黒百合姫

第一話 アルトの大ハードな「一日」

 

 

 

 書類整理をしていたアカツキの耳に、重要な用件のみのアドレスへの着信を知らせる電子音が響いた。

「ん?一体何かな?」

 手を止めてメールを確認するが、差出人のアルト・ルージュという人物に心当たりが無い。

 悪戯かとも思ったが、ネルガル会長アカツキ・ナガレと知った上で送ってきた可能性も考え、読んでみる事にした。

「はてさて、どうやってこのアドレスを知ったのやら」

 一応ウィルスのチェックをしてから開封して内容を見る。

 最初は不真面目っぽく椅子に深く凭れて斜め読みしていたが、

 読み進めていくうちに徐々に表情が真剣な物に変わっていく。

 そこには先代会長からの負の遺産、マシンチャイルド研究について記されていた。

 アカツキが会長となってから大幅に規模を縮小、或いは停止したものの、未だ幹部たちは独自に研究を続けていた。

 勿論それらの研究所の所在や、秘匿している幹部について調べさせていたが、成果は挙がっていない。

 それがこのメールには秘匿研究所の位置はもちろん、研究に荷担している幹部の名前とその証拠までが書かれている。

「ふ〜ん。これが本当ならこりゃ凄い。僕が喉から手が出る程欲しい情報をこれでもかという位に網羅されている」

 差出人であるアルトは、情報料として自分以下1名の保護を求めているが・・・・・・。

 滅多に見せない鋭い視線で問題のメールを眺めながら、大企業の会長として冷徹に計算を巡らす。

 数秒後、結論を出すと内線を取る。

「・・・僕だ。プロス君を呼んでくれ」

 

 

 程無く会長室にプロスペクターがやってきた。

「お呼びですか、会長」

「ああ。これを見てから君の考えを聞かせてくれるかい?」

 そう言ってプリントアウトしたメールを見せる。

 眼鏡の奥の瞳が一瞬だけ鋭い光を放ったが、すぐにいつもの表情に戻る。

「・・・これはこれは。で、会長はどうされるのです?」

「とりあえず裏を取ってくれないか。で、取れたらこれらの幹部の拘束」

 一旦言葉を切って少し考えた後、

「・・・交換条件の保護の件についてはどちらでも構わないかな。

 多分、主任クラスの研究者だろうけど。ま、君の判断に任せるよ」

 そう言うと、もう用件は済んだとばかりにひらひらと手を振って退出を促す。

「じゃ、あとよろしく。下がっていいよ」

 一礼して会長室を出て行くプロス。

 それと同時にアカツキの脳裏からもこの件は抹消された。

 

 

 

 アカツキへのメールを出し、特にする事の無くなったアルトは、

 自分とラピス二人分の食事を作りながら、これからの事について考えていた。

 今はナデシコ出航の約一年前。

 前回ナデシコは最重要な役職であるにも関わらず、オペレーターがたった一人しか乗艦していなかった。

 実際はプロスペクターの御眼鏡に適ったのがホシノ・ルリのみだったのだろう。

 優秀なオペレーターは喉から手が出る程欲しいに違いない。

 ひょっとすると自分も乗る事になるかもしれない。

 ナデシコに乗るにせよ乗らないにせよ、対策を立てておく必要があるだろう。

 

 ナデシコに乗ればクリムゾンや木連の手荒な勧誘(誘拐とも言う)はほぼ防げるだろうが、

 無人兵器やジン・タイプとの戦闘で艦が沈んだら終わり。

 反対にナデシコに乗らない場合は、クリムゾンのシークレットサービスや木連の諜報部、特に北辰が問題になる。

 

 それぞれの問題について検討し、対策を立てていく。

 

 今の自分ではエステバリスの操縦は無理だろう。

 IFSによる戦闘機動のイメージはともかく、身体がそのGに耐えられない。

 アサルトピットも改造しないと成人サイズのシートでは大きすぎる。

 この身体でも可能な事は、ユーチャリスでも使っていた無人兵器のオペレートくらいだろうか。

 今の地球にバッタ等の高度な無人兵器を作り出す技術力はないが、

 ディストーションフィールドを纏って体当たりする事だけに使用目的を絞れば製作が可能かもしれない。

 

 

 ナデシコに乗らない場合・・・・・・どうやって木連やクリムゾンから自分の身を護るか。

 

