ここは、ある戦艦の食堂……………。

 混雑する昼飯時をちょっと過ぎて、閑散とし始めた頃、長い銀色の髪の少女が、懐かしそうな顔をしながら、手紙を読んでいた。

「アリサさん?誰からのお手紙ですか?」

 そこにまたその少女(アリサ=ファ=ハ−テッド)と同じく、銀髪の(彼女より結構年下の)女の子が、尋ねてきた。

その隣には、番犬の如く、ハ−リ−が立っているが…………。

まあ、気にしないで下さい。

(「………………この腐れ作者。(怒)」)

この戦艦のオペレ−タ−である、ホシノ ルリその人であった。

ちなみに彼女達の席は、キッチンの中を見渡すには絶好の位置だったりする。

「ん〜〜〜〜。ちょっと懐かしい子達から、手紙を貰ったの。」

「懐かしい子達って?」

「オペレ−ション『MOON LIGHT』で、結構長く滞在した基地の子達でね。

エステバリスでいっしょに戦ったの。特にアキトと、私の

コンビプレ−は彼女達には賞賛の的だったわ。」

うっとりしながら自分と、戦神の名前を強調して言う彼女。

その戦神は今、キッチンで蛸の足を、大根で叩いていた。

わざわざ、今朝こっそり出て行って近くの港の漁師さんに貰ってきた新鮮な蛸だ。

「こうすると、蛸の足の中にある吸盤の泥が取れるんだよなあ………。」

とか言いながら、なんか幸せそうであった。

「つまり…………アキトさんの独壇場で、アリサさんはその残りを始末しただけ、と言う訳ですね。」

青筋を立てながら、彼女の言葉を自分成りに訳すルリ…………。

う〜〜〜〜〜ん、的を得てるね。ルリちゃん。

しかし、その言葉には動じず彼女は、

「ふっ!!ナオさんに聞いてみたら?私とアキトの素晴らしい、夫婦アタックの状況をよく見ていてくれたのは、彼だから………。」

 フフンっと、鼻で笑いながら、コ−ヒ−を啜っているナオの方を、どうぞ聞いて御覧なさいなとでも言わんばかりに、優雅に促す様にゆびでさす、アリサ。

 ちなみに、彼はその瞬間、悪寒が走ったかの様な表情で、席を立って、去ろうとしているのが、彼女達の方からは見える。

「オモイカネ……食堂のドアを閉鎖。」

それを聞いた途端、ダッシュし始めるナオ。

ドゴッ!!

僅かな差で、彼は自由への道を閉ざされたのだった。

もろにドアに衝突し、そのまま倒れるナオ。

どうやら、そのまま現実世界をしらばっくれる気らしい。

(「……………この食堂は…………地獄さ。」)

そ……そう。(汗)

まあ、適当な所で目覚めた方がいいと思うよ。

(「そうさせてもらうわ……おやすみ。」)

おやすみ…………クスクスクス……。

「へえ。あの子達からの手紙が、来たんだあ。」

アリサの奥の席には、いつの間にやら、双子の姉サラ=ファ=ハ−テッドが、座っていた。

「ね………姉さんいつの間に…………(汗)。」

うん。

普通は座れないね。

「まあ……細かい事は気にしない気にしない。で、この子達って今、なんて言われているか知っている?」

「さあ?」

「『黒と白銀の戦乙女達』って呼ばれてるらしいわよ。」

笑いながら青筋を立てているサラ。

ちなみに『黒』の方は、蛸を何かの葉っぱを入れた湯でゆで始めた様だ。

しかし、それとは違った汗も掻いているみたい………。

顔も、何故か蒼い。

もしかして、聞こえてるのかな?

「『黒と白銀』ですか?」

ルリの声が、零下まで下がり始めたようだ。

「そう……『黒と白銀』………。」

逆に、サラのほうは灼熱の炎のような熱さを持っている。

そしてもう一人は………。

「これが、アキトと私の運命なのね………ああ………全てが私を祝福しているのが聞こえる。」

浮かれまくっていた。

もし心が現実の物となるならば、彼女は天の果てまで飛んで行った事であろう。

続きを……読まなきゃね。

「でもこの続き…………中々面白いわよ。」

何時の間にかに、手紙を持ったレイナが、隣のテ−ブルで、紅茶を飲みながら、座っていた。

顔がにこやかなのに…………目が笑ってません。

「『アキトさんとサラさんの食堂での出来事が忘れられません』ですって………。」

それを聞いた途端、姉妹の喜と怒の感情が交代した様だ。

「そう………あのアキトとのロマンス。やさしく私を抱き締めてくれたあのしなやかで力強い腕……忘れられないわ。」

そう言ってうっとりしたまま、彼女は顔を赤らめ、恥かしそうに自分を抱き締めた。

そして、ロマンスをした男はというと………。

蛸を、湯から上げて、脚の先を切り落とした後、適当な大きさに切り始めた。

手が震えてるよ。

(「え?手?蛸は全部で足8本さ。」)

……………料理止めた方がいいよ。

相当動揺しているみたいだから……………。

「私………それ知らない。」

アリサは、般若もかくやと言う顔で、アキトのほうを睨み始めた。

「私も聞きたいわ…………。」

レイナは、何処からかスパナを取り出し、アキトの方を見る。

「最後まで読みません?アキトさんの処遇はそれからという事で……………。」

ルリちゃん…………そんな爽やかな声は、その顔には似合わないよ。

(「一々五月蝿いですね……消されたいんですか?」(超怒))

………すいません……。(汗)

「ええと…………『レイナさん一人にアキトさん、エステバリスを任せていましたね。愛情の深さが、感じました。』だって。(怒)」

サユリが、何故か厨房から出てきて、手紙を読んでいた。

………そこは『信頼』って書くべきところかも…………。

(「信頼も愛情も………同じ事だわ(はあと)」(喜))

………それをき………聞いた(聞いてしまった)嫉妬の視線は、レイナのほうへ、全て移る事と相成った。

「エステバリスの整備………。(怒)」

「アキトったら……レイナだけに任せっぱなしだと思ったら…………。(怒)」

「愛情の深さ?そうなんですか……アキトさん(怒)?」

あの〜〜〜〜〜。

ルリちゃんはともかく、サラさん?アリサさん?

