「せい!」

ドスッ!

「ぐほっ!?」

ごろごろごろ…

アキトは突然の衝撃に悶えながら転がりだした!

…と言うより生きてたのか。

 

「起きた?」

「『起きた?』じゃねえよ…」

あのまま10分ほど経過してやっと復活を果たしたアキトである。

「よりによって人を起こすのにみぞおちを強打するな!」

「でも目が覚めたでしょ?」

「やかましい!あんな起こし方をするなんて一体どういう了見だ!?小一時間程問い詰めたい勢いだぞ!!?」

「あらそう?じゃあ次からはフライングエルボーでもかまそうかしら」

「何時か殺されるんじゃないだろうか…」

まあお前なら大丈夫だろう。


 

 

 

 

 

 

 

伝説の3号機

その17

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?こんな朝早くになんの用だベン子

ごすっ!

アキトに延髄蹴りが決まった!

「ホント、懲りないわねアンタって」

「そりゃどうも…」

「ほら、寝てないで行くわよ?」

「いや、だから一体何を?」

「何をじゃないわよ。昨日は結局アンタがダウンしちゃったからあの紙芝居の続きを話してあげようと思って来てあげたんじゃない」

「………元々の原因はお前だろうが」

「何か言った?」

「いや別に」

「そう?それじゃ行きましょ。朝食を食べながら話しましょうか」

「へいへい」

なんのかんの言っても仲が良いのかもしれない。

コミュニケーションに多々問題アリだが。

 

 

 

 

 

 

「…という訳なのよ。解った?」

「ふ〜ん。つまり、その月から夜逃げした独立派が火星まで逃げ延びたけどそこへ借金取り悪代官が追ってきて
大半が闇討ちにあったけど運良く討入りを察知した連中が木星までとんずらこいたと」

「…なんだか随分捻じ曲がった感じがするけどまあそんな所。それで木星まで逃げ延びた人々が木星衛星群にコロニーを建設して
今まで生き延びたの」

「なるほど。つまり悟りを開く旅に出た奴等が辿り着いた先は実は天竺だったと」

「……でね?普通だったら100年前の技術じゃ逃げ延びた人達だけでは国なんて作れる訳がないの」

「まあな。常識で考えたら割り箸で家を作ろうなんて考えないよな」

「………そこで当時の人達が『遺跡』と呼ばれる古代文明の塊を見つけたんだって」

「へえ。冷蔵庫の奥に5年前の野菜の化石を見つけたようなもんか」

「…………それで、その『遺跡』の技術を使って生きていく為に必要な物を手に入れ、果ては兵器まで作ちゃったという訳」

「ふむ。ペットボトルの利用法を色々考えた末、水を入れて猫避けにしたり、口を切って物入れにしたり、ボウリングのピン
なんかにしてオモチャにしたり、果てはペットボトルロケットにして兵器なんかも作っちゃうような感じだな!」

「全然違うわよ」

 

パカンッ!

 

べちゃっ!

 

「…ベン子。人が物を食ってる時に後ろからツッコミを入れるな」

「そう?」

「そうだ、どうしてくれる。納豆ご飯にダイブしてしまったではないか」

「自業自得よ」

「謝罪は無いのか…」

「当たり前。大体なんで解釈がどんどん変わっていくの?殆ど最後はあっているようで全然あっていなかったわよ?」

「うむ、実は少しそんな気がしてたんだ」

「少しか。まあとにかくその納豆まみれの顔なんとかしなさい」

「へ〜い」

そう言ってすごすごと洗面所に行くアキト。

 

「はぁ、ホント相変わらずね」

レンナは何故か手に持っているへこんだ菓子缶のフタでパタパタ扇ぎながら呆れていた。

 

 

 

 

 

 

ぱちゃぱちゃ…

「ふい〜…全く、あの暴力女め。何時かギャフンと言わしちゃる」

そう言った人間は果たして何人居たのだろう?

