機動戦艦ナデシコ

ever day


第4話

 

 

 

俺はアリスについてはとりあえず様子を見ることにした。

いきなり泣かせてしまったという負い目もあるんだが、どこか放っておけない雰囲気を醸し出しているからだ。

・・・・ただルリちゃんに似ているからなのかもしれないけど。

彼女についてはこれから少しずつ話を聞いていけばいいだろう。

さて、とりあえず・・・・、

 

「これから・・・どうします?」

 

「どうするって、テレビを観るにきまってんだろ?」

 

「テレビ?何の?」

 

「知らないのか?水曜10時といったらこれしかないだろうが!」

 

実はこれから俺が毎週欠かさず観ていたドラマが始まるのだ。

始めは興味なかったのだが、サイゾウさんに強引に観せられてから俺もすっかりハマッてしまったんだ。

続きを楽しみにしていたのに、ちょうど放映日に店を追い出されて、それから5年もの月日が経ってしまった(涙)

しかし、今日遂にその続きが観れる!

 

「これはお涙頂戴系の、純愛ドラマなんだ。確かにラブラブで、これぞ青春と言うほど臭いシチュエーションなんだが・・・それがまた良くてな。何だか安心出来るシナリオ、と言うのか?ああ・・・エエなぁ・・としみじみ思えてしまうんだ」

 

「いや内容はともかく、現在ナデシコはピンチなのでは・・・?」(汗)

 

「今はストーリーが中盤でな。元気なはずのヒロインが、ある日突然医者から死を宣告されてしまうんだ。悩み苦しんだ末、ヒロインは主人公を傷つけないために別れを切り出すんだよ。でも主人公はそんなことなど知らないからな、ついキツイ言葉を言ってしまうんだ・・・。互いにすれ違う心と心。相手を思いやってるからこその悲しみというか何というか・・・・」

 

「あの・・・・・聞いてます?」

 

「ほらもうすぐ始まるぞ。アリスも席に着け」

 

「席って・・・」(汗)

 

俺は手に汗握り、ハラハラドキドキしながら画面を食い入る様に見つめている。

先ほどからズズゥゥンという音と共になにやら船体が揺れているようだが、そんなのは無視だ。

長かったCMも終わり、やっとドラマが始まるって時に・・・、

 

ピッ

 

「テンカワさん!!」

 

「どわっ」

 

いきなり画面にプロスペクターの顔が映し出されて、俺は思わずのけぞってしまった。

 

「良かった。お部屋に居らしたんですね」

 

ちっともよくねーよっ!!

内心ムッとしながら声を掛ける。

 

「いきなり何ですか?」(怒)

 

「実は、現在ロボットのパイロットがいないんです。いや、いるにはいるんですが今は療養中でして」(汗) 

 

ハンカチで汗を拭いながら、プロスペクターは続けた。

 

「艦内でIFSを持つ者といったらテンカワさんかオペレーターの方しかいないんです。オペレーターがいなくてはナデシコを動かせませんし。ですから貴方にパイロットをお願いをしたいんです」

 

「よく、俺がコネクタをつけてると分かりましたね?」

 

「それは先ほどチラッと拝見したものですから」

 

相変わらず抜け目無いというか。よく見てるよなぁ。

 

「お願いします。このままだとナデシコは沈んでしまうかもしれませんので」

 

「でも俺は、ロボットに乗ったことありませんよ?」

 

「それは大丈夫です。新型のシステムを採用してますので、子供でも動かせます。」

 

「うーん」

 

どうしようか。

俺はしばらく悩んだが、

 

「いいですよ」

 

と、返事をする。

確かにこのままだとナデシコはヤバイしな。

 

「そうですか!ありがとうございます!詳しいことは格納庫で聞いて下さい」

 

そう言ってプロスペクターは通信を切った。

 

はぁ、やっぱり歴史通りってことか。

そんなことより・・・・、今回も続き観れねーのかよ!(怒)

ちっくしょおー!こうなったら、憂さ晴らしに蜥蜴どもを殲滅させてやるぅ!!