君達は、何でそんなに怒ってるのかなあ?

ロマンスしたんでしょ?

(「それはそれ!!これはこれです!!」×2(怒怒))

…………………は……………はい。(汗)

 「そうよね………。アキトにとっては、機体は命を守る物。いえ………命其の物だわ!!その命を任されているのに私ったら………(はあと)」

どうやら彼女の思考は、二人の結婚式に飛んで行っている様だ。

 純白のウェディング・ドレスをきて、真っ白なタキシ−ドを着ているアキトを見つめている。

幸せそうな顔をして、アキトを見るレイナ。

教会の鐘は二人を祝福するかの様に、高らかに鳴り響いている。

「私の旦那様は、アキトだけ………。さあ、私を攫って行って……あ・な・た(はあと)」

もはや、周りの視線すら、邪魔出来ないところに行ってしまった様だ。

そしてその『旦那様』はというと、キッチンで、卵と浮き粉をかき混ぜていた。

蛸焼きを作ろうとしているみたいだね。

(「フフフフフフフ……………メティちゃんの為に作るのさ(涙)。」)

………………もはや、思考回路が、危ないぞ。

ここから退避する事をお勧めする。

無理だと思うけどね。

(「だったら言わないでくれ!!」)

十人の女の視線が、アキトに集中していた。

………いつの間に十人?

その視線は………………マグマより熱く………氷よりも冷たかった。

たった一人を除いて……………。

それを見た二人の男が席を静かにかつ迅速に立ち、出口に向かってほふく前進していた。

「隊長!!」

「カズシ……退避しよう………この食堂は魔界と化した!!」

「言われなくとも解ってます。(汗)」

「扉は何処だ!!自由への扉は!!」

「あと十歩!!このまま行けば、明日を掴めます!!」

「良し!!(妻よ……息子よ………見ていてくれ!!俺は必ず!!)」

ガシャン!!

だが既に時は遅く、再び窓という窓、扉という扉は、完全にふさがってしまった。

もはやゴキブリ一匹も通り抜ける事は不可能であろう。

「た…………たいちょおおおおおおおおおおおおおおおお(涙)」

「何も言うな………頼む……このまま、ナオと同じ世界に…………行かせてくれ。」

うん………無理!!

何時の間にかに、花嫁候補は全員集合、ナオとシュンとカズシの周りを囲んでいた。

冷たく重い緊張の中、三人の顔からは、冷汗がだらだらと流れ始めている。

 

 

 

「ナオ………………どうする気だ!!」

「話し掛けるな……………ここにいるのはナオではない。精神崩壊を起こした、戦神の嫁サン達の犠牲者一号だ。」

(「この馬鹿作者!!こんな最悪の時に目覚めさせやがって!!(怒)」)

聞こえない…………きこえなあああああああい!!

「成るほど……では、私は二号だな。カズシ……後は頼む。」

「そんなあ!!(汗)」

 

 

「そう言えば………」

「いたわね……ここに………」

「有力な目撃者が………」

「いましたね………3人も」

『…………………………………(汗)』×3

上から、イネス・エリナ・リョ−コ・メグミ、そして、哀れな子羊達であった。

(「そう思うんなら………何とかしろおおおおおおおおおおおおおおお!!」×3)

い・や(はあと)

私だって死にたくないもん。

「教えて下さい………真実を……」

「聞かせて……貴方達の見たものを………」

「伝えて………隠された事実を」

『さあ!!早く!!』×5

上から、ルリ・ラピス・ユリカそして、ホウメイガ−ルズの面々だった。

 

 

 

「まずい………このままだと、闇に葬られそうだ。(汗)」

「いや、そんな生易しい事ではなさそうだぞ。彼女達の怒りは尋常じゃない。(汗)」

「喋るしかないんですか?(汗)」

「『前門の魔女後門の戦神』どっちにしろ、我々に明日はなさそうだ。」

「まあまて、そんな悲観した事でもなさそうだ!!どうせアキトは、どのみちお仕置きコ−スだ。」

「!!そうか………だったら一層の事…………」

「アキトには暫く、我々の分まで、地獄を見てもらおう。」

「成る程!!それしかなさそうだな。どうせ、自分でまいた種だ。自分で刈ってもらおう。」

『良し!!(許せ……アキト)』×3

(上から、シュン・ナオ・カズシの順番で周っております。)

 

 

「もしかして、ノルウェ−のシルベント基地の出来事の事かな?」

シュンが、落ち着き払った声で立ちあがりながら話し掛けた。

「そうです!!其の事です!!」

ルリが、ゴ−ゴンもかくやという顔で、シュンの言葉に頷く。

「私は、基地からそれほど離れる訳には行かなかったから、すぐに戻ってきたけどね。私が聞いた噂といえば、あれだ。基地の女性エステバリスライダ−の殆どをアキトが落としたって事ぐらいにしか聞いていないが……如何なんだ?カズシ、ナオ。」

その言葉を聞いて、立ちあがってほこりをはたいていた二人が、うなずきながらその言葉に、

「メイ・リュ−ノ・ル−シャンって子達が、顔を赤らめながら、アキトに何か話し掛けていたな。」

続いて、ナオが、

「チェリンカ・カリンって子達も、潤んだ目で、アキトを見ていたぜ。気の強そうな子達だったけどなあ。聞いてみたら、優しい声で、心配してくれたからとか何とか………。」

と付け加えて話した瞬間…………

『何ですってえ

 えええええええええ!!』×15

天をも貫かんばかりの声が、響き渡った。

その中に含まれている感情は…………嫉妬。

「アキトさん………貴方って人は………」

地獄の鬼を超えたね、ルリちゃん。

「アキト…………ユルサナイ………」

氷の女王、地で演じられるよ、ラピスちゃん。

「そう…………そう言う事……アキト君」

イネスさん…………注射器壊れちゃいますよ。

「報告書には無かったわ………」

エリナさん…………その報告書、真っ二つに裂いちゃっていいの?

