投げよこされたデータチップには、木星プラントからカリストの、ここヴァルハラ主街区に向けた不審な大量の資材の流れがあるらしい旨が記されていた。
 その行き先は巧妙にカモフラージュされていたが、最終的にはカリスト行政区警備隊の施設へと消えているとあった。
 ヴァルハラコロニーは主街区の収まった中央の巨大コロニーと中小のコロニー数個からなる。それら中小コロニーは主に工業施設や生産施設、そして軍事施設が収まっていて、コロニー同士はチューブ型の通路で連結されているため車で行き来可能だ。
 その一つがカリスト行政区独自の戦力たる警備隊の施設だ。軍より一つ下の準軍事的な組織であり、施設も基地とは呼ばないが、周辺宙域の警備・治安維持のほか戦争における本土防衛も担うそれはグラビティブラスト装備の戦艦も保有しており、その戦力は軍の小艦隊に匹敵する。
 警備隊という名前にはいささか過剰な戦力を保有する施設。
 データの精査を三日がかりで終えた和也たちは、思った以上に怪しい場所が絞り込めていた事に驚きながらもそこへ向かったのだった。
「ここは確かに艦艇の収容能力があるけど、火星域に現れた甲院の艦隊が収まる大きさじゃない。……警備隊がその一部である可能性は、否定できないけどね」
 ウィンドウに表示された警備隊施設の見取り図を前に、和也が再確認の意味で皆へ語ったのは、警備隊施設へ向かう反重力タクシーの車内での事だ。本来ブリーフィングの進行役は澪なのだが餅は餅屋というべきか、木星の軍や警備隊の施設などに関しては和也たちのほうが詳しかった。
「ただし、それはあくまで『警備隊の』話。ここはもともと木連軍との共用施設だった。警備隊のそれとは別に軍の無人艦隊、およそ300隻を収容可能な地下ドックを備えてる」
『あの艦隊も十分入るって事だね』
 そう、澪。
「戦争が終わった後、統合軍の創設に伴って木連軍の保有していた無人艦隊は大半が解体、このドックも閉鎖された事になっているけど、いままでのパターンを考えると特に後者はまったく信用できない」
「あんな大艦隊が出入りして誰も気付かないなんて普通はありえませんが、行政区ぐるみで協力しているのなら筋は通ります。そこで……」
「あたしたちが忍び込んで中を見てくる、と。まーチマチマ人と話しながら情報収集するよりいいわね」
「……この偽造IDがあれば、警備隊の施設にも入り込めるはずです……本当に入りたい場所は除いてですが……」
 妃都美、奈々美、美佳と、自分たちの役目を再確認する。
 怪しまれずに警備隊施設へ入り込むため、和也たちは久しぶりに木連軍の制服に身を包み、『本物の』木連軍から寄越された事務要員に扮した。通常業務での訪問を装ってはいるが、バッグや鞄の中には武器装備一式を納めた完全武装だ。
『にしてもごめんねみんな。ナデシコみたいにハッキングで中を探れれば危ない事しなくてよかったのに……』
「気にしないで……というか、それじゃあ僕たちの出番がないよ」
 すまなそうな顔で言った澪に、和也は苦笑する。
 所詮『普通の』艦に過ぎないフリージアに、軍のファイアウォールを気付かれず突破するような電子戦装備などあるわけがない。電子の妖精たるルリとナデシコCが特別なのだが、その特別な艦に長く乗りすぎた澪は感覚がそちら基準になってしまっている。
「できたとしても、敵だって警戒して外部ネットから切り離してるさ。やる事は変わんないよ……じゃあ、ここからは通信を探知されるから、切るよ」
 敵に察知されないよう通信を切ろうとした時、『あ、和也ちゃん……』と澪が止めた。
『任務とは関係ないんだけど、その……帰ったらふたりで話したい事があるんだけど、いいかな?』
「なんだか縁起の悪い言い方だけど、何の用が……」
「ちょっと和也。そこで何の用だとか聞くのは野暮だわよ」
「それは帰ってからのお楽しみに取っておくべきですよ」
「……ふたりで話したいと言っているのですから、そうしてあげるべきです」
 何気なく聞き返した途端、皆から集中砲火を受けた和也はぎょっとしてのけぞった。何だって言うんだ。
「わ、解った解った。帰ったら話し聞くよ」
『や、約束だからね? ……ああ言っちゃった、言っちゃったよぉ……』
 顔を真っ赤にした澪が何事かを呟いたのを最期に、今度こそ通信が切れる。
 こんな時に何だと思ったが、ここでそれを言えばまだぞろ女子連中の集中砲火を浴びるのは和也にも予想できたので口を噤んだのだった。



