なんで………なんでこんな事に……。

私を突き飛ばした、サングラスの男―タカトが胸のあたりから血を流していた。

胸のあたりを撃たれたタカトは、撃たれた個所を押え、片膝を付いている。

撃った男は、感情のない目で、タカトを見ていた。

「やはり………お前が来たか……ブロス………。」

うめくような声が、タカトの口からこぼれ出た。

「いつも……来るのが速すぎるんだ……。お前は……。」

平坦な声が男―ブロス―から発せられる。

「お前は……何時も良いタイミングで来る。」

ブロスを睨みながら、言うタカト。

「しかも、人の弱点をあっさりついてくるな。本気でロゼリアを撃ってきやがって…………。」

え?

私を……狙った?

ブロスが……?

聞き違い?

それとも本当に………?

「お前を狙っても、あっさり避けられると踏んでね。

 ロゼリア嬢を狙えば、お前は彼女を守らざるを得まい。」

………嘘!!

そんな……何で……。

「なんで二人が………敵同士になっているの……?」

何で、ブロスが私を……タカトを撃つの?

如何して?

解らない………。

如何して…………?

その言葉を、私は心の中で繰り返し叫んでいた………。

第4話光と影―歴史の闇の中で

「如何して……僕は……勝てない!!」

六枚の翼を持った、蒼い機体に僕は、成す術もなく叩きのめされていた。

『ジュン君!!しっかりして!!逃げて!!』

コミュニケを通してユカの声が聞こえる。

うめくような声しか出せない。

「逃げる訳には………逝かないんだ………。」

僕を……認めさせる為に………君に振り向いてもらう為に………。

「逃げる訳には………いかないんだよオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

機体を前進させる。

凄い重圧が、僕の体にかかっていく。

「くうっ!!」

普通のエステでは、こんな速度を出す事は出来ないだろう。

こいつだからこそ出せる……。

オリジナル『ブラックサレナ』だからこそ……。

しかし、無機質な声が、アサルトピットの中に響き渡る。

『その鎧……お前が纏うには……………力不足だ。』

それと同時に、標的が視界から消えていた。

「何処だ!!」

ザン!!

「グッ!!」

左腕が、斬り裂かれた。

何時の間にかに、左に移動している。

見切れない………。

そんな……。

けど………けど!!

『最後の通告だ………。失せろ。』

引けない!!

「断る!!お前こそ………大人しく投降しろ!!」

次に聞こえて来た声は、とても優しい囁くような声だった。

『………ならば……いっその事……死ねよ……。』

しかしそれは、紛れもなく無慈悲な、死の通告だった。

どうして……僕は……こいつに……

「勝てない!!」

 

 

 

 

何で……なんでなんでなんで………こんな事に成っちゃったの?

「司令!!いかが致しますか?」

「全艦……第一時戦闘配置!!戦闘ランクはA!!但し、ブラックサレナの救助を第一優先に!!」

喚きたい感情の代わりに、声を張り上げて、副官に伝えたの。

「ランクA?……艦隊同士の戦争レベルのランクを」

作戦参謀のこの人って、誰かを思い出すのよね。

副官やブリッジにいるクル―も、信じられないと言いたげな表情だけど…………言わなきゃ駄目かな?

「搭乗者が未熟とは言え、あの『ブラックサレナ』が軽くあしらわれています。

 というより、まだまだ本気ではない様です。」

そう……私の予備の機体が……まるで動かない人形の様に………。

機体性能が優れているとはいえ、腕の差が全ての結果を示している。

尋常じゃない……あの機体も……あの操者も………。

ジュン君の腕では、あの機体の人の足元にも及ばない……。

ジュン君……。

あの時もっと強く止めていれば………。

ジュン君を行かせなかったのに………。

このままじゃ……ユリエに恨まれちゃうよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!

あ……ユリエって言うのはね。

私の妹なの。

今、東域軍の次席幕僚やってるんだよ!!

凄いでしょう!!

それでもって、私がこの西域軍の総司令なの……エッヘン!!

でもでも、私の事、子供扱いするんだよう………酷いでしょ!!

私のほうがお姉さんなのにい……プンプン!!

