『時の流れに』アナザーアフター

〜戦神の継承者〜



第1話・『ただいま』から始まる物語



(いろんな意味で)驚愕のジャンプアウトから1ヶ月……

奇跡の生還を果たしたハーリーはピースランドの王城へと来ていた。

本当はもっと早く来たかったのだが、手続きやら事情聴取やらで今日までかかってしまったのだ。

ある一室に通されるハーリー。

そこにはテンカワアキトとその妻たち(総勢17名・笑)が一堂に会していた。

やっと帰ってきたという思いがハーリーの胸にあふれる。

皆、それなりに年をとっている。

10年という歳月が初めて感じられた。

時の流れに取り残された自分。

それでも変わらない、皆の暖かさ。

さまざまな思いがハーリーの胸に湧き上がる。

流れ出そうになる涙をぐっとこらえて、一言だけ、言った。

「マキビ・ハリ、ただいま帰りました!」

「「「お帰りなさい、ハーリー君!」」」


で、数時間後……中庭にて。

「10年経ったのいうのに腕は上がってない。貴様、何をやっていた?」

言うは「真紅の羅刹」天川北斗。

名前を見ればわかるとおり、ちゃっかりアキトの妻になっていたりする(笑)

本人いわく「枝織のためだ」と言い張っているが、そういう時は顔が真っ赤なため思いっきり信憑性にかける。

で、当のハーリー君と言えば……

「…………僕にとってはほんの数ヶ月しか経ってないのに………」

ぼろ雑巾にされていた。

あの不毛な戦争の終結直後、ハーリーは北斗に弟子入りした。

理由は………アキトを超えるため。

いまだにそれは達成されてはいない。

でなきゃ、こんなところでぼろ雑巾にされてはいないだろう。

昴気を扱える(つまり大戦時のアキトレベル)まで到達したが、目標ははるか遠い。

アキトも(北斗の愛情表現のおかげで)腕を上げてるのだから仕方がない。

だが、特訓を続けるうちに少しづつ心境の変化があった。

超えるべき壁というのは変わらない。だが、恋敵としてではなく………

あえて言うなら、師匠を超えようとする弟子。それが自分の心情に一番近い。

ハーリーはそう思うようになっていた。

だから、ルリの結婚も素直に受け入れられた。

いい顔になった、と北斗に言われたのはそのころだろうか?

「ふふふ、そうだったな。まあ、数か月分は上がっていたからな。よしとしよう。

 さて、俺はアキトのところに戻る。枝織が色々と煩いからな。」

「………ホントにそれだけ?」

刹那、北斗の体が朱金の輝きに包まれる。

膨れ上がった昴気を拳に集め地面に叩きつける!

「へ?………ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」

大量の土砂とともに空へと打ち上げられるハーリー。

「…………へぶしっ!」

地面に叩きつけられ、情けない声をあげる。

「……………口は災いの元…………がくっ」

それぐらいいい加減学習しろ。


「ふぅ………」

ごろん、と仰向けになり空を見上げる。

とうの昔に北斗はどこかへいった。今中庭にはハーリーしかいない。

「10年、か。」

変わってしまったもの。

変わらないもの。

「………僕は、置いていかれたんですか?」

あの、忘れえぬ日々。

楽しいこと、つらいこと。

いろんなことを共有した、日々。

でも………

「……今、みんなには僕の知らない時間がある。」

そして……

両親の事故死を1週間前に知った。

いざ墓の前に立っても何の感慨もなかった自分をなんと薄情な人間だろうと思ったのだが……

違ったのだ。

心のどこかでそれを拒否していた。

今日、改めて10年という歳月を思い知らされるまで……

今になって、初めて両親を失った悲しみが去来する。

「義父さん、義母さん……」

自然に涙が出てきた。

しばらくの間、声を殺して泣いた。


「……ん?」

誰かの近づいてくる気配。

涙を拭いて立ち上がる。

「よう。久しぶりだな、覚えているか?」

現れたのは、赤毛の少女。年のころは14〜5だろうか?

長い髪をうなじでまとめ、中性的な雰囲気を漂わせている。

大戦中の北斗に似てるが、抜き身の妖刀のような危険さは持っていない。

「……もしかして、香織ちゃん?」

「正解♪」

にかっと笑って少女−香織がこたえた。

天川香織。

アキトと北斗(正確には枝織)の娘。

母親がアレなため、育児はほとんどハーリーがやっていた。

10年前まではほとんどハーリーが世話をしていたといっても過言ではない。

そのため幼い頃(といってもハーリーにとってはついこの間のことだが)はハーリーのことをお兄ちゃんと呼んでべったりだった。

「いやぁ、びっくりしたよ。ちょっと見ない間に大きくなったもんなぁ。それも綺麗に。」

「……何いうんだよ、照れるじゃないかぁ〜」

照れ隠しの裏拳(昴気付)が飛ぶ。

「へぶし!」

安心しきってるところへこの不意打ち。

「………きゅぅ」

「あああぁっ!」

ハーリー、ノックダウン。


(お兄ちゃん、大丈夫?)

