「ヒラオカー、昼飯何にする?」

「んー、俺カツカレー。コマツ、お前はなに食うんだ」

「やっぱカツ丼だな」

「コマツさん、ヒラオカさん何やってんですか」

なにやら平和な会話をしている二人。

タナカが注意を促すがきっちり無視。

「お前ら私語は慎め! 今はブリーフィング中だぞ!」

確かにブリーフィング中にする会話ではないが、この二人はいつもこんな感じだった。

「すんませーん」

上官が怒鳴るが全然意に返さないコマツであった。

 

 

 

     へいたいさんのおしごと

 

 

 

「まったく毎回毎回うるせえな、あのちょび髭メガネは」

上官のウメモト少佐のことをちょび髭メガネと呼ぶ男、オメガフォース特務曹長コマツ・コウジはいつものように、

今度は小声で文句を垂れる。

今度は別な上官が説明を引き継いだ。

「今回の任務は麻薬工場の破壊だ。今回は4チーム、16人で行う。それといつものことだが、捕虜は取るな」

この手の任務では敵の捕虜は取らずに消してしまうのが普通なのでその事で文句を言う者はいない。

だが、以前の任務(本編でのナナフシに対する攻撃)に失敗したため人員の損耗が激しく、

大人数が確保できない状態で破壊工作を行うため、そこかしこからブーイングが出る。

「たった16人で工場を壊すのかよ」

「人数少なすぎるんじゃ無いんですか」

「止めた方が良いんじゃないすか、きついっすよ」

等々。

「今更文句言うなよ、これは決定事項だ。恨み言はエライさんに言ってくれ」

その上官、イケダ少佐も同じ考えだったらしく、部下達をたしなめながらサラリと上層部の批判をした。

「お前ら容赦せずに思いっきり暴れろ。ギャング共を殲滅するんだ」

『へーーーーーーーい』

ウメモトが気合いを入れようと、威勢のいい言葉でハッパをかけるが全然効果がない。

今度はイケダがやる気を出させる言葉を言った。

「それと成功報酬だが今回は200万だ」

『おっしゃーーーーーー!!』

さっきのやる気の無い返事とは対照的な、雄叫びの様な返事だった。

 

 

《降下地点まであと30分です!》

輸送ヘリのパイロットが全隊員に呼びかける。

装備を点検する者、仮眠する者、落ち着かなくなる者等様々いる。

「コマツさん、コマツさん、あと30分みたいですよ」

「タナカよ、少し落ち着け。お前毎回落ち着きがないな」

コマツやヒラオカはそうでも無のだが、まだ若いタナカは余裕がないのか落ち着きが無い。

「ヒラオカとライズを見て見ろ、余裕だろ、あの二人」

二人とも脚の間に銃を挟みながら仮眠をしていた。

17歳の少女よりも落ち着きがないと言われたタナカは、バツが悪くなり別な方向に話を持っていこうとした。

「そう言えばコマツさん、ちょっと聞きたいことが有るんですけど」

「何だよ」

「この前【あの本】読んだんですけどね」

「げっ、お前見たのかよ」

あの本とは勿論、「漆黒の戦神、その軌跡」のことだ。

「駐屯地にいる奴、全員読んだみたいですよ」

「おいおい、ホントかよ。暇な奴が多いみたいだな」

「それで、さっきの続きなんですけど。本にも書いてありましたよね。何であの二人抱き合っていたんですか?」

これまでも散々この事について聞かれてきたが、一度もはっきりと答えたことが無かった。

タナカの方も答えて欲しかったわけではなく、話題を変えたかったから聞いてみただけのようだった。

「命が要らないんなら教えてやる」

そう言ってコマツも仮眠をする事にした。

 

 