「ん?テンカワじゃないか。こんな所で何をやっている?」

「それは違うなアカすり!お前が挨拶したのはただのそっくり蝋人形Ver7.2.4だ!!」

「朝食の時間だろうが。ほら行くぞ」

そう言って立ち去る三郎太。

 

「無視するなよ…」

アキトは悲しそうだった。

 

 

 

 

 

 

「お帰り〜…あら?高杉君も一緒?」

「はい。途中で浮浪者を見つけまして、連行してきました」

「それそれはご苦労様です。ご面倒をお掛けしました。さぞ大変だったでしょう」

「いえいえ、お気になさらずに」

「…なんだか非常に失礼なこと言ってないかお前等」

「「気にするな」」

「…いや物凄く気になるのだが」

「「あんまり考えるな。知恵熱起こすぞ?」」

「そうか?」

「「そうそう。無理は身体に毒」」

「まあ、そこら辺が妥当な所か」

「…なんで妥協になるかな」

「全く」

だってアキトだし。

まあ、なんやかんやで食事再開である。

「ん〜…しかしな〜」

「ん?何アキト?」

「何だ?質問か?」

「ああ。木星蜥蜴ってさ、地球じゃ植木鉢オアシスマンって事になってたんだけどさ、まさかそれが同じ地球人だったとはね〜」

そうなのか?

「まあそうよね。私も最初聞いた時には本当に驚いたもの」

「それはそもそも地球の軍がこの事を隠蔽したからだ。それを棚に上げ我々を未知の敵等と…全く腹立たしい!」

「まあまあ高杉君抑えて」

「そうだぞアカすり。オレだってショックだったんだぞ?てっきり未知の敵っていう位だから
ゲギガンガーに出てきたゴージャスとかブロックバスターとかチューリッパとかを想像してたのに」

「何それ?」

「うむ。それは…」

「今何と言った?」

突然アキトの言葉を遮り三郎太が乗り出してきた!

「は?何が?」

「だから、さっきお前は何と言った?」

なんだか凄い迫力だ。

「え、ええと確か…」

「確か?」

「…夜逃げ?」

「「戻りすぎだーっ!!」」

 

ズドゴッ!!

 

「だ、だぶるでのローキックはキツイな…」

アキトはそう呟きながらごろごろ転がっている。

本日2回目だ。

「それで、お前さっきゲキガンガーと言ったな?」

「あ?ああ、確かに」

「何処見て言ってんのよ…」

「ザーサイ」

 

ごすっ!

 

「話進まないから真面目に」

「…へい」

「…あ〜いいかな?さて、お前ゲキガンガーを知っているのか?」

「何を言う、知っているも何も全話見たことあるぞ?」

「な、何いいいいいいいいいいいぃぃぃぃっ!!!!!?」

「うお!?」

「ひゃ!?」

「ど、どうした三郎太!敵襲か!?」

「し、心臓に悪いのう…」

三郎太の絶叫にアキトとレンナは驚き、たまたまやって来た源八郎は勘違いし、フクベはドキドキしている。

恋の季節だろうか?

「ほ、本当か!?本当に全話見たのか!?」

「何だ?疑うのか?侵害な!こう見えてもオレは今まで生きてきた18年の人生の中で嘘をついたのはたった80644回しかないぞ!!」

「「「十分だ!」」」

つまり1日約12回は嘘をついている計算だ。

「何だ。嘘か。驚かせやがって…」

「いやこれは本当だって」

「ほう…じゃあ証拠はあるか?」

「ああ!なんなら全話のサブタイトル言ってやろうか?」

「ふん、面白い、言ってみろ」

「おう!行くぞ、よーく聞いてろよ?すー…

 

1話 無敵!ゲキ・ガンガー発進!

2話 決戦!三大メカ怪獣!

3話 特訓!ゲキガン・ケンダマ

4話 やぶれたり熱血合体

5話 母さんみてくれ!炎の四十八手!!

6話 超研究所大爆発!

7話 アメリカから来たライバル

8話 親子メカ怪獣の涙

9話 キョアック星からの逃亡者

10話 子供達の夢を守れ瓦礫の下のアニメスタジオ

11話 衝撃!ゲキ・ガンガーは人類の敵

12話 大逆転!!ゲキガン・ヌンチャク

13話 ゲキ・ガンガー3大晦日スペシャル

14話 元旦の夜メカ怪獣が来る

15話 大公開!ゲキガンガ大百科

16話 大ピンチ!出撃、ななこゲキ・ガンガー!!

17話 迫る悪魔の手!緑の野が消える!?

18話 天才科学者クラークの挑戦

19話 南十字星に誓った友情

20話 孤独な暗殺者!スナイパーT7!!

21話 思い出は銀河の彼方へ

22話 激突!サムライ・ケン対アカラ・メカ怪獣

23話 博士をねらうキューピット?

24話 ケンよ、心の扉を解き放って!

