機動戦艦ナデシコ

英雄無き世界にて…

 

 犬河照一

「いやぁ、それは、参った…」

 全くな意見だ。

 だが、現にこの状況をどう打開しろと言うのだろうか?

 俺は、空薬莢をシリンダーから排出し、スピードローダーをはめ込む。

「後、この中のを入れても30発… か。」

 つまり、手持ちの中で唯一効果的な傷を与えられるのは、30回までと言うことだ。

 もうもうと、倒壊した人家から土煙が舞い上がっている。

 姿を現すのは、そう遠い未来ではないだろう。

「なあ、この辺りにさ…」

 俺は、ある質問をアカツキに言った。

 

 アカツキ・ナガレ

「あるよ… それならさ…」

 僕は、犬河君の余りにシンプルかつ、大胆な案に、半場呆れつつもそれを教えた。

 まあ、本人も真坂そんな都合の良い物が、ある筈は無いと思っていたらしく。予想外の答えに、ずっこけているが…

「此処より、東側へ、30km位かな? 行けば解るよ、名前からして… その場所は。」

 僕は、記憶を頼りに場所を導き出す。

「じゃあ、そこへ先に行って準備していてくれ。俺は、大体30分後ぐらいに行く。」

「車が無いよ。」

「盗めや。」

「はいはい。」

 30分… 準備するには、もっと時間が欲しいが、犬河君が持たないだろう。

「おっと、コレ返しておくよ。」

 走り出そうとして、ふと思い出しCZ75のセイフティを掛けて犬河君に向かって投げる。

 パシ!

 見事にキャッチした。

「どうも。」

「いえいえ。」

 僕は、そう言って、走り出した。

 目指す先は…

 

 犬河照一

「さ… てと。」

 俺は、軽く肩をほぐす。

 S&W モデル500を構えた。

 CZ75程度では、分厚い皮を剥げない事は証明済みだ。

 まあ、念の為に腰のホルスターに入れてはいる。

「グォォグルグゥウゥゥォォゥォ!」

「きやがったか…」

 暖かいような冷たいような奇妙な汗が、俺の汗腺から滲み出る。

 土煙越しに見えるシルエット… 見間違う訳が無い。

「30分… 長いなぁ…」

 俺は、そう言って引き金を引いた。

 ガァン!

 反動により、ガラス片で負傷した右肩が痛んだが、今の状況では、どうでもいい。

 弾丸が空を引き裂き飛翔する。シルエットへと向かって突き進む弾丸だが、シルエットの見えた位置に到達した時、その場所には、既にシルエットは無かった…

 ぐお!

 質量を持つ様な異様なほどの殺気が、俺に浴びせられる。

「見つめられるのは、異性間だけでいいよ…」

 俺は、大地を蹴る。俺の体が、有った空間をトゥエルブの右腕が通り過ぎた…

 ブオワァァァァ!

「扇風機にしては、風が強すぎるぞ! 強さは、弱にしろ弱に!」

 俺は、そう叫んで。振り返らずに、正面へと銃身を向け、引き金を引いた。

 ガァン!

 何も無いはずの空間を通り過ぎるはずの弾丸だが、確かな手応えを感じた。

「おろ? こうゆう時には、お前の動きは見切ったと言うべきかな?」

 中空で呻き声を上げるトゥエルブを見て、俺はそう言う。

 人間の感覚という物は、いい加減なものである。今まで到底見えなかったものだが、ふとした時を境に見えるようになると言うのは、コイツの動きでも例外ではなかった。

 だが、人間を遥かに越えた動きであると言うことには変わりは無い。

 俺は、目が慣れてきて見ることは出来るが、マトモに殺り合おうとすれば、体が到底ついて行かない。

 逃げる… その一手だ。

 俺は、駐車していた大型ダンプカーを見つけるとドアを開ける。

「なんだ! お前は?」

「盗人さ。」

 ガツ!

 本日2回目の盗難。

 俺は、反対側のドアからドライバーを外へと押し出すと。エンジンを掛けた。

 音はしない。電気だから当たり前か…

 俺は、ステアリングを握り、アクセルを踏み込む。正面の道路に、トゥエルブが何時の間にか出現していた。

「グオァァァァ!」

「そんなに助手席に乗りたいか? 所有者が嫌だと言ってるんだから、諦めろ。」

 って、俺の車じゃ無いか。

 俺は、そう思いつつも、S&W モデル500の引き金をトゥエルブに向かって絞る。

 両手放し運転だが、それ以前に俺は大型の免許なんて持っていないから気にしなくて良い。

 ガァン! ガァン! ガァン!

