「あ、そういえばアキト」

「何だベン子、この忙しい時に!

何!?何が忙しいって!?んなもん決まってんだろうが!ブラシだよブラシ!

あ!?黒カビは落ちにくい!?分かってんだよそんな事!

え!?帰りにダイコン買ってこい!?よりによってダイコンかよ!!」

 

どごずぅ!

 

「落ち着いた?」

「…あいよ」

「何だったの今の?」

「あきとおにーちゃん騒がしい」

どうやらアキト、逃げる事に熱中してかなりテンパっていたようだ。

で、今は適当な部屋に隠れて今後の相談中である。

「それで?一体何だ?」

「うん、アキト、ワタリさんとアンリさんはどうしたの?ユキナちゃんもラピスちゃんも知らないって言うし…」

「ああ、親父と母さんか…さあな、そんなもんこっちが聞きたい」

「何だ、アキトも知らないのか」

「…パパとママ何処行ったの?」

アキトの言葉を聞いて落胆する面々。

ラピスは特に心配そうだ、

「そうか…で、どうするの?ワタリさんとアンリさん探す?それともこのまま逃げる?」

「私は先に逃げた方が良いと思うよ?今はそんなに警備の人達いないけど、その内うじゃうじゃ出てくるよ?」

「…でもパパとママ心配」

「う〜ん、参ったわね。そんなに時間も無いし…アキトはどうしたらいいと思う?」

「そうだな…今日はオレのサラダ記念日だし、さっさと帰るか?」

「………聞いた私がバカだった」

「まあまあレン。でもさ、なんだかんだ言ってもあのおじさんとおばさんだよ?絶対無事だって!

…というか無事じゃないあの2人なんて想像出来ないよ」

「…うん、パパとママ強い」

随分と信頼されている夫婦である。

「いや〜それはどうだか分からないぞ?なにせ親父はまだ火を起こせるとこまで進化してないし」

『俺は原人か!

アキト父、通信でツッコミである。

 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の3号機

その24

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「親父が現れた。コマンド?

「戦う?」

「逃げる?」

「…アイテム?」

何故か突然RPG風味だ。

「いや、ここは…」

「「「ここは?」」」

「飲む」

「「「飲む!?」」」

何を飲むのだろう?

『お前ら…なんて楽しそうな事を!俺も入れて…』

 

バジュゥッ!

 

『ぎびょ!?』

アキト父、倒れる。

『アキト?ちょっと大事なお話があるんだけどなぁ〜』

「はい、なんでございましょうか、お母様」

『あんまりふざけないように。事態は結構深刻なのよ?』

アキト母、スタンガン片手に満面の笑みである。

勿論アキト父は床に倒れて痙攣中だ。

「はい、分かりました。ごめんなさい。僕が悪かったと思います。ふざける様な事はしないで、

これからは真面目に生きて、みんなに尊敬されるような立派な人になろうと思います」

アキト、改心する。

絶対ウソだろうが。

『まて、アキト。真面目はそうじゃなくて『本気女』と書くのが正しいとハンムラビ法典に書いてあったぞ?』

「そ、そうだったのか親父!?新事実だな!」

『ふっ…また1つ賢くなったなアキト』

「ああ、ありがとう親父。とっても惨めだ…」

 

バジッげどぎゅっ!!!

 

…ぽふっ

 

『「「話逸らすな」」』

「…まじめに」

テンカワ親子、ツッコミで再び倒れる。

ちなみに今回のラピスのトドメは張り手だ。

しかしアキト父、復活が早くなったな…。

 

「そういえばアンリさん、一体どうやって通信を?」

『ああ、コレ?これはね、アキトの着けているコミュニケを使って通信を送っているのよ』

「「「こみゅにけ?」」」

『ほら、その腕時計みたいなやつよ。これを着けていれば通信が送れるの、

まあ何処でも通信が送れるように色々と細工はしちゃったけどね』

「へぇ〜そんな便利なものあったんだ〜」

「知らなかった」

「そうですか…こいつ、そんなモノがあるなら早く使えっての」

『ほほほ…まあアキトだから

「「「それもそうか」」」

酷い話だ。

納得は出来るが。

 

