2196年 4月8日 ワルシャワ

 早朝、まだ太陽が地平線の向こうで大地を照らす黎明。ワルシャワ中心街から徐々に青みがかった闇が消え去り、街に赤みがさし始めていた。
 だが朝の清澄な風が吹く華やかな新世界通りにも、歴史を積み重ねた重厚な石造りの旧市街にも、ショパンが居住したガジメシュ宮殿にも、人類を宇宙の中心から追いやったコペルニクスの像の前にも、誰一人曙を出迎えようとする人間はいなかった。

 市民の大部分はワルシャワ陥落の前に山野に逃れ、抵抗の意思を持つ人間は暗い地下へ潜り、どちらでもない人間はこの世にいなかった。
 太陽を出迎えるのは血肉を持たない、金属とシリコンで出来た機械知性、ほぼ250年ぶりにワルシャワを征服した異邦人、木星蜥蜴の無人兵器群だった。

 彼らは何れも地球人的な感覚からすれば些か特異な風体をしていた。
もちろん、その機構を詳しく分析すれば人間が古来から愛用してきた歯車やネジといった古典的な部品が見つかるので、彼らが全く異質な技術や工学的な要求の元に作られているわけではないということは直ぐに分かる。

 しかしデザインからすれば、彼らは古今東西あらゆる民族の持っている固有の美意識とは反する外見を持っているのもまた事実だった。
 戦艦大和を思い起こして欲しい、あの戦国時代末期に現れた壮大な天守閣に似た檣楼を見れば誰があの船を生み出したのか直ぐに分かるだろう。
 第二次大戦で活躍したタイガー重戦車を思い起こして欲しい、あの切り立った垂直装甲の持つ無骨さ、誠実さ、融通の利かなさは、あの戦車を誰が作ったのかを百万の言葉よりも簡潔に教えてくれる。
 ハーレーに乗ったことはあるだろうか?あのいかにも燃費の悪そうな、ガソリンなら幾らでも買えるぜ!といった人間をターゲットにした潔いコンセプトの体現はあのバイクがどのような国の生まれか雄弁に物語っている。

 工業製品のデザインはその製品を作った民族の美意識がストレートに反映されるものなのである。
 その点において、ワルシャワの観光名所であるワジェンキ公園の森の中に偽装されて眠っていた大型トレーラーは他の無人兵器、バッタやジョロとは明らかに異なる出自であることが直ぐに分かる。

 4軸8輪という巨大な車体から受ける印象は頑強さ、その裏返しの単純さ、そして実用性を追求した機能美、このような設計を得意とするのは北の大熊ロシア人において他ない。
 ではこのロシア製の大型トレーラーの目的は何だろうか?

 それも一目瞭然としている。
 背中に背負った巨大な先端の尖った筒。
射程距離600km、ペイロードは1200kg、一段式エンジン、即応性の高い固形燃料を使用、誘導方式は慣性及び終末誘導に高精度赤外線画像フォーカルプレーンを使用。CEP(半数必中界)は僅かに10メートル。
 最新鋭中距離戦術弾道ミサイル、R―1500。所謂スカッドミサイルの最新ヴァージョンだった。

 当然のことだが、ABC(核、生物、化学)弾頭を搭載できる。
 その強大な破壊力を秘めたミサイルは現在偽装ネットの下で眠りについていた。
 既に地球連合軍の航空戦力は壊滅状態で、宇宙軍の艦隊も月防衛戦に貼り付けられている現在、この眠れる獅子の安全は完全に確保されており、獅子は惰眠を貪っていた。

 そんな眠りこける獅子を他所に、太陽は遂に地平線に姿を現した。
 朝日が燦々とミサイルを照らす。
 同時に、4軸8輪という大型ミサイルキャリアはディゼルエンジンを始動。弾道ミサイルの発射シーケンスを開始した。
 別に朝日との因果関係はない。ただ単にミサイル発射システムが量子暗号を受信したのが日の出と同時だっただけである。

 だが、朝日の中で垂直に起立するR−1500、スカッドJはまさに朝の光に目覚め、朝一番の狩りに出かけようとする獅子そのものだった。
 ポーランドの首都ワルシャワの市街各所において同様の光景が散在していた。
 


 4月8日 ベルリン フリードリッヒスハイン区

「くそ眠い」

 俺は欠伸をかみ殺すのも忘れるほど眠かった。
 あたりには自分と同じような表情をした兵士、国民突撃隊とかいう馬鹿な組織に引っ張られた学生が5人、なんとか寝ないようにおしゃべりをしていた。
 もっとも、何を話しているかはさっぱり分からない。
 なぜならば5人はドイツ人で、自分はモンゴル人であるからだ。
 眠気覚ましにおしゃべりに加わりたいが、言葉が分からないし、おまけに5人は自分の息子と大して変わらないぐらいの歳だった。これでは会話など成り立つはずもない。
 
「なんで俺はこんなところで戦わなきゃならんのか…」

 俺は瓦礫と土嚢で作られた急造陣地に体をもたれ掛けた。
 辺りには略奪を受けた商店が並んでいる。すっかり荒れ果てているが、それでも故郷のどんな町よりも豊かだったであろうことは簡単に分かった。

 故郷には無い風景である。
 そう、故郷のためになら話はわかる。故郷の草原を侵す者がいれば容赦はしない。例えこの身が玉となって砕け散ろうが最後まで戦う覚悟はある。
 だが何の因果か俺が送られたのはロシアのボルゴグラードという町で、そこで碌に飯も毛布もない酷寒中戦う羽目になった。
 おまけに戦闘は木星蜥蜴の勝利に終わり、地球連合はボルゴグラードを失った。俺は凍傷と地雷で足の指を3本、手の指を1本失った。

 それから先は勝った戦闘など幾度もない。
 いっしょに故郷から送られてきた仲間はどんどん倒れ、このベルリンまで落ち延びたときにはモンゴル軍地球連合拠出軍団第12歩兵師団チンギス・ハーン名誉騎兵連隊(本当に糞長い名前だ)の生き残りは俺一人になっていた。
 周りに言葉が通じる人間は一人もいないというのは存外に堪えるものだった。
 いっそのこと死んでやろうかと思ったこともある。

 自棄を起こして野戦憲兵に喧嘩を売って、あわや銃殺刑までいった。今俺が生きていられるのはユキカゼ曹長とハインツ少佐のおかげである。
 死刑執行の憲兵を殴り倒して、少佐と曹長は俺を引っ張っていって行った。
 そして少佐とユキカゼ曹長はたどたどしいモンゴル語で俺のことを叱ってくれた。ヘタクソでほとんど何を言っているか分からなかったが、故郷の言葉を聞いた俺は何時の間にか泣いて謝っていた。
 