「童話じゃないんだし王子様なんて、今の世にいるわけないでしょ。」だって。

そんな事無いって言ったら、鼻で笑うんだよお!!

自分は如何なのよ!!

ユカ知っているんだからね。

ジュン君が好きなんだてことを………!!

私が見つけた王子様紹介して、自慢してやるんだから!!

逃げられちゃったけど………。

あ……王子様で思い出した……。

そう……こんな時に……王子様がいてくれたら………ああ私の王子様は今何処に?

あの時、100万ボルトのユカ特製スタンガンを使ってでも、引き止めるべきだったわ………。

そうしてユカと何時も一緒にいれば、絶対好きになってくれる。

ユカがピンチの時に颯爽と現れて、

『ユカ………僕に任せておいて……。』(「絶対言わない………。」)

何て言ってくれて……そして……。

「司令……妄想中……もとい考え中な所申し訳ありませんが………。」

「え?」

「敵が撤退しました。」

我に返ってみると、何時の間にかに、戦いが終わっていた……。

クル−は皆……私の方を、呆然と見ている……。

「え………え〜〜〜〜〜〜と……サ、サレナ回収後、予定通り惑星『リバ−ロ−ド』に向かいます。」

真面目な顔していったのに、皆溜息して、首を横に振っていた。

何で………?

「これさえなければ……良い司令なんだが………。」

 

 

「全く………。」

 

 

「如何したもんだか………。」

 

 

「ばか………。」

 

 

 

 

 

 

『随分と構っておりましたね……ご主人様……。』

「ふむ……見所がありそうなんでね。興味を持っただけだ。」

『宜しいのですか?殺さなくて………。』

「何かの為に、牙を持とうとしている奴らは、成るべく殺さないことにしている。」

『……………。』

あの脆い心が、再び合う時にどれほどの強さを持つ事になるのだろうか?

出来れば……俺とは違う強さを手に入れてもらいたいものだ。

さて………始めようか。

「タイムゲ−トシステム……展開……目標……400年前。」

『了解……システム作動………』

「行こうか……。」

『行きますか………。』

 

 

 

 

逃げた?

違う………見逃してもらった………。

何故かそう思った。

それと同時に笑いがこみ上げて来た。

「はは…ははは……はははははははは…………。」

サレナは、カタパルトデッキに着艦した。

簡易ドックの中に誘導されて行く。

「ははははははははは………。」

虚ろな笑いが響いていく。

結局………僕は何をやった?

空間のちょっとした揺らぎを見つけて…………。

それを自分で確かめる為に、ユカの機体に乗っていって…………見破って……。

括弧つけて勧告までして、気が付いたら、ボロ負けだ……。

トンだピエロだ………ピエロだよ………。

「畜生………。」

悔しさがこみ上げてくる。

「畜生!!」

力が欲しい!!

生まれて始めて、本気で思った。

「畜生!!畜生!!」

誰にも負けない………力を!!

あの時あいつが言った。

色々な言葉が、僕の心に駆け巡る。

『見つけ出したのは誉めてやる。

 今後の課題の一つを、提供してくれた事にも礼を言おう。それでお前は如何したい?』

『無駄だ……諦めろ……。お前では、役者不足だ。失せろ。』

『お前が纏うには………分不相応だな………その鎧は………。』

『信念があっても……それを成し得ようという執念がない。気力があっても力がない。

 それでは、俺には到底勝てぬ。

 俺だけではない。宇宙に潜んでいる不法航海者の誰にも勝てぬ。未熟者め。』

未熟者……。

その言葉が一番僕の心に響き渡った。

僕の中に流れている血には、悲運の名将、白鳥の血と同じ血が流れている。

彼の名を僕は尊敬していたし、その血筋を誇りに思っていた。

分家の中に、白鳥の名を継いだ物がいたと聞いた時、僕は彼等に負けない様に必至に頑張った。

アオイと白鳥……この二つの名に恥じない様に、誰にもその名を汚していると、後ろ指を刺されな

いように………それなのに…………。

まだ………足りないというのか?

未熟者だというのか?

「そんな事……言わせない……。」

そうさ!!

