機動戦艦ナデシコ

天国と地獄編

第二話「俺に決めろというのか?」

Aパ−ト

『回想録』−存在を消された者達

何処からか声が聞こえてくる………。

「…………ったのか?」

「………がなかろう。少なくとも、生きていて欲しい奴等だけは救えた……。」

段々意識がハッキリしていくにつれ、鮮明に聞こえ始める……どうやら二人の男の声らしい……。

どうやらまだ目は、開いていない様だ………。

まだ起きていないのだろうか俺は………。

「これは、クリムゾンだけで、どうこうできる計画ではない。抱き込まれている人間が何人かいると見た方が良い………。」

「それもかなりの上の人間ですか?」

「ああ……ただの旅客機ならまだしも、ネルガルの最新技術を盛りこんだ代物だ。安全性はかなり高い筈………それにおいそれと普通の人間が入れる所でもない。」

「そして事故処理の手際の良さから見て、かなりの人間、しかも上の人間に根回しがされてますね。」

一人は…………プロスペクタ−と言う人物だろう………。

経理課所属の人間だが、重役連中がかなり警戒している人物の一人だ。

俺も何度か親父の部屋で見掛けている。

話も何度かした事があるが、何時の間にかにあちらのペ−スに乗せられて、気がついて見ると何故か人生の話をしていた。

侮れない人物である。

もう一人は…………くそ!!

後もう少しで思い出せそうなのに……………。

その間にも、話は進んで行く。

「ああ………かなり大掛かりな仕事だ。おいしい密約でもあったのかな?」

「公文書にでもされない限り………痛くもないでしょうね。むこうサンは……」

「恐らくしていない……しする必要も無い……どっちにも不利だろうしあっちも証拠を何一つ残すようなへまはせんだろう。現に手引きしただろうと思われる整備士の何人かは、退職している。」

「行方は?」

「人生も退職したのかもな……。全員家族がいる奴だった。家族揃って人生に退職願出したみたいだぞ。」

「何て事を………。」

「クリムゾンは、目の上のたんこぶを消せる。重役連中は、実権を手に入れられる。どちらにとっても得になる話じゃないか。さて、誰が権限を大きく握るのだろうな?」

「どちらにしろ、ロバ−ト会長の筋書き通りみたいですね。」

「俺達まで掌で踊る必要は無いな。」

「当然です。その為に、貴方に護衛を頼んだのです。それなのに…………。」

口惜しそうな声を遮る様に、面倒くさそうにもう一人の男が言う。

「ナガレは会長に向いている。少なくとも、こいつよりもな。」

こいつとは…………俺か!!

「ほかに誰がいる?」

俺の呟きを聞いていたのだろう。

だが随分耳がいい男だな。

かなり小さい声だと思ったが…………それにしても暗いなここは…………。

「専務!!目が覚められましたか!!」

「ああ…………もう少し明るくしてくれないか?ここの部屋は暗すぎるぞ。」

「充分明るすぎるといっても無理か………今のお前ではな。」

「どう言う意味だ?何故今の俺では無理なんだ?」

「何故か………それはお前の目が、失明しているからさ。」

一瞬その男が何を言っているのか分からなかった。

「は?だれが………なんだって?」

何をバカな事を言っているんだ?この男は…………俺が失明しているだって?

冗談も程ほどにしろっていうんだ!!

「どうせ、包帯でも巻いているんだろ!!さっさと外してくれないか!!」

「ならば左手で、眼の部分を触って見るんだな」

無知な者を嘲笑うかの様な声でその男は、俺に言う。

「左手だって………右手では駄目だとでも言うのか?」

揚げ足をとる様に言ってから気がつく………。

そう言えば……………右手に在るべき部分が………足りないような………。

「え………なんだ……何だ…………これは…………なんだってんだああああああああああああああああああああああああああ!!」

お…………俺の………右手が…………う……………腕が…………。

「無いんだなこれが……………。」

感情の無い声が、嫌に残酷に………俺に耳に響いた。

 

 

 

 

