大人の愚痴ばかりこぼしていたガキが
      
         気がついたらそんな大人になっていたよ

 




〜アカキホシノセンシハ………〜

撤退しろだと!!
冗談じゃねえ!!
何の為の軍隊だ!!
護るべきものを護れねえで、何が軍隊だ!!

『地球にも木星蜥蜴らしき兵器が送りこまれたらしい。
 地球の防衛を優先させる為、一旦火星より退却し、体勢を立て直すと言う命令が下った』

だったら……一般市民を退却させるのが先だろうが!!

『我々にはもう時間が無い………我々が………いや………言いつくろっても仕方が無いな………
 逃げるだけで精一杯だ』

………結局自分の命可愛さだろ…………。

『中尉、口を慎み給え!!』

悪いな……俺はどうやら馬鹿らしい……。

『中尉!!何処へ行くのだ!!』

自分の責務を果たしに行くんですよ……少なくとも、後悔しない生き方って奴ができそうですからね………。

『待て!!中尉!!』

では………お元気で………少なくとも……嫌いじゃありませんでしたぜ……。



扉を出て、俺は自分の愛機の方へと走って行った。
慌しい奴等どもを尻目に掛け抜けて行く。
逃げ出そうとしている奴等が多い中で、無謀な戦いをし様なんて奴は俺以外に………何人かいるようだ。

『爆護(ひょうご)………お前……』

『俺も同席させてもらうぜ………人類初の異星人との合コンってやつをな』

そう言って、コクピットに入る俺。

『どうやらこの基地にも馬鹿野朗はいるみたいだな……』

『お前だって馬鹿野朗の一人だろうが!!』

『一人二人三人参加で………四人五人六人参加………七人八人九人集って……あっという間に三十人?』

呑気に替え歌を歌う奴。

『やれやれ……神風特攻隊とでも名付け様かねえ?』

『センス古いぞお前』

『ほっとけこのロリコンマニア』

『おっおまえなあ!!』

『おいおい初めて聞くぜ』

『ロリコンは犯罪だゾ……』

『人の話し聞け〜〜〜〜〜〜〜〜!!』

こんなやり取りをするもの、聞くもの。

『ふう……』

苦笑するもの……・・様々だ。
そして俺は……。
心の中で謝っていた。
あいつに……。

[如何して私の方みて言ってくれないのよ!!]

雨の中で別れを告げたあの時………あいつの声が胸に響いた。
そういえば………別れ話を持ち出した時………あいつの方を……俺は全然見ていなかったな。
見たら……決心が鈍りそうだった……。
お前いっつも言っていたよな……。
ユリカ先輩みたいになりたいってさ。
もし………火星に来てくれないか何て言ったら、お前悩みそうだったからな。
そして結局、俺と一緒に来てくれたのかもしれない………自惚れかもしれんがね……。
お前の夢……壊すのは嫌だったからさ………。
一緒に来てくれても………死んだようなお前を見るのは嫌だった……。
それに……。
ん?
おいおい………俺が一番未練かよ。
参ったなあ……。
ま……死んじまったら、時々お前の所に行くかもしんねえから………煙たがらないでくれや。

『そんじゃ……いこうぜ………。火星最後のゲリラライブにさ』

『イヤッホウ!!』

『やってやるぜ!!』

『よっしゃ!!』

『有終の美を飾るとするか………』

『レデ−スアンドジェントルメン!!ん?野郎しかいないって?細かいこたあきにすんな!!』

『木星蜥蜴に性別あるのか?』

『いいんだよ!!見てもわかんねえ奴は、全部野郎だ!!はい決定!!』

『うわっ!!この司会者最悪!!』

『おいおい……これでもニュ―スキャスタ−志望だったんだぜえ!!』

『落した会社に乾杯だな。出なきゃ今ごろ……』

最後に共に戦える奴が、こんな奴等で良かった………。
悲壮感がまるでねえ―いや少なくとも感じさせねえ―出撃に感謝したいぐらいだった。

そして俺は……その戦場で………奴に会った………。
はっきり言って、最悪だった。
仲間の攻撃なんざ、殆どダメ−ジらしきものなんざ与えられやしねえ。
逆にあちらさんの攻撃は、あれよあれよと言うまに、仲間を減らしていってくれる。
必死だった。
仲間を救うのに……自分が生き残るのにかな?
何故かって?
最後の最後を見届けたかったって所だな。

『ひょうご………』

『如何した?』

『戦艦は何処だよ』

おいおい………お前もか?

『おまえさんの左上だ………四十五度ってところか?』

『ありがとよ』

『元気でな……』

『特等席………用意して………待って……』

それが奴の最後の言葉だった。
爆発の衝撃を防ぐ為、ほかのフィ−ルドの部分が、薄くなる。

『無駄には……・・しねえ』

スピ−ドレバ―をフルスロットにいれて、戦艦めがけて突進する。

『おらおらおら!!いっちまいな!!』

その攻撃に、ミサイルを半分使い果たした。
その攻撃で………敵艦が爆発を起こし、周りを盛大に飲み込んで行く。

ピ−ピ−!!

『ん?』

デルフォニウムの燃料が、0になったらしい。

『やれやれ………ここまでかよ』

まだ敵は有象無象の如く現れてくる。

『二時間……か……稼げた方かな………』

イツキ………お前の笑う顔………もう一度………見たかったぜ……。
その時に、アサルトピットに男の声が響いた。

『くたばってない奴がまだいたか』

あ?


ド―――――――――――――――ン!!