もう二度と………言わせて堪るか!!

………入れてやる………。

手に入れてやる!!

こいつに見合う力を………どんな事をしてでも!!

「手に………入れてやる………。」

―アオイ=ジュン准将………彼はその後、この機体と共に姿を消す。

彼がラトウと名乗ったタカトに、再び会うのはこれから一年と半年が過ぎた時であった。―

 

 

 

 

 

 

400Years Ago

『如何した?ブロス……珍しいじゃないか……こんな時間に電話をかけてくるなんて………。』

「いや………すこし気になってな……。」

『俺を心配してくれるとは……………さすが我が友よ……。』

「いや……全く……お前の健康なんて、俺の気にする所ではない。」

『……缶詰地獄から、ようやく解放されたんだぜ?少しは「大丈夫か?」言えよ。』

「お前が気をつければ良いだけの事だ。それよりタカト………今お前何処にいる?」

『俺が何処にいるかだって?今、そっちに帰る途中だ。ゆっくり帰るからな。

 明日の夜には、そっちにつくよ。』

「そうか……気をつけろよ。」

『当たり前!!なんせ俺は………とととと……まあ、後でのお楽しみだ。じゃあな。』

「………ああ。」

そうして俺は電話を切る。

やはり気のせいか?

まあ確かに復讐なんて似合わない男だ。

あんな能天気な男が会長を恨むか?

恨まれる事をタカトに対して行なったか?

答えは否だ。

しかし、あの字を見た時に、あの男の顔が浮かんだのは何故だ?

それと同時に、シャ―プな殺意を感じたのは気のせいだろうか?

「とにかく……ロゼリアの屋敷に行くか……。」

俺は、車を走らせた。

悲劇が起きるとも知らずに…………。

 

 

 

 

 

 

「タカト?何でそんな格好しているの?」

「格好をつけてみたかったのさ。」

いつも来ていた為に、すんなり入る事ができた俺は、久し振りのロゼリアの姿と声に、思わず抱き

しめそうに成った。

「タカト……そのサングラス似合わない……。」

そう言って、とても自然な動作で、サングラスを外された。

「やっぱり素顔の方が、いい男だよ。」

……コンタクトをしていて助かった。

「そう言う事言うかなお前は……。」

そう言って今度は、お返しとばかりに抱き締める。

「ちょ……ちょっと……恥ずかしいって……。」

彼女の匂いに、思わず涙が込み上げてくる。

何時も隣に合ったこの匂い………。

「如何したの?タカト……泣いているの?悲しい事でもあった?」

心配そうな声が、聞こえてくる。

「違う………違うよ……。嬉しいのさ……君に会えたことが………。」

君に………再び出会えた事が………。

「変なの……タカト……。でも………私も嬉しいよ……一番に私に会いに来てくれて………。」

一番?

………ああそうか………。

この時の俺は………半年の間出張していたんだ。

「ああ………少し……付き合って欲しい場所があるんだ。いいか?」

俺の問いに、ロゼリアはあっさり頷いた。

「いい場所なんでしょ?なら付き合ってあげる。」

ああ……良い場所さ……未来を変えられるのだから………。

だが………俺は、気を抜くべきでは、なかった。

そう……最悪の刺客が放たれていたのだから………。

俺とロゼリアにとって、最悪の刺客が………。

 

 

 

 

 

「ロゼリアがタカトと?何時だ?」

「十分も前に、お出かけになりました。」

……如何言う事だ?

「何処へ行くといっていた?」

「いえ……何も……。」

タカトはまだ、帰ってきていない筈……。

俺に嘘をついたのか?

いや……違う……。

確かにあの背景は、空港のものだ。

では、誰だ?

暗殺者か?

クロ−ンと言う事もありうる。

「とにかく探すか………。」

しかしもしタカトであったならば………如何すると言うのだ?

ブロスよ……。

お前は如何するのだ?

 

 

 

 

 

見つけられたか………。

後ろからブロスが、声を掛けて来た時、そう思った。

うしろから、冷たい殺気が迸ってくる。

狙いは………これは………。

「ブロス!!貴様!!」

銃口の狙いは、ロゼリアだ!!