 アルトは客観的に現在の自分の戦闘能力を判断してみた。

 木連式柔などの技は、五感が戻った為にかつてと同じかそれ以上の切れがあるが、

 この肉体では筋力やウェイト、それにスタミナが致命的に足りない。

 非力さゆえに打撃系の技はほぼ全滅、間接を極めても体重が軽すぎて容易に振り解かれてしまうだろう。

 投げ技は黒の王子だった頃と同等の威力だが、リーチも歳相応に短くなっている為、甚だ心許無いと言わざるを得ない。

 銃を使えば撃った反動で手首を骨折しかねないし、刀剣の類もこの細腕で振るうには些か重すぎる。

 

 現在の自分の戦闘能力としては、素人になら勝てるが、ある程度心得のある者が相手では勝ち目は無い。

 北辰をはじめとする一流の白兵戦闘技能者が相手では、逃げる事すら難しい。

 

 流れるような手つきで料理を作り上げながら、アルトはさらに思考を続ける。

 腕力やスタミナは、鍛えたとしても限度がある。

 もともとの許容量が低すぎるのだ。

 しかし、こればかりはもっと成長しなければ如何にもならない。

―――その時間こそが惜しいというのに。

 

 

 アルトは現在の自分の能力に不満なようだが、それは相手が超一流の敵を想定しているからだ。

 この年齢の少女としては破格の力量と言えるだろう。

 第一、極限まで鍛え上げられた青年男性と、十に満たない少女とで戦闘能力を比較する事自体が間違っているのだ。

 

 

 自力で身を護る事を断念し、今度は他者に頼る場合をシミュレートしてみた。

 しかし、ネルガルシークレットサービスのトップ、プロスペクターとゴートはナデシコに付きっ切り。

 さらに今の時代にはネルガルに月臣はいない。

 シークレットサービスだけでは少々不安が残る。

 

 

 満足するレベルまで自分を強化することは無理。シークレットサービスも実力を信じきれない。

――――なら、信じられるモノを創ればいい。最強の対人兵器を。

 アキトが記憶していた様々な技術が脳裏を巡り、その中で現在の技術力でも可能な物をピックアップしていく。

 ・・・・・・そして、

「うん、これなら出来そうかな・・・っと、完成」

 没頭していた思考を中断し、できた料理を盛り付けると、ラピスの待つ部屋に向かう。

 

 

「ラピス、食事にしよう。今日は和食だよ」

 ネットで遊んでいるラピスに声をかける。

「・・・・・・うん」

 アルトが声を掛けると返事はしてくれるようになったが、やはりまだ強い怯えを見せる。

 なんだか警戒心の強い小動物を手懐けようとしているみたいだ。

 そんな事をふと思い、クスリと苦笑をもらした。

 そんなアルトの笑顔を不思議そうな表情で見つめるラピス。

「ああ、ごめん。いつもの所に用意してあるよ」

 ちょっと扉から離れると、ラピスが食堂へと歩いていく。

「う〜ん、2メートルか」

 それが彼女アルトがラピスを怯えさせない安全距離。

「・・・まだまだだね」

 ラピスの警戒範囲に入らないように気をつけながら、彼女たちが食堂として使っている部屋に入る。

 席について―――もちろんアルトとラピスの席とは2メートル離れている――慣れない箸に悪戦苦闘しながら、料理を平らげているラピス。

 その姿を見て、今度は純粋な微笑みをうかべるアルト。

 まあ、もうしばらくは焦らずに餌付けを続けるかな、と内心思いながら、自分の食事に手を伸ばした。

 

 

 

 そんな生活がさらに3日ばかり過ぎ、アルトがコンピュータ端末で日課となっている情報収集をしていると、

 この研究所に近づいてくる飛行物体がある事をメインシステムが告げる。

「―――アカツキか?」

 それをモニターに表示させると、ヘリが3機。

 それも、かなり大型の。

「輸送ヘリか。・・・・・・変ね」

 此処には自分とラピスの二人しかいない事はメールに記してある。

 保護に来たついでに研究データを持ち帰るにしても、大型の輸送ヘリを3機も寄越すというのは少々多すぎる。

―――ザワリと背筋を悪寒が走る。

 この研究所からの連絡が途絶えたから、その確認か、もしくは証拠の隠滅を図りに来たか?

