厨房内に響く、鼻歌。
陽気な音を響かせているのはここ最近、厨房要員となったシンジだ。
その証としてアキト達と同じ黄色の制服を身に付け、ご機嫌そうにしながらその手に持っている生クリームでケーキのスポンジにデコレーションしている。
既にケーキは完成間近。
チューブを絞るたびに鮮やかに飾られていく。

「おやおや、ご機嫌だねえ」

と朗らかな笑みを浮かべてホウメイが話し掛けた。
シンジもその笑みに応えるように嬉しそうな笑みを浮かべる。

「ええ。もうすぐで出来上がりますから!」

と言っている間にも絞られるクリーム。
すう、と鮮やかに飾られ……完成。

「よしっ!」

満面に微笑ながらシンジが言った。
ケーキの推移を見守っていた他の者――ホウメイガールズの彼女達も優しく微笑んでいる。

「おいしそ〜」

と近づいてきたのはサユリだ。
黒い髪を後ろで纏め、流している女性。
黄色い制服とその上に付けているエプロンがよく似合っている。

「そうですか?」

と言いつつもシンジの表情はまんざらでもない。
どこか会心の笑みを浮かべている。
そんなシンジに苦笑しながら六人の居る場所より少し離れた場所で腕を組みながら見守っているホウメイ。
その目には楽しそうにケーキを切り分けているシンジの姿と、嬉しそうにケーキを受け取ろうとしている彼女達の姿が映っている。
そして、

「へ?」

とシンジがいささか間の抜けた声を上げた時であった。
厨房が、いやナデシコが大きく船体を揺らしながら不時着したのは。
戦艦ということもあって厨房内の大抵は固定されている為、危険な刃物類などが落ちると言う事は無い。
だが、固定されていない物。
そう、例えば……たった今作られたケーキなどは見事に…落ちた。
そう、それは本当に見事なほどに綺麗に落ちた。
ぐしゃ、とかそう言った音が綺麗に聞こえそうなくらいに落ちたケーキ。
それの作成者はというと。

「……」

取り敢えずは呆然とそれを見て、

「僕の力作がぁああああああ!?」

と絶叫したのであった。

 

 

 

 

ケーキが落ちたのもそのままにシンジはコミュニケを使い、ブリッジへと通信を入れる。
映し出されるブリッジ内の景観。
それをブリッジにいるクルーがシンジに注目するがシンジの目には入っていない。

『……ブリッジ、なにが起きたんですか?』

低いが鋭い声で訊くシンジ。
普段の彼からは想像がつかないほどにその目は暗い――というか据わっている。
彼が纏う黄色の制服もまるで黒いコートの様に思えてしまう……訳も無いがとりあえず彼の目は据わっており一切の反論を許さない。
代表、艦長としてユリカが少しばかり怯えながらも答えようと口を開いた。

「え〜と、ナナフシの攻撃を受けて落ちちゃった」

小首を傾げ、小さく舌を出したその姿は年齢不相応な程に愛らしいがシンジにそれをみる余裕は無い。
無言でユリカを見ている。
そんなシンジの姿に恐怖が少しばかり増してしまったユリカは助けを求め周囲を見回すが…、