25話 宿命の対決!ケンVSアカラ!

26話 大爆発!くたばれキョアック星人

27話 壮烈!!ゲキ・ガンガー炎に消えゆ!!

28話 蘇れ!我等のゲキ・ガンガー!!

29話 ピンチを救った珍戦士

30話 戦火の友情!我ら花の応援団

31話 日本列島沈没作戦!

32話 悲しみの人間爆弾

33話 聖少女アクアマリンの微笑み

34話 悪夢!!異次元よりの侵略者

35話 発進せよ!スペースガンガー!!

36話 奇策!テツヤロボ大行進

37話 びっくりツチノコ大怪獣

38話 待ったなし!キョアック軍団地球征服!!

39話 大決戦!ゲキガンガーよ永遠に

 

どうだ!」

「は〜…よく覚えてるわねアンタ」

「はっはっはっ、記憶力は良い方だぞオレは」

そうだったか?

しかし何時の間に全話見たのだろうか。

「それで?どうなんだ?信じたの…か?」

アキトが振り向いた先で見たモノは…

「「…同志よ!」」

暑苦しく泣いている熱血バカ2人だった。

「よ、よくぞここまで…もはや疑う余地は無い!」

「うむ!まさしくゲキガン魂!」

どうやら三郎太と源八郎はアキトに仲間意識を持ったようだ。

「…な、何が?…って、おいこら!抱きつくな!あー暑苦しい!!離れろーーっ!!!」

 

「…そういえば木連ってゲキガンガーが聖典だったんだっけ。でも傍で見ていて危ない光景に見えるのは私だけかしら?ねえお爺ちゃん?」

「………」

だがフクベは返事が出来ない。

ドキドキしていたと思ったら何時の間にか昇天したようだ。

「…ってお爺ちゃーん!何逝ってんのーっ!?」

 

「ほっほっほっ…レン、達者でな〜」

 

「うわーっ!?逝っちゃダメーーーっ!!!!!」

 

 

5分後、レンナの活躍によりフクベは無事あっちの世界から帰還した。

 

こんな所で逝こうとするなよ爺さん。

 

 

 

 

 

「そういやさ、俺たちって一応捕虜だよな?」

「まあそうね」

「それがどうかしたか?」

「何じゃ突然?」

「はっはっはっ、朝飯は焼き魚に限るな」

なんとか全員落ち着いたようだ。

散々のドタバタで回りは呆れていたが。

「何で俺らこう堂々と艦内歩き回って飯食ってられるんだ?」

「ああ、そんな事か」

そんな事なのか?

「まあアキトの疑問も無理無いけどね。秋山艦長ってね、とってもおおらかな人なんだよ」

「はっはっはっ!そう褒めるなレンナ君!照れるではないか!」

「限度ってもんがあるだろ。限度ってもんが。100おくまんえん並に

「そう?」

「そうだ!」

「珍しく真面目な意見じゃのう」

そうか?100おくまんえんがか?

「何を言いますかベン師匠!何時も真面目じゃないですか!オレはこう見えてもTシャツ紳士ですよ!?」

「果てしなく嫌な紳士ね」

「それで蝶ネクタイとシルクハットとステッキを常備か…」

「変な想像をしてしまった…」

「う〜む、世界は広いな。色んなヤツが居るものだ」

確かに珍しさは抜群だろう。

「よし、ついでだ。これからの事について話しておこうか」

「…さっきの話からの繋がりが全く無いわね」

「何時もこんなもんですよ」

「大変だのう…」

苦労してるな三郎太。

「それで?これからって?」

がちゃがちゃ…

「………アキト。納豆こねながら聞くな」

「何を言いますかベン師匠!納豆は醤油をかける前によくこねておかないとダメでしょうが!」

ペシッ!

「そういうこだわりは今は置いときなさい」

「何をするかベン子!よりによってナプキンでツッコミいれるな!それじゃ弱いだろ!?

いや、そこなのか?

 

ごすっ!