あの人の声が聞こえる…………。

悲痛の声が…………。

驚愕の声が…………。

目は見える…………。

けれど、正面を見据えたまま、私の目は動かない………。

慰めたい。

抱き締めたい…………。

声を掛けてあげたい…………。

でも如何してだろう…………。

私の体は…………私の思った様には、動いてくれない…………。

ただ私にできる事といえば、電池の切れた機械仕掛けの人形の様に、ベッドの中にいる事。

ただそれだけ……………。

 

 

「爆発の際、使い捨ての小型ディスト−ションフィ−ルドの発動が一瞬遅れたみたいだ。それによって、お前の右腕は、吹き飛ばされてしまった様だな。すまない。」

そ………そんな………左手で確かめても、右腕は肘から下が無くなっている………。

包帯も目には巻かれてなかった…………。

は…………ははははははははははは…………うそだろ………。

夢だろ………こんなの………。

「目は、爆発光を間近で見たためだろう。それだけは防げなかった。」

淡々とその男は説明をして行く。

事実だけを述べている様に聞こえるその声は、如何なる感情も含まれていなかった。

「全身の火傷はそれほどでもない。明日までには、完全に直るだろう。まあ右目は無理としても、左目は、少し視力は落ちるが、治る見込みはある。」

「右目の神経が、駄目だと言う事か………。」

「ま、現在の科学では、治せん。左目は、一週間後には完治するはずだ。」

「右腕は………いや………それより彼女は!!」

そうだ………それより彼女だ!!

どうなっているんだ。

「お前の隣にベッドにいる。」

「無事なのか!!」

「肉体的には無事だ。」

「妙な言い方をするな…………彼女は無事なんだな!!」

苛々する言いかただ。

何か在るとでも言うのかこいつは…………。

「目は見えるし、言っている事も聞こえるだろうよ………だが…………。」

「だが………何だって言う!!なんなんだ!!」

「体を動かす事は一生できん。」

その男が言った言葉に愕然とした。

「何だって…………如何してだ!!」

「跳んだ際に、神経の方がイカレタらしい。こいつもまあ俺の所為にすれば良いさ。ディスト−ションフィ−ルドの発生が、遅かったみたいでな。一瞬だけ、恐怖に晒された事が直接的な原因だな。」

「治らないのか?」

「治らなかったら捨てるのか?」

!!

「貴様あ、誰があいつを捨てるって!!そんな事………俺の前で二度と言うな!!」

彼女を俺が捨てる!!

俺が!!

「俺は彼女を絶対に放さない!!誰がなんと言おうとも、あいつは護って見せる!!」

そうとも…………何も守る事が出来ないのは………もうたくさんだ!!

「………たとえ…………彼女の前から去る事になってもか?」

「そうなっても…………俺は護る。」

迷いは無い。

「…………方法は一つだけ…………あるといえばある。確実な方法が…………。」

「あるのか?あるんだな!!だったら頼む…………それとも何か必要なのか………。」

俺にくれて遣れる物ならなんだってくれてやる!!

それで彼女を助けられるならくいは無い!!

「実はそれにはあんたの助けが必要なんだ。」

「なんだってやる!!だから頼む。助けてくれ!!」

「…………後悔はしないな……。」

「言った筈だ。悔いはないってな。」

「良かろう………。簡単に説明してやるから良く聞け。」

そう前置きしてからその男は説明を始めた。

「まずは、あんた等二人の脳に、共振するナノマシンを注入する。そして、二人の精神波を完全にリンクさせそれを彼女の運動系統の神経に司る命令系統の代わりをさせる。つまりナノマシンがあんたの神経系統を彼女の方のナノマシンに伝え、それを彼女の方のナノマシンに真似させると言う事だ。」

「成る程………。」

「副作用としてあんたの考えている事が、彼女の方に伝わるというところだが………まあそれは甘受してくれ。」

「え!!」

今…………何て……。

「ちょ……もうちょっと詳しく……。」

「では、始めよう。」

問答無用とばかりに、この男は麻酔薬を注射してくれた様だ。

ちくりという痛みと共に、段々眠気が………。

「まだほかに…………。」

何か言ってない事があるんじゃないのか?

