注:この小説には一部血の表現があります。苦手な方は読まない事をお勧めします。



「――居たか?」
「いいえ、どこにも居ません……」

 多数の人でごったがえす部屋の中、山口烈火やまぐちれっか真矢妃都美まやひとみは互いの姿を認めるなり、何よりも先にそう呼び交わした。烈火はチッ、と舌打ちし、携帯を取り出すと番号を打つのももどかしいといった感じで電話をかけた。繋がるのに時間が掛かったのは回線が混んでいるからか。
 最近の携帯にはウィンドウの表示機能が当然のようについている。空中に現れた田村奈々美たむらななみ紳目美佳しんめみかの顔に、烈火はすぐさま問い掛けた。
「おい。そっちはどうだ?」
『駄目ね……やっぱり居ないわ』
『……先ほどから、従業員や警察の方々にも尋ねてみましたが……やはり避難しているのは、私たち四人だけのようです……』
 ふたりの報告も芳しくない。その暗示する所に、一同は誰もがきゅっと心臓を締め付けられた。
 今彼等がいるのは、オオイソシティの外れに位置する宿泊施設だ。
 ――――今から四時間ほど前、火星の後継者・湯沢派と思われる武装集団が第一オオイソ高校に出現、これを占拠した。
 火星の後継者は多数の教職員、生徒を人質に取り、草壁元中将を始めとする火星の後継者構成員の解放を要求――――これが受け入れられない場合、人質もろとも学校を爆破すると通告した。
 これに対して統合軍と日本軍が直ちに出動、学校の周辺は封鎖され、住人は近隣の手ごろな施設へ避難させられた。
「まさか、こんな町の学校を狙ってくるなんて……」
 妃都美は爪を噛む。その顔には焦燥の色が濃い。
 彼等が探しているのは勿論、この場にいない仲間だ。
 この施設にいるのは烈火と妃都美の二人のみ。奈々美と美佳は別の施設にいたが、彼等以外の仲間はどこにもいないという。携帯も繋がらない。ということは、結論は一つ――――
「和也に楯身に美雪……やっぱり捕まってんのか」
「それに、澪さんと白鳥さんも……」
 最悪だった。仲間達が人質になっているという事は、今後の展開次第では殺される可能性もあるという事だ。
 無論、軍もそう簡単には強行突入などすまい。現在も人質の解放に向け交渉が進められているはずだ――――が。
『軍が要求に応じると思う?』
 奈々美の電話越しの問いに、妃都美は首を振った。
「まず……無いでしょう」
「だな。テロには応ぜず、テロには屈せず、テロリストは殲滅すべし……だっけか? こりゃ昔からの大原則だ」
 その原則は間違っていないだろう。だが……
 軍が突入を強行すれば、おそらく人質は死ぬ。その中にいる彼等の仲間たちも……だ。
「また……仲間が死ぬのかよ」
『……ああ、神よ……』
『くっ……』
「……嫌です」
 妃都美が、静かに呟いた。
「もう友達が死ぬのは嫌です! 誰の墓をも作りたくありません! 私は嫌です!」
『妃都美……』
 ―― 一同、沈黙する。
 その時、ばたん、と何かが倒れる音がした。
『ああ、ミドリ、ミドリ……!』
『俺が代わりに人質になる。だからハジメを、息子を助けてやってくれ!』
『サツキ……!』
 奈々美と美佳のいる施設では、もう緊張がピークに達したようだ。子供を人質にされた親、友達を人質にされた生徒などが学校に向かおうとして、警察や施設の人間に止められているのがウィンドウの向こうに見える。ほぼ同時に、烈火たちの後ろでも同じような光景が見え始めた。
「……心配なのは、私たちだけではないんですね」
「…………」
 烈火はそっと、自分の胸に手を当てる。避難する時つい持ってきてしまった物が懐にある。その感触を、確かめる。
「――なあ。俺たちは何も出来ないのか?」
『はあ? こんな時になに言ってんのよ』
 呆れたように奈々美が言う。
「そりゃ、俺等はただの高校生。相手はテロリスト集団。それも元を正せば軍隊だ。まともに行っても敵うわけねぇ。――普通ならな」
 だけどよ、と烈火は言う。
「俺たちのこれは何のためにある? さんざ辛い思いして手に入れたってのに、結局役に立った事なんて無かったじゃねぇか。ここで和也達まで見殺しにしちまったら、俺は死んでも俺を許せそうにねえ」
『……要するに……「行く」という事ですか?』
 美佳の問いに、おう、と烈火は頷く。
「無茶です! 相手は火星の後継者ですよ!? それに、まだ皆さんだって死ぬと決まったわけじゃ……」
『本気で言ってるの?』
 奈々美の態度は冷たい。だが正論だった。妃都美の言う事が希望的観測――――いや、願望にしか過ぎないという事は、誰の目に明らかだ。これまでに起こった事件とその結果を思い出せば、おのずと答えは出る。
『しゃくだけど烈火の言う通り。あたしは行くわよ。テロリストの十や二十なんて恐くないわ。あたしは強いんだからね』
『……私も……できればあの時のように何もしないで訃報を聞くより、少しでも自分の力で足掻いてみたいものですから……』
 美佳も考えは同じのようだ。
 そう――――忘れもしないあの時。彼等は信頼していた多くの仲間を、目の前で失った。
 自分たちの力が足りなかったから――――と考えるのはうぬぼれかも知れないが、仲間が消えていくのを見ていながら、何もする事が出来なかった。それが何よりも悔しかった。
 悩む余地など無い。今の妃都美は痛い目に会うよりも、自分が死ぬよりも、残った仲間が死ぬほうがよほど恐ろしいのだから。
「解りました……行きましょう!」
「よっし、行動開始だ! 国道の封鎖線前で合流するぞ。いいな!」
『……了解』
『りょーかい!』
 烈火は電話を切り、妃都美と頷き合った。
 そして二人は、警察の目を盗んで施設を出た。気付いた者は居なかった。
「とは言ったものの……烈火さん、何か策でもあるんですか?」
「ねえよ、そんなもん」
 静まり返った街を走りながら、烈火はなげやりに言う。
「考えるのは参謀殿の仕事だからな……宛になるのは、こいつくらいか」
 そう言って烈火は、懐に忍ばせてあった私物を取り出す。
 出てきたのは二挺の拳銃だった。月明かりを反射して鈍く光る巨大サイズの拳銃。握りに付着した手垢とメッキの剥げ、そして漂う甘い硝煙の匂い。明らかにそれはオモチャの類ではなく、使い込まれた実銃だった。
 これがあるからといってどうなるわけでもない。正直どう動くかなど直情派の烈火には想像もつかない。
 ただ仲間を救う。その意志だけが、彼らの中にあった。



