_大丈夫なんですか? このような取材を受けられても

 

機密にふれない限りは良いそうだ。それに、もう時効だろうし

 

_分かりました、それでは自己紹介をどうぞ

 

 

地球連合東南アジア方面軍極東軍集団司令部、第一特殊戦旅団「オメガ・フォース」所属、

第4分遣隊隊長、コマツ・コウジ特務曹長

 

 

 

 

「漆黒の戦神」アナザー

           コマツ・コウジの場合

 

 

 

 

_東南アジア方面軍だそうですが、どうやって西欧方面軍にいた「彼」と知り合うことが出来たのですか?

 

 

出張したんだよ、あっちの方に。

表向きは西欧方面軍との連絡の為の派遣なんだが、本当は「彼」、「漆黒の戦鬼」についての調査、それと

可能なら「彼」を「オメガ」に引き抜く事だったんだ

東南アジア方面軍にも「彼」の噂は伝わっていた。

でも、俺達には信じられなかった。

チューリップを一隻落とすことさえ出来ないのに、今までダース単位でチューリップを落とし続けているなんて

最低なプロパガンダだと思っていたんだが

何で俺達が派遣されたかって? ・・・俺はくじ運が悪いんだよ!

今まであみだくじで一度も勝ったことねーんだでも、今回は逆にそれが幸いした。

なんと言っても「彼」と知り合えたんだから

まあ、そう言うわけで俺達でその真偽を確認してこい、ってんで西欧くんだりまで行くことになったのさ。

とは言っても派遣されたのは俺も含め四機の空戦フレームのエステバリスとそのパイロットの四人だけなんだ

けどな。表向きな派遣理由は相互連絡だから四機だけで十分だろうって上が判断したらしいんだけど。

もっとも、「オメガ」でエステを操れるのは十人居ないから必然的に腕の良いのを連れていくことにしたんだけど、

一七歳のライズを連れていったのは結果的に間違いだったな

 

理由? ライズが可愛い女の子だからだ。それに「彼」のもう一つの異名も知っていたし

 

そう言うことで俺達は西欧方面軍の「Moon Night」に派遣された

俺とヒラオカ、タナカそれとライズの四人で駐屯地に行ったんだが、なんか雰囲気が変だったんだ

緊張感や緊迫感は有ったんだよ、でも悲壮感って物が全然感じられなかったんだ。

信じられるか? 最前線の激戦区なのに。

それが気になって部隊の指揮官らしいおっさんに聞いてみたら、

「そう言えばここ何回かの戦闘では戦死者が出ていないからな。

 それに、一週間以上入院した奴もここ一ヶ月出ていない」

何て答えが返ってきた。最初はホントかよって思ったけど、嘘じゃなかった。

だってよ、一週間ほど駐屯地に居たけど本当に戦死者が出なかったもんな

そうこうしている内にスクランブルの要請がでて、俺達も出撃した。

ホントは出撃しなくても良いんだけど、「漆黒の戦鬼」を見ることが出来るかの知れないと思ったんだ

 

 

「オメガ7より各機、システムチェック」

 

『オメガ8、異常なし』

 

『オメガ17、問題有りません・・・』

 

『オメガ20、戦闘に支障無し』

 

 

「オメガ7よりコントロール、発進準備完了」

 

『こちらコントロール、感度良好。もう少し待って下さい。

 それと、此処ではそんなに堅い交信はしなくて良いんですよ』

 

ディスプレイに現れたオペレーターは可愛い金髪の女の子だった。歳はライズと同じくらいだったかな

彼女、確かサラって言ったかな。彼女の誘導で俺達は敵のいるポイントに向かったんだ

そこには三十機程度のジョロがいて、三分も立たない内に全部叩き落としたんだが、タナカから

 

『コマツさん! 敵の増援です! チューリップ二、バッタとジョロ約五〇〇! まだまだ来ます!』

 

ッて通信がきやがった

部隊の主力は俺達がいる場所と正反対のポイントで戦闘をしていたんだよ。

つまり、あっちは囮で本命がこっちだったみたい

 

『オメガの皆さん、五分間頑張って下さい。今援軍を送ります』

 