「さっ、仕事仕事」

とミナトはコンソールに向き直り、

「こちらブリッジ!全部所は被害状況を報告してください!!」

メグミはあえてシンジとユリカを目に入れず通信に掛かりっきり、

「オモイカネ船体の被害状況を計算して」

ルリはオモイカネの相手をして

「これはまた頭が痛いですなあ…」
「ミスター、どれくらいで被害総額出る?」

プロスとなぜかエリナが被害金額の相談をして

「ハンガー!エステは大丈夫か!?」
「発進準備を!」

ゴートとジュンはユリカよりちょびっとだけ離れた所でハンガーのクルーへと確認と命令を下し、

「あ〜ら、大変ねえ」

ムネタケに至ってはなぜか置かれているソファで扇子を広げ、くつろいでいる。
全く見事なチームワークである。

「あう〜…」

と涙目になりユリカが再び助けを求めるが当然、皆無視をしている。
誰もあんな状態の人間と関わりたくないのだ。

『……ナナフシ、ですか』

無言だったシンジが漸く口を開いた。
変わらず低く、風刃の鋭さを持った声を。

「シンジ君?」

その声に何を感じたのかユリカが訊いた。
そしてシンジは答えた。

『IFS用のナノマシンと……エステを借ります』

呟くように言ったその言葉。

「……へ?」

その内容にユリカがこんな反応しか返せなくても仕方の無い事だろう。
それほど突飛な返答だったのだ。

「……」
『……』

数瞬、沈黙が訪れる。
そして、

「誰かシンジ君を止めてぇえええ!!」

頭に両手を当て、叫ぶユリカ。
ウィンドウの向こう、厨房側の方でその言葉を受けたからという訳でも無いだろうがホウメイも含めた六人がシンジを取り押さえている。

『シンジ君!ほら落ち着かないか!』
『シンジ君ダメだってぇ〜!!』
『あ〜ん!誰かなんとかして〜』
『紐!誰か紐持ってきてぇ!!』
『はい紐ぉお!!』
『それタコ糸〜!!』

とまあ、狂乱の図を見せていた。
傍から見れば女性達に取り押さえられるシンジの姿は男性、特にウリバタケ辺りから見れば羨ましい限りの図ではあるが当人は別の事に必死だ。

『僕のっ…!僕の力作を〜〜〜!!』

暴れまわるシンジの姿。 少しばかり泣いているようだ。

『ナナフシなんて僕が破壊してやるぅうううう!!』

現場はまさに混乱の様相を増しているようでした。

 

 

 

 

紐が無い為、本当にタコ糸で縛り上げられてしまったシンジ。
存分にあったタコ糸は無くなりシンジはミノムシと言うかイモムシ状態となり床に転がっている。
先ほどの元気(?)はどこに行ったのやら今はずーんと沈み込み静かな状態だ。

「うっうっうっ、僕の力作が〜」

と涙を流し精根尽き果てている。

「折角、アキトさんに食べてもらおうと思ったのに〜」

生憎とそのセリフは男が言うものではない。
ないのだが、そのセリフを聞いて微妙に目の色を変える女性がいるあたりアレである。
隣に居る者と怪しげな笑みを浮かべ、ひそひそと会話をする。
その光景にシンジは気づいていない。
というよりは見れない。
彼は未だに起き上がらずに涙を流しているからだ。
無論、食堂でこんなことをしている間にも時は無慈悲に進んでいく。
ブリッジではナナフシの対策を考え、ハンガーではエステの整備、フィールド発生翼では必死の修理を行っている。
残る時間は12時間。
それまでにナナフシを撃破しなければナデシコは幾弾もの漆黒の洗礼を受ける事となる。
だというのに……、

「ケーキがぁ〜〜」

であった。

 

 

「それじゃあ頑張ります!!」

先ほどまでの情けなさ過ぎる姿はどこに行ったのやら、今は満面の笑顔でシンジが言った。
さすがにこのままでは何かと問題が出ると思ったホウメイが苦笑混じりに、もう一度作れるさ、と励ましたのだ。
実際はそれほど簡単ではなかったが。
何はともあれ復活(?)したシンジ。
今は陽気に片付けを行っている。

「やれやれ。テンカワが関わるとどうもあの子は子供っぽくなるねえ」

と呟き、最近妙に苦笑することが増えたねえ、とこれまた苦笑するホウメイ。
だが、それは悪い気分ではないものであることも確かだった。
シンジ以外の、サユリ達もシンジの微笑みにつられてか明るい笑顔で動いている。
今、少なくともここはナナフシの与える重圧とは無縁の場所であった。

 

 

 

 

では、ナナフシの重圧を存分に感じている場所となると?
やはりブリッジであろう。

「ビシッ!」

と敬礼の擬音を口に出すような状態であっても。
更には軍服、その他を着ているような状態であってもだ。
ましてや当人達は真面目なのだから……余計始末に終えない。
それぞれが様々な服装をした中で響く数々の報告。
それを言い出したのは一体誰だったのだろうか?