「ま、少佐と曹長には恥ずかしいところを見られちまったし、しょうがないわな」

 瓦礫の下に埋もれていた自販機から発掘した出土品。ニコチンのきついドイツ煙草に火をつけて俺は言った。
 あの二人はまだ諦めていないのなら、俺はそれに付いて行くしかない。
 固まった首を鳴らして空を見上げた。紫煙の立ち昇る青い空。昨日から続く警戒態勢はまだ解けない。

 銃声も、砲声も、悲鳴も、怒号も、嗚咽も、断末魔も、何も聞こえない。若い兵士のおしゃべりだけが小鳥の囀りのように響く空。
 不気味なぐらいに静かな夜明けだった。



 R−1500の発射シーケンスは予定よりも2パーセント遅く進んでいた。
 原因はおそらく木連製のコンピューターとロシア製弾道ミサイルのソフトウェアとハードウェアの相性の悪さによるものだろう。
 だが、保存や取り扱いの容易な固形燃料HTPB(Hydroxyle-Terminated Plybutadiene)を使用し、可能な限りの自動化を行ったR−1500は発射準備に30分しかかからないので、2パーセントの遅れなど問題ではなかった。

 各種点検は猛スピードで進んでいく。
地上管制の為の電波リンクの点検、火工品電池の結線、気畜器の漏洩、バルブの点検、搭載計算機用プログラムの点検、気畜器の高圧充填。
 各種支援車両の助けと相性が悪いながらも高性能な木連製コンピューターにより準備は完成した。

 間髪入れず、ミサイル発射許可を軍団司令部へ送り、すぐさま返って来た発射許可に従い、17発のR−1500のロケットエンジンに火が入る。
 自走ミサイルキャリアーのディーゼルエンジンから供給された電力を用いて、固体燃料に電気着火、水素と酸素は爆発的なスピードで化学反応を開始。
 キャリアーは爆砕ボルトで支持アームを取り外す。ミサイル、上昇。
 青い炎と盛大な白煙を引いて、ミサイルは朝日を浴びて蒼穹へ消えていった。



「飯だ、飯だ」

 腹の虫が漂ってきた朝飯の匂いに反応して盛大な自己主張を始めていた。
 昨日から続く戦闘警戒はまだ解けないので、今日は持ち場で不味いレーションでも齧るしかないと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。
 大きな配食缶を背負った、これも学生兵士が熱いスープと黒パンを配ってくれた。
 昨日からやたらと不味い軍用クラッカーを齧って飢えをしのいで俺にとって食べ慣れないパンやスープでも十分なご馳走だった。

 アルミ製のカップに注がれたスープには肉とジャガイモが浮かんでいて食欲をそそる。
 だが、まだ儀式は終わっていない。
 俺はそっと他の兵士に気取られないようにスプーンをカップに突き刺した。そのまま底をかき回してキチンと具が入っているか調べる。
 最近では配食の腕も上がってきていて、表面だけに具を浮かべておいて、具をけちるという高等技術を駆使するようになっていたので油断できない。

 更にパンも二つに割って中身が詰まっているか調べる。
 口に入れた瞬間そのまま前歯が素通りしていく感覚は侘しさの極地だ。一体どうすればあんなハリボテにパンを焼けるのか、小一時間問い詰めたいものである。
 幸いにして、今日は両方ともきちんと中身が入っていた。
 だが、他の5人の学生兵士はそうでもなかったらしい。
 
「%$&%&!」

 何を言っているか分からないが、大方予想はついた。
 不思議なものでスラングの類はどんなに国の言葉でも大体意味は取れてしまうものだ。
 配食の学生兵士はニヤニヤと笑ってそれを見ている。そして時折意味ありげにこちらに視線を送ってきた。

「なるほど、こいつは道理がわかっているな」

 どうせ何を言ってもバレることがないので、こういう時は安心である。
 要するに配食係りが細工をして、"要領よく"食事を配ったと言うわけである。もちろんそれなりの見返りが目当てだ。
 一応、俺も古参の下士官なわけで、それなりに顔は利く。
 例えば、夜間訓練の日程を聞きだしたり、抜き打ち服装検査や小銃整備訓練の日程を知っていたりする。

 こちらにやや不安げに視線を向ける配食係りに俺は寛大な笑みを返してやった。その意味を理解し、ほくほく顔で配食係りは次の部隊へ走っていく。
 
「ま、軍人は要領を本分とすべしって言うからな」

 みすぼらしい朝飯をげんなりとした顔で食べる5人を尻目に、俺は豪勢な朝飯を頬張った。何故だか、いつもよりも美味しく感じられた。



 最初はほぼ垂直に上昇していたR−1500だったが、急速にその角度をなだらかなものにしていった。
 R−1500は対空レーザー砲、対空レールガンの迎撃からの逃れるために丸い大気の天井を這うように設計されている。
 最大弾道高は僅かに76km、人工衛星の中で一番低く飛ぶ軍用偵察衛星が高度120kmの軌道を回っていることを考えれば、驚異的に低い弾道だった。
 発射から1分12秒、最大弾道高に到達したR−1500の飛翔速度は毎秒4210メートルにまで達した。
 そしてこれはケプラー第二の法則に従うところの、R−1500の最低飛翔速度だった。
 更に、ほどなくして燃料をほとんど使い切ったブースターが切り反され、R−1500は発射当初の10分の1にまでスリムになり、重力の助けを借りて加速を始めた。
 R−1500は高みに登りつめ、そして重力に囚われて急速に速度を増しつつ地表へ、ベルリンへと落下していった。
 


 俺は配食された黒パンに一緒に配られたマーガリンを塗って頬張った。
 他の5人の学生兵士はマーガリンが気に入らないのか何も付けずに食べている。

「贅沢なこって」

 彼らの普段の食生活を想像して、少しうらやましく思った。
 普段からバターを食べているのは俺もあいつらも同じだろうが、俺は自分の家で飼っている山羊の乳から作った自家製バターで、あいつらのように箱に入って銀紙にくるんであるような贅沢なものではない。
 もちろん自家製バターの味は世界一だと自負しているが、それはエンゲル係数の表す経済格差の是正には何の役にも立たない。
 口の中に広がるマーガリンの味をかみ締めながら、ふと空を見上げた。
 

 
 R−1500は再び重力井戸の底へ戻ってきた。
 分厚い大気層をマッハ15,4の高速で貫き、弾頭を摩擦熱で赤熱させながら落下する。
 弾頭の温度は1500度を超えた。
 高熱で弾頭は赤色を発して融解しつつあったが、どのみち大気の中を飛ぶのは僅かに15秒程度なので問題ではなかった。
 慣性誘導装置と高精度赤外線画像フォーカルプレーンを使って、風や空気密度のばらつきで傾いだ弾道を修正しつつ、R−1500はゴールへ突き進んだ。
 速度は秒速4356メートルに達した。衝撃波だけで既に十分な破壊力をR−1500は持っていた。
 


