機動戦艦ナデシコ

『影(シャドウ)』

 

 

 

 

 

ユーチャリスが火星にいるときに問題は発生した。

 

 

 

アキトが火星の生き残りの人達をあらかじめ持ってきた鋼鉄の檻の中に

ぶちこんでいる時にイネスが言った言葉にアキトは驚いた。

 

「あ、言っとくけど私があなたの言うとおりに戦艦に乗ると思ったら大間違いよ」

 

「え、乗ってくれないのか?」

 

「そっちの戦艦の方が楽しそうだからよ」

 

そういってイネスはユーチャリスを指さす。

 

「困るぞ、あっちの戦艦に乗ってもらわないと」

 

「あら、私が乗ったからってそんなにその戦艦に変化……

 この場合は生存率と言った所かしら?変わらないわよ」

 

「そういうのとは、関係無しにあっちに乗ってもらいたいんだ」

 

「じゃあ、いいわよ無理やり乗るから」

 

「ああ、勝手にしろ」

 

この言葉をあとになって後悔した……

 

 

 

 

 

 

イネスが遠くからアキトに向かってロケットランチャーをかまえている。

 

「目標発見…照準セット……発射!!」

 

  ヒュ〜〜〜〜〜!!  ドカ〜ン!!

 

「のわーーーーー!!」

 

 

 

「……どうやらギリギリのところで避けたようね」

 

「本当だ、ディストーションフィールドでしっかりガードしたみたいだね」

 

ラピスが双眼鏡でアキトの様子を見ながらイネスにそう言ってくる。

 

「でも、あなたこっちの味方でいいの?」

 

「こっちの方が楽しめそうだから」

 

「そうね、楽しいオモチャもあることだし」

 

イネスが横目でアキトのいると思われる方向を見る。

 

「そうだね」

 

 

 

 

 

そして今度はアキトがユートピアコロニー跡地で

まだ生き残りが残ってないか調べているときだった。

 

「やって来たよ」

 

「こっちの準備は万端よ」

 

「じゃあ撃っちゃって」

 

      ドガガガガガガガガ!!

 

「うわっ!!           ドガガガ!!

    ドガガガ!!          ぎゃあ!!

     のわ〜!!         ドガガガ!!」

 

イネスがラピスから受け取ったマシンガンから放たれる弾丸は、

アキトの体へと勢い良くぶち込まれていった。

そしてイネスは弾を撃ち尽くしてから言った。

 

「まったく、大げさね

 ディストーションフィールドで守られているでしょうが」

 

「何が大げさだ!!

 そのマシンガンはディストーションフィールドを

 つらぬけるように改造している物だぞ!!」

 

「えっと、(汗)

 つまりディストーションフィールドは意味がなかったわけね」

 

「……防弾チョッキでなんとかしたものの」

 

「それって防弾にもなっているわけね」

 

イネスは感心しながらマシンガンを地面に置いた。

 

「だいたいどこからそんな物騒な物を持ってきたんだ?」

 

「え、あなたの連れの子が……あ、あれ?」

 

イネスがラピスのいた筈のところを見るとラピスは

イネスを置いてもうその場から逃げていた。

 

「ラピスなんてどこにもいないぞ」

 

「お、おかしいわねぇ〜、(や、やるわね、あの子)」

 

「今度から気を付けるんだぞ」

 

アキトは愚痴をブツブツつぶやきながらその場を離れていった。

そして、姿が見えなくなってからラピスが物陰からコソコソとイネスの方にやって来る。

 

「良かったね、怒られなくて」

 

「そうね、でもこの程度では諦めないわよ」

 

「そうそう、その意気だよ!!」

 

「「えい、えい、おーー!!」」

 

 

 

 

 

「まったく、イネスさんにも困ったもんだな」

 

アキトがブツブツ言いながら何かを土に埋めている。

 

待てよ、確かナデシコに乗ったばかりの頃になぜなにナデシコとかいうのを

やっていたよな……もしかして本当は、騒ぐのが好きだったのかも。

 

「ムッ!!」

 

アキトが何かを埋めていた場所から横へと飛ぶ。

今までいた場所へとネットみたいな物が降って来る。

 

  バリバリ!!   バリバリ!!