「で、何の用だ親父」

『何の用だは無いだろう。ここを脱出するのに相談しようと通信したんじゃないか』

で、テンカワ親子、何時の間にか復活である。

「ホント、最近復活が早くなったわね」

「う〜ん、耐性でも出来たんじゃない?」

「あきとおにーちゃん、強くなったの?」

『違うわよラピス。単に慣れたのよ』

もはや瞬間的に復活しても誰も驚かない。

これもある意味、耐性と言えよう。

 

『お、そういえばレンナちゃんを助け出したんだな』

「ふっ…当たり前だ。見くびるなよ親父」

『ようし褒めてやる!後で面貸せ

「む、告白か?緊張するな」

『ああ、俺もドキドキものだ』

一体何の会話だ。

『こほんっ、いい加減にしないと怒るわよ2人共』

『「押忍!わかりやした、姐さん!!」』

「…何で突然、体育会系なのよ」

「レン、別に良いんじゃない?これが普通だと思うよ?」

「うん、何時もどうり」

この親子って…。

 

『あ、そうそうアナタ。あの事…』

『おお、そういえばそうだったな…アキト、ちょっと確かめておきたい事が有ると4丁目の南雲さんが言ってたぞ?』

「何!?南雲さんだって!?」

『おう、南雲さんだ』

「親父!」

『何だ!』

「南雲って誰だ!」

『交番で聞いて来い!』

「分かった!それじゃ…」

『あ・な・た・た・ち?本当に怒るわよ?』

『「すいません。ちょっと最近物忘れが激しくて…」』

年寄りかお前ら。

「で、確かめておきたい事ってなんだ親父?」

『ん?…ああ、ちょっとした事なんだが…アキト、確かお前ここ1年程、地球で溶けてたって言ってたよな?』

「あ?ああ。火星会戦の最中にシェルターでバイトしてたんだが…気が付いたら地球に居たんだよ。

懐かしいな…夏場のアスファルトや冬場のコタツでまったりと溶けていた事を…」

バイトなのか?しかも溶けてたのか?

『…そうか…羨ましい

何か呟いたようだが気にしないでおこう。

『アナタ、それってやっぱり…』

『まあ間違いないだろうな。だが絶対的な確証も無いのにアレをやるのは危険すぎる。

それに準備をする時間も無い。しかし緊急事態だからな…そうだ!折角作ったんだ、アレを使うか』

『ふふ…じゃあ、やる事は決まったわね』

『ああ、覚悟の上だ。さて………お前ら何、なんかしてんだ』

「「「いや、だって話が長くなりそうだったから」」」

「…みたらしだんご美味しい」

ちなみにアキト達の隠れている場所は給湯室だったりする。

 

 

「それで、私達はどうすれば?」

本当に切羽詰ってきたようなので本題に入るようだ。

『そうね。それじゃ時間もあまり無いから手短に話すわよ?』

『うむ、一回しか言わないからな?もしNGワードを口にしたら即失格だ。覚えておけ』

「くっ…それは辛いな」

失格になったらどうなるのだろう?

「また話逸らす…」

「もう無視して話進めたら?」

「…もうそろそろ人が来そう」

『それもそうね。じゃあいいかしら?私達は今…』

「「「うんうん」」」

本気で無視に突入したようだ。

 

