木連の日常(大嘘)

 

 

 

 

 

 

ハルカミナト殿か...

.....

はっ、俺は一体何を考えているんだ!?

自室で、誰も見ていないはずなのに思わずあたふたとしてしまう。

ううっ、あの女性に会ってから、どうも俺はおかしいぞ。

がっくりと肩を落とし俺はため息をつく。

本当に一体俺はどうしたんだろう。

ふと気がつくとあの女性のことを考えている俺がいる。

おかしい。

俺の心は源一郎とともにナナコさんに捧げたはずなのに...

更に、俺には勿体無い程の女性が許婚となってくれているというのに...

それなのに、一人でいるとついついミナト殿のことを考えてしまう。

 

コンコンッ

 

何か未知の病気にでもかかったのだろうか?

 

「おい、九十九どうした?」

 

それとも、俺自身に何か問題があるのか...

 

「おい、九十九開けるぞ?」

 

プシュー

 

ぶつぶつぶつ...

 

「おい、九十九?お前いったい何をやっている!?」

 

「おかしい、なぜミナト殿の顔ばかり思い浮かべてしまうのか...」

 

「.....(怒)」

 

「ミナト殿の声、姿を思い浮かべてしまうだけで鼓動が激しくなる。これは一体...」

 

「それは、お前がナンパ野郎だからだ!」

 

「何だと!」

 

気がつけば目の前に源一郎がいる。

 

「源一郎、お前いつのまに?」

 

「ノックもしたし、声もかけた!気がつかなかったのはお前だろうが!!」

 

「そ、そうなのか(汗)」

 

そう源一郎に言い切られ、最近の不調を自覚している俺は言い返せなかった。

 

ん?

ちょっと待て?

 

「源一郎、ナンパ野郎とは誰のことだ!?」

 

俺は語気も荒く源一郎に詰め寄る。

 

「お前以外に誰がいる!」

 

「俺はナンパ野郎ではない!取り消せ!!」

 

間髪入れずに源一郎に言い返されて、更に激昂した俺はずずいと源一郎に近づく。

だが、源一郎は涼しい顔で言い切った。

 

「お前は三郎太同様、間違いなくナンパ野郎だ!」

 

ブチッ

 

「誰がナンパ野郎だぁぁぁ!木連式柔[虎砲(こほう)]!!」

 

超接近戦用の掌打を源一郎めがけて叩き込む。

 

「何の!同じく木連式柔[虎砲]!!」

 

俺と源一郎の掌打が互いに正面から激突する。

 

ドンッ

 

部屋の空気がまるで爆発したように震える。

掌打をぶつけあった右手がしびれている。

さすがだ、源一郎。だが、俺をナンパ野郎といったことは取り消してもらうぞ!

俺と源一郎は互いの[虎砲]にはじかれて先程よりかなり間合いが開いていた。

 

「先程の言葉、取り消せ源一郎!木連式柔[飛燕(ひえん)]」

 

源一郎に向かって一気に踏み込むと、そのまま中段蹴りを放つ。

勢いの乗った中段蹴りが途中から上段蹴りに変化する。

防御された脚をそのまま上に逃しそして上空からの踵落し!

だが、木連式柔皆伝の源一郎は見事これを避けた。

 

「腕を上げたな九十九!」

 

源一郎の顔が楽しげに笑う。

 

「今度はこちらからいくぞ!木連式柔[土雷閃(どらいせん)]!!」

 

地面すれすれの下段回し蹴りが俺の足元を襲う。

それを躱した瞬間、源一郎の脚が上空めがけて舞い上がる!

俺の髪を数本巻き込みながら源一郎の右足が俺の顔をかすめていく。

だが、これで終わりじゃあるまい。次は何がくる?

 

「木連式柔[双龍脚(そうりゅうきゃく)]!」

 

間髪入れず源一郎の左足が突風のように巻き上がる。

 

くうっ

 

危ないところだったが、これもぎりぎりで躱すことに成功する。

双龍閃を躱された源一郎はいわば逆立ちに近い状態にある。

この機会を逃がすことはあるまい。

 

いくぞ源一郎!

 

そう一瞬の間に考え、踏み込もうとした時、背筋に悪寒が走った。

咄嗟に、意識を攻撃から防御に切り換える。

そして、意識が切り換わると同時に源一郎の声が響いた。

 

「木連式柔[旋渦(せんか)]!」

 

逆立ちの状態のまま、まさしく渦巻きのように連続して蹴りが飛んでくる!

さすがに全てを避けきれず十文字受けで受け止めるが、威力を受け流しきれず身体ごと吹き飛ばされる。

だが、もう一歩踏み込んでいたら受けきれず直撃を食らっていたろう。

たいしたものだ源一郎。まさか、あのように技を繋げるとは...な。

 

そんな風に俺が内心感心していると[旋渦]の体勢から元の姿勢に戻した源一郎が勝ち誇った顔で告げてくる。

 

「これがお前がナンパ野郎の証だ!」

 

....

