機動戦艦ナデシコ

ever day


第1話

 

 

 

「ここは、どこだ…」

 

気がついたら、草原で寝ていた。俺は起きあがり辺りを見回す。

どうやら地球のどこからしい。どこからともなく潮の匂いが漂っていた。

 

「海の近くか…。」

 

そんなことより何か違和感を感じる。何だろう?

 

「服が違う?」

 

見るとオレンジのシャツとジーンズを身に付けていた。

確かに黒のマントとバイザーを付けてたはずなのに。

 

「ん?バイザー?」

 

顔に手をやるがそこにはあるべきモノがない。

しかし、それが無くてもしっかりと周りを見ることが出来る。

 

「まさか!?」

 

と思い、顔をペタペタと触ってみる。そして、おもむろに草を口に含んでみた。

苦い。味覚もある?どうして?

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

5感はある。昔の服を着ている。雪谷食堂を追い出されるときに持っていた荷物と自転車もある。

・・・・・・・・・・・・ということは、

 

「俺は過去に戻ってきたのか…?」

 

信じられん話だが、そうとしか考えられない。

そういえば前にイネスさんもボソンジャンプは空間移動ではなく時間移動であると言ってたしな。

 

「そうか、戻ったのか…」

 

 

未だ実感は湧かないが、とりあえずこれからどうしようか。

とりあえず取るべき選択肢は二つだな。ナデシコに再び乗るか乗らないか。

乗った場合、前回と同じ道を辿ることになるだろう。どこまで修正できるかわからないが。

まぁ、木連との戦いに巻き込まれることは確実だな。

もし乗らなかった場合はどうなるのだろう?

きっとどこかのラーメン屋あたりでバイトしながら生活を送ることになるんじゃないか?

もうバッタとかジョロを見ても震え出すことはないだろうし。

ま、普通に生きていけるよな、多分。

どっちがいいかな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・決めた。

 

「普通に生きよう」

 

そもそも俺は当初ナデシコクルーじゃないわけだし。

俺1人いなくてもナデシコなら立派に戦えるよな、多分。

なんせ、性格はともかく腕は一流の人達が集まってるからな。

問題はボソンジャンプか。

ユリカとイネスさんがいる以上ボソンジャンプが公になるのは避けられないだろうし。

ということは戦後、ジャンプ独占を狙う火星の後継者どもの火星人狩りに遭う可能性があるよな。

とりあえずそれまで時間はあるし、少しずつ体を鍛えればいいか。

今は五感も戻ってるし、そうすれば火星の後継者といえどもそうは遅れを取らないだろう。

俺は、そう決めるととりあえず街に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自転車に乗るために荷物をまとめ直していると、そこへ一台の車が俺の横を通り過ぎていった。

あれ?なんか見覚えが…

 

ガラン、ガラン、ガラン、ガラン・・・・・・・

 

「えっ?」

 

ドガアッッッッ

 

「うわっっ!!」

 

その車のトランクからスーツケースが転がってきて俺に直撃した。

完全に油断してるところに来たので俺は真正面からぶつかってしまった。

 

キキキキキキィィィィ

 

車が急ブレーキを掛け、中に乗っていた人物が降りてくる。

 

「すいません、すいません。どこか痛いところありませんか?」

 

そう言って車から降りてきた人物は、前回俺が愛した妻ミスマル・ユリカその人だった。

 

「・・・・・・・・・・・フフッ」

 

まさか、前に経験したことをもう一度体験できるなんてな。思わずおかしくなってしまった。

 

「あのー?」

 

「いや、何でもない。」

 

そんな俺の様子を不審に思ったかユリカが声を掛けてきた。

 

「それより、荷物が散らばってるぞ」

 

俺とぶつかった時にスーツケーツの蓋が開き、中身が散乱していた。

それを拾い集めながら横目で隣にいるユリカを見る。

どこからどう見てもユリカだ。でも俺の知ってるユリカじゃない。

実は、怖れていた。俺の知ってる人達に会うことを。

同じ顔をしながらも、別人である人達に俺は正直どう対応すればいいかわからなかった。

しかし、実際はあっけないものだった。

驚きはしたもののそれだけだ。

強いて言うのならユリカの顔をしたそっくりさんというところか。

どんなにあいつと同じ顔、同じ仕草、同じ声であっても俺にはもはや別人としか認識できない。

そんなことを考えながら荷物を拾い集めていると、隣でユリカがじーっと俺の顔を見ていた。

 

