木枯らしの吹く寒い寒い火星の冬空のもと、黒衣の男が娘の名を叫びながら

コロニー中を走り回っている。

月からここ火星へ戻ってきた闇の貴公子さん、名はテンカワアキト。



「はぁ・・はぁ・・・ラピスーーーー!!何処だーーー!!」









XDAYのこんな騒動 後編







彼の脳裏には先程のエリナとの月での会話が浮かび上がっていた。

会話と言っても相手からの一方的なお説教なのだが。


『あんたねぇっ!
 ラピスはこっそり自力で作ったチョコを、あんたに渡してびっくりさせたかったのよ! そんな事も分からなかったの!?』


「ん・・・んな事分かるかよ・・くそ!」



エリナの言葉一言一言にあの場ではできなかった反論のセリフが

口から零れ、空気を真っ白に染めていく。

既に酒は抜け、シラフになってる様だ。



『あんたや艦長は火星育ちだからともかく、
 あの子は気温の変化に対する免疫なんてほとんど無いのよ!?
 怒られた理由はともかく、薄着で飛び出してった彼女を
 追い掛けもしないで私の所に来て酒煽るなんて・・バカじゃない!?』


「ああ!バカだよ・・大バカもんだよっ!!!」


『あの子になんかあったら承知しないわよ!!
 まだ治安だって完全じゃないってのに!!』


「・・・ラピス・・ラピス〜〜!!」


まださほど賑やかさを取り戻していないコロニーの中。

アキトはひたすら走った。

何処かへ消えた娘を求めて。












「・・・エリナの罰・・考えただけで恐ろしいよな・・。」


成る程、それも理由の一つなのね。



ーーー




・・ガラガラ。

今時珍しいガラス板のはめ込まれた木戸が音をたてて開く。

「さ、遠慮なく入って〜。今日はお休みで私しかいないから。」

「う・・うん。」


一方寒さに耐性が無く、ピンチ状態だったラピス。

彼女は今声をかけてきた買い物帰りの女におぶられて、街外れのラーメン店に来ていた。
なんでもその女の店だとか。


店に入ったラピスは自己紹介した後

暖房とラーメンで冷えた身体をあっためながらこの店主に事の次第を話した。




「へぇ、じゃあラピスちゃんは
 そのアキトって人とケンカして出てきたんだ。」

「うん。・・あ、ごちそうさま。」


ごと。

カウンターにまだ湯気の立つ空の丼を置いたラピスはこくっと頷いた。

目の前の人物と話してるうちに落ちついたのか、

涙ももう止まっている。

人見知りの激しいラピスが初対面の人物とここまで落ち着いて話せた事等無かった。

アキトやエリナでさえ始めは手なずけるのに苦労したと言うのに。




「アキトは分かってないよ・・。
 私は自力で作ったのを食べて欲しかったのにさぁ。
 あーんな事するんだもん。
 
 しかも私が怒った理由も分かってないよきっと。」


ごくごく。

ラピスはそう言うとコップに注がれた二杯目の水を喉を鳴らして飲み干した。


「ははは。その人そうとう鈍いね〜。」

「笑い事じゃないよ。鈍いにも程がある。
 しばらくは帰ってあげないんだから・・。」


自分のグチをケラケラ笑い飛ばされて、ラピスはほっぺを膨らませる。


・・その時ラピスの目前に突き出された手の人指し指だけがぴっと立つ。

「?」

「でもね、
 だからっていきなりバカ呼ばわりして出てきたらその人困るんじゃないかな?」

「困るって?」



手を膝の上に置いたこの店の女主人は

首をかしげたラピスに優し〜く語りかける。



「その人はそれだけ鈍いんでしょ?

