが「セイコウシタ」と笑ったので笑いを覚え、

 白い人たちが「ウマクイカナイ」と怒ったので怒りを覚え、

 黒い人たちからモノの壊し方を覚えた。

 ………いや、人の場合は殺すだったっけ。

 

 ある日、仲間というのを紹介された。

 ………同類だから仲間らしい。

 その人たちからまたいろんな事を覚えた。

 

 ある時、白い人がなんでも好きな物をくれるといった。

 みんなが何を貰ったのかは覚えてないけど、

 あたしは………『眼鏡』が欲しいと言った。

 

 白い人たちの中で、たまに見かける眼鏡をかけた人たち。

 かっこいいと思った。特別なんだぞって感じで。

 みんなにはなぜか反対されたけど、

 あたしにはこれ以上に欲しいものなんて見つからなかった。

 

 

 

 最近、殺したい人が出来た。

 その人から、痛みと嫌いと好きを覚えた。

 アイツを殺せば………何を覚えられるだろう………。

 

 

 

 

 

 

「……実際に神を殺したのは俺の親だ。

 俺はそういう面倒くさい事はしないよ」

 

 ……それはつまり出来るって事か。

 神を殺せるからどうだって訳じゃないが、

 とんでもない人には変わりない。

 

「まあ、いいですけど、

 それより、何でいきなり現れたんですか?」

 

 基本的に不干渉の立場だからな、天城さん

 

「いや、かわいい弟分の為に手を貸してやろうかと思ってな」

 

「そりゃありがたいですけど………何する気です?」

 

「地球と木星をぶち壊す……じゃ駄目か?」

 

 恐ろしい答えにおもわず頭痛がしてくる。

 

「……それでナデシコがノアの箱舟ですか?

 申し出は嬉しいですが丁重にお断りしますよ。

 ……俺の知らない事でアキト達が悲しむのは別に構わないが、

 俺のせいでアキト達が悲しむのは目覚めが悪いよ」

 

「……そういうもんか?」

 

「そういうもんッスっ!」

 

「……じゃっ、俺は帰るわ」

 

 そう言ってもう一度墓を見ながら語りだす。

 

「……一応言っとくがな、力は自分の為だけに使えよ。

 誰かの為なんて事に使うとろくな事が起きない。

 自分の為にやって、結果的に他人の為にもなるのは副次的な物だ。

 偽善でも、自己満足でもいい。

 問題はそれを自覚して力を使う事だ。

 ………それが、力を持つ対価だ」

 

 ……それも、耳タコだ。

 鬼としてだけでなく、人としても大事な事だとかなんとか。

 とにかく力を求める者の宿命みたいなものだ。

 

「わかってますよ、俺だってガキじゃない。

 自分の持ち物ぐらいきっちり制御してみせるよ」

 

「そか、ならいいんだ」

 

 そして、立ち去ろうとする天城さん。

 ふと、引っかかる事を思い出したので呼び止める。

 

「あの、天城さんとアキトさんってなにか関係があるんですか?

 テンカワ……天の河と天の城だし、

 二人とも黒が好きだし、ねえ?」

 

 天城さんは振り向いてちょっと憮然とした顔をしながら、

 

「………さあな」

 

 とだけ言って去っていく。

 

 

 さて、俺も帰るか。

 立ち去ろうとしてふと思い出す。

 俺……親の名前も忘れてたんだな。

 

 

 

 

 

 わたしは本当は、ただの道具として生まれてきた。

 あの人の為に、ただそれだけを生きる術として……。

 でもあの人は、あまりに不甲斐無く、

 わたしに対しても、それは変わらなかった。

 制約を一切つけず、驚くほど放任主義だった。

 ……いや、ただ面倒だっただけかもしれない。

 

 直接教えてくれた事は、ただ二つ。

 四つの、わたしの意志を表す言葉と、

 一つの教訓………、

 

 『生きる為には全てを裏切れ』

 

 わたしはそれを、実行する。

 

 

 

 

 

 その墓には一つの家族が眠っている。

 哀れな息子を持った不幸な両親と、

 死を渇望し、鬼に殺された息子。

 もう、その墓に訪れる人はいない。

 

 添えられた椿の花が静かに花を散らす。

 首をポトリと落とす、その姿は、

 ………さながら罪を犯した者が、斬首されるがごとく………

 

 

 

 

 

 

 過去は傷跡………

 痛む傷は未練………

 ならば死は………

 ……傷すら残さぬ抹消か………

 

 

 

 

 

 

後書き

無識:今回はゲストに天城さんを呼んでます。

天城:……ども。

無:読み方はあまぎと呼びます。

  いわゆる一発ゲストはどうだった?

天:……柄じゃない。

  俺はもっと気楽な役がいい。

無:そうか?結構いい役だったのに。

  ちなみに神殺しとか書いていますが、

  某神の戦士とは一切関係ないです。

  ………ヤツの神には勝てんだろうな。

天:……では次回、「親愛<信念」をどうぞです。

 

 

 意味無し補足

 天城 ???

 『神殺し』『黒い牙』『究極の馬鹿力』など数々の異名を持つ。

 星を素手で破壊できるほどの腕力と、

 某謎邪夢や四人姉妹の長女の料理といった戦略食材兵器を、

 平気な顔で食べられる『アイアンストマック』の持ち主。

 

 

 

代理人の感想

星を素手で破壊できるほどの腕力・・・・・・・・・・・・

つまりそれって則巻アラレと互角って事ですか(核爆)?