「・・・・・・・・・・・・なに?」

 

その視線が気になり声を掛けてみる。すると、

 

「あのー、不躾な質問ですが。貴方、以前どこかでお会いしました?」

 

前回と同じことを聞いてきた。

 

「いや、初対面だと思うけど。」

 

そう返事をすると、ユリカは「うーん」と考え込むような仕草を見せる。

 

俺はそれに取り合わず黙って荷物をまとめる。

一段落し、車の方をむくとジュンがトランクで四苦八苦していた。

 

「ユリカ〜、もうちょっと荷物減らそうよ。」

 

「ダメ。どれもユリカが三日掛けて選んだお気に入りのばかりなんだから。」

 

俺はしょうがないとばかりに溜息をつき、ジュンの方も手伝ってやることにした。

 

「手伝おうか?」

 

「あ、すいません。」

 

そして、何とかスーツケースをトランクに詰め終えるとユリカとジュンは車に戻っていった。

去り際に、

 

「ご協力感謝します、では。」

 

と、ユリカが前回と同じ台詞を残しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フゥ」

 

車が去っていった後、俺は思わず息を吐いた。

ここが過去だということを理解してたつもりだったが、実際に前と全く同じことを体感するというのはとても変な感じだった。

 

「ま、普通ならあり得ないことだからな」

 

そして俺は気を取り直し、自転車をこぎ始めた。

しばらくして、道路の脇にジュースの自販機があるのが見える。

ちょうど喉も渇いてたし、何か飲んでくか。

俺は、自販機の横に自転車を止めた。

 

「やっぱり、ドクターペッパーだよな。」

 

買う物を決め、ポケットから財布を取り出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無い(汗)

あ、あれっ?おかしいなぁ。確かに持ってた筈なのに。

 

ゴソゴソ

 

どうやら服のポケットには無いらしい。

面倒だが、背中のリュックの中を探してみる。

 

ガサガサ、 

ゴソゴソ、 

ポイッ、ポイッ、

ドサドサドサ・・・・・・・・・、ブンブン。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・ない。

リュックの中にも無い。中身を全部出してみたけどそれでも見つからなかった。

念のために逆さにして振ってみたがそれでも何も出てこなかった。

 

「どっかで落としたかなぁ。」

 

仕方なく俺は荷物を全て持って、元来た道を探してみることにした。

注意深く見ながら戻っていくがやはり見つからない。

とうとう俺が最初にいたところまで戻ってしまった。

それでも財布はどこにもない。

となると、考えられることは…スーツケースとぶつかった時に、
何らかの拍子でその中に入ってしまったかもしれないということだ。

ということは、サセボドックまで財布を取りに行かなくてはならない。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

はっきり言って、行きたくない。

何とかユリカと再会というイベントをクリアできたのに。

これじゃあ何のためにフォトスタンドをしっかりとしまったのかわからない。

元の木阿弥じゃないか。

しかし、財布には全財産が。これがないと非常に苦しいし。

 

「うーん」

 

悩むこと10分。結論が出た。

ユリカは艦長だし、おいそれと艦を離れることは出来ないだろう。

ということは、代理の人が来る可能性が高い。

多分プロスペクターさんあたりが来るだろうから財布を受け取り、いなくなればいい。

よし。これならユリカに会うこともナデシコに乗ることもなくドックから離れられる。

これで行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時の俺にはまだ気づく由もなかった。

歴史は再び繰り返されるということを。

 

 

続く

 

後書き

初めてSSを書いたぽてとです。今までは専ら読む専門だったんですけどね。

だんだん自分でも書いてみたくなり、チャレンジしてみました。

はっきり言って短いというか、話が全然進んでませんよね(汗)

ですが、私の中では一区切りなんですよ。

今2話を書いてまして。1と2話を一つにしようかなと思ったんですが、なんか違和感を
感じてしまって。やっぱり分けることにしました。

これは逆行物です。アキト君強いです。とりあえず戻るのは彼1人です。

他のキャラはテレビ版に基本は準拠したいと思います。

今回はご挨拶ということで。

それでは第2話でお会いしましょう。

 

 

 

代理人の感想

ん〜む、これって。

運命には逆らえないアキト君がテーマですか(笑)?

正直言って短編ないし「つかみ」としてはOKなんですが

長編全てを貫くネタには不向きなので(途中で飽きる)、

このまま続くなら何らかの意外な展開が欲しいところですね。