「「「ずずずず…」」」

「流石はベン師匠、お茶の煎れ方が絶品ですね」

「ほっほっほっ、褒めても何も出んぞ?」

「いやいやテンカワさんの言うとおり美味しいですよ」

ここはフクベの部屋。

フクベ、プロス、そしてアキトの3人がのんびりとした空気が漂わせていた。

 

「しっかしプさん?」

「何です?」

「今更かもしれんが」

「はい」

「戦艦一隻で火星に行くって無謀もいいとこじゃないか?」

「…本当に今更ですね」

「おう」

「ですが何故、今なんです?」

「あれだ、話題という物は常に必要だろう?特にお茶なんぞ飲んでいる時はな」

「まあそうかもしれませんが…」

「でさ、何で戦艦一隻な訳?」

「まあ色々理由は有るのですがコレだけは言えます。うちの会長は型破り&道楽至上主義なんですよ」

「…それでこの状態か。迷惑もいいとこだな」

「ええ」

「さっさと辞めてほしいもんだ」

「はははは…」

お前はネルガルに雇われているんだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の3号機

その9

 

 

 

 

 

 

 

 

「爾時無盡意菩薩。即從座起。偏袒右肩。合掌向佛。而作是言。世尊。觀世音菩薩。以何因縁。名觀世音。佛告無盡意菩薩。善男子………」

お経が聞こえる。

先日のサツキミドリ2号の犠牲者の為のお葬式をナデシコクルー全員で行っている真っ最中である。

 

「あう〜疲れた〜」

「まだだよユリカ!今日は個人葬式が後16件残ってるんだからね!」

「えー!?」

ユリカ不服といった感じである。

「まあ頑張って成仏させてこい」

「う〜アキトぉ…一緒に居てくれる?」

やだ!さてアジ副長さっさと次行ってこい」

「言われるまでもないよ。さあユリカ行くよ!」

ユリカはジュンに襟首を掴まれながら引きずられていく。

「アキト〜ユリカは必ず帰ってくるからね〜…」

「二度と戻ってくんな」

容赦無いなアキト。

「テンカワ」

「おお、ウメ料理長。なんです?」

「『なんです?』じゃないよ。ほら食堂に戻るよ!宴会料理作りがまだ途中だからね!」

「うう…そういやそうでした」

「ほら行くよ!今日も忙しくなりそうだね!」

「そうですね。よく貧乏暇な死って言いますしね」

「何か字間違ってないかい?」

「そうですか?」

つくづくアキトらしいと言えよう。

 

 

 

 

 

で、当の食堂。

ここに広がる光景はまさしく、

「追加オーダーでーす!」

「20件上がりましたー!」

「盛り付けの料理足りませーん!」

「わわー!お鍋吹きこぼれてるよー!」

「うひゃー!これ何処におくのー!?ひゃああぁっ!!?お皿がああぁぁっ!!?」

「テンカワー!!それに何で豆板醤とココナッツミルクが入るんだぃ!?」

「え?お吸い物ってそういうもんじゃないんですか?」

阿鼻叫喚の地獄絵図といったところだろうか。

 

 

 

「「「「「…」」」」」

「終わったねー」

「……おぉぅ、膝がガクガクいってるぜ」

ようやく終了のようである。

ホウメイガールスは声さえ出せない。

まさに死屍累々

「しかしテンカワ?お前さんの独創的な料理なんとかならないのかい?」

「え?どの変が独創的なんです?」

「「「「「全部」」」」」

「そんなに褒めるなよ。照れるだろ?」

「「「「「褒めてない」」」」」

「いや皆まで言うな。解ってる、解ってるから」

「「「「「聞いてよ人の話」」」」」

ホウメイガールズで総ツッコミである。

だが、もう何を言っても無駄のようだ。

「はぁ……ほらほらもういいから出前行っといで」

「え゛…まだ仕事有ったんですか?」

「嫌ならいいんだよ?その代わりあの人がどうでるかね〜」

「……行かせていただきます」

アキトの苦手な人、大体想像はつく。

 