「アキト…………」

リョ−コちゃんそのテ−ブル………砕けちゃうよ。

「アキトさん」

メグミちゃん……………声と笑顔のギャップの差が、怖いです。

「ア〜〜〜〜〜キ〜〜〜〜〜〜ト……………艦長命令よ………動かないでね。」

ユリカちゃん………なんでそんなに爽やかなのかな?声もさ………。

『逃げられないわよ……アキトさん』×5

どうやったら、アキトの背後に回れるのかな?君達。

「アキトさん……私と言うものがありながら………。」

その消火器…………何処から取り出したのさ。サラちゃん…………。

「ねえ………アキト……女の気を引くのも、時と場合によるものよ。」

ガムテ−プは一体何を意味する?アリサちゃん。

「貴方の頭の中も、整備する必要があるようね。」

だからって、大きすぎません?そのスパナ。

怒!!

彼女達の周りには、嫉妬と殺気が入り混じっていた。

『アキトさん!!(怒)』×15

「は…………はい!!」

ガシッ!!

十五人の夜叉が、アキトを拘束し始めた。

「弁解を聞きましょうか?アキトさん。」

永久氷土もすぐに創れそうなほどの冷たさを持った声が、ルリの口から紡ぎ出される。

「ベ……べべべべべべべ………弁解も何も、何も悪い事遣ってないじゃないか!!(汗)」

アキト………確かにそれは、正論だにょ!!

(「そうだろ!!そうなんだよ!!なのになんで、こんな仕打ち……あんまりだ!!」)

しかひ!!

(「へ?」)

正論が何時もまかり通る世の中ではないのが常だなや……いや本当…………。

彼女達もそれが良〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜く、解っていると思うが!!

(「が?」)

彼女達にとって、が他の優しくしたこと自体が問題なんだってさ。

「不条理だああああああああああああああああああああ!!!」

女ってそう言うもんかもね。

はははははははははははは………………。

「何ぶつくさ言っているんです。今から壊れても、やる事は変わりませんよ。」

その冷たい声が彼を正気に戻す。

「あ………あああ………あの……テンカワ アキトはただ今、開店休業中ですって言うのは………駄目?」

その問いは、彼女達の極上の笑みで返される事に成る。

殆ど目が逝っちゃっているけどね。

パチン!!

ルリの指がなると同時に、彼女達は動き出す。

まあ、がんばって行ってらっしゃい♪

「ちょっとまて!!そんなの不条理だ!!あんまりだ!!何も悪い事してないのに!!い………いや………取り敢えず、ゆっくり話し合おう!!そうだ!!それがいい!!ま………まずは、蛸焼きを………蛸焼きを作り終えたあとおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

無情にも、その声は、無視される事と相成った。

三十本の腕は、アキトを宙釣りにし、そのまま、何処かへ連れ去って行った。

彼は途中で、彼を売った三人の極悪人と目が合った。

(こ……この………)

「裏切り者〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 ザッ!!

「裏切り者〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 ザッ!!

「裏切り者〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」  ザッ!!

「裏切り者〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 ザッ!!

3人を呪う、悲痛を伴った怨嗟の声は、遠ざかって行った。

「………許せ………アキト……。」

「もう………引き返せないんだよ…………。」

「全ては……俺の将来の為………甘受してくれ。」

少しの苦痛と大いなる安堵を伴った声は、シュン・カズシ・ナオから発せられたものだった。

そして、ある場所では………

「α1より…………本部へ………ノルウェ−のシルベント基地にて、『T』のスキャンダル発覚、早急に背後関係の調査を乞う。」

『了解………α1へ。至急に其の場より撤収せよ。』

「了解!!……(バキャ!!)……ぐぇ!!」

『如何した!!α1!!応答しろ!!』

「やれやれ………参りましたねえ。」

裏拳で、α1と呼ばれていた従業員を伸ばした男−ブロス−は、何時もの調子で言いながら、顔は至極真面目だった。

「そこには、タカトが契約社員として、今滞在しているのに………調査なんてされたら、影の意味が無くなってしまいますよ。」

(最も、そんな事でばれる事は万一も無いが…………。)

万一も無いが…………もしかすると、その万一があるから、ここのクル−達は怖い。

「まあしかし………これは、早急に依頼を遣ってもらう必要が出てきましたね…………。」

そう言ってよっこらしょと立ち上がると、自分の部屋へと戻って行った。

「もう一つの本当の『依頼』をね。」

そう言うと、伸ばした男には、目もくれず、食堂を出て行った。

まあ、何時もの、ナデシコの日常であった。

あれ?

そういや、ハ−リ−は?

「うわああああああああああああああああん!!馬鹿作者にも忘れられたああああああああああああああああああ!!(泣)」

ダダダダダダダダダダダダ……………

あっ!!

君食堂にいたの?

