機動戦艦ナデシコ

英雄無き世界にて…

 

整備員達、ウリバタケ・セイヤ視点

 

「ふぅい、なんとか浮けるか…」

 俺、ウリバタケ・セイヤは包囲線突破の時の被害の応急修理をするために艦内を回っていた。

 全身汗と油まみれの姿だが、誰も不思議がる人は居ない。

「ディストーションフィールドも、通常の30%の出力ですが使えるようになりました。」

 となりの若い整備員が、俺にそう報告した。

「カタパルトも修理を完了。と言ってもマニュアルで発着出来るだけですけど…」

 その隣の中年の整備員が、続けて報告した。

「大気圏を突破するのは今の応急処理じゃ無理だな… さぁ、これからどうなることやら…」

 俺は、窓から、火星の青い空を見上げた。

 故郷の星とまるで変わらない空がそこにあるはずであった。

 

 ブリッジ、今後の会議中。フクベ・ジン視点

 

「さぁて、どうします?」

 兼職で副長をやっているアオイ・ジュンがそう質問する。

 しかし、答える者は誰も居ない。

「およそ、約3万の木星蜥蜴に囲まれていては、出る案も出ぬか…」

 ついそう一人ごとを言ってしまう。

 ちらりと、外をみる。

 大空を埋め尽くす、黒いシルエットが無数に蠢いていた。

 しかもそれは、まだまだ増え続けている。

 レーダーなど見なくともその位は解る速度で、だ。

 まだ発見はされていない様だが… このままでは見つかるのも時間の問題だな…

 チューリップも何個か、こちらへ向かって来ているらしいからな。

「とにかく、まともに艦を修理出来る場所を探しましょう。」

 艦長が、そう提案した。

「それでしたら、ひとつ心当たりが有りますが…」

 プロスが口を出した。

「それは、どういう心当たりかね?」

 私は、そう質問する。

「此処より、500kmほど先の所にネルガルの研究施設があります。そこは元は戦艦を作っていたために、ひょっとしたら艦の修理が出来るかもしれません。“ひょっと”とは、なにぶん昔の話ですので…」

 そう、プロスは言った。皆は考え込む。

 だが、それ以外に選択肢が無い事が決断に皆を踏み切らせた。

「これより、「ナデシコ」は、その研究施設に向かいます。」

「まぁ、待て待て艦長。」

 私が、艦長の指示に意見を挟む。

「ご存知の通り、我々は現在木星蜥蜴に包囲されている。それに、何分昔の話だ。悪ければそこは、占領された後だと言うこともある。今の状況で待ち伏せされてはたまらんだろう。まずはエステ隊に先行偵察をさせるべきでは無いのかな?」

 

 外壁、犬河照一視点

 

「ふーい。疲れる疲れる。」

 俺は、壁に開いた穴を塞ぐ手伝いをしていた。

 隣には、ガイもいる。

「まったく腰がいたいな。」

 ガイが、そう言った。

「よりによって、ラペリングしながらセメント担いで穴を補修してるんだから疲れる。」

 俺は、高度100mの高さで、そう言った。

「所で、犬河。前から気になってたんだが、この艦に何処かで聞いたような人がいないか?」

「いっぱい居るさ、声優もいれば、“英雄”もいるし…」

「“英雄”?」

 ガイは、誰だ? と言う様な顔を浮かべた。

「ん、ああ、フクベ提督の事さ、テレビでやってただろ。宇宙連合軍で、初めてチューリップを撃墜した“英雄”って…」

 どうやら、そのニュースを思い出したらしく、ガイは、ああと言う顔をした。

「でも、それで火星のユートピアコロニーにチューリップが落ちて、そこにいた民間人は全滅したんだったよな…」

 ガイは、暗い口調で言った。

「仕方ないだろ。あの人だって故意にやったわけじゃないし、それに“英雄”と“虐殺者”なんて戦争じゃ紙一重だって言うし… まぁ、これも全部俺が“他人”だから言えることだけどな…」

