逆行者+突破者

第三十話Tルート「遺跡=孤独」

 

 

 深雪との決着もつけ、俺が遺跡に辿り着いた時には、

 既にアキト達も集まっていた。

 

「なんか………みんなボロボロになってるんだな」

 

「………なのに、なんでお前は無傷なんだ!?」

 

「実力っ!」

 

 胸をそらしてきっぱりと言い切ると、

 アキトは困ったように苦笑をし、

 ナオさんは呆れ、

 北斗は悔しそうな顔をした。

 

 

 

 

 ……さてと………まあ、なんと言うか、

 俺としてはこっからが本題なんだよな。

 

 

 

 

 ナデシコのあらゆる雰囲気が軟化し、

 皆が肩の荷を降ろしてそれぞれの帰路を待ち望んでる。

 そう、もうこの戦争は終わったというように……。

 

 確かにこの戦争はもう終わり。

 だが………波乱はまだ終わってない。

 

 

 そしてそのために、俺はこの地に来た。

 

 

 

 

 和やかなムードのナデシコを後にして、

 俺は遺跡の方に来ていた。

 そこではアキトのブローディアが切り離した遺跡を運ぼうとしていた。

 そして、ブローディアが遺跡に手をかけた瞬間、

 

『何!!』

 

 アキトが誰何の声をあげる。

 突如として遺跡の形が変化したのだ。

 

 

 ――――来たかっ!

 

 

 瞬間、俺はありったけの脚力で身体を弾き飛ばした。

 一直線に、遺跡に向かって。

 そして、遺跡が変化した触手がブローディアに触れようとしたその瞬間、

 

   ばくげき         けづめ
 爆撃の蹴爪

 

 ドバガァァァァァァンン!!!!

 

 渾身の前ダッシュ蹴りを喰らい、

 遺跡は触手を千切れ飛ばしながら吹き飛ぶ。

 

「ふう、危ない所だったなアキト」

 

『………はっ!、な、何やってるんだよ!

 な、なんか派手にぶっ壊しちゃって!!』

 

 しばし放心していたアキトは、

 突然の俺の奇行に非難の声を上げる。

 

「仕方なかろう、最初に変な事をやったのはあっちだし。

 それにあれくらいじゃ壊れんよ………多分」

 

 その証拠にまたも遺跡から触手が飛んできた。

 今度は俺の方に向かって。

 

 はっ!邪魔者から先に始末しようって魂胆だろうが、

 それがどれだけ馬鹿な考え方か教えてやる!

 

 再び触手をまとめて吹き飛ばそうと拳を固めた時、

 突然、何者かが向かってくる触手と俺の間に割り込んできた。

 

 こいつはっ!?

 

                          しまき
 木連式弐刀術 無手   風巻

 

 ドガガガガガガッッ!!

 

 繰り出された目にも止まらぬ蹴りの連打が、

 遺跡の触手をことごとく弾き飛ばした。

 

「フッ……フハハハハハハハハ!!!

 真打ち、ここに推参!!

 死闘を演じた友のピンチに駆けつける、

 ああ………一度やってみたかったんだこういうの。

 と、いう訳で!ついに姿を現したな諸悪の権化、遺跡魔神!!!

 この僕が現れたからにはツバキさんとの友情石破天○拳で、

 必ずやその野望を打ち砕いてやるから覚悟し…」

 

「うっさい」

 

 ゴキャ!!

 

 あらゆる意味で痛いバカを、帰ってきたエンタイトルツーベース君で昏倒させる。

 

 まったく、すっかり場が白けてしまった。

 遺跡の方も、この展開は予想してなかったのか戸惑っているようだ。

 

 俺は気を取り直し、遺跡に向かって語りかける。

 

「………まあ、こうなっていろいろやりにくいとは思うが、

 とりあえず姿を現せ、遺跡魔神(仮)」

 

『誰が遺跡魔神カッコ仮よっ!!』

 

 遺跡から、年端もいかないような女の声で反論させる。

 

『何よ何よ何よっ!!

