漆黒の戦神アナザー外伝

「敷島 英二の議」

 

 

 

 

第一話

 

 

 

 

 

 

 

東京都新宿区市谷に建設された国有施設の会議室に人が集まっていた。

「それでは会議を始めます。長官、宜しいですか?」

「ええ、それでは始めましょうか」

司会に長官と呼ばれた男、敷島英二は3年前まで地球連合財務省において財務官僚のトップ、財務事務次官の職に就いていた。だが敷島は、次期財務長官の最右翼にいたにも係わらず財務省を退職し、現在は日本国衆議院議員に転身を遂げた。

そして現在の内閣で閣僚の座に就いている。

 

ポストは「防衛庁長官」。言わずと知れた、日本の国防組織の長である。

 

 

敷島が何故このポストに就いているか。

それは現総理大臣・中湖純生が内閣の支持率アップの為に入閣させたのだ。一年生議員にも係わらずだ。普通で在れば人気取りの為の登用と考えが及ぶだろう。

そう言った経緯があったが、元々「戦神の義理の父」として知名度が在った事もあり、無所属候補として衆議院議員選挙に出馬したが比例区でトップ当選をはたした。

しかも、敷島英二と言う人物は元来優秀な男であり、そんじょ其処らの陣笠議員(当選回数の少ない議員)とは訳が違う。

彼は経済学の留学でオックスフォードを訪れた時に、予備士官課程を受講し大英帝国陸軍予備陸軍少尉として登録されている。

この講義の受講で、ガルン・ヒースローと友誼を結んだのだ。

しかも陸軍特殊空挺部隊の訓練に耐えたほど、文武に優れている。

 

本来であれば不慣れなポストの筈であったが、瞬く間に頭角をあらわし、ユニフォーム(制服組)の信頼をいち早く得ていた。

防衛費を的確な配置にし、余計な調達品を減らして、兵器の購入価格を完全入札制にしただけなのだが、現場から上がってきても、なかなか上層部まで上がってこなかった物だっただけに、其処まで耳を傾けて実行した手腕は十分感嘆に値したようだ。

そのため現在の日本国自衛軍(旧地球連合軍極東軍集団。元自衛隊)は世界各国と比例しても質量共に世界トップクラスに在った。

自衛軍統合幕僚会議議長の斎藤三起弥正陸将、陸上自衛軍陸上幕僚長の柳田昇吉陸将、海上自衛軍海上幕僚長の海江田志郎海将、航空自衛軍航空幕僚長の栗原宏美空将、航宙自衛軍航宙幕僚長の青山空知宙将の自衛軍制服組五人に防衛庁長官の敷島英二、計六人による防衛会議が始められた。

議題は、

 

「ナデシコとの共同作戦時における問題点について」

 

だ。

 

テンカワ アキトを国家元首にするナデシコとは、つい最近国交を樹立したばかりであり、安全保障協定こそ結んではいない。だが将来的な事も含めての会議であるため、各自衛軍のトップとシビリアンのトップだけの秘密会議を行っていた。

ユーラシア連合の中枢国家であるナデシコは国軍と言う物を持っていない。

必要無いからだ。

少なくとも、漆黒の戦神や真紅の羅刹、電子の妖精に表だって喧嘩を吹っ掛ける国家は居ない。

その代わり、と言うわけではないが、西欧諸国及びアジア諸国の連合体である「ユーラシア常設国家連合防衛軍」、通称「UNEDF(United Nation of Eurasia Defense Force):アンデフ」がユーラシア連合加盟国の相互防衛を行っている。

だが、日本、韓国、北朝鮮、中国と言った極東アジア有数の軍事力・経済力を持った国々は良くて中立的立場、そうでなければ国家として認めていない政府もある。

特に現日本政府の指導者達は揃いも揃って地球連合のシンパ、そしてその中枢国であるアメリカ合衆国政府の子分と言っても差し支えがない。

この会議の議題自体、政府指導者達には詳しい内容は伏せられており、通常の防衛会議の名目で開かれていた。ここにいる六人はナデシコに対して、引いてはテンカワ アキトに対しても好意的だ。

 

「・・・結論から申し上げると、現段階においてはナデシコとの共同作戦は困難と言わざるをえません」

斎藤統幕議長がそう結論付けた。

彼は元Moon Night整備士サイトウ タダシの叔父で、蜥蜴戦争当時からこのポストに就いている。現場主義的な指揮官だ。ちなみに正陸将とは自衛軍独自の呼称で、通常の軍隊における大将クラスの階級だ。

