「(・・・一体何者なんだ、あの子は?)」

 アキトはそんな事を考えながら、水瀬家へと戻った。

 ガチャ

「おかえりなさい」

「ただいま」

 アキトが帰るとパジャマにはんてんを着た名雪が迎えてくれた。

「はい、ノート」

「ありがと。・・・どうしたのその傷?」

「傷?」

 アキトは名雪が言って、初めて自分の頬にある傷に気がついた。

「(・・・バカな!!)」

 アキトは傷口から出た血を確認すると、傷がついていたことに驚愕した。



NAKANO 

第四話 夜へ



「寝よう」

 アキトは風呂から出るとそのままベットへ直行した。

 ギシ ギシギシ・・・

「(ん・・・?)」

 深夜、アキトは廊下の物音で目が覚めた。

 ギシ

 アキトは物音が自分の部屋の前で止まったことを感じると、眠い体を起こしドアの前に立った。

 ガチャ

 アキトはドアが少し開くと臨戦体制をとった。



 時刻は少しさかのぼる。

 真琴は冷蔵からこんにゃくを奪取すると、アキトの部屋へと向かった。

「(くくく・・・・)」

 真琴はこの後起こるであろう出来事を想像して笑いを押さえるのに必死だった。

 真琴の想像の中では、こんにゃくを突然体に置かれて飛び起きたアキトをすぐ隣で笑っている自分がいた。

 ガチャ

「(アキト起きてる〜〜?)」

 そして、真琴はその想像を現実にするためにアキトの部屋のドアをあけた。



 ガチャ

「・・・・・・・・」

「あうっ!!」

 そして真琴は腰を低くして自分を見ているアキトに驚くのであった。いや恐怖すら真琴は感じていた。なぜかアキトの瞳が血の色のように赤く見えたのである。まるで獲物に餓えた肉食獣のように・・・・。

「・・・寝よう」

 しかし、アキトは真琴の姿を確認すると、そのままベットへと向かい寝息をかき始めた。

「・・・・・・・・・・・・・・」

 ぺち

「くぅ〜、すぅ〜〜」

「・・・・・・・つまんない」

 翌日、なぜかアキトの顔にはキョンシーのお札のようにこんにゃくが乗っていた。

 そして、不思議なことにアキトはそれの心当たりが全くなかったという。



 ガヤガヤガヤ

 昼休み、アキト達は昼飯を食べに食堂へと来ていた。しかあし、すでに席は満席だった。

「間にあわなかったみたいね・・・」

 香里が食堂の現状を見て、疲れたように言う。

「どうする?」

 北川が聞くまでもなく、この分だと売店のパンに決定だ。

「わたしのAランチ〜〜」

「名雪、諦めなさい」

「あれ、アキトの奴はどこ行った」

 一緒にいたアキトがいつの間にか消えていた。

「あ、あそこ!!」



「すいません、ここいいですか?」

 アキトは席の中央にかけている、メガネをかけた男子生徒に聞いた。

「なんだね、君は」

 その男子生徒はメガネをかけなおしながら、アキトをいぶかしげに見た。

「いや、だから相席をぉ!!!」

 アキトは後ろに引っ張られた。

「すいません!!こいつ転入生なもんで」

「さっ、行こアキト」

「お、おい名雪・・・ッ!!」

「それじゃあ失礼しました」

 三人はアキトを引っ張って退散していった。



「なんだよ、一体」

「バカ!あいつは生徒会長の久瀬だ」

「それがどうかしたのか?」

「彼は地元の盟主の息子なのよ」

「なるほどね・・・・」

 アキトは香里の言葉にすぐさま納得した。アキト自身、こういう人種には迷惑してきたからだ。

「校庭に山犬が出たぞ!!」



 窓から校庭を見るとアキトと香里は驚いた。校庭で山犬と向かい合っている少女は栞だったからだ。香里がなぜ驚くのかはわからないが・・・。

 山犬は今にも栞に襲い掛かりそうだ。

ガウッ!!!

「きゃぁぁぁああっ!!!」

そして、山犬は栞に襲いかかった!!