『「あの〜」』

『でね?…に…が有って…そこで…』

「「「ほうほう」」」

『「え〜と」』

『…こんで…後は…』

「「「ふむふむ」」」

『「ねえ、ちょっと」』

『…そうなるから…ここは…』

「「「ほほお」」」

『「いいですか?」』

『「「「何?」」」』

無視されっぱなしでちょっと涙目のテンカワ親子。

ようやく返事してもらえて嬉しそうである。

『「あのぉ、もう話逸らさないから混ぜてくれないでしょうか?」』

「「どうしますアンリさん?」」

「…ママ、どうするの?」

『ん〜と言うより、もう話終わっちゃったんだけどね

『「へ?」』

どうやら返事をしたのは話が終了した為のようだ。

『「…で、その…内容は?」』

『「「「聞きたい?」」」』

『「…はい」』

『それじゃあやっぱりねぇ〜?』

「そうですよね〜アレだけ話の邪魔をしたんですからね〜」

「そうそう、それなりの態度を見せて貰わないとね〜」

「…つまり『ごめんなさい』して」

どうやらそういう事らしい。

『「くっ…」』

『「「ほらどうしたの?『ごめんなさい』は?」」』

「…素直に」

何だか女性陣全員が母で男性陣全員がその子供のようだ。

「親父どうする?」

『むむ…頭を下げるのは俺のプライドに関わる事だが…ここは素直に謝っておこう』

「そうだな。置いてけぼりはゴメンだからな」

『「「話はまとまった?」」』

「…決まり?」

『ああ、アキトが俺の分まで謝ってくれるそうだ』

「おう、親父がオレの分まで謝ってくれるらしいぞ」

待て。

『「…って、おい!」』

似たもの親子もいいとこでる。

『「「2人共、本当に置いてくわよ?」」』

「…お残りさん」

『「いや、あの…じゃ、じゃあ一体どうしろと…?」』

『「「普通に謝らんかああああぁぁっ!!」」』

「…はい、謝る」

『「ごめんなさい」』

結局、2人揃って土下座である。

しかし女性陣はツッコミで大忙しだ。

「全く、最初から普通にしてればいいのに」

「ホントだよね」

「…遠回り」

『本当に、これっきりよ2人共?』

「うむ!分かったぞ母さん!」

『おう!これからは任せてくれたまえ』

『…あなた達、本当に反省してる?』

『「勿論だ!」』

信用は出来ない。

 

 

 

『それじゃあ、後で落合いましょ』

『待ってるからなー』

そう言って通信を切るテンカワ夫妻。

なんだかんだで結構、長話になっていたような気がする。

「じゃ、私達も行きましょうか」

「おお!いよいよ大詰めだね!」

「…ゴール間近」

何だか楽しそうだ。

「よし、行くぞ!全員、配置に付け!」

「イエッサ!」

「いえっさ」

「…何でいきなり軍隊方式?」

そんなもの言うまでもない。

「ま、アキトだしね」

「…あきとおにーちゃんだしね」

その通り。

「よし!まずはベン子二等兵が先に行け!」

「私、いつから二等兵になったのよ…ってだからベン子言うなって言ってるでしょうが!!………ん?先?」

「…そ、そうだ、周辺を偵察してこい」

床に倒れながら命令するアキト。

何気に蹴り飛ばされていたようだ。

「何で私が?」

「とにかく行け」

問答無用だ。

 

げしぃ!

 

「アンタが行け

「い、いえっさ………仕方が無い!いっちょ、やってやろうじゃないか!」

「イキナリやる気になったわね」

「おおよ!あ、それとルールは一つ!死んだら負け、以上!」

「…何でルールが存在するのよ」

「何を言う!何処か偉い人が言っていただろう!『万物を有するはコガネムシ』って!!」

「…ねえ、レン二等兵。今のどういう意味?」

「…通訳宜しく」

「…あ〜多分任せとけってことだと思うけど…どうも最近この通訳やっているせいで自分が毒されているような気が…」

いや、もう前回の通りで十分に手遅れである。

「隊長!レン二等兵の元気がありません!」

「…お疲れ?」

「あいつが隊長って…」

確かに不安満開である。

「コラ!ベン子二等兵!野菜スティック並にシャキッとせんか!!もしくはおきあがりこぼし並でも構わんぞ?」

「つまり、しっかりしろってことね…ってベン子言うなって言ってるでしょ!?」

 

ごぐぅ!!

 

「ぼが!?」

アキト隊長、戦死か?