 機動戦艦ナデシコ――贖罪の刻――
 第三話 剣来たりて 前編



 明かりの落ちた校舎の中、空調のごうごうという音がやけに大きく響いている。
 誰もが憔悴しきった顔で、膝を抱えてうずくまっている。
 そんな生徒たちを銃を抱えて睥睨する、火星の後継者の兵士一人だけが、興奮と緊張に満ちた顔で佇んでいる。
 この学校が占拠されてから、もうどのくらい経っただろうか。日が落ちてからの時間から、まだ日付は変わっていないと思うが……と黒道和也こくどうかずやは教室のドアのすぐ前に座ったまま思った。
 火星の後継者がどんな要求を連合政府に突きつけたのか、交渉がどうなっているのか、和也達には何も知らされていない。ただ時折漏れ聞こえる兵士の話し声から、地球連合政府が要求に応じる気配が今のところ無い事は想像できる。
「やっぱり、地球連合は要求に応じないつもりなのかな……」
 和也は隣に座る立崎楯身たてざきたてみに小声で話し掛けた。彼は教室の掃除をしていて巻き込まれたらしい。
「当たり前でしょう……要求は恐らく草壁閣下の釈放です。そんな事、できる訳がありますまい……」
「……助かるのかな、みんな」
「……解りませぬな」
 それは祈るしかないか――――と和也は思う。
 今すぐ殺されるとは思わない。火星の後継者は正義の元にある組織で、民間人を虐殺するような汚い真似は――裏では何かしているかもしれないけれど――しないだろう。現に火星の後継者はターミナルコロニー『アマテラス』襲撃の際、民間人に避難を促しているし、コンピューター室で撃たれたあの生徒もすぐ病院に運ばれたのだ。
 その点は、それほど心配していない。
 ただ、軍が交渉を断念すれば当然強行突入があるだろう。銃撃戦の巻き添えで人質までが――――そんな事態は十二分にありえる。
「昔のハリウッド・ムービーとかなら、人質の中に元特殊部隊員とかが居て、ぱーっとテロリストをやっつけてくれるのだけどね」
「解っているとは思いますが……くれぐれも変な気を起こしませぬよう」
 楯身は厳しい目つきで言った。冗談の通じない奴だ。
 そのやり取りが聞こえたのか、見張りの兵士が和也たちのほうを向いた。
「おーい、そこのふたり。私語は厳禁だぞ」
 その一言に、和也と楯身以外の全員がびくりと身を竦ませる。兵士は怒鳴ったわけではなく、からかうような口調だったが、この張り詰めた空気の中では兵士の何気ない一言までが生徒たちを脅えさせるのだ。
 ――まったく、何なんだこいつらは……
 和也は内心で毒づいた。火星の後継者は、明らかに木星人と地球人では態度が違う。
 少し前に配られた食事は、木連軍で悪評が高かった軍用携帯糧食だった。本来なら加熱する必要があるそれを火を通さないまま寄越した。化合物の匂いがひどく口をつけられない生徒も多かった。
 しかし木星人だけにはちゃんと加熱した物を寄越した。あからさまな木星人と地球人の差別である。さすがに自分たちだけ良い物を食べるわけにはいかないので、皆と同じ物を寄越せと言ったら渋々といった感じで応じた。
 ――これが正義のための組織なのか。
 和也はこれまで、火星の後継者が敵対するのはあくまで地球連合なのだと思っていた。地球人は敵であっても、いずれは自国民となるのだから進んで手を出す真似はすまいと。
 これでは地球人そのものが敵であるかのようだ。これでは、仮に政権を取れても地球人はついてこないだろうに……
 不意に電子音が響いた。
「おっと、交代の時間か……」
 兵士は生徒たちに鋭い一瞥を向けると、教室から出て行った。
 見張りが居なくなり、安堵の息がそこかしこから漏れる。
「……澪に白鳥さん、大丈夫かな」
 ふと、そんな事を呟いていた。
 木連憲法第二条には女性を敬うべしとある。何かされるとは思えないが、この状況ではどうしても変な想像をしてしまう。
「露草はともかく、白鳥は大丈夫だろ? 木星人なんだから」
 和也の近くにいた男子生徒が、侮蔑とも取れる言葉を投げかけてきた。言い返す語気が険を帯びる。
「……何が言いたい?」
「そのうち軍が突入して来たら、俺たちみんなお陀仏だぞ……サツキミドリ一号のニュース見ただろう」
 長い緊張と恐怖が、彼を自棄にさせていた。
「なのに木星人の人質だけ皆助かっただろう」
「あれは、軍が突入を強行したから……」
「馬鹿言え! ……あれは火星の後継者が見せしめに爆弾爆発させたんだって、専門家も言ってるじゃねえか……畜生」
 サツキミドリ一号占拠事件に際し、何故人質が大勢死んだかは未だ連合政府から公式見解が出ていない。
 銃撃戦に巻き込まれたという説もあれば、火星の後継者が爆弾を爆発させたのだという説もある。生存者の証言や検証結果が何故か公表されていない現在では、全ては憶測の域を出ない。
 和也は、無抵抗の人間を虐殺など、火星の後継者がするはずは無いと思っている。彼の不安は理解できたので、強く反論する真似はしなかったが、
「……いっそ、木星人の先祖がみんな死んでりゃこんな事には…………」
「……!」
 それは、木星人のプライドをこれ以上ないほど逆撫でする言葉だった。
「貴様……今なんて言った!?」
「それ以上我々を侮辱する真似は許さんぞ!」
 和也たちを含め、その場にいた木星人の生徒は思わず立ち上がるが、次の瞬間にはっ、とした。
 その場にいた全員が、和也たちを睨みつけていた。木星人のせいでこんな事になった。木星人が悪いんだ。木星人なんかいるから――――ありとあらゆる負の感情が、和也たちに向けられていた。
 テロに巻き込まれた不安によるものだけではない。
 ここ最近頻発していたテロは、地球人の間に、誰も知らないところで木星人への不審という根を張っていたのだ。それがわが身に迫ったテロを呼び水に、一挙に噴出した。
「…………」
 和也も楯身も、他の木星人も、ただ膝を抱えて時が過ぎるのを待つしかなかった。
 突き刺さる視線が痛かった。