レーダーで見ていたらしいサラちゃんから指示が下った。

馴れ馴れしい? だって紛らわしいじゃん、ハーテッドって呼ぶと

でも、あの時は五分が一時間位に感じたね。

チューリップからはわんさか敵さんが出てくるし、ミサイルはバシバシ飛んでくるし、生きた心地がしなかったなあ

そして、二分もしない内に俺もヒラオカも、タナカやライズも全員のエステが被弾したんだ。

何百発単位でミサイルが振ってきたんだぜ。よくあれで死ななかったなって、今でも思っているし

その中でもライズ機が一番酷かった。それこそスクラップ一歩手前だった

戦闘機動に入って直ぐに四機とも西欧方面軍までエステで長距離移動したツケが一気にきやがった。

エンジンの出力も六割程度しか出ないし、間接も大分痛んでいたしな

俺達が救出に向かおうにもバッタが行く手を阻む。

そいつらを蹴散らしても次から次ぎへとバッタ達が向かってくる

正直、ここで死ぬのかと思ったよ

 

『展開中のエステバリス。今から援護する、回避しろ』

 

スピーカーから声が聞こえてきたのは、そんな時だった。

誰が言ったのか確認するよりも先に反射的に俺達は回避行動をとっていたんだ

 

『秘剣! 飛竜翼斬!!』

 

その声と共に真紅の刃がチューリップに向かって飛んでいった。

途中にいたバッタ達を百機ほど巻き添えにしてね。

その刃は目標になったチューリップを切り裂くと、数瞬後、

 

ドゴォォォォォォォォンンッッ・・・・・!!!

 

大音響と核爆発のような衝撃が機体を揺すったんだ。まるでミキサーの中にぶち込まれたような感じだったね

それが収まった後見た物は、・・・敵兵器のスクラップ置き場としか表現できないなあ。

チューリップも真ん中から真っ二つになってたし

そしてもう一つ重要なことに気がついた。他の連中のことだよ。

ヒラオカとタナカは問題ないとしても、ライズのエステはボロボロだったから・・・最悪の状況が頭をよぎったんだ。

そんな時だったな、

 

『彼女は無事だ』

 

再びスピーカーから声が聞こえたのは。周りを見てみると漆黒の機体に抱えられていたんだ

その時確信した。こいつが『漆黒の戦鬼』だとね

これが「彼」、テンカワ・アキトと俺達のとのファーストコンタクトのあらましさ

ちなみに生き残っていた敵の機動兵器は「彼」と銀色のエステが五分位で全滅させた

 

_そうですか。そう言えば先程から「ライズ」と言う名前が頻繁に出ているのですが、どの様な方なのですか?

 

ライズ・トーマ、十七歳、白い肌と艶っぽい長い黒髪を背中辺りで三つ編みにしている日系の女の子。

一応軍人で階級は三等軍曹。でも、無表情で淡泊な性格だったよ、最近までは

 

_おや、過去形ですね。現在は違うんですか?

 

まあ、その前に

戦闘が終わった後、エステを騙し騙し動かして何とか「Moon Night」の駐屯地に帰還して整備所に機体を

持っていったんだ

俺達もくたくたで、申し送りもそこそこに割り当てられたベットで爆睡した

 

それで夜中に目が覚めて、腹がへっていたんで何か食おうと思って食堂に行ったんだ

食堂に入ろうとしたんだけど、人の気配がしたんでこっそり覗いてみたら

 

_覗いてみたら?

 

ライズが男と抱き合っていたんだよ。男の方はまだ少年と言った感じだったけどさ

それを見て俺の頭がフル回転してこの状況を解析し始めた

それとあの少年、どこかであったことがあった気がした。誰だったか思いだそうとしていたら、

 

「誰だ? そこにいるのは」

 

その男のダークトーンの声が聞こえてきたんだ。そしてその声で誰であるか分かってしまった。

あの戦場で聞こえた、俺達を助けた男の声・・・

 

「別に怪しい物じゃないよ、“テンカワ・アキト”君。いや、“漆黒の戦鬼”と言った方がいいかな」

 