現在の有事法制では、「地球連合加盟国」との共同作戦と物資供給に付いては明記されており、その有事法は蜥蜴戦争で使用されている。

だが、ナデシコは地球連合加盟国では無い。そして、ユーラシア連合自体も地球連合とは事実上決別しており、ナデシコから出動要請が出ても自衛軍はナデシコとユーラシア連合軍と共同作戦を行うことは出来ない。

抜け道を探すために色々とシミュレートしてはみた物の、どの方法を使っても「不可能」といった結果しか出なかった。

「やはり、総理の在職中は無理ですか」

敷島が思わず上司批判をする。国務大臣が、自らの任免権者の批判をするのは非常に拙い。だがこの場に居合わせた者達は、何も聞かなかった事にしてしまうつもりらしく、自分達が最高司令官の批判をし始めた。

「あの方は、既存の財団法人や役所の民営化は口にしても、連合と手を切るとは絶対に言わないでしょう。大のアメリカ信奉者で、アメリカの言うことを鵜呑みにする売・・・」

「陸将、それ以上はお止めなさい」

柳田陸幕長が些か冗談にならない批判を口にしかけるが、一〇歳ほど若い同僚の海江田海幕長がたしなめる。

海江田は潜水艦乗り出身の海上自衛官で、ナデシコ艦長テンカワ(旧姓ミスマル) ユリカに匹敵するほどの天才肌な指揮官だ。実際、過去の演習において、当時最強と言われたアメリカ海軍第七艦隊を、「たった二隻の潜水艦で全滅に追い込んだ」実績がある。

ちなみに、もう一人の潜水艦乗り、深町洋海将補は潜水隊群司令として呉基地にいる。

栗原空幕長もサングラスを指でクンッと持ち上げ、同感と言わんばかりの発言をする。

「まあ、政治家なんて馬鹿やアホでも務まる仕事みたいだし、口だけの詐欺師がなっても良いんでしょうよ」

「栗原空幕長、私も一応その政治家なんだけどね」

敷島は苦笑しながら、一応反論してみる。

「長官は数少ない例外みたいですが」

戦闘機パイロット出身で人間スーパーコンピュータの異名を持つ栗原だが、その冷静な目から見ても敷島は合格らしい。

ここにいる全員が総理の口だけ改革には嫌気が差しており、批判的だ。

「長官、今日はこれまでにしましょう」

青山宙幕長が閉会を促す。

「そうですね、青山宙将。これで解散としましょう。皆さん、ご苦労様でした」

敷島がそう言って会議を締めた。

 

 

 

 

 

 

「まだ、ナデシコへの協力は無理だったか」

敷島が日本で代議士になった理由。

 

日本をナデシコの同盟国にし、日本からナデシコへの直接・間接的支援を行うためと、ナデシコの力を利用して再び経済大国とする為だった。

 

敷島英二。

彼は、テンカワ アキトの義父であり、それと同時に現在は日本の国益を模索する政治家であった。

 

 

 

 

 

 

続く・・・

 

 

 

 

 

 

 

ACTION軍事担当官、天暗星 握牌軍のペテン師です。

SSと言うよりは設定話になったような感が在りますが、そこは広ーいお心で見てやって下さい(爆)。

 

 

自衛軍のお話。

元々は極東軍集団として書き、戦争が終わったら自衛隊に戻って貰おうと思っていたのですが、某所で大蒲鉾とこんなやり取りをした。

私「ナデひな世界に自衛隊が在ったんですね(ナデひな京都編を見て)」

蒲「あれは間違いです。ナデひなの世界に自衛隊は存在していません」

 

ががーーーん!!!

 

裏切ったな大蒲鉾! 某首相と一緒で僕を裏切ったな!!

 

そんな訳で、一時期どうしようと思いましたが、ガンパレの設定を見て「自衛軍」なる物を発見。これ頂き! で使ってみました。

 

 

今回登場させた斎藤三起弥。

嘗て私のお話ではサイトウの叔父として出演させました。

 

再び某所で大蒲鉾とやり取りをして、

サイトウの叔父として使ってもよいと、大蒲鉾に正式に認めていただきました!

 

 

 

最後に、こんな拙い文章を最後まで見て頂き、誠に有り難う御座いました。

 

 

 

 

それでは

 

 

代理人の感想

社会派ですね〜。

全くこのサイトの投稿作品の多彩な事よ。

ですが、今回最大のショックを受けたのは実は本文ではなく後書きでした・・・・

 

 

 

>裏切ったな大蒲鉾! 某首相と同じで僕を裏切ったな!

 

 

あああ、トップのネタがぁッ(核爆)!