機動戦艦ナデシコ

英雄無き世界にて…

 

 犬河照一

「こう言う時に、突っ込むべきか、感謝すべきかわかりませんよ。」

 俺は、そう言った。

 まだ、硝煙が出ている列車砲の砲身を見ながら…

「感謝してくれー」

「(私、俺、僕)にも〜」

「NO。」

「あっさり言うなぁ…」

 俺は、その言葉を無視すると、穴の空いた場所へと歩き出した。

「おいおいおい、まだ死んでいないと思っているのかい?」

 二度目になるアカツキの台詞だ。

「アレを喰らって生きているなんて考えられないわ。」

「エリナ君。悪いけど、僕も最初はそう思ったよ。けど、今はもしかしたらと言う物を嫌でも信じる事にしている。」

 まあ、あんだけ有ればなぁ…

 俺は、半場上の空な思考を飛ばす。

 穴の空いたブリッジを、突風が吹きぬけた。

 俺は、穴の正面まで来ると、そこから首を出す。

 無論、十分な警戒をしてだ。

 そして、下を見た。

 ……… 何も無い。もっと下に落ちたか?

 ブリッジのこの位置から落ちるとすれば、甲板の上にでも落ちそうなものだ。

 だが、俺は物理学については、専門外だった。

 この突風、物がどれだけ流されるかなど見当もつかない。

 だが…

 勘は、生きていた…

 俺は、本能的に、穴から首を引っ込める。

 ブアヲォン!

 上から、突如として人影が現れ、俺がさっきまで首を出していた空間を、持っていった。

 脂汗が滲み出る。

「あ、アブな… にぃ!」

 その時、俺は、自分の足首に何かが巻きついていると知った。

 それは、コードである。恐らく、外壁を貫いて引っ張り出した物だろう。

「うおおおお!」

 俺は、絡みついたコードを外そうとするが、既に遅い。

 そのまま、そのコードに引っ張られ、俺は中空へと連れ出された。

「犬河!」

「壁につかまれ!」

 そう言う声が聞こえたが、俺にどうにも出来るものではない。

 当たり前だ、その時には、既に俺の体は宙にあった。

 浮遊感…

 重力に捕まり、俺の体は落ちていく…

 髪がバラバラになっちまうな… ナイスガイが台無しだ…

 俺は、何気に呑気な事を考えてみる。

 骨の5・6本は、覚悟しないとな…

 俺は、落下の最中にそう思った。

 落下の瞬間も、そう長い時間ではない。

 あっという間に、「ナデシコ」の甲板へと到達した…

「んなろぉ!」

 俺は、受身を取る。

 バガァン!

 全身を突き抜けるような衝撃が俺の体を蹂躙した…

 余りの衝撃に、俺は一瞬気を失った。

「う… く…」

 だが、生を実感できる。

 生きている…

 体も動く… 傷も浅い… なんで?

 到底、その程度で済む高さではない。俺は、疑問を感じた。

「あ、こ、こりゃぁ…」

 俺は、来る時に着込んだ防弾ベストを見た。破けて中身が見えている。

「強化衝撃吸収剤に、最新型のケプラー繊維、オマケに新素材のスーパーチタニウムの板を重ねてある… だから、この程度で済んだのか… はあ、いい仕事してますよ、こんなことするのは、大抵ウリバタケさんだな。しかし、これ相当改造してましたね… もはや、防弾ベストじゃなくて、強化装甲ですよ…」

 俺は、感謝と呆れの念を込めた溜息の二度目を吐いた。

「これのお陰かも知れないな… ファイブの攻撃に耐えられたのも…」

 しかし、それでも、アレだけ効いたのか… 人間ってのは脆いもんだな…

 俺は、そう思うと起き上がる。

 ブオォォォォォォォォウ!

「うべ!」

 立ち上がった途端、突風が、俺の顔面を撫でる。

 ふ、風速はどれくらいだよ… 高度は、敵に見つからないようにあまりとって居なかったけど…

 俺は、目測で計算すると、艦の長さも合わせて約高度100m程だと思った。

「こ、コンナに低くても甲板上ではこんなに強い風が吹いているのかよ…」

 当たり前である。

 大体、幾ら大気圏内といっても、最近の戦艦の艦速は、旧式の巡航速度でも300km/hは出る。

 そんな所に、立っていられるだけでも凄い。

「うおわぁぁぁぁ!」

 ドタァ!