などと危ない思考に陥りながらも部屋を出て、俺は格納庫に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・なぁ」

 

「はい?」

 

「何でついて来るんだ?」

 

そうなのだ。何故かアリスも俺と一緒に通路を歩いているのだ。

 

「言ったはずです。貴方のサポートをする、と。」

 

「それは聞いたけどさ。今回は別にサポートしてもらわなくても大丈夫だと思うんだけど。」

 

「万が一のためです」

 

どうやら引く気はなさそうだ。

やれやれ。

俺は諦めた。また泣かれても困るしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が格納庫に着くと整備員達も慌ただしく動いていた。

どうやら、作戦が始まるらしいな。

そしてピンクのエステバリスの前に進む。

前回俺はエステバリスで囮をつとめた。とはいっても、ヤマダが骨折したんで仕方なくなんだが。

本当は逃げるつもりだったのになぁ。それをユリカが勝手に押しつけて。

今回はどうしようか?囮になってもいいが、いっそ殲滅した方が早いかな?などと考えていると、

 

「お前さんか?予備パイロットってぇのは?」

 

と、大きな声で呼びかけられる。

振り返ってみると、整備班長であるウリバタケが俺の後ろに立っていた。

 

「・・・ええ。テンカワ・アキト、コックです」

 

「コックが何でコネクタつけてんだ?」

 

「火星育ちなんですよ。火星では別に珍しくないですからね」

 

「そうなのか。で、腕前はどうなんだ?」

 

「さすがにロボットを動かしたことはないですけど、他のものなら一通りあります」

 

「ほう。ならIFSの使い方は分かってるんだな?よし、このエステバリスは新型のシステムを導入してるんで動かすだけなら子供でも出来る。複雑な戦闘行為なんかはちゃんと覚えないと無理だがな・・・。今回はとりあえず動くだけでいいらしいんで問題はないと思うぞ。」

 

まぁ、本当はそのロボットが一番得意なんだけどな。

さすがにそんなことを話すわけにはいかないし。

 

「おっと、俺は整備班長のウリバタケだ。よろしくな。それにしても災難だったな、いきなりパイロットにさせられちまうなんてよ」

 

「ええ、まぁ。本職のパイロットの人はどうしたんです?」

 

わかりきってることだが、とりあえず聞いておく。

俺が、怪しまれないためにもな。

 

「ああ。バカがバカをやってよ。今骨折中なんだ」

 

「はぁ。そうですか・・・」

 

その時、

 

「班長ー、準備できましたー!」

 

整備員の1人から声が掛かる。

 

「おぅ。できたか!じゃあ、テンカワ。いっちょ頼むぜ!」

 

そう言ってバンと、俺の背中を叩く。

 

「作戦内容とかはゴートの旦那から聞いてくれ。通信が入ると思うからな。それと、一つ言っておくぞ。機体は壊れたらまた直せばいい。それが俺達の仕事だしな。だけどな、テンカワ。お前自身の代わりはいねーんだ。決して無茶はすんじゃーねぞ?要するに無理はすんなってことだ!」

 

「ありがとうございます。俺、行きますね」

 

俺はエステに乗り込んだ。

 

ウイィィィィン

 

エレベーターが作動し地上へと上がっていく。

 

「さっきのウリバタケさん、いいこと言ってましたね」

 

「ああ。あの人は大人だからな。素人の俺がエステに乗り込むことにも一端の責任を感じてるんじゃないのかな」

 

「そうですね・・・。ま、みんなヤマダさんが悪いんですけどね」

 

「それはそうだけど・・・・・・・って、何でここにいるんだ!?」

 

なぜアサルトピットの中で会話が成立するかと思ったら、アリスが俺の脇に控えていた。

 

「危ないだろ。早く降りろ!」

 

「無理です。第一どうやって降りるんですか?」

 

「どうやってって・・・・。」

 

確かに今から降りるのは不可能だよな。

それにしてもこいつ、何時の間に乗り込んだんだ?

 

「わかったよ。とにかくそこにいると危ないだろ?戦闘中どこかにぶつけるかもしれないし。まだ俺の膝の上の方が安全だと思うからな。上に座ってくれ」

 

「はい」

 

ちょこんとアリスが俺の膝に座る。

・・・・軽い。本物のルリちゃんだって決して重くはないと思うんだが、それにしてもこれは異常だ。

まるで羽のようにフワッとしていてほとんど重さを感じない。

 

「アリスって何でそんなに軽いの?」

 

「女の子に体重の話題はタブーですよ?」

 

「だって、あまりにも軽すぎ・・・・・・・」

 

ピッ

 

そう続けようとした時、ブリッジから通信が入った。

 

「君が予備パイロットか?」

 

        ゴート
いきなりむさいおっさんの顔が映し出される。

 

「ええ。テンカワ・アキト、コックです。」

 

「コック・・・・・・・・・・・。大丈夫なのか?」

 

「俺だって乗りたくて乗ってるんじゃないですよ。他に人がいないみたいだから仕方なくです。」

 

「むぅ。確かにそうなんだが・・・」

 