「ああ!?アキト隊長!」

「…あきとおにーちゃん、しっかり」

思わず駆け寄るユキナとラピス。

「うう、オレはもうダメだ…兄色リス少尉、ラピU伍長、後を頼む…がくっ

「アキト隊長ーーーーーっ!!」

「…お線香あげる」

何だか悲劇の場面のようだ。

 

「あんた等、何時まで遊んでんのよ…」

何時も遊んでいるようなものだが…。

 

 

「居たぞー!各員に告ぐ!第24ブロックに目標発見!直ちに応援を…

「あ!?見つかった!ほら、遊んでないで逃げるわよ!」

まあ、あれだけ騒いでりゃ見付かるのも当然である。

「え?…およ!?」

「…ほぇ?」

「ダーッシュ!!」

またも素早く復活したアキトはユキナとラピスを抱えて逃げ出した!

 

「…あ、あれ?…え〜と………お、置いてくなーっ!待ちなさーい!!」

レンナ、何気に置いてけぼりのようだ。

 

 

まあ、アキトにも限界重量があったのだろう。

 

 

「こらー!そこ止まれー!止まらないと見るわよ!?

「な、何を見るんだあああぁぁっ!?」

レンナの呼びかけに反応し振り返りながら叫ぶアキト。

「「「あ、前…」」」

「え?」

 

どがっしゃあああああぁぁん!!

 

「ぐほはああああぁぁっ!」

「ぺぷ!?」

「ふぶっ」

まあ後ろ向きながら走ってりゃ何かにぶつかるのは道理である。

「ふぃー追い着いた〜…大丈夫?」

「…」

「う、うん」

「へーき」

アキトのみ無事ではないようだ。

まあどうせすぐに復活するだろうが。

「このバカは…はぁ…先行きがすんごく不安」

「うん、私も今そう思ったとこ」

「…あきとおにーちゃん、自爆?」

その通り。

 

「よし!逃げるぞお前ら!」

やっぱりすぐに復活した。

「あわ!?また!?」

「あきとおにーちゃん力持ち」

で、またお子様2人を抱え走り出すアキト。

今度はレンナもちゃんと着いていっているようだ。

 

「待たんかコラー!」

「止まれー!」

「横断歩道は手を上げて!」

警備の人間が迫り来る!

「あー!もう!一体どうしてこうなるの!?絶対あんたと私が一緒だと不幸が舞い降りるのよ!きっとそうに違いないわ!!」

「何だか知らんが大丈夫だ!ノープロブレムだ!」

「やかましい!どこが大丈夫なのよ!?」

「はっはっはっ!トラブルはお手の物になったな!俺達は!」

「そんなもんお手の物にしたくなーい!」

気持ちは分からないでもない。

「がたがた言うな!とにかく今はひたすら逃げる!ただそれだけだ!マッチ箱もそう言っている!!」

「つまり『ことわざ』ね!」

こんな状況でも通訳するとは…。

「こ、こら!もうちょっとやさしく抱えなさいよ!」

「…こらー」

で、お子様2人、アキトに米袋のように抱えられて抗議中である。

しかし以前もこんな事があったような…。

「はっはっはっ!どうしたどうした!?遅いぞ警備員!そんなことでは

『真夏のビーチ・もうちょっとでガスコンロ選手権』で勝ち残れんぞ!?」

「…聞いてないし」

「…ラクチン」

「まあ、『やれるもんならやってみろ』ってトコかしら?」

お見事。

 

「おらおらおら!このこのこの!どすこーい!!」

「…元気ね」

それは何時もだ。


 

 

 

 

 

「「「「「「そこまでだ貴様ら!」」」」」」

突如正面に数人の人影が立ちはだかった!

 

ズガゴンッ!!!!