 俺はそれが光か何かだと思った。
 空から光が降り注ぐのは別段不思議なことではない。太陽の光に地上は満ち溢れていた。
 だが、その光は真っ赤に燃えていて(光が燃えているなんて妙な話だが)まっすぐに突っ込んできた。
 


 R−1500に装備されている信管は全部で4つだった。
 一つは時限信管、いわゆる時限タイマーで起爆するタイプ。
 一つは近接信管、ドップラー効果を利用して最適のタイミングで起爆できるタイプ。
 一つは気圧信管、気圧の変化を感知して起爆するタイプ。
 そして最後に衝撃を感知して起爆する衝撃信管。
 何故4つも信管を使用するかというと、1つだけでは不慮の事故で信管が作動しなかった場合1発700万ドルもする高価なミサイルがただの打ち上げ花火になってしまうからである。

 今回はその行き届いた配慮が功を奏した。
 大気圏に再突入する際の衝撃で近接信管と気圧信管は動作不良を起こし、反応が異常なためにメインコンピューターから切り離され、生き残った衝撃信管と時限信管が作動した。
 枯れた技術だけあって信頼性の高い時限信管のアナログ式タイマーがゼロを指し、弾頭に収められた爆薬に電流を流した。

 爆薬を構成する水素、酸素は狂奔的に文字どおり爆発的な反応を開始、秒速8000メートルという高速で衝撃波を撒き散らした。
 同時に爆薬を取り囲むように設置された酸化エチレンが衝撃波に乗って大量に飛散、白い霧状の雲を作りだした。
 酸化エチレンで作られた雲は相対性理論にしたがって音速の数十倍のスピードで拡散、急速に密度を落としながらも広範囲へ、投網を投げるかのように広がっていく。
 爆薬が爆発してから約5秒、時限信管は再び作動。最適な混合比にまで拡散した酸化エチレンに再度爆薬を爆発させエチレンガスに点火した。

 酸化エチレンは空気と混合すれば爆発性ガスとなり、急速なスピードで酸素を喰らい尽くしながら燃焼。1平方cm辺り22kgの衝撃波と共に1000度を超える炎の庭をベルリン・フリードリッヒスハイン区に現出させた。
 衝撃波を受けた人間は内臓破裂で即死、続いて襲い掛かる炎で完全に地上から生存の痕跡を完全に消し去られた。
 地下街で守備についていた兵士は衝撃波と炎からは逃れえたものの、急激な酸化反応により空気中の酸素は消滅、地上よりもいくらか長生きしたが、より苦しんで死ぬ羽目になった。
 広範囲の炎によって生まれた上昇気流がどす黒い茸雲を発生させる。
ベルリン防衛部隊は核攻撃を受けたと勘違いし、パニック状態に陥った。


 俺は爆発と同時に身を伏せた。
 他の5人の学生兵士も同じだった。とにかく何かあったら伏せるのは戦闘の基本中の基本である。
 一応の基本ぐらいは何とか出きることは分かったが、その後のおしゃべりはいただけない。彼らは俺がこの次に出そうとした命令を聞くことが出来なかった。
 もっとも、聞いたところで何も出来なかっただろうが。
 俺は晴れ渡った空が急に曇っていく様を目撃した。
 それが炎に変わる様も目撃した。
 そして5人の学生兵士が衝撃波で押しつぶされ、口から内臓をはみ出させている様や飛び出た眼球がアスファルトの上で潰れる様も目撃した。
 最後に5人の学生兵士は全身を炎に焼かれ、衝撃波で粉々になる様も目撃した。



 もっとも、粉々になっているのは俺も同じだったが。






 第6装甲大隊 大隊司令部

 喧騒と怒号が渦巻く大隊司令部は混乱の極みに達していた。
 有事において最も秩序だった行動ができるように訓練された組織、軍隊であっても混乱とは無縁ではなかった。
 だが幸いにも大隊司令部の主であるハインツ少佐は全く落ち着き払った表情でパイプ椅子に座っていた。
 全く、仕事がやりやすくて助かる。
 ほっと一息ついてマリュー大尉はハインツ少佐に向き直った。

「この攻撃は、おそらく戦術弾道ミサイルを用いたFAE(燃料気化爆弾)でしょうな。誰だかしりませんが、なかなかやるものですな」

「何も問題ない。核以外の全ては折込済みだ」

 全く少佐の声は落ち着き払ったものだった。
 
「冷静ですね」

「それは違う、平静なのだ」

 やんわりと少佐は否定した。
 冷静も感情の一種だった。感情の無い少佐は常に平静だった。平静は状態を表す語彙である。

「そうでした。失礼しました」

「誰にでも間違いはある。次から上手くやればいいのだ」

「ええ、そのとおりですね」

 もっとも、次があればの話ではあるが。
 言葉を一旦切って、少佐は空間に展開された戦術戦況ウィンドウを見た。
 展開されているウィンドウは3つ。
 ベルリン全域をカバーする広域マップ。大隊の守備範囲とそれに隣接する区画をカバーしたマップ。そして最後のウィンドウには残存部隊も戦闘能力が記されていた。
 ベルリン全域マップはほとんどが青く塗りつぶされていたが、FAEの攻撃受けた地点を中心に大きな丸い円が空いている。
 外郭防衛ラインに大穴が空き、そこから敵軍が雪崩れ込んで来ていた。
 
「第104歩兵中隊、通信途絶」

「第112国民突撃大隊、挟撃されました!」

「ハーマイオニー戦車中隊より連絡、ワレ戦力ヲ喪失、通信機ヲ破壊シテ後退スル」

 洪水のようにあふれ出る通信は何れも暗いニュースばかりだった。だが大隊司令部は躁状態だったかもしれないが、決して鬱状態ではなかった。混乱はしているが、絶望はしていない。
 少佐に付き従う大隊の兵士達は激戦に次ぐ激戦を生き抜いてきた精鋭中の精鋭だった。
 経験を積んだ兵士たちは知っている。
 絶望は敗北へ転がり落ちる不可逆の坂道であることを。
 
「さてと」

 多少緊張で硬くなった肩をほぐして戦術ウィンドウを見入る。
 とりあえず、さしあたって大隊にすることはほとんど無い。なにしろ大隊はこのベルリンで一番多くの戦車を保有した最後の予備戦力だ。大隊に出番が回ってくるということは、前線では対処しきれない事態が起きた時だけ、このベルリンにおいて大隊は最後のジョーカーなのだ。

 予備戦力といえば一般では補充部隊と思われがちだが、それは大いなる誤解と言える。予備戦力とは防御においては戦線の綻びを繕い、攻撃においては敵軍の弱点を速やかに痛打し、戦闘の勝敗を決する重要な鍵なのである。
 当然、その予備戦力には機動力の高い最精鋭部隊が選ばれる。
 その条件に合致するのは第6装甲大隊の他にない。
 貴重な大隊の戦力は地下駐車場に隠匿され、空爆にも砲撃にも一切晒されていない。その気になれば、防衛に徹するのならば1個師団の攻撃さえも撃退できるだけの戦力が残されているのだ。