 澪としては一世一代の覚悟をして約束をしたわけだったが、生憎と和也たちにとってはすぐそれどころではなくなってしまった。
 和也たち『草薙の剣』は訓練時代に警備隊の施設を訪れた事があったが、今のカリスト警備隊施設は当時とは明らかに違う異様な空気に包まれていた。
 行きかう青い学ラン――軍のそれと区別するための警備隊の制服――を来た警備隊員たちは、木連軍の制服を来た和也たちに明確な敵意の目を向け、聞こえよがしに舌打ちをしていくような者も一人や二人ではなかった。
 頭上を行く明らかに増強された艦隊の威容に内心不安を覚えながらも、旧木連軍地下ドックへ侵入した和也たちを、二人の警備隊員が厳しい声で呼び止めた。
「おい、ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ!」
「軍のIDですが……」
 和也がコミュニケを見せた、その刹那――――
 ぽんぽんぽん、という気の抜けた音は、消音器サイレンサーで抑えられた銃声。
「ぐあ!」
「ぎゃ……っ!」
 くぐもった悲鳴を上げて、数発の銃弾を胴に受けた警備隊員二人が崩れ落ちる。その手から二挺の拳銃が床に落ちてかつんと音を立てた。
「いきなり撃ってくるなんて、ここは当たりみたいだね」
 消音器付きの88型木連式リボルバーに弾をリロードしつつ、和也は射殺した二人の警備隊員を見下ろす。
 この二人が本物の警備隊員なのか、それとも警備隊員の格好をした火星の後継者なのか……あるいは両者がイコールになっているのかは判然としないが、問答無用で殺しに来たからにはここに見られたくないものがあるのは確実だ。
「……周囲に人影は何人か見えますが、エレベーターに至るまでの経路に敵は見えません……」
 レーダーで周囲を索敵して、美佳。
「イージーだね……」
 誘われている。それはなんとなく感じていた。
 見られたくないものがある割には手薄な警戒。ここが怪しいというデータが今になって手に入ったのもそうだが、すんなり行き過ぎる。
「いいですよ。向こうがその気なら、こっちも受けて立ちます」
「面白いじゃない。歓迎してくれるんでしょう?」
「……虎穴に入らずんば虎児を得ず……行きましょう」
 皆の腹は決まっているようだ。頷き合い、警戒しながらも小走りに地下へのエレベーターへと向かい、地下へ降りる。
 長い無言の時間が過ぎ、エレベーターが地下のドックへと着いて扉が開いたその時、果たして和也たちの前には予想通りの光景があった。
「……っ!」
「これは……」
「…………」
「やっぱりここにいたのか……」
 面積で言えば都市が丸々一つ収まるほどの広大な地下空間。その天井近くに張り巡らされたキャットウォークの上から見下ろした先には、地球のリアトリス級戦艦、デンドロビウム級戦闘母艦、サクラ級駆逐艦、木連のゆめみづき級戦艦、四連筒付木連式戦艦、ヤンマ級無人戦艦、カトンボ級無人駆逐艦――――本来一隻の艦艇も納まっていないはずの閉鎖された地下ドック内を埋めるほどの、火星の後継者のマーキングが施された無数の戦闘艦艇が鎮座していた。
「凄い数だ。200隻……くらいいるのか?」
 目の前にある敵の大戦力に呆然としながらも、和也は義眼の録画機能をオンにする。これから見聞きするものは全て記録した上で統合軍に伝えなければならない。
「艦番号照合、先の火星宙域での戦闘にて確認された艦艇と一致する艦、多数……」
 左腕に装着したウェアラブル・コンピュータを操作しつつ美佳が言う。この艦隊は、あの時の甲院の艦隊で間違いないという事だ。
「壮観な眺めだわね……見て。あの時の相転移砲艦……の同型艦だわ。建造途中みたいね」
 奈々美が指差した先には、数隻の工作艇が慌しく行き交い、ブロック化された艦の一部を組み立てている一角があった。そこで溶接の火花を散らしているのは、間違いなく火星域の戦闘で暴威を振るったあの相転移砲艦と同型の艦だ。
「二番艦以降も建造中ってわけか……」
「……二番艦……であればまだいいのですが……」
『鷹の左目』で建造中の相転移砲艦を観察していた妃都美が、重苦しい声音で言う。
 和也も右目のズーム機能でその艦を見てみると、形が出来上がりつつある艦首部に艦番号が振られているのが見えた。
「3711……?」
 艦番号は艦種を表す上のケタと、艦の建造された順を表す下のケタで表される。この場合、371−1ならこの艦が一番艦になるが、火星宙域で既に完成された同型艦が投入されている以上は考えにくい。
 そして次の可能性を考えた時、和也は胃の中に泥を詰め込まれたような、強烈な不安感に襲われた。
「まさか十一番艦……? 冗談きついよ……」
 艦番号を37−11と呼んだ場合、それはこの艦が同型艦の十一番目であり――――既に十隻近い相転移砲艦を、火星の後継者が完成させている恐ろしい可能性の示唆に他ならなかった。
 統合軍と宇宙軍、そして北アメリカ連合やEAU等の地球連合主流国が保有している相転移砲艦を全てかき集めても、十隻に満たないだろう。火星の後継者は通常兵器ではなく、戦略兵器の数で地球連合と戦おうとしている……のかと和也は思ったが、そこへ奈々美が声を上げた。
「でも、だったら他の艦はどこ行ったのよ。ここにはあの建造途中の奴以外は見当たらないわよ」
「……別のドックに移されたのか……あるいはもうどこかで作戦開始を待っているのか……」
 いずれにせよ、もっと情報が要りますね、と焦燥の滲む声で美佳は言う。
 相転移砲艦がその砲口を不意打ちで地球に向けたとしたら――甲院がそのような非道をするとは、和也たちとしては思いたくないが――地球の諸都市は一瞬で壊滅する。それを防ぐためにも、相転移砲艦の所在に繋がる情報を得なければ帰れない。
「あそこに管制室のような建物があります。あそこの端末からなら、データを引き出せるかもしれません」
 妃都美が指したのは、ドックの中央付近にでんと鎮座した構造物だった。天井近くに大きく張り出した一角があり、そこの先端部には大きな窓がある。妃都美はそこをドック内の艦を管制する部屋だと思ったようだが、
 ――はて、ここってあんな建物あったかな……?
 以前同じようなドックを見た時、ど真ん中にあんな艦が移動する妨げになるような構造物があった覚えはない。奇妙な違和感があったが、それを説明できそうになかった和也は何も言わずに皆とそこへ向かった。



 大型構造物の中には多数の敵兵がいたが、美佳のレーダーによって遭遇を避け、避けられない敵はナイフとサイレンサー付き拳銃で音もなく排除しつつ、和也たちは上の管制室へと向かった。
 だがそこへ辿り着いた時、和也たちは違和感を決定的にする事となった。
「ここは管制室……?」
 潜んでいる敵がいないか油断なく拳銃を向けながら、妃都美は戸惑いを露わにする。
 管制室と思っていたそこは、空港や港湾で見るそれとは明らかに趣を異にしていた。
 多数の椅子とコンピューター端末が機能的に配置され、天井や壁面には隙間かないほどぎっしりとディスプレイ類が配されている。後部中央の一段高くなった場所には司令官席のような立派な椅子があり、前部中央には――――操舵輪が。
「違う、まるで戦艦のブリッジのような……ここで躁艦訓練でもしようってのか?」
 バーチャルリアリティーでいくらでもVR訓練できる時代に、わざわざ戦艦のブリッジを模した部屋など作る意味が解らない。和也が困惑していると、「あ……あんたたち、これ見て……!」と窓の外を見た奈々美が引きつった声で皆を呼び、和也たちは何事かと奈々美の元へ駆け寄った。
「どうした? 何かあるの?」
「ここ、何かの建物だと思ってたけど、これって……」
 奈々美は驚愕を隠しきれない顔で、搾り出すように言葉を吐く。
 前面一杯に広がった窓からは、ちょうど左右に居並ぶ火星の後継者の艦隊が一望できる。その真ん中を遮るように鎮座した、この構造物と巨大な砲塔もだ。
「な、まさかここって……」
「そんな……」
 その光景に理解が及んだ時、和也たちはとんでもない見落としと勘違いに気付いた。
 和也たちの眼下に見えるのは二門の砲身――恐らくはグラビティブラスト――を突き出した、それ自体が駆逐艦の船体にも匹敵するサイズの砲塔だ。そんな代物がここから見えるだけでも左右三基づつ二列。計六基並んでいる。
 そんな物を搭載しているのは、それ以上に化け物じみたサイズの船体であり――――和也たちはその船体中央から突き出した上部構造物からそれを見下ろしている。