 自分が知っている人が死ねば、誰だって悲しむだろう。

 俺が、第3者らしく意見を言えるのは、俺が第3者だからだ。

 でなければ、仕方ないなど使えない。

「まぁ、多分無理矢理“英雄”に祭り上げられた人だろうし、一緒に居ても悪い人には見えないし… 別に憎悪の目で見る事も、“英雄”を見る目で見る事もしなくて良いだろうさ。ちなみに俺は年長者を見る目で見ているが…」

「ああ、そうだな犬河。」

 それに俺は、あの人に好意を抱いた事はあるが、悪意を抱いたことは無い。

 相当特別な理由がないとあの人に悪意の視線を向ける事は誰も出来ないだろう。

「よっと、これで此処は終わりだな。」

「おお、思ったより速く出来たな!」

 ガイと共に、穴を塞いだ壁を見て俺たちは感嘆した。

「よ〜し、次の箇所へ行くぞ!」

 威勢良く声を上げて、俺とガイは移動した。

 

 エステバリス先行偵察中機内、スバル・リョーコ視点

 

「だぁ、まったく! これだから砲戦フレームってのは嫌なんだ! かったる過ぎる!」

 俺は、返事の帰ってこない愚痴を言う。

 まぁ、これはジャンケンに負けた結果なのだが…

『ぼやかない。ぼやかない。』

『重い方が良い時もある。相撲とか…』

「やる気はねぇ!」

 三人は、何時もの調子で白い陸路を走っていた。

『む!』

 ウインドウの向こうで、急にイズミがシリアスになる。

『ひぇぇ、いきなり真面目モードのイズミにならないで〜』

 普段は、共感しないのだが、この時だけは共感した。

「ま、真面目に頼む。」

『なにかいる…』

 どうやら、まったく聞こえてないらしい。

『え、何処何処? レーダーには何も反応は無いけど…』

 俺は、レーダーに目を向ける。確かに三人のエステバリス以外には、何も機影は無かった。

『来る…』

「なにが…」

 質問をしようとした時、いきなり目の前の地面に閃光が走った。

『くぅ!』

『わぁ!』

「のわぁ!」

 下は、雪でチラチラと白い粉末が舞う。

「な、なにがぁ!」

 一瞬のパニック。だが、状況をすぐ把握しようとする。

「攻撃ぃ! どこから!」

『リョーコ! 下!』

「え…」

 いきなり、機体下の地面が割れた。川が通っていたのか、重量で一気に機体が地面に陥没する。

「は!」

 そして、エステバリスのカメラに、木星蜥蜴の無人兵器が写った。

『う!』

『キャ。』

 不意を突かれて弾き飛ばされる2機のエステバリス。

 そして、俺は何とか自分のエステバリスを立ち上がらせようとする。

 だが、機体重量によって地面が次々と陥没して行き、足を取られて、上手く立ち上がれない。

「くそったれぇ! だから、砲戦フレームってのは嫌いなんだ!」

 ガキン

 物音がした。

 条件反射でモニターを見る。

 無人兵器がドアップで写っていた。

 取り付かれた!