それは声になる事無く、闇の中に消えて行った。

 

『最後に聞いていい?』

何時だったか………この声を最後に聞いたのは…………。

『イリスちゃんの事好き?』

まだ、ナガレが生まれたばかりの事だったと思う……。

『じゃあ、おねえちゃんに約束して。大切な者を護れるような大人になるって。』

無邪気に頷いて約束した。

けど………ごめん………。

約束………守れなかったよ………。

イリスを………護れなかった………。

《そんな事無い!!》

?誰だ!!

《そんな事無いよ。劉ちゃん……。》

誰?

《嬉しかったよ………。大切だって………私の事を………嬉しかったよ。》

何処かで聞いた気が……。

《嬉しかったよ………。》

イリスの声に似てる…………。

《そうよ!!私、イリス=ヒュ―ストンよ。》

……………。

《ねえ、劉ちゃん……ここ何処?》

……………………。

《劉ちゃん………何処?》

…………………………………(汗)。

《劉ちゃん………何処ですか〜〜〜〜〜〜〜。お〜〜〜〜〜〜〜〜〜い。》

&%$#$%=〜〜|¥?_<!!!!!!!!!

《〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!ウルサ〜〜〜〜〜〜イ!!近所迷惑だよ!!何言っているか分からないし!!》

ななななななななななななななななななななななななな〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!

《な?》

なんなんだこれは!!

《あれ?そう言えば…………おかしいね。自分の姿も見えないよ……。》

一体どうなってるんだこれは!!

《うふふふふふふふ………なんかおかしいね。言いたい事がぽんぽん口に出ちゃうみたい。そう言えば『劉ちゃん』なんて言ったのは何時までだっただろう?》

幻聴が幻聴が幻聴が…………ブツブツブツ………。

《何か子供の頃に戻ったみたい………。何時からだろう………こんな気分を忘れたのは……………。》

ああ………あれはやっぱり夢だったんだ………。

俺は本当は死んでいたんだ。

するとこれは、過去の言葉か。

そう言えば、人は死ぬ寸前、過去が走馬灯の様に駆け抜けると聴いたことがあるが……。

それに近い現象が今ここで…………。

《………ねえ……劉ちゃん?》

と言う事はもうそろそろお迎えが?

いかん!!

俺にはまだ遣らねば成らん事が、山ほどあるのに……。

《劉ちゃん!!》

く〜〜〜〜〜〜〜如何すれば良い?

まずは、チパキを出会い頭にかました後、よろけた所でヤクザキックをかますか………その後、誠心誠意を持って交渉に入り、現世に復帰し様!!

《それって脅迫?………劉ちゃん………。》

良し!!

これで決まり!!

後はタイミングだな、タイミング…………。

《ねえってばあ!!聞いてるのお……劉ちゃ〜〜〜ん!!》

だああああああああああああああああああ!!

鼓膜が破けるゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

《もう…………知らない………劉ちゃんの馬鹿あああああああああああああああ!!(泣)》

……………ううううううう………何か………更に死ねそう………。

 

 

 

 

 

 

気がついてみると…………となりには泣きはらしたイリスが同じベッドで寝ていた。

「気がついたようですね。」

ベッドの脇においてある椅子に腰掛けて、にこやかに笑いながら、プロスペクタ−が話し掛けて来た。

目が………………見える!!

右腕が………ある!!

動く!!

つねって見る。

………痛かった………。

ん?

そういえば………この場所は一体………。

「………ここは?」

「前と同じ部屋です。」

「で、手術はどうなったんだ!!」

その問いに答えずにこにこ笑ったままのプロス。

くう!!

如何して答えてくれないんだよ………。

「……………馬鹿………。」

涙声で誰かが喋った。

「…………え?」

もう1度隣のイリスのほうへ顔を向ける。

もしか………して……。

「イリス…………。」

泣いているイリスが俺と同じベッドにいた。

「起きて……るってことは………。」

成功したのか?

