「可愛いよ、ルリちゃん。」

ユリカさんは私を見て嬉しそうに話してきます。

「そうですか?

少しばかり自信がなかったので、心配だったんですが」

「そんなこと無いよ、可愛いよ。ルリちゃんの花嫁姿。」

そう、今私は明後日に行われる私とアキトさんの結婚式のために、

ユリカさんの発案でドレスを一度着こなすことになったのである。

「ところで・・・・・ハーリー君から連絡きた?」

ユリカさんは私の前に立ってそう呟きました。

突然話を変えてきたのには驚きましたがそれも当然のことです。

「まだ見つかりません。」

「う〜ん、すぐ見つかると思ったんだけどね。」

「そうなんです。一体何してるんでしょう?」

「大丈夫かな?もう2年経つでしょ。」

「はい、そうなりますね。」

そう、今から2年前。

ハーリー君は私たちの前から忽然といなくなった。

        新たなる道筋への序章
             第5話
           2年の歳月
   


       


切っ掛けは火星で新しく発見された遺跡の調査からでした。

調査から帰ったハーリー君は調査報告のため私の部屋にきたのです。



「では、遺跡は無かったのですね?」

「はい、無かったと言うより無くなったというべきです。」

「無くなった?」

私はハーリー君の調査書を見た時には遺跡は誤認と記されていた。

「でも調査書には誤認と書かれていましたがどういう事ですか?」

「それは私自身の判断で上層部にそれを報告しても無駄だと思い報告しませんでした。」

それは確かにそうであった。

今の上層部はほとんど火星の後継者の乱の事故処理によって活動していない。

しかし。

「これは私があなたに頼んだ極秘任務であって、上層部はこの報告書を見ませんよ。

なのになぜ嘘の報告書を書いたのですか?」

「しかし上層部が活動したらこれを見るかもしれない。

それにルリさんもあと2年で辞めてしまう。

だからこの報告書を書いたのです。」

なぜかは知らないがハーリー君は遺跡が消えたことを隠したい。

それ以前にこの遺跡の存在自体知られたくないみたいだ。

「ハーリー君、あなた何隠してるんですか?」

すると急にハーリー君は私にある物を突き付けてきた。

「これは・・・辞表?」

そう私の目の前にあるのは辞表と書かれた封筒であった。

「そうです、 私マキビ・ハリは今この時をもって辞めます。」

「何ですって?」

私の驚きはそれまでにない物だった。

「どうしてですか?」

ハーリー君はいつも暴走しているが、

それ以外では優秀である。

私の元を離れて他のところに入るのならまだわかる。

しかし軍を辞めるとなるとそれは私にとって予想範囲外であった。

「それでは失礼いたしました。」

私が考えてる間にハーリー君はここから出ようとしていた。

「待ちなさい、理由ぐらい聞かせなさい。」

少し強めの口調で言った。

だいたいこの様に言うとハーリー君はすぐに事情を話す。

「それは・・・今は話せません。

しかし・・・・・いやこれはルリさんが関わってはいけないことですから。

それでは。」

そう言ってハーリー君は私の部屋から出ていってしまった。

それからハーリー君は私たちの前から消えたのです。



「でも最後に確認したのが、・・・確か・・・」

「アリスさんのところです。」

「そうそう、アリスちゃん。

 でもハーリー君もすごいね女の子と一緒に行方くらますなんて。」

そう言ってユリカさんは微笑んだ。

「笑い事じゃあありません。

そのせいで私たちはラピスとキョウカさんに色々迷惑かけられたんですから。」

「そうそう、でも意外よね。

ラピスちゃんがハーリー君のこと心配するなんて。」

そうである、私たちの調べでハーリー君の行方を捜したところ、

アリスさんという人の親に会ったのを最後に探しても見つからないのでした。

アリスさんは私が遺跡の調査に行った時同行させた人でハーリー君の幼なじみです。

しかしそれからが大変でした。

その後それを知ったラピスとキョウカさんが私のところに押し掛けて、

やれ「ハーリー君はなぜそんなことをしたんだとか?」

「彼女との関係は?」「ハーリー殺す」等と言ったりして、私たちを困らしたのです。

何とか押さえましたが今でもその事をくり返し聞いてきます。

「でもおかしいんです。」

「なにが?」

「私たちはオモイカネを使って探したんですよ。

なのに消息が掴めない。」

「確かにそれはおかしいね。

ラピスちゃんとルリちゃんの力を使えばだいたい何処にいるかわかるはずだし、

わからなくても2年も情報が来ないなんて変だね。」

「そうです。」

そう言って私は悩みました。

ハーリー君の最後の言葉「いやこれはルリさんが関わってはいけないことですから。」

これは一体何を意味してるんでしょうか?

