〜 共に歩む時 〜

 

 

第1話 動き出した「歴史」

 

 

 

 

 

第一次火星会戦から1年・・・

既に火星と月は完全に敵の制圧下。地球も時間の問題に過ぎない・・・。

 

まあ、そんな事は一端あっちに置いといて。

 

ここはサセボシティの片隅にある中華料理店『雪谷食堂』。

以前は店主のサイゾウさん1人で切り盛りしていたが現在は見習いの居候が居る。

その見習いの名前は「テンカワ アキト」。

1年程前に7、8歳の女の子を連れて歩くという下手しなくても捕まりそうな状況だったのを、

成り行きで拾われた青年で、火星の地下シェルターに居たはずなのに何時の間にか地球に居たと言う結構な不振人物だ。

コックとしての腕はまだ半人前だが見込みは悪くなく、この1年で自分の店を出せそうなくらい上達して居る。

普通ならそのまま市井に埋もれてるような人物なのだが・・・、

 

 

 

店じまいの為に暖簾を片付けて居たアキトに、2つの人影が声を掛ける。

 

「夜分に突然の訪問で申し訳ないのですが・・・、こちらにテンカワアキトという方はいらっしゃいますか?」

 

振り返った先には、眼鏡に赤いベストの男とむっつり顔の大男の2人組み。

何故か見覚えがあるような気がする。

 

「テンカワアキトは俺ですけど・・・、なんか用ですか?」

 

「ええ、ちょっとあなたにお話がありまして・・・、ああっ、私はこういう者です」

 

そういって男が差し出した名刺を受け取って見ると

『ネルガル重工会長室秘書課プロスぺクター』とあった。

 

「プロスぺクター・・・、本名ですか?」

 

「いやいや、ペンネームみたいなもんでして・・・

 私の事はプロスと呼んでください」

 

「はぁ・・・」

 

「こちらは私の同僚でゴート=ホーリーといいます」

 

と、後ろに居るむっつり顔の大男を紹介するプロス。

 

「ネルガルの人が何の用ですか?」

 

「率直に申し上げますが、テンカワアキトさん。あなたをスカウトに来ました」

 

「スカウト?」

 

「はい」

 

「・・・とりあえず中に入ってください」

 

その2人は詳しい事は言えないがある人物の推薦でアキトをコックとしてスカウトに来たという。

職場が戦艦だと聞いた時は断ろうとしたが、プロスに「火星に行く」と言われ、

とりあえず考える時間をもらう事に。

 

プロス達が後日返答を聞きにまた来ると言った翌日。

 

「ホント?火星に行けるの?」

 

そうアキトに聞いて来たのは1年前、火星で知り合って、何故か一緒に地球に居た少女、アイちゃん。

地球には家族はおろか知り合いすらいない為、アキトが身元引き受け人になって一緒に居候している。

 

「うん。昨日ネルガルの人が来てね。火星に行けるって言ってたんだ。・・・アイちゃんは行きたい?」

 

「行く!ママを探しに行くの!!」

 

「・・・そうだね。アイちゃんのお母さんを探しに行かなきゃね」

 

「うん!」

 

 

・・・と言う訳で返事は決まった。

どうでもいいがアイちゃんの学校は大丈夫なのか?

 

 

サセボドックに連れてこられた2人は、目の前にある純白の船を見上げてる。

 

「これが我々ネルガルが誇る最新鋭戦艦、ナデシコです!どうです。美しい船でしょう」

 

誇らし気に語るプロス。しかし・・・、

 

「変な形だね、お兄ちゃん」

 

子供は思った事をはっきりと言う。

それに対しアキトが感じたのは・・・懐かしい・・・というものだった。

 

「なんだか弱そうだよぉ」

 

「えっ、ああ、うんそうだね」

 

「お兄ちゃん。ちゃんと聞いてた?」

 

「うっ、ごめん、ちょっとぼーっとしちゃって」

 

「もうっ、ちゃんと聞いてくれなきゃダメだよっ」

 

「だからごめんってば」

 

そういってもう一度眼前の戦艦を見上げる。

 

「やっぱり変な形だな」

 

「いやぁ、手厳しいですなぁ」

 

「両舷から突き出ているのはディストーション・フィールド発生ブレ−ドだ」

 

と、いままで黙っていた(作者が忘れていた)ゴートが説明する。

もちろん2人の耳には入っていないが。

 

「就航までまだ時間がありますからあちこち見学しておくといいですよ」

 

「それじゃ行こうか」

 

そう言ってアイちゃんに手を差し出す。

 

「うん♪」

 

元気よくアキトの手にしがみつく。

傍から見れば仲の良い兄妹に見えるかな?

