「で?何でこうなるわけ?」

只今レンナ、何故か拘束中である。

「はっはっはっ、それは勿論テンカワ博士達を逃げ出せない様にする為ですよ」

「…何やったのあの人達?」

「まあご想像にお任せします」

「…安易に想像出来る自分が嫌」

レンナ、ちょっと陰を背負う。

「はぁ…でもまさか3時のティータイムに出た紅茶に一服盛るなんて…ホントやってくれたわね2人共

ジロリとその2人を睨むレンナ。

「す、すみませんレンナさん。これは命令なんです」

「そ、その通り、悪気は無いんだ。許してくれ」

「大丈夫、大丈夫、ぜーんぜん気にしてないから…後で覚えてなさいよ?

全然気にしてる。

「「…たらたら」」

そのセリフを聞いて激烈に冷汗を掻く九十九と元一朗。

後が怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の3号機

その23

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…あ〜こほん。てすてす、マイクのテスト中っと。では…あ〜業務連絡、業務連絡、只今逃亡中の方々に告ぎまーす。

はーやく出てこないとレンナ君が大変な事になっちゃうよー…はいっ、ここで悲鳴!

「きゃー」

なんとも気の無い悲鳴である。

「…あの、もう少し大声で出来ません?なるべくなら今にも殺されちゃうぞーってな感じで」

「何で?」

「当然、テンカワ博士達に聞かせて『これは大変!』と思わせる為ですよ〜。大丈夫、全館放送で流しますから伝わらない事はないですよ?」

「まあ何て言うか…ありきたりね」

「その分、効果絶大かと思いますが?」

「常人ならね」

「………………………………確かに」

つまり今逃げ出している連中は普通ではないと。

「もしかして考えてなかった?」

「…いえ、ちょっぴりそんな可能性も考えていたりいなかったり」

「肝心なとこ抜けてるわね〜」

「ん〜でもまあ物は試しでやってみますか。では、もう1度どうぞ〜」

「どうぞ〜って、そう簡単に劇的な悲鳴なんか上げれるわけないでしょ」

「それもそうですね〜…では、これでどうです?」

山崎は懐からヤバ気な色の液体が混入した注射器を取り出した!

「…で?」

「…あの、怖がったりしないんですか?普通こういう時は『やめて…』とか『離してー!』とか言いながら

ぷるぷる震えて命乞いするのが世間様の付き合いというものですよ?」

「…何処の世間様よ。大体ちょっと注射器突きつけられた位で怯えてたらこの暮れなずむ世の中を生き抜けないわよ?」

きっと慣れなのだろう。

「…何だか今の、アキト君みたいな発言ですね」

「え?」

「だって訳の分からない事とかがなんとも…」

「ええ?」

「やっぱり近くにいると影響受けちゃうんですかね〜?」

「…ね、ねえ…もしかして私ってアキトに毒されていたりする?」

「ん〜と言うか既に致死量?

ピシッ

今、何かが凍りついた。

「…い」

「い?」

「いやああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「うお!?」

「いや、いや、いやああああああぁぁぁぁっ!
私は、私はまだ正常よおおおおぉぉぉぉっ!!
汚れてなんかいないいいいいぃぃっ!!!」

レンナ、そこまで嫌か。

 

 

「いいですね、いいですね!それを待ってたんですよ!はい、もっと…」

「あの、山崎博士」

「ん?何ですか白鳥君?今イイとこなんですが」

山崎、いじめるのが好きなのか?

「いえ…そのユキナのことは…」

「あ〜分かってますよ。確かに色々とやってくれましたがこちらとしては目的を果たせれば問題ありませんからね、不問としておきます」

「あ、ありがとうございます!」

「ですが、それはちゃーんと逃げ出した方々を捕まえる事が出来たらの話ですからね?」

「あ、はい!ではこの白鳥九十九、すぐに我が愛しの妹とその他を探しに向かいます!」

「…あのね白鳥くん。君の妹がメインじゃなくて、他の人達の方が重要なんだけど?」

「ええ分かっています!必ずや地球人の魔の手から妹を救い出してみせます!」

「ねえ聞いてる?」

「そう、悪人の手に掛かり大ピンチの所へ、この兄『白鳥九十九』が駆けつける!