ブチッ

ブチッ

ブチッ

 

俺は頭の中で何かがまとめて切れる音を聞いた...

そうか、源一郎、そういうことをいうか...

 

ユラリ

 

吹き飛ばされた状態から身体を起こすと、そのまま自然体で源一郎に近づく。

その俺の雰囲気に危険を感じたのか源一郎も勝ち誇った顔をおさめ、真剣な顔付きで俺をみる。

 

「木連式柔[火炎乱舞(かえんらんぶ)]!!!」

 

俺は、それまでの凪の状態から一気に暴風状態に突入する。

     掌打

  正拳

          肘打ち

       膝蹴り

裏拳

              上段蹴り

    中段蹴り

         下段蹴り

 前蹴り

        回し蹴り

                後ろ回し蹴り

   踵落し

 

息つく暇もなく攻撃を加える。

火炎乱舞は[気]と[流れ]を重視する木連式柔においては珍しい、力を重視する技だ。

次から次へと猛攻を加え、敵を一気呵成に粉砕するのがその骨子だ。

ただ、力量に差がないか相手の方が上回る場合、後の先を取られ窮地に陥ることの多い諸刃の剣的な面

を持つ。

俺と源一郎の力量はほぼ拮抗しいるため、源一郎に対しこの技を用いるのは危険だったが、憤怒に満ちた

状態の俺は一時的とはいえ源一郎を凌駕した!

俺の猛攻に遂に源一郎の防御がはじける。

終わりだ、源一郎!!

 

「木連式柔[刃拳(ハーケン)!!!]

 

だが、源一郎もまた伊達に皆伝を授けられたわけではなかった。

 

「木連式柔[火断亡(カタナ)]!!!」

 

ガシィィィ

 グラッ

  バタッ

 

俺と源一郎の最後の攻撃は見事なダブルクロスカウンターになった。

最後の最後で源一郎は捨て身の相打ちに打って出たのだ。

俺としたことが...うかつだった。

そして双方ともそのままノックアウトとなり、大の字で部屋に横たわる...

しばしの間、部屋には呼吸音のみが響いていた。

 

「やれやれ、またですか。」

 

沈黙は、部屋を覗きにきた東舞歌殿によって破られた。

 

「で、今回の原因は?」

 

「九十九はこの大事な時に女性にうつつを抜かしているナンパ野郎だと指摘しただけです。」

 

舞歌殿の質問しつこくナンパ野郎を訴える源一郎。

 

「いいかげんにしろ、源一郎!

 俺はナンパ野郎ではない!!

 ただ、ふと気がつくとミナト殿のことを考えている。

 そして、ミナト殿のことを考えるとどきどきして落ち着かなくなるだけだ!!!」

 

「・・・・・」

 

言い切った俺をあきれたように舞歌殿が見つめている。

だが、俺にはやましいところは一つもない。

堂々とその視線を受け止める。

そんな俺をみて、ふいに舞歌殿がいたずらっぽく微笑んだ。

 

「そうね。九十九はナンパなんかじゃないわね。」

 

その言葉を聞いて愕然とする源一郎。

みろ、やっぱり違っただろう。

だが、俺の落ち着きも次の舞歌殿の言葉で崩れ去る。

 

「そう、九十九はただ病にかかっているだけよね(にっこり)」

 

何!

やはりこれは何かの病気だったのか!?

確かに、ここ最近の自分の様子がおかしかったことには自覚症状があったので舞歌殿の一言でたやすく動

揺してしまう。

 

「舞歌殿、これがなんの病なのかご存知なのですか?」

 

「もちろん、知っているわよ。」

 

俺の問いかけにあっさりと答える舞歌殿。

そうか、さっさと尋ねれば良かった。

 

「教えて下さい、舞歌殿。これは一体何の病なのですか?」

 

「知りたい?」

 

「もちろんです。」

 

当然のことを聞いてくる舞歌殿。

栄えある優人部隊の一員として自己管理がなっていないとは言語道断。早急に病を治し、精進せねば!

 

「じゃあ、後で私のいうことをひとつ聞いてくれる?」

 

「・・・・・」

 

即答できない俺。

舞歌殿は決して悪い人間ではない。

いや、指揮官としては極めて得難い人だ。

だが、人をおもちゃにして遊ぶのが大好きというとんでもない性格をしているのが難点なんだ。

おそらく、ここでうなずけば後日、後悔するであろうことは間違いない。どうすべきか...

悩む俺を楽しそうに見ている舞歌殿。

 

.....