 和也達が沈黙の中で過ごしている頃、学校の周囲もまた緊張した空気に包まれていた。
 道路には壁のように装甲車が並び、武装した兵士が殺気立った視線を学校へと向けている。普段笑顔の生徒が行き交う住宅街は、軍とテロリストが敵意をぶつけ合う緩衝地帯と化していた。
「大尉、宇宙軍からまた通達です。陸戦隊二個小隊を派遣する用意があると」
 指揮車の中、この場に派遣されている統合軍を率いる指揮官は、副官の報告をうんざりした顔を隠しもせずに聞いた。
「それで何度目の通達だ?」
 五度目です。と副官は律儀に答えた。
 統合軍設立の際に多くの人材を引き抜かれた宇宙軍は、陸戦隊もごく限られた人数しか保有していない。
 最近の戦功からある程度の人材補充を認められつつあるが、それの大半がいまだ訓練過程中で実戦には耐ええないはずだ。
 そんな有様ででしゃばるんじゃねえよ、と指揮官は思う。旧連合陸軍出身のこの指揮官に言わせれば、地上での任務は統合軍のものであり、宇宙軍の手を借りる筋合いは無い。にも拘らず首を突っ込みたがる宇宙軍が鬱陶しくてしょうがないのだ。
「適当に断っておけ。……それから、例の兵士を殴り倒したと言う変な連中の事は、何か解ったか?」
 指揮官は不愉快な話題から話を逸らす。
 数分前、周辺を巡回していた兵士がとあるアパートの前にたむろしていた数人の一団を発見した。
 問い質すと「忘れ物を取りに来た」と釈明したが、どうにも火事場泥棒の類ではないかとの疑いを拭えなかった兵士は、彼等を連行しようとした。
 大人しく従ったと思いきや、油断した所へパンチ一発――――
 異常を察知したほかの兵が現場へ駆けつけた時には、昏倒した兵士が何故か装備一式を剥ぎ取られた姿で転がっているのみであった。
 一時は火星の後継者の別働隊かと思われたが、意識を取り戻した兵士によると例の一団というのは高校生くらいの四人組だというのだから訳が解らない。
「いえ、その後の足取りはつかめていません。周辺には多数の兵士が詰めていたはずですが、誰もそれらしいものを見ていません」
 と、副官。
「透明人間でも忍び込んだか……?」 
「それなのですが、周辺から微量のソリトン電波が観測されたとの報告があります。何者かがソリトン・レーダーを使って進入したと考えれば、誰にも発見されずに忍び込むのも不可能ではないかと」
 ふむ、と指揮官は頷く。
 ソリトン・レーダー。ソリトン電波と呼ばれる高出力電波を用いて周辺の地形から建物の内部構造、果ては兵の配置までを把握可能なレーダーだ。しかし妨害技術が確立され、どこの軍隊でも使われなくなってから早一世紀。もはや化石も同然の技術だ。
 今では現場にソリトン・レーダーはおろか、それの妨害機器さえ持ち込まれない事も多い。それだけに、時として意外な効果を発揮する事もある。
「まさか宇宙軍め、勝手に介入してきたのではあるまいな……」
 沸き立つ疑念。そのスパイスを宇宙軍への反感というベースに加えて、焦りというスープが出来上がる。
「いつ強行突入する事になってもおかしくは無い。各隊にそう伝えろ」
「よろしいのですか?」
「どうせ交渉は長引かん」
 宇宙軍か介入してくる前に事態を収拾してやる……そう意地を張る指揮官は早期の強行突入も考えていた。そんな個人的な感情で人質を危険にさらすなど愚劣な行為だが、宇宙軍への反感が先に立っていた。
 悲しい現状だった。



 一方その頃、烈火、妃都美、奈々美、美佳の四人は、夜陰を縫うようにして学校へと向かっていた。
 足音は最小限、行き交う人も車もいないだけに、余計にその静けさが際立つ。耳鳴りがしそうなほどだ。
「……待ってください」
 不意に美佳が口を開き、全員が足を止める。
「……このまま行けば、十字路で兵士と鉢合わせします。隠れてください」
 解るはずのない事を美佳は言う。だが疑う者は誰もおらず、全員が美佳に従って物陰に身を隠した。
 程なくして、美佳の言った通り軍の兵士が十字路を通り過ぎていった。
「よし、行くぜ」
 再び彼等は走り出す。時折美佳の指示に従って右へ左へと道を曲がり、物陰に身を隠す。それだけで兵士と鉢合わせする事は無かった。まるで周辺の兵士が全て見えているかのように。
 いや、事実美佳には、『視えて』いたのだ。
「……あの塀を越えれば、学校の敷地に入れます」
「よっしゃラストスパート! おりゃあ!」
 学校を取り囲む塀を跳び箱のようにあっさりと飛び越え、一同は敷地への侵入を果たした。そのまま校舎の壁に張り付き、全員呼吸を整える。
「進入成功……和也達はどこだ? 探せ。早く」
 隠し持ってきた銃を両手に構え、烈火が言う。
「……急かさないでください。いま、捜索します……」
 言って、美佳は大事に抱えてきたノートパソコンを開く。ディスプレイは無く、点字で全てを伝える視覚障害者用の物だ。
 美佳はこれだけはどうしても必要だと言い、仕方なく一度美佳のアパートに立ち寄って持ってきたのだ。
 ただその時に統合軍の兵士に見咎められてそいつを殴り倒す羽目になったが、おかげで幾つか武器を手に入れられた。銃器が烈火の持つ二挺だけでは辛かったので、怪我の功名と言える。
 美佳はノートパソコンからケーブルを1本伸ばすと、自分の右目に手を添えた。
 ――そこからが衝撃的だった。美佳は躊躇い無く自分の眼窩に指を突っ込み、眼球を取り出したのだ。それを無造作にポケットにしまうと、ケーブルの先を空っぽになった右目に刺した。
「何度見ても刺激的だわね、それは……」
 と、奈々美。
「ソリトン・レーダー接続完了。広域探査、開始……」
 ノートパソコンの補佐を受けて、美佳の視界が広がる。
 人の目を失った代わりに、と言っては何だが、美佳が持つ『神の目』――――それは壁を突き抜け、中の人間の動きまでがはっきりと見える。それは正しく神の目から見た神の視点であった。
「……現在、人質は西棟三階の教室に集められているようです。和也さん達はそこでしょう。……あ、放送室にも三人ほど人質らしい人が見えます。あれは美雪さんと放送委員の人でしょうか……」
「声明文にあった爆弾はどこですか?」
 妃都美が訊いた。
「……正面玄関の下駄箱に、何か機械らしい物が見えます。恐らく進入防止用の赤外線センサー式爆弾。他にも西棟の中に幾つか爆弾らしきものが見えますが、よくは解りません……」
「あながちハッタリでもねぇみてえだな……さてどうするよ?」
 と、烈火。
「決まってんでしょ。強行突入してテロリストを片っ端からぶっ殺しゃいいのよ」
「奈々美さん……私たちは戦いに行くんじゃなく、皆さんを助けに行くんですよ。それにテロリストと言っても、彼等の多くは私たちと同じ木星人です」
 物騒な主戦論を持ち出す奈々美を、妃都美がたしなめる。
「ともあれ、人質を助けるのが最優先だな。とすりゃあ、やっぱり裏口から進入か?」
「でも、もしばれたら途端にドカン……よね。爆弾解体なんてあたしの仕事じゃないわよ」
「そういうのは美雪さんの専門ですね。まあ今回のケースなら、指揮官が起爆装置を持ってるはず。問題はその指揮官がどこにいるかですが……」
 美佳の『神の目』でも個人の判別までは出来ない。
「ま、そこの所は一人二人締め上げて吐かせりゃいいだろ」
「意義はありません。……でも彼等、本当に人質もろとも爆破なんてする気なのでしょうか? 火星の後継者は一応正義のための組織と謳っている筈では……正直、信じがたいです」
 妃都美の中にも、木星人として火星の後継者を指示する気持ちはある。
「そりゃ、俺だって地球連合は許せねぇし、火星の後継者を応援したいよーなところもあるけどよ……」
「……私も、そう思う事はあります。ですが……」
「どーだっていいでしょ、そんなの」
 烈火と美佳の葛藤を、奈々美は切って捨てた。
「あたしたちは中の連中を助けに来たんでしょ。障害があるなら吹っ飛ばす。邪魔する奴は火星の後継者だろうが地球軍だろうがぶっ殺すまでよ。違う?」
 奈々美は過激な論理を展開する。
 だがまあ、それは彼等からすれば間違ってはいないのだった。彼等にとっては火星の後継者も、地球軍も味方ではない。どちらも等しく仲間の命を脅かす存在だ。ならそれを排除する事に躊躇いは要らない。
「それでは、軍が突入の兆候を見せるか、中で何か動きがあれば進入する事にしましょう。その後火星の後継者から指揮官の居所を聞きだしてそこを制圧。起爆装置を抑えたのち、人質を助けましょう。……それでいいですね?」
「賛成」
「意義なーし」
「……問題ありません」
 一同は事態が動くのを待ち、しばし走り疲れた体を休める事にした。