ガッ

 しかし、すぐさま横で何か音がし、山犬はそちらに気を取られた。

 ギンッ

 そして、音がした方向には片手に地面に刺したスコップを持ち、反論を許さない目で山犬を見ている、アキトが昨日の夜校舎で出あった少女がいた。

 キャウンキャウン

「大丈夫、栞ちゃん」

 そして、玄関からアキトが駆けつけてきたとき、すでに山犬は逃げていた。

「は、はい・・・」

 栞は腰が引けているが、外傷はとくにはないようだった。

「あ、あの・・・」

「なに?」

「ありがとうございました!!」

「・・・たいしたことじゃない」

 そして、アキトに立たせて貰うと栞は助けてくれた少女に礼を言った。

「おい君、大丈夫か!!??」

 玄関から教師達が駆けつけてくる。

「栞ちゃん。今日は帰ったほうがいい。面倒に巻き込まれる」

「あ、はい」

 アキトの言葉に頷くと栞は裏口のほうへと走っていった。

「こらぁ、川澄!!」

 教師達は栞が逃げ出したのを確認すると、校門のほうへと向かっていた少女に怒鳴った。「怪我をさせたらどうするつもりだ!!!」

「ちょっと、待ってください!!彼女は人を助けたんですよ!!」

「君は黙ってなさい」

 アキトは教師達に彼女を怒る理由を聞こうとしたが、しかしすぐさまそれは封じ込まれてしまった。

「待て、川澄!!」

 しかし、少女は教師達を全く無視してそのまま校門から出て行った。



 ガツガツ

 山犬はさっきの少女の目の前で、少女が渡したと思われるおにぎりを食べていた。

「ここにいたんだ」

 少女はアキトに気がつくそのままどこかへ立ち去ろうとした。

「ちょっと待てくれ!!君は・・・」

「お〜い、アキト!!そんなところで何してんだ〜〜?」

「・・・シュンさん」

 アキトが昨日のことを聞こうとすると、後ろからシュンの声が聞こえた隣にはもちろんフィリスがいる。

「おっ、君も一緒だったか」

「・・・・・・」

「シュンさん、どうしてここに?」

「なに、こいつに飯をやろうと思ったんだが、どうやら余計なお世話だったようだ」

 シュンはそう言うと少女をチラッッと見た。

「・・・・・・・・」

「待て待ていきなり逃げようとするな」

「そうだよ、舞」

「・・・佐祐理」

 そのまま立ち去ろうとした少女を、後ろから現れた別の少女が引きとめた。

「って、おいけてぼりにしないで下さい」

「おお、すまん。・・・フィリス君説明よろしく」

「わたしはイネスではないんですが・・・」

 フィリスは乗り気ではなさそうに行ったが、目は輝いていたりする。

 その後五分にわたってフィリスの説明は続いた。

「と、言うわけだ」

「要するに、俺以外は腹をすかせた山犬に餌をやろうとしてここに来たわけですね」

「まぁ、そうだな」

「と、言うわけでよろしかったら一緒に食べませんか?」

「佐祐理は構いませんけど・・・」

「・・・佐祐理がいいならそれでいい」

 その後、五人は階段の踊り場で楽しい昼食会を開いた。

 そして、ようやく少女の名前を知ることが出来た。少女の前は川澄 舞といい、そして舞が佐祐理と呼んでいた少女は倉田 佐祐理と言って舞の親友である。



「結局わからずじまいだったか・・・」

 アキトは夕方の商店街を歩きながら、舞のことを考えていた。

「アキトーーー!!!!」

「はっ!」

 アキトは後ろから飛んでくるものを感じ、すぐさま横によけた。

 ズザザザザーーー

「うぐぅ〜〜〜、ひどいよぉ〜〜〜」

 そして、その直後あゆがヘッドスライディングしてくる。

「何してんだあゆ?こんなところで・・・」

 しかし、アキトはヘッドスライディングのことは気にせずに聞いた。

「うん。ボクは探し物をしているんだよ」

「探し物?」

「うん。でも、それがなんだかはわからないんだけど・・・」

「それじゃあ、探しようがないだろう」

「でも、なんだか探さなくちゃいけないような気がして・・・」

「しょうがないな」

「?」

「一緒に探してやるよ」

「・・・いいの?」

「いいから行くぞ」

「うんっ!!」



 そして、二時間後・・・

「うぐぅ〜〜」

「見つからなかったね」

「うぐぅ〜〜」

 あゆは恨めしそうな目でアキトを見た。

「・・・タイヤキ奢るからその目はやめてくれ」

「ホント!!?」



 はぐはぐ

 アキト達はタイヤキ屋から近くのベンチでタイヤキをほお張っていた。タイヤキ屋の前にもベンチはあるのだが、あゆが指名手配されているため使用不能なのであった。

「しかし、あゆは変わらないな」

「うぐ?」

「昔からタイヤキさえあげれば、機嫌が直るんだもんなぁ〜〜」

 アキトは遠い目をして昔を思い出していた。

 あゆが泣いている時、タイヤキを手品のごとく出す自分そしてそれに喜ぶあゆとおひねりをくれる周りの人たち。

「・・・俺、マジシャンにでもなろうかな」

「うぐ?」

「って言うか、なんでマジックでタイヤキを出してたんだ俺?」

 それは永遠の謎である。

「うぐぅ〜〜。無視しないでよ」

 あゆはまた泣きそうになった。