 和也たちのいるここは――――桁外れに巨大な戦艦のブリッジだ。

「隣のリアトリス級と比較すると、全長は1000メートル……一キロは確実にあるのではないかと……」
「あんまり大きいもんだから、最初戦艦とさえ思わなかった……だけど、こんな大きい戦艦まで造って、甲院はいったい何をしようとしてるんだ」
 この戦艦が相当な火力と、きっと相転移砲を備えているのは見れば解るが、いくら強力な戦艦があったところで地球軍全軍との戦力差は簡単には覆らない。
 あるいは相転移砲の威力にものを言わせて、正面決戦を挑む気なのかと思ったか、あの甲院が、そんな単純な策でよしとするものか、和也たちには大いに疑問があった。
「……和也さん。データの読み取りを開始しています……見てください」
 和也が甲院の意図を計りかねていると、美佳が呼びかけてきた。和也たちが目の前の光景に絶句している間、目の見えない美佳は視覚情報に意識を奪われずに端末にアクセスしてデータの抜き取りをしていたらしい。
 中空にいくつものウィンドウが現れ、和也たちは食い入るように目を通す。
神在月かみありづき……それがこの艦の名前か。全長1157メートル、相転移エンジン十六基搭載、武装は二連装旋回砲塔型グラビティブラスト十二基二十四門、VLS1024セル、対空迎撃レーザー砲、レールガン……それから相転移砲か。艤装はほぼ終わってるみたいだな……」
「こっちはあの相転移砲艦の情報だわね。宵闇月……気取った名前だこと。相転移エンジン四基搭載、武装は相転移砲と最低限の対空レーザーだけ。本当に相転移砲を撃つだけの艦なのね……」
「これは……相転移砲艦の出航記録です。やはり十隻近い相転移砲艦が、ここで建造されたのちに出航しています。行き先は……くっ、暗号化されていて読めません……」
 和也、奈々美、妃都美がそれぞれ目にした情報は、どれも火星の後継者の戦力が整いつつあり、次の攻勢作戦が近い事を示すものだ。それだけでも重要な情報だったが、その中に一つ奇妙な文書ファイルがあった。
「なんだこれ、予備作戦計画の改定……プラン丙改……?」
 それは二年前の、第一次決起の作成計画について記されていた。
 当時の火星の後継者の作成計画は、大きく分けて二つ。一つがプラン甲。拉致したA級ジャンパーを使ってボソンジャンプを制御し、それによる同時奇襲攻撃で地球連合の中枢を占拠する計画。
 もう一つがプラン乙。プラン甲発動前に火星の後継者の存在が公になった時の予備計画で、各ターミナルコロニーと火星極冠遺跡を占拠して統合軍の攻勢に抵抗し、プラン甲のための研究時間を稼ぐ計画。この二つはその結果も含めて、和也たちがよく知っている計画だ。
 だがそれ以前に甲院は、A級ジャンパーの拉致に失敗するなどで研究が頓挫する可能性も考えていたようだ。そのためにボソンジャンプに頼らない三番目の予備計画を策定していた。それがプラン丙。
「地球連合内の不満分子と接触し、彼らにテロや内乱を起こさせ地球連合を分断、弱体化させたところを制圧する……ですか。今まで彼らがやってきた事ですね」
「ボソンジャンプの研究に成功して要らなくなった計画を、負けた後で復活させたってわけね。情報としては重要じゃないわね」
「……待ってください。まだ続きがあります……」
 美佳がウィンドウのテキストをスクロールさせる。それによると、遺跡と共に回収されたナデシコAに搭載されていた相転移砲の現物、それを元にした相転移砲艦の建造と、火星極冠遺跡を占拠した時に見つかったもう一つのシステムの実用化、この二つの課題を解決できた事で、新たな作戦計画を実行可能になった、とあった。
「遺跡由来のシステム……ミラーリングシステム……?」
 その見慣れないシステムの概要を読み進めるにつれ、和也たちは背中を冷たい汗が伝い降りていくのを感じた。
 間違いなく、これは火星の後継者の切り札で――――地球連合を倒すに十分なものだ。この圧倒的すぎる暴力が地球に到達したなら、ユリカの『計画』さえ潰されてしまう。
「これが甲院の大戦略……グランドデザインか……」
「その通りですわ。なかなかのものでしょう?」
 突然投げかけられたその言葉に、和也たちが弾かれたように振り向く。瞬間、目の前に鈍く輝く刃があった。
「美雪……!」
「そんな名前の人は知りませんわねえ……わたくしは『影守』ですわ」
 和也の眉間に『暗殺者の爪』を突きつけて放たれたその言葉は、『美雪』として生きてきた時間を捨てるという宣言のつもりか。
 言い返す暇もなく、『神在月』ブリッジの装甲ドアが開き、靴音も高く十数人の火星の後継者兵がなだれ込んできた。一瞬にして和也たちを取り囲んだその連中は、一部が巨大な武器を構えるなど一目見て解る異様な雰囲気の一団だった。
 ――こいつら、全員生体兵器か……!
 地球のナノマシン技術なども取り入れて量産化された、和也たちの後輩。
 そして、彼らの中からチェーンや髑髏のアクセサリーでジャラジャラと飾り立てた火星の後継者の制服を着て、軽薄な笑みを顔に貼り付けた爬虫類面の男が一歩歩み出てくる。その面相を見た途端、抑え切れない嫌悪感が喉の奥からこみ上げてきた。
「うぇーるかーむ弟たちよ。地球から木星へのJターンは大歓迎だぜ」
「殲鬼……先輩……」
「ちいっと遅れたが里帰りの祝いだ。受け取りな」
 言って、殲鬼は和也たちへ向け大き目のずだ袋を放り投げる。当然誰も受け取るはずはなく、どさっ、と重い音を立てて床に落ちたそれから中身がごろごろと転がり出る。
「…………っ!」
「う……!」
 その中身を見た途端、和也たちは思わず呻く。
 袋から転がり出てきたのは……恐怖と苦痛を顔に貼り付けた、人間の生首だった。見るも無残な姿となった五人分の顔に、和也は見覚えがあった。
「第八小隊……チームバロック……」
「おう。お前らを監視して、何かあった時には助けずに報告する役目だったJTUの連中だぜ。お前らは俺様たちをおびき寄せる撒き餌だったわけだなぁ」
「お粗末に扱われたものですわね」
 殲鬼と美雪の言葉に、周囲の火星の後継者兵もくつくつと嘲笑を浴びせてくる。
「ねえ、馬鹿馬鹿しいと思いません? 皆様方、完全に捨て石にされたようですわよ。統合軍にいいようにこき使われて無駄死にするなんて、馬鹿馬鹿しいと思いません?」
「そうでもないよ。こうしてエサに食いついてきてくれたじゃないか」  撒き餌云々は和也たちにとって周知の事実だ。いまさら動揺したり騒いだりする事ではない。
 それよりも美雪がこうして揺さぶりをかけてきた事のほうが重要だ。この期に及んで和也たちを仲間に引き入れたがるという事は、まだ心が完全に離れてはいない。
 説得次第では取り返せるかもしれないが、今の不信と憎しみにかられた美雪をどうやったら説得できるのか、交渉人ネゴシエイターでない和也には思いつかない。
 和也が言葉を捜していると、その横から一歩踏み出た者がいた。
「……むしろ敵の甘言に踊らされて、仲間と思い人を裏切るほうが馬鹿馬鹿しいと思いますよ……美雪さん」
 そう言い返したのは美佳だ。その辛辣な言葉には美雪だけでなく、和也たちも少なからず驚いた。
「…………何がおっしゃりたいのかしら、美佳さん?」
「……盾身さんの事です。彼が何を望んでいたか……知らないあなたではないはずです」
 美佳の言葉は淡々と、しかし強い怒りを孕んで美雪へと投げつけられる。
 思えば、美佳は美雪と同じ『草薙の剣』の年少組で、タカツキ・キョウカとも友人だった。盾身の心変わりの理由も、三人の三角関係についても一番よく知っている。
 だからか、美雪の裏切りに対して、美佳は特に強く憤りを感じている様子だった。
「……ですがあなたは、短絡的にもそちらへ行きました……それがナデシコの皆や私たちだけでなく、盾身さんも大いに裏切ったと……あなたは気付いていないのですか?」
「そういうあなたがたは何をしてますの。先輩方を皆殺しにして、わたくしたちを騙して、盾身様を死なせたあの『家族』から離れもせず、盾身様の仇も取ろうとせず、なぜ黙って捨て石にされちゃっているんですの?」
「ちょっと口挟むけど、あたしたちをここに寄越したのは統合軍よ……宇宙軍とお母様は絡んでないわ」
「……お母様?」
 奈々美の言葉に、美雪は眉をひそめる。
「先輩方の事や、盾身さんの事について、私たちはお母さんと話し合いました。お母さんは罪滅ぼしの意味も込めて、私たちのために最大限の助力をすると言ってくれたんです」
