薄暗い部屋の中に轟音が響いた。
窓ガラスに穿たれる穴。
奇声を上げながら逃げていく猫。
そして

「…朝か…」

起きるアキト。
彼の一日が始まる。





猫の発した物音に思わず銃弾を放ったアキト。
別段それを気にするようなことは無く未だ硝煙の匂いがする中着替え始める。
さすがに二日目と言う事もあってか前日みたいに戦闘服を着込んだりする事はしないようだ。
制服に着替えたアキト。
さて朝食をと思ったときに戸が叩かれた。

「こんな朝から誰だ」

と言いながら玄関に向い戸を開けるアキト。
そこには見知らぬ青年が立っている。

「ちょっとあんた何朝っぱらからでかい音出してんだよ!」

どうやら先程のアキトが撃った銃声についての抗議のようだ。

「でかい音か…アレは目覚ましだ」
「はぁ?」

目覚ましというが反対に永眠しかねないと思うが。

「め・ざ・ま・しだ!!」

鬼気とも呼べる雰囲気を放つアキト。
それに怯え青年は言う。

「ははは…そう、目覚ましね。うん分かりましたそれじゃ僕はこれで…」

静かに戸を閉め立ち去っていく姿を見ながらアキトは嘆息した。

「やれやれ、たかが銃声如きで何を騒ぐのか…」

たかがねぇ……。

「むっ!いかんもうこんな時間だ遅刻してしまう」

といって鞄を持ち急いでアキトは学校へと向うのであった。

 

 

 

 

すれ違う人間が目を見張るような速度で走り学校へとつくアキト。
当然遅刻などではない。
靴を履き替え教室へと向うアキト。
昨日の噂が広まっているのか誰もがアキトを避け道をあける。

(…なぜみんな道をあけるんだ?……そうか遅刻しそうな人間だと思って道をあけてくれるのか)

と昨日の行動を一切不自然なものと思わずというよりは気づかず見当違いな答えと辿り着いている。

「アキト君」

そんなアキトに声を掛ける者がいた。
アキトが後ろを振り返ると。

「確か…コトネだったな」
「憶えていてくれたんだ…」

そうそこにはコトネとミズキがいた。
コトネは少々怯えた表情をしミズキはぶすっとした表情をしている。

「あの…おはよう」
「おはよう」

と双方挨拶を交わすがコトネは怯えを含んだ声でアキトは何処となく陰気な声だ。
そして用はそれだけかと教室へと向うアキト。
それを引き止める声が響く。

「アキト君…一緒に教室いかない?」

そんなコトネの言葉にミズキはマジ?といった表情をするのだがコトネは気づかない。

「…かまわんが」

アキトもまたその表情には気づいているのだが問答無用で無視をする。

「うん!じゃ一緒に行こう!」

喜色満面を全面に出しアキトと連れ立って教室へと向うコトネ。
その後ろをぐわーっと言った表情で追いかけるミズキの姿がまた対照的であった。

 

 

 

 

二人と一人が教室へと入るとまた注目の的であった。
女子は何で?といった目で。男子は…まぁ言わずとも分かると思うがすばらしい嫉妬の目であった。
当然アキトはそんな視線を精々敵意があるなといった程度でしか認識していない。

(ぬぅ…なぜこんな敵意を帯びた目で見られるんだ?俺は『普通』にしているのに)

やっぱり気づいていない。
取り敢えずは無視をし席に座るアキト。
十分ほどすると教師が入ってきた。
アキトは忘れているが女性の教師である。
それも美人でどこか気の強そうな…。
とここまで書けば読者諸君には分かってもらえると思うがまぁ…犠牲者X号である。