 

「これでいい?」

「…OKだ」

イスに潰されながらOKサインを出すアキト。

根性のあるヤツである。

「…では今後の君たちの処遇について話しておきたい」

「今後かね?」

「ええ。本星に連絡をとった所、あなた達を別艦にて護送。しかる後、尋問を行う事になった」

「むう、物騒な話じゃのう」

「そうですね。まるで指名手配犯だ。はっ!?…まさかあの時のことがバレたのか!?」

お前、過去に何してた。

「まあそう取られても仕方ないかもしれんな。だが無抵抗な人間に手荒な真似をするつもりは無いのでご安心くだされ」

「ふむ」

「むうう…取り調べか。勿論カツ丼は出るよな?」

王道だ。

「ふ〜ん。でもさ、わざわざ迎えをよこさなくてもこの艦で帰れば良いんじゃない?」

「それは出来ない相談だな。この『かんなづき』は実験艦でね、火星で兵器の実験や難民の監視そして各無人兵器の制御を行っているんだよ。
つまりここを離れる訳にはいかんのだ」

「ほう…しかしそんな事ワシらに言ってもいいのか?一応敵同士だろう?」

「それはそうだが例えあなた達に機密事項を知られたとしてもその情報をもって帰る統べはないでしょう?」

「…確かに」

「つまりはそういうことなのだよ!」

「…何故それを君が言うかな」

アキトにセリフを取られた源八郎は不満顔だ。

「そんなもん言いたかったからに決まってるだろうが!」

 

ごりゅっ!

 

「子供かアンタは」

「まあ、何時ものことじゃな」

「そうですね」

誰も動じないというのも凄いことだ。

 

「回転をつけて殴るとは…レベルアップしたな…」

そして変な所で関心しているこいつも実は凄いやつなのかもしれない。

 

「ん?待てよ?」

「何かなフクベさん?」

「この艦は無人兵器の制御を行っておると言ったな?」

「ええ確かに」

「では、もしやユートピアコロニーでワシらの艦が追い詰められた時に…?」

「はっはっはっ、よく分かりましたね。その通り、この『かんなづき』で制御し無人兵器の進行を止めたのは私です」

「何!?アレってオレのナイスな呼び掛けで止まったんじゃ!?」

「そんな訳ないでしょ?私が無理言って止めてもらったの!あの艦の下には難民が沢山居たらしいじゃない」

「そうか、レンが助けてくれたのか。おかしいとは思ったのだよ、あんな呼び掛けで止まる事自体普通ではないからな」

「まあ『だるまさんがころんだ』で兵器が止まってたら苦労ないわね」

「「「うんうん」」」

全員納得である。

「そ、そんな…これからはアレ一本で生きていけると…グッバイ、オレの小金色人生。ハロー、ヤンバルクイナ人生

アキトは両手を床につけ打ちひしがれているが…『だるまさんがころんだ』だけで生きていける人生って一体…?

「何バカなこと言ってんのよ…大体どんな人生プラン立ててんのよアンタは?」

「うむ!今こそオレが考え出した緻密なプランを教えてやろう!」

「いい」

「まず何処かの道を歩く」

「聞けって」

「そこでたまたま1億ほど拾ってみる」

「…待てや」

「更にたまたまで大儲けして、たまたま近くで埋蔵金を掘り当てて、たまたま人間国宝になり、たまたま大統領になって」

「だから待て」

「後はゴージャスに余生を送る、以上。どうだ完璧だろう!」

「穴だらけよ」

 

ごけっ!

 

「…な、何をするかベン子!いきなり殴るとはどういう了見だ!?無駄にナイトフィーバーになるぞ!?」

一体どうなるんだソレは?

「…何処が緻密なのよ、思いっきり間が抜けてるわよ。すこーんと。しかもそんなたまたまがある訳無いでしょうが」

「はっ、この緻密な人生プランが理解出来ないとはお前もまだまだだな」

「…それは緻密じゃなくて陳腐って言うのよ」

「なにぃ!?何処がだ!?」

「全部」

「…総否定かい」

「他に言い様が有る?」

「…もしかして結構無理?」

「気づけ。とっとと。そーいうことは。真っ先に。言われんでも。自分の頭で考えて」

言いたい放題だ。

「ぐぅ…折角、夜も寝ずに昼寝して考えたパーフェクトプランが…」

それは同じことでは…?