 ドアップの無人兵器の、人間で言うなら口の部分が開く。

 そこから現れたのは、甲高い音を上げて回転するドリルだった。

「う… あ…」

 甲高い音を上げるドリルが、モニターの中で、徐々に大きくなっていく。

 子供の様な武器だが、それは人を肉塊に変えるには造作も無い力を持っている。

 恐怖と言う物を知る人間ならば、この状況では恐怖するだろう。

 そして、ここに居るのはその類の人間であった。

「い… いやだ… 死にたくない…」

 俺は、視野が霞むのを自覚していた。

「た、助けてくれ… イズミぃ、ヒカルぅ…」

 日常ならば情け無いと思っていた台詞を吐いていた。

「ええい、もう、誰でもいいから助けてくれぇ!」

『御用件。』

『確かに承りました〜』

 バキャ

 両サイドからモニターに写る二つの機械の腕。

 その腕は、無人兵器の装甲を破り機能を沈黙させた。

「は、はぁ…」

 助かったことを知り、俺は肩の力を抜いた。

 怖かった。

 それが、正直な感想である。

 俺は、自分が虐げていた人間と自分を重ねていた。

 なんだよ、俺、馬鹿にしていた奴らとあんまりかわんねぇんだなぁ。

 俺は、何度か深呼吸をした。

『えへへ、一個貸しだね。』

「勝手にしてくれよ、マジで。」

 ヒカルの通信にぶっきらぼうに答えると、俺は、異様な眠気に襲われた。

『ちょっと、リョーコ。ウトウトしちゃだめじゃない。』

 イズミの通信で微かに意識を現実に引き戻せた。

「ああ、そうだよな… まだ終わってねぇもんな。」

 俺は、仕切りなおしとばかりに機体を立ち上がらせる。

「ん? なんだあの影…」

 ふと、降雪の向こうに黒いシルエットが見えた。

 それも、かなり大きい。

『なんだろうね、アレ。』

『取りあえずは、「ナデシコ」に連絡を入れときましょう。』

 

 ブリッジ、アオイ・ジュン視点

 

「「クロッカス」だと!」

 ゴートさんが、詳しい報告を聞いて、大声をあげた。

 「クロッカス」、確か月軌道でチューリップに飲まれて消えた護衛艦の事だ。

 それが、何故火星に…

 そう言う疑問は、誰でも思うだろう。

「これは、また… 寄り道していく価値は、ありそうな不思議ですねぇ。」

 プロスさんが、そう言う。

 皆そう思っているだろう。

「ま、とにかく連合軍の艦ならば、生存者が居るかも知れん。艦長。艦を、「クロッカス」に寄せたまえ。まずは救助が先だろう…」

 フクベ提督が、尤もな意見を言う。

「あ、そうですね。提督。では、「ナデシコ」を「クロッカス」に寄せてください。」

 艦長が、ハキハキした声で、そう言った。

「悪いけど艦長。もうとっくにやってるわ。」

「え?」

 ハルカさん… 人が悪いですよ…

 

 格納庫、犬河照一視点。

 

「う〜、疲れた疲れた… っと、提督。外部の穴を塞ぐ修理は終了しました。」

 俺は、穴を塞ぐ作業を全部終えて、ラペリングの道具とセメントを置きに格納庫へ来たが、偶然にも提督と鉢合わせしていた。

「何か、御用ですか?」

 つい直立姿勢で、敬語を必要以上に使ってしまう。

「ん、まぁ、用って程でもないのだが…」

「なぁに、ただの生存者調べに行くだけだ。」

 居たんですか、ゴートさん。

「生存者って、どこのです?」

 それくらい聞いてもいいだろうと思い、聞いた。

「月軌道上で、行方不明になった護衛艦「クロッカス」のだ…」

「月軌道って、え!?」

 そんなのが、なんで火星にあるんだ?

「まぁ、お前の疑問は大体わかるぞ。それを調べに行くのも兼ねている。来るか?」

 そうゴートさんに提案された。

「いいんですか? ついて行っても。」

 個人的には、大変興味のあることなので、ついて行きたいが…

「なぁにぃ、かまわんだろ。5人もパイロットが他に居るのだし…」

「じゃ、じゃぁ行きます!」

 俺は、子供の様な笑みを浮かべて、服を高速で着替えた。

「あいも変わらず早いな…」

「ギネスもビックリだな、確かに…」

 

 「クロッカス」艦内、犬河照一視点

 

