「…と、いうわけなんです。」

 テッサが先程まであった事を事細かに話す。
                    ・・・
 「フムフム、それはそれはご苦労様です、大佐殿。」

 かなめが茶化すように仰々しく労い、
                 ・・・
 「それであたしに何のようですか?軍曹殿?」


 笑顔のまま宗介に視線を向ける。

 「<ミスリル>から迎えが来るまでここで休ませてもらいたいんです。

 迷惑はかけませんから。」

 宗介に代わってテッサが答える。テッサには他意の無い行動だが、その行動はかなめを刺激するには十分だった。

 「それなら、あなたたちも嘘をつくの止めなさいよ!

 そもそも。あなたみたいに幼い女の子が艦長?嘘をつくならもう少しましな嘘をつきなさいよ!!」

 その言葉にテッサがムッとする。確かに平均的な潜水艦の艦長の年齢から見ればテッサはかなり若い。

 それに自分の容姿はかなめに較べれば少々若い印象があるのは自覚している。

 しかし、自分とそう変わらない年齢の人に『幼い』と言われるのは心外だった。

 言い返そうとするテッサより早く口を開いたのは宗介だった。

 「千鳥、大佐殿が艦長なのは事実だ。」

 「あたしはアンタたちがどういう関係だろうと………どういう趣味だろうと構わないけど、

 こうして匿ってもらおうって人に対して嘘をつくのはひどいんじゃない!?」

 「俺と大佐の関係と言っても主従関係しかない。それに軍事行動は趣味ではな……」

 「しゅ、主従関係!!?」

 「い、いえあの……」

 テッサが訂正をしようとするが元々引っ込み思案の気があるテッサ。ハイテンションのかなめに敵う可能性すらなかった。

 「やっぱり、アンタたちはそういう関係だったのね!!」

 「そ、そういう関係とは?」

 宗介が愚かにも問い返す。

 かなめの剣幕に宗介もテッサも額に汗を浮かべている。

 「SMに決まってるじゃない!!あんたは初めの頃から自虐的でやたら攻撃的だったけど、やっぱりそういう趣味があったのね!!」

 「前にも思ったのだがそのエスエムというモノは何なのだ?」

 「それは、一方が………」

 かなめはよほど興奮しているのか、恥じらいも無く細部にわたってSMに関して宗介に説明していく。

 「千鳥、君は勘違いしている。」

 「この期に及んであたしに嘘をつく気?あの現場を見た限りあたしが説明したとおりの状況だったじゃない!!」

 「あれは、タクマが逃げないように手錠がかけてあっただけだ。それに実行したのは大佐殿で……」

 「サ、サガラさん!?」

 冷静なら人に罪を着せるようなことは決して言わないのだが、宗介はかなり混乱しているようだ。

 「ふ〜ん、立場が悪くなったら全部女のせいにするなんて最低ね。」

 かなめが蔑むような目つきで宗介を見据える。

 「む……」

 「だからアンタは………」

 かなめの猛攻撃は続いていく。狼狽している宗介には止めようがないのは火を見るよりも明らかだった。。

 「テンカワさんも何か言って下さい。」

 あまりの攻撃に全く参加出来ないテッサが涙目で助けを求める。

 「いや、夫婦喧嘩は犬も食わないって言うし。それにかなめちゃんは優しいからきっと匿ってくれるよ。」

 「そ、そうでしょうか?」

 テッサの目にはかなめが優しいとは全く感じられない。どちらかと言うと凶暴、粗野というイメージのほうが似合うような気がする。
 
 「そうだよ。現に邪魔だったら追い出せばいいのにこうして匿ってくれてる。」

 そう言ってニコニコとかなめと宗介の喧嘩を懐かしそうに眺めている。

 「クルツ達はあとどれくらいで着くの?」

 「連絡してから一時間ほど経ってますから、あと三時間ほどでしょうか。」

 テッサは時計を確認する。

 「なら、それまでゆっくり休んだらいいよ。

 敵の情報網がどれほどのものか分からないけど、タクマを捕らえていた研究所を探すのに十日もかかったんだ。

 たぶん、ここがばれるのには三時間以上はかかると思うよ。」

 「いえ、私は大丈夫です。こう見えても不眠不休には結構慣れてるんですよ。」

 「そう?ならいいけど。だけど無理しないように辛くなったら休んでもいいからね。」

 ほのぼのとした雰囲気を醸し出す二人。

 その横では夜叉のような形相で攻めるかなめとそれにタジタジの宗介の一方的な痴話(?)喧嘩が続いていた。









「With Mithril」