 

 

 

「えーっと、ここかな?」

 

とりあえず荷物を置きに自室に。

荷物と言ってもアキトの調理道具一式にアイちゃんの勉強道具一式、あとは各々の着替えくらいだが。

 

「きれいなお部屋だね」

 

「うん。思ったより広いし」

 

戦艦というと個室はなんとなく狭そうな気がするが2人でも充分に広い。

他に戦艦に乗った経験など無いから基準は解らないが。

 

「とりあえず食堂に行ってみよう」

 

「食堂?」

 

「うん。そこが俺の職場になるんだから挨拶しときたいしね」

 

 

 

というわけで食堂。

 

ここに居る人々も何故か何処かで会ったような気がしたが・・・。

 

「テンカワアキトです。よろしくお願いします」

 

簡単に自己紹介し、さっそくホウメイガールズに包囲されるアキト。

アイちゃんはそれが面白く無いらしく包囲網から助けようとしている。

 

「ちょうど男手が欲しかったから助かるよ。ところでテンカワは何が作れるんだい?」

 

アキトへの質問が一段落したところでホウメイが聞いてくる。

 

「ここに来るまでは一応中華料理屋で修行してました」

 

「じゃあ、とりあえずチャーハンでも作ってくれないかい?」

 

「分かりました」

 

慣れた手付きで調理に取りかかる。

ちなみにアイちゃんはまだホウメイガールズに捕われている。

 

出来上がったチャーハンを一口食べ、

 

「へぇ、なかなか上手いじゃないか」

 

その言葉にホッと安心する。

 

「ホウメイさん。俺達まだ艦内を見てないんで見学してきていいっすか?」

 

「いいよ、行っといで。テンカワには出前とかも行ってもらう事になるだろうしねぇ」

 

「それじゃ、一通り回って来ます」

 

 

 

その頃ブリッジは。

 

民間の船だからしょうがないのかもしれないが、戦艦とは思えないほどのほほんとしていた。

若干一名ほど喚き散らしてるキノコがいるが・・・。

 

「あの人達ですよね。火星でコロニーに戦艦落とした人って」

 

と、通信士らしきおさげの女の子。

 

「民間の船だって聞いたのにな〜んで軍人さんがいるのかしらねぇ」

 

操舵士らしき色っぽい女性。

 

「フクベ提督はネルガルの依頼でオブサーバーとして乗艦しています。

 キノコは・・・勝手に乗り込んで来たみたいです」

 

瑠璃色の髪の少女。少なくともまだ小学校は終えて無いだろう。

 

「ルリ・・・。あのキノコうるさい・・・」

 

桃色の髪の少女。先の少女よりさらに5歳程幼い。

 

「無視しましょう。バカがうつります」

 

「そういえば艦長さんは今日来るんだっけ?メグちゃん」

 

「そう聞いてますけど・・・、かっこいい人だといいですね♪ミナトさん」

 

「あんまり期待しないほうがいいんじゃない?」

 

「でもぉ・・・、戦艦なんだからかっこいい人いるかな〜って。

 ルリちゃんとラピスちゃんだってかっこいい人の方がいいよねぇ?」

 

「私は別に・・・。副提督みたいなのだったらは最悪ですが」

 

「ま、外見はともかく中身はまともであってほしいわよねぇ〜」

 

と、こんな会話がされているところでブリッジ上部にあるドアが勢い良く開き2人の男女が入ってくる。

 

「あ、ここだここだ〜。みなさ〜ん!私が艦長のミスマルユリカで〜す!ぶいっ!!」

 

『ぶいー?』

 

「「またバカ?」」

 

 

 

『レッツゴーーー!ゲキ・ガンガァァァ!!』

 

「うわぁ!お兄ちゃん、ロボットが暴れてるよ!」

 

「・・・そうだね」

 

見学に来た格納庫では4体ある人型機動兵器のうち1体が暴れていた。

スピーカーからはパイロットの物であろう、暑苦しい声が響いている。やはり聞いた事があるような声だが。

 

「その機体はまだ整備中なんだ!さっさと降りろ!!」

 

その周りでは整備員達が止めようと右往左往しているが無論、止められる訳がない。

2人はしばしそれを見物する。

 

『諸君だけにお見せしよう!この俺様の、超グレートな必殺技を!!』

 

そういってロボットがしゃがみ込み、

 

『人呼んで!ガイ・スーパーアッパーーー!!!』

 

雄叫びと共にジャンプしようとして・・・、当然のように倒れる。

その隙にコックピットに取り付く整備員。

そして担架で運ばれて行くパイロット。

 

「あははっ。バカみたい」

 

「・・・バカみたい、じゃなくてバカだよ」

 