タァ―――――――――――――――――――ン!!

林の中に、いやに大きく銃声が響いた。

 

 

 

 

 

対峙する俺とブロス。

俺の後ろにいるのは、呆然としたままの、ロゼリアだった。

「その行動の仕方は………間違いなくタカト……お前だな。」

性格に心臓の位置に、銃弾が飛び込んで来た。

間違いなく……こいつは、ロゼリアを殺す気だった。

いや……俺ならば……彼女の盾になると踏んだんだ………こいつは………。

「何故こんな事をした?」

淡々とした声が響いてくる。

「俺自信の為に………。」

「誘拐する事が?」

「用事が済めばすぐに返す。」

「本当のタカトならば………信じてもいいが………。」

「言っても信用されない事は、言わないことにしているのでね。」

「『来訪者』を気取ったとでも言うのか?」

「ああ……。これがお前の本名だろ?」

「!!………何故その名を?」

「お前が、あの月の夜に教えてくれた名前だろ?」

「………何時の夜だ?」

「酩酊して覚えてないって訳ないだろ?お前が……。」

「………忘れたとは言えないな………。」

「だが、信じるわけにもいかない……か?」

「正解だ。」

ヤレヤレ………相変わらず………仕事熱心だな。

「何故こんな事をした?」

重ねて問うブロス。

言い訳を考えて見るが………如何もこう言う才能がないみたいだ。

笑われるのを覚悟で、本当の事を言ってみるか。

「ロゼリアと一緒に生きる為だ………。そして、普通に死ぬ為だ。」

訝しげな表情になる、ブロス。

「何だと?」

「芝居は止めろ………ブロス……。

 クリムゾンとの血縁者とロゼリアとの結婚……知らない訳じゃないだろ?」

「!!………何故それを?」

「知っているか?カズサが、べらべら喋ってくれたよ。俺が邪魔だって事をな。

 知っていたのだろ?お前は………俺が消されるって事を………。」

「それは知らなかった………。俺は………。」

「別に構わんさ………お前が知っていようといまいと、やる事は変わらん。」

やる事は変わらんさ……。

しかし、撃たれた人間が、こんなに長時間話しているのに、気づいてくれんかね?

「?そう言えば…………何で血が流れていない?」

お!!

ようやく振って来たか?

「耄碌したか?こんなに流れていただろうが………。」

そう言って、俺は自分の体を指差す。

「いや……そう言う事じゃなくて………何で止まっているんだ?何で……生きている?」

ふむ………ようやく気が付いたか?

「ヤマサキ カズサ………やつが過去、いやこれからやってくれる、実験のお陰だ。

 やつの最大の功績は、不死身な人間を一体製造した事だろう。」

その言葉を聞いた時の奴の表情は、半信半疑だった。

ま……仕方が無いがな………。

「そんな………事を……馬鹿な……。」

「ま……ここに証拠があるのだから、信じてもらうしかないが……・

 あ………ちなみに俺の発明した物は、引き継いでくれる奴がいるそうだからな。

 おはらい箱って訳だな。」

軽く言った俺の声に、反応したのはロゼリアだった。

「一体……これは、何?」

答えるべき言葉を……俺達は持っていなかった。

ブロスにとっては、突拍子もない俺の話しを、検討している様だったし、俺は俺で、命令した人間に

ついて、明確にする気にはなれなかったからだ。

「……実験って?婚約って?ブロスは何でタカトを撃ったの?ねえ……なんで?」

恐らく、ブロスが受けた命令は、ロゼリア身辺の警護だろう。

婚約までの………。

俺の排除も含まれていた訳だ………。

だが………

「俺を殺す気はなかったみたいだな……。」

普通の弾よりも、かなり威力が小さかったのだから……。

これじゃあ、仮死状態になれって言っているようなものだぞ………。

それを肯定するかの様に、静かに、首を縦に振る。

「暫く眠ってもらうつもりだった………せめて、ロゼリア嬢の結婚式までは……。」

そうだろうな……。

多分……それが精一杯の譲歩だろう。

だが……何か引っ掛るな………。

それにしては、何かこいつの態度はおかしいような………?