〜第四話〜









 「ン……ここは。」

 「あ、気がつきましたね。」

 それから十分後、宗介の一撃をくらって気絶していたタクマが目を覚ました。

 その気絶させた当人である宗介は未だかなめに一方的に問い詰められている。

 「さっきまで居たマンションとは違いますね。」

 タクマがそこらをキョロキョロ見ながら聞く。

 「君の友達に押しかけられたからね。」

 「だから言ったでしょう。どこに逃げようとも無駄だって。」

 タクマは小馬鹿にしたように笑う。

 「ここがさっきの場所からどれだけ離れてるか知りませんがどうせ三十分も持ちませんよ。

 ウチの情報部はそれなりに優秀なんですから。」

 タクマは饒舌に語り出す。

 しかしこの事からも彼が生粋の軍人でないことが分かる。

 そもそも敵を前にして饒舌に語る事自体、軍人にあってはならない行為なのだ。

 現にタクマが語った内容からタクマの組織はタクマの監視を発信機に頼っているのが分かった。

 「本当に今ならまだ遅くないですよ。僕を解放するのは。」

 「心配してくれるのは嬉しいけど、それは出来ないよ。」

 アキトがにっこりと笑う。

 「な、僕は心配なんてしてませんよ。敵であるあなた達が死ぬことは僕にとってプラスですからね。

 ただ、死ぬとき返り血が僕の服にかかるかもしれないじゃないですか。それが嫌なだけですよ。」

 取り繕うように早口でタクマは答える。

 その様子にアキトは思わず笑みを浮かべてしまう。

 その笑顔を見たタクマはそっぽを向くが、その先には額にこれでもかというほど汗を浮かべた宗介の顔があった。

 「話は終わったようだな。」

 宗介がタクマの肩をつかむ。

 「何ですか?」

 「お前に聞くぞ。お前をベッドに拘束したのは誰だ?」

 今にも懐から銃を抜かんと、言う気迫で宗介が問い掛ける。

 「さあ?僕は知りませんよ、気を失っていましたから。ただ僕を殴ったのはあなたでしたよね?」

 その言葉は宗介は完全に凍りついた。

 少し前の宗介ならこの台詞を聞いてもなんとも思わなかっただろうが、いまではSMが何たるかを知っているのだ。

 「ふ〜ん、ソースケ?アンタの言ってることと全然違う気がするけど?」

 静かな声でかなめが問い掛ける。しかし、その視線は一瞬で人を殺せそうなほど禍々しい。

 「ご、誤解するな、千鳥。タクマがうるさかったから黙らせるために……」

 「ふ〜ん、嫌がって泣き叫ぶタクマ君を黙らせるために殴りつけたのね?」

 「それは……」

 そのやり取りを見ながらタクマはニヤニヤと笑っている。

 「会話の内容に気づいていたのか?」

 「ええ、隣であんなに大声で話していては。

 内容もなかなか想像力にあふれていて面白いですし。」

 そう言いながらコントを見るように騒ぐ二人を見ている。さすがに声を出して笑いはしないが。

 「テッサちゃん、なんか気絶前と気絶後で性格が変わったように見えるんだけど。」

  「彼は薬のせいで情緒不安定なんです。もしかすると精神分裂症になっているのかもしれません。」


 「?何をひそひそ話をしているんですか?」

 「いえ、気にしないでください。」

 「そうそう。」

 慌てて手を前で振る二人。見るからに怪しい。

 「……怪しいですね。」

 すこし機嫌悪そうにむくれ、じと目で二人を睨む。

 「そうそう、タクマには家族は何人いますか?」

 「家族……ですか?」

 「そうです。ちなみに私は兄が一人います。

 アキトさんには何人いますか?」

 さりげなくアキトの事を探る。アキトの過去はゲリラに参加する二年ほど前よりも過去になるとミスリルの情報網でも分からないのだ。

 テッサが気になるのも仕方の無いことだった。

 「え、俺?俺には……」

 「僕には姉がいます!!」

 タクマがアキトを睨みつけながら邪魔をするように言う。テッサがアキトに問いかけたのが気に入らなかったようだ。

 アキトが戸惑う横で、テッサはがっかりしながらも話題が変えられたことにホッとしていた。

 「どんな人ですか?」

 「……優しくて暖かくてそして綺麗で僕が唯一心を許せる人です。」

 自分の思い出に心が奪われているのだろう、少し顔を上げてポーッとしている。

 「いい人みたいですね。」

 テッサはそのような状態になったタクマをかなめ達を眺めるアキトのように懐かしそうに眺めていた。
 


 
 