 

見事に火花がスパークして目が痛くなりそうだ。

 

「こんな物一体どこから調達しているんだよ……」

 

「それは私が研究していた物よ」

 

その言葉のする方を見るとイネスがラピスを連れて崖の上に立っている。

 

「何で崖の上に登ったんだ?」

 

「人間は眺めが良いところ

 つまり一番高いところを本能的に選ぶものなのよ」

 

「こじつけじゃないのか?」

 

「それはともかく良くかわせたわね」

 

「無視するなよ……」

 

「あなたがその……ユーチャリス?に乗せてくれないからでしょ」

 

「それじゃあ……

 明日までに俺を捕まえたらユーチャリスに乗せてやるよ」

 

「本当……それじゃあ、もらったわね」

 

            ポチッ

 

その言葉と共にイネスが右手に持っていたスイッチを押した。

しばらく静寂がその場を支配する。

 

 

 

「な、なんのスイッチなんだ?」

 

「この私が火星で暇つぶしに研究した

 ジャイアント・バッタ、通称GBの発動のスイッチよ!!」

 

「……どうやってバッタを手に入れたんだ」

 

「軍が壊して研究所に運び込まれたバッタを研究して改造したのよ」

 

「そこまでいくと

 もう立派なマッド・サイエンティストだな」

 

そういったアキトの言葉にイネスの額に青筋が出ている。

 

「ふっふっふ、もう命乞いをしても無駄よ」

 

「あ、来たみたいだよ」

 

ラピスが指差す方を見るとエステバリスぐらいの大きさのバッタがやって来る。

見るとかなりの重装備だ。何故か主砲みたいな物がバッタに引っ付いている。

 

「おいおい、もう原型がないぞ」

 

アキトのそのつぶやきは、無視された。

 

「いけ!!GB!!」

 

「ちっ!!」

 

アキトはその場からもう一段下へと落ちる。

そして一瞬後に飛び降りる前にいた場所にGBが放った一回り大き目の

サイズのミサイルが爆発を起こす。

 

「ダッシュ、おい、聞こえているか?」

 

『何か用ですか』

 

「フラクタルを出せ、場所はこっちから信号を出すからその場所へと向かわせてくれ」

 

『何機ですか?』

 

「1機でいいがなるべく早く頼む」

 

『分かりました』

 

そういうとコミュニケを閉じてダッシュとの会話をやめる。

 

 

 

 

 

アキトがGBに追いかけられているのを見ながらイネスは上機嫌だった。

 

「そこよ、もうじれったいわね」

 

もはや目的を忘れてアキトを倒す事にだけ燃えているようだ。

そこにラピスの言葉がイネスの耳に入った。

 

「あっちゃ〜、アキトがフラクタルを1機こっちにダッシュに呼ばせたみたい」

 

「フラクタル?一体何の事?」

 

「バッタに似たようなロボットの事だよ

 形はバッタみたいじゃなくて人の形をしているけどね」

 

「似たような?AIで動いているの?」

 

「ちょっと構造が違うの

 それよりもうそろそろ来るよ」

 

 

 

 

 

「来たな」

 

アキトがGBの放ったレーザー光線をディストーションフィールドで防いで空を見た時だ。

空にサツキミドリ2号で5機の黒い機体のうちの1機がアキトへと向かってくる。

 

       ドカン!! ドカン!!