そして悪人どもをばっさばっさと斬り倒し、最後には抱きあう兄と妹!

『ユキナ、もう大丈夫だぞ』 『うん、お兄ちゃん、ありがとう…大好きだよなーんて展開に!」

「もしもーし」

「そうして2人は更に絆を深るのであった!」

「…妄想選手権やってるんじゃないんだよー?」

「よぉーし、待ってろユキナーっ!!お兄ちゃんが
すぐに助け出してやるからなぁぁぁぁっ!!!」

ドドドドドドドドドドドドドドド…!

かなり暴走気味に鼻血垂らしながら飛び出して行く九十九。

シスコン全開もいいとこである。

 

「…俺も行くか」

「あ〜月臣君、無駄だとは思うけどテンカワ博士達の捕縛、頼んだよ?」

「何だか引っかかる言い方ですが…はっ、了解しました!では月臣元一朗、後ろ向きに特攻します!

「特攻しちゃダメでしょ!」

しかも後ろ向きかよ。

 

不安がひたすら残る捕縛隊である。

2人しかいないけど。

 

 

「…はぁ、仕方ないですね。北辰さんにも頼みますか…え〜と何処に行ってるのかな〜っと…あ、居た居た。新婚さ〜ん

いらっしゃ〜い…って何を言わせるんだ貴様は!…ころころ

「はっはっはっ、好きですね北辰さんも」

『何の話だ。我はそのようなものは知らん!…ころころ

「またまた〜、この前イエス・ノー・マクラが欲しいって言ってたくせに…」

『な、なんの事だ?…ころころ

「そしてそれを暗殺対象に郵便で送りつけて、その相手がイエスの枕で寝ていたら夜殺して、

ノーの枕で寝ていたら昼間殺すって言ってたじゃないですか〜」

結局殺すのか。

『分かった分かった。認める、確かにアレを見るのは日課だ…ころころ

日課かい。

『それで何の用だ?こちらは貴様に頼まれた爆弾処理で忙しいのだが…ころころ

「あ〜実は現在逃亡中のテンカワ夫妻とその息子さんと娘さん、そして白鳥君の妹さんを捕まえるのに手を貸して欲しいんですよ〜」

『それに関してはお前に一任しているだろう、何故わざわざ我を使う?…ころころ

「ええ、ですから白鳥君と月臣君に任せたんですが…あの2人だけで大丈夫だと言い切れますか?

『…………………………分かった、手を貸そう。爆弾処理は六人衆に任せる…ころころ

信用されてないな、九十九、元一朗。

「ええ、頼みますね………で、北辰さん。さっきから何なめてるんですか?この非常時に」

『ああ…先程、訳の分からん言動をかます男に貰った黒飴なんだが…中々美味くてな…ころころ

美味いのか…。

「訳の分からん言動をする男?…北辰さん、その男ってもしかして黄色でしたか?」

『…そうだな、確かに黄色だった…ころころ

「じゃ、そいつが例の息子さんです」

なんとも分かりやすいような分かりにくいような会話である。

『そうだったのか…分かった、すぐに追う事にしよう…ころころ

「はい、頼みましたよ〜……………さて、レンナ君?」

通信もそこそこに再びレンナに狙いを定める山崎。

何だかちょっと嬉しそうだ。

「…何よ」

「落ち着きました?」

「………………全然」

「じゃあ続きと行きますか」

「………聞けや人の話」

「ははは、しかしね〜まさかレンナ君が言葉攻めに弱いとはね〜」

「な、何を…違うわよ!ご、誤解しないで!」

「ふ〜ん、それじゃぁ、こういうのは…」

「も、もう止めなさいよ!大体、木連男子は女性には優しいんでしょ!?」

「ええ、優しいですよ?ほら今だってちょっとお話してるだけじゃないですか」

「それが嫌なのよ!」

「なるほど、聖典にもあった『嫌よ嫌よも好きのうち』というやつですね」

「そんな心霊現象忘れなさい!」

「ほら、言動がアキト君」

「いやああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

レンナ、自爆。

 

 

 

「ひっく…ひっく…うっ…うう…汚された…汚されちゃったよぅ…」

レンナ、堕つ。

「ん〜なんだか複雑な気分ですが…パワー来ますねぇ!