 「……やっと見つかったわ。」

 セイナはフッと息を吐きながらかなめの部屋を隣のマンションの部屋――宗介の部屋から見つめていた。

 「灯台下暗しとはこのことね。こんなに近かったなんて。」

 「と言うよりお前が下手なプライドを見せなかったらもっと早く見つかっただろうが。」

 隣にいる男――タケナカが嫌味ったらしく言う。

 タケナカは最初近所の交番に尋ねようと言ったのだがセイナが猛反対したのだった。

 もし、聞いていればすぐに見つかっただろう。

 「何言ってるのよ!普通、民間人の所に隠れているなんて思わないわよ!」

 「へいへい。

 さて、どうやって攻めるんだ?下手に攻めたんじゃ返り討ちだぜ?」

 「……『千鳥かなめ』はただの民間人だったわよね?」

 セイナはあごに人差し指を持っていって少し考える。

 「ああ。」

 「そして、逃げこんでるのは正体不明の偽善者。

 ……襲撃をかけるわ。」

 「は?」

 タケナカは理解できないというように間抜けな声を出す。

 「だから、襲撃をかけて奴らを外に引っ張り出すの。いくら二対三で勝てても二対十では勝てない。

 それよりも数が多かったらなおさらね。その上、足手まといが二人は居るのよ。いけるわ。」

 「最初に襲撃かける奴らは死ぬぞ!!」

 「仕方ないわ。それ以外の方法があるの?」

 「そ、それは。」

 このような市街地ではASは使えない。別に住民の被害を考えているわけではない。自衛隊の対応が早いのだ。

 狙撃などでは誤ってタクマを撃ってしまうかもしれない。そうなっては元も子もない。その上篭城されては厄介だ。

 確かに襲撃して外に追い出せばこちらが確実に有利だろう。

 沈黙は二分ほど続いた。

 「……いい案は無い様ね。

 監視班以外、私のところに集合して。」

 セイナが無線機に呼びかける。その次の瞬間、無線機が応答するがそれは彼女の思っていたものとは大きくかけ離れたものだった。

 『こちら監視班。敵が外に出ました。』

 「本当に!?」

 『はい。タクマ他五名。今、ベランダより逃亡中。緊張感は見えないので気づかれたわけではないと思います。』

 「命令変更!全員、現状維持。」

 その報告を聞いたセイナは思わず笑みを浮かべた。

 「第一班、第二班。いつでも襲撃できるように。私もすぐにそこに行く。」





 その数分前。

 「ここってホンッとうに大丈夫なんでしょうね?」

 宗介を攻めるのに飽きたのか、かなめが唐突にテッサに聞いてきた。

 かなめの正面には真っ白な灰のようになった宗介が机に突っ伏している。

 「大丈夫だと思います。部屋からはあなたに関する全てのものを処分してきましたから。」

 「処分ね……まぁ、いいけど。

 もし良かったらもう少し安全な所にいかない?」

 宗介を一睨みしてからかなめが提案する。

 「安全な所ですか?」

 「そ。近くに学校があるんだけど、そこに行かない?」

 「だめだよ、かなめちゃん。

 陣代高校のものは処分して来れなかったし、すぐに調べがつくよ。」

 「陣代高校じゃないわよ。すぐに近くに伏見台学園って制服が可愛くない学校があるの。

 そこなら、私たちに関係ないから足も着かないと思うわよ?」

 アキトはすぐに賛同した。そもそもこの部屋も陣代高校同様、すぐにばれる可能性が高かったのだ。

 彼らが陣代高校の生徒と言うのは部屋にある制服などを見れば一目瞭然だしそこから近辺に住んでいる生徒を割り出される恐れがある。

 更に運悪くここら辺に住んでいる陣代高校の生徒はあまり多くなかった。




 「………宗介。」

 アキトたちは閑静な街を走っていた。かなめの部屋から離れてから三分ほど経っている。

 「お前も感じたのか。」

 「ああ、殺気を感じる。どうやら発見されたようだ。」

 「どうする?」

 「敵の目的はタクマだ。非戦闘員のテッサちゃんとかなめちゃんを頼む。俺はタクマを連れて逃げる。」

 「了解。」

 アキトが前を歩くタクマの腕をとるとそのまま、全力で走り出す。

 「千鳥、大佐殿。こっちです。」

 「え?え?」

 「一体なんなのよ!?」

 かなめとテッサは宗介に手を引っ張られて十字路を左折する。





 『二手に分かれました。』