 いきなり出てきたと思ったら私の計画滅茶苦茶にして!!』

 

 ヒステリックというよりはガキっぽい口調で叫ぶ。

 

「その計画ってのはアキトを遺跡の中に取り込む事か?」

 

『………………そうよ。

 私はね、この遺跡の中に取り込まれてからずっと孤独だったのよ!

 いつも他人の人生を遠くから覗き見ているだけ………。

 最初は面白かったけど、こんな現実味の無い事すぐに飽きたわ。

 でも、時の流れすら無視したこの中でテンカワアキトを、

 やっと、私の所に辿り着ける人を見つけたの。

 だから導いた、テンカワアキトの願いに沿うようにジャンプさせた。

 この人のなら、壁を突破して私を孤独から救ってくれると信じたの。

 あんたに、人間止めたあんたに私の気持ちが理解出来るとでも言うの………』

 

 沈痛な声で己の内を吐露する彼女。

 おそらくは、遠い過去か遥かな未来に、

 無理矢理遺跡と融合させられた者だろう。

 幼い声とは裏腹に、その悲しいには果てし無い重みが感じられた。

 

「そんなに苦しかったんなら遺跡から出ればよかったじゃないか」

 

『何言ってるのよ、そんなの無理に決まってるじゃない。

 私はミスマルユリカのように不完全に融合しているわけじゃないの。

 元の私の身体は完全に遺跡のナノマシンが分解してしまったわ。

 もう、この遺跡の中でしか私は生きていけないのよ………』

 

 泣きそうな声で語るそいつに、

 俺は溜め息をついてから一言、口にした。

 

 

 

「………お前、バカ?」

 

 

 

 プッツーーーン!

 

 何故か、血管がプッツンした音が聞こえた。

 

『だ………………』

 

「誰がバカかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 突如、遺跡の壁面の一部が盛り上がり、

 そこから小柄な人影が飛び出す。

 黒髪で金色の目をしたその子供は、

 作りの良い顔を怒りに歪ませ、

 俺を指差して甲高く吼える。

 

「あんたね!!

 人が重くて暗いダークな過去を話してるっていうのに、

 バカは無いでしょうがバカは!!

 大体ね、その世界は自分中心に回ってる的傲慢さには、

 さっきから思いっきり腹が立って……」

 

 ふいに、不思議そうな顔をして言葉を切る。

 

「……………あれ………なんか、違和感が………?」

 

「思いっきり出てきてるぞ、遺跡から」

 

 遺跡と自分の身体を交互に見る。

 

 

 

 

「……………………………あれ?」

 

 

 

 

「まったく救いようが無いな、このボケ娘は。

 お前の遺伝子情報からナノマシンで新たな体を作るなんて簡単だろう。

 伊達に遺跡だって長年存在してたわけじゃないんだ。

 もっとも、元々在った遺跡自身の自我ともいうべきAIは、

 お前が喰い殺してしまったみたいだがな」

 

「…………わ、私の苦労は……………、

 ………なに……………私ってば……オチ……?」

 

「大体な、お前のその勘違いが各所に迷惑をかけてだな………」

 

 

 俺の説教はアキトに止められるまで一時間は続けられた。

 その間このボケ娘は「……燃え尽きた………真っ白にょ」などと呟いていた。

 

 

 

 

 その後、ボケ娘を関係者各位(特に逆行者の方々)に謝らせた。

 幸いにも皆快くボケ娘の行いを許してくれた。

 無関係の俺ですら人の暖かさに思わず目頭が熱くなったな。

 

 遺跡の本体は問題なく飛ばされた。

 まあ、実はあの遺跡は既に抜け殻同然で、

 システム自体はボケ娘の中に移植されているのだ。

 まっ、後の遺跡の後継者へのささやかないぢわるって所だな。

 

 

 

 

「そういえば………なんであの子を助けようとしたんですか?」

 

「………………ああ、俺ってば優しいから。

 助けて、なんて聞いちゃったら見過ごせなくてね」

 

「…………うっそだぁ!!ツバキさんにそんな人間的な感傷あるわけ…」

 

 ゴガシャァァァッ!!!

 

 

 

 

 

 まあなんにせよ、これにてとりあえずの終焉は迎えたのだった。

 

 

 

 

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