 

 

 

 

 

シュッ

「出前っすー」

「ご苦労様です」

「……って、およ?ノリ3世1人か?」

「ええ。皆さんお寝坊やサボリです」

「…………ほぉう。オレが一生懸命働いている時にいい度胸じゃないか。どうしてくれよう……くっくっくっ」

アキト、ちょっと切れ気味の様子。

「テンカワさん、そんなことより出前」

「おお、そうだったな。ほいサンドイッチ」

「どうも」

「なんでそんな軽い物なんだ?言ってくれればオレが腕によりをかけて素晴らしい「いいです」…そうか?」

「はい」

「何故?」

「言いたくありません」

「…」

アキトは悲しそうだ。

 

 

「はむはむ…」

「…」

沈黙がブリッジを包んでいる。

というより1人は食べるのに夢中でもう1人は隅っこでいじけているからだが。

「そういえばテンカワさん」

「…なんじゃい」

「質問があるんですが」

「質問?何だ?パンフレットについてか?それなら軽く5時間は語ることが出来るぞ?」

アキト復活!

しかしパンフで5時間…何を話すのだろう?

「…違います」

「じゃあペアルックについてか?これも…「違います」…じゃあ何?」

アキトはちょっと不機嫌だ。

「………何故、私が『ノリ3世』なんですか?」

「なにぃ!知らないのか!?」

知るわけない。

「よぅし、わかった!今から説…あ〜講釈してやる!」

「はぁ…」

『説…』の部分で切ったのは何かを本能で察知したのであろうか?

「まず、時は遡り約1200年前のとある王国で一人の王子が誕生したことに始まる。この王子なんと台所で生まれたと言う逸話があり、このことから当時から『出刃包丁』というあだ名がつけられたのだが当然王子はそのあだ名を気に入らずあだ名を言ったものを片っ端からぶった切っていったのだ。そんな王子を見かねて当時の王が新たに王子にあだ名をつけたのだがそのあだ名と言うのがこれまたセンス最悪で当然王子も気に入る訳がなく再び暴れだす始末。そんな月日が幾ばくか過ぎたある日、王子の親友が城に訪れたのだ。そして親友はこう言った『オレも実は台所で生まれたクチなんだ!』と。だが王子は『それがどうしたぁ!』と言い親友を叩き出してしまう。それでもその親友は毎日のように…」

「…もういいです」

「何?これから面白くなるのに。これから王子の親友が谷底に縄無しバンジーをして…」

「いいです」(キッパリ)

「そうなのか?」

「はい」(キッパリ)

「もったいない、もう二度と聞けないかもしれないんだぞ?」

「二度と聞きたくありません」(キッパリ)

「そうか?」

「はい」(キッパリ)

「そうか」

「はい」(キッパリ)

「では仕方ない。序章ははしょって第二章『恋する乙女は台風一家(切磋琢磨編)』から!」

あるのか!?しかも何だそのタイトル!

「第13代王位継承者が王座についたある日…」

「……………かんべんして」

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜語った、語った」

やけに爽やかなアキトである。

「…」

で、コンソールにもたれているのは海岸に打ち上げられた海草のようになっているルリである。

「さ〜てと…おおそうだ!ノリ3世!…?…おい、どうした?」

「……はっ!私は何を…?」

「さてな?まあ多分『ブルース』について考えていたんだろう」

「そうでしょうか?」

「ああ!そうだとも!」

何故断言出来る?