 今まであなたから”バカ”なんて言われた事なんて無かったのに、
 なんで言われたのか悩むでしょうね〜。
 

 ・・”その手の人”は悩み出すととことんまで悩むから。」


「(こくっ。)」
黙って軽く頷くラピス。

彼女が首を上げ、自分に視線を合わせ直すと女は続けた。


「結局鈍い為に自分では答えを見つけられない・・
 そしたら身近な人に相談するでしょう。
 で、その相手方の人には呆れられて「探しに行け」ってどやされるよ。
 こんな小さな子を寒空の下にやっちゃったのと同時に、
 あなたの心を傷つけた反省の意を込めて。
 
 ”その手の人”は押しが弱いわりに責任感強いから。」

「(こくっ。)」



「で、その人は寒い外をあなたを求めて走り回るよきっと。
 どんなに疲れてもあなたを見つけるまでは帰らないでしょうね。

 ”その手の人”は何事も諦めない、とっても優しい人だからね。」


「う・・。」

声を漏らすラピス。

血が登っていたとは言え確かに理由も話さず突然アキトを馬頭し、

アジトを出したのは少々軽率すぎたか。

あのアキトの事だから、今頃寒い火星の冬空の元、

自分を探して走り回っている事だろう。



「アキトって人が大切な人なら迷惑かけたげない方がいいかもね〜。
 厚着しててもお外は寒いよ。」


・・街の寒さは先程自分が十分実感した。



「・・帰るよ。アキトかわいそう。」

「ふふ。ラピスちゃんは優しいね。送ってってあげようか?」

「あ・・お姉ちゃん一つお願い。」

「何?」

「あれ少し分けてくれない?
 ・・あと台所貸してほしいんだけど。」

ラピスは、彼女が自分と遭遇時に手にぶら下げていた
大きなビニール袋に目をやった。


「いいよ。」


店主は笑顔で答えた。






−−−



「へっくしょい!!・・くそう・・ラピスラピスラピス〜〜・・・。」


鼻をすすり、肩を震わせ、アキトはまだ走っている。

もうどのくらい同じ場所を走ったであろうか。


「まさか誘拐されたんじゃ・・ラピスはカワイイからな・・
 あのピンクの髪がなんとも・・。」


・・と呟いたりもしている。

コウイチロウの親馬鹿でも移ったのだろうか?

本当に誘拐だったらそれ所では無いのだが。




(お母さん、あの黒い人何?)
(タキ〇ード仮面様?)
(こら!見ちゃいけません!)