「…うう……折角の人生がまさかこんな所でつまずく事になろうとは…」

「もう思いっきりつまずいてるわよ」

と言うよりつまずきまくってる気がする。

「あううう…こうなったら仕方ない!よっ」

すちゃっとアキトは何かを取り出した。

「…何よそれ?」

「見て分からんか?」

「…それって確か」

「そう、木連はゲキガンガーが聖典な国だろう?だからこれを常備して郷に入ってはGO!って感じにするんだ!」

「…日本語喋ってよ」

もうどうにも止まらない感じだ。

「あ〜もうそろそろ良いかな?」

「あ、すみません。こっちに没頭してました」

「いやいや気にしなさんな。はたで見ていて中々楽しいからな。なあ三郎太?」

「いえ、私には理解の範疇を超えていてリアクションが出来ません」

「…そうか?」

三郎太の言う事も分からないでもない。

「まあそう言わずに。お近づきの印にこれを…」

「ぬ?こ、これは…!

「どうしました艦長?…な!?

「どうしたの2人共固まっちゃって?」

「何を貰ったのじゃ?」

「「ゲキガンシール」」

「「何?」」

「「ゲキガンシールだ!」」

「「は?」」

突然の事に呆然とするレンナとフクベ。

「ふっふっふっ、こんな時の為にヤジンのコレクションを持ってきておいたのだ」

一体何時の間に?

「アキト君!」

「何かな?」

「流石は同志だ!いや親友!!いや兄弟だ!!!

「は?」

アキトはいきなり兄弟にレベルアップした!

「さあこれから一緒にゲキガンガーについて熱く語り合おうじゃないか!行くぞ三郎太!」

「了解です艦長!」

「いや遠慮する」

「よし早速、私の部屋にて上映会だ!今日は徹夜だな!!」

「おお!久しぶりにゲキガン耐久レースですか!?燃えますね!」

「…あのさ、勝手に話進めないでくれる?」

「ようし!全は急げだ!さあ行くぞアキト君!三郎太!」

「はい!」

「だからね?あ、ちょっと引っ張るな!まだご飯食べ終わってない!お、おいベン子!ベン師匠!助けてーっ!!」

 

 

「…どうしようかお爺ちゃん」

「ほっとけ」

「そうだね」

アキトはこの時点で完全に見捨てられたようだ。

 

 

 

結局、話は途中のまま一日が過ぎさってしまった。

のん気なものである。

 

 

 

そして、翌朝。

 

 


 

「やあ諸君おはよう!」

「あ、お早うございます。秋山艦長」

「お早う秋山殿」

「お早うございます!艦長!」

再び朝食の1コマである。

「あれ?アキトは?」

「ああ、アキト君なら…ほらソコに」

「え?」

レンナが振り向いたその先には…

 

 

 

 

「…ふふふ…めーりさんのひつじ〜ひつじ〜ひつじ〜…バファリンの半分はやさしさで出来ているんだよ〜…」

 

真っ白な灰になってぶっ壊れているアキトが居た。

 

 

 

 

「今日もご飯が美味しいですね」

「うむ。更に今日の玉子焼きはいい感じじゃ」

「あ、それ自信作なんだ〜」

「はっはっはっ、味噌汁のお代わり貰えるかな?」

全員、無かった事にしたようだ。

一体、昨日は何があったのだろうか?

 

「さて、昨日の話の続きでもしようか」

「…やっとね」

「うむ。長かったな」

本当に。

「昨日も話したかと思うがあなた達には色々と聞きたい事がある」

「…そうだったわね。ん〜でもそう簡単に話すと思います?というより私は一般人だから関係無いだろうけど」

「そこはそれ。情報は人それぞれですからな。それに無理強いをするつもりも無いから安心してくだされ」

「ふ〜ん。本当かな〜?」

「レンナさん、木連は正義の国です。非道な真似は致しません!」

「でも高杉君。火星の進行はどう説明するの?」

「アレはあなた達がこちらの書状を無視し更には警告も聞き入れなかったからです!
現に私たちの操る無人兵器は無力な人間には手出しはしていません!」

「まあそうね。こうして私が生きているのもその証拠だし。でも書状って?それに警告?何時そんなの出したの?」

「ふむ。ワシも知らんな」

「そうなのお爺ちゃん?」

「ああ。そんな事は初耳じゃ」

「ふ〜ん。艦隊提督だったお爺ちゃんが知らないんじゃ火星の人は何も知らないんじゃない?」

「うむ、実際書状を出したのは地球の連合上層部だ。だが奴らはその和平の為の書状を握り潰した。
こうなってはこちらの意思が通じるまでやり通すという事で、うちの代表が『手前ら!まとめて叩っ斬っちまえ!』
の一声でこんな現状だ」