 その戦力をどこに投入するか。
 それを決めるのは自分でもハインツ少佐でもなく、より上位のベルリン防衛総司令部の仕事であり、出撃命令が出るまでは基本的にすることがない。とりあえず、新兵の訓練と機材の整備をするだけだった。
 暇そうにしていては兵士達の緊張感が緩むので、とりあえず忙しそうにしていなくてはいけない。
 故に、いかにも忙しそうに司令部の中を士官達は行き交うが、ほとんどはサクラに過ぎない。既に戦闘準備は整い、出撃命令を待つだけなので、待機しているだけでいいのだが、緊張感維持の為には働いているフリでもしなくてはいけない。

 つまり、所謂「急いで待て」という奴である。
 大威力化、高速化、長射程化の著しい現代兵器では戦闘時間は極々短いものになっている。航空機の空戦ならコンマ一秒以下とさえ言われるほどで、勝敗は一瞬でついてしまう。
 反面、その戦闘までの準備時間は長くなる一方であり、兵士達は長い長い待ち時間に緊張を緩めてしまう。
 現代の指揮官の悩みは待ち時間の効果的な潰し方であり、戦闘の采配などは瑣末な悩みに過ぎない。

 元より、戦術とは基本的に過去の戦闘の再演に過ぎないのだから、コンピューターの発達した現代においては指揮官が戦闘に際してすることなど極々少ない。例え敵が宇宙から飛来した戦闘機械だろうが、ローマを脅かしたハンニバルの象軍団だろうが、一個装甲猟兵侍女中隊(パンツァーイェーガーメートヒェンカンパニー)だろうが、基本となる戦術は全く変わらない。

 もちろん使われる武器の破壊力はローマ軍のファランクスと大隊のエステバリスでは比較にもならない。だが、やっていることは全く同じである。
 まず優勢な敵とのぶつかった場合は、防御の硬いファランクスでこれを受け止め、敵の進撃を止める、もしくは抵抗しつつ後退する。現状に当て嵌めるのならば前線で木星蜥蜴の戦車隊と交戦する歩兵部隊がこれにあたる。
 ファランクスの抵抗で敵軍の衝撃力を鈍らせ、また相手の隊列が伸びたところで敵軍の側面、背面にチャリオットや騎兵を突入させ、敵軍を包囲殲滅する。また敵軍の消滅したことによって空いた戦線の穴から逆撃を行い、戦線を押し戻す。現状に当て嵌めるのならば、チャリオットや騎兵には大隊の戦車やエステバリスが当たるだろう。
 そう、つまり防衛線を突破したが、歩兵部隊の抵抗で進撃が止まってしまった無人戦車一個中隊等が現状において、殲滅される敵軍にあたるのだろう。
 
「防衛総司令部より打電、第6装甲大隊ハ速ヤカニ出撃。突出セル敵戦車中隊ヲ包囲、殲滅セヨ」

「了解したと伝えてくれ」

 とっくの昔に席を立って出て行った少佐に代わってオペレーターに返事を頼んだ。
 立ちぱっなしなのも何なので、少佐の座っていたパイプ椅子を借りることにする。多少の温もりが残っていることを期待したが、少佐には元から温もりなど存在しないことを思い出して、苦笑。
 だが、戦況は苦笑すら浮かべる暇が無いほど切迫していた。

「大尉!シャロッテンブルク通りのアルクェイド独立重戦車大隊が優勢な敵軍と交戦、苦戦中の模様です」

「拙いな、シャロッテンブルク通りの突破はベルリン陥落と同義だぞ」

 シャロッテンブルク通りをまっすぐに進めば、ブランデンブルク門がある。まさにベルリンの中枢、この突破が成功すればベルリン防衛は不可能になる。
 だが、勝手に動くわけにもいかない。
 貴重な、貴重すぎるとさえ言える最後の予備戦力である大隊を勝手に動かすことは出来ない。

 マリュー大尉は敵軍に苦戦中だろう重戦車隊のことを思い浮かべた。
 冬季迷彩を施された重量70トンの純白の重戦車。88ミリL72対空レールーガンを転用した主砲とその主砲から吐き出される音速の十倍はする凶撃に耐える劣化ウラン充填した厚さ180ミリのハイブリッド・アーマーと全周を被う電磁装甲。
 世界最後の重戦車と呼ばれるドイツ戦車技術の精髄。
 その前面装甲は現有のあらゆる陸戦兵器の攻撃を弾き、従来型戦車では零距離射撃以外では撃破できないとさえ言われる。
 特に純白の冬季迷彩が異様によく似合い、その美しさは永遠とさえ錯覚された。
 だが、そんな彼女はこのベルリンにたった5両しかいないのだ。
 
「酷いもんだ」

 たった5両の重戦車大隊を援護に向かうのは雑多な小火器や旧式戦車、外国製戦車をかき集めた、部隊番号すら振られていない即席戦闘団。
 第6装甲大隊は西へ、名無しの戦闘団は東へ。
 同じ地下駐車場で砲爆撃をやり過ごしてきたカメラードとはこれが今生の別れとなるだろう。
 
「大尉、通信です」

 軍用秘話回線ではない個人用のウィンドウ。
 最先端のホログラム技術が生み出した次世代コミュニケーションシステムに現れたのは痩せぎすな中年だった。
 前線勤務者特有の油断の無い目と眉間に刻まれた深い皺。何かを諦めて、それでいて何かを捨てきれずにいる男の顔だった。老いているのではない、ただ疲れているのだ。彼がまだ27歳であるといったら誰が信じてくれるだろうか。
 つまり彼の存在そのものが、この戦争の性格を何者よりも雄弁に語っているのだった。

「おはようございます、ジュピア少佐殿」

「それは8時間以上寝た人間に向かって使う言葉だよ、マリュー大尉。君は何時の間にそんな嫌味を覚えたのかな?」

 苦笑、お互いにラフに敬礼。
 
「外の様子はどうだね、雨は降っていないかね。ちょっとそこまで行くのだが」

 まるで散歩に行くかのような軽い言葉。
 だが硝煙にしゃがれていて聞き取りづらかった。

「雨は降っていないようですが、砲弾なら降っております。まるで魔女の大釜のようです」

「そうか、魔女の大釜か。人間でも地獄をつくることは出来るのだな」

 むしろ感心したといった調子でジュピア少佐は言った。
 
「月並みな言葉ですが…死なないでくださいよ」

「まだ英雄になるつもりはないよ」

 簡潔な、そっけない答えだった。
 言葉を重ねようとしたマリュー大尉を押し留めるように振動、大隊の指揮通信車のエンジンがかかる音だった。
 椅子の手置きを掴む手が開いて、また閉じる。滑る、汗で濡れていた。