 この第一オオイソ高校は、西棟と南棟の二つの棟からなり、後から増築された南棟と西棟とは一階と二階の渡り廊下で繋がっている。
 人質がいるのは西棟の三階だ。普段は生徒で賑わう校舎も、今は電気が落とされしんと静まり返っている。
 そんな中、コツ、コツ、コツ、と軍靴の小気味良い音を響かせて一人の兵士が真っ暗な廊下を歩いていた。人質の見張りの交代にやってきた兵士だった。
「あー、待った待った」
 程よく緊張して任務に向かおうとしていた兵士に、不意に声をかける者があった。見上げると三階に続く階段の踊り場に、火星の後継者の兵士が四人、たむろしていた。年は一様に若い。全員二十代に達しているかいないか、といった所だ。
「見張りをちょっと増やす事になった。俺たちがやるから、お前はもうちょっと休んでていいぞ」
「そんな話は聞いていないぞ?」
「知らせが来るのが遅れているんだろ」
 ほら行った行った。と四人の兵士は手を振る。釈然としない顔をしながらも、交代の兵士は廊下を引き返していった。
「……よし、行ったな」
 交代の兵士の姿が見えなくなると、四人のリーダーらしい兵士の一人は目を細めてほくそ笑んだ。
「――本当にやるのか?」
「当然だ。交渉なんかしてもどうせ無駄。ならやるしかねえだろ」
 多少躊躇いを見せた一人をそう一喝する。
 いま交代に来た兵士に言ったのはもちろん嘘だ。指揮官からそんな命令は下っていない。ではなぜ交代を追い返したのかというと、彼等独自の『作戦』のためだ。
「よし、作戦開始だ」
 四人は足早に移動する。向かうのは女の人質が集められている部屋。何日掛かるか解らない作戦で、人質を男女別にするのは木連の風潮からすれば当然の処置だ。
 つい先ほど女の部屋の見張りも交代を呼びに行った。つまり今、この階に居るのは人質のほかには彼等四人だけ、というわけだ。
「……女にするのか?」
 先ほどの奴がまた怖気づいた事を口にした。
「泣き叫ぶ女のほうが効果があるだろ。……女ったって地球人だ。気にするな」
 半分は自分に言い聞かせるために言ったのかもしれない。やはり女に手を出すのは抵抗がないでもない。
 ――俺たちが本気だってことを、地球の奴等に思い知らせてやるんだ!
 自身を鼓舞するように内心で呟く。
 この作戦に参加できると聞いた時は飛び上がるほどに喜んだものだ。彼の父親は軍人で、優人部隊の一個小隊を率いる隊長だった。いつかは自分も父のような立派な軍人になる。そう誓って生きてきた。
 ……しかし、ある日父は帰ってこなかった。
 月での反攻作戦に参加した父は、地球軍の新兵器での攻撃によって……乗っていた機体もろとも、跡形も無く消滅したという。
 以来、母も体をおかしくした……医者が言うには精神的なショックによる症状だという事で、今では普通の生活はおろか、喋る事すらまともに出来ない。
 地球が憎かった。父を殺し、母の心を壊しておきながら今も安穏と暮らしている地球人が憎かった。だから火星の後継者として戦う道を選んだのだ。
 だというのに、いまやっている事はなんだ? 人質を取って立てこもる。……それだけだ。どうせすぐにも爆弾を爆発させてやるものだと思ったのに、指揮官が腰抜けなのかその気配も一行に無いのだから苛立たしい。
 成功するはずの無い交渉に何の意味がある。一時間ごとに人質を殺してやるぐらいでなければ地球連合は動かないだろうに、あの腑抜けはいつまで時間を浪費するつもりなのだ。
 なら自分でやってやると一念発起し、手近な同志に声をかけたところ三人も集まった。似たような境遇の者同士、やはり志は同じなのだ。
 彼とてこれが独断専行プラス犯罪行為なのは承知しているが、それで草壁中将や捕われの同胞を救い出せれば文句はあるまい。まあ突入を招く可能性のほうが高いだろうが、それはそれで望む所だ。彼は戦うために来たのだから。
 がら、とドアが開け放たれると、中の女子が引きつった悲鳴を上げる。
「な、何よあんたたち。ここは男の来る所じゃないわよ!」
 一人の女子生徒が突っかかってきた。気の強い女だ。でも確かこの女子は木星人。手を出すわけにはいかない。
 気の強い女子を無視して、兵士達はひとりひとり、品定めをするように女子たちを見回す。
「誰にする?」
「誰でもいいから早くしろ。見張りの奴が戻ってきたら面倒だからな」
「解ってるよ……お。これがいいんじゃないか」
 と、同志の一人がある少女を指した。長い黒髪に整った目鼻立ち。まあなかなかの上玉だろう。
「いいよ。連れて来い」
「了解。おら、こっち来いよ!」
 強引に腕を掴んで立ち上がらせる。少女は「やっ……!」と声を上げて抵抗したが、男の力には敵わなかった。
「あんたたち、何するのよ!」
 女性教師が食って掛かってきた。無視しようとしたが、その女性教師はドアの前に立ちはだかって両手を広げ、文字通り体を張って出口を塞いだ。
「邪魔だ。退けよ」
 リボルバー拳銃を突きつけ、乱暴な口調で威圧する。だが女性教師は怯む様子も見せない。――鬱陶しい。
 だから銃のグリップで殴った。
「あうっ!」
 女性教師は頭から血を流して倒れる。再び悲鳴が上がり、さっきの気の強い女子が「ミナトさん!」と駆け寄る。
「あんたたちなんてこと……! それでも誇り高い木連の戦士なの!?」
 知らねえな、と男は吐き捨てる。誇りなど知った事ではない。