山崎、もしかしてレンナの事を気に入ったのだろうか?

しかし何のパワーだ。

「さて、この声を聞いてちゃんと反応してくれているといいんですが…」

ピピッ

「ん?おやおやこれは…」

「…どうしたのよ?」

「ええ、どうやらネズミさん達が罠に掛かったようですね」

「罠?」

「そうです。ある部屋に入ると作動する罠ですよ」

「罠って一体…?」

「ふふふ、見てみますか?我ながらあの拷問部屋は自信作ですよ?」

「…ね、ねえ」

「ん?なんですか?」

「その罠に掛かったのって…?」

「…どうやらアキト君達のようですね」

「!!」

「それじゃーポチッとな」

お約束のセリフを言い山崎がモニターのスイッチを押す。

そこに映し出されたのは、

『ぐあああああああぁぁぁっ!!!!』

もがきながら悲鳴を上げる1人の男。

だが映像がいまいち不鮮明で顔までは分からない。

「ア、アキトーっ!?」

「はっはっはっ、無駄ですよ。あの中に入ったが最後、無事では出てこれませんよ」

「へえ、どうなるんだ?」

「ええ、まずは……へ?あ、アキト君!?な、何でアナタがココに居るんですか!?」

「そんなもん、そこのドアから入ってきたに決まってるだろうが」

そういうことじゃない。

「な…ってちょっと待ってください!じゃあ今あの中にいるのは誰なんですか!?」

「ああ、実はさっき廊下でトカゲ顔のおっさんに会ったんだが珍しいもの(トカゲ顔)を

見せてくれたお礼に黒飴(特大)をあげたんだよ。

そしたら妙に懐かれてしまったみたいでな、ずっと後を追っかけてくるんだなこれが。

鬱陶しいからあの部屋にぶち込んでやったんだが…何か問題でも有るのか?」

何か間違っている。

「ト、トカゲ顔って……まさか!」

ポチッとヤマサキがボタンを押す。

拡大されたモニターに写しだされていたのは、

『ぐぁははははっ!や、止めろおおぉぉっ!ぶわははははははっ!!!』

当のトカゲ男こと北辰が爆笑している姿だった。

「ほ、北辰さん!?だ、大丈夫ですかーっ!?」

『わははははっ!だ、大丈夫なわけあるかぁぁっ!がはあぁぁっっ!?
わきは、わきはああああぁぁっ!!ぶわははははははっ!!』

「いっ今助けますからじっとしててくださいねーー!?」

『早くしろおおぉぉっっ!!げはははははっ!!!!ぬあっ!!!?
わ、わき腹はっ!足の裏はぁっ!止めてくれええええぇぇっ!!!!』

北辰、このまま笑い死ぬのか?

「ねえねえ」

「ん?ユキナさんですか。何です?今ちょっと忙しいんですが…」

「1つ教えて?なんでさ、拷問がくすぐりな訳?」

「おやおや、何を言いますか。やっぱり拷問といえばくすぐりでしょ」

「そうなの?」

「そうです」

「そうか〜てっきり拷問といえばギザギザの石座布団に座らせたり、焼けた鉄を押し付けたり、

足に重りつけて水の中に落としたり、鞭でビシバシ叩いたりすることかと思ったけど違うんだ〜」

ユキナよ、その知識いったい何処から…?

「ははは…あ!とっとにかく!今すぐ止めますね北辰さん!!え〜と、これだったかな?」

なんだか頼りない呟きとともに山崎がボタンを押す。

ぴたっ

『はぁー…はぁー…と、止まった…ん?な、何だ?』

ガション!

今度は北辰の身体が手術台に固定された!

「あれー?間違えたかな?」

『な!?間違えたって!?う、うお!?な、何だその怪しい注射器メスは!?』

「あーきっとそれ全自動人体改造マシーンですね〜」

滅茶苦茶物騒なマシーンである。

『んなぁ!?こ、こらぁ!のん気に話してないで止めんかぁ!!…ぐあ!?な、なんだそのレーザーは!?うお!?か、顔が動かん!

ぬおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!?

「あらら、こりゃ大変。え〜とストップボタンは何処だった…」

ゲィン!!

「ぷぎゃ!!」

妙な悲鳴を上げてヤマサキ、落ちる。

「ふ〜コレで良しっと」

「…ユキナ容赦ない」

「悪人に容赦はしなくていいのよラピス」

「そうなんだ」

「そうそう」

ユキナ、ラピスに余計なこと教える。

 

カチャカチャ…カチッ

「これでよし。はっはっはっ、待たせたなベン…」

 

ごぐしょ!!!

 

「びゃじぅ!!」

アキトは突然ぶっ飛ばされた!

「うう…あんたの…あんたのせいでーーーっ!!!

 

ぼごぉ!

べぐぅ!!

ずどぉ!!!

ぎぎゅっ!!!!

ごずぅっ!!!!!

ぐりゅぅ!!!!!!

げしゃぁ!!!!!!!

がどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!!!!

 

レンナ、怒涛のツッコミラッシュだ!

「あ、あのレン?何があったか分からないけど、その位にしないとアキト死ぬよ?」

「…あきとおにーちゃん、生きてる?」

「…お…お…べ」

一応生きているようだ。

 

「ふんっ…あ〜すっきりした〜」

「レンってホント、アキト相手だと容赦ないね」

「うん…で、ユキナ。アレどうするの?」

「ほっとけば」

「わかった」

当のアレこと北辰、

 

『うおおおおおおぉぉぉぉっ!!!!!!?』

 

ひたすらもがきながら改造されていた。

合掌。

 

 

 

 

 

「そんじゃ逃げるか!」

「わっ…もう復活した」

「あきとおにーちゃん凄い」

「む…最近、リカバリィが早くなったわね…何か対策を…」

レンナ、何やろうとしてる?

 

「そこまでだお前ら!」

「もう逃がさんぞ!」

九十九と元一朗が現れた!

 

「何処から逃げる?」

「う〜ん、やっぱり裏門かな〜?」

「ここ広いから迷いやすい」

「いっそ正面から行ってみる?」

でも誰1人聞いちゃいない。

 

「「無視しないでよ!!!」」

心の叫びが木霊するある日の夕暮れだった。

 

 

「あ〜なんだ煩いな。今、忙しいんだから後にしろよ、スターオムツ、イモ売り」

「うるさい!よくもユキナを毒牙にかけてくれたな!許さんぞ!!」

「…まあ、とにかく捕まれ」

アキトの門前払いを九十九が妄想全開で遮り、元一朗が付け加える。

なかなかイイコンビかもしれない。

 

「ふん、オレとやる気か?スターオムツ」

「望むところだ!覚悟したまえテンカワ君!!」

なんだかちょっぴりシリアスである。

「行くぞ!ほあーーーーーー…」

「来い!ふうおおおおぉぉぉ…」

「な、何が始まるの?」

「さあ?」

「…あの声、何?」

「…ごくり」

緊張の一瞬である。

「ほふぅぅぅぅぅーー…」

「はああぁぁぁぁぁぁ…」

「「「「…」」」」

「ひゅぅぅぅぅーーーー…」

「おおおぉぉぉぉぉぉ…」

「「「「…」」」」

「はんんんんんんんんんんんん…」

「くおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーー…」

 

「「「「何時までやってんだ」」」」

 

ごぶどすっ!!!

 

…ぺし、ぺし

 