 

 

 

宇宙船艦ナデシコ

不死者

第2部一章

『天国と地獄編』

第一話

『さあ、始めようか………俺の戦争(悪夢)を』

 

 

−話しは、少し遡る。−

がらんとした、暗くだだっ広い、何もない倉庫の中…………。

一人の老人と、二人の子供が、たたずんでいた。

まるで何かを待っているかの様に…………。

老人と言っても、体はがっしりしていて、見た目は50歳ぐらいにしか見えないだろう。

そして子供達のほうは、78歳ぐらいだろう。

一見普通の子供だが、瞳の色が、その子供達の呼び名を示している。

マシン・チャイルド。

作られた天才達の、名称である。

彼等は、いや正確には、その老人が待っているのである。

子供たちが待っているのは、その老人の方であった。

ブブブ…………・。

突然、その老人の目の前の空間が揺らぎ始める。

「ようやく来やがったか。」

そう呟くと、底意地の悪い笑みを浮かべた。

ブウウウウウウウウウウン…………………

その空間の揺らぎは、段々と広がり始める。

そして、それがある一定の大きさを形作った瞬間………………

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

その老人を吹き飛ばさんとでも、するかのような突風は吹きつけて来た。

この時ばかりは、老人も一瞬目を瞑ってしまう。

だが、それが吹き止むより早く、目を開き、正面を見据える。

そこには、黒い六枚の翼を持つ真っ青な機体が、闇に同化しているかの様に、静かにたたずんでいた。

「相も変わらず、ドンピシャな場所に、出現させるじゃねえか。」

フンっと鼻で笑いながら、皮肉げな口調で、その機体に話し掛ける老人に、静かな声が返された。

「腕が良いからさ。」

それと同時に、アサルトピットから、まるで階段でも降りるかのような感じで、一人の青年が着地する。

「すかしやがる。」

そういって、正面にたった青年の肩をバンバン叩きながら、豪快に笑い始めた。

「20年ぶりじゃねえか、タカト!!ウリバタケの野郎に姪っ子を取られてから、退屈続きでよ!!ブロスから面白い事があるってんで、きてみりゃ何だ?戦神の叔父貴が、無理難題押しつけて来たって言うじゃねえか!!」

「楽しめたか?」

「こんな難題なら、いつでも大歓迎だぜ!!それになんだ!!なんだよ!!またなんか悪巧みしようってんだろ?だったら、俺にも一枚かませろ!!」

その言葉に苦笑しながら、タカトは、返事を返す。

「そいつはいい。では、こいつも頼もうか?暮林………。」

そう言って、設計図を投げるような感じで手渡す。

それを見た老人−暮林−の顔は、子供のように、目をきらきらさせていた。

「ヒュウ!!これはこれは…………。」

「いつ時までに出来る?」

「一ヶ月って所かな?」

「頼もしいな。」

「任せろよ。俺はウリバタケに、改造のいろはを教えてやった男だぜ?」

「そうだったな…………で?あれは出来ているのか?」

タカトがその言葉を言った時、ニヤリと笑みを浮かべながら、自分の胸をバンと叩いて、

「ばっちりよ。ま、物を見てくれ。」

そう言って、ずんずんと大股で外に歩いていく。

「坊主ども!!いくぞ。」

その言葉にその子供たちは、たったったとその老人の後に、付いて行った。

「懐かれてるな。」

にこりともしないで話すタカトに、老人は豪快に笑いながら、

「如何もこいつ等に、懐かれちまってな。まあ、婆さんが逝っちまって寂しかった所だ。良い家族が増えたぜ!!」

「後継者にでもするきか?」

「まさか!!こいつ等には、自分で選ばせるさ。まあ、教えられる範囲の事は教えてやるがね。」

「………………………。」

その二人の顔には、感情が浮かんでいない。

だが、尊敬している事は確かだ。

その証拠にこの二人、さっきから、その老人の作業着をしっかりと掴んだままだ。

そしてタカトの方へは、懇願でもするかの様な目を向けていた。

最も、其の事にはタカトは気づかない振りをしていたが………。

暮林の後を追って、扉を出て行くと、そこは広大な格納庫になっていた。

そこにさっきの機体より一回りほど小さい、紅いの機体が寝かされていた。

 金属のような光沢を持っているその色は、黒に近い紅(メタリックダ−クレッド)という、不気味な印象を与える色であった。その横には、その機体が羽織れるぐらいの大きさのある黒い光沢を持った布のような物が、かけられている。

「NAEP00『マルペルチュイ(悪夢館)』どうだい?なかなかの仕上がりだろうよ。」

外見を見て回っている、タカトに声を大きくして話し掛ける暮林。

頭部は、左右から、後ろに出っ張っている、羽のような飾りがついているのが見える。

全体の外見は、エステバリスを少し重装備にしているような感じであった。

「武装は?」

「左腕にグラビディ・プレッシャ−・二連装ガンと右腕にガトリング式の奴が一つ。設計通りに、取り外し可能だ。実弾に、小さな重力場を纏わせて撃つやつだから、戦艦クラスにも有効だ。圧縮式・エネルギ・ライフルが二丁ずつ。まあ、こいつは強大なピストルみたいなもんだからな。ホルスタ−が、腰の部分にあるだろ?最高密度で圧縮してあるから、強力なディスト−ションフィ−ルドでも貫通できるってえ代物だ。リ−プレ−ルガンが、背中に一丁収納されているだろ?あの○91のような形式になっているから、両腕がふさがっていても大丈夫と………。まあ、こいつが遠くまで飛ぶな。そして、両脚の部分にはネルガルの新型マイクロミサイルのポットをつけてある。一度に5発同時に撃てるようになっているからな。弾数は片方30。結構多いだろ?小さいが、威力は段ちだからよ!!安心してくれや。それと、DFSも両腕に一つずつ仕込んである。さらに、お前のお陰で、エンジンも大幅に改良できたのが嬉しいねえ。戦神の機体ほどとはいわねえが、ナデシコの他の機体には、負けねえつもりだ。」

そこで一端、話を切る。

 

やがて悔しそうに、呟く様にして話す。

「本当は、戦神の機体をも凌ぐものを作りたかったんだが………奴さん達のは技術が違い過ぎらあ。」

「…………構わん。お前はお前の持っている技術で、最高の物を作ってくれた。むしろ、礼が言いたいくらいだ。お前でなければ、これほどの完成度は誇れなかったであろう。」

(今の技術でここまでの事が出来たのだからな。さすがだよ。)

タカトは自分が渡した設計図のスペックを遥かに上回るものを仕上げてくれた、この男の腕に尊敬の念すら抱いていた。

しかし、暮林は苦笑して肩を竦める。

「やめてくれ。俺は自分の技術が一番だと自惚れていた。だが、戦神の乗っているものの設計図を見た時、俺は愕然としたね。あれほどの天才がまだいたとは………思わなかったよ。」

 

「…………………。」

「お前の甥は、大した奴だぜ。」

そういって、片目を瞑って、賞賛を表す暮林に、タカトはさらりと言う。

「似合わない事をしているだけだ。弟が見たら、さぞ笑い転げる事だろう。」

(そう……。お前に英雄は似合っていないぞ。アキト……。)

じゃあ、自分は如何なのだ?

