アキトは危機に見舞われていた・・・



















 「さあ、アキトさん。中に入りましょう♪」

 温泉マークの暖簾を前ににこにこしながらルリが声をかけてくる。

 ナデシコ艦内における有数のレクリエーション施設である、ナデシコ大浴場を前に、アキトは逃れるすべはないかと必死に思考を巡らせていた。

 確かに、風呂に入ることそのものには問題ない。

 むしろ好ましいといえるだろう。




 アキトの目の前の暖簾に「女湯」と書かれていなければ!




 「やはり、俺は部屋のユニットバスに入った方が「却下です(断言)」

 逃れるすべが見つからず、それでも諦めきれず抵抗を試みるが一撃で粉砕されてしまう。

 「そうですよ、アキトさん。みんなで入った方が楽しいですよ?」

 そうメグミちゃんが声をかけてくる。

 口調はとっても優しいのだが、目の奥に何やら炎のゆらめきのようなものが見えるような気がするのは俺の気のせいだろうか?

 「いい加減あきらめろ、アキト!」

 そう強い口調で言ってくるリョーコちゃん。

 でも、うっすらと頬が紅くなっているのは何故だ?

 ちなみに、リョーコちゃんの手が「今の」俺の身体をしっかりと押さえており、逃走を防いでいるのは暗黙の了解のうちだ。

 「そうですよアキトさん。」

 反対側からリョーコちゃんと同じように「今の」俺の身体をがっしりとつかんでいるアリサちゃんも同意する。

 やはり逃げ場は・・・・・・・・・ないらしい。

 「観念なさいアキト君。今のアナタには助けが絶対に必要よ。」

 「事の張本人がそういうことを言うか!!!」

 そういって思わずイネスさんを指差す。



 ほっそりとした実に可愛らしい指を・・・



 「女の子がそんな風に振る舞うのは感心できないわね。」

 「俺は男だ〜!」

 「今は女の子でしょ?」

 そういってエリナが俺のピンク色をした髪をすく。

 憮然としたままそんなエリナを見上げる。

 そう、見上げるのだ。

 そんな俺の視界にぼさぼさ頭の黒瞳黒髪の青年が入り込む。



 「アキト、お風呂入ろ。」



 目の前の自分の顔がそう言葉を紡ぐのを疲れた表情のまま見つめる。

 男性の肉体の名はテンカワアキト。

 ただし、中身は別人だ。

 なぜなら、俺はここにいるから。

 先ほどからの言葉であるように小さな女の子、そう、ラピスラズリの中に(涙)






 こうなった原因は明白だ。




 イネスさんの実験!

 これしかない!!!

 何が新型ナノマシンの調整だ!!!!!

 こんな事になるなんて聞いてないぞ!!!!!!!!!




 ちなみに現在の事情を簡単に説明するならば、俺とラピスの精神が交換された状態といえばわかってもらえるだろう。

 こうなっている理由もはっきりしている。

 俺とラピスをつないでいるリンクシステムの異常だ。

 詳しいことは省く。

 イネスさんは懇切丁寧に説明したそうだったがこんな状態で長々と説明を聞くつもりはないからな!

 それでも、かいつまんで要点だけを説明させた。

 それによると魂とかそういったものが関わっているわけではないらしい。

 俺の思考そのものは従来通りテンカワアキトの肉体で行われているはずだそうだ。

 リンクシステムの異常というより暴走の方が適切かもしれないが、その暴走したリンクシステムがラピスの五感情報を俺の脳に流し込み、同時に、それを逆にたどる形でラピスの身体が俺の思考をトレースし、そのため、俺の脳があたかもラピスの中に自分がいるように錯覚している・・・・・らしい。

 正直なところ、そんなことが起こりうるのか良く分からないが。

 もっとも、リンクシステムそのものが遺跡のオーバーテクノロジーを用いて動いている訳の分からないもの筆頭のようなものなので、あまり文句も言えない。

 まあ、そんなわけで、気づいた時には俺とラピスは互いに精神が入れ替わったようにしか感じられないようになっていたわけだ。

 そして、事態に気づいたイネスさんによって何故か女性陣の招集が行われ対処策が話し合われた。

 当然、最初に確認されたのが元に戻せるかということだったが、それに関してはあっさりと解決した。俺の身体に入り込んだナノマシンは、未完成品だったため時限設定がなされており、一週間後には活動を停止し体内の老廃物といっしょに排出されるとのことだった。

 時限設定に関しては、これまでにも数々の臨床試験が実験体1号と2号によって行われており、まず間違いなく作動するとのことだ。

 その後、ではこの一週間をどうするかが話し合われるはずだったのだ。

 だったのだが・・・・・

 だったはずなんだが・・・・・

 何故か、みんなで風呂場の前にいるんだ。

 本当に、何故なんだろう?