 いや、こけた。

 俺は、コミュニケで回線を開き、思いっきり怒鳴る。

「す、スピード! スピード落としてください!」

『おお、犬河! 生きていたのか! いやあ、あの防弾ベストを着ているのなら大丈夫かと思っていたが… しかし… お前の頼みは聞けないな。』

 風の音が五月蝿くて良く聞き取れないが、大体の内容は理解できた。

 声では判断できないが、この口調はウリバタケさんだな…

「な、なんでです!」

『さっきドンパチ派手に艦橋でやった所為で、操縦系統がぜーんぶお釈迦な訳で… まあ、高度だけは下がって行ってるから頑張れや。』

 俺は、顔から血の気が引いていくのを感じた…

 しかも、正面には、何時の間にか、風が吹いていようが全く関係の無い物が、立っていた。

「え〜い… ったく。」

 俺は、足を踏ん張らせて立ち上がる。

 だが、奴も流石に無傷と言う訳には行かなかったらしい。

 あちこちからどす黒い血を流している。

 何とかだが、殺せそうだ。

 俺は、突風が吹きぬける中、サムピースを押し込み、スイングアウトした。

 が、その隙を見逃すほどに、相手に余裕が有る訳でもなかった。

 だが、逆を言えば、今のファイブは銃を恐れるほどに弱っていると言う事になる。

 つまり、手持ちでも殺せる可能性が出たということだ。

 しかし、そう簡単にいく訳が無い。

 幾ら傷がついているからと言っても、皮膚が削ぎ落とされていると言うだけで、肉や骨は全く無事だ。

 つまり動き事態には影響は無いのである。

 しかも、俺には突風と言うハンデが有った。

 突風の音で、全く音は聞こえないが、奴が俺に向かって高速で接近してきた。

 俺は、空薬莢を排出する。

 奴が、俺に向かって手を伸ばす。

 パンチか… 俺は、そう思い奴の手から逃れる。

 ガシッ!

 だが、俺の勘は外れた。

 奴は俺の襟をつかんできた。

 組技か!

 奴は、俺に背を向け背中へと担ぎ上げようとする。

 背負い投げか… 悪いな… 散々喰らった技だ! もう慣れっこだぜ!

 俺は、奴の股の間に足を通し左足に引っ掛ける。

 ガッ!

 足が払われ、奴のバランスが崩れた。

 だが、常軌を逸した怪力により俺は投げ飛ばされる。

 幸運だったのは、風が向かい風であったという事だろう。まあ、甲板上に立っていて、相手が艦首の方に向けて投げようとすれば必然的に向かい風になる訳であるのだが…

 追い風であったのなら、間違いなくまっ逆さまである。

 いくら特製の防弾ベストを着ていると言っても、北極の氷河の中を歩いて帰る程の機能がついている訳ではない。

 白熊でも無い限り間違いなく死は免れなかった。

「うお!」

 俺は、即座に起き上がりスピードローダーをシリンダーにはめ込んだ。

 そして、手首のスナップでシリンダーを元の位置に戻すと、ファイブに向けて、引き金を引く。

 ガァン! ガァン! ガァン! ガァン! ガァン!

 慣れない風に流されて、幾つかは奴に当たらなかったが、奴に当たった弾丸は、アイツの肉を引き裂き飛翔した。

 効いている。

 声はかき消されているが、苦しそうな表情をファイブは浮かべた。

 残りのローダーは一個… つまり5発か…

 俺は、そう考える。

 そして、スイングアウトし、ローダーをはめ込んだ。

 賭けるぜ…

 俺は、突進する。

 一番近いところは… 右側か…

 俺は、奴の左側に回りこむ。俺にとっての右側であった。

 20m位か…

 俺は、そう考えつつ引き金を引いた。

 ガァン!

 大気を切り裂く弾丸が、飛翔する。

 奴の肉を引き千切り、貫いた。

 よし!