「ジュピア少佐、あなたには金を以前貸したはずです。ちゃんと返してくださいよ」

 ぶつん、と異音。
 敵の電子妨害だろうか、突然ウィンドウは白黒の砂漠になってしまった。
 本当の砂漠のように、砂の向こうは遠いところだった。喧しいノイズと電子妨害の砂嵐の向こうにジュピア少佐はかき消されてしまった。



 砂漠の向こうから返事は返って来ない。






 パンツァーフロント

 砲撃で倒壊したアパートメントの向こうにハインツ少佐は獲物の姿を認めた。
 戦闘用高性能義眼ロートモーントは今日も正常に稼動中、義眼を設計したカールツァィツァの技師に感謝。
 無人化されたロシア製T−150戦車は砲撃を実行中、おそらくはバリケードで抵抗中の友軍を攻撃しているのであろう。側面の警戒がおろそかになっている。
 人間の使用を前提とした兵器の単純な無人化が、いかに非効率であるかを再認識。
 第6装甲大隊、実際の戦力は増強中隊程度の戦力しかないが、それでも側面を衝けば大隊規模の戦力さえも弾くことが出来る。
 
「距離300、弾種徹甲、砲塔基部を狙え」

 乗機のファウケはオーデル川河畔で爆破処分され、今は戦車長の任務についていた。全身義体化手術を受ける前に機甲科であった経験が役に立ったのである。
 二度と乗ることは無いだろうと思っていた戦車に再び乗って戦うことに感慨は無い。
 感情喪失機構は良好に作動中。

「Feuer!」

 長砲身51口径125ミリ滑空砲から踊り出た音速の凶撃は易々とT−150戦車の側面装甲を食い破り、車内に飛び込んだところで遅動信管を作動させ、次々に150ミリ砲弾を誘爆させた。
 砲塔が爆圧で吹き飛び、2回宙に回って戦火に煤けたレンガ造りのアパートの屋根に突き刺さる。
 既に半ば炎に巻かれていたアパートは18トンの戦車砲塔を支えきれず、崩壊。盛大な埃を巻き上げて、2世紀に渡る寿命を終えた。

 その一撃でようやく奇襲に気が付いた無人戦車隊は慌てて砲塔を旋回させるが、その動きは遅すぎた。
 僅か300メートルの至近距離から10両の戦車が次々に送り込む射弾は確実に無人戦車に沈黙を強要していく。
 撃破された戦車はそのまま街路を塞ぎ、生きている味方の邪魔をした。
 弾薬誘爆で撃破された戦車はさながら内臓物を辺りに散らした腐乱死体の体を成し、砲身を叩き折られた戦車のクルクル回る砲塔はさながら落とされた首を探す亡霊だった。エンジンルームから吹き出る炎は天に昇ろうとする魂を思わせる。
 亡者が生者の足を引き、砲身同士を絡ませたまま無人戦車は何も成すことなく撃破される。無為という言葉が相応しい。

 それを踏みつけ、スバル・リョーコは前進する。
 リョーコ・スバル中尉操るエステバリスは無人戦車の亡骸を踏みつけて前進。盛大に巻き上がる火の粉を突っ切り、無人戦車とバッタの混成部隊に踊りこむ。
 だが、T−150の流線型の砲塔は足場にするには問題がありすぎた。砲塔に滑り、縺れる足をそのままにリョーコは突進する。

「ったれ!」

 強引な着地に崩れそうになる機体を制御。そのまま倒れ込むように流線型なのが特徴的なT−150戦車の砲塔にイミディエットナイフを突き立てる。
 まるで抵抗を感じることなく、つるりと沈みこむナイフがアスファルトを焦がす前に引き抜き、再度エンジンルームに突き立てる。
 炎が上がり、旋回中だった砲塔が止まる。
 今にも動き出しそうなのに、全く止まってしまった戦車。傷が少ない分異様さが際立つ。さながら彫像の眠り。
 
「スバル中尉、9時方向。戦車」

 振り返るとほぼ零距離で砲塔を旋回させる戦車が一台。
 戦車に突き立てたままのナイフを捨て、両手で機体を支え、うつ伏せのまま旋回。アスファルトの路面とエステバリスの装甲が既知外の悲鳴を上げて火花を散らす。
 断末魔の叫びにも似た金属音と立ち込める金属臭をリョーコは顔を顰めるだけで耐えた。
 エステバリスのつま先が戦車の動輪を捉え、重量55トンの無人戦車が金属質の悲鳴をあげて方向転換、そのままブティックに車体を突っ込ませる。

 衝撃か、それとも既にトリガーが引かれていたのか、ショーウィンドウに突っ込んでマネキンと戯れていた戦車は発砲。
 秒速1900メートルで飛ぶ魔弾は鉄筋コンクリートの支柱を易々と貫通し、弾道を捻じ曲げて飛翔。
 衝撃波で道路に散乱した乳母車や荷車を吹き飛ばしながら味方である無人戦車の正面装甲に突入、砲弾は高圧電流によって一瞬の内に溶解、胡散霧消した。
 直撃ならDFを張ったエステバリスさえも一撃で分解仕切るAPFSDS弾の近距離射撃を電磁装甲で弾いたT−150無人戦車は今だ倒れたままで動けないリョーコのエステバリスの照準を合わせる。

 レーザーとミリ波レーダーによる照準に2秒、砲塔を旋回させ微調整に3秒、ベルトマガジン方式の自動装填装置が150ミリAPFSDS弾を薬室に装弾するのに4秒。
 合計10秒。
 それは現代戦においては永遠に等しい時間だった。
 僅か50メートルという至近距離から放たれたパンツァーファウスト5はロケットモーターを作動させ、光の矢と化した。

 高機動、重防御の新世代戦車に対抗するためにタンデム弾頭を持ち、発射から10秒で秒速800キロメートルに達する高性能ロケットモーターを装備したパンツァーファウスト5は吸い込まれるようにして無人戦車の砲塔側面に命中した。
 高圧電流を装甲に流すことであらゆる砲弾を融解させる電磁装甲も消費電力がネックとなって装甲側面には施されていなかった。

 モンロー・ノイマン効果により、秒速8キロメートルという極音速、高圧高音のジェットメタルが一瞬にして装甲を融解させ、車内を焼き尽くした。
 砲弾ラックに収められていた予備弾が一斉に誘爆、そのまま無人戦車を荼毘に付した。
 それでも、あがく断末魔の一撃が砲身を滑り出てリョーコを狙ったが、まだ倒れたままだったエステバリスの背面装甲を衝撃波が打っただけだった。
 立ち上がれないエステバリスにバッタが畳み掛けるが、側面からの砲撃で次々に爆散する。