「………で、何ですか?」

「そうそう、他のブリッジクルーは何処行ったんだ?出前があるんだが」

「そうですか。じゃあ検索します」

只今検索中である。

「出ました」

「どれどれ………ってなんじゃこりゃ?」

「まずミナトさん。何故か展望室で転がりながら寝てますね」

「…ある意味器用だな」

「次、ゴートさん。通路で匍匐前進してますね」

「…何に狙いを付けてるんだ?」

「次、プロスさん。どっかの部屋で変な物いじってます」

「…見たくない。次」

「次、メグミさん。鍛錬室で…」

「次」

「アオイ副長は自室でひたすら書類整理してますね」

「仕事押し付けられたな…哀れなヤツだ。次」

「フクベ提督、クマさんのぬいぐるみ相手にお茶を点ててます」

「流石はベン師匠、何時でもだな」

「…ちょっと違うような……まあいいです。最後は艦長、瞑想ルームでバシバシされてます」

「…何がしたいんだアイツは?」

「意外とテンカワさんなら解るんじゃないんですか?」

「…どういう意味だ?」

「それは多分同類だからだと思います」

「……………………」

アキトは凄く悲しそうだ!

「テンカワさん、テンカワさん」

「………なんぞや?」

「いじけてる場合ですか?出前どうするんです?」

「…………もういい、ほっといてくれ」

「ダメです。さっさと行ってください」

冷たいぞルリ。

まあ、あんな話聞かされちゃ当然か?

「……………うう、らじゃー」

シュッ

落ち込みながらもブリッジを後にするアキト。

シュッ

だが反対側の入り口から戻ってきた。

「……アレ?」

「…テンカワさん。またですか?」

「……イエス」

「…ナビゲートしてあげます」

「すまんな〜何時もお前には苦労をかけて…ゴホゴホ…」

お前は何処ぞの病人父ちゃんか?

「…それは言わない約束です」

何気にルリも乗るし。

「ノリ3世、何時の間にそんな高等な返しを…!」

「…知りません」

何気に毒されているルリだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは展望室、ミナトへの出前である。

「………ハトさん?何で転がってるんだ?」

コロコロコロコロ……

「〜♪〜♪〜♪」

「おーい、聞いているかー?………仕方ない、どえりゃ!

ぶんっ!

アキトは出前の『炒飯』をぶん投げた!(ラップ付)

パシッ!

ミナトはソレを受け止めた!

寝ながら。

「…よし、次行こ」

ピリピリ…カチャカチャ…はぐはぐ…

「〜♪〜♪〜♪」

寝ながら食ってるよ、おい。

 

 

 

 

 

 

 

「さてっと……はっ!」

さっ!

キュン!

アキトは物陰に隠れたと同時に銃弾が壁をかすめた!

「だ、誰だぁ!」

「…その声はテンカワか?」

「……そのフォルティッシモ的野太い声はゴホ?さんか」

「………今更名前の訂正は言わんが……何の用だ?」

「出前」

「……ああ、そういえばそうだったな。忘れていた」

「忘れんなよ。お陰でこっちは撃たれてんだぞ?」

「何か言ったか?」

「いんや、何も。…で、何やってんの?」

「見て解らんか?」

「いや、見ても聞いても拝んでも張り倒しても解らんぞ?」

「そうか?…まあいい、言うならばコレは日々の努力と言うやつだ」

「はぁ?」

「つまり訓練をしているわけだ」

「…何で通路の真ん中で銃持ちながら匍匐前進してるのが訓練なんだ?」

「……ふっ、解らんか。まあ、お前も後10年位生きれば解るだろう」

「いや、力の限り解りたくない。もう絶対」

アキトはキッパリ言い切った!

「……そうか」

「おう!…んじゃコレ出前の『カツ丼』ね。では!」

ズリズリズリ…カチャ…もぐもぐ…

「むぅ…少し卵が固いな」

通路の真ん中でうつ伏せになりながら銃を片手に持ちカツ丼を食う男。

シュールな光景だ。

 

 

 

 

 

 

「…ここか」

今アキトはある扉の前にいる。

そこには【ナデシコ総務総本山】と書かれているプレートが掲げられている。

「何故総本山?と言うより何で血の赤?……帰りたい

『開いてますからどうぞ』

ビクッ!

