「見〜つけた。」

私は、素敵に笑顔でアキトの写真を見ていた。

「私から逃げられるなんて考えないことね。アキト。」

私は、プロスさんからもらった書類を見つつ、彼との思い出を振りかえっていた。

















「あ、アキト君」

俺が、学校の正門をくぐり外へ出るとそこには他校の生徒がいた。

「え? 誰だっけ」

俺が何の考えもなくそう言うと、顔を暗くしてうつむいた。

ポタポタと涙が地面に落ちている。さすがに、俺は慌てて、顔を思い出そうとした。

(アツヒロに似て・・・・・・、そうか、ジュンだ。)

「じょ、冗談だよ、アオイジュンさん。」

そう言って、昔アカツキの教わった通り、ハンカチで涙をふいてやる。

「ほ、本当?」

「ああ、からかうつもりだったんだが、そこまで純だとは思わなかった。すまん。お詫びにデートでもしません?」

(ああ、アカツキ感謝する。君のおかげで女性の扱い方が多少分かってきたよ・・・。)

ジュンは、俺に分かるほど顔を真っ赤にして頷いた。





いつもなら絶対入らないコーヒーショップの扉をくぐる。コーヒーの薫りが俺の鼻に入る。壁際の4人がけの席に座る。

「何が良い?」

メニューを渡し、尋ねる。

「じゃあ、ミルクティーを・・・・・・。」

「すみません、ミルクティーとコーヒーをブラックで。」

俺が店員に頼んでいる間中、他の客が俺とジュンをチラチラ見ている。・・・・・・、とりあえず無視しておこう。

(俺のところにジュンが来るなんて、何かあったのか?フクダ中佐の上位者か、部下がいたのか?ひとまず、それを聞いておくか。)

「何かあったのか?」

「え?」

「いや、君が俺のところに来るなんてさ。俺のことアオイ中佐から聞いてないのか?俺の仕事のこと。」

「アキト君が、ネルガルの人ってことは聞いているけど、詳しくは聞いてないよ。それに、アキト君のところへは用事がないと来ちゃ行けないの?」

「いや、そういうわけじゃないんだが。さすがに、驚いたんだよ。昨日の今日だし。」

「ごめんなさい。」

「いや、いいんだ。で、この後何か用事ある?」

「え!? ないけど、デートなんでしょ。」

「そうだったね。じゃ、まぁ、少しのんびりしたらつきあってもらおうかな。今日、新しい料理作ろうと思ってたから。」

「料理!?アキト君が?」

「変か?」

「いや、そんなことないけど。(一緒に料理作るのもいいかも)」












「さ、どうぞ。」

「お、お邪魔します。」

キャー、男の人のお部屋に入っちゃった。

彼の部屋は1LDKだった。でも、一人暮しには似つかない、広いキッチンがあったりする。

「きれいにしているのね。」

「・・・・まあ、料理人志望だった時もあるからね。汚れは大敵なのさ。」


彼は、私に椅子に座っているよう言うと、調理場に立つ。私も何か手伝いたくて、彼に尋ねてみた。

「本当はお客様には座って待っていてほしいんだけど、紅茶の入れ方知ってる?」

私は、母に付き合って紅茶の入れ方を学んでいたので立ちあがりお湯を沸かすことにした。

彼は、ほとんど無駄のない動きでシュークリームを作ってしまう。

紅茶を入れながら、試食する。


「おいしい。」

率直な感想だった。

有名な洋菓子店のだといわれても違和感ないぐらいおいしかった。

彼にそう言うと彼は本当に素敵な笑顔で答えてくれた。

私の頬が、紅潮していってしまう。

間をうめようと目を閉じ紅茶を一口のむ。彼を見ると席にいなかった。

(あれ?)

少しして小さな紙袋を彼は持ってきた。

「この間の食事のお礼。シュークリームを詰めたから、持って帰ってみんなで食べてみてよ。」

私に、笑いかけながらそう言ってテーブルの上に置いた。













「アキト君、彼女ですか?」

俺がジュンを見送って帰ってくるとプロスさんがいた。

「違いますよ、この間お話したアオイ中佐のご息女です。友人ですね。」

「君が、ここに連れてくるんです、今は・・・でしょう?」

そう言って、笑う。俺は、頬を赤くし、プロスさんから顔をそらした。そして、そのまま言う。

「・・・・・・この間は、お手数をかけました。」

「フクダ中佐のことですか。」

「はい、原因を取り除くことに夢中で、先を考えていませんでした。」

「かまいません。それに、そのおかげでアオイ中佐というパイプが出来ましたし、賄賂を請求する人が少なくなってネルガルもラッキーでした。ま、一石二鳥、いえ、アキト君に彼女が出来るとなれば一石三鳥ですね。」