「なんだか… 到底、つい半年前に行方不明になった艦とは思えませんね…」

 俺は、艦内をみて、そういう感想を抱いた。

「ああ、軽く2・3年は、放置されていないとこうはならん。」

 ゴートさんの、意見は尤もだ。

 いかに、氷河の上に置き去りにされていた戦艦でも半年やそこらで、こうは腐敗しないだろう。

 ぐにゅ

 足に何かを踏んだような感覚。

 おそるおそる足を上げて、下を見る。

「ほ、なんだ… 暖房用の油圧パイプにひびが入って、そこから灯油が漏れていたのか…」

 俺は、足をまた大地に戻した。

「む、犬河! 伏せろ!」

 ゴートさんの叫び声が聞こえた。

 俺は、提督の背中を押し、手を前に渡して体を支えながら、一緒に床に倒れこむ。

 ぎゅぉいいん

 赤い金属の目が見えた。そして、黄色い装甲。

「木星蜥蜴か…」

 パキュ、パキュ、パキュ

 ゴートさんが、ブラスターを撃つ。

 次々と、木星蜥蜴(バッタ)の装甲に穴があく。

 だが、敵はまだ動く。

 一閃。

「うぉ!」

 ゴートさんの手から、ブラスターが弾け飛んだ。

 バッタがチャンスとばかりに飛び掛る。

 パキュン

 俺のこめかみを掠り、伸びる閃光。

 その閃光は、バッタの頭に当たるであろう部分を貫いていた。

「ふぅい、若造。すまん、掠ったか? 昔の様にはいかんものでな。」

 そういって、ブラスターを片手に起き上がるフクベ提督。

「いい腕です。まだまだ現役ですよ。」

 俺は、お世辞でなくそう言った。

「全くだな。」

 ゴートさんも同意した。

「世辞は二人ともよしてくれ。ふむ、そこが艦橋の様だな…」

 正面にある扉を見て、フクベ提督が言った。

 扉に、接近するとROCKの文字が灯っていた。

「パスワードが必要らしいな…」

 本気で悩むゴートさん。

「こういうのは… まずは、適当にやってみるのがいいんですよ。」

 俺は、よくRPGゲームで言っていた独り言をつぶやく。

 俺が、代表して端末に向かった。

「なんで、日本語入力なんだ?」

 俺は、備え付けのキーボードを見て思う。

とりあえず“パスワード”と入力した。

「おいおい、幾らなんでもそれで…」

 ぷしゅー

 扉が開いた。

「上手くいくモンですね…」

 俺以外のお二人は、頭を抱えていたのだった。

 

「ほう、見た目はまだ新しいではないか…」

 艦橋へ入ると、所々で光るコンソールが俺たちを迎えてくれた。

 フクベ提督は、中央辺りの座席へ行くと、端末を操作した。

「動く… か…」

 キュゥゥゥゥゥゥウウン…

 短い機械音。

 それっきりウンともスンとも言わなくなった。

「ふむ、どうやら排気口に氷が付いている様だな、スマンが二人で除去してくれんか?」

 俺と、ゴートさんは、提督の言うことを聞く事にしたのだった。

「そろそろ見つかるか…」

 と、言う声は、俺たちが艦橋を出た後に発せられた。

 

「こんなもんで良いでしょう。」

 俺は、氷をエステバリス(人力じゃ無理なので、借りてきた)で叩き壊した排気口を見せてそう言った。

「ウム、そんなもんだ。」

「しかし、ホントに報告はあんなもんで良かったんですか?」

 俺は、先に提出した報告書の内容を思い出して、言った。

 たしか、生存者の存在は認められず不明。何故ここ、火星にあるのかも不明。記録類は、全て使い物にならなかったため、どうして行方不明になったのかも不明。

 まぁ、早い話が全部不明と言う事だ。

「それ以外に書きようが無いだろう。」

 ゴートさんの台詞に納得する。

『終わったか…』

 「クロッカス」から通信が入る。

「ああ、はい。終わりましたけど…」

 俺は、そう返答した。

『そうか… では、浮かせてみるぞ。退避しろ。』

 一方的だな…

 そう思いつつ、俺はゴートさんを連れて「ナデシコ」の機体収納ハッチへエステバリスを向かわせた。

 

 ブリッジ、ウインドウ表示、「視点はルリ」(って、オモイカネ!)