 光学兵器を無力化するDFも秒速1500メートルのAPFSDS弾の前には天女の羽衣ほどの意味しかなさない。
 正面からの砲撃戦ならばハインツ少佐率いる戦車隊の独壇場だった。純粋な火力ならバッタもエステバリスも相手にならない。
 辛くも砲撃から逃れたバッタが戦車砲の届かない空に逃れようとするが、それさえ轟く雷鳴の前に儚く叩き潰される。

 飛行可能な上に無敵と思われていた対空レーザー機関砲を無効化するDFを装備したバッタにショックを受けた軍上層部が慌てて倉庫の奥から引っ張りだしたゲパルト対空戦車は1世紀以上前に設計されたとは思えないほどの威力を発揮した。
 単発の戦車砲とは違う、雷鳴と形容される35ミリ連装機関砲のバースト射撃に絡め取られ、バッタは二度と大空へ帰ることは無かった。
 全ては僅か数分の出来事だった。



「やばかったな…」

 モニターが全てブラックアウトしたエステバリスのアサルトピットから抜け出したリョーコは手の甲で頬を伝う汗を拭った。
 エステ用のパイロットスーツの中は汗で濡れ、下着がごわついて気持ち悪い。下着の替えはもう無いというのに、なんてこった。

「周囲を警戒しろ、リョーコ。エステのスーツはやたら目立つ、気をつけろ」

 冷静そのものとさえ言えるユキカゼの固い低音質の声が耳朶を打つ。
 それだけで戦火に泡立つ心が冷めていくのがよく分かる。まるで魔法みたいだった。経験を積んだ下士官の言葉はこんなにも心強く響くモノなのだろうか。

「ありがと、助かったぜ」

「別に、気にしなくていいぞ」

 油断無く、野戦慣れた兵士の動きで弾丸やスプリンターの飛んでこない死角に潜りこんだユキカゼは気のない返事を返した。

「ただ、あのこけ方は無いだろう?足元には気をつけろ。瓦礫だからよかったが、地雷やワイヤーだったら死んでたぞ」

「分かったよ」

「ほんとは分かってないだろう」

 鼓動の早い心臓をなんとか落ち着かせてビルディングの影に腰を落ち着けた。相変わらず周囲は焦げ臭い、電子部品の焦げる臭いが鼻を衝く。

「もう少し落ち着け。リョーコの突撃癖は悪い癖だ」

 今しがたリョーコ機を狙った無人戦車を撃破したパンツァーファウスト5の発射チューブに新しい弾頭を装填しながら言い捨てた。
 不機嫌な顔で言葉を重ねる。

「弾丸なんてそう当たるもんじゃない。地雷やブービートラップなんかも似たようなものだ。ほんの少し確率が高いだけで、そうそう引っかかるものんじゃない。そんなに怖がる必要はない」

「怖がっている、だと」

 思わず握り締めた拳だが、振り上げる先がなかった。素手でユキカゼに挑むのは戦車に素手で挑むのに等しい。
 ぶつける先のない拳を横目に、ユキカゼは弾倉にばら弾を込めていく。

「そうだ。お前は怖がっている。だから突っ込んでいくんだ」

「なんでそうなるんだよ!普通は逆だろ」

 激発するリョーコの怒声にもユキカゼは眉一つ動かさない。
 ただ俯き加減で黙々とM16A2アーマーライトの動作をチェックする。まだ一度も使ってないが、それでも用心して点検する。あまりにもあっけなく決着がついてしまい撃つ暇がなかったが、次は使うかもしれないからだ。
 その時も使わないに越したことは無いが、それでも点検するだろう。次の次に使うかもしれないからだ。もしもの時に動かなければ、次に次の次の為に整備することもできない。
 
「本当に勇気のある兵士は考えなしの突撃などしないものだ。勇気のある兵士はどんな時でも冷静だ。何が起きても慌てない、死ぬのが怖くて自分から死を排除しようとはしない。死に晒されても冷静に計算が出来る。リョーコにはそれが出来ていない」

 既に砲声は遠い、だが時折思い出したかのように飛来する榴弾の爆発が大気を揺さぶる。
 その中で、焦りも気負いも無くユキカゼは淡々と言葉を紡ぐ。

「まあ、経験を積めば出来るようになるよ」

 結局のところ全てはそこに落ち着くのだった。経験を積んで場慣れすれば何をしたらいいか、分かるようになる。
 もっとも、経験を積むまで生きていられたらの話であるが。
 流石に臆病だと言われれば反発するリョーコも、自分がこと陸戦に関しては素人でしかないことは十分に自覚していた。経験云々を持ち出されたら渋々でも納得するしかない。
 
「何か不公平だ。こっちは戦闘機パイロットだってーのに」

「そんな事情、蜥蜴は考慮してくれないよ」

 M16A2に新しい弾倉を叩き込み、ユキカゼは立ち上がる。

「あのエステは修理すれば使える。工場まで持って帰るぞ、トレーラーの手配だ」

 ビルの残骸を乗り越えてやって来る戦車隊に手を降りつつ、ユキカゼは自分の野戦服の上着を放った。
 その心遣いに感謝してリョーコはいそいそと上着を着込む。
 一度着てみなければ分からないだろうが、タイトなエステのパイロットスーツはボディラインがくっきりと浮かんでしまう、女性パイロットにはなかなか辛い代物なのだ。
 在る意味、全裸よりもエロティックで、冷やかしなど日常茶飯事である。

「エステのスーツの開発者にあったら、一度文句を言ってやる」

「ほう、文句で済ますのか?俺は殴ると思っていたが」

 心外なことを言うと思う。そこまでオレは馬鹿じゃない。

「ユキカゼ、ゴキブリは嫌いか?」

「嫌いだ」

 きっぱりと、本物の嫌悪を滲ませて一言。

「オレも嫌いだが、だからって素手で潰したりはしないだろ。そういうことだよ」

 オレも兵士を山と乗せた戦車に向かって手を振った。
 兵士達も手を振り返すが、ハッチから上半身を覗かせている少佐以外は全員やけにニヤついた笑いを浮かべている。
 オレを笑っているのかと思ったが、そうでは無いらしい。よくよく考えてみると、タンクトップ一つのユキカゼの格好も、なかなか悩殺的ではないだろうか?



