「―――やっと…終わった……」

 

 

 

時を駆ける想い

黒き姫・電子の王子

PROLOGUE

「彼方へ」

 

ブラックサレナの中でテンカワ アキト(prince of darkness)は呟いた。

その時、火星の後継者達が起こしたクーデターがやっと終わった。

二年前の旅行中に起こった事故によって彼の幸せは突如終りを告げた。

その後、彼は復讐鬼となりそして今やっとその復讐は終りを迎えた。

しかし、愛する人を取り戻すためとはいえ彼はその手を多くの血で染めてしまった。

憎しみに…怒りにかられ復讐に費やした二年、彼は多くの命をその手で奪ってきた。

二年前のあの時、彼はもう彼ではなくなっていたのかもしれない。

「俺には…幸せになる資格は…もうない……」

誰に聞かれることもなく彼はそう呟いた―――――。

 

 

 

 

 

去っていくユーチャリスを見ていたナデシコCの艦長ホシノ ルリは呟いた。

「帰ってこなければ追いかけるまでです」

「だってあの人は……あの人は大切な人だから」

その小さな呟きはナデシコクルー全員に聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

あれから三ヶ月、彼は今なお隠れている火星の後継者を潰して回っていった。

今回も殲滅に成功したアキトだが思わぬ反撃に遭い彼の愛機『ブラックサレナ』は半壊状態に陥ってしまった。

そして――――ユーチャリス格納庫から出てきたアキトはこれからの事を考えていた。

あのヤマサキによっていじられた体は五感ではあき足らず体を蝕みつづけていた。

もう一年と持たないだろう事を彼は気付いていた。

現に彼の主治医であるイネス フレサンジュはそのことを彼に知らせずにいた。

「そうなる前にラピスだけは幸せな生活をさせなくちゃいけない…こんな事に巻き込んだ俺の責任だ」

彼はそう呟いてブリッジに足を向ける。

 

 

 

「アキト後方にボソン粒子増大、識別は……NS966C、ナデシコCだよ」

ブリッジに入ると同時に桃色の髪に金の瞳を持つかつて妹のような存在であった女性によく似た少女、ラピス ラズリが言う。

「!…全速力で振りきってくれ」

「無理、さっきの戦闘でユーチャリスの出力が50%以下に低下してる」

「ボソンジャンプは?」

「ちょっと待って」

その会話中もナデシコは近付いてくる。

そしてラピスの放った言葉は、絶望的だった……

「ダメ、ジャンプユニットに損傷発見、この状態でジャンプしたら間違いなくランダムジャンプになる」

「くそ!!」

アキトはその行き場のない怒りを吐き捨てた。

 

 

 

 

その頃ナデシコCの格納庫では艦長のルリ対副官のサブロウタそして副官補佐のハリ(通称ハーリー)が壮絶な討論を繰り広げていた。

「艦長!何をする気ですか!?」

「エステの操縦したことないだろ」

「ユーチャリスに行きます!」

「それにセイヤさんが言うには『IFSさえがありゃエステの一つや二つうごかせら!』だそうです」

それを聞いた時サブロウタとハーリーが整備班長であるウリバタケ セイヤを睨む。

ちなみにウリバタケは『私は何も聞いてません』という風な表情でいつもの三倍のスピードでエステの整備をしている。

「だから!なんで艦長が行かなきゃ行けないんですか!?」

「っ!!」

何かを言おうとするが何も言わず顔を伏せる。

そしてわずかに、本当にわずかにだが肩が震えていた。

「艦長……」

なんで?

そう言おうとした瞬間にルリはエステに向かって駆け出していた。

「艦長!?」

「止めろ!!」

不意を突かれたハーリーとサブロウタがそれぞれ叫んだがもう遅かった。

ルリはエステに乗り込み宇宙空間に、アキトのいるユーチャリスに向かって発進した。

 

 

「アキト、ナデシコCからエステ一機発進!更にそのエステから通信が入ってる」

「なに?……ラピス、繋いでくれ」

「……わかった」

『アキトさん!!』

「ルリちゃん!?」

いきなり出てきたルリにアキトは思わず声を出した。

『アキトさん!今すぐユーチャリスをナデシコに向けて下さい!』

「ルリちゃん、それはできない

君の知っているテンカワ アキトはもういない、ここにいるのは復讐で血塗られた男だ……」

そう言って見えるはずのない目で己の手に視線を落とす。

『そんなの関係ありません!とにかく戻って下さい』

いつも以上の剣幕にアキトはこれ以上話しても無駄だと思いラピスに指示を出す。

「ふう…ラピス、今出せる最高スピードでこの領域から離脱してくれ」

『アキトさん!!』

「わかった、アキト」

『…わかりました』

「じゃあね、ルリちゃん」

『わたしがユーチャリスに乗り込みます』

「なっ!」

いきなりの発言にアキトは絶句してしまう。

「アキト!エステがユーチャリスに突っ込んで来る!」

ラピスもあまりの事態にいつもは出さない筈の叫び声を上げている。

「正気か!?」

『……』

「くそ!!」

アキトは悪態をついてブリッジから駆け出した。

 