 

だが轢かれた。

全力疾走している人の前に出てくれば当然である。

「ストライクだな」

「な、何この人たち?」

「「誰?」」

当のソレを轢いた面々は何故か無傷だ。

「ぐおお…」

「お、おのれ…」

「姑息な手を…」

「擦りむいた…」

「いきなりぶつかってくるとは…」

「非常識な奴らめ…」

いや、人の事は言えない。

「「「「「「では、気を取り直して…我らは北辰六人衆!」」」」」」

「…北辰?…何処かで聞いたような…?」

「…それって」

「…笑ってた人?」

いや、改造された人。

「へ〜…それで?」

「「「「「「我らは北辰様に仕える精鋭!常に北辰様と共に行動し、

時には一丸となり任務を真っ当するもの(予定)だ!」」」」」

「「「予定かよ」」」

「…よてーかよ」

思わずツッコミを入れる、アキト、レンナ、ユキナ、ラピス。

「「「「「「くっ…貴様等に何が分かる!」」」」」」

「分かりたくもないわい…で、何か用か?」

「「「「「「知れたこと!貴様等を捕らえるのが我らの任務、おとなしく捕まれぃ!!!」」」」」」

「「「「やだ」」」」

「「「「「「聞く耳持たん!覚悟!」」」」」」

「むっ…ベン子!」

ゴズッ!

「何?」

「…この非常時に殴るなよ」

何処でも容赦無しである。

「で、何?」

「あ、ああ。ここはオレが何とかしてやるから、この2人連れて先に行け。どうせならその辺の喫茶店でお茶しててもいいぞ?」

こんな所に喫茶店なんてあるのか?

「…どういう風の吹き回し?」

「おいおい、偶にはオレだってヤンガー・ジェネレーションだぞ?」

「あ〜『やるときゃやる』ね?でもまあ珍しい事もあるもんね。信用してもいいの?」

「ったりめぇよ!」

突然江戸っ子だ。

「それにほら『喧嘩は買いましょう』ってよく言うじゃないか」

「言っとくけど、うちは『セールスお断り』よ?」

「ぬぅ、最近アジなツッコミをするようになったな」

「…もういいのよ。ええ…もういいの…」

レンナ遠い目をする。

きっと何かを悟ったのだろう。

「まあとにかく任せとけ。ボイコット並にやってみせる!!」

ボイコットではダメなんじゃ…?

「とにかく頑張るのね…分かった。不安しかないけど行くわね?」

不安しかないのか…。

「おう!兄色リスとラピUを頼んだぞ!ベン子!!」

「だからベン子言うな!!」

 

ぼぎゃっ!!

 

またも何時ものヤツ炸裂である。

 

「…どんな時でもツッコミは忘れないんだねレンは」

「…もう何度目?」

ツッコミの回数などもう数え切れないだろう。

 

 

「「「「「「そろそろいいか?」」」」」」

「おう、何時でもいいぞ?」

待ってたのか。

 

「しかしお前…今がどういう状況か分かっているのか?」

「全くだ。逃亡中に漫才をやるヤツなぞ、初めて見たぞ」

いや、何時でも漫才だ。

「ふっ…ちょっと軽くじゃれ合った位でガタガタぬかすな」

「…せ、世間一般ではアレを軽いじゃれ合いというのか?」

「世の中は広いな…」

違うような気がする。

「ほっほっほっ、そうやって人は強くなって行くんザマスよ」

「そうだったのか…」

「しかし何故金持ちのおばさん風なのだ?」

それはこっちが聞きたい。

 

「んじゃ、ちょっと付き合え」

そう言って何故か近くの部屋に入るアキト。

どうやら食堂のようである。

「「「「「「…何だ?」」」」」」

と、突然食堂からモクモクと黒い煙が出てきた。

「…何をやっているのだ?」

「ああ、何をする気だアイツ?」

「まさか火を放ったか?」

「いや、部屋の中でそんな事をすれば自分もただではすむまい」

「あ奴、何を…?」

「…とにかく入ってみるか」

六人衆が部屋の中に入るとそこには七輪でサンマを焼いているサボテンがいた。

「「「「「「なんでサボテンなんだよ!?」」」」」」

その疑問はもっともだ。

「あ、そーれ、パタパタっと」

当のサボテン、なんだか楽しそうにサンマを焼いている。

「…何をしているか聞くか?」

「「「「「そうだな」」」」」

「よし…おい!」

気を取り直して六人衆の1人がご機嫌なサボテンに詰め寄る。

ある意味シュールな光景だ。

「貴様そんな所で何をやっている!」

「む!?何だお前らは!…はっ!?さてはこのサンマが目的か!?」

「違う違う」

「では何を…!!…ま、まさか…配管工事屋さん!?…ご苦労様です。最近水道の出具合が…」

「だから違う!…自分で呼んでいおいてふざけているのか貴様は!?」

「…ふっ、ふふふ、ひゃははじゃんちゅぺばどるー

「な、何故笑う!?と言うより笑ってるのか?それ?」

もしやこれはテンカワ語?