 狙いは、まず足。次に肩だ。

 その順番で見事に射抜かれたトゥエルブの体は、着弾の衝撃に耐えることが出来ずにスピンする。

 俺は、その背中に向けて大型のダンプカーを突っ込ませる。

 正面からだと、さっきみたいに止められる可能性があるための背中押しだ。

 だが、スピードが落ちた… 相当重いな… ダイエットしとけ。

 俺は、アクセルを全開にしても、60km/h程の速度しか刻んでいないスピードメーターを見る。

「鉄板でも入ってんのか?」

 まあ、とにかく路上駐車の取り締まりだな。

 俺は、そこいら中に止まっている路上駐車の車へとダンプカーを突っ込ませる。

 ドガドガドガドガ!

 小気味良い音が響く。

 断続的な衝撃が、運転席に伝わった。

「ダメだぞ。こんなに切符切られる奴がいちゃあな…」

 30台ほど吹き飛ばしただろうか、ようやく路上駐車の車は、居なくなった。

 ステアリングを切りながらさっきの台詞は、信号無視に無免許運転している奴が言う台詞では無いと思ったが… 多めに見て置こう。俺が…

「月も治安が、悪い悪い。」

 正面からバイクにまたがった暴走族が走ってきた。百人程の人数だ。どっちが不幸だろうな。俺か?

「死にたくなけりゃあ! その道開けろぉ!」

 俺は、クラクションを鳴らしながら、スピードなど落とさずにバイクの群れへと突っ込む。冗談だと思っていたらしい暴走族が、そのまま突っ込んできた。度胸があると言えば良いのか? ただの馬鹿と言えば良いのか… 本気だと気付いてハンドルを操作した時などもう遅い…

「ぎゃぁ!」

「うげぇ!」

 なんか轢いたな…2・3人は死んだか? まあ自業自得だな。

 自分もかなりの自業をしていると思うが… まあ、それは置いといて…

「ちゃんと、警告はしたしまあいいだろ。」

 俺は、一瞥もくれずにダンプカーを走らせる。

 直線の道に入った。俺は、スピードローダーで、弾を込めると、フレームに押されている形のトゥエルブの肩を目がけて撃ちまくる。止まっているために狙いが付け易かった。

「右腕は、貰っておくぜ!」

 あわよくば左手もと思うが… それは、欲張りすぎという物だろう。

 ガァン! ガァン! ガァン! ガァン! ガァン!

「グォォォゲェグジョォォォォォォォォン!」

 肉が千切れて、皮で繋がっている右腕をぶら下げたトゥエルブの姿がそこにあった。まあ、時間が経てば元に戻るんだろうけどさ… 今は、殆ど腕無しトゥエルブってか?

「気色悪い声をあげるなよ、全く。」

 俺は、片腕でステアリングを握ると腰のホルスターに入れていたCZ75を撃つ。

 ガンガンガンガンガン!

 皮膚に当たった弾は、弾き返されたが、俺が狙ったのは、外に出ていて皮膚ではない部分だ。つまりそれは…      目である。

数発が、そこに吸い込まれた… 弾丸は、眼球を引き裂き千切り砕き蹂躙し破壊する。

gugyaaaaaaaaaaaaaaaaa!

「光が欲しいかぁ? 与えてやんねぇよ! ブラック○ャックにでも頼むんだな! 夜呂死苦ぅ!」

 何処かで読んだマンガの台詞にアレンジを加えた台詞を吐き捨てる。

 もちっと捻ればよかったか? おっと、その場から離れようなんて考えんじゃねぇ!

「歩道! 道路標識に突っ込みまーす!」

 ゴギャァ!