「相も変わらず………大した社畜ぶりだ。だが、俺がもしタカトではなかったら?」

だが、過呈を話した所で、こいつがあっさり喋るとは思えない。

だから、良く昔に、からかう時のような口調で話し掛けた。

答えるブロスのほうも、少し口調が柔らかく成っている。

「お前はタカトさ………。行動パタ−ンが、とても良く一致しているからな。

 例えば、質問する時、わざとらしく髪の毛を掻く所とかな。」

「証拠にしちゃ、いかにも貧弱じゃないか、ええ?それでおまえは………。」

「『如何したい?』だろ……。」

俺が言おうとした言葉を、引き継ぐ様にして遮ったブロスは、銃を構えながらこう答えた。

「会社がお前を排除するというのなら、それに従うまでの事だ。」

この台詞には、一欠片の感情も含まれていなかった。

「お前らしい答えだ………。最もお前はそう答えるしかなかろうな。なら俺の答えを言おう。」

そう言って、答えようとした瞬間……、

タァ――――――――――――――――――ン!!

と後ろから銃声が聞こえた。

銃弾は、ブロスの腕に当たる。

「グッ!!」

突然の銃撃に対応できなかったのか、思わず銃を取り落としたようだ。

俺も一瞬ポカンとしてしまった。

まさかロゼリアが?

すると突然、手が引っ張られる。

「ろ……・ロゼリア?」

前を向いているから良く分からなかったが、怒っているような気がした。

「自分だけ何も知らないなんて、嫌だよ!!何もかも後で私に話して!!」

そう言って、引っ張って行く。

そう言えば………こう言う女だったな……。

しおらしい令嬢ではなかった。

はじめてあった時も、驚かされたが……こいつは極め付けだ。

「銃なんか撃てたのか?」

「護身用に持っていただけ………撃ったのはこれで4回。」

…………後3回は、いつ撃ったのだろう?

そんな事を考えている内にふと気づく。

疲れて来たのか?

段々ペ−スが遅く成っているような気が…………。

「もう充分だ。少し、休まないか?」

だがそれに答えることなく、突然ロゼリアの身体が、傾いた。

「!!おい!!」

一体如何したんだ?

慌てて体を支えたが………顔色が真っ青を通り越して、白くなっていた。

「如何した事だ………これは……。」

恐怖とかそう言ったものの類じゃないぞ!!

脈を診てみるが………弱い………。

所々から、血が流れ始めている。

「さっきまで、怪我なんてしていなかったはずだ………。」

一体何が………。

取り敢えず病院へ………。

車では間に合わないし、待っている余裕もない!!

「オモイカネ!!すぐに来い!!すぐにだ!!」

訳がわからなかった……。

一体何が………起こっているというんだ…………。

 

 

 

 

 

「参った……エ−ジェント失格だな……これは……。」

あのタカトにならまだしも、ロゼリアに出しぬかれるとは………。

苦笑するしかない。

しかし……タカトのやつは……雰囲気は変わっても、あいつは……内面は殆ど変わっていないな。

一人で背負おうって所が、頭にくる。

友達ならば、一芝居売って欲しいぐらい言って欲しかったものだ。

まあいい……。

「まあ……いい。あの一発と、お前のビックリ話しで、チャラにしてやるよ。

 俺の計画とは少し違うが……幸せに成れよ………。」

今度は、俺の身の振り方を考えようか。

ふう………お袋にも、謝らなければ成らないな。

「笑って許してくれるだろうが………再就職先を、何処にしようか?」

いや………案外、見付かりませんでしたって言えば、どっかの部署に飛ばされるだけで済むかな?

ん?

そう言えば………、

「今のタカトには………如何言おう?」

明日一番に、空港に迎えに行けば、事故とやらも、防げるかもしれんしな。

それともほっとくか?

案外其の方が、後々良いかもしれないし…………。

だが、そんな考えも、上を飛ぶ、巨大な鉄の巨人によって中断された。

「なんだ……あれは!?」

タカト達が、去った方角から、現れたものを、ただ呆然と見ていた。

 

 

 

 

その2に続く