 俺は、内心でそう思うと振り向いたファイブにそのまま銃を向けた。

「おいおい、どうした? ご自慢の皮が無ければかかって来る事も出来ないのか?」

 どう考えてもこれは、挑発以外の何者でもない。

 だが、奴は殆ど理性と言うものが無かった。

 それが此処まで戦えた最大の要因と言っても過言ではない。

「まあ、しゃあねぇか… 臆病者は…」

 奴の聴覚は、尋常ではない。吹き抜ける風の中でも俺の声を聞き分ける事ぐらいは造作も無いことであろう。

「ぐおおおおお!」

 唯でさえ無い理性を、完全に無くした状態で、ファイブは俺に向かってきた。

「かかった!」

 ガァン!

 俺は、ファイブに銃弾をもう、一発浴びせた。

 これで、完全にぶちぎれた様だ。

「おらおらぁ! 着やがれぇ!」

 俺は、背中を見せて逃げ出した。

 どうやら、奴にも相当なダメージがあるらしい。

 直ぐには追いついて来なかった。

「ん? うぉぉぉぉぉぉ! 行き止まりじゃねぇか!」

 俺は、ワザとそう言う声を上げた。

 そう、此処は、甲板の最端である。

 下に北極の海が広がっていた。

「いはひひひひひ。」

 奇妙な笑い声を上げるファイブ。

 おいおいおいおいおいおいおい、ホントに莫迦だな…

 俺は、そう思った。

 何かは、解らないが奴が大声を上げる。

 そして、奴が、俺に飛び掛ってくる。俺は、ギリギリまで引き付けてから避けた。

 俺と奴の位置が逆になった。

 俺は、そのタイミングを逃さずに、引き金を引いた。

 ガァン!

 奴の、膝を貫く。

 声は、聞こえないが、絶叫を発して、奴は崩れ落ちた。

 もう一発! 俺は、引き金を引いた。

 ガァン! 次は脳天を貫いた。

 奴の位置が、もう、甲板から落ちそうな所まで移動する。

「……… あばよ… ってか。」

 俺は、最後の引き金を引いた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチィン…

撃鉄は、確かに落ちた… だが、轟音は出なかった…

「な!」

 た、弾切れ!

 俺は、思い出した。ゴートさんの止血のために一発弾をあげてしまった事を…

 つまり、最後のローダーには、4発しか弾が入っていなかったのだ。

 く、こ、ここまできて…

 奴が、再度嫌らしい笑いをその顔に浮かべた。

「あほ、莫迦、詰めが甘いぞ、このタコ照一。」

「へ?」

 聞き慣れた声が響いた。

「今回は、ヒロインに見せ場を与えなさい。」

 何時の間にか、直ぐ後ろにスパス12を構えた楽花がいた。

「いや… んなもん何処から…」

「ツッコミは… 今はな〜し。」

 バァン!

 散弾が、ファイブの体全体に埋め込まれた。

 その衝撃により奴は、中空へと踊りでて。

次の瞬間、甲板から姿を消した…

 

 

 ………………

 

「え〜、そろそろ良いでしょうか。」

「うむ。」

 楽花は、マイペースで言う。

「まず何故、俺が此処に居ると解った。」

「銃声。」

 聞えたのか…

 俺は、そう思ったが、これ以上は無意味だと思う。

「え〜 あ〜 あ、ありがとうございます。」

「慣れない台詞で心臓が麻痺してもしらんぞ〜 照一。」

 お前が、俺の心臓の心配はしなくて良い。

 どちらかと言うと、外傷の心配をしてくれ。

「さてと…」

「ん? どしたの。」

「ああ、一応確認だ。」

「落ちたのに?」

「死んでる様子を見ないと、落ち着けないんだよ。」

 俺は、そう言って、ファイブの落ちた隅へと歩き出す。

 下を覗き込んだ。

 なにも…

 

 

 

 

 

 

 

 ガシッ!

 

「なにぃ!」

 また足を掴まれた。

 そのまま引き摺りおろされる。

「うおおお!」

 ガシィ!