不安そうな顔をするゴート。

それはそうだろう。コックなんて戦闘と一番かけ離れている奴が乗ってるんだからな。

不安なのはゴートだけじゃないらしく、

 

「無理よ!コックが囮なんて出来るわけ無いじゃない!!」

「あのー、無理はしない方がいいですよ?」

「あー!!!俺のゲキガンガー!!!!!!!!!」

「でも結構大丈夫そうな顔してるよ?」

「テンカワ・アキト?アキト、アキト、アキト、アキト・・・・・・・・・・」

「地上まで後20です」

 

みんなが一斉に喋りだすものだからうるさくてしょうがない。

どうせやることは分かってるんで音声をOFFにした。

 

「いいんですか?」

 

「何が?」

 

「作戦内容聞かなくても」

 

「ナデシコを出すまでの囮だろ。前回と同じくさ」

 

「でも、万が一ということもありますよ?」

 

うーん。確かに。

前回と細部が違う点があるからな。

念のために聞いておくか。

と音声を出した瞬間・・・・・・・、

 

「あ!アキト。アキトでしょ!アキトアキトアキトだぁ!!!!!!」

「ぐはぁっ」

 

ユリカの音波攻撃にやられた。

狭いコクピットなので反響も十分だ。

まさかここまでキツイものだったとは。危うく意識が飛ぶところだったぞ。

「アキトったら何でさっき何も言わなかったの?あ、そうか!アキト照れやさんだもんね。もう、照れなくてもよかったのに!そうそう、それよりそこにいると危ないよ?なのに何で?あっ、そっかぁ!!ユリカがピンチなんで駆け付けてくれたんだね!さっすが、私の王子様!!」

「ね、ねえユリカあいつ一体誰なの?」

ジュンが質問するが、ユリカは自分の世界に入っていて聞いちゃあいない。

何とか持ち直した俺が、文句を言ってやろうと口を開き掛けたとき、

 

「エレベーター停止。地上に出ます」

 

俺の前に小さいウィンドウが表示される。

そして、

 

ガシィィィィン

 

地上に出た俺の前に、大量のバッタやジョロが現れた。

 

「作戦時間は十分間。その間敵を引き付けておいてくれ、以上。」

 

どうやらゴートは先ほどから喋り続けてたようだがユリカの音波攻撃により俺には届いてなかった。

 

そして、俺は不謹慎かもしれないが再び戦えることにワクワクしている。

何故かはわからないが、この場所に立てることに喜びを見出していた。

 

「うおおおおおおおっっっっ!!!!!」

 

俺は雄叫びをあげ、バッタに襲いかかる!

囮をしろと言われてたが、そんなのは無視して蜥蜴どもを殲滅する気になっていた。

しかし・・・・・・・・・、

 

ガクンッッ

 

いきなりエステの体勢が崩れた。

え、どうして?エステが思うように動かない?

しかしバッタ達はそんな俺にお構いなく襲いかかってくる!

 

「うわっ」

 

何とか回避したが、このままではヤバイ。

俺はアリスにエステの状態をチェックしてもらった。

 

「アリス。どうしてエステの調子がおかしいんだ!?」

 

「えーと、どうやらバランサーがおかしくなってるみたいですね。」

 

「なっ・・・・!」

 

いくら俺がエステを上手く操縦できても、機体自体がおかしければどうしようもない。

ということは、俺、マジでピンチってやつですか?(汗)

 

「下手したら前回よりキツイかもしれませんね?」

 

そんな俺の胸中を見透かしたかのように言うアリス。

しかし返事をする暇もなく俺は必死にエステを操っていた。

 

「ううっ。なんでこんなことに」(涙)

 

本当なら、ここで格好良く活躍して「これでみんなのハートをキャッチ!」とか、囮に徹してクール(?)な所を見せつけるはずだったのに。

もしくは素人と思わせるため適当に相手をしようとしてたのが、限界以上の力を出さないと俺がやられてしまう羽目になるとは(涙)

長い。10分とはこんなにも長いのか。

所々被弾してしまったが、まだ致命打とはなっていない。

しかし、それももう限界だ。

 

「こらー!逃げずに戦えー!!」

 

「囮なんてベテランでも大変なんだから素人に出来るわけないでしょ!!」

 

「ですが、立派な囮ぶりでは?」

 

「うむ。見事な腕前だ」

 

等と、ブリッジの奴ら好き勝手言ってやがる。

俺は蜥蜴たちの攻撃をかわすので精一杯だ。

反撃しようにもライフルすら持ってない。

ゲキガンパンチもどきだけで戦うほど俺は無謀じゃないし。

だとすると前回よく無事だったなぁ、俺(汗)

あの時は無我夢中だったが、冷静に考えてみると恐いモノがあるな。

突然、

 

「テンカワさんっ!!」

 

アリスが焦ったように声を出す。

 

俺が「え?」と思った時には、

 

ドゴオォォォォン!!