(お兄ちゃん、香織ね……)

(お兄ちゃんだぁい好き!)

(お兄ちゃん、香織が大きくなったら……)

大きくなったら、なんだっけ?


「ん………」

「気がついたか?」

目の前に香織の心配そうな顔。

どうやら香織が介抱してくれたらしい。

後頭部にあったかいもの。この体勢から察するに膝枕……

「ん? 大丈夫。

 ちょっと稽古のダメージが残ってたかな?」

「残る? ダメージが?

 とてもハーリーのセリフとは思えないな。」

そう言って笑う香織。

「おひおひ、いくら僕だって不死身じゃないよ。」

「え?

 皆の話から考えても俺の記憶でも、どう考えてもハーリーは不死身って結論が出る。」

そりゃあナデシコ時代は心身共にいじめぬかれたし、

そこで鍛え上げられたからこそ、あの地獄の特訓も切り抜けられたんだけど。

いくらなんでもそこまで化け物じゃない。

苦笑するハーリー。

だが、今までの会話にちょっとした違和感を感じる。

「ねえ、香織ちゃん……」

「ん? なんだ?」

「言葉遣いが男っぽくなったのはやっぱり……」

「お察しのとおり、母様のせいだ。おまえがいなくなってから散々体術を仕込まれて、な。

 ついでに言えば、心構えも。

 ……やっぱり変か?」

「いや、今の香織ちゃんには似合ってると思うよ。すごく自然で。」

「そ、そうかぁ……
 よかった、変に思われないで。」

自分にしか聞こえないように香織がつぶやく。


「なんか言った?」

「い、いやなにも。」

「?……まあいいや。

 それと、もう『お兄ちゃん』とは呼んでくれないの?」

茶目っ気たっぷりにハーリーが聞く。

「……!!!!!」

顔を真っ赤にして立ち上がる香織。

当然膝枕していたハーリーは……

ゴンッ!

と後頭部を地面に打ち付ける

「……ひどいや香織ちゃん……」

起き上がって後頭部を抑えるハーリー。

自業自得だと思うぞ。

「……ふん!」

ほら、香織もすねてる。

……まあ、顔を真っ赤にしているのはご愛嬌だが。


2、3度大きく深呼吸する香織。

「さて、組み手でもしてくれないか?

 横から見ていることは多かったが……母様の一番弟子の実力、この身で確かめたい。」

「香織ちゃん、いいのかい?

 僕は……」

「木連式柔口伝・武羅威、か?

 心配無用!」

言うが早いか香織の体が朱金の輝きに包まれる。

「香織ちゃんもそこまで達していたか…… やれやれ、武羅威ってほとんど伝説の域でしょ?

 でも、手加減は無用ってことだね。」

起き上がってハーリーの顔つきが変わる。

武人の顔。強い奴と出会えた歓喜の顔。

「そういうことだ。

 それと、辰斗と呼んでくれ。それが俺の……武人としての名だ。」

「やれやれ、師匠……何吹き込んだんだか。」

それじゃヤマダさんと一緒ですよ、と心の中で突っ込んでおいてから……

「じゃ行くよ、辰斗!」

緑の輝きに包まれ、香織……いや、辰斗との間合いを一気に詰めるハーリー。

そのまま一気に正拳を打つ!

「なんの!」

辰斗はそれを左で受け流し、右で打ち上げるように顎を狙って肘を放つ。

それをスウェーでかわし、そのままフック気味の掌打を打つハーリー。

バックステップでかわし、間合いを取り直す辰斗。

「やはり母様の一番弟子だ……面白い。」

「お褒めに預かり恐悦至極。……でも、ホントに面白いのはこれからだよ。」

かつてピースランド王城で行われた死闘が再現されようとしていた。


それからどれぐらいの時が経ったのだろう。

いつ果てるともない緑と赤の競演。

お互いに全力を尽くす攻防が続く。

(次の一撃で……決まる!)

仕掛けたのは辰斗の方だった。

間合いを詰め、渾身の蹴りを放つ!

