第五話  報告書

 現在ナデシコは最後の物資補給をサツキミドリで行なうべく航行している。

その際、その近辺を練習航海している宇宙軍艦艇と会合。ムネタケ中佐以下軍令部のオブザーバーを退艦させるらしい。

 うらやましい事だ。今のところ俺には何の命令も無い。まぁ出世頭のエリート士官と、野戦任官の俺を比較しても意味はないか・・・。



  モリの日記より




 モリは自室で艦政本部に提出するレポートの文面を練っていた。

相転移エンジン搭載艦ナデシコの有効性と欠点

発:艦政本部艦艇艤装室 モリ・シゲオ宇宙軍特務大尉

宛:艦政本部第一設計室

 現時点で分かっているナデシコの有効性と欠点は下記のとおりである。

有効性

 新型相転移エンジンのもたらす膨大なエネルギーは従来では考えられなかったさまざまさ新装備

―――グラビティブラスト・ディストーションフィールド等――を搭載しなおかつ従来艦艇より小型化を行うことを可能にした。

 なおかつ、従来とは比べられないほど大威力の新型機動兵器を航続距離の制限があるとはいえ運用でき、この機動兵器により

あらゆる場面においてナデシコというシステムは高い汎用性をしるすこととなった。

 さらに新世代AIオモイカネの使用により艦内運用を大幅に自動化することが出来き、少人数化にも貢献している。

これは個人的意見ではあるが、ナデシコの高い能力は相転移エンジンの搭載もさることながらオモイカネシステムの導入がもっとも影響を与えていると思われる。

欠点

 ナデシコの弱点はなんと言っても近接防御兵器の欠如、グラビティブラスト以外の高威力攻撃兵器の欠如、実態弾兵装の貧弱さがあげられる。

とくに近接防御兵器の欠落は致命的であり、エステバリスがなければ防空戦闘を行うことは不可能と判断される。

また、いくら相転移エンジンのもたらすエネルギーが膨大とはいえディストーションフィールドとグラビディブラストを最大出力で同時運用することは難しく

フィールド強化の為に一時的に攻撃が行えなくなることを考えられる。さらに実態弾兵装の貧弱さは相対的にグラビティブラストの使用頻度を大きくし

先述した事態をより高く引き起こす要因となる可能性が高くする。

 さらに、ナデシコ単艦のシステムにおいてその高い汎用性をしるしていたエステバリスも、集団運用を行う場面においてはそのメリットを大きく失うと思われる。

なぜならば、数機を搭載する為に格納整備スペースを少なからず必要とするからである。ならば、集団運用を前提しエネルギー供給システムのみを残し機動兵器は

専門母艦に任せその開いたスペースでさらに単艦の完成度を上げるべきである。

 総括

 ナデシコというシステムにおいていくつかの欠点は有するものの、基本的に優秀かつ完成度が高く今後の新造艦艇の大きな指針になると思われる。

「うん・・・随分とそれらしい文章になったな」

 モリは自分のタイプした文章を読み直して言った。

それにしても、オモイカネシステムをさらに進化させればそのうち1艦1名なんて事になるかもれないな。モリはふと浮かんだ妄想に苦笑いを浮かべた。

「さて、次の報告書の期限は火星期間後か・・・生きて帰れるのかねぇ〜」

モリは頭の後ろで腕を組んで背もたれに寄りかかった。

「やめやめ、ウリバタケさんの所に行ってなんか改造させてもうかな・・・!」

 どうせ火星に着けば悩む暇すらないんだ、今だけでも楽しもう。モリはそう思って部屋をあとにした。

              

あとがき

 ほとんど書き直しです。なぜかって?「モリ単体でギャクはかけないということが分かったから」です(核爆)

いやはや、改めてタチナバ・ミサ嬢のありがたみを痛感しました。

              敬句