痺れを切らしたレンナ、ユキナ、元一朗がツッコミを入れる。

勿論トドメはラピスのチョップだ。

「な、何をするかお前ら!」

「そ、そうだ!邪魔をしないでもらいたい!」

苦情を上げるアキトと九十九。

「何言ってんの、何時まで経っても始まらなかったじゃない」

「バカモノ!アレは敵を威嚇し、相手がひるんだところで逃げ出す戦法じゃないか!」

「うむ!その通り!だが私の場合は襲いかかりますけどね!」

なんとも情けない戦法である。

「…呆れて何も言えない」

「でさ、何時まで続けるつもりだったの2人共」

「…長かった」

今度はユキナ&ラピスの質問タイム。

「まあ…それは…な、なあテンカワ君?」

「お、おう…実はな?」

「「実は?」」

「「うむ!本当はあの時、どうしたもんかと思っていたんだ!」」

「「「結局考えてないんかああああぁぁぁっ!!!」」」

「…無計画はダメ」

総ツッコミ炸裂にラピスのダメだし付きである。

「くっ…こうなれば軽くおやつの時間にしようか」

「そうだな!それがいい!」

「「「現実逃避すなああああぁっ!!!」」」

「…バナナはおやつ?」

再びツッコミにラピスの…なんだ?

「大体さ、脅しをかけるなんて回りくどい事やるより、直接本人をさくっと殴ってやれば効果抜群じゃない」

「「それもそうか!それは気付かなかった!!」」

「気付けっ!」

「と言うよりそんな事、納得しないでよ」

「…さくっ?」

「何気に怖い発言だなレンナさん…」

元一朗、ちょっと脅える。

「まあ、この2人じゃ仕方ないかもね」

「うん、アキトとお兄ちゃんだしね」

「…だめだめ?」

「もはや言う事は無い…」

なんだか言われっぱなしのアキトと九十九である。

「「お前ら…それはどういう…?」」

「「「つまり…アホ」」」

「…あほ」

「「さらっとそういう事、言うなあああぁぁっ!!」」

まあ、無理も無い。

 

「と、とにかくだ!ここから逃がすわけにはいかん!」

「あ?…ああそうだった!無駄な抵抗はするな!」

突然、当初の目的を思い出した九十九と元一朗。

信用されていない理由が分かったような気がする。

「全くしつこいな〜でもそれは私の事を心配してくれてるからだろうし…」

いや、九十九は少し違うような気がする。

「…ユキナ、どうするの?」

「ん〜でもなぁ〜このまま捕まったらレン達どうなるかわからないし…でも逃げてもどうにかなるわけでも…ん〜…ぽくぽくぽく…」

ユキナ、悩む。

伝統のあの音付きで。

「で、どうするのアキト?私達は逃げるしかないんだけど」

「むむ………お!イイ案があるぞ!」

「本当でしょうね?またふざけたら…木星名物、アンモニアの海に沈めるわよ?

名物なのか?

「お、おう任せておけ」

「ん〜…まあなんとかなるでしょ!お兄ちゃんもアキトもガンバレ〜」

「あきとおにーちゃん、がんばれ〜」

声援に後押しされて再びアキト出陣である。

「ぬぬ…我が妹に応援されるとは…何時の間にそこまでの信頼を…もはや生かしておけぬ

九十九、目がヤバイ。

「つ、九十九、ほどほどにな」

元一朗、ちょっとびびる。

 

「まあ、待ってくれ2人共」

「何?まさか今更命乞いか?」

「降伏するなら手荒な真似はしないが…なんのつもりだ?」

「誰が降伏なんてするか。いや、ちょっと見せたいものがあってな?」

「何?」

「何だ?見せたいものとは…」

アキト、懐をまさぐりある物を取り出した!

「コレを見よ!」

「ぬあ!?そ、それは!」

「ま、幻のアイテム、ゴールドゲキガンシール!?

「ふっ…それだけだと思うか?」

「な、何!?まだあるのか!?」

「い、一体…?」

「ふふ…さあとくと見よ!」

そう言ってクルッっとシールを裏返すアキト。

「「あああああああああ!!!!?」」

「驚いたようだな」

「そ、それはまさか、あの…?」

「応募でしか手に入らなかった、あの…?」

「そうだ!コレはサイン入りだ!しかも天空ケン、海燕ジョー、大地アキラの3人バージョンだ!」

「「ぬおおおおおおおおおお!!!!!!」」

絶叫を上げながら涙する九十九と元一朗。

熱いな。

「ふっふっふっ、さあどうする?ここを通すというのならばコレをやらん事もないぞ?」

「な、何ぃ!?」

「ぐ…ひ、卑怯な」

「さあどうする、どうする!?あ、ついでに兄色リスも連れてくぞ?」

悪役のようだなアキト。

「何で私も?」

「まあラピスちゃんが懐いているからじゃない?」

「…うん、ユキナが一緒なら嬉しい」

「へえ〜アイツも一応お兄ちゃんやってるんだ」

「まあ、根はイイ奴だしね」

「あきとおにーちゃん、いい人?」

さっきの言動でもか?