 

バッタのミサイルがエステの背面部を直撃した!

そしてエステが地面に叩きつけられる。

 

ズシャッ

 

痛い。衝撃が俺を襲う。

どうやら一部レーダー機能が破壊されてたようだ。

だから、接近してくるミサイルに気が付くことができなかった。

しかし、俺が倒れている間にも敵は容赦なく襲ってくる。

慌てて立ち上がろうとしたが・・・、

 

「動かない・・・・」

 

さっきの攻撃で、どっかに支障が出たのか?

俺は必死にIFSでイメージを送っているが動かない。

しかもそんな時に限って、

 

「アキト。もうすぐ行くから海に向かって!」

 

ユリカが通信を送ってくる。

しかし俺には為す術がない。

気が付くと何時の間にか敵に囲まれていた。

 

バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ、

 

俺に向かい一斉にミサイルが放たれる。

 

ゴゴオォォォォォォンンッッッッ!!!!!

 

倒れ伏している俺に回避することなど出来るわけもなく、もろにその攻撃を食らった!

どうやらここまでのようだな。

どこか冷めた目で状況を分析する。

今の攻撃は文字通り致命打となったようだ。

コックピットの中をアラートが鳴り響く。

俺はここで死ぬのか?

ランダムジャンプに巻き込まれ、もう一度やり直せると思ったのも束の間。

こんな虫達ごときにやられるのか?

 

クククッ・・・・ハーッハッハッハッハッハッハ!!!!!」

 

可笑しかった。

無性に笑いがこみ上げてくる。

普通なら、死にたくないとばかりにそれこそ必死になるんだろうけど、俺は違った。

過去、俺の復讐に巻き込まれて死んだ人達。

俺がふがいないばかりに、更なる悲しみを与えてしまった人達。

そんな人達のことを思うと、もう一度全てをやり直せるという機会を得たにもかかわらず、もういいやと諦めている自分がいるのだ。

どこかでもう生きることに疲れている自分がいるのだ。

そんな自分が可笑しくて・・・・・・・・・・・悲しくて・・・・・・・・涙が出た。

その時、

 

      ヒーロー
「悲劇の主人公気取りですか?」

 

冷めた声でアリスが問いかける。

膝に座っていたはずの彼女は、いつの間にか俺の横にいた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

俺は何も言い返せない。

俺の胸中を抉るような的確な指摘に。

そんなことはないと否定したいところだが、どこかそんな思いがあったのも事実だ。

 

「貴方は前に言ってましたよね?どんなに無様になっても生き続けるべきだ、と」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「それがいざ、自分の立場になったらあっさり覆すんですか?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「今の貴方は逃げてるだけじゃないですか?」

 

「ちがう!俺は・・・・・・・・」

 

俺は、何だろう?言葉が出てこなかった。

アリスは、そんな俺を見るとフッと表情を和らげ、

 

「貴方は優しい人です」

 

「・・・・・・・・・・・・・え?」

 

「優しいから、全てを背負い込もうとする。それがどんなに苦しいことであっても」

 

「・・・・・そんなことはない」

 

しかし、俺の言葉にとりあわず続ける。

 

「人は皆何かしら背負っているものです。しかし、時にはそれに耐えられなくなってしまう。そんな時は他人に頼れば良いんです」

 

「他人に・・・・?」

 

「そう。そしてナデシコにはそんな頼りになる人が、たくさんいるじゃないですか?」

 

「ナデシコ・・・・」

 

「貴方の旅はまだ始まったばかり・・・・。その果てに何があるのか私にも分かりません。ですが、今はまだ死すべき時ではないのです」

 

そう言った後、アリスの体が輝き始める!

まるで、未来のルリちゃんのように。

 

  コネクト・オン 
 「接続!」  

 

あれだけ鳴っていたアラートが一斉に止まった。

そして、信じられないことにエステが再起動したのだ。

よろめきながらもなんとか立ち上がり、海に向かって走り始める。

左右にブレながらも確実に前へ進むことに、俺は呆気にとられた。

動くことすら出来なかったはずなのに・・・。

そして、

 

「アキト、そのまま真っ直ぐ進んで」

 

ナデシコから指示が入る。

まだ海面には何も見えないが、すぐにナデシコが浮上するだろう。

そして、エステが海上に向かって飛び、それに合わせるかのごとくナデシコが出てきて、

 

「目標。敵まとめて、ぜ〜んぶっ!」

 

ギュオォォォォォォォッ!!!!