真っ黒い格好の男が鼻水垂らしながら顔赤らめている姿はなんとも奇妙な光景だ。

道行く人は皆避ける。



「ふ・・視線が痛いな・・ラピスゥ・・・
 ・・ん!?ラピスッ!?」


夢か幻か。

何度も通った街のセンターゾーンの緑地地帯にピンクの髪の少女が見えた。

この街であんな髪をしてる子供は一人なはず。

アキトは無我夢中で加速し、センターゾーンに向かう。

寒さと疲れでヘトヘトなはずなのにすごい勢いで。


「ラピスだ!!間違いない!!Bダッシュジャンプッ!!A連打っ!!!」


・・・何だよその”Bダッシュジャンプ”って。

ついでに言うとその後の”A連打”も。


「ラピスーーーーーー!!!!」






−−−



時は少々遡る。


ラピス達二人が手をつないでラーメン屋を後にする頃にはすでに夕方になっていた。

しんしんと雪も降り始めているが、

ラピスは自分にはだぶだぶの女のセーターとコート、マフラーを借りているため

防寒対策にぬかりは無い。




「綺麗にできてよかったじゃない。」

「うん。・・でもアキト、ちゃんと見つかるかなぁ。」


彼女は手に携えている、

丁寧にラッピングが施されたハート型の物体に目をやると心配そうに呟いた。




「大丈夫だって。言ったでしょ。その”手の人”は・・」

「とっても優しくて、何事も諦めない人なんだよね。」

「そーそー。まだ探してくれてるって。
 街の真ん中で待ってれば会えるよきっと。」

「・・・。」



初対面にも関わらずずっと前からの知り合いの様に和気あいあいと足を進ませる二人。


「・・お姉ちゃん。」

「ん?」

「お姉ちゃんなんでそんなにアキトの事分かっちゃうの?
 アキトの事はちょびっと話しただけなのに。」

「はは。私の旦那さんもそんな感じだからねぇ。
 ・・・今はどっか行っちゃってるんだけどさ。」

「ふぅん。」



・・そして顔を前に向け、その後しばらく口ごもる。

口では”ふぅん”で片付けたラピスだったが、

心の中ではかなりその事を気にかけており、

今までの相手の行動言動その他諸々から隣の人物の正体の目安を付けていたりする。





「旦那さんいなくて寂しくないの?」


もう一度顔を横に向け、上を見上げた。


「そりゃ寂しいよ。」


相手も同じように顔を横に向け、そのまま下を見る。


「じゃあなんで会いに行かないのさ?
 ・・その人の居場所が分かってるから火星にお店開いてるんでしょ・・。
 いつでも会いにいけるように。」


金色の瞳を半分程閉じた目でラピスは相手と視線を合わせた。

その目はほんの少しつり上がる。



「違うよ。私から会いには・・いけないのよ。
 夫婦はお互いの了承の元、一緒の空間にいるべき存在だから。
 私にできるのはあの人が帰ってくる場所を作っておいてあげる事だけ。
 
 ・・いつか故郷の火星でラーメン屋開くっていうのが、
 あの人の夢だったからね。」


視線をそらし、寂しげな表情を作って答える。



「こんな優しいお嫁さんほったらかしとくなんて・・ひどい人だねその人。
 根が優しいとかは別にしてさ。」


顔を戻したラピスから出たのは呆れたような口調。


「ははは・・。私もそう思うよ。」


もう一度ラピスの方に向けられた視線は明るい物に戻っていた。





数分後、そんなこんなで歩いているうちに二人は大きな広い場所に出た。

ネオユートピアコロニーセンターゾーン。

コロニーに巡らされている大型道路が交差する、

旧ユートピアコロニー時代からのこのコロニーの中心部だ。

アキトがあちこち走り回っている・・と言う仮説が当たっていれば、

彼は何度もここを通るはず。



「ここで待とうね。」

「うん。」


二人はセンターゾーン内にある緑地地帯で待つ事にした。

ここならどの道路からでも一直線上に位置している為目立ちやすい。


・・そして彼女らの目標は意外な程早く出現する事になった。






「ラピスーーーー!!!!」







「っ!アキト!?」


声のする方を振り向くラピス。

黒い物体が凄いスピードで迫ってきていた。



「来たみたいだね・・。
 私はこれで帰るよ。」


「え!?ちょっと待ってよ。アキトと話をーー。」


後ろからの声にまた向いていた方に顔を戻し、引き止めようとするが、

女の身体からはナノマシンのパターンと共に光が生じ始めていた。



「ごめんね。来たければいつでも来ていいから。」



申し訳なさそうに小さく笑みをこぼす女の身体の光がだんだん強くなっていく。


「本当にアキトと会わなくていいの・・

 ・・ユリカ・・・?」




パァッ。 ユリカの身体はそのまま光と共にその場から消え去った。





「・・ユリカ。」


そう呟いた矢先の事である。



「ラピスウウウウウウウウ!!!!!!!」


「きゃっ!?」

突然背後より前に突き出された黒衣に覆われし二本の手。

それらがラピスの身体をきつく拘束し、

騒音問題になりかねんまでの絶叫と共に重みが背中にのしかかった。


「ラピスッ今まで何処にいたんだっ!
 心配したんだぞっ!!
 ああでも良かったよく無事だったなラピスラピスラピスラピス〜〜!!!」


ぎううう・・。”ラピス”と唱える度にきつくなるアキトの締めつけ攻撃。


「ア、アキト、苦しいっ。苦しいってばっ。」


「ああ!!誘拐されたんじゃないかとか寒さで凍えてるんじゃないかとか
 いろいろ心配したんだぞ。なのに良く帰ってきた。
 やっぱり俺達は火星の神に守られてるのかな。
 ラピスラピスラピスラピスラピスラピスラピスラピスラピス〜〜!!!!」