「さてみんなおはよう…私の名前忘れている人もいるだろうからもう一度自己紹介するわね」

忘れているのあたりで男子の大半がそんなことないという。もちろんアキトは言っていない。

「ま一応よ一応。さて、私の名前はというとスメラギカナコ、歳は秘密、スリーサイズも秘密、趣味はまぁ読書かしら、質問は昨日したしこんなところね」

と教室を見回し言うカナコ。

「それじゃあ今日はみんなの自己紹介ね。じゃあ前の人から順にね」

と自己紹介がはじまる。
脇役の自己紹介はカット。でアキトの番となる。
みんなアキトの番となると一斉に静まり返った。

「…テンカワアキト…歳は二十…もとい十五だ。趣味は破壊工作とエステの操縦、コロニーを落とす事以上」

と一度は言葉を切るがふともう一度口を開く。

「……ごくごく普通の十五歳だ…」
「「「「「「「「「「そりゃ嘘だ!!」」」」」」」」」」

とクラス中の人間に突っ込まれたじろぐアキト。

(なんで!?)

と思うあたりだめだめだろう。
というかその趣味はなんだ。
とまぁ大したことも無く自己紹介は続きコトネの番となる。

「カンヅキコトネです。趣味はピアノとクラシックを聞く事です」

鈴が鳴るような声に男子(アキト除く)は顔をだらしなくにやけさせている。
で次。

「ココノエミズキ。趣味は空手です」

と非常に短い紹介をし終える。
ちなみに自己紹介中の男子の声を拾ってみると…。

「いいよなぁコトネちゃん。もうなんか守ってあげたくなるって言うか…」
「ミズキちゃんも捨てがたいぜ、なんかあのボーイッシュな感じがそそるって言うか…」
「カナコ先生…僕を個人授業に誘ってくださいぃ…」

という健全というべきか不健全というべきかそんな声が拾える。
だがそんな彼等に共通するもの。

((((((((((((((((コトネちゃんの心を奪ったテンカワアキト許すまじ!!)))))))))))))))))

であった。
思わず悪寒を感じるアキト。
だがその理由については決して気づかないのであった。

 

 

 

 

自己紹介も終わり授業へとはいる。
教師は男の教師へと変わっている。
一限目は物理のようだ。

「……よってこうなるわけだ」

と教師が内容の説明を行っているがアキトは全く聞いていない。
頬杖をつき窓の外を見ているだけだ。
そんなアキトを見咎める教師。

「テンカワ!ここの答えはなんだ」

さぁ答えてみろといわんばかりの笑みを浮かべながら言う教師。
アキトはめんどくさそうに息を吐きながら言った。

「わからん」

はっきりいって解らないという態度ではない。
威圧感たっぷりにこれが正しい答えといわんばかりに堂々した態度だ。

「わからんって態度じゃないぞお前」

アキト威圧感に少々びくつきながらも返事を返す教師。
そんな教師にアキトはというと。

「どう言おうと分からんという意味には変わらんだろう」

と今度は殺気混じりに答えた。
しばし教室に沈黙が漂う。

「……じゃ次説明するぞ」

と一切追及しないで進む教師。
誰もそれに異論はない。
と、こんな感じで全部の授業は進むのであった。

 

 

 

 

つつがなく授業が進み朝食の時間となる。
急いで部屋を出てきたため弁当はもとより食べるものを持っていないアキト。
仕方無しにポケットを探るが財布も持ってない。

(さてどうしたものか?)