「それは結局『力づくで解決しろ』って意味じゃない!」

「言われてみればそうですね」

「いや、気付くの遅すぎ。高杉君」

「それにしても少々酷いのではないか?火星住民に罪は無いのにのぅ」

ああ、全くだ!シェルターに非難していた時に食べてた火星丼の代金を請求したいくらいだ!
しかも3人分!
…はぁ、そういやあの時の親子どうしてるかね〜」

小さいなおい。

しかも何か浸ってるし。

「ア、アンタ何時復活したの!?」

「馬鹿にするなよベン子!こう見えてもオレは激動の8日間わんこそば犬ぞりレースを制した男だぞ!?」

「どうやら何時ものアキトに戻ったようじゃの」

良かったのか悪かったのか、判断に悩むところである。

「さて、話は戻るが、火星にあそこまでの被害を与える必要はあったのかね?」

「それは地球の奴らが私たちの言葉を受け入れていればこんな事にはならなかったんです!元の原因は地球の奴らだ!」

「まあ落ち着け三郎太」

「そうだぞ?気楽に気楽に。何だったらオレがネパール5万年の歴史、整体マッサージでもやってやろうか?
もしかしたらご先祖様に会えるかもしれんぞ?」

それって昇天させるという事では?

今回2人目か?

「とにかく今はこちらの指示には従ってもらいます」

「むう…」

「ちっ…しょうがねえ。今回は特別だぞ?」

アキトは突然偉そうだ!

「ま、仕方ないかな」

「それにレンナ殿には色々とご面倒をお掛けしましたからなぁ、失礼な真似はせんよ」

「ご面倒?何だ?ベン子が艦の外壁でも削り取ったのか?」

 

ごめしっ!

 

「それはどういう意味かな〜?ア・キ・ト・君

「いやレンナさん。こいつ白目むいてますけど」

激しきツッコミによりアキトが昇天したようだ。

どうせすぐに復活するだろうが。

 

 

「では約30時間後、あなた達を引き取りに仲間の艦が来ますのでそれまではご自由に」

「うむ、分かった」

「はーい、分かりましたー」

「勿論ですたい!」

即座に復活したアキトは何故か博多弁だ!

「…はぁ」

三郎太にはもうツッコむ気力は無かった。

気苦労が絶えないな。

 

 

「しかしレン。お前は何故この艦に1人で乗っておったのじゃ?」

「うむ。そこは大都市の地下鉄並に気に掛かる所だな」

例えが分かりにくいぞアキト。

「うん、ちょっと前は火星難民の人達が結構居たんだけど、私は気がかりがあってここに残ったんだ」

「気がかり?」

「何だ?火除け少佐が火に強いけど日に弱いことか?」

「誰だそれは?」

「いやさっきすれ違ったはずだがなぁ」

「そんなヤツはこの艦には居ない!」

「そうかぁ?でもさっきのヤツは確かに…」

 

ごんっ!

 

「話進まないから黙っててくれる?」

「らじゃ」

 

「なんだか本当にいいコンビですよね」

「うむ。よいボケとツッコミじゃ」

確かに。

 

「それでレン。気がかりとは?」

「うん。ここに拘留された時にね出てきた食事がレーションばっかりだったのよ」

「レーション?」

「ええ、お恥ずかしい話ですが我々木連の兵士は戦闘には長けるのですが、どうも炊事等の家庭的な事はちょっと…」

「ほお…まあ軍隊では料理教室はやらんだろうからな」

「いえベン師匠、以前聞いた話では軍隊でも3分クッキングと称して現地調達の食物で料理方を教えていると聞きましたよ?」

「ほお…それは初耳だな。何時からそんなスケジュールが入ったのかのう」

「ええ、オレが入れました!

「「「勝手に作るな!」」」

 

どげじょっ!!!

 