 捻じ曲がる道路標識。だが、流石未来の電気自動車。ちょっとやそっとの正面衝突じゃ屁でも無いか。

 フレームは凹んだが、道路標識をブチ折って、車は進む。その凹んだ窪みにトゥエルブの体は入っていた。

「10分経過― 10分経過― と、あと20分こうしていろと… 俺に死ねってか… ったく…」

 

 アカツキ・ナガレ

「ふうい… なんとか着いたぞ…」

 ちょっと車を盗む時にドジって、赤く腫れた頬をさすりながら、僕は、倉庫の中へ入って行った。

「おぉ! こうして見ると、凄いもんだねぇ。」

 天井近くまで積み上げられた箱を見て、僕はそう言う感想を漏らす。

「やっぱり、数字の上だけじゃなくて直で見ないと現実感は沸かないな… 良い経験をしたもんだ。」

 僕は、そう言うと、片っ端から箱を開け、中の物を取り出す。

「後20分か… 来るまでに10分かかるとしても30分ほど… 出来るかな?」

 僕は、手を動かしながらその場の準備を始めた。

 

 一方食堂。

 ホシノ・ルリ

「ご馳走様でしたー。」

「「「いえいえーお粗末さまでした。」」」

 皆さん、満足したらしく次々と店を出て行きます。

 私たちのお陰で今月の目標収入が全て今日一日で集まったそうです。

「いやあ、それにしても、そこらで響いた銃声や爆発はなんだったんだろうな?」

「気にしなくて良いだろ。僕達には関係ないことさ。」

 え? 爆発? そんなのが聞こえましたか? 中が五月蝿すぎて聞こえなかったんでしょうか?

 良く見ると、正面のスーパーが台風でも吹き荒れたかのような惨状になっています。

 クレーターが出来ているのは、気のせいでしょうか?

「まるで、戦闘の跡ですな… しかし、爆発物を使ったような痕跡は無いですぞ… まるで力まかせにこうした様ですねェ… どんな者でしょう? そんな無茶苦茶をするのは… 弾痕もありますねぇ、こんな無茶苦茶なのに相手をする様な馬鹿な人間も居るとは… あったら見て見たいもんですねぇ…」

 プロスさんが、そう状況を判断します。確かに、そんな感じですね。

「あれ? そう言えばゴートさん居ませんね…」

「火傷して、先に帰ったようだけど。」

「ほっとこうぜ、しかし、月も物騒なもんだな… 見ろよあのボロボロの車を…」

 そう言って、リョーコさんが指差した先には、フレームが拉げてそこら中から紫電が光り、オイルが漏れている車がありました。

「バットか何かで叩いた様な感じですね。暴力団でも巣くっているのでしょうか? 気を付けませんとね…」

 

 一方のゴート

「火傷薬は… これか…」

 ピンポーン

 普通に「ナデシコ」に帰ってましたとさ… カッコイイ想像をしていた方… すいません。

 

 とまあ、そんな呑気な人達とは正反対に…

 

 犬河照一

「さあてと、30分、経った経ったぁ! 高速道路を使わせて貰うぜ! 無賃通行だけどな…」

 バキィ!

 そう言って、バリゲートを破壊して突き進むダンプカー。

 しかし、大分銃を撃ったな… 残り何発だよ… 数えるの忘れてたぜ。

 解るのは、もうスピードローダーもマガジンも無いと言う事だ…

「えーと、こっちか?」

 俺は、上りを使う。

 東側へ30kmと言われた為に、出来きるだけ東側よりにステアリングを切らせてきたが、正確な場所がわからない為に風景に神経を集中させる。

 暫くが経った…

「名前を見りゃ解るって言われてもなぁ…」

 出来るだけ高いところから見たほうが良いと思い、高速に乗った次第だ。

「ん? アレか… ああ、それっぽいな。」

 俺は、軍事危険物取扱所と大きく書かれた看板を見付けた。

「しかし、次の降り場まで遠いな… 戻るにしても、下りは渋滞だぜ…」

 幾ら、俺でも渋滞の中を突き進むほど非道でも無ければ、無謀でもない。

 俺は、暫し思考する。

 何を思い立ったか、一気にステアリングを切った。

「高さは… 5mってとこか… まあ、死にやしないだろ…」

「グルォウ?」

 トゥエルブすらも俺の行動に疑問詞を並べる。もっと並べたのは、下り車線の渋滞中の車の中に居た人達だろう。

「自殺志願者か…」

 そう言う声が聞こえた様な気がした。

「車に乗って落ちるのは2度目だぞ… 3度目あったら俺は、それからもう2度と車には乗らん…」

 バキィ!

 ガードレールをぶち破り中空へと踊りでるトラック…

 異様な程にスローモーな一瞬が過ぎる…

「ぐぉぉるぅぅぅをぉぉぉぉぉぉぅ!」

「俺より不死身の癖に何騒いでいやがる… 俺でも死なねぇ高さだぞ… お前が死ねる訳ねぇだろうが…」

 俺は、何時の間にか、腕を後ろで組んでいた。奇妙な浮遊感が俺の体を包む。

 下正面にコンクリートの大地が見えた…

ガギャァガァン!