「コ、コマツ隊長、何でここに」

 

先に反応したのはライズの方だった。普段では考えられないほど顔を真っ赤にして動揺してたなあ(笑)。

たぶんこの頃からだと思う、性格が変わってきたのって

 

「そ、それじゃあ隊長、し、失礼します」

 

真っ赤になって慌てて出ていくライズを眼で送りながら、俺は本来の目的を果たそうと思った。

もっとも、「彼」を見る間で忘れていたんだけどさ

それで引き抜きの話をしたら

 

「断る」

 

って0.5秒であっさりと断られた。ま、予想はしてたけどね

すると彼が質問してきた、あなたは何の為に戦っているのか、とね

 

「借金を返すためだよ。

 昔女に騙されてね、それがとんでもない額になっちまって、それ返すためにこんなヤクザな仕事やってるんだ」

 

ちなみに額を話すと、「彼」も同情のまなざしを向けてきた。

有る意味同士だしな、「彼」も女性関係で酷い目に合っているみたいだし

 

「でもそれだけじゃ無いでしょう?」

 

さすが「漆黒の戦鬼」と言われるだけあるね。冗談半分に話した言葉の奥にある物を読みとったんだから

 

「それに、もう仲間が死ぬのを見たくないから、だな」

 

俺も軍人だから何人も仲間が死ぬのを見てきた

今まで誰にも本音を話したことはなかったんだぜ。

「彼」とは初対面なのに、何でか素直に話してしまったんだよな。

おかげで胸につかえていた物が取れた様な感じがした

本人は英雄って言われるのは嫌みたいだけど、俺達にとっては間違いなく英雄だよ。

俺達の命を救ってくれたし、俺と、それにライズの心も救ってくれたみたいだしな

 

 

その後何となく気恥ずかしかったんで、俺は昼間のカリを返すことにした

 

「で、何でライズと抱き合っていたのかな〜〜〜? そこら辺、詳しく教えてほしいな〜〜〜」

 

なんて言ったら、必死に言い訳ををするんだよ。いやあ、今思い出しても笑えるほど滑稽だったなあ。

それで、「サラちゃんやアリサちゃんやレイナちゃんには言わないでくれ」って口止めされたよ

三人ともナデシコに乗っている? しかも後十二人いるだって? ・・・「彼」の冥福を祈りましょうか(笑)

 

 

_最後に「彼」に何か伝えたいことはありますか?

 

短い付き合いだったけど、俺達にとっては貴重な一週間だった

 

でもな、せめて惚れさせた女のについてだけは責任取ってくれ。

あれ以来「恋する十代の女の子」になってこっちは大変なんだ。

デートしろとか結婚しろとは言わないけど、せめてメールだけでも送ってやってくれ。

アドレスは貰ったはずだろう?

 

それと、これは年長者からの忠告だけど、何でもかんでも一人で抱え込むのは止めた方がいい。

何を抱えているかは分からないが、無茶だけはしないでくれよ

 

 

_それとこれをどうぞ!

 

 

なになに、抹殺組合入会申込書? じゃあ、一応貰っておきましょう。

俺は入りませんけど、他の連中に勧めてみますよ

 

 

_本日はどうも有り難う御座いました

 

 

 

これは余談ですが、コマツ特務曹長達のチームは、現在東南アジア方面軍において、

最多撃墜数を誇るチームとして活躍しておられます

 

 

民明書房刊「漆黒の戦神、その軌跡」6巻より抜粋

 

 

 

某所 優人部隊基地

 

 

北斗は物凄く機嫌が悪かった。

理由は恐らく彼女の傍らにある五冊のハードカバーの本。ちなみに今は手元の六冊目を読み終えたばかり。

ちなみにタイトルは言わずもがな「漆黒の戦神、その軌跡」である。

「テンカワ・アキト、貴様はそう言う奴だったのか。女にうつつを抜かすような軟弱な男だったのか」

セリフだけ見ると強敵(こう書いて”とも”と読む)の事を嘆く漢(おとこ)なのだが、雰囲気や表情はどう見ても

彼氏の浮気を知った恋人のそれである。

 

