機動戦艦ナデシコ

『影(シャドウ)』

 

 

 

 

 

ボソンジャンプでナデシコから脱出した

テンカワ・アキト(未来)とラピス・ラズリは、その後何をしていたのか?

 

 

 

 

 

 

誰もいないユーチャリスのブリッジでは、虹色の光が出てきた。

その光の中からアキトとラピスの2人が出てくる。

 

「なかなか面白かったな」

 

ラピスがアキトに言ってきた。

 

「そういえば、あのミユキに渡した物は何だったの?」

 

「俺の思い出さ………」

 

「ふ〜ん……」

 

ラピスに疑いの目を向けられながら慌てて目的地の状況何かを調べる。

 

「そういえば、何で火星に行くのにユーチャリスを使っていくの?」

 

「ああ、それは火星に残されている人達を助けるためだ」

 

「ボソンジャンプの方が早いのに」

 

「火星出身の人じゃない人がいるかもしれないからな」

 

普通の人はボソンジャンプに生身では耐えられない。

それを考えてアキトは火星への出張をする事にしたのだ。

 

「とりあえず、ボソンジャンプで火星まで行くぞ」

 

「ジャンプフィールド形成」

 

アキトは小さく呟いた。

 

「ジャンプ」

 

 

 

 

「ビッグバリアの核融合炉の修理は、大幅に遅れています」

 

「う〜む、ナデシコはもうすぐ火星か

 ユリカは元気にしとるかのう」

 

そんな軽い言葉にめげずに報告を続ける。

 

「チューリップの動くのを知っていた人物の調査は、芳しくありません」

 

「うむ、どうやら人物の特定は、不可能のようだな」

 

「ええ、通信の発信源すら特定できなかったんですから」

 

「まあ、そっちはいい。

 それでナデシコの方は、無事なのか」

 

コウイチロウの目の色が変わった。

悪い方にです。(完璧に親バカの目)

 

「宇宙に出て寄ったコロニーでテロリストに攻撃されました」

 

「な、何っーーーーーーーー!!」

 

暑苦しい顔が報告している部下に近づく。

 

「あの、顔を少し遠ざけてくれませんか?」

 

「それで!!

 ナデシコはどうなったんだ!!」

 

「無事に火星に向かいました」

 

「そ、そうか!!

 ユリカが艦長をしているから信じてはいたがな」

 

コウイチロウの言葉を聞きつつ部下は思った。

 

今の内に転職先を考えた方がいいかも……。

 

 

 

 

 

 

ボソンジャンプした後に見た光景は当たり前かもしれないが火星だった。

 

「ここであいつを殺したんだったな……」

 

俺は北辰との戦いを思い出していた。

 

一体あいつはこの頃は何をしていたんだろうな?

 

ふとそんな事を思った。

クリムゾンと木蓮の繋がりは北辰がしたのかもしれないな。

 

「アキト、隠れ場所はどこなの」

 

ラピスが聞いてくるのが聞こえた。

 

過去のラピスはクラウンが保護した。

北辰にさらわれなければラピスも俺の復讐に付き合う事もなかったからな。

だが、ラピスに変化の兆候が見られない……。

 

「ユートピアコロニーの下だ」

 

「それじゃあ向かうね」

 

過去のラピスに干渉したのだから

ラピスに変化が現れないといけない筈なんだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかの暗い会議室でクリムゾンの幹部達が話し合っていた。

画面のモニターには、自分達の送りつけたスパイの持ってきた情報が映っている。

 

「クラウンの目的は、一体何なのだ?」

 

「それはいずれ分かる事だろう。

 しかし、クリムゾンは技術競争から弾き出されてしまいましたな」

 

「その競争をしている筈のネルガルもクラウンが

 何をしているのか気付いてないみたいです」

 

「我々も急ぎ対策を練らねばならない

 1年近く遅れていると見て良いだろう」

 

「引き続き見張りを続けるように言っておけ」

 

 

 

 

 

 

ユートピアコロニーの上へとやって来た俺は、地上へと下りた。

ラピスはユーチャリスで待たせている。

 

「確かこの辺だったかな?」

 

ボコッ

 

地面がなくなってアキトは落ちるが、

予想済みだったので楽に着地に成功する。

すると拍手が聞こえた。

 

「いらっしゃい、見事な着地ね。

 とりあえずコーヒーでもごちそうしようか?」

 

「コーヒーはいらない。

 イネス・フレサンジュ博士、あなたと話がしたい」

 

「私を知っているという事はネルガルの社員の人?」

 

「残念だが、俺はネルガルの社員じゃない」

 

「まあいいわあなたの話を聞きましょう」

 

イネスの後ろから銃で武装した男達が10人程ぞろぞろ出てくる。

 

「さあ、話してもらおうか」

 

「人に物を頼む態度じゃないだろう」

 

「不信人物には、この扱いがお似合いだと思うけど」

 

「人権侵害だと俺は思うぞ」

 

「別に私は、話してもらわなくてもいいのよ」

 

「そうだな、あなたに聞いてもらいたい事は、

 あなたを置いて他の連中を連れていくという事だ」

 

その言葉にイネスは驚いた。

 

「なんで私を置いていくの」

 

「その事については気にするな」

 

アキトが手を振りながら言ってくる。

しかし、イネスが納得する訳が無い。

 