しかし、同時に懐かしさを感じる・・・。

 

「ねぇ、次はブリッジに行ってみよう」

 

「・・・うん。行ってみようか」

 

何故かとてつも無く嫌な予感がするが。

その時、先のロボットの転倒によるもの異常の激震が、続いて警報が鳴り響く。

 

「・・・敵襲?」

 

「? お兄ちゃんどうしたの?」

 

「アイちゃん。悪いけど先に行っててくれない?場所はわかるよね」

 

言うと同時にエレベーターに押し込む。

 

「えっ?ちょっとお兄ちゃ・・」

 

そして、倒れているロボットに向かって歩き出した。

 

 

 

再びブリッジ。

 

「敵襲です。攻撃は本艦の頭上に集中しており、連合軍が応戦してますが全滅するのも時間の問題です」

 

ルリが冷静に報告する。

 

「ならとっとと反撃なさい!私が死んじゃうじゃないの!!」

 

ろくに作戦も考えずに喚き散らすキノコ。

 

「どうやって?」

 

と、非常に落ち着いているミナト。

 

「この船の主砲を真上に向けて敵を焼き付くすのよ!」

 

「それだと上にいる軍人さんとかも巻き添えにしちゃわないですか?」

 

こちらも割と落ち着いているメグミ。

 

「いくら役立たずと言ってもまだ生きてるんだしねぇ」

 

「それ以前に主砲は真上には撃てません」

 

「うっ、うるさいわね!」

 

「艦長は、何かないかね」

 

騒がしい事この上なかったが、それまで黙っていたフクベ提督の言葉に静まり返る。

 

「いったん海底ゲートを抜けて海中へ。その後浮上して背後より敵を殲滅します!」

 

「そこで俺の出番さぁ!俺様がロボットで出て敵を引き付ける!その隙にナデシコは発進!かぁー!燃えるねぇー!」

 

「おたく、骨折してるだろ・・・」

 

「しまったー!」

 

張り切るガイにウリバタケが冷ややかにつっこむ。

 

「囮ならもう出てるけど・・・」

 

「「「「「へっ?」」」」」

 

「今エレベーターにロボットが・・・」

 

 

そのエステのコックピット内にはアキトが。

 

「なんだろう・・・、この感じ・・・」

 

アイちゃんと別れてから急に頭が冴え渡り、全身の神経が研ぎ澄まされていく。

 

「震えてる・・・。そうだよな。恐いもんな」

 

自らの震えに気付き呟く。高まる歓喜を無理矢理無視して。

 

そこにブリッジからウインドウが開く。

 

「エステバリスに搭乗している者、所属と名前を名乗りたまえ!」

 

ゴートが命令する。

 

「テンカワアキト・・・。コックです」

 

「あっ!お兄ちゃん!!」

 

いつの間にかブリッジに来ていたアイちゃん。

 

「あら。ずいぶんと可愛い子が多い船ねぇ」

 

「コック?なんでコックがロボットに乗ってるのよ!?」

 

「あーっ!あいつ俺のゲキガンガーを!!」

 

「彼は火星出身だそうでして・・・」

 

「だからなんでコック!?」

 

「お兄ちゃんなんでそんなとこにいるの?」

 

「もしもーし、危ないから戻った方がいいですよ」

 

あっという間に騒然とするブリッジ。やはり見覚えのある顔が揃っている。

そんな騒ぎの中1人黙り込んでいたユリカが突然叫びだす。

 

「あー!アキト!!アキトだー!!!」

 

「ぐあっ」

 

近くにいた副長が耳をやられる。彼の出番はこれだけだ(笑)。

 

「なんでアキトがここにいるのー?そっかー♪ユリカを助けに来てくれたんだね♪

 やっぱりアキトは私の王子様なんだね♪」

 

「へっ?えっと、誰だっけ?」

 

見覚えはあるが何故か頭が思い出すのを拒絶してる為嫌々ながら聞いてみるが、

ユリカはあっさり無視して自分の妄想を続ける。

 

「ナデシコと私の命、アキトに預けます。絶対生きて帰って来てね」

 

言いたい事だけ言うと返事も聞かずにウインドウを閉じてしまう。

 

「・・・なんだったんだ?今のは・・・。まっ、ようは囮をやれって事だよな・・・」

 

「エレベーター地上に出ます」

 

「頑張ってくださいねー」

 

「ゲキガンガー返せよな!」

 

そんな言葉と同時にエレベーターが停止し、アキトの乗ったエステバリスが地上にその姿を表わす。

 

「作戦は10分間、とにかく敵を引き付けてくれ」

 

「・・・了解」

 