 そうだとすれば、どちらにしても彼女たちにとっては余り楽しくない未来しか存在しないだろう。

「・・・・・・はあ。こんな物でも見つけておいてよかった。できれば使う機会は無い方が楽だったんだけど」

 そう呟く彼女の手には短針銃ニードルガンが握られていた。

 万が一の時の為に、警備班の装備から使えるものを幾つかピックアップしておいたのだ。

 もっとも、アルト自身も使う事になろうとは夢にも思わなかったが。

 

 短針銃ニードルガンは鉛玉ではなく一度に数百の針を打ち出す銃だ。

 火薬ではなく圧縮空気を使用している為、隠密性が高く、反動も少ない。

 打ち出される針は防弾繊維の隙間を縫って相手を倒す、極めて殺傷能力の高い武器。

 問題は射程が短い事と、風の影響を受けやすい事。

 今回に限れば、所内が戦場になる為に、メリットの方が大きい。

 何より、非力なアルトでも使いこなせる数少ない武器。

 

「手持ちの武器は、あとはナイフとボウガンか。それとラピスを何処かに隠さないと」

 極限状態に目まぐるしく回転する頭脳。

 リミットは、あと二時間。

 トラップを仕掛けて分断し、セキュリティと合わせて各個撃破。

 その程度の作戦しか思いつかなかった。

 

「・・・ごめんね、ラピス」

 睡眠薬入りのお茶を飲ませ、寝入ったラピスを通気ダクトの奥に押し込む。

 睡眠薬は簡単に手に入ったが、眠ったラピスを通気ダクトに入れるのに手間取った。

「もっと腕力があればな・・・」

 とは、作業を終えて疲れきったアルトの一言。

 

 無いものねだりをやめ、セキュリティに5分間の沈黙のあと、自分とラピス以外の人間を攻撃するようプログラムする。

 

 戦闘が長引いた時の為に保存食を確保し、隠しておく

 そして所内のあちこちにトラップを仕掛けてゆく。

 

 メインシステムから、ヘリが島に到着する予定の時刻だと警告があった。

 そしてアルトも、セキュリティの攻撃で敵が混乱するまでじっと身を隠す。

 携帯端末にリアルタイムで情報が送られてくる。

 人数は20名。装備は彼女が思っていたよりも軽装。

 ハンドガンのみのようだ。どうやら機材とデータを運び出すのが目的か。

 ・・・一人、強力な爆発物を所持している者がいる。

 どうやら証拠隠滅にここを爆破するつもりのようだ。

―――運び出すだけならば、攻撃は中止してやり過ごそうと思ったけど、やっぱりそうは行かないみたいね。

 相手の配置とディジタル時計のカウントが減っていくのを交互に見続ける。

「3・・・2・・・1・・・ゼロ」

 小声で呟くカウントがゼロになった瞬間、セキュリティが攻撃プログラムを起動させる。

 端末のマップに点在していた赤点が次々と消滅していく。

 だが、不意をつかれたものの、態勢を立て直し、セキュリティシステムを攻撃している集団が幾つかある。

 チッとひとつ舌打ちをすると、アルトは隠れていた通気ダクトから這い出た。

 骨折している右手にナイフを固定し、左手で銃把の握りを確認すると、生き残っている敵集団の一つに駆け出した。

 

 

 5人が立て篭もっている部屋の前に立ち、端末のモニターと、室内から聞こえる音から、敵の配置を確認する。

 最後に部屋の構造を確認し、一気に飛び込む。

 飛び込むと同時に3連射。

 短い断末魔を残し、血煙に沈む男達を視界の端に捕らえながら立ち上がり、

 部屋の奥に転がっていた負傷者たちへと走る。

「な、何だ、何なんだお前は!!」

 仲間を瞬時に殺され、恐怖に怯えた彼らは慌てて銃を構えようとしていた。

―――が、遅すぎる。いかに彼女が弱体化していても、この距離なら銃よりナイフの方がずっと速い。

 銀の光が空を裂き、瞬く間に頚動脈を切り裂かれた死体のできあがり。

 

―――殺し合いをしている時に『話す』なんていう無駄な行動をするなんて、二流ね。

 貴方達はそんな無駄な行動をするくらいなら、さっさと銃を撃つべきだったのよ。

 男の発した声に、アルトはほんの一瞬だけ、チラリと思った。

 

―――あと、一人。

「うああぁぁぁ、し、死ね、バケモノ!!」

 腕を負傷した男が叫びながら銃を乱射する。

 吐き出された弾丸を横っ飛びに転がって避ける。

 避けきれずに途中で断ち切られた髪が数本宙を舞い、耳に空気を切り裂く音が聞こえた。

 彼女にはそれが死神の鎌が、いや、『死』そのものが自分を掠めた音に聞こえた。

 紙一重の生と死の境界。そして自分が『生』の側にいる事に歓喜した。

―――新たな生を享けてから、今初めて生きている事を実感した。

 アルトの唇が笑みを形作り、歓喜が更に身体を動かす。

 弾切れを起こした銃を捨て、ナイフに持ち替えた男へ向かい走る。

 横薙ぎの斬撃を、さらに身を沈めることで躱す。

 