 

いや、ここは後悔しようとも、まずはこの病が何なのか知ることが先決だ。

聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥というではないか!

 

「わかりました。いうことを聞きましょう。ですからこれが何の病なのか教えて下さい。」

 

俺の返事に嬉しそうに微笑む舞歌殿。

 

「わかったわ。約束だからね。」

 

「二言はありません。」

 

「うん。九十九のかかっている病はね、恋の病よ!」

 

「・・・・・はっ!?」

 

「だから、恋の病だってば!」

 

「・・・・・」

 

あっけに取られてしまう俺。

今、舞歌殿は何と言った?

恋の病!?

つまり、俺はミナト殿に恋をしていると.....

そこまで頭がまわった時、瞬間湯沸器のように一気に顔が赤面する。

お、俺がミナト殿に恋をしている!?

パニック状態の俺をよそに舞歌殿は楽しそうにおしゃべりを続けている。

 

「許婚の手を握るにもあれだけ時間のかかったあの堅物の九十九が...

 とうとう恋に目覚めたのかぁ〜。

 これは、まれにみる一大事よね。

 うん、私一人の胸のうちに収めるのはもったいないわ。

 さっそく優華部隊の子たちにも知らせてあげなきゃ!

 特に千沙には念入りに状況説明してあげないとね♪」

 

それを聞いてパニック状態だった俺は、一気に血の気が下がる。

ガシッ

そのまま、部屋を出て行こうとする舞歌殿をつかむ。

そして、不思議そうにこちらを見つめる舞歌殿に願いを口にする。

 

「このことはどうか内密にしていただけませんか...」

 

その俺の台詞を聞いた瞬間、舞歌殿がにやあと笑うのを俺は背筋を凍らせながら見守った。

 

「ふうん、九十九はこのことを知られたくないんだぁ?」

 

嬉々として尋ね返す舞歌殿。

ううぅ!

なぜ、こんなことに...

 

「はい、どうか舞歌殿の胸のうちにだけ収めてはいただけないでしょうか?」

 

それでも、ここで食い止めねば三郎太と同じ状態になってしまう!

(本編18話3日目参照)

それだけはなんとしても食い止めなければ!!

 

「当然、見返りはあるのよね?」

 

「・・・何をお望みでしょうか?」

 

ヘビに睨まれたカエルも同然の状態で尋ね返す。

いったい、どうしてこんなふうになったんだ...

内心、血の涙を流す俺を面白そうに眺めながら舞歌殿は要望を口にする。

 

「じゃあ、さっきのとは別に、後日私のいうことを3つ聞いてね(にこっ)」

 

「・・・・・」

 

「お返事は(にこっ)」

 

「・・・・・わかりました(T-T)」

 

がっくりと脱力しながら承知の返事をする俺を見ながら、満足そうにうなずいている舞歌殿。

...木連において女性が強いこと、改めて身に染みましたです、ハイ。

 

 

 

...こうして白鳥九十九はまたひとつ東舞歌に逆らえなくなったのであった...

 

また、白鳥九十九の許婚には別ルートからこの情報が流れたことが確認されている。

その後の

修羅場については、あえて筆を取る必要はないだろう...南無。

 

 

 

独り言

 

祝!HP復活(ドンドンドン)

というわけで、投稿モラトリアム中の私ですが(笑)

急遽作りかけだったSSを仕上げて送らせて頂きました。

いや、ほんとに焦りましたよ、NotFoundが表示された時にゃ(^◇^;

ところで...

木連式柔の技の名前を見てニヤリとしたあなた、そうですその通りです。

格闘マンガ?の修羅○門と影○からパクらせて頂きました(笑)

まあ、一部の名前は私のオリジナルですけどね。

ちなみに源一郎が放った旋渦はカポエラをイメージしてます。

わからない方は気にせずさらっと読み流しちゃって下さい。

別に元ネタ知らなくても何ら支障ありませんから(爆)

それはともかく.....

東舞歌ってこんな性格でいいのだろうか(汗)

なんか、勢いで適当に書いちゃった♪(爆)

でも、悪戯好きなところとか鋼の城さんの舞歌とある程度共通点があるな...

よし、OKだ(^◇^;

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

鳥井南斗さんから14回目の投稿です!!

ははは、仲が良いなこの二人は(笑)

でも、やはり別ルートでばらしたのは・・・月臣→京子→千紗経由か?

・・・それ以外考えられないよな(苦笑)

でも、本編でこの三人が出会えば、面白いだろうな〜(ニヤリ)

これで九十九も立派なナンパ師だ!!

 

それでは、鳥井南斗さん投稿有難うございました!!

 

さて、感想のメールを出す時には、この 鳥井南斗さん の名前をクリックして下さいね!!

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