 「さて、それじゃ服を脱ぎましょうねアキトさん♪」

 はっ!?

 気づいた時には俺は女湯の脱衣所の中にいた。

 考え込んでいた時間はほんのわずかの間のはずなのに!

 そして、身体から服を脱がされようとしていた。

 「ち、ちょっと待って!?」

 慌てて服を脱がせようとする手を押さえようとするが、横から伸びてきた手にあっさりと腕を万歳状態にされてしまう。

 しかも、何時の間にか周りの女性陣は既に各々の服を脱ぎ終わり、タオルを身体に巻きつけているだけだ。

 女性の色香がむんむんと漂う状況にラピスの身体とはいえ思わず頬を赤らめ視線をさまよわせるが、まわりは極上の生脚だらけ。

 どこを向いても、普通の男ならば天国としか思えない光景しか入ってこない。

 そんなことをしているうちに、身体から全ての服が剥ぎ取られてしまう。

 自分の身体じゃないはずなのに、自分の身体に思えてしまう。

 開放された腕を身体に回し、しゃがみ込んでしまう俺。

 「きゃ〜、アキトさん可愛い!」

 サユリちゃんの嬌声と共に、一斉に伸びてくる腕。

 もみくちゃにされる。

 まるで人間台風みたいだ。

 しばらくの間、そのままもみくちゃにされていたが、いつまでもそうしていると風邪を引くかもという意見がでて、俺は速やかに女湯の中に拉致された。






 ぽちゃーん






 いい湯だ。

 確かにいい湯だ。

 男湯に比べると設備の良さもあってとってもいい湯だ。




 今、俺のいる場所が女湯でなければな!




 さらに、俺の座っている場所がサラちゃんの膝の上でなければ。




 「うーーーーー。」×複数




 隣ではうらやましげにサラちゃんと俺を見ている女性陣が複数いる(汗)

 風呂場で騒ぐのはマナー違反ということで順番にみんなのところを回ることになったのだ。

 ミナトさん、騒ぎを止めてくれたのは感謝しますけど・・・

 より深く泥沼にはまったような気がするのは俺の気のせいですか?

 そんな俺の恨めし気な視線の先で、ミナトさんがじ・つ・に楽しげに皆の様子を見ている。

 アレは絶対に確信犯だ!

 間違いない!

 俺の視線に含まれる恨めし気指数が更に上昇するが、それに気づいたミナトさんは、にっこり笑った後、上半身をあらわにした。

 当然、タオルは外されている。

 従って、そのボリューム満点の見事な胸が俺の視線の先にさらされるわけで・・・・・

 湯の温度とは別の意味で、顔が赤くなるのがわかった。

 「あらあら、アキト君ったら純情さん♪」

 そんな俺の様子を先ほどよりも更に楽しげに見やりながら、湯から上がるミナトさん。

 くそー、いいようにあしらわれているな。

 と、そう思った瞬間俺の身体がぎゅっと抱きしめられる。

 俺のいる場所は、サラちゃんの膝の上。

 抱きしめたのはサラちゃん。

 結果として、俺の今の身体はぴったりとサラちゃんの身体とくっつくことになる。

 こ、こ、この後頭部に感じる柔らかくてそれでいて弾力感あふれる二つの果実がぁぁぁぁぁ!!!

 「よそ見しちゃだめですよ、アキトさん。今は私の番なんですから♪

  じゃないと・・・・・アキトさんの身体の向き、変えちゃいますよ?」

 そ、それだけは勘弁して(泣)

 い、今の状態でも、身体の単気筒4バルブエンジンはいつ爆発してもおかしくない勢いで鼓動し続けているのに、これ以上はいくらなんでもまずいって!

 「姉さん、そろそろ交代の時間よ。」

 「えー、もうなの?」

 ア、アリサちゃん、立ったまま近寄らないで!

 全部見えてるってば!!!

 「アキトさんになら身体中の隅々まで見られてもかまいません(ポッ)」

 あううう。

 「むしろ見て欲しいですね。」

 ル、ルリちゃん、なんてことを!

