お仕事の合間に♪

 

 

 

 

 

 

「あら〜、これは結構やられているわね。」

 

私はアキト専用のエステバリスを整備用ハンガーに固定し、

外面からの損傷状況の目視確認を口にだしつつ行っていた。

 

「でも、これまで定期点検と摩耗個所のメンテナンスしかしてこなかったから久々に腕が鳴るわ!」

 

そう、アキト専用エステバリスの専属メカニックとしてこの基地に赴任したにもかかわらず、

今までその腕前を発揮する機会がなく無聊を囲っていたのだ。

もっとも、それは如何にアキトが被弾しないかの裏返しでもあったので、

文句をいうつもりなどなかったのだが、こうして目の前に充実した作業を差し出されると、

メカニック魂が勝手に燃え上がってしまうことを止められないのもまた事実である。

 

「さて、まずは損傷した部分を外してしまおうかな。」

 

手順を口にしつつ、手際良く作業用クレーンを使って損傷した左腕と右脚を外してゆく。

外した左腕と右脚は、慎重に修理用ハンガーに確保する。

アキト専用のエステバリスは他のエステバリスに比べて特殊な個所が多い。

もちろん、完全なオーダーメイドとは違って、

かなりの部分は共通部品との互換性が保たれているものの、

今後、もしものことを考えて信頼性は落ちるものの使えるパーツは極力保存しておこうという、

専属メカニックとしての考えである。

幸い、格納スペースには十分すぎるほどの空きがあることだし。

それに被弾個所を研究することで何か新しいことが分かるかもしれない。

その可能性はごく小さなものでしかないけれど、

優秀なメカニックはどんなささいなこともおろそかにしないのが基本だから。

損傷個所の取り外しが終わった私は、内部の破損状況の確認のために

チェッカーをエステバリス本体に繋いだ。

機動兵器の名の通り、エステバリスは昔の戦闘機以上の高機動を平気で行う。

そんな高機動中に被弾した場合、被弾した個所以外にも被弾時の応力、

機体の慣性などの影響で、内部の部品が破損している場合が少なくないからだ。

幸い、チェッカーによる診断では被弾個所以外に部品交換を必要とするほどひどい個所は、

表示されなかったが、それでも数箇所修理を要する個所が点滅している。

 

・・・でも、さすがね。あの被弾状況でこの程度の損傷だなんて。

 

結婚話で動揺していても、無意識のうちに被害を最小限に押さえるよう機動したのであろ

うことが容易に想像できるわね。

 

「本当にとんでもないパイロットよねぇ〜。」

 

そのとんでもないパイロットを好きになっちゃった私もとんでもないことになりそうだけど・・・

そしてサラとアリサの顔を思い浮かべる。

 

「サラってば、他の女性がアキトさんに声をかけると夜叉になるんだから...」

 

夜叉になったサラの顔を思い浮かべた私は、

思わず背筋を震わせるとくわばらくわばらと頭の中で唱えた。

 

「さてと、それじゃ修理に取り掛かるとしますか!」

 

気合の声を上げた時、ガラガラガラッと格納庫の扉が開く音がした。

こんな時間に誰だろう?

不思議に思った私が振り向くと、そこにはバスケットを持ったアキトさんが立っていた。

 

「アキトさん?どうしたんですか、こんな時間に?」

 

私がそう声をかけると、アキトさんはバスケットを持ったまま私の方に近寄ってきた。

 

「うん。俺の不注意で機体を壊しちゃって、レイナちゃんには迷惑をかけるなと思ってさ。

 せめてものお詫びに夜食でもどうかと思って持ってきたんだけど。」

 

そういいながらバスケットを私に差し出すアキトさん。

...嬉しい(ぽっ)

 

まさか、こんな時にアキトさんの作ったものを食べられるなんて....

 

アキトさんの手料理・・・

 

     アキトさんの手料理・・・

 

          アキトさんの手料理・・・

 

 

・・・はっ、いけない!?

 

ここでトリップしたりしたらサラやアリサと同レベルになってしまう!

嬉しさのあまり、思わず意識を手放しそうになったけど、かろうじて手綱をしめることに成功する。

 

「そんな。整備は当然のことなんですから気を遣わなくてもいいのに。」

 

「そういうわけにもいかないよ。それにもう作っちゃったから食べてもらえないかな?」

 

苦笑しながらお願いというしぐさをするアキトさん。

 

はうっ♪

 

アキトさんの専属メカニックやってて良かった(じーん)

 

「わかりました。喜んで食べさせて頂きます。

 でも!一人で食べるのは味気ないので、アキトさんも一緒に食べて下さいね。」

 

そういうとアキトさんは快く承諾してくれました。

そして、楽しい夜食会です。

整備の合間に食べれるように考えてくれたのでしょうね。

サンドイッチを中心とした、簡単につまめるメニューがおいしそうな匂いとともに

バスケットの中に収まっています。

私は近くのベンチを引っ張ってくると、そこにアキトさんと隣り合わせに腰掛けました。

もちろん、バスケットは膝の上にどかしています。

 

「それじゃあ、頂きます。」

 

「はい、どうぞ。」

 

アキトさんの心尽くしの夜食...