「でも私はこんな所で死ぬつもりはないわよ」

 

アキトはその事かとでもいいたげに言ってきた。

 

「あなたは残っていればネルガルの戦艦が拾ってくれる」

 

「……ナデシコね」

 

「一応確認の為にもう一度言っておくぞ

 あなたにしてもらいたい事はネルガルの戦艦に乗ってもらいたい」

 

「………無事に火星から地球に戻れる保証がないじゃない

 まあ確かにそれぐらいしか他には戻れないみたいだけど」

 

しかし、ネルガルの戦艦に乗る事が頼みごとだとわね。

 

「何か疑問があるみたいだな?」

 

そんなイネスの考えをみぬくみたいに問い正してきた。

 

「その頼みあなたに何かメリットがあるとは思えないからよ」

 

「メリットね、その事については自分で考えろ」

 

そういって立ちあがって周りを見渡す。

 

「ここにいる連中で全員か?」

 

「もっと広い所でまだ人がいるわ

 ここから出たら木星蜥蜴に襲われて殺されるかもしれないからね」

 

「じゃあ全員俺達の戦艦に連れてきてくれ」

 

「それは無理よ」

 

「ほう、どういう事ですか?」

 

頭が回ると思ったけど、ここまでみたいね。

 

説明してあげるわ!!

 あなたみたいに怪しさが滲み出ているような人に

 付いていくとろくな事にならないと思っているからよ」

 

「俺は変態か?」

 

「もったいぶらずにちゃんと説明しなさいよ」

 

イネスがこんな質問をしたのは、

アキトの服装には何か仕掛けがしてあるのではないかと思ったからだ。

答えは、簡単に返って来た。

 

「そうだな……この服には仕掛けがしてある」

 

「どんな仕掛けがしてあるのよ」

 

「小型のディストーションフィールドを発生させる事ができる」

 

「小型のディストーションフィールド……」

 

まだ技術的に無理があったから製作できなかった物だ。

 

イネスが驚いているとアキトはニヤニヤしている。

 

「そんなのをしていたら銃なんて意味がないわね」

 

「命を狙われているからこの格好は仕方なくしている訳だ

 とりあえず奥にいる連中も連れて行かせてもらうぞ」

 

そういって去っていこうとしているアキトを呼びとめた。

 

「ちょっと待ちなさい」

 

それを無視していこうとしているので少し声を上げた。

 

「待ちなさい!!」

 

出口の所でこちらに振り向いて問い掛けてきた。

 

「まだ、何か聞きたい事があるのか?」

 

「いいえ、あなたに言っておきたいことはあるけどね」

 

興味を引かれたらしく続きをアキトはうながす。

許しをもらったので思った事を言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが死にたがっているみたいだからね」

 

 

 

 

 

「…………………………!!」

 

驚いているみたいだったが、すぐに立ち直って何か納得しているみたいだ。

 

「ご忠告どうも、だが俺はまだ死ぬ気はない」

 

「わたしの言った雰囲気は、

 あなたが心の奥底で思っている事だから表面的には全くわからないけどね」

 

「俺の奥底で思っている事か……」

 

「自分で悪いと思っている事をしているのに何で生きているのだろうとかよ」

 

まだ分かってないと思ったのかイネスは親切心を出す。

 

「もっと詳しく的確かつコンパクトに教えてあげましょうか?」

 

懐かしそうにしながらアキトは承諾した。

 

「ああ、そうそうあなたに感じた事はまだあったわね」

 

「何かまだあるのか?」

 

「君に会ったときに何か懐かしく感じたのよ」

 

「……俺はあんたに会った覚えはない」

 

「教えてもらいましょうか名前は何て言うの?」

 

天空ケンだ」

 

もうアキトは偽名がスラスラ言えるレベルにまで達していた。

呼びかけられてもしっかり返事ができるだろう。(笑)

 

「そう…わかったわケン君、

 君には覚えがなくてもわたしがあなたを知っていたと言う事もあるのよ」

 

そこで興味がなくなったのか奥へとまた歩き始めた。

 

「運がよければまた会えるかもな」

 

歩きながらイネスに向かって言ってきた。

そして消えるのを見届けてからイネスは思っていた事を呟いた。

 

 

 

 

「………記憶の手がかりをわたしが放っておくわけないでしょうが」

 

 

 

アキトはずっと顔がばれないように、ガスマスクをしっかり顔に付けていた。

それだから変態に間違われるんだって。(笑)

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

あとがき

 

 ここまで読んでもらっているみなさん有難うございます。

 このようなへっぽこ小説でもみなさんが楽しんでもらえれば嬉しいです。

 

 火星にナデシコが落ちる前にアキト(未来)が書きたかったんです。

 この第9話は、アキト(未来)が大活躍するお話になればと思ってます。

 大活躍とは、いかなくてもアキト(未来)中心に進みます。

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

Sakanaさんからの投稿第十一弾です!!

アキト(過去)とイネスさんの再会ですね。

う〜ん、確かに言動が怪しいアキト君ですからね〜

警戒するのは解ります。

が―――

ガスマスクを付けたままなら、Benでも警戒しますって(爆)

最後の最後で、このオチには笑いましたよ(苦笑)

 

ではSakanaさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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