 「タクマがいる方だけでいいわ。敵が足を止めたら第一班襲撃、その後時間差で第二班が襲撃。判断はおのおのリーダーに任せる。」

 『はい』

 「二手に分かれたのか。」

 タケナカが確認のために聞く。

 「そのようね。私たちの戦力の分散を狙ったんだろうけど、無駄な足掻きだわ。私たちの狙いはタクマだけだもの。」

 「それどころかタクマの奪還も簡単になったしな。」

 そう言うと、二人は闇夜に向かって駆け出した。





 「……ここかな。」

 宗介たちと別れてから二十分後、アキトの目の前には陣代高校よりも少し古く格式の高そうな高校がそびえ立っていた。

 アキトの横ではタクマが肩で息をしている。いくらアキトが本気で走っていなかったとは言ってもその持久力はかなりのものだった。

 「さて、どこから忍び込むかな……」

 そうは言ったもののその必要がないことは良く分かっていた。

 少し前から十を超える気配がアキト達の周りを完全に囲んでいたのだ。

 その囲いもアキトたちが足を止めたと同時に狭まってきている。

 (……何かいい方法はないか?

 門を壊しても目の前には運動場。こんなに見晴らしが良くては狙撃をしてくれと言っているようなものだしな。

 いや、もし陣代高校と作りが似ているならば壁沿いに木が植えてあるはずだ。それを利用して校舎には近づけないかな?

 どちらにしろこのままここに居ては格好の餌食だ。門を壊してあとは運に任せる。)

 そう決めると同時に腰のホルスターから、昔から愛用の六連リボルバーを抜く。

  ドギュゥゥン ギィィィン

 鍵を撃ち抜く。よほど古くなってたのか鍵はあっけなく壊れた。

 門を開けると同時にタクマの腕を引っ張りながら右に向かって走る。

 門の両側には予想どうり茂みと木が生えていた。

 そこに転がるように滑り込む。銃声に触発されたのだろう、先程までアキトの居た位置には銃弾が叩き込まれていた。

 「な……」

 今になってタクマは味方の存在に気づいたようだ。驚いたように銃痕の残る地面を見ている。

 (敵は屋上に三人、壁の向こうに四人、向こうの茂みに二人、そして、)

  ドギュゥン ドギュゥゥン ドギュゥン ドギュゥゥン ドギュゥゥン

 「ぐあっ!」「うぐ!」

 (この茂みに二人。)

 アキトは正確に残った弾全弾を近くに居た敵兵に放つ。

 (残り九人か、きついな。鍵はタクマか。)

 手馴れた操作で弾をローディングする。

 タクマをつれて校舎に向かって走り出すが、その足はすぐに止まった。

 タクマが手近な木にしがみついたのだ。

 「もうこれ以上抵抗しても無駄ですよ。」

 足が止まったのをいい事にアキトに銃弾が向かってくる。

 「くっ。」

 アキトはタクマを盾にするが敵はじりじりと包囲網を狭めてくる。

 「だから言ったでしょう。どんなにあがいても無駄なんですよ。」

 タクマの言葉に合わせるかのごとく運動場側から女が一人、アキトの居る茂みの十メートルほど手前まで歩いてきた。

 「姉さん!!」

 その女性を視認したタクマが叫ぶ。

 「タクマ、あと少しの辛抱だからね。」

 女性――セイナはタクマに微笑みかける。

 「うん。」

 セイナの視線がアキトに移動する。

 「さて、ここまでよ。タクマを渡しなさい。今ならあなたの命までは奪いはしないわ。」

 「そう言いながら、渡したと同時に殺すんだろ。」

 言うと同時にアキトはタクマの頭に銃を突きつける。

 「さて、どうする?お前らが俺を殺す前に俺はタクマを殺すことが出来る。」

 アキトが二手に分かれようといったのにはテッサとかなめの安全の確保とコノ手を使うのが目的だった。

 戦場を知っているテッサはともかく戦場を知らないかなめにコノ手を使うのを見せたくなかったのだ。

 「く。」

 セイナがアキトを睨みつける。

 そのまま両者はピクリとも動かなかった。





 アキト達から分かれてから十分後、宗介たちは住宅街を走っていた。

 (はぁ、あたしったら何をしてるんだろ?)

 マンションに居る間、宗介を怒鳴りっぱなしだった自分にかなめは嫌気がさしていた。

 (いくら興奮してたからといってもあんな台詞を恥かしげも無く言うなんて……)

 マンションでの宗介とのやり取りを思い出してかなめの顔が真っ赤になる。

 (うわぁぁぁ、あんなことまで言ってるし!これじゃあ猪突妄想女じゃない!!