「な、何故オレが居る事が解ったんだ?」

『どうしたのですか?…もしかしてイタズラですか?…仕方ないですねぇ。これは然るべき処置を取らなければなりませんかねー?』

「いや!違うっす!プさん、テンカワです!出前持ってきやしたぁー!!」

『…そうならそうと早く言ってくださいよ。危うくアレを出す所だったじゃないですか』

「何?アレって何?」

シュッ

「どうしたんですかテンカワさん?顔色が悪いですよ?」

「いやなんでもないです。はいでまえの『かきふらいていしょく』。それではさようなら」

スタスタスタスタ……

アキトはペラペラと棒読みのセリフで喋り、そのまま両手両脚を同時に動かしつつその場を去った。

「…何だったんでしょうね?」

それはアキトのみぞ知るである。

 

 

 

 

 

 

 

ドスッ!ドカッ!バコッ!ベシッ!ボスッ!

「……何が行われているんだここで」

ここは【鍛錬室】、ちなみにプレートの下には『貸切』の紙が張ってある。

「…凄まじく入りたくないけど出前が有るからなぁ…はぁ」

アキトは陰を背負った!

ピンポーン

「…どなたですかー?」

「あ〜テンカワだ。メナード、出前持ってきたぞー」

ダダダダダダダ…シュッ

「アキトさん!もう来るなら来るって言ってくださいよ!部屋が散らかりっぱなしじゃないですか!」

「…気にするな。と言うよりココお前の部屋じゃねーだろうが」

「細かいことはいいんです」

「細かいか?…で、こんなとこで何やってたんだ?」

「…乙女の秘密です」

「そうか秘密か」

「そうです、秘密です」

「「はははははははは……」」

何故か乾いた笑いが木霊した。

「…で、ホントは何?」

「…え、え〜と……あ!ほら私、通信士じゃないですか!だからここで発声練習してたんですよ!」

「何か間がなかったか?それに考えた後『あ!』って言わなかったか?」

「そんなことはありません」

「そうか?」

「はい」

「それと何か凄い音が聞こえていたような…」

「気のせいです」

「そうか?」

「はい」

「………まあいいか、ほい出前の『カルボナーラ』」

「ありがとうございます!それじゃ!」

シュッ…カチッ

メグミは出前を受け取るとそのまま鍛錬室に入りドアをロックし閉じこもった。

「…次、行こ」

中で何が行われているかは謎である。

 

 

 

 

 

シュッ

「おーい、アジ副長ー出前だぞー」

「……ああ」

「…何か凄いことになってるな」

「………そうさ、ユリカは全然仕事しないで全部僕に押し付けていったからね」

「…た、大変だな…え〜…あ!そうそう、ハイ出前の『レバニラ定食』!まあコレ食って元気出せや!」

「…………どうも」

「じゃ、じゃあな!」

シュッ

……………ふふふふふふふふ………もういい、沢山だ、これ以上やってられるかああああああぁぁぁぁぁっ!!!!!!

 

どがっしゃあああああぁぁぁん!!

 

ビクッ

「…触らぬカルチャーにモダン野郎ってね」

全然違うぞアキト。

 

 

 

 

 

 

 

シュッ

「ベン師匠ー出前ですよー」

「ずずず…ふぅ……ああ、そこに置いといてくれ」

「そうすか?じゃあ、はい『秋刀魚定食』、置いときますね」

「すまんな」

「いえいえ……で、ベン師匠」

「何だ?」

「その部屋の半分を埋め尽くしている巨大なクマのぬいぐるみは何ですか?」

「…気にするな、ファンデーションにされるぞ?」

「ふぁ、ふぁんでーしょん?」

「ああ」

「……………失礼しました」

「いや…出前ご苦労」

「…いえ」

シュッ

「…………………………くっ、やっぱりベン師匠はデカイぜ」

何処が?