 息は切れ、腕は鉛のように重い。

 だが、心は沸き立つ喜びに踊り出しそう。

 それでも尚、冷静に相手の動きを見切る自分が居るのが不思議だ。

 私の間合いまで、あと2歩。

 

 次は袈裟切りの一撃。

 振るわれるその一撃を超えるスピードで回り込み、体勢を崩した敵へ疾風となって肉薄する。

 トスッ。ナイフはやけに軽く相手に刺さった。

 首から大量の血を噴出しながら、ひどく呆気なく敵は死んだ。

 

 先に撃った男達は、その傷と出血量から即死間違いなしと思ったが、一応確認しておく。

「―――まず、ひとつ」

 

 戦闘を終え、敵を殺戮し尽くしたアルトは、倒れた死体と、生きている自分を見ながら思う

 生と死のギリギリの境でなければ生きている事を感じられない自分は、随分と壊れている、と。

 

 

 だが、異常と正常を別つ線など、人の心の中にしか存在しない。

 ならば、誰がそれを定めるのか?

 大衆という名の、実体のない怪物か?

 常識という名の、あやふやな魔物か?

 

 否

 

 そんな姿も無い、如何様にも変わるモノ達に、絶対の境界線など定められようか。

 結局はそれを決めるのは、自分自身しか存在しない。

 

 

 誰もがココロに狂気を棲まわせている。

 それを、自覚しているか、そうでないかの違いだけで。

 

 

「―――くだらない。もし世界中の人間が『私』を否定しても、私は『私』である事をやめない。

 正しさなんて必要ない。私は、生きる為に、生きる。

 『何かを成す為に生きる』なんて言える恵まれた人間達に、私の在り方を否定する権利は無い」

 そんな事を考えた自分の弱さを切って棄てる。

 

 ふっと息を吐いて呼吸を整えつつ、次の目標を確認する。

 そしてアルトは再び最も距離の近い集団へと駆け出した。

 

 

 

 

 この時、メインシステムが島に近づく新たな機影を発見したが、その報告を受ける人間は誰もいなかった。

 

 

 

 

 今度も先程と同じように、部屋に立て篭もっているようだが、ドアの所にバリケードを作られている。

 思案する事数秒、端末のマップに通気ダクトを重ねて表示させる。

 近くの、ただし敵には音が聞こえないくらいには離れた部屋に駆け込むと、通気ダクトに入り込み、這い進む。

 音を立てないように慎重に、かつ可能な限り素早く。

 匍匐前進してきたが、目的の部屋の前で射撃に適した体勢に変える。

 こんな時は狭い通気ダクトの中でも余裕のある、今の小さい身体が便利だなあと思いながら。

 蓋を蹴り開け、それが地面に落ちる前に二発。

 それだけでマップから二つ赤い点が消えた。

「またここを戻るの?・・・はぁ」

 ため息をつきつつも、長い通気ダクトを再び這いずるアルトだった。

 

 

 

 光点も随分少なくなった。あと一つのグループで終わりだ。

 いつも通りにその部屋を表示させた。モニターが映し出した光景を見たその瞬間、アルトは思わずうめき声を漏らす。

 

「―――ラピス!!」

 

 そこには、男達に囲まれて泣きじゃくるラピスの姿が映されていた。

「睡眠薬が切れたのね。・・・・・・どうする?」

 選んだ薬は思っていたよりも効果が薄かったようだ。そしてこれからどうするかを自問する。

 自分が生き残る為に、ラピスを見捨てる?

 そう考えた時、すぐに嫌だな、と思った。

「・・・情が移った、かな?それともまだ『アキト』を引き摺っている?」

 そして決断を下した。

 理由なんてどうだっていい。

 ラピスを死なせたくない、というのがアルト・ルージュの意思なんだから。

 こんな自分にも人間性らしきものが残っていた事を、少し意外に思いながら。

「攻撃プログラム中止、およびセキュリティシステム解除」

 短針銃ニードルガンを手放すと、右手に固定したナイフを外し、同じように無造作に捨てる。

 そうしてアルトは歩き出す。ラピスが囚われている部屋へと。

 

 

 目的の部屋の前に立つ。

 ここは正しくアルト・ルージュにとっての境界線デッドライン

 入れば生きては出られない。

 それでも戻る気がしないのだから、自分の愚かさに呆れるしかない。

 自分は絶対に死にたくなんてなかった筈なのに。

 

 

「―――投降するわ。開けてくれる?」

 そんな愚かな自分でも、流石に扉を開けた直後に撃たれるのはごめんだった。

 声をかけてから返事を待った。

 