別の思考が、かれに問い返す。

お前は他人をどうこう言えるほど、立派な人間なのか?

(フッ………大量殺戮者ぶぜいが、言えた台詞ではないか。)

自嘲気味に笑みを浮かべるタカト。

だから彼は別の事を口にした。

「こいつはスタンド・アロ−ンの設計になっているが、単独行動は何時間できる?」

「通常戦闘で、19時間。バ−スト・モ−ドでは、その半分。フルバ−ストの発展形である『オ−バ−・フルバ−スト』だと、一時間がせいぜいだ。」

この機体には、そのパワ−モ−ド用の増幅器が取り付けてあるが、それとエンジンが耐えられるのが約一時間だからである。

「ま、安全をきして、45分でバ−ストに移行する様にシステムを組み込んである。そして、その3分後には、完全停止だ。動けるようになるまでには、5分必要だからな。戦闘を行なう様にするには更に、2時間必要になるだろう。」

「ディスト−ション・ランスは?」

「折畳式にした。柄の部分を掴めば、良く騎士がチャ−ジ(馬での突撃)に使う、ランスの出来あがりだ。槍の部分が高圧縮度のディスト−ションフィ−ルドが発生して、形作られる。小型の発生装置と、ブ−スタ−を組み込んであるから、機体本体のフィ−ルドとエンジンのエネルギ−を大量に食らう事はまず無い。あ、ちなみに活動時間は、それを使って行なった戦闘も含んでいるからな。」

「このマントは?」

設計図には無かったものだ。

「レ−ダ−を透過できる代物だ。それにそれを付ければ、電磁波攻撃すら凌げる代物、名付けて『超電磁マント』!!さらに付加効果もついている!!なんとこいつは、重力波までのエネルギ−を反射できるのだああああ!!さあ、そこの貴方、今ならエステバリスもついて超お得!!電磁波でお悩みの貴方!!今しかない!!今しか!!さあ買った買ったあ!!」

何故か商売を始める、暮林。

「誰に言っているんだ?」

「のりだ!!のり!!ノリの悪いやっちゃなあ。」

「…………………。」

そしてしばしの間、沈黙が流れる。

どうやらタカトはそののリに、付いていけなかったようだ。

暮林は何回か咳ばらいした後、説明をし始めた。

「…………巡行形態だと、全体を覆うようになっている。戦闘時には、ジュネレ−タ−のうえに収納出来るようになってるからな。」

「…………のった方が……………良かったか?」

少し気まずそうに話しかけるタカトに、少し寂しげに答える暮林。

「…………いいよ……………もう…………。」

「……………そうか………。」

ふと見ると、暮林にしがみ付いている、子供達は批難するような目でタカトを見ていた。

(…………何故だ?(汗))

「それと、ブ−メランを隠し武器として内蔵しておいた。二つほどな。」

気を取り直す様にして、タカトに説明を再開し始めた。

「また、妙な物を…………。」

「まあ、そう言うなって………便利だぜ結構。DFSと同じく腕に折りたたんで収納して在るからよ。切れ味調節すれば、物を『吹っ飛ばす』だけなんて事も可能だ。」

「…………動けるのか?本当に。」

「速度及び機動性は、ナデシコのカスタム機の約3倍!!無論全装備したままでだ。」

胸を張りながら、今にも高笑いしそうな姿であった。

「…………期待しよう。」

「それと、更衣室にブロスからの届いたネルガルの制服が置いてある。着替えてきねい。」

「まさか、もう一度…………着る羽目になるとはな。」

苦笑しながら呟くタカトに、軽口を叩いて言う暮林。

「愚痴るなよ。二度在る事は三度在るって言うだろ?ま、ガキどもに案内させるからよ。それに、一応ネルガルって言う、後ろ盾も必要だろう?」

そう言うと子供たちは、暮林から離れると、何も言わずにすたすたと歩いて行った。

まるでこっちの方を見ないで歩くその姿は、タカトへの批難がこめられているように感じていた。

(嫌われたか…………。)

そう思いながらも表情には出さず、その後をついていった。

更衣室自体は、結構近い場所にあったが、その二人の子供によって、その部屋に入る事を邪魔されていた。

じっとこちらの方を見つめている。

「…………何かようかな?」

出きるだけ優しげに話し掛けた。

怖がらせる事も在るまいと思ったからだ。

二人は顔を見合わせたが、すぐに緑の髪の女のこが話し掛けて来た。

「如何して………おじさん巻き込むノ?」

「何?」

「貴方ニ会うとオジサン嬉しそう……………私達ニハできない事を貴方する。けど貴方、怖い。」

「怖い?」

そう………彼女達は敏感に感じ取っている様だ。

タカトの中に在る、虚無感の事を………。

その所為かお陰か……タカトはどんな事があっても、冷静さを失わない。

人にとって長すぎる年月は、タカトの人としての心を平坦なものに変えてしまった様だ。

失くしてしまったと言った方が正解だろう

だが彼女達は間だ知らない………。

一人の少女が癒した感情も確かに存在している事に…………。

「何を考えているノ?何をこれからオジサンニさせるノ?オジサンを傷つける事なら………私…………貴方許さないから!!」

そう言ってその女の子は走り去って行った。

タカトは彼女の方を見ずに、今だそこに立たずんでいる、青い髪の女の子のほうを見た。

「…………どいてくれないか?それとも俺に何か?」

「私も………瑪瑙と同じ意見です。けれど………オジサンが自分から、貴方に協力しているのは、瑪瑙も…………、私も分かっているんです。ただ………貴方の空気には………安らぎが………暖かいものが何一つ感じられないから…………。」