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、次はここか」

アキトの目の前には【瞑想ルーム】のドアがある。

「…無視して帰ろうかな」

シュッ

「ナニカヨウデスカ?」

「ぬお!?な、何だお前は!!?」

「ハイ、ココニハイビサレテイル『悟りロボ』デス」

「さ、悟りロボ?」

「ハイ」

「何でそんなもんが?」

「ココハ『瞑想ルーム』デスカラ」

「そういうもんなのか?」

「ソウイウモンナンデス」

「………地下水脈が船酔いしてるからかな?」

「イミガワカリマセン」

「ふっ…所詮はロボットか………ああ、そういや確か中にスリ…艦長が居るよな?」

「ハイ、イラッシャイマス」

「これ、出前の『ダチョウの卵の目玉焼き(ガッテン風味)』。アイツに渡しといてくれるか?」

「リョウカイデス」

「頼んだぞー」

「ハイ、デハ」

シュッ

「…世の中色んなヤツが居るよなー」

そのセリフをお前が言うか?

 

「アキトー…ユリカは何時までも待ってるからねー……」

「ボンノウ、ボンノウ、ボンノウヲシズメナサイ」

バシバシバシバシ………

「あうううううぅぅ……」

「聞こえなーい、なーんにも聞こえなーい」

やっぱイイ根性してるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……疲れた……まあココで最後だからな…はぁ…よし!ファイティング・フルーツだオレ!…ちわーっす!出前ーっす

どうやら持ち直したようだ。

「おーやっと来たかー、おーい!お前らー!ちょっと休憩とるぞー!!

「「「「「「「「「「うぃーっす」」」」」」」」」」

なんだか何処かの工事現場のようだ。

「タイヤ班長、ご苦労」

「おー、お前も食堂はいいのか?」

「ええ、まあ何とか…しっかし誰が食べるんだか、あのこれでもかって位の大量の宴会料理

「さあなぁ…誰か大食いチャンピオンのヤツでもいるんじゃねーか?」

「それもそうか」

「…納得すんなよ」

「え?違うの?」

「お前…そのボケ何とかなんねーか?」

「な…ボケとは何だ!ボケとは!せめてすっきりくっきりはっきり天然しぼりくらい言ってくれよ!」

「…いや、意味わかんねーし」

「それにそんなこと言われたら硬派なオレに変なイメージがついてしまうではないか!!」

「元からねーよそんなもん。というよりお前、変だろうが」

「なにぃ!何処が!?」

「全部」

断言だ。

「……」

アキトはたそがれた!

 

「ずずず…ふぃー食後のお茶はいいねー……っておいテンカワ、そのお前が持っているのは何だ?」

「………え?ああ、これ?。海老を使い、せんべい状にした固形物体。お値段はお手頃。人気もまあまあだ」

「…つまりお茶請けの海老せんべいだろうが」

「そうとも言う」

「…」

ウリバタケは頭を抱えている。

「どうしたタイヤ班長?今頃ホームシックか?」

「…違うわぁ!あほぅ!!」

パシャッ!

「うおあちゃああああああぁぁぁっ!!!」

アキトは転げ回っている!

まあ熱いお茶かけられちゃあねぇ。

 