 

 「クロッカス」が、浮き上がります。

「ほぉ、いいですね。まだまだ使えそうじゃないですか。」

 プロスさんが、軋みも無く浮き上がる「クロッカス」を見て、そう言います。

 そして、完全に大地から足を離した「クロッカス」は、艦首をこちら、「ナデシコ」へ向けて―――

 発砲しました。

「え?」

 ドォン、ドン、ドォン

 着弾は、「ナデシコ」手前の地面。

 全員に戸惑いの顔が浮かびます。

『艦長。「ナデシコ」を、前方のチューリップへ突入させろ。』

 いきなり通信ウインドウに出たのは、フクベ提督でした。

『繰り返す。「ナデシコ」を前方のチューリップへ突入させろ。従わない場合、今度は命中させる。』

「そんな、突入した「クロッカス」内部には何も無いって報告じゃないですか!」

 艦長が、血相を変えて抗議します。

 普通に考えれば、「ナデシコ」も同じ結果が待っていると考えます。

「艦長! 見つけられました! 敵艦発砲!」

 レーダーを眺めていたメグミさんが、叫びます。

「フィールドは!」

『だめだ。にわか修理で出力が3割しかでねぇ。』

 ウリバタケさんが、突如会話に割り込んできて言いました。

「それに、大気中じゃぁ、相転移エンジンが100%を発揮できません。」

 皆さん焦っています。

 ズル

 かなり私も汗をかいていたみたいです。手を端末から滑らせてしまいました。

「戦力比、約800:1!」

 私が、そう叫びました。

 あ

 大声を出したのは、初めての気がしますね。なんだか、不思議な気持ちです。

「運動は、これが精一杯。避けられないわよ。」

 ハルカさんが、操作しながら叫びます。

 確かに、風景の移動が、嫌にゆっくりです。

「艦長。決断を!」

 誰が言ったのかは解らない台詞が吐かれました。

「……… ミナトさん。チューリップへの侵入角を大急ぎで…」

「艦長、それは認められませんな。」

 プロスさんが、艦長に抗議します。

「あなたは、ネルガル重工の利益に対し最大限の努力をすると言う契約に違反しようとして…」

「ああ、もう! 五月蝿いですね! そんなに、御自分の選んだ提督が信じられませんか!」

 艦長の、凄みを利かせた台詞にプロスさんは、口を塞がざるを得ません。

 やっぱり、艦長は、チューリップに突入するみたいですね。

 

「間近でみると大きいんですね…」

 接近したチューリップを見て、メグミさんが、そんな台詞を吐きました。

 この距離からみるチューリップは、大きく口を開いた肉食獣の様に見えます。

 そして、「クロッカス」は、「ナデシコ」の後方に、ピッタリと付いて来ます。

 「ナデシコ」は、チューリップに突入しました。

 しばらくの間、沈黙が、ブリッジを支配します。

「オモイカネ、戦況は?」

 私は、そんな事を質問しました。

 ウインドウに出たのは、

《敵包囲網変わらず、徐々に狭まってきている。》

 だ、そうです。

「「クロッカス」の方は?」

《「ナデシコ」のすぐ後方で反転中。》

「反転!!」

 私は、2度目の大声を上げました。

 ビックリしたのか、皆さん私の方を見ます。

「あ、「クロッカス」が、後方で反転しました!」

 ちょっと、恥ずかしいですが皆さんに、大声を上げた理由を言います。

「バカな! 戦うつもりか!」

 いつの間に来ていたやらゴートさんが、叫びます。

『「ナデシコ」の諸君。』

 画面上に提督の顔が写ります。

 少々揺れているのは、交戦中の証です。

「提督。おやめ下さい!」

 艦長が、叫び声と涙声を一緒にして言いました。

「私には… いえ、「ナデシコ」には、まだ提督が必要なんです。」

『私には… 君たちに必要とされる理由も、頼られる言われも何も無い。私は、ただ私の大切な物のためにこうするのだ。』

 提督の、大切なものってなんだろう。

『ただ、私は…』

『ふっざぁ、けるなぁぁぁぁぁ!!!』

 叫び声が、通信回線に木霊します。

 そして、ブリッジの脇を通り過ぎる緑色のエステバリス。

『おい! 艦長! 気づいていると思うが、どっかの馬鹿が勝手にエステを動かして行きやがった。』

 遅いウリバタケさんの声。

「って、犬河さん! 戻ってください! 今出たら、敵の火線の集中砲火に…」

『あああぁぁぁぁぁ!!。』

 メグミさんの大声も、聞こえてないみたいです。

「「ナデシコ」急速反転! どっかの馬鹿を迎えにいきます!」

 「ナデシコ」は、そう言う訳で、反転せざるを得なくなりました。まぁ、これもまた一興。ですし、皆さん笑ってる所を見るとまんざらでも無さそうです。

「バカばっか…」

 