とアキトが考えていると後ろより声が掛けられる。

「あの…アキト君」

と決して大きくない声。
アキトが振り向くとコトネとミズキが立っている。

「なんだ?」
「アキト君お弁当持ってないの?」
「ああ…」

アキトの言葉に数瞬迷ったそぶりを見せるとコトネは言った。

「私の…お弁当少し食べる?」

その言葉を聞き驚いたのはアキトではなかった。

「なにぃ!?」

とどこから現われたのか少年一人。

「コトネさん!僕も弁当忘れました!だから僕にもください!」

と相手の言葉も聞かず言う少年。
それにアキトが。

「やっかましい!」

とさけび一撃を食らわす。
手加減など一切してない……のに少年は吹っ飛ばされた先から尚も叫んだ。

「いやーコトネさんのお弁当を食べれるなんてうれしいなぁ」
「何者だお前は!!」

なんらアキトの一撃に痛痒を感じていないような言葉にアキトは叫んだ。
というか見事に急所に入っていて下手したら死んでいて下手しなくても内臓破裂状態なのだが。

「俺か?俺はそうコトネさんの愛の下僕…メイドウワタル!」

なぜかポーズをつけ叫ぶ。

「そうか…逝ってよし」

とアキトはいい問答無用で窓から放り出す。
ちなみにここは3階だ。
おちた後に妙な音が聞こえたが誰もそれを追及しない。
もちろん怖いからだ。

「で、なんの用件だったか?」
「う、うんお弁当忘れたみたいだから…」
「そうか、その提案受けよう」

といってコトネが手に持っている弁当を丸ごと貰い速攻食べ始めるアキト。
遠慮というものを……期待しても無駄だ。

「あ……」

となぜか頬を赤らめるコトネ。

「なんだ?」
「その箸、私が使っていた…」

もちろん洗っているがまぁ色々だ。

「む、そうか後で洗ってかえす」

当然アキトは気づかない。というかコトネは弁当を半分渡すつもりだったのだがアキトに全部奪われている。
もちろん当人はこれで食べるものはない。
そんなアキトを殺意満面でみる男子生徒。
そして声が響いた。

「コトネさんの弁当…俺が食うんだ…」

声は窓から聞こえた。
誰もがそちらを向くとそこには血を流しながら窓に手を掛けているワタルの姿があった。

「なんてしぶとさだ」

さすがのアキトもこのしぶとさには驚いたようだ。
が驚いたのも一瞬またしてもアキトはワタルを無慈悲に突き落とす。

「アイシャルリターーーン!」

と叫びおちていくワタル。
彼は戻ってくるだろうという奇妙な確信がクラス中の人間にはあった。

「あいつに関して説明できるか?」

とコトネに聞くアキト。
その問いにコトネも、さぁ?、と答えたその時であった。

「説明しましょう」

と教室に声が響く。
その声を聞きなぜかアキトは身体を振るわせる。

「というわけで新入生の皆さん、始めましてこんにちわ」

と問答無用で説明を行おうとする新たな登場人物。
何時の間にか教壇に立っている。

「イネス!またお前か!!」

と響く声。どうやら教師がイネスを見つけたらしい。

「あらお久しぶりですね先生」
「お久しぶりじゃなくってお前卒業しただろうが!」
「ふっ。このイネス・フレサンジュ説明を求める声があるのなら卒業した学校に入る事など関係ないわ」
「お、お前は…」

イネスの言葉を聞き絶句する教師。
アキトはというと…。

(若いな…)

なんて事を考えているのであった。
取り敢えずは説明させて何時間も聞くようなことになるのを避ける為、説明絶好調のイネスを後ろから殴り倒すアキト。
きゅ〜と声をあげイネスは倒れた。
そんなイネスの姿を見咎めたのはというと…。

「ドクタァ〜〜〜〜〜!!」

と叫んだワタル。
それだけでアキトは彼がなんなのか分かった。

「ドクター!まだ俺加速装置とかロケットパンチとかつけてもらってないです!それなのにこんな…」

と泣き叫ぶワタルをみて一言。

「「「「「「「「「つけてもらうんかい!!」」」」」」」」」

と叫ぶ全員であった。

 

 

 

 

イネスを撃退したアキト。
話はまたコトネの弁当の話題に移った。

「アキト君…あの良ければ明日もお弁当作ってこようか?」

顔を赤らめ言うコトネ。
そんなコトネにアキトは。

(ふむ、確かに食べられるものがあるというのはいい。だが…)
「なぜそんなことを?」

と聞き返す。
そんなアキトにミズキは後ろで信じられないものを見たような顔をする。

(普通気づかない!ここまで世話焼かされて!)