ぎううううううううう・・・。


「痛いっ!だからやめろおおっ!!」

「ん。おっと。すまんラピス。」

ラピスの漏らした声に反応してアキトは手を離す。



「痛いじゃない!死ぬかと思ったよ!!」

ぎっとアキトを睨み付けるラピス。


「すまんすまん。
 後さっきの事も・・お前の気も知らない俺がバカだった。
 この通りだ。許してくれ。」

アキトはぺこっと頭を下げた。


「い、いいよもう。あんな事で飛び出した私も私だったんだから。」

「・・許してくれるのか?」

「うん。」

「やっぱりラピスはいい子だったんだっ!!
 ラピスゥゥゥ!!」


がばぁっ!!ぎうううう・・・。


「・・・・。しまいに怒るよ?」





−−−




「・・さて、帰るか。」


落ち着きを取り戻したアキトはセンターゾーンからアジトの方へ通じる道に

足を進ませ始めた。




「あ、待って。これ。」


急いで後を追ったラピスはアキトに手に持っていた物を差し出す。

ラーメン屋の台所を借りて作ったチョコレートだ。


「お、また作ってくれたのか。」

「食べて。」

「家に着いたらな。」

「ダメッ今すぐ!!せっかく味覚治ってるんだから!!」



味覚の事と、今食べる事はなんら関係無いのだが。

・・それでもこの手の人は押しが弱い(某女談)ため言う事を聞いてしまう。


「分かったよ・・いただきます。」

「どうぞ。」


ラッピングを解いて、出てきたチョコレートをバキっと頬張る。

ゴリゴリゴリ・・。


「おいしい?」



ごっくん。



「(ラピス・・・塩と砂糖間違えたな・・・。)」

アキトの表情は明らかにまずい・・の顔を形成している。



「おいしいの?まずいの?」

金色の瞳がじとっとこっちを睨んでいる。


「あ、ああ、おいしいよ。ははは。」

「よかった〜。アキト大っ好き!!」


アキトの(乾いた)笑顔を観て

にまっと顔の表情を変えるとラピスはアキトの黒マントに顔をうずめた。


顔をほころばせるアキトだったが、

・・ここで”まずい”もしくは”塩入ってるぞ”と答えれば、

再度”ラピラピダッシュ”をかまされるハメになったであろう。




その後二人はおんぶ状態でアジトへの帰路についた。






「・・・ラピス。」


その途中アキトは背中のラピスに話しかけた。

「何?」

少し小さめに首を傾げる。



「ユリカはどうだった?」



「・・。やっぱりあのお姉ちゃんがユリカだったんだね。
 
 なんて言うかね、一緒にいて安心できる〜って感じの人だったよ。
 アキトやエリナもそうっちゃそうなんだけど・・あの人はちょっと違った。

 ほんわりしてるって言うか・・ってなんでユリカの事知ってるの?」


「そのコート。」

「コート?」


アキトはそう言うとラピスの着ているだぼだぼのコートを見上げた。

ラーメン屋を出るさいに着せてもらったコート。

・・返すのを忘れていた。


「誕生日にアイツに送った物だ。
 貧乏だったから店で一番安い奴しか買えなかったけどな・・。まだ使ってるとは。」

「それだけ大切にしてるって事でしょ。
 これ後で返してきてよ。向こうのラーメン屋にいるからさ。」


「俺が行くのか?
 俺は行かない方がいいと思うぞ・・
 アイツは今の俺なんかに好意なんぞ・・・・・ぐぐ!?」


首に感じる重圧・・。

ラピスの両手がアキトの首を抱え込んでいるのだ。


「ら・・らぴす・・・?」


「バカッ!!
 ユリカお姉ちゃんはねぇっアキトが来んの待ってんのよっ!!
 なんでその位分かんないのっ!!」


ぐいぐい。


「ぐぐ・・ヴァカな・・あの押しの強い女がじぬんから待つなの・・
 てっきり・・俺は嫌われていると・・ぐるじ・・」


ぐいぐいぐい。


「分かったか!!
 家に着いて私降ろしたらとっとと行って、
 渡すもん渡して貰うもん貰ってヤル事ヤって帰って来い!!
 お姉ちゃん泣かすと許さないぞっ!!バカ親父っ!!」


がくがくがく。アキトの首が前後に激しく揺れ動く。


(何だよ”ヤル事”って?
 だいたいなんで23の俺が”親父”で25のアイツが”お姉ちゃん”・・?
 