「見事な3連コンポだ…」

「コイツは…」

「むう…育て方間違えたかのう…」

いや親が元からアレだし…。

「こいつの事はやはり理解出来ん…」

それは一生無理だろう。

「でね?それじゃあんまりだから保護してもらった中の女性陣で料理を作ろうって事になったの」

「突然話が戻ったのう…」

「ええ」

「何言ってんのお爺ちゃん!強引にでも進めないと何時まで経っても終わんないわよ!」

「確かにな」

「ええ、不安要素が沈黙しているうちに話を終わらせることを私も勧めます」

ただいま不安要素ことアキトは倒れふしている。

「じゃあ続きね。それで暫く経ったら難民の引渡しがあったんだけど私達が出て行ったら
この艦の人達って食事どうするんだろう?って考えてね、それで…」

「お前1人が残ったと?」

「うん!」

「全く、相変わらず世話好きだのう」

「でもみんな喜んでくれたよ?」

「ええ、非常に助かりました。食事に関しては部下からも不満の声は出ていましたからね」

「そうか、それは良いことをしたな」

「へへ…秋山艦長に無理言ったかいがあったかな」

「そうですね。最初は艦長もしぶっていましたから」

「でも最終的にはその艦長自身が食事作り手伝ってたもんね」

「ははは、確かに。お陰でうちの艦長、艦長兼料理人ですよ」

何処かで聞いたような職業だな。

「そうそう!だからもう私が居なくても大丈夫だよね」

「しかし乗組員の中には『貴女の料理でなければ食べん!』と言うヤツもいますからね」

「ほっほっほっ、さしずめレンはここのアイドルという所かのう」

「もう!やだなぁお爺ちゃんったら!」

「ははははは…しかし残念です。レンナさんの食事を食べれるのも今日が最後ですね」

「それは仕方ないよ高杉君。でも腕によりをかけて作るから楽しみにしててね?」

「ええ、勿論です!」

「むう…爺ちゃんいい光景を見せてもらって泣きそうじゃ…」

フクベ、実は涙脆いのか?

「それでは昼には何を?」

「そうだな〜最後だし豪華に行きたいけど食料の無駄使いは出来ないし…それじゃ簡単でいっぱい出来るカレーにしようか!
それにコロッケもつけちゃう!」

「おおコロッケカレー!」

「「「「「「「「「「コロッケカレーですと!!!?」」」」」」」」」」

「「「うわ!?」」」

突然木連兵士が多数現れた!

「お、お前等何時の間に…」

「全然気付かんかった…」

「び、びっくりした〜」

「「「「「「「「「「それより副長!昼がコロッケカレーとは真ですか!?」」」」」」」」」」

「あ、ああ。真だ」

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおぉぉっ!!!」」」」」」」」」」

木連兵士達は雄叫びを上げた!

「「「…」」」

レンナ達は驚き立ちすくんでいる。

「「「「「「「「「「レンナさん!!!」」」」」」」」」」

「は、はい!」

「「「「「「「「「「手伝います!!!」」」」」」」」」」

「え?」

「「「「「「「「「「手伝います!!!」」」」」」」」」」

「は、はい。宜しく…」

「「「「「「「「「「お任せください!例えこの命尽きようとも必ず完成させてみせます!!」」」」」」」」」」

「いや、何もそこまで…」

「よぉし、お前等よく言った!!!」

「うわ!?艦長!?」

「また突然じゃのう…」

「木連の人達って突然現れるものなの?」

それは不明だ。

「いいかお前等!料理は戦いだ!言わば内なる戦場だ!」

「「「「「「「「「「はいっ!!!」」」」」」」」」」

 

「た、戦い?戦場?」

「むう…料理とは奥が深いのう」

「…きっとそういうものなのでしょう」

何か間違っている。

 

「よし、いい返事だ!今日の食事はレンナ君達を交えて壮行会にする!いいな!?
では気を引き締めて掛かれ!レッツ!!」

「「「「「「「「「「ゲキガ・イン!!!」」」」」」」」」」

 

「あ、あの私1人でも…」

「無駄ですレンナさん。誰も聞いてません」

「熱いのぉ」

本当に。

 

「突撃ーーーっ!!!!!」

ぶおーーーー…

何故かほら貝の音が鳴り響いた!

「「「「「「「「「「うりゃあああああああぁぁぁっ!!!」」」」」」」」」」

どどどどどどどどど………!!!

 

「…私居なくてもいいんじゃない?」

「ワシもそんな気がする」

「変わったなあいつ等…」

三郎太、ちょっと遠い目をした朝だった。

 

 

「よぅし!俺達も行くぞ三郎太!」

「え?は、はい!」

「気をつけてねー」

「レン…見ているだけか」

まあ、あの中には入れないだろう。

しかし艦の仕事はいいのだろうか?