「プ、プロスさん。・・・・・・はぁ。やっぱり、食えない人ですね。プロスさんは。」

「はっはっは、もっと修行をつみなさい、アキト君。」





「さて、アキト君、ちょっと仕事をお願いして良いですかな?」

「何でしょう。」

「人体実験をしている可能性のある研究所がありましてね。しかし、確証がないんですよ。」

「潜入、ですね。」

「はい、お願いできますか?」

「事実なら・・・・、殲滅してもかまいませんね?」

「かまいません。そのときは・・・。」

「研究所を・・・ですね。任務、了解しました。足の用意をお願いします。」

プロスは、頷き目的地までの足を準備しに事務所へと戻っていった。









未来を、君に・・・




PRINCSS OF DARKNESS





新たなる時代


プロローグ2 闇の公子 償い方を知る













「おかえりなさい、アキト君。どうで・・・黒でしたか。」

「・・・・・・はい。一人も、一人も助けられませんでした。研究所は、消しておきました。」

「助けられなかったのは君のせいではありませんよ。気を落さないで下さい。」

「しかし、俺がもっと速く行っていれば・・・・・・。」

「アキト君、助けられなかった人よりも、これから救える人のことを思いなさい。それが、我々に出来る償い方なんですよ。」

「プロスさん・・・・・・。」

「今日はつかれたでしょう。もう休みなさい。」

「はい。失礼します。」

彼が出ていった後、私は考えていた。

(・・・・・・。責任者は分かっていますから、消えていただきますか。私の息子を苦しめた報いを受けていただかねばなりませんね。)

私は、会長に報告するために本社の方向へ歩き出した。












私は、アキト君の所へ会いに来ています。今日は、シュークリームのお礼にケーキを作って持ってきました。

(アキト君、喜んでくれるかな。)

不安と期待の入り混じった不思議な気持ち・・・・・・。

お父様が言っていた事を思い出す。

アキト君が、人を殺すような仕事もしているだろうと。人を殺す。確かに悪いことだ。

でも、それを言ったら私はお父様も否定することになる。

皆のために、殺した人の屍の上に平和を築くのが、お父様の、軍人の仕事だから。

だから、私はアキト君が怖くなかった。






コンコン



部屋のドアをノックする。

「・・・・・・誰だ?」

暗い声だった。アキト君のものとは思えないぐらい・・・・。

「あの、ジュンです。」

ドアが開く。無表情なアキト君がいた。

「・・・・・・すまないな。今、機嫌が悪いんだ。一緒にいれば君が傷つくかもしれない、今日は、帰って欲しい。」

私は、一瞬帰ろうかと思った。

(・・・・でも、帰ったら、アキト君、もう私に笑ってくれないかもしれない。)

「失礼しま〜す。」

私は、なるだけ明るく言いながら、アキト君を押しのけるように無理やり入った。

アキト君に何があったのか、私にはわからない。・・・・けど、一緒にいたかった。割れかけたガラス細工のようだったから。



「ケーキ持ってきたの。食べましょう。」

私は台所でケーキを切って持ってきた。コーヒーを二人分、彼のはブラックで入れる。

彼は、椅子に座って、黙っていた。

「どうぞ。」

ケーキとコーヒーを置いて私は彼を見ていた。

「何があったの?」

答えてくれないかもしれない。それでも私は聞かずにいれなかった。

「聞かないほうがいい。それに、聞いてどうする?」

自嘲気味に彼は私に乾いた笑いを向ける。

「・・・私は、聞きたい。貴方を知りたいから。」

私は、正直迷っていた。彼は、私に、本当に話してくれるだろう。心のうちを・・・・。

でも、彼が苦しむほどの心の闇、私に受けきれるのだろうかと。

それでも、私は、彼を好きでいられるのだろうか。





アキト君は、ため息を一つつくとコーヒーを一口のみ話し出した。

「任務を受けた。人体実験を行っているかもしれない研究所への潜入。そして、そこは黒で、誰も、誰も助けられなかったんだ。一人もだ。苦しみながら、俺に楽にしてくれという被験者達を、俺は、俺は・・・・・・。」

彼は、そう言いながら泣いていた。うめきながら、謝罪と悔恨と研究者への憎悪が入り混じった表情・・・・。

私は、立ちあがり彼の後ろへ回る。そして、彼の頭を抱く。

「耐えなくていいよ。私には君の痛みも何も分からないけど・・・・耐えなくていい。今は、頑張らなくてもいいんだよ。」







何故だろう。こいつの、ジュンの声が俺に一時の安らぎをくれる。

この世界に来た時から俺は決めていた。

俺は、罪人だと、許されることのないものだと。

眠ろうとすると聞こえる関係なかったであろうコロニーの住人の声が・・・・。

すべてが、俺を閉じ込めていた。まるで密室の様に。


『今は、頑張らなくてもいいんだよ』


彼女の声が俺のいる部屋に窓をあける。何故だろう、許されるはずのない罪人であるこの俺が。

俺は、いてもいいのか。俺という存在はここにいることを許されるのか?