「ぼんじぇうえっぁー、ふふ…ふざけているのかだと?これを見て何処がふざけていると言うのだ!?

「「「「「「全部だサボテン」」」」」」

確かに。

「む、そうか?…まあいい。それよりココに呼んだ理由を特別に教えてやろう、実はな…」

「「「「「「実は?」」」」」」

 

 

「ベルーフェッフトン!!」

 

 

「「「「「「何だそりゃーっ!!?」」」」」」

分かるわけがない。

「これだから無知なヤツは…まあコレも何かの縁だ。メシが出来上がるのを待て。特別に食わしちゃる」

嫌な縁である。

「いやそれ以前に貴様、そのサボテンの着ぐるみ何処から持ってきたのだ?」

六人衆の1人がサボテンことアキトに問いかける。

「何を言っている。これはエプロン代わりだろうが。ちゃんとそこに書いてあったぞ?」

「…そうなのか?」

「「「「「知らん」」」」」

と言うより何故コレがエプロン代わりなのだろう?

謎は深まるばかりである。

「さて、続きを…え〜と、これには…折り紙、毛皮、TVチューナー、ナナハン、カレンダー…」

「「「「「「…」」」」」」

サンマは焼き終わったのか、今度は汁物を作っているようだ。

入れている物は材料に不適当なものばかりだが。

「最後にし…………え〜と…無機物

「「「「「「何入れたー!!?」」」」」」

その無機物を入れたとたん、鍋の中身はもう表現しがたい色に変貌していた。

「…よし、出来たぞ!」

ドン!っとお盆を六人衆の前に置いたサボテンアキト。

何故か誇らしげだ。

「…それで、これをどうしろと?」

「「「「「うんうん」」」」」

「おいおい、さっき言っただろう?これは『クライシスドロン』だと!」

「「「「「「さっきと変わってるぞ!?」」」」」」

「それは気のせいだ」

もうどっちでもいい。

「「「「「「…で、コレを食えと?特にこのみそ汁」」」」」」

例のヤツか。

「ああ勿論だ」

「「「「「「食い物なのかこれ?」」」」」」

「ふっ…見て分からんのか?」

「「「「「「少なくとも食べれるような材料使ってなかったろ貴様」」」」」」

「何をバカな。仕方ない、そこで見てろ。これはこんなに…」

アキトがそれを口に含んだ瞬間、

「…ぶーっ!何だこれ!?まずっ!!誰だ作ったの!?」

「「「「「「お前だ!!!」」」」」」

もう漫才もいいとこである。

 

 

「さて、そろそろか」

「何?」

「貴様、何かしたのか?」

「ふっふっふっ、特には何も。だがもうすぐここに警備隊が来るだろう?」

「ああ、そうだな。まあ我等だけでも貴様とその仲間を捕らえるのは容易いがな」

「覚悟を決めたか?」

「ふっ…甘いな。捕まるのはオレじゃない!お前らだ!!

「なんだと?」

「貴様、何を企んでいる?」

「はっはっはっ、何を言う。そもそも見た目がトカゲのおっさんと同じで怪しさ暴発なお前らと見た目普通の好青年じゃ

好青年の方を信じよと今日の占いにも書いてあったわ!つまり捕まるのはお前らだ!!」

アキトは六人衆をビシッっと指差し、とっても偉そうにふんぞり返った!

しかしサボテンの格好をした奴が普通の好青年と呼べるのだろうか?