「……盾身さんも、お母さんの未来図に希望を見出していたはずです……美雪さん、許せない気持ちは解りますが、どうか盾身さんの希望を踏みにじる事だけはやめてください……」
 妃都美と美佳が、ユリカの『計画』こそが盾身の望んだ事なのだと美雪に説く。
 本当に盾身を愛していたのなら、美雪はこんな所にいるべきではない。復讐も仇討ちも、盾身の遺志に反している。
 盾身の事を誰より理解している和也たちだからこそ、そう断言できるのだ。だが、
「さっきからお母様とか母さんとか……まさかミスマル准将の事を言ってますの? 気持ち悪い……ああ気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪いっ! 鳥肌が立ちますわっ!」
 美雪が突然金切り声で叫びだし、和也たちは思わず言葉を失った。
「家族ごっこはうんざりですわ! まさかあの女が本当に皆様を『家族』にしてくれたとでも? 誑かされたものですわ! 連中はいつもそうやって、わたくしたちを食い物にしていくんですのよ! わたくしには……わたくしには盾身様しかいなかったのに!」
「美雪……!」
「……美雪さん……」
 美雪の言葉は支離滅裂だが、その怒りや憎しみがユリカたち以外の誰かにも向けられているのは和也たちにも解った。
 どうやら説得の言葉が図らずも、美雪の過去の古傷に触れてしまったようだ。盾身を失った傷が、過去の傷を刺激してフラッシュバックを起こしている。
 あの美雪をここまで取り乱させ、かたくなにしている原因が何なのか、和也たちは誰も何も解らない。思い返せば、『草薙の剣』メンバーの中で一度として過去を聞いた覚えがないのは美雪だけだ。
 ――くそ……
 和也と美佳は唇を噛む。
 結局、美雪は徹頭徹尾心を開いてはいなかったのだろうか。盾身の事は自信を持って断言できると思った矢先にこれだ。
 それでも、和也たちにとって美雪が家族同然の大事な仲間である事には変わりない。ましてや説得が通じていないなら、ああまで取り乱すはずはないのだ。
 なんとか説得を続けてみようと思った矢先、なおも何かを喚いている美雪をずい、と押し退けて殲鬼が前に出てきた。
「やれやれ、『影守』はお前らの事を心から心配してるんだぜ? ここにいない『烈火』も、もちろん俺様もそうだ。それが解らねえとかすっかり洗脳されてやがるな」
「……私は美雪さんと話しているのです。あなたに用はありません……」
 横からしゃしゃり出てきた殲鬼に美佳は不快そうに眉根を寄せたが、その時妃都美が美佳の肩を掴んだ。
「待ってください、あれは……」
 敵に聞こえないよう抑えた、しかし切迫した声で囁いた妃都美の視線の先――――殲鬼の右手に、何かが握られている。チラチラと、まるで和也たちへ見せ付けるような手つきだ。
 それが爆弾――恐らくは美雪と烈火の装備に仕込まれた――の起爆スイッチだと、殲鬼の人となりをよく知る和也たちには容易に直感できた。
「うちの『影守』を惑わすんじゃねえよ、卑劣な裏切り者。それ以上言うなら容赦しねえぞ?」
 ――野郎……!
 それ以上説得を重ねるなら爆破すると言外に脅され、和也は血が出るほどに拳を握り締めた。
「和也さん……私なら、スイッチを狙撃できます」
「よせ……先輩はもともと、僕と同じ『ブースト』型の生体兵器だよ」
 銃を構え直した妃都美を、和也は断腸の思いで止める。
 どれだけ早く撃っても『ブースト』で体感時間を引き伸ばす殲鬼にはスイッチを押すに十分な猶予がある。仮にうまくいったとしても、それから殲鬼と生体兵器部隊十数人の攻撃を掻い潜り、その上で抵抗する美雪を拘束して連れ出すなど、できるわけがない。
 この場では美雪を取り返せない。口惜しさに歯噛みする和也たちへ、殲鬼がくひひ、と嫌味に笑う。
「おりこーさんだぜお前ら。今からでも投降して新生『天の群雲』に入れば許してやるよ。俺様はお前らが大好きだし、殺したくねえ」
「ふざけるなよ、先輩。だったらなんでここに烈火を連れてきてない?」
 怒りを込めて和也は殲鬼を睨む。
 殲鬼の事だ。烈火を和也たちと引き合わせれば、それこそ説得されて寝返るかもしれないと懸念したから烈火はここにいないのだろう。装備に仕掛けた爆弾といい、この男は美雪の事も烈火の事も信用などしてはいないし、警戒もまるで解いていない。
「あたし、あんたの下で戦いたいって思った事は一度もないのよね」
「……『天の群雲』の先輩方はいざ知らず……殲鬼先輩に魅力を感じた事はありません……」
「『天の群雲』の皆さんも、いいように使い潰したから先輩だけ生き残ったのでしょう。みんな先輩の事を信じて戦ったはずなのに……」
 奈々美も、美佳も、妃都美も、口々に殲鬼への不信を口にする。
「そういうこと。仲間を信用せず、背中を預ける意味も知らない臆病者で卑怯者のあんたに、隊長の資格があると思うか? 僕はお断りだ」
「……なるほど。そこまで嫌われたんならしゃーねえな」
 和也たちの拒絶を聞いて、殲鬼の笑みが余裕のそれから凶暴なものに変わる。
「なら無理矢理にでも兵隊にしてやるよ。薬漬けにして催眠暗示すれば大人しくなるだろ」
「やれるもんならね!」
 その決別宣言と同時に、突然濃密な煙が和也たちのバッグから噴き出した。非常時のための煙幕噴射機が一瞬にしてブリッジ内を煙で満たす。
「撤退! 退路確保して!」
 和也の号令に一拍遅れて、火星の後継者兵の一斉射撃が和也たちのいた空間を細切れにしたが、その時『草薙の剣』はすでに散開し、煙に紛れつつ火星の後継者兵へ銃撃を仕掛けた。何人かに当たったのか「ぐあ!」「ぎゃあーっ!」と悲鳴が上がった。
「どこだ、どこに行きやがった!?」
「逃がすな、撃て! 撃ち殺せ!」
「バカやめろ、同士討ちになるぞ! やめ――――!」
「レーダー型の奴、なにやってる、見えてるだろ!?」
「せ、殲鬼隊長、指示を……!」
 火星の後継者兵の間に叫び声が交錯し、混乱があっという間に広がる。中にはめくらめっぽうに銃を乱射したあげく仲間を撃ってしまう奴までいる始末だ。
 ――思った通り、こいつら錬度は大した事ない!
 元々大して錬度の高くない連中なのだろう。インプラントによる特殊能力の付与で戦闘力を底上げしているが、こういう突発的な状況では経験の浅さが如実に出る。
 煙と奇襲で作り出した隙を突き、和也は12・7ミリの機関銃をぶら下げた筋力強化型の生体兵器に肉薄する。煙の中から突然現れた和也に驚いた顔をしたそいつの喉に向けて和也はナイフを深々と突き刺し、引き抜く。切断された頚動脈から壊れた蛇口のように鮮血が噴き出し、悲鳴も上げられずに倒れた火星の後継者兵が重機関銃を取り落として、ぐわんと大きな音を立てて転がった。
「奈々美!」
「はいよ!」
 呼んだ声に答えて奈々美が駆け寄り、筋力強化型の膂力でもって落ちた重機関銃を拾い上げて撃つ。その威力を感じさせる大きな銃声を轟かせて徹甲弾が乱射され、火星の後継者兵がなぎ倒され――――ない。奈々美が狙っているのは敵ではなく、『神在月』ブリッジ正面の窓だ。
 戦艦のブリッジの窓に使われるのは、宇宙デブリの衝突に耐える事を想定した強化ガラスだ。小口径の銃弾を容易に弾き返すそれを破るために和也は敵の重機関銃を奪ったわけだが、腕力強化型でない和也に100キロ近い重さの重機関銃を振り回す芸当はできない。
 奈々美は一言で和也の意図を理解した。分厚い強化ガラスの窓に無数の弾痕と亀裂が刻まれ、その時にはもう全員が窓に向かって走り出している。  僅かな言葉とアイコンタクトだけで作戦を伝え合い、視界ゼロの中でも連携を取れる阿吽の呼吸――――敵には決して真似できない、『草薙の剣』最大の武器。
「おっらああああああああああああっ!」
 奈々美が弾を撃ち尽くした重機関銃を棍棒のように叩き付け、ブリッジの窓を割り砕く。「逃がすんじゃねえ、撃ち殺せ!」という殲鬼の怒声と共に銃弾が飛んでくるが、その時にはもう『草薙の剣』全員が外へ飛び出していた。
「美雪っ……! 今は退くけど、絶対にお前も、烈火も、助け出してやるからね!」
「……あなたはここにいてはいけない人ですよ、美雪さん……!」
 その和也と美佳の言葉が、美雪へ届いたのかは解らない。
 返事も返ってこないまま、和也たちは数十メートル下の甲板目掛けて落下していった。