「…………奴はああ言う男だ……すぐ無茶をする男だから、奥さんも大変そうだったな。」

彼女の言葉を遮る様にして、タカトは独り言の様に喋った。

「え?」

その青い髪の少女は、目をぱちくりとさせて、彼の方を凝視していた。

「奴が無茶をしない様に…………誰かが奴の面倒を見てくれれば良いのだが………。」

「あ……あの………。」

「案内をありがとう………ええと………。」

「コユキです。粉雪=暮林…………。」

「瑪瑙に粉雪か………奴が好みそうな名前だな……。」

そう言って薄く優しげに笑うと、更衣室の中に入っていった。

それを見て、粉雪という少女は彼がもう一度出てきて、彼女に話しかけるまで、ぼおっと立っていた。

 

 

 

 

 

「ん?瑪瑙、如何した。何不機嫌になってんだよ。」

「別ニ…………不機嫌じゃない………。」

そう言いながらも、不貞腐れているような表情で、返答する彼女を見て、少し笑みを浮かべる暮林。

「タカトに何か言われたのか?」

「関係無い!!」

「ふう………そうかい。おい!!10班!!作業が遅れているぞ!!ちんたらやってんな!!」

『ヘイ!!』

暮林と共に、ブロスとタカトが計画した裏の『プロジェクト』参加者は80人。

皆、暮林に心酔しているネルガルの整備班達だ。

そして、今タカトのように、タカトの指揮のもと、影として、活動している者は諜報員とパイロットを含めて実行部隊35名である。

その内パイロットはタカトを含め7名ほどである。

こちらはタカトが厳選し、地獄の特訓を科した者達である。

100名いたのが、35名までに絞られてしまったのだ。

更にパイロット志望は、地獄を見る事になったのだが…………。

それ故に、皆、相当の手練になったのはいうまでも無い。

木星の中に平和論者がいるとはいえ、まだ、戦争に賛同している者の数が多いのは確かだ。

それに、クリムゾンの会長は、切れ者と言うだけでなく、どこか怪物じみているところがある。

一筋縄ではいかない相手だ。

しかも、エステバリスでは、無人兵器を凌げなく成っているのが現状だ。

それに、ネルガルの社長達の動向も気になる。

何せのこの戦いは、企業にとっては、楽して儲かる飯の種だ。

どちらの企業にとってもと言うだけでなく、多くの重工企業にとってもそうであろう。

彼等にとってはこの戦争を、少しでも長引かせたいと思うのが本音だ。

それ故に、平和への道はまだまだ遠いと、タカトは判断したのだ。

その間ナデシコ以外の、最前線の基地の武装強化もしていた方が良いと考えたタカトは、ブロスにそれを提案した。

つまり、マルペルチュイとエステバリスカスタムのマイナ−化したものを、量産化し、戦線を膠着状態にさせようというものだ。

確かに、チュ−リップは殆ど破壊されてはいるが、全てと言う訳ではない。

オ−ストラリアやアメリカ、アフリカでは、結構深刻な状態にある前線もある。

そして、今回タカトがネルガルの派遣教官として、行く事になったノルウェ−も、今まだ、危険な状態だ。

ナデシコがピ−スランドに近づくに連れ、各地にチュ−リップがかなり多く巻かれたせいもある。。

ノルウェ−のシルベント基地も、その最前線の一つとなっているらしい。

そしてもう一つ………ナデシコが近づくに連れ、ここ等辺のクリムゾンの動きが活発化し始めていた。

其の事が、タカトのネットワ−クに引っ掛ったのである。

そして、ネルガルの反会長派の動きも、海面下で動き始めた様だ。

『ここら辺一帯のクリムゾンとネルガル反会長派の掃除をお願いします。』

ブロスの本当の『依頼』がこれであった。

そのついでに、教官も遣れと言ってきた。

はっきり言って無茶である。

そして、依頼された方もされた方で、

『構わんが…………、俺の遣り方で遣らせてもらうぞ?』

と軽く請け負った。

そして、

『こっちには、関心を持たせるな………。』

と釘をさすのも忘れなかった。

そして、タカトは一番危険な場所である、ノルウェ−の地域を担当した。

ここら辺一帯に滞在している裏のクリムゾン社員達の動きが妙だと報告を受けたのが一つ。

もう一つは、『黒と白銀の戦乙女達』と呼ばれるエステバリスライダ−達の事を耳にしたからだ。

かなりの戦績を誇るようになった彼女達………それは、アキト達が来た後からだと言うではないか。

(見て見たほうが良いかもしれん、アキトが与える影響と言うものを………。)

『そちらの方の依頼も引き受けた…………。だが………俺はアキトのように甘くは無い。俺の遣り方で遣らせてもらう。』

そう言って、唇を笑みの形に変え、そう返答するタカト。

『承知しました。』

そう言いながらも、ブロスの表情には、一瞬苦いものがよぎったようであった。

彼はタカトを巻き込んだ事を、今更ながらに後悔していた。

(人の欲は………何時も容易く他人の良心や幸せを飲み込む。)

そして今も…………。 

 

 

「おっ!!なかなか似合うじゃねえか。」

タカトが着替えて戻って来たのを見て、ニヤッと笑みを浮かべてタカトに言う。

そこには、ネルガル社製のダ−クレッドのコ−トを羽織り、バイザ−をつけ、後ろで髪を一まとめにしている、長髪の男が立っていた。

「社章の下にこの花を刺繍した理由を聞かせてもらおう。確か、マルペルチュイの左腕にもつけていたな。」

そう言って、左腕についているネルガルの社章の下には、都忘れの花の刺繍が成されていた。

「あの子が好きだった花を、あのこの代わりに連れてって遣れよ。置いていったら、何されるか解らんぜ?」

その言葉に、タカトの微苦笑をもらした。

「そうか………成る程………そうかもしれんな。」

(あの時は……大変だったな。)