 着地…

 成功。

 フロントガラスが砕け散り、俺の頬を掠めた。そこから血が流れ出す。

 フレームは、とても寒い時の奥歯みたいにガタガタだ。

 だが、間髪居れずにアクセルペダルを踏みつける。

 ギュヲォォォォォォォォ!

 多少滑ったが、数回転後タイヤは、確りとコンクリートを噛み締める。

「ぐ、ぐろが…」

「言ったろ? 死ねないってさ。」

 足は、完全に潰れたみたいだけどな…

 俺は、軍事危険物取扱所へと車を向ける。

 敷地に入る前に門があったが、そんなものはぶち破る。

 やたらと広い敷地だな…

 とか、思っていると、正面の倉庫の前にアカツキの姿が見えた。

 此方に向かって手を振っている…

 そこか…

 俺は、車体をそちらへと向ける。

 アカツキが、逃げ出した。

 そうだ、さっさと逃げろ…

 俺は、シャッターの下りた倉庫へとダンプカーを突っ込ませた。

ゴロンガシシャァン!

 シャッターが吹き飛ぶ…

 何か軟らかいが、凶暴な物に、ダンプカーは突っ込んだ。

 それの色は、白だ。白くてフニャフニャした… だが、凶暴な物…

 俺は、ドアを開けると、素早くその場から離れる。

 トゥエルブは、ダンプカーと白くてフニャフニャした物に挟まれて身動きが取れない状態であった。

 俺は、倉庫を飛び出す。

「犬河君! こっちだ!」

 そう言う声が、聞こえた。俺は、声がした方へと走り出す。

 そこには、コンクリのバリゲートの後ろに身を潜めたアカツキがいた。

 俺は、滑り込むようにしてバリゲートの影に入る。

「そんなにこういう練習は、やってないからな… 爆発しなくても怒るなよぉ!」

 アカツキが、持っていたスイッチのボタンを押す。

 そこから信管へと、凶暴な指令が下った…

 破壊し、蹂躙し、殺し、砕き、燃やし、その効果内の全ての存在を否定しろと…

グオバガァァァァァン!!!

 凄まじい爆発が、俺たちの目の前で行われた…

 C410t… ミサイル500発… 手榴弾100個… 可燃燃料4000リットル… etc… etc… の爆発は、想像を絶する物であった。

 コンクリのバリゲートは、役目を一瞬しか果たさずに倒壊し、凶暴な爆風が、俺たちに降りかかる。

 吹き飛ばされ、倒れ、ぶつかり、蹂躙された…

 呻き声も出ない… そうする事すらも否定されている…

 不条理が有るとしたら、人間の作り出せる不条理の一つがこれであろう。

 作られた爆風は、ただ荒れ狂い万物を破壊し、地を焼き尽くす…

 コレが、日常茶飯事に行われる戦争の無意味さを俺は、改めて自覚した…

 