 

 

わかっていても、やっぱりおいしい(じぃぃぃぃぃん)

 

しばらくの間、私は無心にアキトさんの作ってくれた料理を頬張っていました。

でも、急ぎすぎたのでしょうか。喉に詰まってしまい、胸を叩く羽目になっちゃいました

 

「慌てて食べなくても大丈夫。はい、紅茶。」

 

私が胸を叩きながら苦しんでいると、すかさずアキトさんが紅茶を水筒から紅茶を注いで

渡してくれました。

 

ふうっ。

 

みっともないところを見せちゃいましたね。

でも、それほどおいしかったんですよ、アキトさん。

そして、夜食を食べることに一段落した頃、アキトさんが修理状況を確認してきます。

 

「見た目は結構派手に壊れているけど、主要部分の損害はたいしたことないの。

 明日の朝には修理を終えてみせるわ。」

 

私の返事を聞いたアキトさんは笑顔でありがとうとお礼の言葉を言ってくれました。

 

ああっ、なんて綺麗な笑顔・・・

 

その笑顔に見とれてしまった私は、アキトさんに怪訝な顔をされてしまい、

とっさに話題を例のことに移すことで誤魔化すことにした。

 

「そういえば、聞きましたよ。アキトさんが被弾した理由(にっこり)」

 

私のその一言を聞いた瞬間、それまでの落ち着きが嘘だったかのように、

アキトさんがそわそわし始めます。

 

「誰からそれを!?」

 

あら?

ずいぶん声が上ずってますね。

ひょっとして、まだそんなに広まっていないと思っていたのでしょうか?

 

「あれ、知らないんですか?

 今、アキトさんが誰とあるいは何人とくっつくかという賭けが盛大に行われていることを?」

 

私の返事に愕然とするアキトさん。

 

くすっ♪

 

賭けの対象には私も含まれていますけど、これは言わない方がよさそうですね。

そう判断した私はそのままアキトさんの様子を見守ることにしました。

しばらく固まっていたアキトさんも、すこししたら再起動しました。

 

「ねえ、レイナちゃん。賭けの胴元は誰か知ってる?」

 

顔は笑っていますけど、

握り締められてぶるぶる震えている拳がアキトさんの心情を物語っていますね。

 

「うーん、私はヤガミナオさんが胴元だって聞いたけど?」

 

「そうか、ナオさんが...」

 

アキトさんの笑顔はますます深くなっていきました。

 

それがアーヴの微笑ですか、アキトさん?(^^;

 

私は、アキトさんの手の中で握り潰れてゆくベンチの背もたれのパイプを見ながら、

そう内心で問い掛けていました。

 

「それじゃ、あんまり邪魔をしちゃ悪いからこの辺で失礼するね。

 あっ、残りのものは置いていくから、またお腹が空いたら食べてよ。」

 

背もたれのパイプを握り潰したアキトさんはベンチから腰を上げながらそういいました。

 

「分かった。じゃあ遠慮なく頂くね。そうだ、バスケットはどうしたらいい?」

 

「うん、明日食堂にもって来てくれるかな?」

 

「わかったわ。」

 

私の返事を聞いて、アキトは格納庫の出入口に向かって歩き始めます。

 

「これからどうするの、アキト?」

 

おおよその予想はついていたけど面白半分に聞いてみます。

 

「ちょっと、ナオさんのところにね....」

 

案の定、予想通りの返事が返ってきました。

 

くすっ♪

 

明日、医療室のベッドに入院一名決定ですね。

私は笑いながらアキトにお礼の言葉を告げました。

 

「ありがとう、アキト。とってもおいしかった。」

 

私の言葉に振り返って微笑んでくれるアキト。

いいなあ。

あの笑顔を私だけのものにしたいといったら贅沢かな?

そう自問自答しながら、私はエステバリスの修理に取り掛かった。

 

 

 

...こうして、レイナにとっての至福の一夜は過ぎていったのであった。

 

 

 

 

独り言

 

レイナ登場♪

いうまでもないと思いますが、これは外伝のサイドストーリーです。

少なくとも私はそのつもり(笑)

レイナとアキトのシーンを書こうと思ったらここしか思い付かなかった(苦笑)

でも、なんかレイナが変だな。

こんな子だったっけ!?

違ったような気がするけど...

まあ、書いてしまった以上かまわないか(爆)

でも、ナオ、お前って本当に恐いもの知らずだな?

確か、昼間もアキトに半殺しにされたはずなのに、こりない奴(苦笑)

ギャグとシリアスをどちらも器用にこなせるなんて

これもBenさんの見事な造形の賜物か...

とても、私にはオリキャラは作れないな(苦笑)

 

そうそう、ギャグとシリアスといえば、私のお仕置きSSとシリアスSSに

ギャップを感じている人がいたりします?

鳥井南斗はあくまで一人のHNですからね(笑)

お仕置きSS担当鳥井南斗とシリアスSS担当鳥井南斗みたいに、

二人も三人も鳥井南斗がいるわけではないのであしからず(苦笑)

ちなみに、Benさんみたいな多重人格者でもないです♪(爆)

 

#Benさんについては嘘・・・かなぁ???(核爆)

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

鳥井南斗さんから19回目の投稿です!!

わははは!! 多重人格と判断されたBenだ!!

どうせ俺はそんなキャラさ!!

いいもんいいもん、我が道を走ってやる!!

 

・・・と、イジケるのはここまでにして(苦笑)

このままでは本編のジュンの二の舞になってしまう(爆)

 

しかし、あの事件の後日談を書かれるとは予想外でしたね〜

何より、レイナが可愛らしいじゃないですか(笑)

う〜ん、メカニックとしてはアキトは複雑な存在なのでしょね。

・・・ちなみに、ナオは次の日も湿布まみれで姿を現していますよ。

一応、仕事だしね(苦笑)

 

それでは、鳥井南斗さん投稿有難うございました!!

 

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