 

グラビティ・ブラストが発射される。

それはエステを追ってきた残りの蜥蜴たちを殲滅した。

俺はその光景をただ呆然と見ているだけだった・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、私は一足先に戻ってますね。」

そう言うと、いつの間にか発光現象が収まったアリスがハッチに手を掛ける。

 

プシュー

 

そう音を立ててハッチが開いた時に、

 

「あ、あの・・・・・」

 

俺はつい呼び止めてしまった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ゆっくりとこちらに振り返るアリス。

 

「い、いやその・・・。助かったよ、ありがとう・・・・・」

 

そんな言葉しか出てこなかった。

くそっ!そうじゃなくて、もっと他に言いたいことがあるのに・・・・・・・・。

 

「気にしないで下さい。貴方のサポートをするのが私の役目ですから」

 

でもアリスはニッコリとしながらそう言ってくれた。

 

「そ、そうか・・・・・。と、ところで、君は何者なんだ?どうして、あんなことができるの?君は一体何を考えてるんだ?」

 

思わず口をついて出た言葉。

しかし、彼女は何も答えずに軽く一礼すると、エステから降りていく。

俺1人だけがその場に取り残された。

海上に吹く風がやけに冷たく感じられたのだった・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺には聞こえていなかった。

俺の問い掛けに、小さな声で彼女が返した言葉を。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・復讐」

 

 

 

続く

 

後書き

どうも、ぽてとです。疲れましたぁ、本当に。

なぜか書く量の割には話が進んでませんが、やっとテレビの第1話終了です。

長かったー。いかにテレビ版と改変しようかなと考えてたらこんなにかかってしまいましたね。

もっと省略して、展開をスピーディーにするのがこれからの課題です。

戦闘シーンとか上手く書けそうにないので会話を重視しようと当初から決めてましたが、こんなにも大変だったとは(汗)

 

ところで、話が暗くなりかけてますがそんなことはありませんよ。

某横島君のごとく次の日にはケロッと忘れているでしょう・・・多分(笑)

いつもの(?)アキト君をお届けしたいと思ってます。

毎回こんなんじゃあ疲れてしまいますし・・・・・私が(爆)

 

少し補足です。

実は0083を見返しまして、ゼフィランサスがシーマ様にこてんぱにやられちゃうシーンを観て、バランサーって大事なんだなと思ったわけです。

もちろん宇宙用に換装されてないのも大きな原因だと思いますが。

ウラキは自身の間違った計算に気づきませんでしたよね。

彼は仕様書を見ただけで、デンドロビウムを正しく分析してましたので、かなりメカに強いと思われます。ヴァル・ヴァロも稼働状態にしましたしね。

そんな彼でも間違ってしまったわけでして。

ニナみたいな技術者にはやはり及ばないのです。

エステの整備をした時、バランサーの担当者は別の人ということにしました。

ウリピーさんならともかく他の整備員ではそこまでの技術レベルに達していなかった、とこういうわけです。

だからウリピーさんは自分の整備不良を誤魔化すために声を掛けたわけではありませんよ(苦笑)

彼は知らなかったのですから。本心からです。

どうか彼をいい人でいさせてあげて下さい(笑)

ちょっと突っ込まれるかなと思ったので補足しました。

 

次はやっと第5話、テレビでいうと第2話に入ります。

テレビは面倒なので、現在小説を読み直しているところです。

では、またお会いしましょう。

 

 

 

代理人の感想

いや〜、展開はね〜。

これを考えるのが一番時間がかかるんですよね〜。実は。

他の方はどうだか解りませんが少なくとも私はそうだったりします。

納得のいく無理のない展開にしつつ話を盛り上げる・・・・

やはりプロの小説家や脚本屋さんといった人たちは凄い(謎)。

 

それはさておき人間と言うのはやはり弱いものでして。

どんな強い人間でもふと気が緩んだり弱くなったりするときはある物です。

いわんや我々凡人においてをや。

この話のアキトくんはこっそり金属疲労を起こしてるみたいですね。

お気楽に生きようとするのもそれを無意識のうちに修復しようとしての事なのかも。

好意的に解釈すれば、ですが(笑)。

 

 

>バランサーの担当者は別の人

は、もしやガイがこけたのもそやつのせい!?(いや、自業自得だろうあれは)