機動戦艦ナデシコ

英雄無き世界にて…

第六話

END

第七話へ続く

 

 

 

あとがき

「弟者ぁ〜、あんちゃんだよー。お前のあんちゃんだよー。今、帰ったよー。開けておくれー。」

「本当かー。本当に本物のアンちゃんかー。本当のあんちゃんならこれができるハズです。―――――マリーアントワネットのものまねー。」

「………パンが無いのなら、手前の妄想でどうにかする。コレで決まり。ただ、コレを人前ですると、一般人には変体扱いされる。まさに諸刃の剣。まあ、手前らドシロウトは、同人なんかに手を出さずに、商業誌で満足してろってこった。」

「うわー、自分で自分をマニア扱い。やっぱりあんちゃんだー。」

「はっはっはっはー。」

「まあ、そんなわけで六話のあとがきです。」

「して、弟者。今回は書くことがあるんだよな。」

「ああ、そうだったな、兄者。しかし、それは基本的に兄者が原因だと思うのだが…」

「つまり、俺に言えってことか。」

「うん、そう。」

「仕方ないな… 言いたい事というのは、メールのことです。」

「そうだな、兄者。」

「そう、なぜか家に送られてくるメールのうち、俺の友人から以外のメールは、殆どがウイルス汚染メールだ。」

「確信犯の人がいたら、それの原因は兄者だな。」

「まあ、そうだろう。批判メールが来ることは覚悟のうちだったが、まさか批判以前の問題とはな………」

「普通にサーバーが汚染されている人もいるだろ?」

「だから、うちはウイルスチェックしているから、汚染されたメールは見れないの。だから困っているんじゃないか。有意義な批判もあるかもしれないだろ。」

「納得。」

「感想を送ってくれた人には、私は必ず返信しています。返信がされていない方は、お手数ですが、もう一度メールを送っていただければ幸いです。」

「兄者、営業スマイルは似合わん。」

「五月蝿い。」

「てか、笑顔が似合わん。」

「………(プチッ)。」

「ん? ……うわぁぁぁぁぁぁ!!」

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリィ!!」

「がはぁ!」

「アリーヴェデルチ(さよならだ)。」

「だから、ジョ○ョは止めろって。」

「………次は『無駄無駄ァ!』?」

「ゴースト……俺は……負け……ない。」

「…そのネタ、誰も知らんと思うぞ、健作。」

「『我が標的は日本』なんて、某氏でも読んでるかどうかだしな。」

「じゃあ、するな。版権ネタは一般的に知れ渡っているものでなければ、ウケは取れんのだ。」

「兄者は最近、翡翠萌えだしな。」

「………世界で最強の言葉を言ってやろう。『それがどうした』。」

「兄者、CROSS〜のほうで、某パイルバンカーを持った先輩や、某イカレ銃剣神父の同僚を出すってウワサは本当か?」

「先の事など分からない…」

「じゃあ兄者が、友人からギターを買ったはいいが、その帰り道、余りのクサさに落としてしまい、ネックが折れて二万円分損こいたという噂は本当か?」

「昔の事は、忘れたな……」

「ボギーを気取るな。いくらカサブランカが好きでも。表紙の言葉で、管理人さんと代理人さんも使ってたから、パクリだと思われるぞ。」

「ついでに、そのギターを修理に持ってったら、五万円かかると言われて、買った金より高いじゃないかと逆ギレしたのは、この俺だ。」

「兄者… 泣けてくるよ…」

「ふ、いいのさ。ネタ人生は、SS書きの宿命よ。」

 兄、激鬱状態により、コレで終了。  

(BGM 「思い出になるよ」GPM EDより(笑))

 

 

 

代理人の感想

あれ? ユートピアコロニーのことって一般に知られてたんでしょうか?

軍だったら情報操作して消しそうなもんですが(爆)