そして、多数の敵の中を、彼の乗る人造の巨人が舞う。

 

 

ウインドウの中でアキトの乗るエステが敵を倒しつつ逃げ回っている。

 

「ほほう、これは・・・」

 

すぐに彼がかなりの実力を持つ事を見抜くプロス。

 

「こぉら逃げずな!この卑怯者!!」

 

「無理よ!コックが戦えるわけないわ!」

 

この連中には分からない様だが。

 

「でも囮役には充分なんじゃない?」

 

「はい、大丈夫だと思います。今だに一度も被弾してませんし進路上の邪魔な敵も全て倒しています」

 

「さっすがアキト!やっぱり私の王子様なんだね♪」

 

「お兄ちゃん凄い凄ーい♪」

 

この連中も相変わらずお気楽だ。

 

「ドック注水八割型完了。ゲート開きます」

 

「エンジンもいいわよ」

 

「ナデシコ、発進してください」

 

 

 

「・・・遅いな・・・」

 

命がけの状況に在りながら彼は非常に余裕があった。

敵の攻撃はまるでスロー画面のように見えるし、最新鋭のはずのこの機体の動きと反応も鈍く感じる。

 

「そろそろかな・・・?」

 

目の前のバッタを叩き壊し、海に向けて大きく跳ぶ。

元々飛ぶように造られていないアキトの陸戦フレームは弧を描いて海面に落ち・・・、

そこにちょうどナデシコが海を割ってその純白の船体を表わす。

 

「敵残存兵器、全てグラビティ・ブラストの有効射程内に入ってます」

 

「目標、敵まとめてぜーんぶ!」

 

ユリカの命令で重力波が放たれ、その黒い光にバッタやジョロ達が飲み込まれてゆき、次々と爆発する。

 

皆がその光景に唖然とする中、ラピスが報告する。

 

「バッタ、ジョロ共に残存ゼロ。軍の被害は甚大だけど戦死者は無し」

 

「そんな・・・。偶然よ、偶然だわ!」

 

「認めないわけにはいかんだろう。・・・艦長、よくやった!」

 

「まさに逸材」

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

「うん、平気だよ」

 

微笑ましい兄妹のやり取り。

 

「テンカワさん、お疲れさま」

 

「うむ、よくやってくれた」

 

「いや〜、助かりましたな」

 

「ホント、危ないとこでしたよね」

 

「ね、ところでこの子あなたの妹さん?」

 

「ンな事より俺のゲキガンガー返しやがれ!」

 

戦闘の緊張感などとうに消え去りのほほんとした空気が流れる。

しかしそんな光景を面白く思わない人が。

 

「アキト!なんですぐにユリカに声を掛けてくれないの!アキトは私の王子様でしょ!?」

 

涙目でそう訴えてくる。

 

「えっと、誰でしたっけ?」

 

できれば無視したいがそうもいかない。

 

「えー、私の事忘れちゃったの?火星でお隣だったユリカだよ?」

 

「・・・・・そういえばそんな覚えが・・・」

 

「思い出してくれたの!?」

 

急に笑顔になる。

 

「ああ・・・。ところでそこに居るって事はナデシコのクルーなのか?」

 

「彼女はこのナデシコの艦長でして」

 

「へっ?艦長?」

 

「そうだよ。ユリカはこのナデシコの艦長さんなんだよ。えっへん!」

 

「・・・大丈夫かこの船」

 

その呟きが聴こえた数名の女性はうんうんと頷いている。

そして少女も呟く。

 

「バカばっか」

 

 

かなりの不安要素を抱えつつ機動戦艦ナデシコは初陣の幕を閉じたのだった。

 

 

多分つづく。

 

 

〜あとがき〜

初投稿です。というかこういうの書くのも初めてです。しかも最初から連載?無謀すぎます。

まあ、書いてしまったんだからしょうがないとして。

アイちゃんとルリルリ、ラピラピの出番が少ない・・・。

「アキトが火星から地球に跳ぶ時にアイちゃんも一緒に地球に跳んだらどうなるかな?」

と思ったのがこのSSの始まりなのに・・・。

基本はアキト×アイちゃんになるはず。

あとはルリ×ラピスかな?アイちゃんとルリが入れ代えた方が正常かも。

拙い文章ですがどうかよろしくお願いします(ぺこり)。

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

セーレさんからの初投稿です!!

連載投稿ですか、これは楽しみですね!!

でも、アキト×アイちゃんとは・・・凄い組み合わせですね〜

イネスさんはどうなってしまうのでしょうか?

お母さん、生きてるんでしょうかね〜

・・・でも、そこはかとなく逆行モノの匂いが(爆)

 

ではセーレさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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