その言葉にプロスはゆっくりと頷く。

「彼女は、あなたが目を覚ます3分前には目を覚ましておられましたよ」

その言葉に……イリスを力いっぱい抱き締めていた。

言葉が上手く出なかった。

感情が上手く言い表せない。

だから、行動でしか示せなかった…………。

こんな事は生まれた始めての事だ。

《私もだよ……劉ちゃん……。》

イリスの言葉が、頭の中に響いて来た。

そう………響いて………。

「………………あれ?」

《聞こえた?劉ちゃん。》

ウンばっちり聞こえたよ。

聞こえた………聞こえた………。

「聞こえたよおおおおおおおおおおお。」

一瞬また、混乱しそうになったが、ふと思い出した。

そう言えば……謎の男が言っていたっけ?

リンクした人間の考えも、通じ合うって。

《そうだよ………劉ちゃん。私の為に………遣ってくれたんだよね。》

「有り難う……。」

礼の言葉だけは、いつも通り少しそっけない物だった。

《礼は要らない。一緒に生きていきたかっただけさ。》

《一緒に…………。》

「生きていけるの?」

「ああ………。」

ちらりとプロスのほうを見ると、何時の間にかに、消えていた。

気を使ってくれたらしい。

心で礼を言いながらも、何時の間にか唇を重ねていた。

《プロスさんってイイ人だね。》

……そういや聞こえるんだっけ?

《そういや…………何で泣いてたの?》

《…………知らない!!(怒)》

………なんでだ?

暫くしてから、見知らぬ男が、部屋に入って来た。

サングラスを掛け、黒ずくめの格好は、いかにも怪しい雰囲気をかもし出していた。

だが、何か引っ掛る。

俺は、本当にこの男と初対面なのだろうか?

「………………始めましてというべきかな?ネルガルの元専務。」

感情がこもっていない声だ。

だが少なくとも敵意のような物は感じない。

「顔を見合わせるのは、初対面かもしれないな。まずは礼を言うべきかもしれないが……………。」

「有り難う御座います。もう1度、劉と並んで歩くことができる事が出来るのも、貴方のお陰です。」

おい待て!!

ここからが、交渉の始まりだってのに………。

《礼は礼でちゃんと言っておこうよ。劉ちゃん。》

……………。

まあそうだけど、何か引っ掛るんだよなあ………この男。

《うん………この人と初対面じゃないかもよ劉ちゃんは。》

《!!そうなのか?》

《だって、劉ちゃんの心の片隅に、この人の記憶があったもん。》

《…………そんな事も出来るのか?》

《うん………だから、教えてね。2ヶ月前、誰とあってたのか。ちゃんと納得できる様に。》

…………………ちょっと早まったかもしれない………。

2ヶ月前と言えば……………あれか………。

取り敢えず、話を逸らそう。

「取り敢えず、お前等が寝ていた間の事を、簡単に説明しておこう。」

よっしゃあ!!

ナイス、見知らぬ人よ。

「まった。一つ聞きたい事がある。」

「何か?」

「あんたを信じない訳ではないが、あんた以外からも情報を仕入れたい。一応な。」

普通なこんな事を言ったら、人によってはむっとするだろう。

だが、その男は少し考えやがて、首を縦に振って承諾に意を表した。

「良かろう。そう言うと思って、今プロスに雑誌を買わせている。ネットで調べたいなら、コンピュ−タを使ってくれても構わん。パスワ−ドを渡しておこう。」

そう言って、俺の掛け布団の上にメモ用紙を投げた。

…………まるでそう言う事を分かっていたみたいな行動だな。

「では、説明を始めよう。質問はその後受け付ける。」

「了解した。」

「まず、この事故の計画発案者はクリムゾンのロバ−ト会長である事は間違い無い。だが、この計画にはクリムゾン単体で行なわれたとは考えられない。この宇宙船の人工知能はオモイカネプロジェクトの過程で作られた物。常識的にはクラッキングはまず不可能と言って良い。」

「つまりあんたは、ネルガルに内通者がいるとでも?」

「今度の場合は共謀者だな。内通者を通して、協力体制を取ったのだろうよ。最も地位は高い物が一人ぐらいはいなければ駄目だろうが………。」

「如何してだ?」

「あんたのスケジュ―ルを細部まで知っているもの。と言う条件が一つ。この場合は身内でも構わん。そして、会社の権限をある程度自由に使える者。この場合、使っても気にされない者のほうが良いつまりは、設計図などを誰も許可なく見ることができる者と言う事だな。そして、…………。」

「そして…………」

「疑われない者と言う事だ。」

そうすると、重役クラスだな。

あのプロジェクトのスケジュ―ルを知っていて、尚且つ俺のスケジュ―ルを細部まで知っているという人間は、かなり少ない。

社長派か?