「何やってんのー?」

「おお、ヒカルちゃん、リョーコちゃん、イズミちゃん」

「やっほーウリピー♪」

「…おいウリバタケ、コイツなにやってんだ?」

「ああ、床掃除をちょっとな」

「体でか?」

「そういう気分なんだとよ」

パペン♪

「…楽しそう」

「楽しいわけあるかあああああぁぁぁっ!!!」

「ようお帰り。大分床がキレイになったよ」

「オレはモップじゃねぇってば!」

「まあまあアキトくん。ねぇそれよりさ、今から私たちシミュレーションやるんだけど一緒にどう?」

「そういやお前も兼任とはいえパイロットだもんな。どうだ?鍛えてやるぞ?」

ポポロン♪

「…おいで」

「ぬぅ…残念だがまだ食堂の仕事が残っているのだ。また今度だな」

ペペン♪

「…残念」

「そうかそれなら仕方ねーな」

「うん、また今度だね」

そう言って立ち去ろうとする3人娘。

「ああ、また何時かだな。タマゴ、アヒル、スリ」

「……………ねえねえアキト君」

「ん?なんじゃいアヒル?」

「…アヒル…まあいいや。でさ、ずっと聞きたかったんだけど何でイズミちゃんがタマゴなの?」

「は?何でまた」

ポロン♪

「…知りたい」

「そういやそうだな。オレとヒカルは名前を無理矢理縮めた感じだけどイズミだけ違うもんな」

「うん、そうそう。何で?何で?」

「ふっ、仕方ないな。では教えてしんぜよう!まあそこに座れ。ほい、茶と座布団、茶菓子の海老せんべいも有るぞ?」

「準備いいね〜」

「まあこの辺は常備だな」

「これを何時も持ってんのかお前は?」

「常識だろ?」

「絶対違うと思うな〜」

「ああ、オレもそう思う」

ペロン♪…パリパリ

「………で、何で?」

イズミがウクレレ片手に弾きながら海老せんべいをかじり質問してくる。

器用だ。

「よし、お話しよう!はい注目!紙芝居が始まるよ〜

ドンッとアキトが何処からともなく紙芝居セットを取り出した!

「どっから出した?あの紙芝居セット」

「さあ?」

パロン♪

「………侮れないわね」

それと何故か紙芝居セットの端っこに『イ……印』と書いている。

誰かの愛用品だったのだろうか?

 

という訳であだ名の由来が解る紙芝居の始まりである。

「さてさて、まず名前からだが『マキ・イズミ』だな?」

「うん…ずずず…」

「そこでそれぞれを分割し、マキ=薪、イズミ=泉にする」

「無理矢理っぽくないか?…ばりばり…」

「はいそこ突っ込まない。さて続き続き、それで薪は燃えるな?」

ポロロン♪…ずずず…

「そうね」

「更に燃える=火、そして泉=水、だよな?」

「まあそうかな?…ぺきぺき」

「2つを合わせるとどうなる?はい!スカ君、答えて!」

「は?オレ?………火が消える?それとも蒸発する?」

「まあ結果としてはそうだな。だが一定以上の温度と量等の条件が揃えば?」

「爆発する?」

「そう水蒸気爆発だ。だからタマゴ」

「…………………………何故?」

「おいおい冗談は止してくれたまえ。卵って爆発するじゃないか」

「まあ電子レンジでゆで卵を作ろうとすればね〜…ぽりぽり」

「ならいいじゃないか」

「根本的に何か間違っているような気がするのはオレだけか?…しかも爆発なら卵じゃなくてもいいだろうが」

甘い、甘いよスカ君!それにマキ・イズミの名前を略すとキミ=黄身だろ?それに彼女は芸人としてもパイロットとしても半人前だ!
だからタマゴという意味も含まれているのだよ!」

「何がなんでも卵にしたいんだね…ずずず…」

「そんなことはないが、止める訳にもいかんのだ」

ポロロロン♪…ずずず…

「…どうして?」

「思い付いたからだ」

「は?思い付き?…かりかり…」

「おう!折角思い付いたんだから勿体無いだろ?だから採用」

「別に普通でいいじゃん…ぽりぽり…」

「普通だろうが。それにオレのモットーは思いついたら即実行!だからな!」

ペロペロン♪…ぼりぼり…

「他には有るの?」

「うむ、よくぞ聞いてくれた!他には拒否権は一切渡さん!無我夢中!独断専行!日常茶飯事!自由奔放!
問答無用!原因不明!意味不明!行方不明!春爛漫!一見無害!言語道断!絶対無敵!
花畑で手を振る死んだおじいちゃん!常勝不敗!完全拒否!撤退命令!挙動不審!一攫千金!
年中無休!侵食汚染!絶体絶命!再起不能!天上天下唯我独尊!…

待て。今、変なのが幾つか入ってなかったか?

