「いたぞ!!あそこだ!!」

「遠慮はいらん!!撃て撃て!!
 相手は奴だ!!
 手加減するとこっちがやられるぞっ!!」

「「「は!!」」」



ナデシコ2次小説 逃亡劇





「はぁ・・はぁ・・はぁ・・。」


暗い暗い下水道を俺は走りつづけた。

後ろの方では銃声がこだましている。



「くそ・・!」

バババ・・。

俺の首筋を弾がかすめた。

ディストーションフィールド発生装置もバーストしてもう役に立たない。

CCも品切れだ。

楯とボソンジャンプはもう使えない。



・・走って逃げるしかない。

幸いまだ弾は当たってないから戦おうとすれば戦えるかもしれないが

数も装備も圧倒的に違う。

戦っても捕まるだけだ。


「くそ・・捕まってたまるか・・!あんな目に会うくらいなら・・。」


呟きながら俺ははひたすら走った。

暗い暗い下水道を。





「はぁ・・はぁ・・。」

・・・どれほど走っただろうか。

少なくとも5時間は走りっぱなしだったと思う。

流石に疲れた。

狭い排水口の中に、穴から顔を出す蛇のように隠れて疲れを癒す。




「いたか!!」

「いえ!!いません!!」

「何としても探せ!!
 捕まえられなければ俺達の命が危ないんだぞ!!」

「はい!!」



向こうの方から怒鳴り声が聞こえる。

まだこのあたりを探しているのか。

あいつら、失敗が命にかかわっているから必死なんだな・・。

かと言って俺は捕まるわけにはいかない。

あんな目に会うのはゴメンだ。

このまま隠れていよう・・・。

そして適当にやりすごしたらまた逃げる事にする・・と。





「見つけたぞ!テンカワアキト!!」

「やりましたか少佐!!」



俺が甘かったようだ。

ついに見つかってしまった。

しかも排水口に全身を突っ込んでいる俺は身動きがロクに取れない。

そのへんよく考えてなかったな・・。

これじゃ将棋の穴熊状態だ。逃げる場所・方法が無い。

当然目の前に並べられた銃口に為す術等無い。



「テンカワアキト。中将閣下が御召だ。来てもらうぞ。」

「・・・・。」


目前に立つ少佐の階級章をつけた男は俺を引っ張り出すと手錠をかけ、

数十人もの部下と共に俺を連行する。


「流石ヤツだ・・。仕事が早いな・・。」

「お話は閣下の前でしてもらいましょうか。」


そして俺を乗せた囚人護送車はある施設に向かった。






「中将閣下!!テンカワアキトを捕らえて参りました!!」


どが!!

着いた施設の最上階にある部屋に手足を縛られたまま俺は床につき倒された。

首を上げるとイスに座っている中将の階級章をつけた人物が俺の方をじっと見ている。



その視線はあまりに冷たく、そして鋭い。

俺の心を覆った鎧を切り裂く程に。

手足が震える。怖い。

・・数年前、シャトルで襲われた時以来感じた事のなかった感覚、恐怖。

それを目の前の人物は視線だけで自分に取り戻させた。


「・・・。」


その人物は黙ったまま、視線をはずす事無く一枚の写真を俺の前にしゅっと投げた。


「・・・・・・・。」


俺は目の前の人物から目を離して写真を見る。

ドっと汗が流れて来た。

心臓もバックバック言っている。

がくがくがくがく・・・全身が地震にでもあったかの様に震え出した。

数分間その状態が続いた後、奴が口を開いた。






「・・それ、誰と誰?」





「お・・俺と・・・エリナ・・かな・・。」



真剣の様な視線と口調。

俺は声まで震わせながら問いに応じる。

投げられた写真には自分と某会社の社長秘書がごにょごにょしてる姿が明確に映っている。

防犯カメラの映像だ。アカツキ・・消し忘れたな・・。


「世間ではなんて言うのかな?そーいう事。」


びく・・!