いやこの場合は、運営権を持つに値する人間も含めて、考えた方が良いか……………。

「ネルガル重工は株式会社だったな?」

「昨今珍しくも無いだろう?」

「今現在、会長の次の株主と言える人間は誰だ?」

「イリスの父親だな。」

「専務取締役か。」

「おいおいまさか……ゲオルクさんの事を疑っている訳じゃないだろうな………。あの人は、物の道理をちゃんとわきまえている人だぞ。」

俺が会長職に就いて、イリスと結婚した暁には、会社を辞めるとも言った人なんだ。

そんな人間が…………こんな事をする筈が無い。

「先代の会長が死んだとき、70%持っていた株の内10%を重役連中にくれて遣ったそうだな?」

「ああ。」

「その10%如何言う訳か、ゲオルクのほうに全部流れたようだぞ。」

「馬鹿な!!」

あれは均等に配分された筈だ。

そこに俺も立ち会ったのだぞ!!

「ネルガルのSSと情報機間は今現在、クリムゾンよりも質が悪くなっているみたいだ

な。先代はなかなか上手く遣っていた様だが、小さくまとまり過ぎていた。それがゲ

オルクの野心を起こした様だな。」

「後見人にまでなってくれた人だぞ!!なんの見返りも求めずにだ!!そんな人が……」

「先代の事故死………今回の事故死………共通点は何だろう………。」

共通点?

行き成り何を………。

「宇宙船………。」

!?

イリス?

「正解だ。ゲオルクはネルガル重工、宇宙開発部門の総管理責任者だ。それには宇宙船も入っていたな。」

「親父は……新型エンジンの始動実験の時の死んだんだ!!あれはどう見ても、人為的なミスじゃない!!」

「その通り、元々欠陥が設計図に入っていただけだ。組み立てた人間のミスでもなければ、始動させた人間のミスでもないさ。」

「何だって!!」

「そして似たようなエンジンが、クリムゾンで組み立てられた。それはなかなか精巧に作られていたそうじゃないか。」

「でもそれでも売上はこっちの方が上だ。」

「イネス=フレサンジュのお陰だろう?彼女がいなければ、差は縮まる一方だったさ。」

「クッ!!」

「そして、ほかの部門の頑張りが、ぐらついた屋台骨をすくった……違うか?」

違わない…………。

「そして今回の事故、宇宙船の爆発事故だ。」

「あの整備士達はネルガルが出資している学校の出だ。身元も確かだし、万一爆弾が組み込まれても、あの人工知能の診断プログラムに引っ掛らない筈は無い。」

「“真紅の牙”という集団を知っているか?」

「クリムゾンの裏の精鋭部隊。」

「そう。活動を停止している“Eフォ−ス”にとって代わったクリムゾンのSSだ。」

「奴等が動いた。そんな情報は何処にも入ってきていなかった。」

「俺のほうには来ていたぞ。だからお前達を助けられたのだろうが………。」

「何でだ。なんで入ってこなかった。情報は逐一、俺のほうに伝わる筈だ。」

「お前達がぼんくらだったからさ。ネルガルの人間研究所に優秀なマシンチャイルドの実験体がいるようじゃないか。一人…………。」

「何を……」

行き成り何を言い出すのかと思えば………。

「ホシノ ルリ……………ほかの研究所に比べれば、中々良い所みたいだな。番号何てあじけないものよりは名前はあったほうが良い…………なあ?そう思わないか?」

薄く笑って、俺の方を見る男。

「そんな実験も行なわれている事は知っている。だが、それと今回のこと如何関係がある?」

「彼女の仕業だとしたら?」

「何………。」

「彼女の実験の中には、そういう訓練プログラムのある様だしな。言われた事をしているだけだから、人を殺す計画だなんてなんて欠片も思ってはいない。まあ、人が死んでも、悲しみもすまいがね。」