何も言わずに、半年ほど出張に行った時があった。

そして帰って来た時、マンションの荷物が、全て質屋に送られていた。

それだけでなく、銀行の口座から、有金全部降ろされていた。

彼女に三日間謝りつづけ、ようやく許してもらったものだ。

今思い出して見れば、とんでもない女だったかもしれない。

(『時間が無かったなんて理由にならない。』なんて言われたっけ)

その後言われた言葉は、

『女の子との約束を破った貴方が悪いの!!』

であった。

だが………懐かしかった。

あの時は、さすがに蒼ざめたが、今となっては懐かしい思い出だ。

ふわりと、優しげな風が頬を擽った。

『行こう……タカト……連れてってくれるんでしょ?』

笑い声と共に、そんな声が聞こえてきたような気がした。

懐かしいあの声が………。

「約束だ……………連れて行くよ。」

その呟きを聞いた暮林は、瑪瑙と粉雪を抱き上げると、

「行ってこいよ。タカト…………『また会う日まで』な。」

「ああ。」

この花が持つ言葉は『憂いを忘れる』『また会う日まで』そして………『別れ』。

再会する事を願い、彼の苦悩が取り除ける事を願って、暮林はこの花の絵を描いた。

(お前が何考えて、戦いに身を投じるのかは聞かねえよ。だが、あの子を悲しませるような事だけは………するんじゃねえぞ。)

そして、無事に帰って来い。

アサルトピットに乗り込んで行くタカトの後姿を見て、そう願わずにはいられなかった。

 

 

 

「『スレイプニル』の現出力95%、臨界点まで、1分か。」

長距離用ブ−スタ−ユニット『スレイプニル』のエンジンを起動させながら、タカトはマルペルチュイ本体の状況をチェックし始めた。

「攻撃力は火力によってカバ−出来るな。問題は機動性だが、俺の反応にはまるっきりついてこれんか……………。少し厄介だな」

全ての反応が『ルシファ−』とは全く違う。

「無人兵器如きには、遅れは取らんが………」

それでももう少し、スピ−ドが欲しかった。

「まあ、遣って見るしかないな………。」

そう言うと、ペダルを思いっきり踏む。

普通のパイロットにはとても反応できないような(タカトにとってはあくびの出るような)速度で飛んだその機体は、真っ直ぐにノルウェ−に向けて、マントをはためかせながら、進んで行った。

「さあアキト…………裏舞台は俺が引きうけてやる。表舞台は………お前がけりをつけてみろ」

そう呟くと、更に機体を加速させて行った。

 

 

 

 

 

/ノルウェ−/シルベント基地周辺

今日もジョロやバッタが、チュ−リップから、出てきて基地の回りの家を破壊せんと殺到してきていた。

それを迎え撃つのは、36機のエステバリスとパイロット達である。

その中で9人が小隊長として3機ずつほかの機体を指揮していた。

その九人が乗っているのは、ネルガルのNAEP最初の生産ラインで作られた機体『ブロッサム』の改造機である。

其々の武器に特徴が見られ、その性格がその機体に良く現れていた。

そして、彼女達の腕もかなりいい。

人は彼女達を『黒と白銀の戦乙女達』と呼び、彼女達もそれを誇りとしていた。

黒と白銀で統一されてはいるが、武装はばらばらだし何より、性格は更にばらばらだった。

それ故に、横の連携は皆無に等しく、殆ど彼女達の好きなように戦っていた。

「チェリンカ、出過ぎよ!!速く戻って!!」

ルネの言葉に、チェリンカと言われた少女は、

『この程度の敵を屠れないで、『戦乙女』って誇れないよ!!』

といい、それを聞いたカリンが

『モッチロン!!アキト様が認めてくれたのよ、私達の実力!!どんどんいかなきゃ♪』

と、チェリンカの言葉に賛同の意を示す。

「そう言う事じゃないでしょ!!私達の今の目的は、敵を出来るだけ民家の少ない所に、誘導する事じゃないの!!」

『それ………まどろっこしいよ。』

今度は言葉少なにメイが反論する。

『要は……粉砕すればいいのよね。』

あっけらかんと言って、敵を打ち落としに掛かるのはリュ−ノであった。

『じゃ競争しよっか?勝った方が、アキトさんに手紙を書くって言うのはどう?』

このル−チェンの言葉にほかの7人が賛同する。

『賛成賛成賛成!!』

舌足らずな声でレネスがはしゃいだ。

「貴方達!!命令無視するの!!」

『止めときなさい。何言っても無駄みたいよ。』

クイノが、冷静な声で、ルネを止める。

「クイノ!!」

『私達で、やるしかないわ。』

「アキトさんに憧れるのは良いけど…………時と場合を考えて欲しいわ!!」

『えてして人は………人を真似て見たいと思うものよ。』

「だからってこんな時に…………」

『!!待って………通信が入って来たわ。』

「え?」

『聞こえているか?お前達二人は部下を連れて、市民の安全を第一優先に防衛に専念しろ!!』

突如声のみの通信が、割り込んで来た。

「貴方は一体…………」

『あとで説明する。雑魚の一掃は俺に任せろ……』

力強くは無いが、有無を言わせない何かがその声にはあった。

そう……それは…………

(アキトさんにそっくりじゃない!!)

ただその声には、暖かさが欠けていた。

ドド――――――――――ン!!

突如、一斉に爆発音が聞こえ始めた。

続いて、青い光の筋が何機もの無人兵器を呑みこんで、消し飛ばす。

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!