 

アキトはブラスターから放たれるディストーションフィールドの塊でGBを牽制しながら

向かってくるフラクタルへと乗りこむ。

 

「これに乗るのは、実験のとき以来だな」

 

アキトが右手をIFSのコントロールパネルに置くとIFSが光り始めた。

 

「それじゃあ、いきますか」

 

GBが放ってくるミサイルを薄い布のようなディストーションフィールドで

別の方向へと誘導しながらGBの周りで持っている銃で撃った。

 

   ガン!!   ガン!!

      ドガン!!

 

GBの主砲がダメージに耐えきれずに爆発した。

 

「負けたね」

 

ラピスがイネスに言った。

イネスは、その言葉を聞かずにフラクタルをずっと見ていた。

フラクタルの手に機体を覆っていた布のようなディストーションフィールドが集まる。

 

「終わりにするか」

 

         バキ!!

 

GBをフラクタルがおもいっきり強くぶん殴られて崖の下へと落ちていった。

 

ドカアアアアアン!!

 

 

 

 

 

「何なのあれは?

 エステバリスではないわね」

 

「そうだよ、名称はフラクタル、強さは今さっき見ての通りだよ」

 

「ディストーションフィールドを

 布みたいに柔らかくする技術を持っているというの?」

 

「まあまあ、落ち着いてよ、

 その謎を知りたかったら明日までにアキトを捕まえないといけないよ」

 

その言葉を聞いてイネスは、まだラピスに何か言いたそうだったが

ラピスを置いてアキトの元へと走っていった。

 

「……好奇心旺盛な人だね」

 

 

 

 

 

結局、イネスはアキトを捕まえることができなかった。

あの後もイネスはいろいろな自分の発明品を駆使したが

全てアキトを捕まえることはできなかったのだ。

 

「ちょっと、本当に置いていくつもりじゃないでしょうね」

 

「え、置いていくつもりだけど?」

 

「ナデシコには乗らないわよ」

 

「いい加減、あきらめてナデシコに乗ってくれよ」

 

「あなたこそ、そっちに乗せてくれてもいいじゃない」

 

「これで勘弁してくれ」

 

「嫌よ」

 

「あーもう!!

 どうすればいいんだ!?」

 

イネスはアキトのその様子を見て笑っている。

 

「何がおかしいんだ」

 

「私なんかかまわずに行けば良いのに行かないからよ」

 

「……個人の意見を尊重したんだけど」

 

「ぷっ、いいわ、

 ナデシコの戦艦に乗ってあげても」

 

「え、本当か!?」

 

「そのかわり……今度会うときは覚えてなさいね」

 

「え、何がだ」

 

「なんでもないわよ、

 それじゃあ、また会いましょう」

 

「あ、あぁ」

 

イネスが去っていくのをアキトは呆然としながら見ていた。

 

 

 

 

 

 

ラピスはユーチャリスからその映像を見ていた。

 

「……何やってるんだか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 ふと、イネスさんがナデシコに行く前に研究をしてない筈がないと思いました。

 彼女が今まで開発していた(?)物を出してみたいと思って書きましたが、

 どうでしたでしょうか?

 彼女の実力があれば一杯面白い物が出せると思ったんですが、

 何時の間にかフラクタルのお披露目会になってしまいました。(笑)

 サツキミドリ2号からま〜ったく登場してなかったので

 これはやばいと思って登場しましたが……遅すぎですか?

 しかし、このアキト(未来)は軽いですね。(笑)

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

Sakanaさんからの投稿第十二弾です!!

何だか人の消えた火星で、思う存分遊んでますね・・・この人達(苦笑)

不思議なのは、どうして木星蜥蜴達がこの騒動を察知できないのかですが・・・

ま、ユーチャリスが睨みを効かせていたんでしょうね(笑)

しかし、イネスさんもう全開ですね。

問答無用でマシンガン攻撃・・・って、普通の人間なら死んでるって(汗)

でも、結局火星に残ってくれましたね。

 

・・・やっぱり、最後までガスマスクをしてたのか、アキトよ?(爆)

 

ではSakanaさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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