 俺は、甲板に手を引っ掛ける。

 下に何も無い感覚が俺を捕らえる。

「照一!」

「来るなぁ!」

 俺は、渾身の思いを込めて怒鳴った。

 巻き添えにして堪るか!

「こ、このやろ… いい加減素直に死にやがれ…」

 俺は、足を?んでいるファイブに向かってそう言った。

 ズルゥ!

「うおぉ!」

 手が汗で滑った。

 ガキィ!

「たはぁ!」

 すぐさま、手を引っ掛けられる場所を見つけたから良いが、そんなに長くこの状態を維持できる筈が無い。

 俺は、下を見た。

 北極の氷海が広がっている。

 それは、白と青が混じって空が下に有るかのようだった。

 横暴に吹き抜ける風が、俺を振り落とさんとする。

「空に落ちるか… 結構洒落てるじゃねぇか。」

 俺は、そう言う。だが、頬を伝う汗が限界のギリギリだと言う事を告げていた。

 体重は、差ほどでもないが、流石に体力を使い果たしている状況ではこれはキツイ。

 ワイヤー無しで、ぶら下がった事なんてある訳ねぇだろ…

 高いところは慣れているが、命綱も無しでこんな体勢になった事など初めてである。

「はい、ここでBGM… 流してくれよ。」

 俺は、軽口を叩き、底をついてきた精神力を奮い起こさせる。

 手の感覚が、全く無くなり血が流れているかどうかさえ怪しいほどに青くなってきた。

 汗が次々と滴り落ちる。

 冷や汗なのかどうかは、解らなかったが…

「道連れなんてなんとも在り来たりな事をするもんだ… なんで、俺がお前と心中しなけりゃなんないんだよ!」

 強がりだと言うことは、傍目にも見えていただろう。

 足を動かし振り落とそうとするが、人間の力では到底離せる物ではなかった。

「お〜い、おいおい、状況はどうなってんだ!」

「下、下! ロープかなんか持ってきて!」

「うおう! こりゃあ、やって見たくないアクションを…」

「ロープなんてこの艦に有った?」

「代わりでも何でもいいから!」

 上で、そんな声が聞こえ始めたのはこの時である。

 希望など無いが、生存確率が見えてきた。

「ぬをぉぉぉぉぉぉぉ!」

 俺は、必死に落ちないように堪える。

 だが、もう指の先で支えているような物であった。

 バッ!

 指が宙を捉える。

 体は、落ちる。

「うろぁぁぁぁぁ!」

 俺は、手を引っ掛ける箇所を落ちながら探す。

 重力に人間は逆らえないのだ。

 ガッ!

 運良く、また手を引っ掛ける箇所があった。

 だがそこは、上から10m程離れていた所だった。

「だ、大分遠くまで来たもんだ。」

 メキ… メキメキ…

 あ、なんか凄いやばそうな音…

 そう、俺が掴んだ所は、装甲が剥げかけていた箇所である。

 運が良かったのだが、このままでは落下は確定。

 と、その時、一本のワイヤーウインチが降りて来た。

『おい! 犬河! そこのワイヤーウインチにつかまれ! 引っ張り上げてやる!』

 拡声器で、そう言う声が聞こえた。

「俺を… 助ける前に…」

 俺は、渾身の力を込めた大声を言った。

 俺は、ふと下を見る。

 高度が下がっていた…

 現在操作不能で、少しずつ高度が下がっているのだろう。

 俺は、意地の悪い笑みを浮かべた。

「コイツを、摩り下ろして(・・・・・・)下さいよ!」

 俺は、ウインチを掴み取り、手を剥げかけた装甲から離す。

 再び重力に俺の体は囚われた。

「うぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 俺は、叫び声を上げ、ワイヤーウインチをファイブの肩に突き刺した。

 俺は、ワイヤーの部分をつかむ。

 そして、反動を付けて蹴った。

 俺の足が、奴の手の拘束から開放される。

 ビシャァ!