 ――見ててくれよ父さん母さん。絶対に、仇は取ってやるからな……

 胸の奥に暗い憎しみの炎を燃やして……彼は、もう戻れない道を往くのだった。



 数分が経過しても見張りが戻ってこない。和也がそれをいぶかしみ始めた頃、ふと誰かの声が聞こえてきた。
 交代の見張りが来たのかと思ったが、何か様子がおかしかった。不審に思った和也はそっとドアを開け、外を除き見た。
「いやっ、離して……!」
「な……!」
 その姿を見た途端、心臓が跳ね上がった。考えるより先に、和也は立ち上がってドアを開け放っていた。
「澪!?」
「和也ちゃん!?」
 見知った顔の友人――――露草澪が、和也の名を呼ぶ。火星の後継者の制服を来た四人の男たちが澪を捕らえて、今まさに何処かへと連れて行くところだった。
「おい、乱暴するな!」
 駆け寄ろうとするや、和也の腹に最後尾の一人が蹴りをぶち込んできた。思わず胃液を吐いてうずくまる。
「み、澪……!」
「和也ちゃん! 和也ちゃん――――!」
 両腕を二人の男に捕まれて抵抗する事も出来ず、澪は暗闇の中へ連れ込まれていった。和也は殺意すら閃く目で目の前の男を睨む。
「澪を、どうするつもりだ貴様ら……」
 腹の痛みに、声が掠れた。
「ああ、悪かった……つい足が出ちまった」
 腰に木連の軍刀を提げたその男は、和也が木星人だと気付いてか詫びをいれてきた。当然、それだけで和也は納まりはしない。
「澪を、どうするつもりだと聞いているんだ……!」
「あんたが気にするこっちゃない。あいつらは俺たちを不当に弾圧した地球人。これは地球人に与えられた、贖罪の機会なんだよ」
「……何を言ってる。澪はただの学生で……」
 何の罪も無い民間人だ――――と言う和也に、男はとんでもない事を口にした。
「民間人だろうがなんだろうが、地球人ならみんな同じさ。先の戦争に手を貸し、俺達の同胞を殺すのに共謀した。戦争で大怪我を負った俺の親父は、つい去年まで植物状態になったまま死んだんだ。あんたも解るだろ」
「解らなくはないけどね……最初の質問に答えろ。澪に何をする気だ?」
「決まってるだろ。地球連合は俺たちの要求に従う気が無いらしいからな……“見せしめ”さ」
「……!」
 和也は絶句し、一瞬、息が止まった。
 なぜこの兵士は……このテロリストは、そんな事を平気で口に出せるのだ。どうして何の抵抗も出来ないただの少女を手にかける事が出来るのだ。
「教訓を与えてやる。当然の報いだ」
 恨み事を並べ立てるだけ並べ立てた男は、和也に背を向けて足早に歩き去ろうとした。その背中に向け和也は「馬鹿が」と吐き捨てる。
 いつから火星の後継者はこんな奴を飼い始めたのか。
 ――情けない……木星の面汚しめ。貴様らはただのテロリストだ!
 気がついたときには体が動いていた。腹の痛みも忘れ、数秒で男に走り寄った和也は気配に振り向いた男の顔面目掛けて、渾身の力で拳を叩き込んでいた。男は「がっ!?」と呻いて、鼻血を噴いてのけぞった。
「貴様など死んでしまえ!」
 間伐いれずに掌底、そして鋭い中段蹴り!
「がはっ、て、てめ……! は!」
 男は腰の銃に手を伸ばそうとし、大事に提げていた軍刀が和也の手にあるのに気付いた。蹴りを入れられると同時に、抜き取られていたのだ。
 それがよほど大事な物だったのか、男は銃を抜く事も忘れて掴みかかってくる。
「や、やめろ! 返せええええええええええええっ!」
 和也は軍刀の鯉口を切り、抜刀。無防備な男の体を斜交いに切り上げる。鋭い刃が男の体を斜め一文字に切り裂き、次の瞬間大量の血が、吹き上がった。
 男はたまらず膝をつく。確実に致命傷を負ったはずだった。
 それでも和也を睨む目に宿る、黒い光は衰えない。
「ゲホッ、よくも……よくもその剣で俺を切ったな。同じ木星人のくせに……裏切り者、殺してやる。殺してやるぞ……!」
 血濡れの手が和也へ伸びてくる。ぞっ、と怖気がした。和也は突き動かされるように軍刀を左から右へ、男の首目掛けて力の限り振りぬいた。
 皮、肉、骨――――人体を切り裂いてゆく感触。

 初めて、人を殺した。

 だが今の和也にそんな事を気にする余裕など無かった。男の首が床に落ちるより早く、和也は澪の連れて行かれたほうへ向け、駆け出していた。
 もし澪に少しでも手を出していたら、同じ木星人といえど容赦はしない。
 この手で、下せる限りの憎しみを叩き付けてやるつもりだった。



「……遅いな。なにやってるんだあいつは?」
「恐くなって逃げたんじゃねえのか? 腰抜け野郎め」
 男たちのそんな言葉を、露草澪は真っ暗な教室の中で聞いていた。
「な、なあ……やっぱりやめにしないか? どう考えても命令違反だぞ……」
「お前まだそんな事言ってんのか? いまさら後戻りできるわけねえだろ。お前だって地球軍に殺された兄貴の仇を討ちに来たんじゃないのかよ。それともいまさら戦争が恐いか?」
 俺は恐くないぞ、とリーダー格の男は今にも銃を乱射せんばかりに振り回す。
 恐い。この男たちはこれから酷い事をするつもりなんだと本能が告げている。恐い。
 だがそれより強いのは怒りだった。
 テロリスト。自分の目的のため、無関係な人々を殺傷する事も厭わない冷酷な確信犯――――それは、彼女から父を奪った者の名。彼女にとって何よりも唾棄すべき存在であり、許す事が出来ない連中だった。
「待っていられないな。始めるぞ。おい、その女を窓際に立たせろ!」
「あいよ」
 ついにしびれを切らした男たちが澪に歩み寄ってきた。その敵意に満ちた顔に恐怖を覚え、澪は思わず後ずさる。
 そして、その腕を澪へと伸ばして――――襲い掛かってきた。
「あっ……!」
 腕をつかまれ無理矢理に窓際へ引きずられる。見慣れた窓枠がこれでは処刑台だ。
「いや! やめて、離して!」
 そんな言葉しか出てこないのがひどく悔しい。
 観念しろよ地球人が悪いんだこれは贖罪だ罪を償えるんだから感謝しろよ――――上から汚い言葉が降って来る。
 ――同じだ。こんな人たちは。
 テロリストは――――自分たちの目的のためなら何をしてもいいとでも思っているのか? 何をしても許されるとでも思っているのか?
 こんな人たちの――――こんな奴らの思い通りになるなんて!
「絶対に嫌あっ!」
 澪は自分の腕を掴んでいる男の腕に、精一杯の力で歯を突き立てた。
 男は悲鳴を上げて遮二無二暴れるが、それでも澪は放さなかった。肉が破れて血が滴り、澪の口内に鉄の味が広がった。
「このアマ……! 放せっ!」
「きゃあ!」
 したたか頬を殴られた。
「お、おい、大丈夫か?」
「畜生、血が出た……痛い……」
「ったく、とんでもねえ女だな」
 折れぬ澪の態度に腹を立てたリーダー格の男は、腰から抜いたリボルバー拳銃をやおら澪に突きつける。
「いいか。俺達の家族はな、木星じゃずっとひもじい思いをしてきたんだ。俺の親父は戦死し、お袋はその所為で口も聞けなくなった。地球が大人しく木星に従っていればこんな事にはならなかった。地球人が俺たちに身をもって罪を償うのは当然だろうが!」
「馬鹿なこと言わないで……私の知ってる木星人はそんなこと言わなかった。あんたたちの勝手な理屈を、和也ちゃんたちや私たちにまで押し付けないで!」
 男は何も言い返してこなかった。その代わりに銃が火を噴き、澪の足元の床を鉛弾が抉った。
「地球人に何を言っても無駄だったな……体に風穴の一つも開けてやれば大人しくなるかね?」
 まだ硝煙を立ち上らせる銃口が、澪の体にポイントされる。それは男が指を引くだけで澪の肉を裂き、骨を砕くことができる凶器――――暴力の象徴とも言えるそれを前に、澪はただ萎縮する。
 ――嫌……助けて、お父さん……
「天誅だ」
 男の指が、銃の引き金にかかる。澪は目を閉じ、誰よりも来て欲しい人の名を呼んだ――――

