第7話 サツキミドリ 中編

 エステバリス3機の回収と3人のパイロットと合流した我々は補給し損ねた物資を月で補給することになった。

どうせなら月で降りられないかな?・・・等と出来もしないことに思いを寄せてしまったりもする。

 それにしてもあのマキイズミという女性はどうやって気密性のないツールボックスの中で生きていられたのだろう?


 

それ以前にスバルリョーコのエステバリスがツールボックスを回収せずに脱出する可能性だってあったのに・・・。

 なんか深く考えるのが怖いな・・・。


  モリの日記より




 ナデシコが月へと進路をとるべく準備をしてるときそれは起こった。

「サツキミドリ内部より救難信号」

 メグミの声にブリッジ上段で細かい打ち合わせをしていた数名がサツキミドリを振り返った。

          

「救難信号?・・・まだ誰かいるのでしょうか?」 

「誤報かもしれないぞ、少尉。軽々しく動いてはいらん損害をこうむるかもしれん」

「ゴートさんの言うこともわかりますが、我が社としては社員を見捨てたとあれば企業イメージに悪い影響を及ぼしますな」

「どうるする、ユリカ?」

「少佐はどう思われますか」 

 なぜ俺にお鉢が回ってくる、と思いながらモリは常識的な答えを言う。

「―――本来なら確認のため偵察部隊を派遣するのが妥当だろう。が、この艦のクルーに白兵戦の経験がある人間は殆どいない。

この手の少数偵察、救出行動はよく訓練された兵士が行ってはじめて勝算が出てくる。よってこのまま月へ進路をとるべきだ」

「また見殺しにするのか!軍隊は!!」

 ブリッジ下段から聞いていたアキトが叫んだ。

「・・・テンカワ君。話を聞くのは自由だが、発言は控えてもらおうか。君にこの話し合いに参加する資格はない」

 アキトに振り向くことすらせずにモリは言う。

「―――救出しましょう。ルリちゃん、詳しい情報分析を。関係者はミーティングルームへ。―――これでいいですね、少佐」

 ユリカはモリに挑むような目で言った。

「・・・この艦の指揮官はあなただ」

 モリは目を細めた。


「それでは作戦を説明する」

 ゴートの説明は2案に分かれていた。ナデシコをサツキミドリまで接近させ敵の動向をうかがう。もし敵の何らかの行動がなければ直ちにエステバリス2機の支援の下

揚陸艇でサツキミドリ内に進入、発信源へ急行、生存者がいる場合は回収、その後内部偵察を行う。

 敵の反撃がある場合はナデシコと直援2機のエステバリスで敵を誘引、エステバリス1機の支援の元サツキミドリへ急襲。

生存者の回収のみを行い直ちに脱出。

「偵察班は私とゴートさん。それにタチバナ少尉、テンカワ君の4名。指揮は私が取ります―――何か質問は?」

 ゴートの説明を引き継いでモリは偵察班のメンバーを発表する。

「なんでアキトさんなんですか?」

「メインパイロットを除いて、エステバリスを通してだがテンカワ君は木星トカゲとの戦闘経験がある、それが理由だ。・・・悪いが付き合ってもらうぞ」

 メグミの非難と抗議の入り混じった質問に答えながらモリはアキトを見た。

「勝手にしろ・・・!」

           

 アキトは体の奥底から湧き上がってくる恐怖と戦いながら搾り出すように言った。


「・・・少佐殿、本当によろしいのですか?」

 揚陸艇内でそれまで無言だったミサは唐突に言った。

「何が?」

 携帯式の電子地図にさまざまな書き込みをしながらモリは言った。

「テンカワさんのことです。彼、民間人ですよ?」

「―――ゴートさんも民間人だぞ?それにこの艦で軍人は2人しかいない、どの道誰かが参加しないといけないんだ」

「しかし少佐殿」

「じゃんけんの後出しはよくないぞ、少尉。・・・来たか―――テンカワ君、席はどこでもいいからシートベルトを。偵察班よりブリッジ、準備OKだ」

 アキトの姿を認めるとモリはミサとの会話を打ち切った。

『こちらブリッジ、了解しました。作戦を開始します。・・・アキトさん無事に帰ってきてくださいね』

「―――無事に帰ってきてください、か。・・・私も一度言われてみたいな」

「・・・少佐殿、彼女は?」

 モリの独白を聞いてミサはふと思ったことを言った。

「欲しいけどいない。何なら付き合うか、少尉?」

「・・・・・・面白い冗談ですね」

 モリの意外に子供っぽい笑顔に誘われたのかミサは緊張した表情に引きつりながらも笑みを浮かべて答えた。

「ナデシコより離艦する。現在のところ敵影は見えない。このままサツキミドリ内部へ侵入する」

コクピットからゴートの声が聞こえた、わずかに衝撃があった。

「いよいよですね・・・」

「もっとリラックスしろ、といっても無理か」

 喋る事によって襲い繰る恐怖に耐えようとするミサに合いの手をうちながらモリはアキトに首だけ向けた。

「テンカワ君。大丈夫か?」

「・・・大丈夫だ」

 青ざめながらもアキトは答えた。モリは虚勢とは言え大丈夫と言ったアキトを素直に凄いと思った。

「少佐殿はどうなんですか?」

「怖いぞ。でもなるようにしかならないと思ってる・・・。自分でもあきれるような図太さだよ、いや開き直りかな?」

「サツキミドリ内部に侵入する」

 ゴートの声を聞いてモリはシートベルトをはずすとライフルを片手に出口に駆け寄った。

「少佐殿?」

「全員スーツの作動を確認!私が手招きしたら出来るだけ腰を低くしてついて来い」

「作動を確認した」

「・・・・・・こちらも確認」

 ゴートにならってミサも正常に機能していることを声に出す。

「テンカワは!」

「え、・・・動いてるけど」

「それならちゃんと報告しろ!」

 モリの罵声にアキトの青かった顔が怒りで赤くなった。

「まもなく着陸する」

「モリよりナデシコ。これより偵察を開始する。なお緊急時を除き連絡は10分おきに行う、送レ」

『こちらナデシコ。了解しました。御武運を』

 どうせなら無事に帰ってきてとかそういう気の利いた事言って欲しかったな、一瞬そんなことを考えてモリは飛び出した。





あとがき


 あう、アクション・・・。

なんか・・・また膨らんだよぉ〜(泣

物書きに向いてないのかな?

でも書き始めたからには書き終えないと・・・・・・。

 物書きの執念・・・見せてくれるわ

それでは、サツキミドリ後編をお楽しみください。次は間違いなくアクションです。

                                             

 敬句 


 

代理人の感想

・・・いや、さすがに気密性がなかったら死んでる様な気も・・・いやしかし、イズミさんだしな(爆)。