「逃げやがったか……相変わらず思い通りにならねえ奴らだ」
 煙が徐々に晴れてきた『神在月』ブリッジ内で、殲鬼は忌々しげに舌打ちする。
『神在月』のブリッジから船体までは十階建てのビルに等しい落差がある。落下した場合1G重力下なら墜死を免れないが、ドック内は一部を除き重力制御されていないためカリスト本来の重力である0.12G環境だ。地球の十分の一程度の重力であれば、『草薙の剣』なら間違っても死ぬ事はあるまい。
 と、殲鬼の足首を誰かが掴んだ。
「殲鬼隊長、た、たす、助けて……」
 一人の火星の後継者兵――新『天の群雲』の生体兵器――が、撃たれて流血している腹を押さえながらすがり付いてきた。
 苛立ちがむかむかと沸き起こり、殲鬼は八つ当たり気味にその兵を蹴り飛ばす。「げぼぉっ!?」と血を吐いて悶絶するそいつに一瞥もくれず、右往左往する『天の群雲』兵に向けて怒声を上げる。
「ウロチョロしてねえで警報鳴らせ! そんであいつら追っかけて殺せ! 逃がせばてめえら全員連帯責任だぞ!」
 その恫喝じみた命令に、『天の群雲』兵たちは慌てふためき、怪我人を放り出して駆け出していく。その稚拙極まる動きに、殲鬼はチッと舌打ちした。
 正直、ここまで脆いとは思わなかった。所詮インプラントで戦闘力を付加しただけの素人集団かと、殲鬼は俯いたまま何事かをブツブツと呟いている美雪の肩を叩く。
「おい『影守』。お前もぼさっとしてねえで奴らを追えよ。こうなったら頼れるのはお前くらいなんだからよ」
「……承知していますわ。盾身様の仇は……わたくしが取らなければ……そうすれば……」
 うわ言のように呟きながら、美雪は重い足取りでブリッジを出て行く。それを見送った殲鬼はまたぞろチッと舌打ちし、相貌を歪めた。
「どいつもこいつも使えねえ……やはり俺様が動くしかねえか。……『烈火』か? 俺様だ。警報は聞こえてるだろ? 外で待機しな」