『オメガ7、8、先行して見張りを始末しろ』

「オメガ7了解、ったく危ない仕事はいつも俺達なんだよな」

「オメガ8了解、ぼやくなよコマツ。信頼されてるから重要な仕事を任せられるんだろ」

「ヒラオカ、お前物事を良い方に解釈し過ぎだぞ」

既に作戦が始まっているにもかかわらず、ヒラオカにぼやいてみせるコマツ。

ちなみに命令したオメガ1、イケダ少佐には聞こえないように無線は受信オンリーに切り替えている。

さすがに見張りに近づくに連れて沈黙するようになったが。

ちなみに現在午前二時。草木も眠る丑三つ時、にはちょっと早いが真夜中であることには変わりない。

装着している暗視ゴーグルの深紅の輝きが不気味に闇を開いていった。

 

「タナカ、ライズ、コマツとヒラオカがミスッたらお前達が仕留めろ」

「はあ・・・」

「了解」

イケダの命令に一瞬ボケッとしていたタナカは直ぐに反応出来なかったが、

ライズは直ぐさま反応した。二人の年齢差は5歳だが、どう見てもタナカの方が素人臭さがある。

もっとも彼女の方が歳不相応なのだが。

二人の持っている武器は、タナカがM−164突撃銃、ライズはSR−138狙撃銃である。

どちらも中・長距離に強い銃だ。

ちなみにコマツとヒラオカはMP89SD6と言う特殊部隊用のサプレッサー(サイレンサー)付きサブマシンガンで、

近距離に強い。

「でもあそこ、麻薬工場と言うよりどっかの富豪の豪邸ですよね」

「ヤクの密売組織の連中があそこを秘密基地兼工場として使っているんだ。

 元は何とかって大企業の持ち物だったみたいだけどな」

「じゃあ、地下室かなんかでヤクを造っているんですか」

「バッドカルマ(情報員のコードネーム)の情報ではそうらしい」

「オメガ1,オメガ20、気が散るから静かにして下さい」

ヒソヒソ話していた二人を冷ややかな声で注意するライズ。それでも視線は敵の見張りから離れてはいない。

「「すみません・・・」」

ライズ、君はホントに17か?

 

見張りは欠伸をして、まるでやる気がない。コマツはその右斜め後ろから低い姿勢でジリジリと近づいていく。

ヒラオカは、そのさらに十歩ほど下がった場所から援護のため銃を構えている。

「ハア・・・・・・、ハア・・・・・、ハア・・・・・・」

緊張からかコマツの息が荒くなる。

(まったく、なんで毎度毎度ポイントマン(先頭警戒員)は俺なんだよ。

 一番危ないのに他の連中と給料が同じなのは納得いかねぇ。今度、手当の増額を申請してやる)

さらに近づく。

 

         シュコン         グシャッ

 

サプレッサーによって消音されながらも、弾丸は見張りの後頭部に当たり頭ごと吹き飛ばした。

「オメガ7、成功」

『オメガ7,8はそのまま警戒にあたれ。3班前進、柵を退かせ。』

闇の中から他のオメガ隊員が姿を現す。命令通り迅速に柵を退かしていく。

『よし、オペレーションスタート。it’s showtime』

 

 

「こちらマタドール、定時連絡、異常なし、終わり」

ラテン系の男が無線を使って連絡をしていた。だがこちらもやる気が見られない。

 

     コンコン

 

「?」

窓ガラスを叩く音に気付いてなにも警戒せずに近づく。

「アディオス・アミーゴ」   シュコン

次の瞬間には頭が吹き飛んでいた。

「こちらオメガ5、通信室クリア」

 

敵の歩哨の背後から忍び寄る迷彩服の男。

左手で相手の鼻と口を塞ぎ、右手に持ったコンバットナイフで首筋の動脈と気管を切断する。

数秒間抵抗するが、直ぐに糸の切れた人形のようにダランと体中の抵抗が無くなった。

「こちらオメガ1、C−1通路確保。オメガ7の班は予定通り工場の破壊に迎え」

 