「でもやっぱり私はお兄ちゃんのトコが…」

ユキナが何か言おうとしたその時、

「よし!」

「分かった!」

九十九と元一朗、決断したようだ。

「そうだよねお兄ちゃん、漫画のグッズなんかより勿論私の方を…」

「「ゲキガンシールで」」

「ちょっと!?」

「はい、毎度〜」

「「おおおおお!こ、これが…す、素晴らしい。まさしく至高の一品!」」

「さて行くか…素直な態度ありがとう、馬鹿野郎共

なんて言い草だ。

「プルプルプル…お、お兄ちゃんのバカー!!!

 

ごどがぁっ!!

 

「げぴゃ!?」

「ごはっ!?」

九十九、ついでに元一朗、ユキナの手により散る。

 

「もういいもん!私アイツについていっちゃうからね!」

「な…ちょっとまてユキナ。い、今のはつい…」

「つい!?つい、で妹より漫画のシールを取るの!?」

「それは違うぞユキナちゃん!コレは…」

「元一朗は黙ってて!」

ベキッ!

「ぎゃはっ!?」

元一朗、再び散る。

「どうなのお兄ちゃん!」

「そ、それはだな、え〜つまり〜その〜…」

「少し落ち着け2人共」

アキト、珍しく止めに入る。

「何よ!これは私達の問題なの!口を挟まないでよ!」

「そ、そうだ。まがりなりにもたった2人の家族なんだ。ユキナの言う通り、これは私達の問題で…」

「まあそうだろうがな。ほれ、これやるからこの場は見逃せスターオムツ」

そこでアキトがスッっと懐から出したもの、それは…。

「なあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!?

そ、それは幻のナナコさんフィギア・パイロットスーツバージョン!?

「何ぃ!?ナナコさん!?」

元一朗、返り咲く!

「そうだ!しかもただのナナコさんじゃないぞ?」

「何?まさか…」

「もしや…」

「ふっ、気付いたか。そうだ!これは着せ替えが可能なのだ!」

「「ぐはあああああああぁぁぁっ!!!!!」」

「しかも、着替えセット10点付き!この中にはセーラー服、若奥様風エプロン姿など選り取りみどりだ!」

「「うぎゃあああああああぁぁぁっ!!!!!」」

2人は何かのレッドゾーンに突入した!

「さあどうする?」

「妹を宜しく頼む」

「うむ、任せたぞ。お前ならば信じられる」

即決だった。

「ちょっとおおおおお!?お兄ちゃん!?元一朗!?」

「ほれ、約束の品だ…さて、どうする兄色リス?」

「…ふふふ…そう、よーく分かった。もうお兄ちゃんも元一朗も知らない!私は不幸の元に生きる女なのよ!

でも負けない!木連を追われても逞しく生き延びてみせる!」

「「おー」」

ぱちぱちぱち…

レンナ、ラピスが何気に拍手を送っている。

「んじゃ、行くか」

「そうね。長居は無用」

「ほらラピス行くよ!」

「うん」

そうして4人は立ち去った。

 

 

 

 

「ぬああああああ!?こ、これはパジャマ!?」

「九十九!こっちは…み、水着だぞ!?」

バカ2人を置いて。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばアキト、あのゲキガンガーのグッズ、何処から手に入れたの?」

「ああ、3ヶ月間ずっと家に居たからな。暇だったんでちょっと懸賞生活をおくってみた」

「あ〜アレか〜…大変だったな〜ハガキ書き」

「…手が痛かった」

よっぽど暇だったんだな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!つ、九十九!着せ替えが可能という事は勿論服を脱がす行為が必要だよな!」

「そ、そうか!よし!その役目、この、『白鳥九十九』が引き受けた!」

「バカを言うな!それは真の漢たるこの『月臣元一朗』がやる!」

「何を!?ええい離せ元一朗!俺が懇切丁寧に服を一枚一枚脱がせてみせる!」

「何を言っている九十九!お前に任せていたら日が暮れる!ここは…!」

 