「ほい」

 ポン

 そして、アキトは手からタイヤキを出した。

「わぁ〜。すごいすごい」

 そして、それに喜ぶあゆ。

「そ、そうかこの手があったか!!」

「ど、どうしたのアキト?」

「サンキュー、あゆこれで大丈夫だ!!」

 アキトはそう言ってあゆに微笑みかけるとそのままいずこかへ去った。



「どこいくの?」

 夜、アキトが学校へ向かおうとすると、階段から真琴が話し掛けてきた。

「学校」

 アキトはそう言うとさっさと家を出て行った。

「・・・あやしい」

 そう言う真琴の目は同盟がアキトを(女関係で)疑う時の目だった。



「舞、いるか?」

 アキトは夜、誰もいないはずの校舎で舞を呼んだ。

「・・・また、来たの」

 すると、舞が廊下の影から現れた。

「はい」

 ポン

 つかさずアキトは手のひらから吉○家の牛丼(並)を出した。某学園の某新聞部部長から結構高い犠牲を払って舞の好物を聞き出したのだ。

「(じーー)」

 舞はアキトの手のひらに乗った牛丼を眺めている。

「(じーー)」

 舞はアキトの手のひらに乗った牛丼を眺めている。

「(じーー)」

 舞はアキトの手のひらに乗った牛丼を眺めている。



「(もぐもぐ)」

 舞は剣を横に立て牛丼を食べていた。

「美味しい?」

「(こく)」

 舞は無言で頷いた。

「・・・どうして来たの?」

 舞は箸を止め聞いた。

「ちょっと気になることがあってね」

「そう・・・」

 そして、舞は再び箸を進め・・・ると思ったが、突然牛丼をアキトに投げ渡し剣をとった。

「まだ、食べかけだから」

 舞はそう言うと走り去ってしまった。

 キンッ キンッ

 そして、遠くから剣の音が聞こえてくる。

「やれやれ」

 ビュン

 パリンッ!! パリンッ!!

 アキトが首をかしげるとその横を魔物が通過し、魔物はそのまま窓ガラスを割っていった。

「さて、こいつを守りきれるかな?」

「グゥゥゥゥウウウウ。ガァァァァァァアアアアッ!!!!」

「遅いな」

 魔物は盛んにアキトに遅いかかって来るが、アキトはすべてかわしていた。しかし、全く攻撃もしていなかった。

「・・・これさえなければ攻撃もできるんだけどな」

 アキトの両手は食べかけの牛丼でふさがっていたのだった。

「さすがに器物破壊は出来ないからな」

 アキトは苦笑した。

「キギャアアアアアアアアアアアッ!!!!」

「な、もう一体!!??」

 アキトが気づいた時には魔物はアキトのすぐそばまで来ていた。

 ザシュゥゥゥゥウウウウ

 しかし、その魔物の手はアキトに届くことはなかった。

「私の牛丼は誰にも渡さない」

 舞が切りつけたのである。

 そして、舞が来ると魔物たちは撤退した。

「・・・・牛丼」

「俺より牛丼か・・・」

 アキトは悲しくなった。



 そして翌日、アキトと名雪が珍しく余裕を持って登校すると、学校の前に生徒がたむろしていた。

「なんだ?どうしたんだ?」

「名雪!相沢君!!」

 香里がアキト達に走り寄ってきた。

「あ、かおり〜〜〜」

「この騒ぎは?」

「なんでも、川澄 舞がまたやったららしいぜ」

「北川君」

「よっす、相沢に水瀬」

「舞が・・・!?」

「どうしたの、アキト?」

「噂をすればなんとやらだ」

 北川が指差す先にはゆっくりと静かに登校してくる舞の姿があった。



「川澄さん」

 そして、その舞に久瀬と生徒会の連中が呼び止める。

「我々と一緒に来てもらおうか」



第五話へ

 

作者の後書き

前回、スピードを速めるとか言いながら、結局いつもより若干遅いペースなってしまった(反省)。

何のためにアニメイトでKANONのシナリオ集を買ったんだか・・・

それにそろそろオリジナルの展開をかんがえなきゃな。

 

キャラ設定 その4『倉田 佐祐理』

性別、女

年齢、18歳

生年月日、5月5日

好きなこと、舞と一緒にいること

特技、炊事洗濯家事全般

部活、帰宅部

その他、特記事項、

倉田財閥の一人娘。学校位置の問題児『川澄 舞』の親友。

入学当初は生徒会に入っていたが、舞の事件で責任を取り辞任。

そして以後、反生徒会の象徴にされるが本人には自覚なし。

無愛想な舞とは違い、いつもニコニコして愛想もいい

精神的に大人なので、アキトに惚れることはないと考えられる。ただし、初めて舞を理解した(と思っている)シュンが気になっている。

 

その他設定 その2『倉田財閥』

ネルガル、クリムゾンや明日香インダストリーには劣るが、世界で十指に入る大企業。

佐祐理はその会長の孫娘。

 

 

管理人の感想

藤林 ノエルさんからの投稿です。

すみません、私もカノンをした事ないんです(苦笑)

手元にゲームはあるんですけどね、遊ぶ暇が無いんですよ。

でも、最後の人物紹介のような項目は、そういう意味では嬉しいですね。

さて、この話はカノン本筋と同じような進み方なのでしょうか?

そんな事を思いつつ、次の投稿を楽しみに待たせてもらいますね。