 臨時設営された戦車修理工場は既に先客で一杯だった。
 ベルリン市内の大型ショッピングモールの広大な地下駐車場にフランスへ撤退する連合軍が遺棄していった整備機材とベルリン中からかき集めた工作機械を持ち込んだ戦車修理工場は臨時ながらも高い修理能力を誇っていた。

 工場の片隅にはかつてはベルリン・オリンピック・スタジアムでサッカーの観戦客にフランクフルトを振る舞っていた屋台のワゴンが置かれ、愛車の修理を待つ戦車兵がコーヒーと煙草で暇を潰していた。
 その一角、無造作に置かれた弾薬箱の椅子に座ってコーヒーを啜っていたハインツ少佐は感情の無い瞳に一連の情景を写していた。

 ここも一種の戦場だな、とハインツ少佐は思う。
 戦場で息絶える兵士の悲鳴に匹敵する程の怒号と分隊支援火器の発射速度を上回る矢継ぎ早の指示が圧力ハンマーに混じって工場の空気を攪拌していた。
 傍らに立つユキカゼはどう思っているのか、少々気になった。
 おそらく自分と大差ない感想を抱いているとは推測できたが。

「大破した戦車の修理はあと3時間程で終わるそうです。それとエステはアサルトピットの交換だけで直ぐに出撃できるそうです」

「不幸中の幸いだな」

「不幸中の不幸なのではないでしょうか、リョーコ中尉にとっては」

「同意する」

 同意、全体の幸福は個人の幸福とは直結しないことが多い。
 特にベルリン攻撃に木星蜥蜴が戦力を集中しているのは連合軍にとって幸いだろう。2日前には連合軍主力がライン川を渡り、フランスでの再編成が進んでいるらしい。ドイツは失われたが、欧州連合軍が健在ならば奪回も可能だろう。
 もっとも、ベルリンはそれまで保つことは100%ありえないが。

「それとオットーとハーマンの補給は進んでいますが、芳しくありません。特にAMX−30の弾薬は7割程度しか補給されないそうです」

「分かった。なんとかユキカゼの方でも手を尽くしてくれ」

 ヤボール(了解)、とユキカゼ。
 この場での「手を尽くしてくれ」とは正規以外の手段による補給の獲得である。
 酸いも辛いもかみ分けた下士官には、下士官しか分からないネットワークがある。この場合はそれに期待するしかない。

「やはり外国製戦車では補給が難しいですね」

「今更それを言っても始まるまい」

 大隊の戦車の保有する10台の戦車の全てが外国製戦車だった。
 ハインツ少佐の指揮官車さえもチェコ製T−72MPであり、それ以外は同じチェコ製T−72CZ、スロバキア製ZTS・T−72M2、ポーランド製PT−91トゥワルディ、何故かウクライナ製のT−55Mや、アメリカ製のM48パットンV、イスラエル製のベングリオン戦車の姿もあった。一番新しいのがフランス製ルクレールUだが、電子兵装が精緻過ぎて故障して以来修理出来ず直接照準で戦っている。

 撤退する連合軍が遺棄していった戦車を拾い集めたとは言え、種類が多すぎて整備も修理もままならない。
 特に弾薬は一番大きいルクレールUが150ミリ56口径滑空砲、一番小さいM48パットンVが90ミリ50口径ライフル砲と、あまりにもバラバラでストックされた弾薬が切れたらお仕舞いだった。
 そして、それが早くも尽きかけている。

「1世紀以上の前の戦車が未だに幅を利かせているとは、我々はこの100年何をしていたのだろうか」

「平和が長すぎたのでしょう。戦争も地域紛争程度しかありませんでしたし、それに第一級の装備はロシアの平原で全て失われました」

「そうだったな」

 瞑目し、瞼を揉んだ。疲労や失望を感じているのではない。疲労は機械の体にはありえないし、失望を感じる心も無い。感情喪失手術を受ける前に体が覚えた癖だった。

「少佐ぁ、ユキカゼ。修理終わったぜ」

「ご苦労」

 いい加減な敬礼を送るスバル中尉は眉を顰めていた。
 理由は分からない、だがエステバリスのパイロットスーツを着用している時に、今と同じ表情をしていることが多い。
 おそらくスーツの機能になんらかの問題があるのだろう。

「スバル中尉、先行してティアーガルテン公園へ向かい、現地でジュピア少佐のカンプフグルッペと合流しろ。公園の木々を利用して入念にエステバリスを偽装するように」

「ヤボール、少佐達は?」

「補給と修理が済み次第合流する」

「オーケイ」

 英語とドイツ語、日本語の混じった奇妙な会話。
 ウィンドウに文字表示式自動翻訳機能があればそこだが、お互いに喋っている言葉がまるで違うと言うのに、会話が成り立つというのは随分と奇妙な気分だった。

「そういえば、少佐。少佐って機甲科だったのか?」

「そうだ。I計画に参加するまでは戦車小隊を指揮していた」

 特に意味のなさそうな質問だったが、答えない理由もなかった。確かにI計画、アイゼンリッター計画に参加する前は戦車隊の指揮官をしていた。
 だが、それがどうして気になるのだろう?

「そうだったのか…いやさ、なんだか手馴れた感じだったから、もしやって思ったんだけど、やっぱりそうだったのか」

 納得が言ったらしく、何度も頷いてスバル中尉は踵を返した。

「それじゃあ、先に行ってる」

 既にトレーラーの上で暖気運転に入っていたエステバリスの元に走り去るスバル中尉、だが突然中尉は振り返った。

「あのさーもう一つ聞きたいんだけどー、どうして戦車兵やめちまったんだー?」

 遠くから大声で、工場の稼動音にかき消されないように叫んだのだろうが、かなり迷惑だった。
 ユキカゼも酷く顔を顰めている。
 自分も同上だ。感情こそないが、迷惑を感じないわけでもない。
 それでも、答えない理由になるほどでもなかった。

「それは――――」

 だが、言葉が出ない。
 何故だろうか?何故自分は戦車兵を止めたのだろうか。分からない、自分は何故I計画に参加したのだろうか。記憶を辿っても理由が思いつかない。
元々、自分はただの平凡な機甲科の少尉でしかなかった筈である。次世代型機動兵器の開発計画であるI計画に接点があると思えない。

 では、何故自分はI計画に参加したのか、自分は何故全身義体化手術を受けたのか、自分は何故感情喪失手術を受けたのだろうか。自分は何故この質問に答えられないのか。
 原因があれば結果があるはずだ。

 今の私という結果があるなら、当然原因があるはずだ。それは当然のロジック。
 原因が無いなら、結果はありえない。原因があるなら結果はある。種をまかなければ、花は咲かない。ヒヤシンスは種を蒔かなくても花は咲く、水栽培のヒヤシンス、窓辺に飾られたヒヤシンス、花束、赤いヒヤシンス、青いヒヤシンス、黄色のヒヤシンス、白いヒヤシンス、紫のヒヤシンス、雨、濡れた十字架、緑の丘、遠い家路、暑い大気、裏切りと戸惑い、去りゆく大鳥、乳母車と荷車、会えない待ち人、燃える教会、諦観と安堵、絶望と安堵、懇願と拒絶、トリガーと銃声、スイカと赤ワイン、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴は聞こえなかった、だが悲鳴が消えない。



「少佐、それは気のせいです」



 霞を裂く冷気のようなユキカゼの声。
 それはまるで夢の目覚めだった。夢などもう何年も見ていなかったが。
 まどろみにも似た倦怠に体が沈む、私に構わずユキカゼは言葉を重ねる。