『アキト君、助けられなかった人よりも、これから救える人のことを思いなさい。それが、我々に出来る償い方なんですよ。』


プロスさんの言葉が俺の心に響く。

(偽善だな。許される逃げ道を心が捜しているのか。)

俺は、肩に落ちる水滴を感じ、目を開いた。ジュンが、俺を抱いて泣いているのが分かった。

(泣かせてしまったか。つくづく、度し難い男だな、・・・・・・俺は。)


「すまないな、ジュン。弱気になってしまった。」

俺は、彼女を椅子に座らせ、涙をタオルで優しく拭いてやる。

「・・・もう、大丈夫?」

彼女の問いに俺は頷き、

「さて、君が持ってきてくれたケーキ、頂くとしようか。」

俺がそう言うと彼女は笑顔で応じてくれた。




俺は、こいつが、アオイジュンが好きなのかもしれない。

自覚してしまうと歯止めというものは、利かないのだろうか。ジュンと時間が許す限り一緒にいることにした。
















それでも時間は過ぎ行く。

第一次火星大戦が、ほぼ一年前に迫っていた。



「こんにちは、プロスさん。アキト、部屋にはいないみたいなんですけど、知ってますか?」

私は、アキトの所に遊びに行くうちに知り合ったプロスさんに話し掛けた。

「それなんですが、実は、アキト君はとある事情でネルガルをやめたのです。」

私は、目の前が真っ暗になったような気がした。

「えっ!?じゃあ、アキトはどこに!?」

「手紙を預かっています。こちらです。」

私は、プロスさんから手紙を受け取ると、すぐに開けた。

『   ジュンへ

   この手紙を読んでいるということは、俺が別れの挨拶も出来ずに去ったということだろう。

すまない。君に挨拶して、事情を説明する時間がなかったんだ。俺は、これから火星に行き、

やりのこしたことを成し遂げねばならない。もし、君にこれを言うと、ついて来ようとするだろう。

だが、この火星への仕事だけは俺がしなければならないのだ。心配しないでくれ。きっと元気な顔で君に会うよ。

アキト     』






私は、アキトからの手紙を握り締めた。

「あの、朴念仁がぁ〜〜〜〜。」












それから、1年後火星が陥落したことを知ったが、私はアキトが死んだなどとは思わなかった。

そして、そのすぐ後、プロスさんが尋ねてきた。




「お久しぶりです。ジュンさん。」

「お久しぶりです、プロスさん。今日はどうしたんですか?」

「ええ、実はお話がありまして、率直に言わせていただくとネルガルとヴァルハラ共同所有の戦艦に乗って頂けませんか?」

「民間の戦艦ですか?軍ではなく?」

「はい、機動戦艦ナデシコといいます。その副艦長をして頂けませんか?」

「はあ。」

「ここだけの話。」

そう言って見せてくれたのは、乗員名簿だった。見た瞬間目を疑い、そして、即決した。

「乗ります。」






『出向社員   株式会社ヴァルハラ 機動兵器部門シヴァ所属パイロット テンカワアキト』





「見つけたからね、アキト。逃がさないわよ。」

私は、アキトに会ったらどうしてやろうかを考え拳に力をこめた。












<おまけ>
「な、何だ!?今の寒気は。」

「どうしたの、アキト兄。」

「いや、何でもない。」

「それにしても良かったのアキト兄?」

「何がだ?」

「アオイジュンさんだっけ?」

「ラ、ラピス、どうしてそれを?」

「スクルドが、街の監視カメラ覗いてて偶然見つけたの(笑)。ま、それはいいとして。ここまで巻き込んだんだから、最後までいっちゃえばいいのに。どうせ、ピーーーーッとか、ピーーーーッとかしたんでしょう?」

「あわわわ、ラ、ラピスさん(汗)。」

「本当か、アキト。」

「と、父さん。」

「そうか、お前にも女が出来たか。よし一度つれてきなさい。なあ、キヨカ。」

「そうね〜。娘になるなら会っておきたいし。孫の顔も早く見たいしね〜。」

「いや、これから忙しくなるしさ。そんな余裕は・・・・・・。」

「「大丈夫だ(よ)。私達に任せなさい。」」

「お姉ちゃんがくるの〜? ヒスイ、会ってみたいな〜。」

「ああ、サファイアもサファイアも〜。」

「そ、そのうちね。」

 

 

代理人の感想

・・・・・・駄目だ、どうしても話がアキト×ジュンのホモ小説に見えて仕方がない(爆死)