そしてアリスさんを連れて行った理由は?

最後にオモイカネでも見つからないわけ?

これらは何か関連してるんじゃないのか?



「ルリちゃん。」

「・・・・・」

「ルリちゃん。」

「え?あ、はい」

私は考えに夢中になってしまったらしくドレス姿で悩んでました。

「ここで考えてもしょうがないよ。

もう行こうか。」

「そうですね。」

そう言って私は試着室に入って行きました。






同時刻

「ねえ、ラピス早くルリさんと合流しよう。

 もう待ち合わせ時間過ぎてるよ。」

「まだ、大丈夫ユリ姉と一緒だから長引くよ。」

そう言って私はまたゲーム機に向かった。

私とキョウカはユリ姉に誘われて、一緒に来たのだが、

ユリ姉の目的がルリのドレス姿を見る事だと聞いた時

私はキョウカと一緒にゲームセンターで遊んでいると言った。

私がルリのドレス姿は見たくなかったからだ。





「ところでラピス?」

「何?」

私はゲーム画面を見ながらキョウカに返事をした。

「ハーリー君、どうしちゃったんだろう?」

「・・・・・あ!」

キョウカの一言に悩んでいる間にゲームオーバーになってしまった。

「キョウカが変なこと言うからゲームオーバーになっちゃったじゃない。」

「でも・・・」

そう言ってキョウカは悲しい顔をする。

「キョウカ・・・」

その話題は私にとって嫌な物だった。

私はこの時代に来てからの何ヶ月ハーリーと一緒に行動してきた。

そして戦争が終わってからも一緒に行動することが多かった。

ハーリーは私の行動を止めようとしていつも私の怒りを買っていた。

まるで兄妹のような関係だと思い、

私はそれが当たり前だと思っていた。

何時までも続くと思っていた。

でも違った。

私はハーリーの2年前のあの行動は今でもわかっていない。

ルリやみんなには言っていないけど、

私とキョウカのところにハーリーは来ていた。

その時はハーリーが軍を辞めたことやみんなの前からいなくなっていたことを知らなかった。

いつものように私がハーリーをからかってキョウカがそれに対して反論する。

そんないつもの日常だった。

でも、ハーリーは先に帰ると言って私たちと別れる時不意に思い出したかのように呟いた。

その言葉は殆ど聞き取れなかった。

しかし

「2年後か。」

「・・・・そうだね、ハーリー君が言っていた言葉通りなら、

もうそろそろだね。」

「うん。」

何が2年後なのか、そして何が起ころうとしてるのか
 
今は私にはわからない。

でもそれにハーリーが関わっているのは事実なんだけど・・・

「考えても仕方ないか。」

「え。どうしたの、いきなり?」

「何でもな〜い。」

そう考えても仕方ない。

(時がくればわかることよ。)

そう私は納得した。

「じゃあ行こうか。」

「うん、そうだね。」

「じゃあユリ姉のとこへ行こう。」

そう言って私たちはユリ姉と待ち合わせした場所に向かった。




「う〜ん、美味しい。」

「ホント、美味しい。」

「ルリちゃんも食べないの?美味しいよ。」

「いいえ、もうおなかいっぱいですから。」

「そう、じゃあ仕方ないね。」

そう言ってユリカさんはまたデザートを食べ始めた。

私とユリカさんはラピス達と合流した後近くのレストランで、

昼食をとっています。

私はラピス達と一緒にデザートを楽しそうに食べている、

ユリカさんを見ていて。

(あれだけ食べて良く太りませんね)

そんなことを考えていました。

「すいませんちょっと良いですか?」

「え?」

急に声をかけられた私は後ろを向くとそこには、

長い金髪と金色の眼が特徴的な女性が立っていました。

しかし、どこか見覚えがある顔だったのです。

(この人はどこかであった?)