「そういえば、シンジ君とアキト君って……結局どんな関係なのかなあ?」

途端、ブリッジに更なる緊張が走った。
主に二名の女性が走らせた。

「友達ですよ!と・も・だ・ち!!」

と言ったのはメグミ。
思わずシートより立ち上がるあたり、彼女も色々感じ入るものがあるらしい。

「そうです!!アキトがまさかシンジくんと……その……」
「あらあ?艦長どうしたの?」

言葉を噤むユリカに面白がる表情をしてミナトが訊く。
勿論、ユリカが続けようとして終ぞ出ない言葉の先を知っての言葉だ。

「バカ…」

流れるデーターへと目を向けたままルリが呟く。
それを聞き逃さないこれまたミナト。

「ん〜、ルリルリは気にならないの〜?」
「別に気になりません」
「本当に〜?」
「……はい」

女子高生的なノリで盛り上がってきたブリッジに胃の傷みを抑えきれないプロス。

「大丈夫かミスター?」

同情の眼差しで座り込みかねないプロスに肩を貸すゴート。
その姿は余りにも哀しい、というか哀愁を誘う。

「ええ、大丈夫…です。分かっては居るんです。ええ、分かってはいるんです…」

ゴートの肩を借りながら懐より宇宙ソロバンを取り出し、なにやら計算を始める。
なんの計算をしているかはプロスのみが知ることだ。

「ちょっと!あなた達!!いくらナデシコが動かないと言っても今は戦闘中なのよ!?私語は止めなさい!!」

まるで学校の委員長の様に鋭く叱咤するエリナ。
が、このナデシコの中でその言葉がそれほど意味をなすだろうか?
全く意味をなさない。

「……」
「……」
「……」
「……」

暫くの沈黙が訪れる。
そして、

「あらあ、けど気にならない?」
「…………当然、気になるわけ無いでしょ!」
「エリナさん、今の間は?」

ジト目でエリナを見る三人。
残る一人はルリである。
自分より矛先が逸れたのをこれ幸いにオペレーションに従事している。

「やっぱ気になるんでしょ?」

とミナトが言った瞬間。
素早く目で会話するユリカとメグミ。
これよりエリナは彼女達のブラックリストに載ったのだ。
そうして数瞬、目を合わせた間に彼女達はなにを会話したのか?

「エリナさんってそうだったんですか」
「も〜う、エリナさんったら言ってくれればいいのに」
「な、なにがよ」

互いに見事なコンビネーションでエリナを追い詰めていかんとするユリカとメグミ。
ホンの数瞬、そうホンの数瞬目で会話しただけで彼女達は動き方を決めたのだ。
げに恐るべきは女の情念、と言うべきか。

「え〜、だってエリナさんシンジ君の事が気になるんですよね」
「そうそう、さっきの反応見れば一目瞭然!エリナさん!任せてください!!私達、がんばってエリナさんとシンジ君を応援しますね!!」

決してアキトの名を出さずそしてシンジの名を強調して二人はエリナを追い詰める。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?それ、どう言う意味よ!!」
「もう、エリナさんったら、照れなくてもいいのに」
「そうですよ!誰も気にしませんよ!」

目を猛禽類の様に鋭く光らせながら彼女達は動く。
そんな三人を、あらあら、といった表情で見ているミナト。
どうやらプロスの胃痛が引くのはまだまだ先になりそうだ。

 

 

 

 

カーーーン。
カーーーーーーン。

と響く金属音。
ここはナデシコのディストーションフィールドを張るべきブレード内。
ナデシコの盾とも言うべき場所だ。
そしてそこに響くのは金槌の音。
まるで教会の鐘の音の様に規則的に鳴り響いている。
……ブレードの修理に金槌は使わないと言うのに。

「ひと〜つ直しては艦長の為」

カーーーン。

「ふた〜つ直してはメグミちゃんの為」

カーーーン。

「三つ直してはルリルリの為」

カーーーン。

「……班長、その辛気臭い歌止めましょうよ〜」
「そうですよこっちまで辛気臭くなってきちまいますよ」

バーナーを用いて修理を行っているウリバタケに躊躇いがちに掛けられる言葉。
ちなみに金槌の音はウリバタケのSOUND ONLYのウィンドウより聞こえている。
本人曰く――「効果音だ」
だそうである。

「バカ野郎!!辛気臭いも何もあるか!!」
「いや、でも…」
「テンカワの奴がリョーコちゃんやメグミちゃん、艦長にモテまくってとうの昔に辛気臭くなってんだ!!」

く〜、と涙を流し拳を握り締めウリバタケは言った。
その姿より滲む悲哀が涙を誘う。
たとえ、彼が既婚者であっても。

「くぬっ!くぬっ!!くぬうっ!!!」

ガンガンガンガン…!!