「う、ぐぅぅ。」

 手首を強く捻ったらしい。激痛が走る。

「あ、歩けそうも無いな。僕は…」

 アカツキは、足を折ったらしい。

「こんな事なら… もっと遠くへ離れとくべきだったよ… バリゲートがあるから大丈夫だと思っていたんだけどね… つ!」

「肩を、貸すのは、ちょっと待ってろ… 死体を確認してからだ…」

「これで… 死んで無いかもと思えるのかい… アイツは、立派な化け物だ。」

 アカツキは、それ以上は、何も言わない。アイツにも、死んでいないかもと言う感覚があるのだろう。

 俺は、なんとか立ち上がり、歩き出した。

 倉庫は、無事な状態ではなかった…

 殆どが、吹き飛ばされたからだ。

 まるで、雷の直撃を受けた様である。

 ガラ…

 中央の瓦礫が崩れる。そこに俺は、何かを発見した。

「よぉ…」

 俺は、その何かに向かってそう言う。

 それは、首から上の顔だった… そして、それは、まだ動いている…

 俺は、S&W モデル500を構える。

「おいおい。そんな状態でまだ生きてるのか… 苦しいだろ… 大変だな、中々死なないってのもさ…」

 肉塊ならば生きていられる様だな… 肉片にしないといけないようだ…

「しかしさ、生きたいだろ… 賭けをしないか…」

 俺は、そう言う。現に俺には、殺す方法は、コレしか無いし、コレが外れたら、俺が死ぬ。

「お前、その状態でも人を殺すくらいは出来るだろ…」

 トゥエルブは、牙を見せた。それを肯定と取る。

「この銃さ… あんまりにも撃ちまくったもんだから、中に弾が入っているかどうか、俺にも解んないんだよな… どうする? 俺を殺すか? 殺そうとすれば、俺はコレの引き金を引く… 弾が入っていれば、DEAD 脳味噌がぶっ飛ぶ… 入っていなかったらALIVE だ… だけど、このままじゃ、遅かれ速かれ警察かなんかが来て、お前は、DEAD ただ一つだ… さあ、どうする?」

 俺は、そう言った。

 不気味なほどの沈黙が、間に流れる。

 それは、1瞬とも1時間とも取れる長さであった…

 互いに、不完全な殺し道具を構えながら沈黙する。

 ダー○ィハリーなんて決めるんじゃ無かったか?

 俺は、そんな下らない事も考えていた。

 そして…

 トゥエルブは動いた…

 俺の頚動脈に牙をたてようと、顎を広げ、首の筋肉だけで跳躍する。

 俺に迫ってくる…

 俺は、トゥエルブに向けてS&W モデル500の引き金を引いた…

 撃鉄が、上がり… 落ちた…

 それが、嫌にゆっくりと見える。

 撃鉄が、元の位置に戻った時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガァン!

 耳を劈く銃声が響いた…

 弾丸は、飛翔しトゥエルブの頭部をズタボロにした。

 肉塊は、肉片へと移り変わり、そこら中に散乱した…

 俺は、スイングアウトし、残りの弾数を確認する。

「残り、2発か… ゼロなら格好良かったんだけどな…」

 俺は、そう言うと、余りの2発をトゥエルブの肉片へと投げつけた。

「そいつは、バッジの変わりだ… 取っときな… なんてな。」

 そして、俺は背を向けて歩き出した。

 アカツキの倒れている所まで辿り着くと、肩を貸す。

「知り合いの紹介は、9人で良いな。」

「ああ、良いよ。」

 そして、俺たちは、歩き出す。

 行く先は、「ナデシコ」であった…

 何故か夕陽が落ちる時間である…

 

「君は、なんの為に戦うんだい?」

 帰りの途中で、そんな質問を浴びせられる。

「始めは、誰かを守りたいとかそう言う理由だったな…」

 俺は、そう言う。

「始めは? 今は違うのかい?」

「ああ。」

 俺は、肯定する。

「じゃあ、今の理由を聞かせてくれよ。」

「幸せな老後を送りたいからさ… 大方早死にだろうけどな… ま、せいぜい好きな女を抱いて、自分の子供も作って、子供の徴兵の心配無しに生きて死にたいさ… そのためには、害虫駆除を早く終らせなければならない。その為に戦う。それだけだ。」

「お見事。」

 

 そして、「ナデシコ」へと帰還。

 

 犬河照一。

「ん? 何か慌しい事になっているようだけど?」

 俺は、艦内の雰囲気を見て、そう言う。

「まあ、僕には心当たりがあるんだけどね。」

 アカツキが、嫌な含み笑いを放つ。

「おう! 犬河か! 何処へ行っていやがった!」

 ウリバタケさんが、慌しく言い出す。

「ちょっと待ってくださいよ! 何があったんです!」

「何があったかって… くぅぅぅぅぅぅぅ!」

 なにやら溜めている。

「なんと! テロだよ。テロ!」

「て、テロですって! 乗っ取られたんですか! この艦!」

「違う! この艦ではないが… なんと! この艦に積み込まれる筈だった物資が、全部テロリストによって爆破されたんだ! 軍事危険物取扱所と言う所に溜めて置いたと上に言われたんだが、それを一つ残らずボーン! といかれちまったんだ! まあ、そこのロンゲが乗る新型のエステバリスは一足先に来たんだが… 口惜しいぜ! そのせいで、始めは2週間の修理予定だったのが、物資を地球から取り寄せなければならないから3ヶ月半近くかかるんだ! くそぉ! 誰だ! 爆破しやがったのはぁ!」