次々と爆発を起こして行く木蜥蜴の群れ。
へ?
その時俺は、間抜けな面をしていたと思う。
いいや……絶対ッしていたな。
その爆発の中心には、見なれない機体が、出現していた。
六枚の黒い翼を持った青い機体。
その機体は、腕を組んだまま、全くって言って良いほど、動かなかった。
ただ………木星蜥蜴の群れだけが……なにかに落されていく。
そして、殆どの蜥蜴の兵器が落された時………ようやく動きを見せた。
手にサ―ベルのようなものを持った瞬間、俺の視界からは、奴は消えていた。

『な!!』

なんだこの機体は………・。
そして………俺は連鎖する爆発のおとを聞く。

『う………そだろ………』

それは……チュ−リップと蜥蜴の兵器が、この世から消滅したおとだった。

『おい………そこの馬鹿面をした、熊男』

突然通信路が開いた。
そこにいたのは、俺より1・2歳年下のような感じの男だった。
おい……。

確かに馬鹿面をしていたのは認めるがな!!
だがな!!

『ガキになんでそこまで言われなきゃ!!』

『俺は45だ』

よ……45?
へ………へえ?
若作りなんだね………・・。

『さ……さよですか』

うん………人間外見で判断しちゃいけないね。

『俺はもう行く……達者でな』

『ああ……あ?』

もう行く?
ちょっと待ておい!!

『行くって何処に!!』

『地球に帰るんだが?』

帰るってあ―た…………。

『ここ……火星よ』

『お前が呆けてなければ、火星だろうな』

あんたよりは無事だよ………。

『それで今何て言ったあんた?』

『地球に帰るとは聞こえなかったか?』

ああ聞こえましたよ……。

『正気ですか?あんたの意識?』

ここから地球まで、いくらあると思ってんだ?
最も早い戦艦で片道3ヶ月よ。

『お前が気にする事ではないな………お前が行く訳ではないのだから』

『ああそうですね……すいませんでしたね全く』

余計なおせっかいでした!!

『ところで俺の機体、もうウンともスンとも、いわないんですがね。
 どっかの基地にでも放りこんでくれませんかね』

『オモイカネ………火星の全基地の状況をこいつに話して遣れ』

《了承》

ん?
もう一人いるのか?
全く見えないんですけど………。

《現在………火星において基地として機能している場所は、何処もありません。
 木星蜥蜴の攻撃により、全ての基地が、全壊・もしくはその土台から消滅しています》

おい………それ信じろってのかい?
まあ………否定する根拠もないんだがね。
火星全土を覆うかの様にあのデカ物から出現して来た兵器の群れに攻めこまれちゃ、
無理ない事かも知れネエな。

《そして、撤退した将兵以外の生存者は、ここ半径500k以内では生存者約一名、
 100k以内では約1名、1000k以内では45名。
 その内重傷者25名軽傷者10名無事だった者10名。1万k…………まだお聞きしますか?》

どっちにしろ………絶望的か………。
信じるならば……だがよ。

『もういいや……ありがとよ』

正確かどうかは知らんがね。

《私の情報は、何時だって正確です》

………・。

『人の心に突っ込んでんじゃねえよ』

《私の勘ですよ》

『嫌な勘だな』

『誉め言葉と受け取っておきましょう』

ちっ!!
いい性格してるじゃねえか。

《それほどでも……》

………このやろう……。

『くだらん漫才は終わったか………もういいだろう………じゃあな』

ヤレヤレといった声で(それでも顔は眉一つ動かすことなく)喋ると、その機体が後ろを向いた。
と同時に、通信も切れる。
これから如何する?
飛び去ろうとする機体を見ながら考えていたが………。
中々動かない。
チッ!!さっさと行きやがれ。
と呟いた矢先、また通信路が、勝手に開いた。

『まあ………いいか』

何が良いんだよ………。

『お前に選ばせてやろう………このまま火星に留まるか。俺の元で働くか………さあ……どうする?』

………。
マアこんなふざけた話、普通は受けないだろうよ。
だが、あの戦闘力を見た時……俺の心になにかが灯った。
それに……火星にいても、多分俺の遣れる事は少ないだろう。
何にしても………俺には力が、無さすぎた。

『一つ聞きたい……』

如何にでもなれ!!とでも思ったのかもしれない。
まあ半分そんな気持ちがあったのは事実だよ。
けれどさあ。

『なんだ?』

『気に入らない軍人がいるんだが………殴ったら誉められる職場ですかね』

本当にね。

『詳しく聞かせろ……話によっては協力してやる』

……参ったね………本当にそんな職場かよ。
あまりにも上手い展開に笑いが暫くの間止まらなかった。
暫く笑った後、

『それじゃあ………さっそく』

人命救助に行きましょうか、と言おうとした時

『悪いが、人を助けている時間はない』

その男の声が、俺の耳に届いた。

『何だと!!』

『火星の状況を見るためだけに、来ただけだしな。
 この機体に乗せられるのは最低でもお前ぐらいだろうよ』

『けど!!』

『詳しく話すほど時間はないし信じなくても構わないが、暫くはこの地で戦闘はない』

『何でそんな事が!!』

あんたにわかるんだ!!
だが返って来た答えは、

『詳しく話してやる程、時間はないといったはずだ。聞こえなかったのか?』

だった。

『言っておくが、俺がここに長居すればするほど、火星の人間にとって、危険なんだがな』

見捨てるか、残るか。
奴は無言で、そう聞いてきている。
それに対して俺が出した答えは………………。