今度は本当に金槌を取り出し、乱打する。

「班長!それはまずいですって!!」

誰かが叫ぶがウリバタケは止まらない。

「ちくしょう!ちくしょう!!ちくしょ〜〜う!!!」
「みんな!来てくれ!!班長がご乱心だ!!」

近くの整備班に呼びかける。
どこに居たのやら続々と集まってくる整備班のメンバー。

「終らねえ!!いつになったら修理が終るんだあ!!俺の春は何時になったら来るんだぁあああ!!」
「班長!殿中でござる!!殿中でござるぅううう!!」
「ええい!離せ!!武士の…武士の情けを〜〜〜!!」
「つーか班長結婚してるじゃないですか!!」

その一言でウリバタケの動きがピタッと止まった。

「……憶えとけ。男にはなやらなきゃならない時があるんだよ!!」
「いや、意味わかりませんって…」

渋く決めるウリバタケ。
もちろんその前の言葉があるため決まる事はないが。

「つまりだ……」
「つまり?」

静寂が痛い。
ウリバタケを押さえる者達、全てがそう思った。

「テンカワのばっきゃろ〜〜〜〜〜!!」

再び涙を流し絶叫するウリバタケ。
その姿に、くうっ、と目を押さえる整備員。

「班長…俺、ずっと班長に着いて行きます!!」
「俺も!班長、熱いっす!!漢っす!!」


続々と続く熱い言葉。
情熱の方向が間違っている気がしないでもないが…。
少なくとも今、彼らの心は一つだった。

「お前ら!!今日は呑むぞぉおお!!俺の奢りだぁああ!!」

割れんばかりの歓声が響き渡った。
熱い漢達がそこにはいたのだった。

 

ちなみに後日談として、この日行ったブレードの修理はこの上なく、つまり完璧すぎるほど完璧に仕上げられていた。
……本来掛かる時間より大幅に早く終えて。
これもまた熱血……多分。

 

 

 

 

さて、攻撃を受けたということは当然と言うべきか必然と言うべきか負傷者が出るわけである。
ただ運が良かったのか、それとも気まぐれな神が手を差し伸べたのか、医療室に来る者全てが軽傷であった。
そのため、軽く手当てを施すだけで治療はすんだ。
他の部署が一部を除き、忙しさに走り回っているところここでは静かに時が流れていくだけであった。
その中でイネスは一人シートに腰かけ、頬杖をついている。
周りには誰も居ない。
今、ここに居るのはイネスだけだ。
白い室内に浮かび上がる鮮やかな金糸も今はどこかくすんで見える。
何かを耐える様に噛み締められた口。
艶やかな紅い唇は閉ざされ、言葉が漏れる事はない。
憂いに満ちた瞳。
その眼差しは遠くを見つめ…。
くすんだ金糸、憂いた瞳、閉ざされた紅い唇。
触れれば壊れそうなその姿に普段の彼女の姿を見出せる者など居ない。
儚げな、だがどこか妖媚な雰囲気のイネス。
白衣を脱がせ、シックな服装へと変えて狭霧が舞う石畳の街へと彼女を置けばさぞかし似合う事だろう。
だがここは無粋な戦艦の中。
その中で遠い眼差しをしたまま彼女は囁いた。

「テンカワ……アキト」

それこそ霧の様な声で、

「……どうして…こんなに気になるの…」

彼女は囁いた。

 

 

 

 

いまだテンション高く、明るい表情が満ちているナデシコ食堂。
掃除も終わり、仕込みも終った。
そして、今食堂内には甘い匂いが満ちている。
全ての準備を終えたシンジがいま一度ケーキを作っているのだ。
ナナフシに落とされる前と同じ様に鮮やかにデコーレーションをしていく。
白い生クリームがまるで処女雪のように見える。

「これで……」

つう、とクリームを絞る。

「終わりっ…!」

綺麗に山になっているクリーム。
甘い匂いと、切り崩すのが勿体無く感じるほどのデコレーション。
その自らが作り上げたものをシンジは鼻歌を歌いながら切り分けていく。
ちなみに今度はしっかりと皿を押さえ、落ちないようにしている。
光を反射し、輝くナイフが静かにケーキを抜けていく。