 どす黒い血が、俺の頬を掠め流れていく…

 俺は、ニヤリと笑った。

 そう、正面には氷山があったのである。

 ウインチの部分は直撃コースだ。

 仮に、直撃しなくても確実に擦れるコースである。

 つまり、ファイブは、確実に摩り下ろされる(・・・・・・・)

 それに気づいたか、ファイブは暴れだした。

 ワイヤーが撓む。

「おい、ファイブ… 摩り下ろしリンゴって知ってるか? そう、良く病院での食卓に出るアレだ…」

 俺は、そう言う。

 無論、アイツは聞いている暇など無い。

「あれ、結構旨いよな… 俺、好きなんだよ… だからさ…」

 俺は、大きく息をすう。

「てめぇも摩り下ろされて、ちったぁ、喰える男になりやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

ズジャァァァギャジャジャァァァァァァァァァン!!

 ウインチが氷山へと衝突する。

 直撃と言う訳ではなく、ファイブの体を引き摺り、摩り下ろした。

 俺は、その光景を見ていた。

 だが、感情に何の変化も現れなかった。

 ガクガク!

 だが、体が震える…

 俺は、なけなしの根性でワイヤーを確りとつかむ。

 擦り切れて手の平から、血が滲み出た。

 ワイヤーも当たった所からさほど遠いところをつかんでいた訳ではなく、大がついて、暴れまわった。

 だが、俺は手を放さない。

「ぐ!」

 肩に、氷の破片が当たった…

 だが、意には介さなかった。

 キュィィィィィィィィィィン

 ワイヤーを巻き上げる音が聞えた…

 俺の体は、少しずつ上へと上がっていった…

 

 上へと辿り着いた。

「いやあ、大変だった大変だった。ラペリングでの外壁補修作業用のワイヤーウインチを取り付けて居なかったら大変だったぞ。」

 ウリバタケさんが、列車砲並にとんでもない事をサラリと言ってのけた。

「ああ、疲れた… 今日は出撃も無かったのに。」

「俺も。」

「私も。」

「僕も。」

「俺もだ。」

「僕もだね。」

 パイロット及びその他から、色々言われる。

 俺は、頭を掻くだけで済ませた。

「はい、手見せて。」

「は?」

 楽花に、そう言われた、俺は血で汚れた手を見せる。

 ポケットから、ハンカチをとりだし、俺の手に巻いた。

「あ、どうも…」

「よし。」

 俺は、礼を言おうとしたが、止められる。

「はいはい、とにかくこれで終わり? 今回は。」

「ああ… いや…」

 俺は、背後に気配を感じた。

「おい、犬河。」

 包帯姿のゴートさんが、何時の間にか来ていた。

「返すぞ、銃弾。」

 そう言って、ゴートさんは俺に向かって一発の銃弾を投げてよこす。

「最高の返品タイミングですね。」

 俺は、弾を受け止め、スイングアウトし空薬莢を排出、そしてシリンダーに一発の弾を込め、振り向いた。

 そこには、夕陽にシルエットが照らし出され、ワイヤーフウインチにしぶとく喰らいついているが有った。

「コイツで、今回は終わりだよ。」

 ガァン!

 銃声は、夕暮れ時の北極に高く重く、そして遠くまで響いた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホシノ・ルリ

「で… 皆さん。カッコイイ終わり方に水さすようで悪いんですけど…」

 私は、溜息をついて言います。

 

 

 

 

 

「この艦、操縦不能なんですよ…」

 

【うおわぁ! 目の前に氷山がぁ! 舵取れ舵ぃ!】(甲板に出た全員)

 てな声が通信回線に木霊しましたので、私は言います。

「馬鹿ばっか。」

「しかし… 人は、一度死線を越えてみる事が必要なのかもしれませんね。」

 プロスさんが隣で、意識不明の提督を、タンカの上に乗せていました。

「多分、嫌でもこの人は変わりますよ、コレだけの目に逢ったんです。良い方か悪い方かはなって見ないと解りませんけどね…」

「確かに、これだけの事があれば、変わらないわけ無いですよね。」

 メグミさんがそう言います。

「あなた方も、出来るなら変わって欲しいですよ。少しぐらい修理しようと努力したらどうです。」

「「「仕事じゃないから良いでしょ。」」」

 艦長、通信士、操舵士の皆さんが、声を揃えて言います。

「そうですか…」

「どうでも良いけど、氷山に直撃コースよ… このままじゃ、「ナデシコ」が「タイタニック」になっちゃうわよ。」

 ハルカさんがそんな事を言います。

「甲板の人達はどうなるんです? どうやら、さっきのど派手なアクションであの辺りの電気系統がおかしくなっちゃって…」

 私が、そう言うとプロスさんは、はにかんだ顔で言いました。

「さあ、いろいろと改造した責任でも取ってもらいますか。」

 