と驚愕しながらだ。

「なぜって…その…アキト君にお弁当食べて…欲しいから…」

もう顔を真っ赤にして答えるコトネ。

「そうかなら作ってもらう事にしよう」

と絶対お前気づいてないだろうという声音でアキトは返事を返す。
が哀れな事にコトネはアキトの返事を聞きただ喜んでいるだけであった。

(なぜ弁当一つ作るだけでああも喜ぶんだ?)

とアキトが思っていることもしらずに……。

 

 

 

 

そして放課後。
これからどうしようかとアキトが考えているところに声が掛けられる。

「アキト君」

無論コトネだ。

「なんだ」
「アキト君部活決めた?」
「いや、まだ決めていないが」
「そう!なら一緒に周らない?」
「…構わんが」
「じゃ、いこっ!」

アキトの手を握り教室を出て行く二人。
その後ろに続くミズキ。
歩く中でミズキは一言呟く。

「コトネもあんなののどこがいいんだか…」

それは疲れた声であった…。





取り敢えずは校舎内の部活を見ることにする二人と一人。
考えもせずに科学部と札が掛けられた戸を開けると…。

「いいわねワタル君」
「はいっ!ドクター!」

とワタルになんだか奇妙な形をしたベルトを渡すイネスの姿。

「このベルトを装着し変身と言いながらポーズを決める。そうすれば貴方は立派なヒーローになるわ」

自慢げに語るイネス。

「してそのときの名前は?」

とワタルが聞く。

「それはもちろん仮面ライ…」

イネスが言い終える前に戸を閉め何も見なかったことにする三人。
そう決して追求してはいけない事だ。

「……見なかったことにしよう」

すばらしいぐらいに爽やかな表情をしアキトは言う。
もう輝いてるぐらいにだ。

「「はいっ!」」

と同じように輝く表情をし同意する二人。
断じて部室内からトウッとかなんとかキックとかといったことは聞こえない…ことにしとけ。
足早に立ち去るアキト達の姿が雄弁に語っていたが……。

 

 

 

 

ちょびっとばかし現実を恨んだアキト。
次に向おうとしたその時であった。

「あら?君は…」

と声が聞こえた。
アキトが振り向くとそこには昨日の剣道部の人間が立っていた。

「確か…剣道部の」
「ええ。アマツレイよ」
「そうか、テンカワアキトだ」
「どうしたの?こんなところにいるなんて」

その言葉には剣道部にきてくれという意味が微かに込められている。

「部活を見て周っているだけだ」
「そう」

とアキトの隣にいるコトネを見る。

「貴方の彼女?」
「違う」

とアキトは言うがコトネが噛み付きそうな目でレイを見ているのであんま効果はない。
そんなコトネになぜか残念そうな表情をするレイ。
その表情をみてコトネが敵だ!となぜか(笑)考えが至る。

「けど、そんな娘がいるのに昨日みたいな冗談を言っちゃだめよ」
「昨日?」

これはコトネだ。

「ふふふ内緒」

と謎な笑みを浮かべ立ち去っていくレイ。
その後ろ姿をコトネが親の敵のような目で見ている。
そんなコトネを見ながらアキトは思った。

(なぜ…こんなことに…)

自覚ゼロである。

 

 

 

 