「和也ちゃん――――!」

 血飛沫が舞った。

「があ……っ!」
 澪を狙っていた男は呻き声を上げ、澪に覆い被さる形で倒れこむ。慌てて身を引いた澪は、男の背中に刻まれた大きな切り傷と、軍刀を振り下ろした体制の和也を見た。
「和也……ちゃん?」
「澪、だい……」
 大丈夫、と言いかけた形で和也は固まった。
「……殴ったな」
 頬を晴らした澪の顔を見て、和也は澪が見た事も無いような鬼の形相で男たちを睨んだ。
「木星人の、木連軍人の面汚しが……!」
 和也の殺意を帯びた眼光が、二人のテロリストを射抜く。恐怖した二人は腰の拳銃に手を伸ばし、和也は剣を構えて斬りかかった――――
「恥を知れぇ――――――――――っ!」



 一方――――校舎西棟裏口で。

「ん……?」
 軍の突入に備えバリケードを張っていたテロリスト三人。そのうちの一人が、ぱぁん、という乾いた音を聞いた。
「おい、中のほうで銃声みたいな音しなかったか?」
「いや、俺は何も聞こえなかったが」
「気のせいじゃないの?」
「そうかな……確かに聞こえたんだが」
 空耳かと思った時、外の暗がりの中から人影が見えた。
「……! 誰だ!」
 三人は校内のパイプ椅子や机で組み上げた質素なバリケードから銃を突き出す。緊張に腹が締め付けられた。
「……撃たないでください……」
 姿を現したのは、右目に泣きボクロのある細身の少女だった。両手を挙げて非武装を示す少女。それは充分に三人の油断を誘った。
「……軍隊からの返事を伝えに来ました……だから、中の友達に会わせてください」
「そんな話聞いたか?」
「いや……」
「まあいい、こっちへ来い」
 多少の不自然さを感じたが、まさかこんな年少の特殊部隊員などいないだろう……そう判断した三人は少女の接近を許した。
「で、返事は何だ?」
「……それは……」
「それは?」
 少女は、答えた。
「……我、平和を投ぜんが為に来たにあらず、かえって剣を投ぜんが為に来たれり」
 ひゅっ、と風を切る音がした。そして、「が……!」という潰れた声。
 それが合図だった。果物ナイフを喉から生やした一人が倒れると同時に、校舎の影から稲妻のような勢いで数人の人影が飛び出してきた。
 先陣を切るのは赤毛の少女。バリケードを一足飛びで飛び越え、狼狽するテロリストの一人目掛けて手加減無しの拳を叩き込む。
「はあっ!」
 どすっ、という重い手ごたえ。首がありえない角度に折れ曲がり、二人目が絶命した。
「ひ――――――!」
 残る一人は恐慌に陥り、手にした39型木連式短機関銃を向かってくる長髪と白髪の二人に向ける。
「安全装置が外れていませんよ!」
 気にすることは無い、はったりだ! 構わず引き金を引き絞る。
 かちっ、
 弾は出なかった。
「外れてねえって言ったろう!」
 あっさり銃を蹴り飛ばされる。残る武器に手を伸ばす間もなく、哀れなテロリストはうつぶせに押し倒された。
「命が惜しかったら正直に答えろ……爆弾の起爆装置はどこだ?」
「さあな……」
 言うが早いか、右手甲をナイフで串刺しにされた。
「放送室だ!」
「はいご苦労さん!」
 後頭部を殴りつけられる。当たり所を心得た一撃は一瞬でテロリストを昏倒させた。
「二人……殺しましたね」
 沈痛な面持ちで長髪の少女――妃都美――が言った。彼等もまた初めて、それも同胞である木星人を殺したのだ。
「仕方ねえって。こりゃもう戦争だ。やらなきゃこっちがやられる」
 苦虫を噛み潰した顔で烈火が言う。
「……神よ。私をお許しください……ですが、ここで立ち止まるわけにはいきません……」
 胸の前で十字を切って、美佳。
「で、中で誰か殺られたってのは本当なの?」
 テロリストの死体から銃を失敬して奈々美が訊く。すでに覚悟を決めているのか、後悔も躊躇いもその目には無い。
「……ええ、人質の居る階で、誰か……恐らく、やったのは和也さんです」
「何かあったのでしょうか……」
 美佳の報告に、妃都美は不安げな顔をする。
「今はそれどころじゃねえ、行くぞ! 目指すは放送室だ!」
「解っています。行きましょう!」
「いいわよ、とことんやってやろうじゃないの!」
「饗宴の時は来たれり……」



 和也は雄叫びを上げて前へ踏み込み、振り上げた軍刀を目の前のテロリスト目掛け叩きつけた。
 刃はひどくあっさりと体へ滑り込み、肩口から胴体にかけてを袈裟懸けに切り裂く。派手に血飛沫を撒き散らしてテロリストは絶命し、断末魔の叫びを上げる暇も無かった。
「うわあーっ!」
 仲間を殺され動転したテロリストが和也へ向けリボルバーの引き金を引いた。弾が和也の頬を掠め血が滲んだが、和也は構わなかった。というより、気がついていなかったのかも知れない。
 お返しに体重の乗った蹴りが炸裂し、テロリストは呻き声を上げて床に倒れる。和也はその喉元へ軍刀を突き立て、止めに力の限りそれを捻った。
 この間僅か数秒――――それだけで、武器を持ったテロリスト二人が地に伏した。
 信じられない。澪は素直にそう思った。
 あの和也が、刀を振り回してテロリストを殺している――――
 その光景に目を奪われていた澪は、すぐ傍で一つの人影が起き上がったのに気がつかなかった。
 次の瞬間、血まみれになった腕が澪の首へと絡み付いてきた。
「澪!?」
 和也が振り向く。
 澪を捕らえたのは最初に切り倒されたはずのリーダー格の男だった。澪は拳銃を突きつけられ、首に腕を回されて盾にされた状態だ。こいつは背中を深々と切り裂かれたはずなのに、しぶとくも生きていたのだ。
「う、動くな! 動いたらこの女を殺すぞ!」
「か、和也ちゃん……」
 男の腕に首を締め付けられ、呻き声が漏れる。
「く……この卑怯者め」
 口惜しげに和也は唸る。古典的なやり方だが効果はある。手の出せない和也を前に、男は澪を盾にしたまま教室の外へ出た。
「こんな事をして……ただで済むと思うなよ。すぐに爆弾を爆発させてやる。そうすりゃお前等全員……」
「和也ちゃん! こんな奴に構っちゃ駄目!」
「うるさい、黙れ!」
 男は激昂し、澪を銃の柄で殴ろうと右手を振り上げる。
 瞬間、何処からか飛来した銃弾が男の手首を撃ち抜いた。
「が……っ!」
 激痛に男は悲鳴を上げ、銃を取り落とした。その隙に澪は男の手から逃れる事が出来た。
「女性は国の御宝ぞ。婦女子を盾に取るとは、木連軍人の風上にも置けぬ奴め」
 男を撃った人間が轟然と言う。楯身だ。リボルバー拳銃を半身で構える姿が妙に似合っていて、日ごろの言動の所為か軍人を連想した。
「さあ。大人しく投降してもらおう。なぜこんな真似をしたのか――――」
「楯身。こいつの言う事なんか聞く必要はない。こいつ等がやろうとしたのはただの私刑だ」
 澪を背中に庇い、和也は楯身の勧告を遮る。その殺気はまだ納まりを見せていない。
「裏切り者め……同じ木星人のくせに地球人に味方しやがって」
 腕から血を流しつつも男は毒づく。
「別に地球人に味方する気なんか無い……だけどお前たちの蛮行も同じ木星人として見過ごせない。木連軍軍規に明記してある。敵味方を問わず民間人、非戦闘員に類するものに対し故意に危害を加えた者は、上官の権限によってこれを極刑に処するってね。銃殺と斬首、どっちにする? 言っておくけど、どちらも楽ではないよ」
「どっちも嫌だね!」
 叫び、男は最後の抵抗に打って出た。和也に勝つのは無理と踏んだ男は、楯身に狙いを付け腰のバヨネットを引き抜く。楯身にも油断があったのか咄嗟に撃つ事が出来ず、バヨネットの切っ先が楯身の心臓へ突き込まれて――――
「――――っ!?」
 男は驚愕に呻いた。
 絶対に心臓を刺し貫けると思った。だがバヨネットは服を突き抜け、皮膚へ食い込んで――――そこで、止まっていた。
「なんなんだよお前等は!」
 楯身の蹴りを顎に喰らい、男はあっさりと蹴り倒される。抵抗の術を失った男の脇に、静かに和也が立ち、軍刀を逆手に構えた。次の光景を予想した澪は両手で目を塞ぐ。