 

 

バキっ

 

 

 

「「あ」」

 

 

ナナコさん、さようなら。

 

 

「「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」」

 

血の涙を流しながら悶えるバカ2人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…こんなとこで何やってんですか艦長に副長」

さり気にツッコミを入れたのは通りすがりの川口少尉。

もしかしてこの人が『ゆめみづき』乗組員の中で1番まともなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキト…いや九十九と元一朗の運命はどっちだ!?続くような続かないような思わなくも無きにしも非ず。

 

あとがきです。

こんにちは、彼の煤iかのしぐま)です。

え〜今回のテーマ(あったのか!?)は、ズバリ『叫び』です。

レンナが叫んで、北辰が叫んで、九十九と元一朗が叫んで、アキトは…何時もどおり(笑)

とにかく今回叫びっぱなし!

いいのかな…こんなんでいいのかな…(汗)

 

しかもまあ叫びの理由がもう…(泣)

とくに北辰…どうしよう(大汗)

 

はっ!そ、そういえば叫びの大元(?)のアキト父が出てない!(激汗)

 

…いいか(爆)

 

 

あ、話は変わりますが前回お話にて感想を書いてくださった方々ありがとうございます。

ただ、その中で『山崎と北辰がまとも』とか『山崎良い人に見える』とか『北辰が最後の良心』などなど、

普通では考えられないようなお言葉を頂きました。

 

…これって良いんでしょうか?(滝汗)

 

 

 

でも今回で少なくとも山崎は外道(甘口)になったでしょうし、ちょっとは汚名返上(?)かな?

 

 

で、では次回は大脱出…あれ?前回も書いたような…まあいいか(爆)

 

………すみません、正直な話、話が長くなりすぎてここで切ったのが本音です(泣)

だから次回こそ脱出劇をお送りします!…たぶん!(核爆)

 

 

それではここまで読んで下さった方々に感謝をしつつ、次回へ!

 

代理人さんの前回のツッコミを見て、その場面を想像し悶絶したのはここだけの話…。

 

 

 

代理人の回想

愛しの妻が誘拐された!

誘拐犯からかかってきた電話。

 

『ジューッ!』

『ギャァァァァァァァッ!』

「マ、マイハニーッ!?」

『・・・・・何が起こっているかはわかるな?

 身代金を払わない場合、我々としても不本意だがこれ以上の事をしなくてはならなくなる。

 女房が大切ならよく考えることだ」

「だ、だがそんな大金・・・・・」

『ジュジュジュジュジュジュッ!』

『ギャアアアアアアアアッ!?』

「わ、分かった! 払う! 払うっ!」

『よし、では受け渡し場所だが・・・・』

 

チンッ

 

「ク、逆探知は間に合わなかったか!」

「・・・・・・・・・・・」

「ワイルドさん、お察しします・・・」

「う・・・・ううううう・・・」

「・・・・・(目をそらす)」

「う・・・・うおおおおっっ!(心の声:何であんなブサイクの為に身代金をはらわにゃならんのじゃーっ!)」

 

 

で、そのころ。

誘拐されたはずの奥さんと誘拐したはずの犯人一味は、

さっきまで焼いてたハンバーグを仲良く食べていたりするんである。

 

 

 

冒頭の展開を見て、そんな映画のワンシーンを思い出した私。(笑)

 

 

さて次回。

大切なものをヤマサキの手により失ったレンナは黒き翼を身にまとい、復讐の王女となるっ!

 

「君の知っているフクベレンナは死んだ」

「あー、確かに死んだよな。キャラ的に」

「アレに毒されてしまったというのは致命的だな」

「いやむしろ人間として根源的に」

「はっはっはっ、大丈夫だぞベン子! 死なば海路のもろともにと言うではないか!

 たとえお前がシデムシの仲間と同レベルに落ちたとしても俺はお前のタグボートでいてやるぞ!」

「貴様ら全員殺すっ!」

 

 

・・・・・・さすがに話が崩壊するかな。