 つかしっかりユリカの”人を引きつける力”に引っ張られてやがるなコイツ・・
 いや、その”力”に20数年前、一番最初に引っ張られたのは俺なんだが・・・)


ぶくぶくぶく・・。

そんな事を思っているうちにアキトの口からあぶくが・・。


「・・あ。ごめん。やりすぎちゃった。大丈夫?
 とにかくね、帰ったらすぐ行ってきて。」


ぱっと手を離すラピスだったがアキトの顔はかなり青くなっている。


「死ぬかと思った・・。」





−−−

数時間後。


「ふぅ・・今日も来てはくれなかった・・か。」


キュッキュ。

寂しそうな顔でカレンダーに×印を付けているユリカ。

「ま、今日はラピスちゃんって子とお話できたからいっか・・。」

”いっか”とは口で言ってはいてもやはり寂しそうである。


「アキト・・・。」




「呼んだか?」

「っ!!」


ガラガラガラ・・。

ユリカの呟きに呼応する声。

同時に開く木戸。

足を踏み入れる黒い奴。



「アキト・・・?」









「久方ぶりだな。元気だったかマイハニー?(キランッ)」





 ・・・・




「実験で頭おかしくなっちゃったの?」







どてっ。


歯を光らせ入場して50秒程経過の後、アキトの身体は地面に突伏した。

・・そして起きあがるのにはや二秒。



「お・・おかしくなんかなってねぇ!味覚その他も治ってるぞ!!」

「だってそんなアホみたいな登場の仕方・・。」

「カッコつけたと思ったんだが。」

「寒いよ。なんかオヤジのウケ狙いギャグみたい・・。」

「お前まで”親父”ゆーな。・・ウケ狙いは否定しないが。」


 ・・・・




「・・でも寒いとか言いながら、お前笑ってるぞ。」

「なんでだろうね・・涙まで出てきちゃってるよ・・。」


当然この涙、嬉し涙である。





「マイハニー、泣きたければ僕の胸で泣くがいい(キランッ)。」


再度歯を光らせる。

ウケるとでも思っているのだろうか?




「・・・2度目は流石に・・トリハダが・・・・。」










「・・でもしっかり抱きついてるな。」

「あれ・・私ったら何時の間に・・・。」


涙声で呆れ文句を言うユリカの顔はいつの間にか

アキトの黒マントで覆われた胸の中に埋められていた。

・・・早い。





「帰ってきて・・くれたんだね・・。」


「ラピスもそうしたいと言っててな・・。
 お前さえよければ明日にでもルリちゃんに犯罪履歴ごまかしてもらって・・。
 このコロニーじゃまだ住民リストもできて無いから簡単だろうって。

 ・・帰っていいかな?」


「もちろん・・アキト・・大好き・・。」

「俺もだ。」



そのまま上を向けたユリカの顔と下を向けたアキトの顔は唇で密着。




そして数秒後。


 
「あ、そうだ。これ。忘れ物。」

身体を離したアキトの手には白いコートが携われている。


「ったく、こんな安物よくいつまでも着れるよ。」

「あ〜、言ったな!これは指輪とくまちゃんの次に大切な物なんだから!」

コートを受け取ると大事そうにハンガーにかけるユリカ。



「それ全部俺がやった物じゃねーか。」

「だから大切なの。」

「ふ・・嬉しい事言ってくれる。」


そう言うとアキトはまたユリカを抱きしめ、そして・・。




もみもみもみ・・。



「ちょ・・ちょっとアキト?何処触ってんのよ。」

「ん。いや、ちょっと胸のもみ心地を確かめようと・・。」

「は?」

「いや、ヤる時どんなかな感じかなーって・・
 やっぱりエリナのと比べるとお前の方が断然上っぽいな。
 
 今まではB級のエリナで我慢してたがこれからは〇級のお前とヤれるわけだ。
 いやー楽しみで楽しみで・・・・・・は!?」


(しまった・・!!!)