 男達は自分たちを追い詰めていた『敵』がこんな少女だとは思わなかったらしく、ひどく驚いていた。

 マシンチャイルドの確保も任務の一つなんだろう。

 彼らのリーダーは意外に冷静だったようで、両肩の関節を外しただけで、アルトを部屋に放り込んでくれた。

 ラピスはすぐ隣にいる。そして外傷が無いことに安堵した。

 とはいえ、ちょっと無理をしすぎた。

 疲労と激痛で今すぐにでも気絶しそうだった。

 ずっと泣き続けているラピスに近づこうと芋虫のように床を這う。

 自分の姿を想像し、随分と滑稽だと自分でも思う。

 男達の嘲笑が聞こえたが、そんな事は気にしない。

 今私がしたい事は、ラピスの涙を止める事。

 それ以外はどうだって良い。

「ラピス、・・・ラピス。泣き止んで、お願い。そばに居るから。あなたを一人にしないから」

 安心させるように微笑んだ。

 意識を蝕む激痛から、うまく笑えたか分からなかった。

 なんだか酷く眠かった。目を開けているのももう限界。

 これが私の終わりとは。情けなさ過ぎて涙も出ない。

「―――本当、馬鹿みたい。私って」

 そうして彼女は呟いて、そのまま意識を失った。

 

 

 


 あとがきという名の言い訳

 何故だろう。わからない。本当にわからない

 何故この話に戦闘シーンがあるんだろう?

 当初の予定ではアルトが怯えるラピスとの距離をゆっくりと縮めていく、『ハートフル』で『ほのぼの』な話だった筈。

 それが何故こんな変わり果てた姿になってしまったのやら

 本当に『手がすべった』としか言いようがありません。

 シュッ        ブスッ

 はうっ!!ってこ、これはボウガンッ!?

 ???「そう、あなたが使い忘れたボウガンよ」

 Mythril「――!? アルト?いきなり何をする!!」

 アルト「せっかくあったのに使われなかった可哀想なボウガンを供養していただけよ」

 Mythril「供養って・・・私に向かって撃つことがか?」

 アルト「使われる事の無かった道具への供養なんだから使ってあげるのが一番よ」

 Mythril「いや、ボウガンを忘れてた訳じゃなくてね」

 アルト「言い訳?」

 Mythril「本当はデビルメイクライみたいに両手に持って、遠距離はボウガン、中距離はニードルガン。

 で、近づいたらナイフという様に今の君でも使えそうな物を集めたんだけど・・・」

 アルト「・・・・・・それで?」

 Mythril「君が指を折っていたのを忘れていたんだ。で、武器持ち替えは不可能と判断して使わなかったのだよ」

 アルト「なんて無様。自分で書いた物くらい把握しておきなさい」

 Mythril「仰る通り。描写には無いけれどトラップで使ったと思っていただけると嬉しいです」

 アルト「ところで第一話、ナデシコどころかネルガルにすら行ってないじゃない」

 Mythril「あれは私ではなく全てアカツキが悪いのです。彼が裏を取るなどと言い出さなければ、

  事後処理部隊との遭遇なんてあり得なかったし、もっとサクサク進んでました」

 アルト「じゃあ次で出航できるのかしら?」

 Mythril「やあ、無理ですね。今回ネタ振ったものを作ったりしてると」

 アルト「あっさりと認めないで。ところで、私の性格が随分と危険な物になっているのだけれど、どういうこと?」

 Mythril「一応解説をしておくと、君は、『死の恐怖を感じている自分』を観測するのが好きなんです。

  決して戦闘やら殺人が好きな訳ではありません。

  恐怖を感じていられるという事は、まだ生きているという事でもあるわけで」

 アルト「より死に近づく事で、逆説的に生を感じているという事ね」

 Mythril「まあそういう事です。何故そうなってしまったかと言えば、君がナデシコに乗らないという選択をしそうだったのでね。

  手っ取り早く戦場という『死』に近い世界に行く理由付けという事で」

 アルト「次はもう少しナデシコらしいのを書きなさい」

 Mythril「・・・できる限り努力します」

 アルト「こんなMythrilを見捨てないで次も読んでやってくださいね」

 Mythril「ではまた次回お会いしましょう」

 

 

 

代理人の感想

>もう少しナデシコらしいのを

 

無用!

無用!

無用!

 

いかなる時においても小説に対する絶対的な判断基準は只一つ!

すなわち、面白いか、面白くないか!

 

たとえナデシコらしくなかろうとも、面白ければそれでよしっ!

 

 

よって、今回の話は通し!