「はい、どうぞ」

切り分けたケーキを小さな皿に乗せ手渡す。
厨房内に漂う甘い匂いに目を輝かせていた彼女達はシンジより手渡されたケーキにフォークを突きたてた。

「……」
「……」
「……」
「……」
「……」

無言になる五人。
その姿にシンジが不安気な表情をして訊く。

「あの…おいしく、なかったですか?」

その一言にブンブン!と首が横に激しく振られた。
そしてそのまま残るケーキを一気に食べる。

「おいしぃ!!」

感涙の涙を流しかねないほどの至福の表情で誰かが言った。
大きめに作ったケーキがあっという間に無くなった。
残るは一つのみ。
五人がシンジを見る。
その視線を受け、最後の一つのケーキが乗る皿を手に持ち、シンジは言った。

「……ダメですからね」

これはアキトさんのだから、と目で言う。
だが、その目に怯む様ではナデシコではやっていけない。
互いにアイコンタクトを交わし、作戦を練った。
そして、

「シンジく〜ん、おねが〜い…」

代表としてなぜかサユリがケーキにも負けない、いやケーキよりも甘ったるい声を出してシンジに懇願した。
それに対しシンジは…。

「……皆で一斉に頷いてからの行動じゃあ、バレバレですよ」

ジト目で返す。
普段は女性が苦手なシンジもとある人物が関わると平気のようだ。
……それゆえ、妙な本が出されることになるのだが。

「うっ!」

シンジにジト目で返され、言葉に詰まるサユリ。
その後ろで、しまった!という表情をしている4人。
いいコンビである。

「それじゃあそう言う事ですので」

ジト目から一転して優しげに微笑むシンジ。
そしてケーキを冷蔵庫に仕舞う。
その光景にこの世の終わりと言った表情を浮かべる五人。
冷蔵庫のドアが軋り、閉じた時、それは彼女達にとって天国の門が閉じたと同義であった。

「なにもそんな表情をすることは…」

絶望の表情をする彼女達を見て、胸の奥より罪悪感が湧いて来るシンジ。
一筋が汗が流れてしまうのも仕方の無い事だろう。

「ほらほらあんたたち、シンジ君が困ってるだろう?」

今まで六人のやり取りを見ていたホウメイが手を叩きながら間に入った。
ううう、と未だもの惜しげな目をするがさすがにホウメイが間に入ったため諦めざるを得ない。
胸を撫で下ろすシンジに、子供の様な眼差しでシンジを見る五人。

「また今度と言うのは…ダメですか?」

う〜ん、と苦笑気味な顔でシンジが言った途端、

「約束よ!」
「言質はとった〜!」
「やった〜!」
「いつ作るの?」
「楽しみにしてるからね!」

先ほどまでの子供が泣き出す直前の様な表情はどこに行ったのか。
本当に嬉しそうにはしゃぎだす。

「……」

なにか信じられないものを見たような表情でシンジはそれを見ていた。
後ろを振り向くとホウメイが笑いを堪えながら首を横に振った。
はあ、と溜息を零すシンジ。
それでもその表情はどこか嬉しそう。
その場にいる全員を見回し、小さく微笑む。
そしてこの場に彼がいないことを少し残念に思い、視線を上に向ける。
見えるのは無機質金属の板だけ。
それでもその先に彼が居るかのように見つめながら呟く。

「アキトさん、早く帰ってきてくださいね?」

楽しげに…呟いた。

 

 

 

 

「――という事があったんですよ」

無事ナナフシを撃破しナデシコに帰還したアキトを相手に会話をするシンジ。
アキトの目の前には話題に上った件のケーキが置かれている。

「へえ、そうなんだ」

シンジの楽しげな表情につられたのかアキトの表情も楽しげだ。
二人だけのお茶会だが彼らはそれに充分満足しているようだ。
微かに香る、甘い匂い。
そこはナデシコには似つかわしくないかもしれないが、静かに穏やかに時が流れているであった。

 

 

後書き

誤解とは解くのが難しい……

 

 

 

 

いや、俺ロリじゃないからね?

 

 

 

 

 

 

代理人の感想

はい、最近とみに作品と後がきが乖離してきている皐月さんでした。(笑)

全然脈絡ないし。

直前のシーンは○○○なアレだし。

なにより誤解じゃないし。(核爆)

 

 

 

言いたい事はあるでしょうが、「じゃあショタか?」と突っ込まなかっただけマシでしょう(爆)?