耳を劈くような音と共に、次々に拉げ爆発四散して行くバッタとジョロの群れ。

その中から、一機の機影が確認された。

「速度………うそ………これって………」

『音速の4倍の速さね。』

その速度を維持しながら、次々と正確な射撃で、敵を屠っていた。

『まさか………アキト様!?』     

カリンが呆然としたまま、声を上げる。

「違うわ………アキトさんじゃない。」

それを見入る様にしながら、ルネは否定した。

そう………アキトの戦いは見るものを魅了させるような戦い方なのに対して、この機体の闘い方は、見るものを震えあがらせる感じがした。

それでいて、目を逸らす事が出来なかった。

そして何故だろうか?

その機体の色は、そんな戦い方をしている機体にしっくり来ている気がした。

そうまるで……

『血の色……みたい』

(血の色?)

誰かがいった台詞が彼女の耳の奥に何度もリフレインしていた。

(これは…………終わりの無い悪夢?)

何故かそんな言葉が思い浮かんだ。

ドガ――――――――――――――――ン!!

一際大きい爆発音が、彼女の呪縛を解除した。

『あ……あいつ………チュ−リップを………破壊した?!』

声を震わせながら、チェリンカが呟く。

そしてそれとほぼ同時に、

『戦闘終了………エステバリス隊は周囲を探索した後、速やかに基地に撤収せよ。』

と言う、低い男の声が、エステバリス隊全機に通達された。

その機体は何時の間にか、黒いマントに覆われていた。

そして、基地に向けて、飛び去って行った。

「誰なの……一体……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「連携が取れていない。足の引っ張り合い。英雄願望……この場合はアキトか……一体何の集まりだ?ファンクラブの寄り合いかここは………」

溜息を一つついて、軽く頭を横に振った。

「軍隊とは、国を守るしいては人民を守るためにある筈だ。あいつ等の戦い方はまるでそこらへんにある軍隊そのものじゃないか。」

《この戦闘を見たら、アキト様は何と仰せになる事やら………》

「失望するさ………。そしてまた悔いるだろうよ。自分の起こした行動の結果をな。」

《どうなさるおつもりで?》

「取り敢えず…………我が振りを直してもらうさ…………。お前には、さっき言った事を遣ってもらおう。」

《了承》

「さあ……始めようか………」

その機体が基地に降りた時、もう既に、夕陽が落ちかけていた。

その光はこれからの流れる血を暗示しているかの様であった。

 

 

 

 

悪夢を守護する騎士が真に護るべきものは………。

 

 

 

 

第1話完

 

 

 

ふう……おわったなあ……。

ドドドドドドドド!!

ん?なんかが近づいてきているような?

「うおおおおおおおおおおおお…………死ね!!

ドゴオオオオオオオン!!

ぐはああああああああああ!!

頭が割れるように痛いいいいいいいいいいいい!!

い……行き成り何をする!!

なんでお前がいるんだよ、ナオ!!

本編に戻れよ!!

「黙れ!!この腐れ作者!!お前の所為で、今アキトに地獄を見せられたばっかりなんだよ!!」

へ?

「お前が書いた小説の冒頭の部分を、良く読んで見ろ!!貴様が最悪な選択を選んでくれた所為で、アキトに半殺しにされそうになったんだよ!!」

そ…………そう(汗)。

「お陰で、俺とシュン隊長とカズシはアキトの気がおさまるまで、ナデシコにもいられねえ。だから、暫く厄介になるからな!!」

どんなお仕置きされれば、そうなるんだろう?

今度アキトに聞いて見よう。

「いっそそのまま殺されて来い。」

で、その他に何か?

「そうそう………お前、聞きたい事が会ったんだけどさ。俺の子孫の出番が少ないのはどう言うこった?」

え?

まだ出てきてないけど………。

ってよりか、本編で君とミリアが結婚するかどうかまだ不明だし……。

「あ!!何だそりゃあ!!(怒)」

え?

だって、君には押しかけ妻が………

グシャ!!

「次何か言ったら……………ケス………」

は……はぎ………。

「で………俺とミリアとの愛の結晶の血を持つサトちゃんはいつ出るのかなあ?」

………………。

何とか言えやあ!!(怒)

ぐはああああああああああああ!!

酷いっすよ〜〜〜〜〜〜〜〜。

何も言うなって言ったり言えって言ったり…………如何すりゃいいのさ。

「俺の質問には答えろ……。ほかの無駄口は許さん。」

うい!!

その内出る予定です。

「だから何時?」

4部辺りで………。

「それといろいろ謎があるんだけど………。」

それは、聞いてくれれば、順次質問にはお答えしたいです。

「そんじゃあ、未来のジュンがカッコ良い訳は?」

あれは簡単。

ナデシコの雰囲気が無いその船の中では、ジュンは素の性格のまんまなのさ。

しかも、白鳥の血も流れている彼としては、無様な姿を誰にも見せる訳にはいかなかった。

ある意味、ムネタケと同じかな。

彼との違いは、自分の感情をある程度制御できていたと言う事と、ユカのサポ−トのみに徹していた事だな。

「成る程。で、サポ−トって?」

書類の整理、艦内の管理等など………。

「つまり、過去と一緒って事だな。」

まあ………そう言われると身も蓋も無いね。

まあ、タカトの出会いによって、彼は傭兵として前線で戦う道を選んじゃったけど、それが彼の道を180°変える事になるんだよね。

「まあ、あんだけけなされればな………。当然じゃない?」

う〜〜〜〜〜ん、彼としては、警告したつもりなんだろうけどね…………。

「そうなのか…………。で、なんで白鳥が、悲運なんだ?」

フフフフフフフフフ…………私は白鳥九十九とは言ってはいない。

「何!!おいちょいまて………。」

では、皆さん、質問ご感想お待ちしております。

「かってに終わらせるんじゃねえ!!」

では、これにて…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

ランさんからの投稿第六話です!!

冒頭でアキトが登場したのは驚きましたよ。

なにしろランさんの作品では、アキトの出番は初めてですからね。

まあ、何時もの風景でしたが(苦笑)

それにしても、タカトさんが凄い活躍をされてますね。

未来でも現在でも。

う〜ん、今後は鬼教官となるのでしょうか?(笑)

 

ではランさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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