 

「「「「「「………」」」」」」

六人衆、只今、目が点である。

 

「あ〜いいか?」

「ん?何だ?」

「そもそもお前らを捕まえるという時点で顔写真を警備隊全員に見せているのだが…」

「へ?」

「つまり、お前がどんな屁理屈こねようが、全くの無駄という事だ」

「ええ?」

「気付かなかったのか?」

「…いや何となくそう思ってみたりもした命の危険を感じる事なんて日常茶飯事な人生18年と数ヶ月

「どんな人生歩んでるんだ貴様は?」

「まあ色々あってな…それじゃこの辺で」

「ああ、達者で…ってちょっと待てコラ

さり気に逃げようとするサボテンアキトを呼び止める六人衆の1人。

「ぬう…こういう場合、なんとはなしに話を終わらせて。うやむやにするというのが世の中の常識だというのに!」

そんな常識、あっただろうか?

「貴様、ふざけているのか?大体そんな事で逃げられる訳なかろうが」

「そ、そんな!?オレの完璧な作戦が!!」

「「「「「「穴だらけだああああぁぁ!!」」」」」」

アキトに絡むと誰でもツッコミ役になるようだ。

「「「「「「とにかく覚悟しろ!貴様を捕まえたら次は逃げた女共だ!!」」」」」」

「むむ!?来るか!?」

アキトが身構える!…サボテンだが。

「…………………………捕まえないのか?」

アキトの言うとおり、何故か六人衆は動かない。

「ふっ笑止!我が動かぬのは先発ではないが故!」

「我が動かぬのは貧血気味が故!」

「我が動かぬのは刀の手入れが終わっていないが故!」

「我が動かぬのはさっきから誰かが裾を踏んでいるが故!」

「我が動かぬのは『争いごとはいけないよ』と言われているが故!」

「我が動かぬのは1人で動くと淋しいが故!」

「チキンめ」

「「「「「「くっ、今は何も言い返せん!」」」」」」

認めんのかよ。

「……………………………………………………だめじゃんお前ら」

「「「「「「何処がだ!?」」」」」」

「全部だ全部」

「「「「「「なにぃ!!」」」」」」

「全く、うるさいぞ?『おそ松兄弟』

「「「「「「だ、誰が『おそ松兄弟』だ!」」」」」」

「お前らだお前ら。6人いるから丁度いいだろ?」

「「「「「「貴様!言わせておけば!我らにはちゃんと名前があるわ!」」」」」」

「ああもう、いいからいいから、おそ松、トド松、チョロ松、一松、十四松、カラ松

「「「「「「やめんかああああぁぁぁっ!!」」」」」」

気持ちはわかる。

「…ダメだな」

「「「「「「何?」」」」」」

「ダメ、全然ダメ。ツッコミがなってない!

サボテンアキト、突然ダメ出しである。

「そ、そんな事言われても…なあ?」

「「「「あ、ああ。」」」」

「大体、ツッコミが出来たからって何も…」

「口答えするな!」

「「「「「「…はい」」」」」」

六人衆は何故か萎縮した!

「よし。じゃあ、いっちょオレが指導してやろうじゃないか。準備はいいか?」

「「「「「「…では宜しく」」」」」」

いいのか?

「なぁに簡単だ。ちょっとコツを掴めば誰でも出来る。ではオレが例を出すから答えてみろ」

「「「「「「うむ」」」」」」

「そうだな…それじゃ、ある日金魚を飼っていた水槽の中身が水からコーヒーに変わっていた。そこで一言!」

「むむ…アイスコーヒーかよ!

「じゃあ…コーヒーで生きる金魚!?新種!?

「ん〜…俺の金魚は氷か!?

「ならば…すまん!ブラック駄目なんだ!

「ぬぬ…これじゃ中が見えん!

「では…金魚が茶色に!?

六人衆…それでいいのか?