 「そして、責任を取ってもらえれば言うこと無しですね♪」

 メ、メグミちゃんも前隠して、前!

 くっ、皆、ガードの意識がほとんどなくなっている!

 このままでは・・・・・

 「じゃあ、姉さん、もらうわね。」

 「あーん。」

 そういって、アリサちゃんがひょいと俺を持ち上げるとそのまま抱え込んだ。

 ぎゅううううう。

 だ、駄目だってばあああああ!

 顔面全体に感じるマシュマロのように柔らかでありながらゴムまりのように弾力性満点の双丘があああああ。

 俺の理性の鎖を焼き切っちゃうってばあああ。

 「そうか!」

 ユ、ユリカ?

 一体、何を思い付いた?

 「今のアキトって、女の喜びを知ることができるんだ!」

 ・・・・・なんですと?

 「なるほど、興味深いわね。」

 ちょっと待て、ドクターマッド!

 「あら、随分と失礼なことを考えていそうな顔ね?」

 待てい、いつのまに読心術なんて身につけた!?

 「そういう子には、こんなことしちゃいましょ。」



 くちゅ



 はうぅ!?

 未知の衝撃が俺の身体を走る。

 「あっ、反応してる、反応してる♪」

 ユ、ユリカ、おまえ・・・

 「じゃあ、この辺はどうかな?」

 ひゃん!?

 「こっちはどうでしょう?」

 あんっ!?

 次々と身体を走る衝撃に、俺の意識はもみくちゃにされていく。

 このままではとんでもないことになる!

 な、何とか、何とかせねば・・・・

 何とかせねば・・・

 なん・・・






 結論:何ともできませんでした(T-T)






 翌日、こっそりとブリッジから脱出しようとする俺の背後からエリナの声がかかる。

 「アキトくん、お風呂の時間よ。」

 ピククッ。

 風呂と聞いた瞬間に、俺の心に天使の制止と悪魔の囁きが流れる。

 だが、しかし!



 「駄々をこねると倍にしますよ、アキトさん?」



 ルリちゃんの止めに、あっさりと皆と一緒に風呂場に向かう俺の姿があった。






 頼む、風呂場で何があったかは聞かないでくれえぇぇぇぇぇ(魂の叫び)




















 独り言




 ふっ、これでピロ線菌保有者としての証明は問題あるまい!

 でも、これを読んで感想を代理人につけてもらう瞬間を予想したら・・・・・



 「代理人前頭葉シグマユニットに汚染警報発令!」

 「何事なの!」

 「第87タンパク壁が劣化!発熱しています!」

 「第6パイプに異常発生!」

 「タンパク壁の浸食部が増殖しています! 爆発的スピードです!」

 「実験中止!第6パイプを緊急閉鎖!」

 「駄目です! 侵食は壁伝いに進行しています!」

 「ポリゾーム急いで。」

 「発射!」

 「なっ、弾いた!?」

 「パターンピンク!ピロ線菌です!」

 「なんだと、ピロ線菌っ……ピロ線菌の侵入を許したのかっ!?」

 「申し訳ありません。」

 「言い訳はいい。前頭葉を物理閉鎖。シグマユニットを隔離しろ!」

 「了解しました。」

 「まずいぞ、脳幹に近すぎる。」

 「ああ。代理人の漢の浪漫回路に侵入されれば・・・」

 「最悪の場合、代理人のアイデンティティが崩壊するな。」



 などというシーンが思い浮かんだのは内緒です(^-^;


















 ・・・もっとも代理人の漢の浪漫の熱量でピロ線菌が滅却される可能性の方が高いかも(笑)

 少なくとも共生を選択することだけはあり得まい(核爆)


















 > 代理人の反論

 > ないっ!

 はははははっ・・・・・

 管理人が「自分はダーク属性ではない!」とかつて主張していた姿に代理人が重なって見えてしまった(^-^;)

 まあ代理人の死に物狂いの抵抗は置いておいて(←置くな!)、いつものようにSSのタイトル命名をよろしく。







 でも、本当に鋼の城というハンドルは○○○○運命だったりする?(○には貴方の思いついた言葉を入れて良し)

 

 

 

絶対零度の感想

 

 

 

(¬¬)

 

 

(¬¬)

 

 

(¬¬)

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふっ。(哀れむように)

 

 

 

 

 

つーかラピスはまだ年齢一桁でしょーが。(爆)