「ちょっと待て、人間研究所には、ゲオルクさんとなんの係わり合いは無い筈だゾ。管轄が違う。」

俺はそう反論した。

ソウする事によって、俺は最後の希望に縋っていたのかもしれない。

だが………

「マシンチャイルドは元々、電子世界のプロフィッショナルとして作られた存在。そして今、作られている戦艦は次世代型コンピュ−タの完成品を積んだ代物、そのオペレ―タにつく人間は?」

それが俺の頭の中に会った、最悪のパズルを完成させた。

「社長派のほかに第三勢力がいたとはな。」

第三勢力?

違うな…………。

今やナガレを傀儡としてネルガルを牛耳る支配者か…………。

「全てが嘘だったのか?」

祖父と親父の葬式の時、泣いていたあの顔も………。

俺が会長就任すると聞いて、喜んでくれたあの顔も…………。

あの顔の裏で親父や俺を殺すさんだんを考えていたと言うのか?

《じゃあ………あの話は…………聞き間違いじゃなかったの?》

!?

イリス?

死人のような顔になっている。

あの話?

「あの話って?」

俺の声を聞いて、蒼ざめた顔がバネ仕掛けのような動きでこっちを向いた。

《何でも無い……何でも無い………》

「聞かないで…………何も聞かないで…………。」

様子がおかしい。

俺を見ながら横に首を振りつづけている。

「駄目!!」

《何て言えば良いの!!あの話を…………》

私の方を見ないで!!」

何だ?

声が聞こえる。

彼女の記憶か?

『乗客の個体情報を変えさせただけだ。』

『これで……研究を存続させる事ができます。』

『マシン チャイルド……中々使えるな。』

『訓練と称するものは、あっさり遣ってくれますので、こちらとしても扱いやすい者です。』

「こっちを見ないで!!」

声とは反対にどんどん流れこんでくる記憶………。

『出る杭は打たれる、という事だ。』

『全く、その通りですな。ようやく、M・C(マシン チルドレン)の計画も軌道に載ったというのに、行き成り止めろとは…………。』

『まあこれで安泰だ。門出を祝おう。』

『お二人の門出に乾杯………。』

「イヤ――――――――――――――――!!

!!

……………ツウ…………

如何したってんだ?

これは………

「イリス……。」

頭ががんがんする。

二日酔い状態だな。

おい………イリス………。

《……………》

イリス!!

《………》

返事が無い。

イリスのほうを見る。

「!!」

ベッドの倒れこんでいた。

「イリス!!如何したんだ!!おい!!」

「ショックで気絶しているだけだ。問題無い。」

淡々とした声が、俺の耳に入る。

「よほどショックだったらしいな。」

「ああ……。」

如何やら、彼女は自分の父親が誰かと話しこんでいるのを聞いた様だ。

それが彼女もろとも婚約者を消す計画だった事は分からなかったらしいが………。

「暫く休憩にでもするか。持ってこなければならないものもあるしな。」

そう言ってその男は部屋を後にした。

暫く俺は一人で一連の事件の整理をし始めた。

まず気になる事は、クリムゾンが何処まで関わっているかと言う事だ。

“真紅の牙”まで出してきているという事は、あの爺がこの計画に本腰を入れたという事でもある。

しかし、何故だ?

ゲオルクはイリスを溺愛していた筈だ。

そんな彼女を、実権を握る為とはいえ、ゴミの様に捨てるとは…………。

しかも人間研究所と結託して消そうとしてくれるとは………あれは、兵器開発部門の管轄だったな。

という事は、かなりの人間が関わっている事になる。

さて、まずはパイプを探す事から始めたほうが良かろうか?

それとも、ゲオルクのほうをハッキリさせるべきか?

…………奴等は、俺が生きている事を知らない。

これが切り札と言えば切り札だな。

だが…………

「奴の事だ。その点もぬかりは無いかもしれんな。」

そしてプロスと一緒にあの男が、入ってくるまで考えていた。

 

 

 

 

その2に続く