 

「待ってて下さい!アキトさん!!」

ユーチャリスに向かうエステの中でルリは心の中で叫ぶ。

するとユーチャリスから黒い機体が出てきた。

「ブラックサレナ…!アキトさん!?」

しかもその黒い機体、ブラックサレナは先の戦闘で大部分を破損していていつ大破してもおかしくない状態だった。

「ルリちゃん!もう戻るんだ!!」

「嫌です!アキトさんこそ一緒に来て下さい」

機体の中に開いたウィンドウに向かって激しい討論を繰り広げていた。

「―――俺には…幸せになる資格はない」

アキトは自嘲気味に呟いた。

「資格って何ですか!アキトさんはそれでも生きなくちゃダメです」

その時ブラックサレナが小さな爆発を起こした。

「アキトさん!!」

ルリが悲痛な叫びをあげる。

「くそ!!……ラピス!ジャンプの用意をしてくれ!」

『アキト?』

「……」

『わかった』

通信終了と同時にブラックサレナはユーチャリスに戻っていく。

「アキトさん!」

「ルリちゃん、もうナデシコに戻るんだ」

「アキトさん!!」

 

ユーチャリスに戻ったアキトはブリッジに駆け込んだ。

「ラピス!状況は?」

「ジャンプ自体は可能、でも…どこに出るかわからない」

「くそ!!やはりランダムジャンプか!」

 

ドゴン!!

 

その時ユーチャリスに低い轟音が響いた。

「なんだ!?」

「格納庫にエステが侵入したみたい」

「なに!……わかった、行ってくる

ラピスはジャンプの準備を急いでくれ」

そしてアキトは格納庫へ向かった。

 

格納庫では無理矢理ハッチをこじ開けて侵入したエステからルリが降りてきた。

「ルリちゃん!」

その時アキトが格納庫に入ってきた。

「アキトさん…」

「ルリちゃん、君に頼みがある」

「えっ!?」

顔をうつ向かせていたルリが顔をあげる

「ラピスは俺の復讐を手伝っただけ…だからあいつには幸せになる資格がある」

「アキトさんはどうする気ですか!?」

「俺は…俺はケジメをつける」

「まさか!?」

「今からユーチャリスはランダムジャンプを開始する!さあ早く!!」

「嫌です!」

「ルリちゃん?」

その時ルリは封印していた想いを打ち明けた

「だって…私、アキトさんのこと…好きなんです」

その時アキトは今までにない衝撃を覚えた。

「!…いったいいつから?」

「わかりません、…気付いたのはアキトさんがユリカさんを助けた後だと思います」

その時ルリはもう駆け出していた。

「私は……私はアキトさんの事が好きなんです!!」

そう言い抱きついてきた。

アキトは飛び付いてきたルリを優しく抱き止めた。

「それに答える事はできない

それでも…ありがとう」

そしてアキトはバイザーを外して昔の、いやそれ以上の笑顔をルリに向ける。

その笑顔を見たルリの顔は赤く染まった。

「それに今は無理でもいつかきっと振り向かせて見せます!」

「楽しみにしてるよ、ルリちゃん(ニコ)」

更にアキトの笑顔を受けたルリは真っ赤にしてうつ向いた。

しかもアキトはルリがうつ向いた理由を全く解っていない。(爆)

しばらくそうしていたときいきなりウィンドウが開いた。

「アキト、すぐ来て」

アキトはまだルリを抱いていた事を思い出して離れるよう促す。

そしてルリは渋々とだが言われた通りに離れる。

「わかった」

内面かなり動揺しているアキトだが外見にはおくびにも出さずにラピスに返事をするとルリの方へ振り返る。

「…ルリちゃんも来てくれ」

それを聞いたルリは笑顔で答える。

「もちろんです!」

そしてそれを聞いたアキトは笑いながら手を差し出した。

「行こう、ルリちゃん」

「はい!」

そう言ってルリはその手を取る。

 

 

 