 レーザーサイトの赤い光線が、幾条も和也たちを追うように走る。
 嵐のような銃声がそこら中から響き、銃弾が雨あられと襲い来る『神在月』上部甲板を『草薙の剣』が駆け抜けていく。
「……火力支援型、10時方向の上方、距離300です……」
「了解、私がやります」
 キャットウォークの上から、M245多銃身機関銃で盛大に銃弾を浴びせてくる火力支援型生体兵器――烈火ではない事に安心した――の銃撃を、『神在月』の巨大なグラビティブラスト砲塔の影に入ってやり過ごす。生体兵器は和也たちの出てくるであろう先に銃口を向けなおしたが、妃都美は踵を返して入った場所からアカツキ狙撃銃を構えた。
 生体兵器の慌てた顔をレティクルの中心に捉えて撃つ。妃都美の銃弾は機関銃の照準器に飛び込み、生体兵器の眼窩を撃ち抜いて絶命させた。
 その隣から、今度は妃都美と同じ狙撃型の生体兵器がお返しとばかりに銃弾を浴びせてくるが、その時にはもう妃都美は砲塔の裏に身を隠し、その反対側から和也がアルザコン31のランチャーで榴弾を発射。狙撃型を吹き飛ばし、キャットウォークを寸断して後ろの敵を立ち往生させる。
「ったく、きりがないねこいつら……!」
 弾をリロードしつつ和也は毒づく。『神在月』の甲板や、キャットウォークの上から『草薙の剣』目掛けて殺到してくる火星の後継者兵はざっと見ただけでも中隊規模――――100人は確実にいる。悪くした事に、その中には相当数の生体兵器が含まれていた。
「これほど多くの人が、戦争のために身を捧げるなんて……」
 妃都美が悲しい顔をするのも解る。ナノマシンを身体に入れる程度の事さえまだまだ抵抗が大きい今日に、進んで身体を作り変えるというのは尋常ではない。個人的な恨みか、それとも生活のためか――――きっと個々人に相応の事情がある。それを利用して、火星の後継者は生体兵器を量産し即戦力にしている。
「……こんな事、いつまで続けさせるつもりなのですか……!」
 もう必要ないと思っていた自分たちに続く者たちを生み出し続け、多くの人の人生を狂わせ続ける火星の後継者へ憤りの言葉を漏らした美佳が、頭上に向けてPDWを発砲した。真上から襲い掛かろうとした、美雪と同じ運動力強化型生体兵器二人のうち一人が撃ち落される。
 美佳の射撃を逃れたもう一人が『暗殺者の爪』を振りかざして美佳へ切りかかるが、それを間に割って入った奈々美がキンッと銃身で弾く。驚いて一瞬動きを止めたその生体兵器の顔面を鷲掴みにし、そのまま豪快にぶん回す。
「どぅおりゃーっ!」
 投げ飛ばす寸前、運動力強化型の胸にぶら下がった手榴弾のピンを纏めて引き抜き、向かってくる敵の一団目掛けて投げつける。低重力下で人形のように宙を舞った運動力強化型は仲間の元に転がり、複数人を巻き込んで吹き飛んだ。
「こんなザコ連中、いくらでも相手してやるって言いたいけどさあ……さすがにこの数で押されたらジリ貧だわよ?」
 奈々美が焦燥を滲ませて言う。
 敵もこの艦を傷付けたくはないのか、大火力の武器や機動兵器を持ち出してはこない。生体兵器とは錬度と連携で優位に戦えているが、今の状況は孤立状態で多勢に無勢だ。いずれ弾薬が尽き、包囲される。そうなれば両手を挙げるしかない。
「フリージア、聞こえるか? フリージア! ……ああくそ、やっぱり無理か……」
 ダメ元で和也はフリージアとの通信を試みたが、返ってくるのは耳障りなノイズだけだ。この周辺は敵のジャミングが働いているのだろう。
「……ここで捕まるわけにはいきません。こんなものが動き出したら、地球が大変な事になります……」
「同感。何とか通信できる所まで脱出して、軍にこの事を伝えないとね」
 美佳と奈々美が深刻な顔で言い交わす。この大艦隊に相転移砲艦、そして『神在月』――――情報を送るまでは捕まれないし、死ねない。
 だが、殲鬼たちは和也たちが来る事を察知した上で待ち構えていたのだ。入ってきたエレベーターはもう封鎖済みだろう。非常用の階段も罠を仕掛けてある可能性が高く危険だ。後は……
「7時方向、上です!」
 思考を巡らせていた和也の耳朶を、妃都美の鋭い声が打つ。
 小型の工作艇が一艘猛スピードで飛来し、和也たちの頭上で旋回――――開いた側面ドアから機関銃の掃射が浴びせかけられ、「うわっ!」と飛び退いた和也の横を弾着の火花が切り裂いていった。
「くっそ、あんなのまで持ち出してきたか……」
「私が撃ちます」
 妃都美がアカツキ狙撃銃を構えなおす。操縦席を狙撃して落とすつもりなのだろうが、それを「ちょいと待った」と奈々美が止めた。
「和也、ちょうどいいからアレをかっぱらって逃げましょ。あたしが送り届けるわ」
「はあ? ……なるほど」
 それだけで、和也は奈々美の思い付きを理解した。
 妃都美と美佳に敵を牽制するよう指示を出し、和也は奈々美と共に砲塔の上へよじ登る。好機と見た工作艇がここぞとばかりに銃撃を仕掛けてくるが、そこでピシッ! と操縦席の風防にひびが入る。妃都美の狙撃だ。危険を感じた操縦士は狙撃を回避しようと旋回し、砲身の側へ遷移する。その時和也と奈々美もまた、砲身の先へと向けて走っていた。
 奈々美が砲身の先端近くで180度回って足を止め、腰を落とし、重ねた両掌を腰の高さで上向けて構える。
「行くよ奈々美! せーのっ!」
 そこへ走り寄ってきた和也が、奈々美に向けて跳躍する。手の平に飛び乗るような形に。
「よいしよーっ!」
 気合の声を上げ、奈々美は上体を反り返らせながら両腕を上に振り上げた。奈々美の手に片足を乗せていた和也の身体が、投石器の石のように放り投げられる。
 ガロンスロー。
 上半身の筋肉をフルに使い、重量物を頭上高くへ放り投げる技法だ。人間を持ち上げるのは高い壁を乗り越える時などによくやるが、地球で、常人がやってもせいぜい二階の窓に手が届く程度だろう。
 だがここは0・12G環境のカリストであり、筋力強化型生体兵器である奈々美の力を持ってすれば、ついでに奈々美と完璧に呼吸を合わせられる和也が自らの力でも跳躍したなら、頭上数十メートルをホバリングする工作艇の元まで飛び上がる程度造作もない。
 まさか生身一つで同高度まで飛び上がってくるとは思っていなかったであろう操縦士の、あんぐりと空けられた口腔目掛けて和也は空中から射撃を叩き込む。中の血煙がホワイトアウトしたガラスによって見えなくなり、その真っ白になったガラスを飛び蹴りで叩き割って中に飛び込む。横の操縦士をちらりと一瞥して死んでいるのを確認し、奥へ。
「こ、この野郎……!」
 ドアから機関銃を撃っていた火星の後継者兵が、操縦室から現れた和也に慌てて機関銃を向けてくる。
 その銃身へアルザコン31の銃身をぶつけて逸らし、銃床で眉間を一撃。止めに前蹴りを叩き込んでドアから外に蹴り落とす。「わあー!」という悲鳴が下に消えていったのを見届け、和也は急いで操縦室に戻った。操縦士の死体を椅子から引き摺り下ろして操作パネルを確認すると、ありがたい事にIFSだ。和也はIFSボールを右手で掴み、戦い続けている皆の下へ工作艇を寄せた。
「みんな乗りました! 出してください!」
「OK、振り落とされないでね!」
 全員が乗り込んできたのを確認して急発進。と、死んだ操縦士のコミュニケから怒声が聞こえてきた。
『工作艇が奪われたぞ! あいつら化け物か!』
『オレがぶち落してやる! 携行SAMの使用許可をくれ!』
『七番車両搬入口を閉鎖しろ、急げ!』
「七番車両搬入口……あっちか!」
 オープン回線から聞こえてきた場所へ工作艇を走らせる。罠である可能性がなくはないが、これが一番生存率の高い選択だと和也の感が告げていた。
 幸いな事に、七番車両搬入口は確かに開いていた。長いスロープ状になった通路の向こうに見えた地上の明かりは希望の光にも見えたが、その光が見る間に小さくなっていく。
「スピード上げてください! ゲートが閉鎖されます!」
「これが全速力だよ! ボートに腕が生えた程度の工作艇に無茶言わないでくれ!」
「ボートだったら漕げばいいでしょうが!」
 二人してスピードを上げろとせっついてくる妃都美と奈々美を恨めしく思ったが、その言葉で機体を軽くする事を思いついた。操作盤を見渡し、作業用ロボットアームの切り離しレバーを見つけて引く。
 無反応。
「ちょ、なんで反応なしなんだよ!?」
「後ろからバッタが来るわ! 追いつかれるわよ!」
「ああもう、動け! 動いてよこのポンコツめ!」
 半狂乱でレバーをガチャガチャと引く。
 するとそこへ美佳が割り込んできて、無言で手刀を操作盤に叩き付けた。その瞬間切り離しを示すランプが点灯し、ふわりとした浮遊感。ロボットアームが切り離されたのだ。
「……調子が悪い時は、これに限ります……」
 得意げに微笑んだ美佳に笑い返し、和也は工作艇を増速させる。ゲートが完全に封鎖される寸前、アンテナなどいくつかの突起物を脱落させながらも辛うじて外へ飛び出すことに成功する。
 ギリギリセーフ……と胸を撫で下ろしたのも束の間、操縦席周辺にガンガン! と弾着の火花が散り、「うわっ!」と叫んで頭を庇う。
「下からの銃撃……警備隊です! 牽制します!」
「やっぱり警備隊も敵だわ! ここには降りられないわよ!」
「一難去ってまた一難か……」
 こういう状況に陥った時は、最寄りの警備隊、あるいは木連軍の施設に逃げ込むようにと事前に取り決めてあったが、警備隊がこれではカリスト駐留の木連軍も信用しきれない。
「……仕方ありません。市街に潜伏しましょう……それで援軍を待つしかありません……」
「…………」
 美佳の進言に、和也は少し逡巡した。
 それが一番生存率の高い策なのは確かだが、町中へ逃げ込んだら一般人を巻き込みかねない。甲院が一般の木星人を巻き込むような真似をするとは思いたくないが、殲鬼だったら躊躇わないだろうという確信もあった。
 だが迷っている暇はない。
「……解った、それで行こう。ここを一気に突っ切る!」