「ふ・・ふり・・ん・・です・・。」


怖い。マジで怖い。

普段マヌケでノーテンキで涙もろいくせにこう言う事に関してはやたら怖いのだ。

ウチの奥さんって。



「不倫した時における罰則・・決めてたね?(にこり)」


不敵な笑み・・。これはそうとう怒っているな・・。

罰則。

俺はこれを避けるため逃げたのだが、まさか正規軍を使って捕まえるとは、

我が妻ながら恐るべし。


「・・はい・・。」


手足が縛られて逃げるに逃げ出せない。

まぁヘタに逃げたりしたら命は無いか・・。

ちなみに罰則とはこれだ。





『天河家家訓、第六項目
 夫の不倫時に置ける罰則事項

1つ、夫が不倫を犯した場合、妻への愛情の点検として次の行為を必ず行う事。

1つ、東京タワーのてっぺんで『ユリカ好きだ』を500回叫ぶ。

1つ、ナデシコCの甲板で夕日をバックに十の字だっこ。

1つ、ハーフハートマークのついたTシャツを来て腕を組み
   アッキー、ユリリンと呼称しあいながらくっついて新宿の街を歩く。

1つ、遺跡に取り込まれたユリカに
   「お前が欲しい!!」と叫んでから救出。

1つ、〜〜〜他多数。(読者皆さんで考えて下さい。)』



はっきり言って恥ずかしいぞ。

読者諸君は元ネタが分かるかな・・。


「・・・やらなきゃダメでしょうか・・?」


現段階の立場上、何故か敬語になっちまうな・・。


「当然。ハンコはちゃんともらってるんだから。
 やれば許してあげるよ。」

「でも・・。」


(ギン!!!!!)


「分かりました・・。」


ずるずるずるずる・・・・。縛られたまま引きずられて行く俺。

・・アレやるのと死ぬのってどっちがマシだろうか・・。




−−


その頃、ここ宇宙軍極東地区東京支部の休憩所。

アキトを捕まえた部隊の隊長をやっていた少佐と中尉が話していた。



「ふ〜〜、中将さん荒れてたねぇ。捕まえられないと隊全員処刑〜なんて。」

「嫉妬深い方ですからね・・。流石艦長の養母と言った所でしょうか。」

「にしてもテンカワ氏もバカだねぇ。浮気なんてしなけりゃいーのに。」


その時、のんびり話す二人の背後にひとつの影。


「・・・それはてめぇ自身に言ったらどーなんだサブ!!」

「げ!!スバル大尉!!」

「また女口説いたそうだな・・。
 こっち来いてめぇ!!」

「ハーリー!!助けろぉ!!」

「怖い事言わないで下さいよ・・。」



ずるずるずる・・・・・。

サブロウタはリョーコに連行されていった。



「サブロウタさんも人の事言えてないなぁ。」

ふぅっとタメ息をつくハーリー。


「あなたもじゃないですか?」

「え?」

振り向くと少々年上の少女と同い年くらいの少女が。


「ハーリー君は私かラピスかもう決めたんですか?」

「ワタシダヨネ・・?」


「・・・艦長にラピス准尉・・それは・・そのぅ・・。」


「決めてもらいます。」

「コッチ来テ。」


ずるずるずるずる。



ハーリー、お前もか・・・・・。


−−



結局あの後、東京タワーにジャンプした俺達は・・。


「ユリカーー!!好きだーー!!!」

「よし!後392回!!」



真っ昼間、東京のド真ん中で何やってんだろ俺・・。

死ぬ程恥ずかしい・・。

俺達もう有名人なんだぞ・・。

天気予報の中継ヘリコプター、こっちにカメラ回してるんだが。

しかもMHKかよ・・。

こっから落ちて死んじゃいたい・・。

浮気・・もうしません・・。



−−−

後書き

なんですかこれは。

前半と後半、ノリが全然違うのですが。


それは置いといて。

天河家家訓第六項目・・・他にどんなのあるんだろ。

いいの思いついたら教えてちょ。

他の項目も考えてみるかな〜。


 

 

代理人の感想

男って立場弱いなぁ・・・・・・・・・・まぁ、この場合は全員自業自得ですが(笑)。

それにしても「罰」の怖いこと。

思わず「罪と罰」のクライマックスを思い出してしまいましたよ(爆死)←いやそれはドストエフスキーに失礼では

 

に、しても。

いつのまにフタマタ掛けたんだハーリー。

・・・・・・・・・・・やるじゃないか(爆笑)。