結局いくつかの部活を見て周ったが決まらず帰る事になった三人。
鞄を取りに教室へと戻る。

「あ、ごめんなさい私ちょっと…」

と足早に教室を出て行くコトネ。
その後姿を見ながらアキトは呟く。

「トイレか…」

ガタンと音を鳴らしミズキがこける。

「あんたね!どうしてそうデリカシーの無い事を!」
「なぜ怒鳴る?」

もちろんアキトは本当に分かっていない。

「なぜって…その…」

さすがに顔を赤らめるミズキ。

「それよりも!あんたコトネのことどう思ってんの?」
「コトネをか?別に友人だが」
「そうじゃなくって!」

あーもうこの鈍感男は!、と思いながら必死に会話を繋ぐミズキ。

「あの子あんたのこと好きなんだよ!分かってる?!」
「そう…なのか?」

全然分かってない。

「そうよ!でなけりゃわざわざあんたに弁当作ってやるとか無いでしょ!」
「俺はてっきり食べる物の無い俺に同情したのかと…」

肩を力なく落とすミズキ。

「どうして…あんたはそう…」

力なく言いキッとアキトを睨む。

「まぁいいわあんたが鈍感だろうとストレートに言えば関係ないもの」
「俺の何処が鈍感なんだ?」
「それはいいの!!それよりアマツって人なんなの?」
「剣道で知り合っただけだが」
「それだけ!?」

と本当のことを話せとアキトを睨むミズキ。

「だったらどうしてあんなに親しそうなの!それもコトネの前で!」
「名前を喋っただけだろう?」
「だ・か・らあんたは…」

余りにアキトの言葉に苛立ち詰め寄ろうとしたが足を絡ませ、きゃっ、と可愛らしい悲鳴をあげ倒れそうになるミズキ。
反射的にアキトが手を伸ばし転びそうなミズキを引き寄せる。

「あ、ありがとう…」

見た目、やわなアキトの意外な胸板の厚さに驚きその体温を感じ顔を赤らめるミズキ。

「アキト…君?ミズキどうして…」

とアキトの胸に顔を沈め顔を赤らめているミズキを戻ってきたコトネが見る。
今にも泣き出しそうな表情をしコトネは走り去っていく。

「コトネ!!」

アキトから離れるコトネ。

「テンカワ君!追いかけて!」
「なぜ?」
「あーもう!いいから!!」

と無理矢理アキトを追いかけにいかせ自身もコトネの後を追うミズキだった。

 

 

 

 

で追いかけに出たアキト。
なぜ追いかける必要があるのかと考えながら校舎裏を歩く。

「待て!テンカワアキト!!」

と声が響く。
アキトの前方に立ち並ぶ複数の男子。一番前にはワタルがいる。

「なんの用だ?」
「何の用かだと?ふふふふ…」

不気味な笑い声をあげるワタル。

「コトネさんに近づく者の敵。可憐で清楚な少女に近づく者の敵。あらゆるモテル男の敵!…我々は大和撫子親衛隊だ!!

何処からとも無くスポットライトが照らす。

「……」

沈黙するアキト。

「ふふふふ…。怖かろう…悔しかろう…どれほど見た目かっこつけようと心の弱さまでは守れやしないのだ!!」
「……」
「「「「「「「は〜はっはっはっはっはっは〜〜〜!!」」」」」」」

「逝ってよし」

その一言のみでアキトは戦いへと赴いた。

 

 

 

 

五分後…。
ずたぼろにされた男子生徒たち。
残るはワタルのみだ。

「おのれテンカワアキト!卑怯だぞ!こーゆー時はお前がやられるのがお約束だろう!?」
「知るか!!」
「こうなれば最後の手段!ドクター!力を!!」

と奇妙なベルトを取り出し腰につける。

「へん…し…」
「やめい!!」

と奇妙なポーズをとり始めたワタルをアキトは殴り倒した。

「ひ、卑怯な…変身中は攻撃しちゃいけないのに…」

息も絶え絶えに言うワタル。
とりあえず蘇らないようにボコッておきました。

「もう…いやだ…。どうして普通に生きてる俺を巻き込むんだ…」

がくりと膝をつくアキト。
ちなみに全然普通じゃない。
アキトの上空をカラスがアホーと鳴きながら飛んでいったかもしれない……。

 

 

 

 