ゴゴゴゴゴ・・。

口は災いのもと。福転じて災いと成す(?)。

ユリカの身体中がぼぅ・・っと光り出した。

ナノマシンの活性化・・。

感情が高ぶっている証拠である。


・・と同時に感じられる重いオーラ。

その気迫は最終決戦時の北辰を軽く上回る程。



「ヤったんだ・・エリナさんと・・(ぶちっ!!)。」

「ち・・違うっ!誤解だっ!!」



慌てて両手と首を振るが時既に遅し。

ユリカは戸棚の上に手を延ばし小さめの紙包みを手に取った。



「これ・・もし今日アキトが来たらあげようとおもって作ったんだけど・・。」


「はは・・”ど”?」


「欲しいよね・・?奥さんの手料理・・。」


「あ、ああ・・・・そりゃ・・。」


だらだらだらだら・・・冷汗が出てくる。



「とっととコレ持って帰りやがれっ!!!!!!!!」



「うぎゃあああああああ!!!」

バチイイイン!!!!


ほっぺに時速数百Kmの速度でクリティカルヒットしたチョコレートは

そのままアキトを店の外に吹っ飛ばした。


がっしゃああああん!!!

そのままアキトは外の撤去されていない瓦礫の山へ。


「12日間は帰ってくるなっ!!バカッ!!!」


がしゃん!!!扉を閉じるスピードもハンパでは無かったとか。



−−−



「た・・ただいまラピス・・・。」

全身に傷を負いつつもなんとかアキトはアジトに帰り着いた。



「アキト!?どうしたのそのケガ!!」


「夫婦喧嘩って奴かな・・ともかく俺は一週間は来るなと・・。」


「喧嘩?あの人がそんな事するなんてアキトまた余計な事言ったんじゃない?」


「ふ・・エリナと乳繰り合ってた事を不覚にも漏らしちまってな・・
 このザマだ。ラピス、手当てを・・。」


どか!!


「いてっ!!俺を足蹴にするとは何事だっ!!」


「バカッ!!
 半年もアキトを信じて待ちつづけてた人に久々に会った所でそんな事言うなんて!!
 何考えてるの!信じらんないっ!!」

「う、うるさいっ出ちまったモンは仕方無いだろう!?」


「あー、いつからこんな鈍感親父になっちゃったんだろっ!!
 初めて出会った時は頼れる貴公子様だったのにっ!!」

「人は変わっていくんだっ!」

「私出てくっ!!
 12日間は帰らないからっ!!」


「何!?」



ラピスはそう言うと自分の厚めのコートに手を延ばし、

勝手口から飛び出して行った。


「待て!!ラピス!!ラピスーー!!!
 やっぱりグレてしまったのか!?ラピスーーーー!!??」






−−




そして一週間後。


−月−


この星の唯一軒のバーで酒を交わす一組の男と女がいた。

一人は客、一人は支配人。



「−−で、今ラピスは艦長の所に?」


「・・ああ。この一週間まったく音沙汰無しだ。
 家庭から疎外される親父って・・虚しいもんなんだな・・。」


「全部あんたが悪いんじゃないの?・・ま、後5日経ってから行けば。
 クラッカーで出迎えてくれるかもよ。」


「何故?あの日から12日後・・26日に何かあるのか?」


「はぁ・・それが分からない様じゃまたトラぶる可能性あるわね・・。」


エリナは深くため息を付いた。

−−−


あとがき



曖昧な終わり方、文章がまとまってねぇ・・

・・等といろいろダメダメな点が目立ってますね。修行足りましぇん。


後半の方がヤケに長いし・・!

 

 

代理人の感想

いや、ダメダメなのは誰よりもアキトではないかと。

ホントいつの間にあんなひょうきんになったんだか。(笑)

 

 

・・・・・・・それにしても。

ユリカもいい味出してるけどやはりエリナっていい奥さんになれるよなー(爆)。