 

 

 

「な、何だあああああああぁぁぁ!!!!!?」

ちなみにアキトは目を覚ました瞬間に源八郎に引っ張られていったとさ。

 

 

 

 

 

「さあ諸君!レンナ君、フクベ殿、そして我らの兄弟、アキト君を称えて乾杯といこうじゃないか!」

「「「「「「「「「「おーーーーーーっ!!!」」」」」」」」」」

異様な盛り上がりを見せている食堂である。

 

そして当の3人は…

 

「どうしてこうなるの?」

「もう全てに身を任せるのじゃ、レン」

「だから兄弟は止めろって…」

 

何故か社の上に飾られていた。

 

「む〜…」

そしてそれを何故か熱心に拝んでいるのは神主な格好の三郎太だ。

 

 

「さあ皆の衆!杯を持てい!!」

「「「「「「「「「「はっ!!!」」」」」」」」」」

「ふっふっふっ…今日のような時の為に取っておいた一品を披露しよう…!」

そう言って源八郎が取り出したのは…

「おお!それは大吟醸酒『激我美射無』!

さっきまで拝んでいた三郎太、ソレを見て驚愕である。

「何それ?」

「もうほおっておけ」

「ぬう…ソレを出すか」

知ってんのか!?

 

 

 

「では、彼らの前途に…乾杯!!

「「「「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」」」」

「レンナさん。フクベ殿。そしてまいぶらざー。乾杯!

「…もうどうでもいいや。乾杯」

「悟ったのレン…乾杯」

「おう、マイブラザー。乾杯!」

結局、認めるのか。

 

 

 

 

 

 

そしてこの後、この場は…

 

 

 

 

 

 

 

「HAHAHAHAHAHAHAHAHA!
その程度アルカー!!?ん〜マンダム」

 

「ぬおおおおおおおぉぉぉっ!
この秋山源八郎を舐めるな!リミッター解除!」

 

「ジョーが…ジョーが…くそおおおおぉぉぉっ!
くらえ熱血斬りーーっ!!!」

 

「ふぉっふぉっふぉっふぉっ!
甘いぞ小僧ーっ!!三角跳びーっ!!!」

 

 

 

全壊した面々が支配した。

 

 

 

 

 

 

「結局私が作ってるじゃなーい!!」

レンナはというと、酔った面々ではどうしようもないので料理(ツマミ)を作る羽目になったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

「おう、ネエちゃん!お代わり!」

「ネエちゃん言うな!」

 

がんっ!!!

 

「けぴっ…」

苦労するなレンナ。

 

 

 

 

 

 

 

 

余談であるがその日、ふらふら蛇行するバッタと千鳥足をするジョロが目撃されたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、最後に一句。

 

『かんなづき やっぱりここも ぶっこわれ』

 

お始末様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキト…いやレンナの運命はどっちだ!?続くような続かないような思わなくも無きにしも非ず。

 

あとがきです。

こんにちは、彼の狽ナす。

やたら長いくせに全然進んでない…(涙)

前回進めるって言ったのになぁ。

しかも今回何気にゲキガンガーの資料集めもしちゃったし。

お陰でちょっと詳しくなる始末…まあコレ書いてる分にゃその方がいいんだろうけど(汗)

しかも最後は…いいのかこれで?(激汗)

 

あ、ちなみに『大吟醸酒 激我美射無』の他に『生酒 激我藩知』『にごり酒 激我奇津苦』

『吟醸酒 激我華津多亞』『純米酒 激我音津止』、そして『幻の酒 激我不零亞』があります。

 

…だから?ってツッコミは無しの方向で(爆)

 

ま、まあ、お話が全然進まないのもアレなので次回はいよいよあの2人の登場となります。

どうなるかはお楽しみに!

 

 

さて!それではここまで読んでくれた方々に感謝です!

それに感想を下さった方々、真にありがとうございます!

しかし前回のあとがきに書いたアレ、感想いただいた方々ほとんど知ってるし(汗)

流石だ…なんて最高な方々ばかり…よっし!これからも執筆がんばります!

二日酔いでもね(泣)

 

 

 

 

 

 

…何気にゲキガンガー36話のタイトルを見て別のあの人を想像したのは私だけでしょうか?もしあの人が出るんだったら見てみたいかも(笑)

 

 

管理人の感想

彼の狽ウんからの投稿です。

何だか捕虜というより、客人扱いだなぁ・・・この二人(笑)

ちょっと気がかりなのが、話が進んでいない事ですか。

木連から迎えの船が来て、連れ行かれるらしいですが、この調子だと何時になる事やら(苦笑)

それにしても、何処に行ってもお祭りなんだなぁ、この世界(笑)