『草薙の剣』が必死に奮戦していた頃と時を同じくして、ヴァルハラ主街区に時ならぬサイレンの音が響き渡った。
 コロニーの気密が破れた減圧警報とも、停電によって重力制御が止まった重力警報とも違う、三半規管をかき回すような不快極まるサイレン。それを聞いた人々の中では、意味を理解できた者と理解できなかった者で対応が大きく分かれた。
 足早に最寄のシェルターへと駆け込んだのは、観光客として訪れていた地球人を含む意味を理解できなかった人々だ。彼らは聞いた事のないサイレン音に戸惑いながらも、サイレンが鳴った時はすみやかにシェルターへ避難するべしというマニュアルに従って、シェルターへと駆け込んでいった。
 そして意味を理解できた人々は、一様に表情を険しくし、足早にシェルター――――へは向かわず、むしろゆっくりした動きで各々『ある物』を取りに向かった。
 チャイルドシートで眠る幼い子供を連れたドライブ中の若夫婦が、車のダッシュボードや座席の下に、
 会社に勤めるサラリーマンが、オフィスのロッカーに、
 自宅で編み物を楽しんでいた専業主婦が、家の押入れの中に、
 それぞれしまっていた物を、取りに向かった。



 警備隊の銃撃をどうにか掻い潜り、主街区へ通じるチューブトンネルに突入したところで、和也たちは妙な気配を感じた。
「妙ですね。追撃が来ません」
「バッタぐらい追っかけてくると思ったんだけどねえ……」
 後方を警戒しながら、妃都美と奈々美が訝しげに言う。あれだけ逃がすまいと攻撃を仕掛けてきたのに、トンネルに入った途端ぴたりと攻撃が止んだのはどういうわけだ。
「……逃がしてくれるつもりなのでしょうか……?」
 美佳がポツリと言う。
 火星の後継者とて、主街区での撃ち合いを避けたいのは解る。だが何か引っかかるな、と和也がこめかみにチリチリした感覚を覚えていると、
『……こち……フリージア! 和也……ん、無事!?』
「……っ! フリージア!?」
 少しノイズ混じりながらも澪の声がコミュニケから聞こえてきた。どうやらジャミングの範囲を脱したらしい。
『和也ちゃん!? 繋がった、カリスト全体で軍用通信の通信量が凄く増えてる、何かあったの!?』
「コードレッド! 繰り返す、コードレッド! ここは大当たりだった!」
『本当!? 解った、すぐに収容準備を……』
「ごめん無理。敵の工作艇を鹵獲したけど、損傷で気密の確保ができそうにない。宇宙にもカリストの大気内にも出られないよ」
『だったら、今助けに行くから!』
「それもやめたほうがいい。敵の戦力はフリージア一隻でどうにかなる規模じゃない」
 先刻見た警備隊の艦隊だけでも、フリージアを撃沈するには十分すぎる戦力なのだ。一隻で降下するには危険が大きすぎる。
「今はカリストから離れるよう艦長に伝えて。それから一刻も早く援軍を呼ぶんだ!」
『え……で、でも、そんな事したらカリストが戦場になるよ!? 和也ちゃんたちの……』
「解ってるよそんな事はっ! だけど一刻を争うんだ!」
 澪の懸念はもっともだ。和也たちも統合軍の援軍を呼び寄せて、カリストが戦場になるのは恐ろしい。
 だが、和也の冷静な軍人としての判断は、ここでの逡巡に意味はないと断言している。フリージアは既に異常事態を察知し、和也もコードレッド――――敵との遭遇を通知したのだ。フリージアの艦長たちもこの会話はモニターしているはずで、いまさら躊躇ったところでもう後の祭りだ。
 ましてや、『神在月』が動き出した時の被害はもはや想像もつかない。最悪を回避するためには、被害が出ると解っていても今行動を起こす必要がある。
「地球と木星が火星の後継者に支配されるかどうかの瀬戸際なんだよ! 説明してる暇が惜しい。データを転送するから、そっちで確認して!」
『りょ、了解……!』
 和也の剣幕に、ただならぬ状況を察したのだろう。澪は素直に従った。
 データの転送を開始。しかしデータ量の多さと傍受されないよう細い回線を使っているせいか、転送状況を示すゲージがなかなか進まない。
 和也が焦れていると、一気に視界が開けた。チューブトンネルを抜けて主街区に入ったのだ。
「適当なところで、こいつを捨てて隠れよう。美佳、最寄のセーフハウスを――――」
 その時、進路上で異変が起きた。主街区の未来都市然とした景観を作る、整然とした空中の車列が突然、魚が逃げ散るようにバラバラな方向へ飛び始めたのだ。
「な、何だ?」
 蜂の巣のように弾痕を刻まれた軍の工作艇が現れて異変を感じたのは解るが、かといってこれは尋常ではない。和也たちが戸惑っていると、散らばった反重力車両――一般家庭用の自家用車だ――の一台が和也たちのすぐ横に並び、併走し始めた。
 その車の窓からヌッと銃口が突き出されるのが見え、「危ないっ!」と妃都美が叫ぶ。和也は咄嗟に工作艇を急降下させ、その船体をガンガン! とまた銃弾が叩いて奈々美たちが悲鳴を上げた。
「くっそ、市内にも敵が潜んでるのか!?」
 収まりかけていた心臓が再び大きく跳ねた和也が叫んだが、それに「違います!」と妃都美が叫び返した。
「あれば民間人のはずです! チャイルドシートに赤ちゃんが乗っているのが見えました……」
「はあ!? それはどういう……」
「2時方向にRPG! 避けて、避けてーっ!」
 疑問に思う間もなく奈々美が叫び、工作艇のすぐ横をロケット弾が飛び去っていった。見れば眼下の住宅街から次々に住民が武器を持って外に出てきており、その銃口は全て頭上を行く和也たちの工作艇に向けられている。それは和也たちにすれば悪夢のような光景だった。
 ――――火星の後継者は人々の間に浸透している。死にたくなければ気をつける事だ。ここでは誰が敵でもおかしくはないぞ。
 不意に『田中さん』の言い残した忠告が脳裏をよぎる。
「あれってこういう意味かよ……!」
 地球との交流で恩恵を受ける人が増える一方で、火星の後継者の賛同者もここまで増えていた。火星の後継者が一声かければ、彼らは容易にテロリストへ化ける。本当に、ここでは誰が敵でもおかしくはないのだ。
『こ、これじゃあ、和也ちゃんたちが逃げる所なんて……』
 澪が泣きそうな声で言う。……確かにこれでは、もう逃げられる場所などどこにもないように思えてくる。
 だがそれ以上に恐ろしいのは、火星の後継者が人々を動かしたこの事実のほうだ。
 ――こんな大勢の戦闘員がいるなんて知れたら、統合軍は間違いなく主街区に陸戦隊を投入してくる……! 市街戦になるぞ! 下手すればニューヨークの二の舞に……いや、それが狙いなのか……?
 ヴァルハラ主街区で大規模な市街戦になれば、戦闘に巻き込まれた木星人の人的被害や、都市やインフラが破壊される物的被害は相当なものになる。他の衛星の木星人は地球の軍に国土を蹂躙されたと感じるだろう。対立は決定的になり、ようやく醸成されつつあった和平ムードも吹き飛ぶ事になる。火星の後継者にとっては願ったりの状況だ。
 これは火星の後継者にとっても後戻りのできない賭けになる。
 ――甲院も、いよいよ終わりにするつもりか……!
 和也は攻撃を避けてビル街へ逃げ込む。追ってくる車両群から逃げ回りながら、澪に呼びかける。
「澪、いい? カリストを離れたらみんなを呼んで」
 澪は一度「え?」と聞き返し、一泊遅れてはっとした顔をした。
 みんな――――つまりはナデシコの皆を呼んでほしいと、和也は澪に要請したのだ。ナデシコCのシステム掌握なら最小被害で、『神在月』が動き出す前に事態を収拾できる。ささやかな抵抗かもしれないが、この時点で和也が思いつく実行可能な策はそれだけだった。
「みんなを呼べば、火星の後継者も今度こそ終わりだよ! 絶対に――――!」
「和也さん、右ぃっ!」
 妃都美の悲鳴じみた声。右のビルの窓から携帯SAMでこちらを狙う人影が見え、咄嗟に回避――――しようとした手が、止まる。
「烈火……!」
 かつての仲間――――山口烈火が、火星の後継者の制服を着て、携帯SAMで和也たちを狙っていた。動揺に思わず手を止めてしまった一瞬、和也は烈火と目が合った気がした。

 ――――すまねえな。

 烈火の口がそう動いたのを、和也は確かに見た。
 次の瞬間、烈火がミサイルを発射した。
「しまっ――――!」
 慌てて回避を試みるも遅かった。至近でミサイルが炸裂し、既にダメージを負っていた工作艇がついに火を吹く。
「反重力フローターが停止! コントロールできない……くそおおおおおおおおおっ!」
 工作艇は黒煙を噴きながら地上に落下。胴体から火花が散るほど強く地面に腹を擦りつけながら数百メートル暴走し、ついにはビルに頭から突っ込んでいった。