「はぁ…やっぱりダメだな」

「何?ならば貴様はどうするのだ?」

「「「「「うむ、手本を見せてみよ!」」」」」

「ふっ…よし、よーく聞けよ?行くぞ、すぅー…」

「「「「「…ごくり」」」」」

いや、そんな固唾を呑まんでも。

「お姉さん!コーヒーお代わり!!」

「「「「「「飲んだのか!?」」」」」」

アキトならやりかねない。

「あ〜やっぱりダメだわお前ら、そこは『かしこまりました〜』だろ?全く……む?そろそろ時間だな。それじゃこの辺で!」

スチャッ!っと手を上げて去っていくサボテンアキト。

「「「「「「あ!?コラ、貴様待たんか!!」」」」」」

六人衆が動こうとしたその時!

ガシャン!

「ぬあ!?か、隔壁が!?」

「のおぉ!?と、閉じ込められたぞ!?」

「おわぁ!?マントが隔壁に挟まれたぁ!」

「うう…眩暈が…」

「ど、どうする!?狭いのは嫌だぞ!?」

「ああ…御免なさい母上、約束を破ったことを怒っているのですね?

分かりました。今日から心を入れ替えます…」

六人衆は混乱している!

 

しかし北辰よ、こんなのが部下でいいのか?

 

 

 

 

「アキト大丈夫だった?」

「…あきとおにーちゃん、無事?」

「どうやら怪我はなさそうね」

ユキナ、ラピス、そしてレンナ、物陰から登場である。

「な、なんで!?」

「はっはっはっ〜驚いた?驚いた?」

「いや、一応付き合いでびっくりしただけだ」

「…それはご丁寧にどうも」

「いえいえ」

「…だから遊ぶなっての」

本当に賑やかな奴等だ。

ちなみにアキトはもうサボテンではない。

 

「しかし実際助かったぞ?いやホント」

アキトが礼を言うとは珍しい。

「ふっふ〜ん、私のアイディアなんだよ!」

「…実際やったのは私」

「まあ2人のおかげね」

つまりユキナが隔壁を下ろす事を思いつき、ラピスが実行したようだ。

「意外とやるではないか兄色リス、ラピU」

「そうでしょそうでしょ!やっぱりユキナちゃんはエライ!!ん〜いい女だ〜!!!

「…ユキナ、トリップしてる」

兄がアレだから似ていてもおかしくはあるまい。

「ユキナちゃんってこういう一面もあったんだ」

「まあ確かにいるよな。思いつめたら周りが見えなくなってひたすら走りまくる暴走兵器みたいなヤツ」

危険極まりない人物である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキト…いや北辰六人衆の運命はどっちだ!?続くような続かないような思わなくも無きにしも非ず。

 

あとがきです。

こんにちは、彼の煤iかのしぐま)です。

…正直、六人衆でここまで書けるとは思っていませんでした(核爆)

いや本当に(笑)

しかも長の改造北辰出ず終い(泣)

次回はちゃんと出る予定ですけどね…。

どうなるかは秘密ですが(笑)

 

…え?六人衆の1人の名は『烈風』?…気のせいです。忘れてください(爆)

 

 

さて、今回は逃げている最中なお話になりました…けど、

本音は話が長くなりすぎてここで切ってしまったんです(またか)

だから結構中途半端かもしれません(汗)

申し訳ないです。

 

それでは次回ですが、やっと『木連編』終わりになります!

…長かった。

『木連編』に突入してから早…え〜と、15,16,17…そう!もう9話分!!次回で10話分!!!

少々書きすぎた気分です(大汗)

ここまでお付き合いいただいた方々に感謝ですね。

でもやっとこで終わりです!

ちゃんと完結させます!…あくまで『木連編』をですよ?

 

 

では、ここまで読んで下さった方、感想を下さった方々に感謝をしつつ次回へ!!

 

 

 

…六人衆のボケ、実は元ネタが存在します。分かる人には分かるかも…(汗)

これはどうしてもやってみたかったネタでしたので。

 

 

代理人の感想

な・・・・・・・・なんちゅーユカイな連中だ(爆)。

その内ステッキとカンカン帽装備してタップダンス踊り始めるかもしれない。(爆散)

 

後新鮮だったのが「パパ」「ママ」と口にするラピス。

まるで普通の女の子だ(をい)