 ――――そして、耳を引き裂くような絶叫が響き渡った。

「やっちゃったよ……」
 テロリスト四人を殺した和也は、どこか自嘲的にそう呟いた。
「謝っても、許してもらえるわけないよね……」
「……隊長」
「解ってる。こうなってしまったらやれる所までやってやるさ……!」
 和也は軍刀にこびり付いていた血と脳漿を振り払うと、壁に立て掛けてあった自動小銃を手に取り、妙に慣れた手つきで点検を始めた。
 澪は、震える声で問い掛ける。
「何……する……の?」
「決まってるだろ。奴等を殲滅しに行くんだよ」
 言って、和也はテロリストの遺体から武器を剥ぎ取り、楯身に渡す。本気で戦いに行く気なのだ……
「目標は敵の殲滅だ。ただし爆弾の存在を考慮して、起爆装置を確保するまで発砲は控えろ」
「敵……とは誰のことでしょう」
 楯身が言った。質問ではなく確認だ。
「敵は、火星の後継者だ!」
 了解しました、と抑揚の無い口調で楯身は答える。
 歩き去ろうとする和也達の背中に、澪は手を伸ばした。
 ――やめて、行っちゃ駄目……!
 叫ぼうとしたが、喉がからからに渇いて声が出なかった。
 不安だというだけではない。
 今ここで行かせてしまったら、もう会えない――――そんな気がしたのだ。
 そんな澪の気配を感じたのか、和也は澪を振り返った。
「……大丈夫だよ」
 必ず戻ってくるから。
 そう言った和也の顔に、テロで死んだ父の顔が重なった。
 あの顔は――――父がシラヒメに配属になった時、行かないでと泣きついた澪に大丈夫、必ず帰ってくると笑った、父の顔。

 軍人の顔だった。



 第一オオイソ高校の放送室――――
 いつもなら他愛の無い音楽や放送を流しているここは、現在は火星の後継者の司令室として使われていた。傍受される危険がある無線を使わず校内の兵士に命令を伝えられるという点で、ここは非常に都合がいい。
 今ここにいるのは火星の後継者の指揮官である男と、その護衛兵が一人。他に占拠の際ここに居た放送委員の女子生徒が三人。
 その内の一人は先ほどからすやすやと寝息を立てている。彼女は確か木星人で、名簿にあった名前は確か――影守美雪といったか。同じ木星人だから殺されるはずが無いと思っているのだろうが、それにしても図太い神経だ。
 その放送室の中に、先ほどから男の苛立った声が響いていた。
「おい! 何があった!? 状況を報告しろ! おい!」
 怒鳴っているのは火星の後継者を束ねる指揮官だ。腕の他用途通信機――――コミュニケに向かって必死とも取れる顔で怒鳴り声を上げている。傍受されれば混乱が外の軍に気取られるだろうが、今はそれどころではなかった。
「んー……何かありましたの?」
 安眠を妨げられた美雪は眠い目を擦りながら問い掛けた。周りの放送委員が、「ちょっと、美雪!」と小声で咎める。
「うるさい。いいから座っていろ」
 美雪が木星人と知って声を抑えてはいたが、他の女子を震え上がらせるには充分な声色だった。それだけ指揮官は苛立っていた。
 軍の突入などに対しての備えは万全のはずだった。万が一に備えての保健として他の人質とは別に放送委員をここへ留め置き、もし軍の突入で人質を解放されても盾にして逃げられるようにした。さらに屋上には見張りを兼ねた狙撃兵を配し、異常があればすぐに伝わる。
 なのに、今のこの状況はどういうことだ。
 数分前、何処かから銃声のような音が聞こえたかと思うと、数人の兵から連絡が途絶えた。それからも西棟に配置してあった兵から次々連絡が途絶している。
 ――やはり、殺されたのか。
 軍の突入部隊? しかし屋上に配した狙撃兵から軍に動きがあったという報告は入っていない。第一、何故兵から何の報告も入ってこない?
 いずれにせよ、犠牲者が出た以上は作戦失敗だ。すぐにでも残っている兵を集めて、逃げなくてはならない。
 無論、ただで逃げ帰ってやるつもりは毛頭無い。
「撤退の準備をしろ。爆破の用意は?」
「整っています」
 その言葉に、放送委員たちは色めき立った。
「本気でここをぶっ飛ばすつもりですの!?」
 美雪が叫んだ。
「私たちは!? 残っている生徒の皆さんはどうなさるんですの!?」
「知った事か。爆弾のことは既に通告してあった。にも拘らず軍は我々の要求を突っぱねた。自業自得だ」
 恨むなら軍と政府を恨め。指揮官はそう言った。
「ここには……木星人の生徒もおりますのよ?」
「勿論木星人は逃がす。君たちも助けよう。地球人の生徒は、運が悪かったと思ってもらうしかないがな」
「さあ、来るんだ」
 護衛の兵士に銃を突きつけられ、美雪と放送委員は渋々立ち上がった。
「火星の後継者は……正義の味方ではありませんでしたの?」
 美雪の詰問に、今でもそのつもりだが、と指揮官はうそぶく。
 ふう、と美雪は溜息を一つ。
「……なら、仕方がありませんわね」
 次の瞬間、とーん、と美雪が跳んだ。
 美雪はほんの僅かに腰を落とし、次の瞬間天井近くまで飛び上がった。そして空中で一回転するウルトラCを決めると、指揮官の背後へ着地した。当然護衛兵が銃を構えたが、指揮官を盾にされてはどうにも出来なかった。
 指揮官の腰から拳銃を抜き取り、その脇下から腕を突き出して撃つ。護衛兵の額に穴が穿たれ、血と脳漿があたりに撒き散らされる。
 部下の死を見た指揮官は反撃を試みた。脇下から突き出された腕を掴み、強引に床へ引き倒す。「あっ!」と悲鳴を上げ、意外なほどあっさりと美雪は倒れた。無防備になったその姿に指揮官は一瞬、攻撃を躊躇する。
 その一瞬の隙を突いて、美雪の無事な左手が伸びた。
 ただの苦し紛れの一撃ではない。
 腕を振りぬいた瞬間、鈍色に輝く何かが美雪の指先から飛び出し、それは刃の鋭さで指揮官の喉元を深々と切り裂いたのだ。
 悲鳴は出なかった。
 切断された頚動脈から溢れた血が、指揮官の気道を塞いだからだ。呼吸もままならず自分の血で溺れかかる。
「……はあ。わたくしったら何やっているのかしら……」
 自嘲気味に溜息をつく美雪。目の前で死にかかっている指揮官にはもう頓着していない。
 美雪の左手からは、なにやら鋭い刃物らしき物が伸びていた。いわゆるバクナグという武器かと指揮官は思ったが、よく見ればあれは指と爪の間から直に刃が生えているのだ。
 ――あれは……まさか暗殺者の爪。
 襲い掛かる苦痛をどこか他人事のように感じながら、指揮官は以前人から聞いたことのある武器の名を思い出した。本物だとすればとんでもない事だった。
 自分たちが知らず虎の巣に入り込み、虎の尾を踏んでしまったのだと、指揮官はいまさらながらに知った。
 ――それが、火星の後継者の指揮官の、最後の思考だった。