 その瞬間、ぶつん、と和也からの映像が途切れ、データ転送率を示すゲージが50%台で止まった。
「和也ちゃん……? みんな……?」
 澪は呆然と呼びかけたが、ウィンドウにはNO SIGNALの文字が空しく表示されるばかりだ。
 通信途絶――――それは和也たち、あるいは身につけているコミュニケが、もはや通信を維持できない状態になったという事。
「そんな、嘘……和也ちゃん、妃都美ちゃん、美佳ちゃん、奈々美ちゃん……みんな応答して! 誰か……誰か返事をしてよ!」
 フリージアの広いブリッジ内に、澪の悲痛な呼びかけが空虚に響く。
 そこへ耳障りな警報が鳴り響き、レーダー管制官が腰を浮かせた。
「レーダーに感あり! 五時の方向より接近する艦隊、数十一……先ほどの艦隊が戻ってきた模様!」
「気付かれていたか……! 進路転進。これよりターミナルコロニー『タケル』へ進路を取る! それから統合軍本部へ至急連絡を取れ!」
 フリージア艦長が叫び、ブリッジがにわかに騒然となる。カタパルトからはステルンクーゲルの二個中隊が雲霞の如く飛び立ち、フリージアが急速に転舵して『タケル』への帰還軌道に入る。
 すると、澪がガタッと席を立ち、涙混じり声で叫んだ。
「待ってください艦長! かず、『草薙の剣』の救出を……!」
「この状況が見えないのかツユクサ上等兵!? 今はデータを無事に地球へ届ける事だけ考えろ、奴らの犠牲を無駄にするな!」
「犠牲って……」
 澪は愕然とした。
 フリージア艦長はもう、和也たちの事を死んだ者として扱っている……
「和也ちゃん、みんな……絶対、絶対にナデシコのみんなを連れて戻ってくるから……だからお願い、生きていて……」
 今すぐに宇宙へ飛び出してでも和也たちを助けに行きたいのに、それができない無力さに打ちひしがれながら、澪はひたすらウィンドウに向かって呼びかけ続けた。



 ――――地球連合安全保障理事会の緊急会合が招集され、カリストへの統合軍派遣が木連の反対を押し切る形での賛成多数で決まったのは、それからおよそ24時間後の事だった。











あとがき

『草薙の剣』の帰郷と、木星の衛星カリストでの戦闘でした。

 まず、恒例となりつつありますが、前回から丸一年も更新できなかった事をお詫びします。もう失踪したと思われていたかもしれませんが一応続けています。
 今回もまた手をつけられない時期が数ヶ月あったのですが、それを差し引いても遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

 今回は公式では一切描写のない木星でのエピソードという事で、私が知っている限りではウツロさんの『フェアリー・ダンス』が独特な木星の生活風景を描いておられましたが、私はドーム都市の中を空飛ぶ車が飛び交う未来都市的な木星をイメージしてみました。
 住宅街に行けば日本家屋的な家が建っていたりするのでしょうが、話が早く進んだためにあまり生活風景をじっくり描けなかったのが少し残念です。
 それと現在の木星は地球との交易でいろいろと社会にも変化が見られる時期ですので、戦前は劣悪だった食糧事情が改善したり生活が豊かになる一方で、地球の人や資本が入り込む事への反発なんかも起きています。

 ここで一つ訂正を。前回ほか、いくつかの話で現在を2202年と書いてありましたが、正確には2203年の間違いです。訂正してお詫びすると共に、最後に熱血クーデターから今話までの年表を書いておきます。

 最後に私信ですが、ゴールドアーム氏へ。前回の感想ありがとうございます。いろいろと納得できました。MFで辛うじて1次突破できた時の、明人が盗賊に捕まっている冒頭シーンのほうがまだしもよかったようですね。評価シートを基に書きなおした結果、かえっておかしくなってしまったようです。
 魅力ある主人公と物語を作れなかった自分の未熟を恥じると共に、少しでも上達できるよう努力いたします。
 それでは、また次回もありましたらよろしくお願いします。



年表

2198年5月 熱血クーデター。和也たちは撃墜され秋山側に保護される。
2199年6月 アキトとユリカ拉致。
同年8月 ルリ、オオイソへ。同じくらいの時期に木星からの移民が開始され、和也たちもオオイソへ。
2200年8月 ルリ、宇宙軍に復帰。
同年12月 ナデシコB就航。
2201年7月31日 アキト、シラヒメを襲撃、警備隊にいた澪の父親死亡。
同年8月9日 火星の後継者第一次決起。
同年8月20日 第一次決起鎮圧、ユリカ救出、草壁逮捕、アキト行方不明に。
同年末頃(公式設定ではない) 火星の後継者第二次決起。南雲死亡。
2202年1月から3月 この頃から各地で湯沢派のテロ頻発。火星の後継者がいまだ健在である事が明らかに。
同年7月 オオイソで学校占拠テロ。『草薙の剣』再び軍へ。
同年8月 メガフロート『高天原』で対テロ戦闘訓練と本当のテロ。『森口派』が本当のテロ組織とされる。『草薙の剣』宇宙軍へ出向。ナデシコBに乗艦して転戦。
同年9月 バルセロナでサグラダ・ファミリア完成式典。『草薙の剣』に澪合流。
2203年2月 ニューヨークでの戦闘。草壁の奪還は阻止したもののヤマサキを連れ去られる。アキトの手により湯沢死亡。『草薙の剣』統合軍へ戻り、日本でホウメイ・ガールズや中華帝国の絡んだ事件に遭遇。
同年3月 『草薙の剣』火星極冠遺跡へ。『イワト』にて甲院と初対決。イネス昏睡。ナデシコCにてユリカ、並びに旧ナデシコクルーの面々と対面。『草薙の剣』アキトとの遭遇戦により盾身死亡。和也右手と右目を失う。衛星基地での戦闘にて火星の後継者が相転移砲を実戦使用、殲鬼との再開により美雪、烈火が火星の後継者に寝返る。『草薙の剣』ユリカを殺そうとするも和解。ネルガルの施設において月臣からの訓練と新型機の開発開始。
同年5月 『草薙の剣』木星へ。




 

   







感想代理人プロフィール

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 ゴールドアームの普通な感想。

 曙光の軍師と暁の勇者ではかなりえらそうなこと書いたゴールドアームです。
 こちらの作品に感想を付けるのも久しぶりでしょうか。
 
 今回の感想は、素直に『お、これは続きが楽しみ』で終わってしまったりします。
 本気でこれで終わりです。
 ですが、これはある意味感想の極点だったりします。
 つまりは、『物語として十分に面白く、連載の続き物としてなんの不満も無く、かつ続きが楽しみになる良作』という事なのですから。
 なんの不満も抱かせずに、さらりとこれだけ読ませてしまうことが出来、続きを期待させることが出来る。
 これは新章の導入話としては満点の出来です。
 この流れをきちんと繋げ、クライマックスとなる章末で爆発させることが出来れば、まさに完璧と言えましょう。
 主人公、脇役ともキャラクターが固まっていてこそ書ける話の流れですが、きちんとそれだけのものを積み上げたのはシード氏の努力の結果です。
 大いに誇ってください。
 
 
 
 私見ですが、シード氏は物語を書くということに対しては既に十分な研鑽を積んでいると思います。
 新人賞とかなら、きちんと書けば一次は突破できる実力が備わっているでしょう。
 なろう辺りで連載して人気になれば書籍化の声が掛かる力量はあると思います。
 曙光の出来ではちょっと苦しいでしょうけど、ラノベ的構成を意識していれば一回あったように一次突破は可能だと思われますし。
 まあ、某エロ小説のネットコンテストで二次落ち(予測通り)の私が自慢げに言えるものでもないでしょうけど。
 
 最近のなろう界隈では、タグを付けるだけで応募できるコンテストも多いですので、その辺りで試してみるのも一考かと。
 
 まあ、レーベル傾向とかも考えないといけないのですが。
 ヒロイン絶対主義のレーベルとかもありますので。
 
 
 
 今回は本当にするりと読めました。初期の頃から比べればまさに隔絶の進歩です。この調子で頑張ってください。
 ゴールドアームでした。
 


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