「………もういい……ずずず…ごちそうさん」

「そうか?…はいお粗末様」

なんだかんだで紙芝居終了である。


「お前ら邪魔だよ…」

ウリバタケは何時の間にか蚊帳の外だ。

 

「さて行くか」

「そうだね。お茶ご馳走様〜」

ポロロン♪

「謎、解決」

3人娘が立ち去ろうとする。

「ああ、それと言っておきたかったんだが…」

だがアキトがタダで帰すわけがない。

『叫べ!ルンルン突撃部隊』ってのはどうだろう?」

「何がだー!?」

「いやエステバリスの部隊名」

「いるかそんなもん!エステ部隊で十分だ!!」

「え〜…」

アキトは非常に残念そうだ。

「だったら『おでん好きリックと愉快な仲間達 マークU』ってのは?」

「だれだリックって!?」

「さあ?」

「つ、疲れる……」

ポロン♪

「…じゃあ『ひねくれフィーバー特攻隊』は?」

「乗るなよイズミ!」

「何?『ひねくれフィーバー』って?」

「むむ…やるな」

パペン♪

「ふふ…負けないわよ?」

何気に熱いバトルに突入しそうだ。

 

「お前らもう帰れよ…」

ウリバタケは完全に無視されていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ウメ料理長ー!出前終わったっすよー?」

「…」

「あり?ウメ料理長?何やってんすか?」

「………ああ、テンカワかい。随分遅かったじゃないか」

「はははは…、まあ色々と複雑怪奇な事が多々ありまして」

「そうかい」

「…いや、流されても困るんですけど」

「で?何か用かい?」

「え?え〜と…そう!出前終わったんですけど後どうしましょうか?」

「ん?そうだね、今日はもう終わりにしようか」

「そうですか…で、何をしていたんですか?」

「いやね、アレをどうしようかと考えていたんだよ」

「アレ?」

「そうアレ」

「………アレですか」

「アレだよ」

そう2人の目の前には今日作った宴会料理2000人前が鎮座していた。

「…なんでこんなに作っちゃったんでしょうかねー?」

「さてねーまあノリと勢いってやつかねー怖いねー」

そんなんでいいのか?

「でも1日でこんなにいっぱい作っちゃうオレが凄く素敵♪」

「お前殆ど何もやってなかったろうが」

「……………記憶にございません」

「お前は何処かのお偉いさんかい?」

「ま、まあいいじゃないですか!コレだけ作れば料理の道を極めるのも近くなるってもんですよ!」

「そうかね〜?」

「そうですよ!道を極める!つまり極道!!これにつきますね!!」

「ソレ絶対違うと思うのはアタシだけかい?」

いや、ホウメイだけではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日からこの宴会料理が食堂に出まくったのは言うまでもない。

しかも2〜3週間程。

「長持ちするような料理にして正解だったね〜♪」

流石はホウメイだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキト…いやホウメイの運命はどっちだ!?続くような続かないような思わなくも無きにしも非ず。

 

あとがきです。

こんにちは、彼の狽ナす。

ギャグ中心でいけましたか?

それともまだ足りません?

…これ以上無理です。一杯一杯です。ごめんなさい。

さて、はっきり言ってほとんど番外みたいな今回の『その9』楽しでいただけましたか?

次回は…やっと火星かな?

それではまた何時かお会いしましょう!

 

みなさん、感想ありがとうございます!雨に激しく打たれても執筆がんばります!

 

 

 

 

 

…ギャグ中心というよりはコワレ中心になっているような(汗)

 

 

 

管理人の感想

彼の狽ウんからの投稿です。

ま、つまりなんですな・・・類は友を呼ぶ、と。

今回の話でよーく分かりましたよ、ええ(笑)

 

しかし、誰が宴会料理をオーダーしたんだろう?