でアキトがおばかな戦いを繰り広げているときミズキはコトネを見つけていた。

「コトネ!」

ミズキに話し掛けられ再び走り出そうとするコトネ。
その肩を掴むミズキ。

「コトネ!誤解だってば!あれは私が…」
「いや!何も聞きたくない!」
「だから!!」
「私馬鹿みたい…アキト君に振り向いて欲しいからっていろいろやってたらアキト君もう…」

涙を流しながらコトネは言う。

「違うって!だからアレは私が転びそうになったのをテンカワ君が支えてくれたの!」
「えっ?」

と涙溢れる目でミズキを見るコトネ。

「そう…なの?」
「そうなの!」
「そうなんだ…」
「そうよ。だからあんたはテンカワ君を見つけてきなさい」
「どうして?」
「あんたがいない間、まぁいろいろとあたしがあんたの事喋っていたから。いって告白してきなさいよ」
「こ、告白!」

そうよ、とミズキは肩に両手を置いたまま言う。

「このままだとあの鈍感全然気づかないわよ!」
「う…そうかも」
「だからあたしが色々言った今のうちに告白してきなさい」
「そう…ね」

と言って駆け出すコトネ。

「へっ!?」

と肩に手をおいていたミズキは突如走り出したのに対応できずに倒れる。

「きゃあ!」

とコトネを巻き込み…。
そしてそこに……。

「……すまん、邪魔したようだな」

とアキトが現われる。
どうやら立ち直ったらしい。

「邪魔…って?」

とミズキが自分達の体勢を見ると…。
まぁ凄い体勢だ。
男だったらゴクリとつばを飲み込みそうな。

「ち、違うのよ!!」

とミズキは叫ぶ。
コトネもそれに続き。

「アキト君!これは!」
「いや…心配するな。俺は誰が誰を愛そうと差別はしない。誰にも言わない…だがさすがに学校の中と言うのはまずいと思うのだが」
「だから違うって!」
「気にするな。ではこれ以上邪魔するのはアレだからな俺は帰るぞ」

と足早に立ち去るアキト。
そんなアキトを見送りミズキは叫んだ。

「どうしてこうなるのよ〜〜〜〜〜〜!!」

尤もである。

 

 

 

 

夜も更け闇夜が訪れた火星。
ナノマシンが闇夜に幻想的に輝く。
そんな中某所では……。

「申し訳ありません。ドクター」
「そう邪魔されたの」
「はい。テンカワアキトという輩に」
「テンカワ?…まさかね…」

自分の考えに苦笑を浮かべながらイネスは言葉を続けた。

「分かったわでは。次はもっと早く変われるものを考えておくわ」
「はっ!ありがとうございます!」

喜ぶワタルを見ながらイネスは無慈悲に告げる。

「でも私の作品を役に立たせなかった貴方には罰が必要ね」
「!?」

イネスの言葉に顔を蒼白にするワタル。

「お待ちを!ドクター!!」

がワタルの懇願に答えることなくイネスは何処からともなく下がってきた懲罰用と札が下がる縄を引く。
ガコンとワタルの足元の床が開く。

「どくたあああああああああ〜〜〜

ワタルの声が虚しく尾を引き響く。

「…テンカワアキト…私の戦闘員を破るとは…敵ね」

怪しく響くイネスの言葉。こうして二日目は終わりを告げるのであった。





 

代理人の感想

 

まあ、人間国宝物の鈍感さとか。

一般常識が完全に破壊されているところとか。

人としてどうかな〜と言うことを平気で実行するところとか。

 

そ〜ゆ〜ところに今更突っ込む気はサラサラありません。

 

今日のポイントは紛れもなくこの男。

メイドウ・ワタル!

 

なんて私好みのキャラクターなんだっ(爆発)!

 

彼と同じく、男ならば一度は科学という名の悪魔に魂を売りたくなった事があるはずだ(爆)!

加速装置! ロケットパンチ! 腕(指先でも可)からマシンガン!  

しかも美人の女首領つき(核爆)!

 

ああ、うらやまし・・・・ゲフンゲフン。