「少佐が戦車兵を辞めてI計画に参加したのは、少佐に全身義体化手術の適性があったからだ。全身義体化手術は音速超過機動に生身では耐えられないからだし、感情喪失機構の装備は常態27倍になる世界認識速度に感情があっては精神が保たないからだ。別に大仰なことじゃないぞ」

 そうなのだろうか?
 そうだったのだろう。ユキカゼがそういうなら、そうなのだろう。

「リョーコ、ハリーアップ!修理が終わったんなら、早く行け。休んでる暇があったら、コケないように訓練しろ」

 うるせえ、とスバル中尉。先ほどの戦闘の失態を衝かれては反論のしようがないだろう。
 捨てゼリフを残してスバル中尉は修理の終わったエステバリスに乗り込み、そのままトレーラーで運ばれていった。
 入れ違いに砲塔に弾痕がいくつも穿たれた戦車が牽引されて入ってくる。
 相変わらず兵士達は煙草を吹かし、コーヒーを啜る。他愛のない冗談と軽口、遠い砲声と微かな振動。
 拳を握り締め、開く。
 モーターの作動音と微かな金属音、義手は今日も完璧に動作している。義手を設計した技師に感謝。
 
「少佐?」

「いや、大した事は無い」

 怪訝な顔で覗き込むユキカゼ。
 冷めてしまったコーヒーを啜る。
 ユキカゼの言うことは全て間違いではない。全身義体化手術は現代でも極めて成功例の少ない特殊な技術だ。その適性があったのは事実であり、感情喪失機構も機械との直接接続が齎す27倍の世界認識速度に耐えるのに必要不可欠だ。
 何も間違っていない。
 全て正しい。
 ユキカゼの言うことは何一つ間違っていない。
 だが、この形容しがたい感覚は一体どうしたことだろうか。
 私はユキカゼの言葉が信じられないでいる。
 一体、私は何を思い出せないでいるのか。











巻末兵器解説

 なにやらわけの分からんマニアックな武器が出てきますが、気にしないでください。深い意味はないのです。末期的な雰囲気を出す小道具だと思ってください。

『チェコ製T−72MPとCZ、スロバキア製ZTC・T−72M2、ポーランド製PT−91トゥワルディ』―――――湾岸戦争でボロ負けしたイラク軍の使っていた戦車はソ連の傑作戦車のT−72だったのですが、このT−72は世界的なベストセラーだったので、多くの国がボロ負けしたT−72にショックを受けてT−72の改良に乗り出すことになりました。今回登場したのは、東欧が開発したT−72の改良型です。2195年に20世紀末に開発されたこれらの戦車が現役であることはまずありえないので、おそらく倉庫の奥からか、博物館、ゴミ捨て場からのサルベージといったところでしょう。
 
『ウクライナ製のT−55M』―――――やっぱりソ連が開発した戦後第一世代型のMTB(主力戦車)です。今でも現役ですが…今でも完全に旧式です。やはり2195年にこの戦車が現役であるはずが無いので、博物館〜以下略。

『アメリカ製M48パットンV』―――――アメリカが開発したやはり戦後第一世代のMTBです。登場したときから同世代のT−55に性能で負けているなど、性能面ではあまり良くない戦車です。今でも現役で改良を加えて全世界で使用されていますが、やはり2195〜以下略

『イスラエル製ベングリオン戦車』―――――イスラエル軍が欧州に派遣されるとは思えないので、どうしてあるのかは完全に謎です。博物館以外には考えられません。ベングリオン戦車はイスラエルがイギリスのセンチュリオン中戦車を独自に改良したもので、第三次中東戦争で大活躍しました。でも、やはり2195年〜以下略

『フランス製ルクレールU』――――架空の戦車です。ですが、第4世代型戦車あたりなら今のルクレールを改良型あたりで十分に実現できると思って、ルクレールUという名前にしました。2195年でもまだ現役でいられるのではないかと思います。

『アルクェイド重戦車』―――――架空の戦車です。対空レーザー機関砲等で航空攻撃が困難になった時代に対応した新世代型戦車という設定です。でも主力は宇宙軍に移り、地域紛争やら治安維持活動にMTBが投入されることはあまり考えられないので、少数しか生産されていないでしょう。イメージ的にはWWU最強の重戦車ティーガーUです。名前は某同人エロゲのパクリです。

『M16A2アーマーライト』―――――結構有名な銃なのではないでしょうか?名前は知らなくても、ゴルゴ13が狙撃に使う銃と言えば分かると思います。これも現役であるとは思えないですね、倉庫の奥が最有力です。弾は錆びなければ半永久的に保存できるし。

『一個装甲猟兵侍女中隊』―――――まぶらほメイドの巻を参照してください。

『パンツァーファウスト5』―――――架空の兵器です。現在はパンツァーファウスト3までです。WW2でも使われた対戦車ロケット弾です。パンツァーファウスト3は300メートルから発射した場合、700ミリ装甲を貫通するそうです。前々回で登場したRPG−7より高性能です。

『ゲパルト対空戦車』―――――現在でもドイツ軍で使用されている対空戦車です。非常に高性能で現在でも改良型の開発が進められています。おそらく2195年にはレーザー機関砲を載せた対空戦車が主力になっているでしょうが、DFを持ったバッタ相手にはレーザーは無効なので、現役復帰したという設定です。お婆さんの名前ではありません。

『R−1500、スカッドJ』―――――中距離弾道ミサイルです。テポドンやらノドンはスカッドミサイルをベースに開発されました。しかし地球連合が成立した世界でこのような物騒な武器(ABC搭載可能)が生産されているとは考えにくく、木連が再生産したのかもしれません。

『APFSDS弾』―――――最新の徹甲弾です。日本語に訳すと装弾筒付き翼安定徹甲弾です。正式にはArmour Piercing Fin−Stabilized Discarding Sabotと言います。所謂運動エネルギー弾で、砲弾の速度と質量のエネルギーで装甲板を貫通しようというものです。弾の材料には劣化ウランやら炭化タグステンが使われます。現代の徹甲弾の標準です。

『劣化ウランを充填したハイブリッドアーマー、電磁装甲』―――――威力がべらぼうに高いAPFSDS弾に対抗するために装甲には、同じ劣化ウランを使った複合装甲、高圧電流で砲弾を一瞬にして融解させる電磁装甲が有効です。劣化ウランの複合装甲は米国が実用化しています。電磁装甲は研究中です。
 
『直接照準』――――戦車砲の古い打ち方です。望遠鏡に少し手を加えたような照準器で目標を定めで撃つやり方です。まさしく人間が直接目で見て、照準をつけます。



 BGMは加古隆の「パリは燃えているか」をお勧めします。

 

代理人の個人的な感想

今アフガニスタンのニュースを見ながらこれを読んでましたが・・・・・酷く鬱です(苦笑)。

やっぱり戦争はイヤですね。