「ラピス!どうしたんだ!」

ブリッジに入ったアキトはさっきの通信について聞く。

「ジャンプの場所がわかったんだけど……」

最後の方でラピスが口を濁らせる。

「なにかまずいことがあったのか?」

「地球の中心部なの」

「なんだって!?」

今まで口を出さなかったルリが口を開く。

「まさか!…アキトさん!ナデシコから逃げた後ラピスを預けて死ぬ気でしたね」

ボソンジャンプはジャンパーのイメージが重要だ。

そしてアキトの死に急ぐ想いがイメージとして遺跡に伝達されてしまったのだ。

アキトはルリから視線をそらした。

「アキト?」

「アキトさん!!」

ラピスから驚きの声、ルリからは追求の声が響いた。

「…俺の復讐劇に最後までラピスが付き合う必要は無い」

「「アキト(さん)!」」

二人の声が重なる。

「……」

沈黙が続く。

「はぁ〜しょうがない人ですね、アキトさんは」

「えっ!?」

今度はアキトから驚きの声があがった。

これから死ぬかもしれないのにルリの顔や口調には諦めは見られない、それどころか嬉しそうな顔や口調だ。

一片の希望も無いこの状況でだ。

「ルリ、ちゃん?」

アキトは当然疑問に思った。

「『これから死ぬかもしれないのになんで嬉しそうなんだ?』ですか」

「あ、ああ」

若干驚きながらも答える。

「さっきのブリッジでの話覚えてますか?」

「ああ」

戸惑い、しかしはっきり言う。

「だからです」

「えっ?」

思わず聞き返す。

「たとえそれが死ぬかもしれない事でもアキトさんと一緒なら私はそれで良いんです」

「ルリちゃん…」

「私はアキトさんの居なかった三年間を知っています、そんな事もう耐えられません

それにさっきも言った通り何時かユリカさんではなく私に振り向かせて見せます」

そう言ったルリの顔には此処数年見せなかった心からの笑顔があった。

<ジャンプ一分前>

「ラピスお前だけでも「イヤ!!」

「「ラピス!?」」

いつになく大きいラピスの声にアキトとルリが驚く。

「私はアキトに連れてきてもらって幸せだった!アキトは私を人間にしてくれた!

今まで実験ばかりだった所から連れ出してくれた!

だから私はアキトの役に立ちたい!」

<三十秒前>

「死ぬかもしれないんだぞ」

「それでも良い」

はっきりした口調でラピスは言い放つ。

<二十秒前>

「……」

「……」

無言の時間が続く。

「はあ…わかった」

アキトが言うとラピスの顔に笑顔が広がる。

そう言えばラピスが笑う様になったのはつい最近のことだと気付く。

<十秒前>

「アキト…」

ラピスがアキトを呼ぶ。

「?どうしたラピス」

<8>

「ルリ…」

ラピスがルリを呼ぶ。

<5>

「ありがとう、そして……」

<4>

その時、ラピスの体から光が生まれそしてその光がアキトとルリを包む。

<3>

「「ラピス!?」」

アキトとルリが同時に叫ぶ。

<2>

「さよなら…」

<1>

「ラピス〜!!」

アキトの絶叫がユーチャリスに響き渡る。

<0>

ボソンの光がユーチャリス艦内を満たした。

そして光が薄れるとそこには誰もいなくアキトの叫びが余韻として残るだけだった…。

 

 

続く


後書き

 

はじめましてリクセル・アルベルトですリクとでも呼んで下さい。

初めて小説を書いてみたんですがぜんっぜんうまくいきませんな〜(しみじみ)

「しかも初めてのくせに長編物ですか」

あれ?ルリさん今回は呼んでなかったはずなんだけど……

「リクさん!単刀直入に言いますこれはアキト×ルリ物ですか!!」

違います(きっぱり)

「な!なぜですか!!あなたはたしかアキト×ルリ派じゃなかったんですか!」

いやそうなんすけど……

てかこの小説も元々アキト×ルリだったんだけどなんかこっちの方が面白そうだからやめました。

「そんな…これは由々しき事態です帰って対策を練らなくては!!」

さてルリも帰ったので続けます。

かなり長くなる予定なので頑張って書かせてもらいます。

それとラピスですがかなり早めの再登場の予定です。

ちなみにこういったプロローグまたは外伝以外はキャラクター視点になる予定です。

最後にまだまだ幼稚な私の小説なんて読んでくださった皆様ありがとうございます(ふかぶか)

なるべく早めに次を書く予定なんでよろしくお願いします!でわでわ

 

 

代理人の感想

前後の文章が繋がってません。

>もう一年と持たないだろう事を彼は知らずに気付いていた。
>現に彼の主治医であるイネス フレサンジュはそのことを彼に知らせずにいた。

ここ、ついでに言うと「知らずに気付いていた」と言うのも意味不明です。

気づいてるならそれは知ってるって事ですからね。

「教えられずとも知っていた」と表現したかったのではないかと思いますが。

で、話を元に戻しますと「教えられなくても気が付いていた→『現に』イネスは教えなかった」では文章が繋がっていないんですね。

「現に」とつけるには前後が逆、間違っているんです。

「イネスは教えなかった→しかしアキトは気が付いていた」とするか、

順序を変えないのなら「気が付いていた→イネスは教えていなかったと言うのに」とでもすべきです。

どのみち「現に」は余計ですね。

それがどう言う働きをするかも考えずに、適当に聞きかじった表現を繋ぎ合わせるのは百害あって一利無しです。

読み返しておかしいと思わなかったのなら、夏目漱石あたりを5,6冊精読して文を模倣することをお勧めします。

大変なんですよ、日本語になってない文章を読むのって。