「オメガ7了解。よしタナカ、さっさと済まそうぜ。早く来い」

「無茶言わないで下さいよ。俺の荷物、コマツさん達より4〜5キロは重いんですよ」

「お前が一番若いんだから当然だろう」

タナカの荷物が重いのは、彼のアリスパック(軍用リュックサック)に高性能爆薬が詰まっているからだ。

「あの通路の突き当たりの階段を降りたところだ。オメガ20、先に行け」

「オメガ20、了解」

 

「タナカ、コマツはどうした?」

爆薬のセットが終わった頃、思い出したかのようにヒラオカが訊ねた。

「あれ、そう言えばいませんね。通路の方で見張りをしてるんじゃないスかね」

「にしちゃあ、遅くないか」

「私が見てきます」

ライズがさっきの通路まで戻ってみたが、

『オメガ17よりオメガ8へ、大変です! オメガ7がいません!』

「何だって!」

無線からはライズが珍しく慌てた声で通信してきた。

二人が急いで階段を駆け上がるがそこにコマツの姿は無かった。

「オメガ7応答せよ、オメガ7応答せよ」

ヒラオカが呼びかけるがイヤホンからは「ザーザー」としか聞こえない。

無線が壊れたか、受信できないところにいるかは分からないが、無線が通じないことだけは確かなようだ。

「どうするんですか、ヒラオカさん」

「仕方ない、俺が指揮を引き継ぐ。コマツのことも気がかりだけどさっさとこの仕事を片づけちまおう。

 あいつなら、そう簡単にくたばりゃしないだろう」

「そうですね、あの人女運は悪いけど悪運だけは強いですからね」

「だったら早く任務を遂行しましょう。遅くなればなるほどコマツ班長の身が危険にさらされるわ」

聴きようによっては酷いことを言っているように感じられるが、三人ともコマツのことを案じているのは確かだった。

だがそこに緊急連絡が飛び込んできた。

『オメガ1より全隊員へ。非常事態発生、爆薬をセットし終えた班は直ちに撤収せよ。

 一個中隊規模のギャング共が接近中』

「オメガ8よりオメガ1へ。7が行方不明の為、臨時に指揮を執ります。・・・コマツを見捨てるつもりですか?」

『何だと・・・・・・。はぐれたらLZゾーン(降着地点・脱出地点)で合流することになっていたはずだ。

 奴ならきっと辿り着けるだろう。・・・生きていれば、だが』

「・・・オメガ8了解、爆薬設置後直ちに撤収します」

「ヒラオカさん、マジですか?」

「マジだ。早く終わらせるぞ」

「そんなコマツさんは、」

「だから早く終わらせてコマツを探す。もし見つからなかったら、殿を務めて少しでも長くここにいる」

「分かりました」

何とかタナカを納得させる。

「それじゃあ、さっさと片づけるぞ」

「「了解」」

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

後書きのような物

 

 

 

皆様お久しぶりです。ペテン師であります。

二回目の投稿です。

 

既にナデシコでは無いような気がする・・・。メインキャラが一人も出ていないし。

 

この話は人間同士の先頭をメインにするつもりだったのですが、あんまり戦っていませんね。

一応、前後編にするつもりですので、駄文ではありますが続きを書きます。

後編ではコマツがメインで出てきます。今度こそドンパチが主体になる予定です。

 

次は、民明書房の「漆黒の戦神」アナザーでも書きましょうか。

 

 

それでは、また次回。

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

ペテン師さんからの投稿です!!

これは珍しいパターンの作品ですね〜

なにしろ、オリキャラ一色!!

アキトも名前だけ!!(笑)

このまま後編でも姿を表す事もなく、オメガvヒームの皆さんが活躍するのでしょうか?

・・・って、アキトと全然関係無い作戦ですもんね(苦笑)

そりゃあ、出てこないか(爆)

 

それでは、ペテン師さん投稿有難うございました!!

 

さて、ペテン師さんには感想のメールを出す事が出来ません。

ですから感想は、この掲示板に書き込んで下さいね!!