「ダリアの整備はまだ終わらないのか!」

やり場のない怒りをとりあえず整備員達に向ける。

「無茶言わないでよ北ちゃん」

「零夜か」

完全にびびってしまった整備員達に変わり零夜が説明する。

・・・説明お○さんが居ないので掻い摘んで言うと、

完全分解した状態で整備してたので組み立てるだけで丸一日かかる、と言うことらしい。

つまり明日にならなければ組上がらない。

「くっ、出撃は無理か・・・!」

腹立ち紛れに壁を殴りつけた。見事に拳の後が付く。しかも十センチ程めり込んでいた。

「それに、ナデシコ、レーダーが見失って結構立つよ。もうどこかに行っちゃったんじゃない?」

暫く逢い引きは無理そうだ。

 

 

ナデシコ お仕置き部屋

 

いつもの場所にいつものメンバーがいつもの理由で集まっている。

ちなみに、既にお仕置きは終わっており、今日のお仕置きは

「布団に二人で寝る(ピンクの電気スタンドとティッシュボックス付き)」であった。つまり添い寝のこと。

勝利者の「銀の糸」と「赤い獅子」のパイロットコンビは赤くなりながらもご満悦だった。

もっとも、他の十二人は真っ黒な炎を身に纏い殺気と嫉妬と羨ましいの視線

(「視線で人をキルユー出来たら」)を向けていた。

 

「アキト、生きてるか?」

ナオもいつもの様に死体回収にやってきた。

アキトも相変わらず角の方でいじけている。

「ナオさん教えて下さい・・・。何で俺がいつもこんな目に合うんですか(涙)」

この男、未だに自覚が無いらしい。

「・・・お前さ、本気で言ってる?」

「なにがですか?(涙)」

「・・・まあ良い。それより食堂に行かなくて良いのか? そろそろ晩飯の時間だぞ」

『テンカワ、いつまでそこに居るんだい? 早くこっちきて夕飯の仕込みしちまいな』

ナオの言葉の直ぐ後に、計ったようなタイミングでホウメイから連絡が入った。

「すんません、今行きます」

食堂に向かうべく慌てて部屋を出ていくアキト。

「さて、俺も行こうかな」

そう言ってナオも立ち去っていった。

 

 

数日後、某組合宛に大量の入会申込書が届いた。

その直後、日本の某駐屯地において、不特定多数の兵士に大量の出前が届けられた。

そのお値段締めて○十万円。

ちなみに犯人は未だに捕まっておらず、「妖精」と言う言葉だけが分かったにすぎなかった。

 

 

「あの組織の人達はみんな敵、です」

「(コクコク)」

「でもやり方が陰険すぎるんじゃ(どげし!)」

 

「「ハーリー(くん)煩い(ですよ)」」

 

 

 

 

 

終わり

 

 

後書きみたいな物

 

皆様初めまして、ペテン師と言う者です。

このような駄文に付き合って下さって本当に有り難う御座います。

 

この話は黒貴宝さんのシリーズに触発されて突発的に思いついた物ですので

変な部分が多いと思いますが、広い心で読んで戴ければ最高です。

 

登場人物の設定は掲示板の方に書きましたので、暇な方は見てみて下さい。

コマツ、で検索すれば出てくるはずです。

ちなみにモデルは「オメガJ」と言う漫画のキャラクター達です。ただ、ライズだけ

某恋愛SLGのキャラをモデルにしました。

 

 

機会と反響があったらまた書きます。

追伸  私、メールアドレス持っていないんです。

 

それでは。

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

ペテン師さんから初投稿です!!

このシリーズも定着してきましたね〜

しかし、出張先で何してるかな、コイツは(笑)

たった三ヶ月でこれだけの人物を落とすとは・・・漆黒の戦神、恐るべし(爆)

でも本当に、どうして抱き合ってたんだ?

これじゃあ何時もの言い訳は出来んだろうが、アキトよ(苦笑)

 

それでは、ペテン師さん投稿有難うございました!!

 

さて、ペテン師さんには感想のメールを出す事が出来ません。

ですから感想は、この掲示板に書き込んで下さいね!!