 俺は、横目でアカツキの方を見る。

 まあ、まあと言う顔を浮かべているな…

 互いの身の安全の為にも、黙っておこう。

「まあ、それは、なんとか置いとくとして… お前らどうした? その怪我は?」

「「歩道橋から揃いも揃って、階段を踏み外したんです。」」

 用意しておいた言い訳を言う。

『ピーンポーンパーンポーン。「ナデシコ」の乗組員全員は、重大発表が有りますので、至急ブリッジへ集合してください。』

 なにか、放送が入る。

「怪我人は、どうしたら良いんでしょうか?」

「そんだけ元気なら、一緒に来い。」

 俺は、軽傷だが、アカツキは骨折しているために、医務室へ連れて行った。

 その後に、改めてブリッジへと向かう。

 ブリッジへの扉を潜ると、もう艦長が、ステージの上に立ち何やらを話し出す所であった。

「えー、私たちが、火星から地球圏へと帰ってくる4ヶ月半の間に、どうやら、ネルガルと、軍は和解しちゃったみたいなんですよ。それによって戦艦とか作って占領中の筈だった月を奪還… まあ、それは通信情報で解ってましたけど…」

 でなきゃ、月に来るなんてだれが考えるんだ。

「その為に、ネルガル本社と軍は、共同戦線を張ることになってえ〜」

 台本に目を通す艦長。せめて原稿用紙にしてくださいよ。

「それで、「ナデシコ」は、極東方面の戦線に配備される事になりました。まあ、修理が有りますんで3ヶ月半ほど後になりますけどね… そのために、皆さんには臨時の階級が与えられ…」

「はい! 質問だ!」

 挙手をするガイ。

「はい。なんですか? ヤマダさん。」

「それは、要するに俺たちに軍人に慣れって事か?」

 ヤマダと呼ばれたのを訂正せずにガイは質問する。

「いや、つつつぅ〜、ただの共同戦線だよ… 階級なんて印みたいなものさぁ…」

 アカツキ… お前なにやってんだ? 骨が折れてるだろ骨が…

「こらぁ! 勝手に医務室抜け出してなにやってんです! あんたは!」

「うお! ちょっと! 待ってくれ! 一人くらい口説かせて… うわぁ〜!」

 医療班に連れて行かれるアカツキ… まあ、自業自得だな。

「まあ、それでは臨時ですが、階級を発表いたします。」

 半場呆れ顔で、プロスさんが言う。

「皆さん、御自分の名前を呼ばれた方から、紙を取っていってください。え〜と、まずは…」

 延々と紙を取っていく人の列。

 俺は、自分の用紙を見る。

 階級章のワッペンもくっ付いていた。

『それでは〜 一人一人発表していく事にしま〜す!』

 突如BGMが流れ、ステージが低くなっていく… スクリーンが下りて、映写機が再生された。

 そして、スタッフロールの様に、下からドンドンと名前が競りあがってくる。

 最初は、伍長からだ。

「ふう、間に合った。お、僕は少尉か… 予定通りだね。」

 いきなりアカツキが現れ、意味不明な言葉を吐く。

 ん? 少尉?

 待っていると、少尉の欄で次々とパイロットの名前が出てくる。

 そして、その次へと行こうとした時、俺は思わず叫んでいた。

「ま! 待って下さい! 待って下さい!」

 スタッフロールが止まった。

 全員の注目が俺に集まる。

「アカツキ! こう言うのは、俺には、向いてない! お前がやってくれ!」

「君の方が、実戦経験が長いじゃないか犬河君。」

「じゃ、じゃあジュン! 頼む! これはお前が受け取ってくれ!」

「僕は、副長と兼職だよ… 無理だって。」

「な、ならガイ! お前が…」

「俺にそんな役は似合わん。」

「りょ、リョーコさん! お願いします!」

「ロンゲと同じ理由だ。お前の方が実戦経験なげぇだろ。」

「た、頼みますよ! ヒカルさん!」

「だめだよ。与えられた仕事を人に押し付けちゃあ。」

「さ、最後の手段だ! イズミさん! お願いします。変わって下さい!」

「ダメ。」

「そ、そんな… ち、ち、ち、ち…」

 俺は、半分涙目になっていた。

 そして、叫んだ。

「中尉なんて、嫌だぁぁぁ!!」

 アカツキ・ナガレは、犬河の到底さっきの男とは思えない仕草に少々戸惑っていたそうな…

 

 