そんな疑問はラピスの一言で解決した。

「あなた、アリス・コスモ!」

「あ!」

(そうだ、顔が大人っぽくはなっているが彼女は私がハーリー君の遺跡調査の

手伝いを頼んだアリス・コスモさん。)

そんなことを考えている内に、ラピスとキョウカはアリスさんに近づき。

「ハーリー君はどこにいるんですか?」

「ハーリーを何処やったのよ?」

と怒鳴り込んでいた。

アリスさんの方はあまり気にとめていない。

「ラピスちゃん、キョウカちゃん・・・・」

ユリカさんはこれ以上は危ないと思ったらしく2人に近づいていった。




「ところで何か話があったんじゃないの?」

何とかラピス達をなだめたユリカさんはアリスさんに聞いてきました。

「ええ、ハーリー君の伝言を伝えに来ました。」

「伝言?直接ここに来ればいいのに。」

ユリカさんの意見は尤もです。

自分の用ならなおさらです。

「ハーリー君はまだ調整・・・いえ、外せない用があるため私が来ました。」

(調整?)

アリスの言葉にあった単語が妙に気になったのですが、

それを追求しても無理だと私は判断した。

「で、ようとは一体なんでしょうか?」

「はい、ではこれを聞いてください。」

そう言ってアリスさんはテーブルの上にテープレコーダを置き、

再生させました。

『え〜と、どうもみなさんお元気ですか?

 お久しぶりです。』

それは2年ぶりに聞いたハーリー君の声でした。

すこし大人っぽい声になっているハーリー君の声にみんな耳を傾けました。

『みなさんには大変な迷惑をかけているかもしれません。

もしそうなら、すいません。』

「そうよ、迷惑かけっぱなしよ!」

ラピスは声には怒りとうれしさが入っていました。

『ところで用件についてですが、

まず最初にルリさん結婚おめでとうございます。

多分僕はいけないと思うのでここでお祝いの言葉を言います。』

その時アリスさんの顔に悲しさが出たことに私は気づきました。

『そして、ラピスとキョウカちゃん、

何も言わずに行ってしまって本当にごめんね。

そして最後にユリカさん、アキトさんたちによろしく伝えといてください。

たぶん、すぐに会えると思いますから。

それでは。』

そして再生が終わった。

「アリスさんこれはどういう事ですか?」

私は全員の疑問をぶつけた。

「それより、約束してください。」

「何をですか?」

「どんなことがあってもハーリー君を信じると、

彼はあなた達のためにこんな事をやっているんですから。」

(私たちのため?こんな事?信じる?一体何を?)

「一体何が起きているんですか?」

「それは・・もうすぐわかります。」

そう言ったアリスさんの周囲が光ってきた。

(これはジャンプ!)

「確かに伝えましたよ。

そして今のこと忘れないでください・・・・・ジャンプ。」

そしてアリスさんはいなくなってしまったあと。

その場には異様な静けさが出ていた。

「一体何が起きてると言うんですか?」

私は問いかけるように呟きました。

しかしその答えは誰にも答えられなかった。

第6話へ 


作者の部屋の座談会 
聖:どうも聖竜です
ユリカ:どうもユリカです。
    ところで聖竜さん、なぜ今回この様な形をとったんです?
聖:今回はルリ達とハーリー達どっちを主観で書こうか悩んだけど、
  ルリ達の方がハーリーの消えて2年間心の変化がわかる。
ユリカ:そういいながら、もしかしてルリちゃんとかに脅された?
聖:ドキ!・・・・ハハハハ、ソンナコトナイデスヨ。
ユリカ:カタカナになっている、まあ良いわそれよりラピスちゃんの心境の変化はどうして?
聖:それは私自身時の流れに〜を見ていて思ったのが、
  ラピスと一番長く付き合っているのがハーリーなんだよ。
ユリカ:ふんふん
聖:確かに恋愛対象ではないけど、
  兄妹関係に近い物を持っていてもおかしくないと思うんだよ。
  それに、第2章で義理の兄弟だって書いてあったし。
ユリカ:そこからとったわけね。
聖:あともう1つ、劇場版でミナトさんがルリに
  対してハーリーはルリの弟みたいだみたいな発言をしていたんだよ。
  だからラピスもそう考えればハーリーやルリと兄妹みたいな物じゃないのかな、
  と思って書いたんだ。
ユリカ:そうなんだ、でこれからどうするの?
聖:6話で終わる予定だったけど、もしかしたら増やすかも。
ユリカ:そうなんだ。  
聖:まあ何とかやっていくつもりです
  それでは。

 

 

 

代理人の感想

兄妹?

姉弟の間違いでしょう(爆笑)。