 こんな女じゃソースケも嫌がるわよね。現に大佐らしい女の子の手はひっぱってるのにあたしのことは見てもくれないし。)

 宗介がテッサの腕をとってるのはテッサが破滅的な運動オンチだからだし、かなめの事を見ないのは周囲に気を巡らしているからだ。

 しかし、そんなことの分からないかなめにとってはかなり辛い状態だった。

 「……よし。」

 宗介がそういうと同時に徒歩に近い速度まで速度を緩める。

 立ち止まらないのは足をつらせない為である。

 「どうしたの?」

 かなめはなるべく声を和らげて問いかける。そうしないと勢いに任せて何を言い出すかわからないからだ。

 宗介は立ち止まってテッサに休息をとらせる。

 宗介に手を引かれていたテッサはしゃべることはおろか思考すらまともには働かないぐらい疲労していた。

 それに対してかなめは多少疲れは見えるがもうすでに息は整っている。

 「敵が居たのだ。奴らの狙いはタクマだ。君達を危険にさらさないためには、ああするしかなかった。」

 宗介もアキトがより危険になるのは承知している。

 しかし、かなめとテッサを戦闘に巻き込むわけには行かない。そしてこちらの方が重要度が大きかったのだ。

 「しかし、それすらもお前はできてねえぜ。」

 宗介たちの前方から声がかかる。

 宗介たちの視線がそこに釘付けになる。

 そこに現れたのは宗介とかなめには忘れることの出来ない人物だった。

 「何故お前が生きている、ガウルン!!」(富○見ファン○ジア文庫:戦うボー○・ミーツ・ガ○ル参照)

 宗介は銃を抜く。

 「おいおい、挨拶だな。俺は死んだなんざ一度も言った覚えはねぇぜ。」

 両手を挙げて茶化すようにガウルンは答える。

 「今回もお前さんには用はねぇんだ、あるのは後ろのお二人さんだけなんでな。」

 と、ガウルンは懐に手を伸ばす。それと同時に宗介が銃口をガウルンに向ける。

  ドンッ

 しかし、吹っ飛んだのは宗介だった。二人の少女から悲鳴が発せられる。

 宗介が引き金を引く瞬間――最も宗介がガウルンに集中しているとき、横の路地から男が飛び出して宗介の腹部に掌低を放ったのだ。
 
 言うだけなら大した事無い様に聞こえるが、これは一流以上の武術の能力がないと出来ない事だ。

 男が宗介に近づく。宗介に止めを刺すのだろう。宗介は衝撃に体が動かないのか反応すら出来ていない。

 しかし、その魔手は宗介に当たる寸前に止まった。

 それを止めたのは二人の少女ではなく、ガウルンだった。

 「何故止める?」

 「俺はそいつが苦しむ様が好きなんだよ。こんなにも苦しむ要素が多い時に殺すなんてもったいねぇじゃねぇか。

 さて、こいつらを連れて行こうぜ。」

 二人の男が少女達に迫っていく。そこで宗介の意識は消え去った。







 後書き

  チャッ

 マ:……何か言い残すことはある?

 作:あうぅ、すあまさん、AKF-11さん、v&wさん、語部悠真さん、谷城拓斗さん、ノバさん感想ありがとうございました。

   とても嬉しいです!!あと、タイトルが『With Mithril』に戻りました(汗)

   なんと、『ENCYCLOPEDIA』(設定資料集のようなもの)に載っていました(爆)皆さんには大変ご迷惑おかけしましたm(_ _)m

 マ:その読者様にまで誓ったのにね。

   さて、もう言い残すことも無い様だし、じゃあね。

  ドウン ドウン ドウン

 作:あ、が……バタッ

 マ:ふっ、悪即斬ね。

 作:いや、それは違うと思う。

 マ:げ、アンタ。頭が吹っ飛んだ状態で生き返るんじゃないわよ!

   気持ち悪いじゃない!!

 作:なら、毒殺ぐらいにしとけばよかったのに。

 マ:毒殺はなんか悪者っぽいじゃない。

 作:ま、そうだけど。……考えてみればなんで私は殺されにゃならんのだ!?

 マ:私が出なかったじゃない。読者様に誓ったくせに。

 作:いやいや、それは守れている!!何故なら後書きにちゃんと出てるじゃないかぁ!!!

   本編に出すとは……

  ドウン ドウン ドウン ドウン ドウン ドウン ドギャァァァアアン

 マ:コレで生き返れないわね。

   作者も完全に死んだことだし、今度はもう少し早く出す予定です(できるかな?)!!ではまた〜!!




 

代理人の感想

おお、ここでガウルン再登場ですか。

このタイミングで出てくるってことは連中と無関係とも思えないし・・・・・・・どうなる事やらねぇ。