「あ〜、それと艦長。ワシは、この艦を降りたいんじゃが…」

【は?】(この場に居た全員)

 唐突な、フクベ提督の台詞に全員が固まったのは、その一瞬後の事である。

 

機動戦艦ナデシコ

英雄無き世界にて…

第十三話 下

END

第十四話へと続く…

 

あとがき(ここだけ兄・作)

 

「やっぱりパー○ンは最高だ。まさに人類の至宝よ…… 待てよ、ドラ○もんの長編映画の、ここをこうすると… なにぃ! こ、これは…… 元が良かったからか、面白そうだ…… 誰か、このネタで書いてくれないかな……」

 

………

 

 199X年、宇宙の彼方から初めての来訪者が、地球圏へと降り立った。ただし、それは、決して友好的と呼べた代物ではなかったが。

 

 自らを「鉄人兵団」と呼称する彼らは、来訪と同時に、地球全土に宣戦を布告。そんな事態を予測しているはずも無く、瞬く間に地球圏は制圧されていった。

 

 彼らはいうなれば、「思考する機械」であった。死がないため、人間的な感情を持ち合わせない彼らは、一切の容赦をせずに、プログラミングされた殺戮を繰り返した。

 

 しかし、それも長くは続かなかった。人間側も、ようやく人種の壁を越えて協力することを覚え、大量の対機械用兵器を開発した。学徒徴兵も行われ、兵員の絶対数も増加した。

 

 これにより、戦線は停滞を余儀なくされた。戦力比は、人類側4、「鉄人兵団」側6の割合。両者共、戦線は膠着したまま、三年目の春を迎えた……

 

 

 東京の、とある小学校。裏山を背としたその景観から、周辺住民の避難先、および自衛隊学徒部隊の駐屯地としても使用されていた。

 ここの部隊の司令官、出来杉英才臨時大佐(19)は、その名の通りの敏腕として知られていた。恋人の源静香(19)も、現代のナイチンゲールとして、数多くの新聞の一面を飾る存在であった。補給を担当する骨川スネ夫少佐(19)も、「不可能を可能にする男」の異名をもつ、デスクワークの達人である。

 だが、この駐屯地が有名になったのは、彼らの功績ではない。とある一個小隊の活躍である。

 小隊長、剛田武軍曹(19)。通称、ジャイアン。副隊長、野比のび太伍長(19)。この部隊の名は、自衛隊学徒部隊東京1093小隊。通称、“剛田愚連隊”である。

 隊長、剛田武の、勇猛果敢な用兵。副長、野比のび太の、人間の常識を超えた射撃能力。

 そんな“剛田愚連隊”が、巡回中に出会った一人の少女、その名は……

「リルル…… 私の名前はリルル。そう記憶しているわ。」

 この美少女が、戦場にもたらすのは、果たして何か。

 

「俺たちが進んだ道には、必ず轍が出来ていると信じている。後ろを進む奴が歩きやすいように、そうやって道を作るのが、俺たちの仕事なのさ。」

 

「民間人の命を守るのは、義務でも義理でもなく、絶対の誓約だ。それを裏切った僕には、どんな批判も甘んじて受け入れるしか、手段は無い。」

 

「神様、どうか教えてください…… 何故、私に【心】などを書き込んだ(プログラムした)のですか…」

 

 迫り来る「鉄人兵団」を貫く、のび太の連発式AM(アンチ・マテリアル)ライフル。

 例えようも無い感動が、君の心を揺さぶる………

 

ドラえもん

のび太と鉄人兵団

・・・if

FULL METAL JACKET

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドラえもんの登場しないドラえもんなんて邪道。ということで、お蔵入りのネタでした。(ちゃんちゃん)

 

おまけ 弟

「いや、この作品自体もやり過ぎだが、兄者のは、既にドラえもん以前の問題だと… って、人のこと言えないか… よし! その内2丁拳銃でハトを飛ばすぞ!」

「……ガンガレ。」

 END…

 

 

 

 

代理人の感想

この世界のブラスターってレーザーガンの類だったかなぁ?

と、いうかパイソン77マグナム並の銃で死なないようなバケモノ相手にCZ75なんぞでどうしろと(爆)。

バケモノ相手にするならバケモノ並の人間と銃用意しましょうよ。w

 

まぁ、8mのクレーター(爆弾で言うと何ポンドくらいになるんだろう)作るような爆発に耐えるだけでも十分バケモノ並といえるかもしれませんが。