 

と、扉があかねぇ! 誰かぁ! ヘルプ ミー イ○ディー!!!】

「馬鹿総動員してもこれは足りません。」

 もう、夕暮れ時の時間帯の出来事でした…

 しかし、この後皆さんが常時、銃を持ち歩くようになったのでした。

 それが、変化と言えば変化になる事です。

 

機動戦艦ナデシコ

英雄無き世界にて…

第十五話 下

END

第十六話へ続く…

 

 

 

あとがき

「さて、今回の議題はトラン○フォーマーだ。」

「また無謀なネタを……」

「まあ、全部纏めるだけで、wordのページ数に換算すると5Pぐらい使っちまうので、それはしない。」

「てか、当然だな。」

「話を戻すとしよう。劇場版は見たかね、弟者?」

「ああ、見たよ。子供の頃に兄者と一緒にな。」

「俺は昔から、メガ○ロンが大好きだ。」

「悪役好きは昔からか、兄者。」

「ガ○バトロンも好きだが、やはりメガト○ンが一番だ。」

「そのココロは?」

「“拳銃”にトランスフォームするから。」

「………」

「現実的に考えて、人に引き金、引いてもらわにゃ攻撃できないのだぞ! スゴイだろ!」

「……確かに凄い。」

「で、最近はそれよりも、スタース○リームの小悪党ぶりがお気に入り。」

「………」

「それで、今度はサイバト○ン側の話になるわけだが……」

「兄者が持っていたトランスフォー○ーのおもちゃは、確かデ○トロン側しか居なかった記憶が……」

「失敬な。確かに基地もデストロ○側の恐竜型のやつだったが(クリスマスにねだった)、一体だけサイ○トロン側も持っていたぞ!」

「何?」

「名前は忘れたが、ザブ○グル色の大きいヤツ。たしか、コンコルドが付属していた記憶がある。」

「俺は知らんぞ。」

「当然だ。お前には貸さなかったからな。」

「………」

「まあ、それはともかく、ホット○ディマスっていたじゃないか。真っ赤なフェラーリチックなスポーツカーにトランスフォームするやつ。」

「いたか、そんなの?」

「劇場版の主役だったヤツさ。」

「ああ、あれか。」

「あれってさ、劇場版の後半で、マトリクスの力を借りてロデ○マスコンボイになるよな。」

「……ああ、確かに。」

「正直、ホットロディ○スの方がカッコイイよな。」

「………言ってはならぬことを。」

「いきなりオジン(死語)臭くなるんだぞ! それにコン○イだから、変形するのもアメリカナイズなトレーラーだ! 俺はスーパーカーの方が好きなんだよ!!」

「果たしてそれは、正しき怒りなのか?」

「そしてさ、話は変わるが、ス○ーウォーズのデス○ターってあるじゃん?」

「あのイゼル○ーンもどきな。」

「本当はイ○ルローンの方が○ススターもどきなんだがな…… まあ、それはともかく。」

「それをどうしたいんだ?」

「俺さ、トラン○フォーマーの方を先に見たからさ、いつデスス○ーがユニク○ンにトランスフォームするか楽しみで楽しみで……」

「……アフォDEATHカ?」

「失礼な。お前も考えただろ? いつイゼルロー○がロボになるか。」

「考えねぇよ。」

「夢の無いヤツだ。お前のような連中こそ、粛清されるべきなのだ。」

「それよりも、俺はMXにブローディアが出るのかどうかのほうが気になる。」

「隠しで出るよ。」

「ウソ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

代理人の感想

・・・・・いや、人間の体って物凄く電気抵抗が高いんですけど。

どー考えても敵に与える以上のダメージを食らうと思うなー(爆)。

他のところもいちいち突っ込んでるとキリがないのでやめますが。