 突然ばん、とドアを蹴破らんばかりの勢いで、二人の男が放送室に乱入してきた。
「動くなっ!」
 怒声が跳び、銃口が向けられる。放送委員たちがまた悲鳴を上げ、美雪は、
「あら。ご到着ですか。ご苦労様ですわね、お二方」
 と、平然と言い返した。それを見た二人は「美雪……」と銃を下ろす。
 見知った顔が、そこにあった。
「和也……いえ、今は隊長とお呼びしたほうがいいかしら。それに楯身様も。やっぱり、あなたたちでしたのね?」
「危うく撃つところだった。寿命が縮んだぞ」
 相手――――和也は額の汗を袖で拭いながら言った。やたらと血のり臭いのは、和也も何人か殺してきたのだろう。
 火星の後継者が占拠の際に校内放送でメッセージを流した事から、指揮官と起爆装置は放送室だと踏んだ二人は――尤もこれを考えたのは楯身なのだが――途中何人かのテロリストを排除しながらここへ来たのだった。
 どうやら一足遅かったようだが。
「それはこっちの台詞ですわ……もうちょっとでこのげす野郎はここを爆破するところでしたのよ?」
 足元で血の池に沈んでいる指揮官を指差し、美雪は辛辣な台詞を吐く。
「む……一応気取られないように来たつもりだったんだけど。それに……」
 和也は弁明を試みるが、「まったくだ」という後ろからの言葉に遮られた。
 見慣れた顔が四つ、和也の後ろに並んでいた。
「一時はどうなる事かと思ったのよ」
 人質の中には居なかったはずの奈々美が憮然として言った。
「お前たち……! なんでここにいる?」
「何でって、助けに来たに決まってるだろ」
 そう答えたのは烈火だ。
 控えめに言えば喧嘩っ早い、遠慮なく言えば好戦的なこの二人なら、和也達が人質にされたと知って助けに来る程度の事はやりかねないだろう。それにしても、
「美佳に妃都美。お前らまで来るとは思わなかったぞ」
 和也はあとの二人に目を向ける。
「……さあ、神の思し召しでしょうか……」
 美佳が表情を変えずに言った。
 目の見えない彼女には『神の目』と自負するものがある。彼らがここまで来れたのも、その恩恵だろう。
「心配にもなります。いつ軍が強硬手段に出るか解りませんでしたし、火星の後継者は要求が入れられなければ学校を爆破すると通告していましたから」
 妃都美の言葉に、楯身が反応した。
「火星の後継者は、本当にここを爆破するつもりだったのか?」
「ええ、こいつが爆破の用意をしろと。起爆装置もここに」
 美雪の見せたリモコンを、烈火は「なんて馬鹿だ!」と吐き捨て、叩き壊した。
「僕は驚かないよ」
 ふん、と和也は鼻を鳴らす。
「……なんかあったのか?」
「和也さんが動く時、誰か部屋から連れ出されていましたね。まさか……」
「ああ、……奴等は、軍が動かないなら澪を殺して見せる気だったらしいね」
 なっ! と動揺が走った。
「『地球人はこうなって当然だ』とさ」
「なんて奴等!」
「なぜ、こんな事に……」
 さてね。と和也。
「火星の後継者は、ただの暴力集団に成り下がったようだ。もう思想も理念も無いよ」
 草壁閣下の掲げた理想も――――と言いかけて、和也はその言葉を飲み込んだ。
「和也さん……いえ、隊長。数人の敵が接近しています。指揮官からの通信が途切れたためと思われます。……指示を」
 美佳の報告に和也は黙って頷き、護衛兵が持っていたアルザコン31を手に取った。ブルバップ式の短機関銃で、グレネードランチャーと一体化した強力な銃だ。
「爆弾は抑えたし、西棟の敵は殆ど制圧したね? 人質への脅威があらかた取り除かれた以上、やる事は一つだろ」
 和也はアルザコンへグレネードを装填、入り口へ向ける。
「次の目標は火星の後継者の殲滅だ。あの木星の面汚しどもに正義の鉄槌を食らわせてやれ!」
 我等の戦いに木星の加護を! 皆が唱和する。

「――我ら、『草薙の剣』。木星の正義の元に、悪を討つっ!」

 引き金は引かれた。





あとがき(なかがき)

 ……オフィシャルキャラの出番が無い。とにかく事態の急変と、戦闘開始でした。今回予想以上に話が伸び、前後編と相成りました。

 今回でオリキャラそろい踏み。多分敵方以外ではもう出てこないでしょう。
 七人は多すぎかなと思いましたが、いかんせんオフィシャルキャラで白兵戦のこなせる人って限られるんですよねえ。当分は対テロ戦が主体となる以上、白兵戦は外せないのでこうなりました。
 まあ、半分は趣味が入ってますが。(笑)

 なんだか血の表現がありますが、すみません、これは私のポリシーみたいなものでして。
 やっぱりね、人が殺される瞬間ってのはもっと恐ろしくて苦痛に満ちたものだと思うのですよ。まあ嫌だって人もいるでしょうから、手加減はしますが。

 それでは、また後編でお会いしましょう。


 

感想代理人プロフィール

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代理人の感想

やっぱ7人ってのは多すぎると思うけどなぁ(苦笑)。

「七人の侍」だって記憶に残るのは精々四〜五人程度じゃないですか?

それだって老練な、しかも坊主頭の指揮官とその副官、若侍、13歳のおっさん、求道者と、

全員まるでキャラが違っていたし、面子を集める過程でそれぞれにエピソードもあったからであって、

今回はちょっとキャラ立ちが足りないんじゃないかと。

最初でつまづいただけに、挽回したいなら結構労力が必要だと思いますよ。