ハーリーはそれを受け止め、そのまま懐に潜り込み……掌打を放つ!

(しまった!)

だが、掌打は寸止めされた。

「僕の勝ちだね、辰斗。

 でも紙一重ってとこかな?」

微笑を浮かべるハーリー。

「紙一重、か。だとしたらずいぶんと厚い紙一重だ。」

そういう辰斗にも微笑が浮かんでいた。


もう夜もふけていた。

今は二人で空を見上げて話をしている。

この10年のこと。

危機一髪だったナデシコDのこと。

あの大戦のこと。

そして、幼い日の思い出のこと。

「そ、そうだ。みんなの前では辰斗って呼んでくれ。恥ずかしいから。

 二人っきりのときは香織でいいからさ。」

顔を赤らめていう香織。

「ん、わかったよ香織ちゃん。」

言葉どおり受け取って、さらりというハーリー。

香織は恥ずかしくてハーリーが直視できない。

「ところでさ、香織ちゃん。

 昔……大きくなったらって約束したよね。」

「え! ああ……」

子供の口約束かもしれない。

でも、香織にとっては神聖な誓い。

それをハーリーが覚えていた。

(それって…それって……)

軽い混乱状態に陥る香織。

「あれ、大人になったらなんだったっけ?」

ゴガン!

そんな擬音と共に100tの鉄塊を頭に食らったかのようなショックを受ける香織。

「知るかぁ〜〜〜!!!!」

「おげひゃぁ〜〜〜」

朱金の輝きに包まれた見事な右ストレートを食らって吹っ飛ぶハーリー。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

かつてのハーリーを彷彿させる泣きダッシュで走り去っていく香織。

一方ハーリーは……

「な…んで……?」

中庭の片隅でぼろぼろになっていた。


そんな様子を離れてみている二つの影。

「やれやれ前途多難だな、辰斗……香織の奴も。」

こちらは北斗。ということは……

「そうだな。

 ハーリー、おまえ鈍すぎるぞ。」

おなじみ「漆黒の戦神」「稀代の女たらし」テンカワアキトである。

「おまえが言うな、おまえが。

 おまえもあんなものだったぞ。」

「そ、そうなのか?」

自覚があれば妻を17人娶るなどという事態にはならなかったに違いない(笑)

「しかし……

 ナデシコY、本当に出航させるのか?」

「ああ………あの二人にも乗ってもらう。

 ジュピターゴースト………嫌な予感がするんだ。」

「取り越し苦労ならいいがな。」

「ああ。」



−次回予告−

ハーリーです。

なんだかんだあったけど、いつまでも遊んでいるわけにもいきません。

お仕事お仕事ってなわけで、ナデシコYに乗って木星までいくことに。

オモイカネやダッシュもいっしょなのは嬉しいですね。

へ? 香織ちゃ……辰斗も一緒なの?

それに君達は……


次回、戦神の継承者

『運命の出会い』がいっぱい


カズシさん、僕は無事に木星までいけるんでしょうか?

(その予定はありません・笑)




−−−−−−あとがき−−−−−−

RWAK(以後R)「……書いちゃったね」

ハーリー(以後H)「書いちゃいましたね」

R「いや〜、Benさんの『時の流れに』本編とBA−2さんの『ハーリー列伝』にはまってさ〜」

H「書きかけのナデシコSS放り出したんですよね。」

R「……面目ない。どこにも発表してないのが救いだけど……」

H「放り出したほうで活躍してる『桃色の破壊神』には気をつけてくださいね。」

R「あうあうあう〜。こっちのほうがインスピレーション受けまくりなんだよ〜」

H「でも、こっちは僕が主役なんですよね。」

R「そ。でも俺的位置付けではこれ『アナザー』なんだな。正伝はハーリー列伝のほう。」

H「へ? 何で?」

R「おまえがかっこいいから。」

H「…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

R「あ〜ら。18にもなって泣くなよ……

  最後に。ハーリー列伝の設定流用を快諾してくださったBA−2さんに感謝の意を表してこの場を閉めさせていただきます。

  ありがとうございます。これからもがんばってください。」

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

RWAKさんからの投稿です!!

本当に悟ってやがるよ、ハーリーの奴(爆笑)

でも、御両親が亡くなっていたのはショックみたいですね。

ま、誰も彼もがハーリーのように不死身ではありませんからね。

でも10年・・・そうか、これで香織ちゃんが範囲内か(核爆)

ついでに、あの女の子もそうなんでしょうね〜(ニヤリ)

 

では、RWAKさん!! 投稿有難うございました!!

 

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