「うわーすご〜い。雪だー初めて見たー」

「まっしろ」

 

はしゃいでいるのはご存知ユキナとラピス。

本来ならばブリッジに居ていい訳がないのだが、そこは無理を言って居させてもらっているようだ。

 

「どうだ!凄いだろ!!お代はタダで構わんぞ!」

「テンカワさん、なんで偉そうなんですか?」

「いつものことじゃない?」

「アキトさんは8ヶ月経っても全然変わりませんね。そこがまた良い所です」

「アキトぉ〜…ユリカがきっとアキトの目を覚ませてみせるね…」

そんなお子様2人を横目にマイペースで騒ぐブリッジクルー。

 

結局、軍との共同戦線を張る事になったナデシコ。

現在は地球に下り立ち、最初の任に付いたところなのだが、緊張感は全く無かった。

 

「それで提督、その親善大使は何故こんなところに?」

「ほほほ、何でも大使は好奇心旺盛な方でね、この北極海の環境調査を行っていたら木星蜥蜴が現れてさあ大変。

そのまま取り残される事になったのよ」

「…のん気なことだな」

 

最初の任というのが話題に出た親善大使を救出するという事だった。

その為、現在ナデシコは北極海域を飛行中である。

だが周りは一面の銀世界。

特に目立った変化も無い為テンションはかなり下降気味で…こんな状態だ。

 

「はいはいユキナちゃん、はしゃぐのはもうその辺で。一応作戦中なんだから静かにね」

「え〜…まあいいか。私とアキトの新婚旅行はまだ始まったばかりだし」

「え?そうだったの?」

 

『違う』

 

ナデシコの任務は何時の間にかユキナの中で新婚旅行に変化していた。

 

 


「じゃあ愛の逃避行?それとも婚前旅行?」

 

「ばか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の3号機

その33

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあとにかくアナタ達、こんな簡単な任務なんだから失敗は許されないわよ?私は責任取るのは嫌だからね、さあ、せいぜい頑張って頂戴」

 

いかにも自分中心的な言い方で命令を下すムネタケ。

そんな言い方に気分を良くするものは勿論いない。

そしてあのアキトも当然――

 

「はっはっはっ、それじゃあ皆の衆、この提督さんのおっしゃりまくりやがる通り、とっとと牛歩並の早さで解決してくれてやろうじゃないか」

 

嫌味たっぷりで返した。

 

「なっ!あんた何様…!」

「はいはいはいはい。とにかくまだ目的地まで時間はありますから、それまでは各自待機という事で」

キャンキャン騒ぐムネタケを抑えつつ各人に要件を伝えるのはプロス。

こういうのは場慣れしているようだ。

「そうですね。じゃあアキト!食堂でお茶しようか?えっとね〜私は…」

「コホン、艦長はブリッジ待機です」

「え〜!」

「そうですよ。ねえアキトさん、私と一緒にバーチャルルームで素敵な体験を…」

「ブリッジクルーは全員ここで待機です」

「そんな〜」

落胆の表情をするユリカとメグミ。

 

「そうそう、アキトの事は私に任せて。それじゃ、お仕事がんばってね〜」

「ガンバ」

とってもイイ顔でアキトを引きずりつつブリッジを後にするユキナとラピス。

 

「やるわねぇ」

「テンカワのやつ、売られていく子牛みたいなツラしてたな」

「もう尻にしかれてるんだね〜」

ポロロ〜ン♪

「テンカワ君の未来。それはみっともない…ああ無常」

「イズミさん、意味わかりません」

 

そしてブリッジから姿を消すアキト達。

 

「アキトぉ〜」

「アキトさ〜ん…」

未練がましくアキトの出て行った方向を見つめる2人。

「2人共、お仕事してください。いいですか?

ぶんぶん!

プロスが後ろ手に持っている例のソロバンが見えたのか凄まじい勢いで首を振るユリカとメグミ。

どうやらブリッジの主導権はプロスにあるらしい。

 

「ちょっと!アンタ達、私の話聞いてるの!?」

ムネタケは完全に無視されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズルズルズル…

「なあハテナよ、そろそろ離してくれないか?」

「え?ああそうだった。忘れてたよ」

「ユキナの忘れんぼ」

コツンとラピスがこづく。

「えへへ、でもあのオバサンが居なくなったと思ったら今度は別のライバルが現れるなんて…アキト〜いったい何人くらいに手を出してたの〜?」

「…とまあそんな事はこの際置いといて!さあ、己のプライドを賭けて勝負といこうかハテナよ!」

「で?何人くらい?」

足をぐりぐりしながら再度問いただすユキナ。

まるで浮気を疑る妻のようだ。

「あきとおにーちゃん、ここは正直になった方がいいと思うよ?」

「…なあラピU。オレのボケ、最近キレ悪い?」

「んな事聞いてな〜い」

「あきとおにーちゃん、今までの全部わざとだったの?」

新事実だった。

 

 

 

 

 

とにもかくにも話題に出てきたオバサンことカグヤ・オニキリマル。

現在、彼女は月に居る。

その理由はナデシコが地球に下りる事が決まった際にある命令が下った事に始まった。

 

 

 

 

 

「ええ!?コスモスは地球に下りられない!?」

 

突如大声を上げたのは勿論カグヤ。

しかも表情がかなりヤバ気だった。

 

「そうだ。先の月攻略戦の際、勝手に戦線離脱をしたせいで連合軍側の戦力はガタ落ち。おかげで被害が広まったと言ってきた」

「そうよ。それでその責任を取る為コスモスはこのまま月連合軍の傘下に入り、ナデシコとは別の任に付くようになるわ」

「あ〜あ、やっぱりこうなった」

「まあ、なんとなく予想はしていたけどね」

「はぁ…また怒られるのね…」

カイオウとムネタケの命令に『やっぱりね』な表情をするカグヤガールズ。

 

「まあとにかくそういう訳だ。当然コスモス艦長の君もここに残るわけで…あの、カグヤ君?もしもし?」

突然黙りこくってしまったカグヤを不審に思いカイオウが肩に手を置こうとする。

「あっ!ダ、ダメです!」

「え?」

 

 

 

どがぁっ!!

 

 

 

「ごふはぁ!?」

「ああ!副提督!」

「あー遅かった」

「うう…また始まっちゃった…」

「な、何事?」

突然の事に戸惑うムネタケ。

だがカグヤガールズは何かを悟っていた。

 

「ふふふふふふふふふふふ、いい度胸ですわね。何ですって?ワタクシとアキト様の仲を引き裂く?」

 

「い、いや、そうじゃなくて、これは軍からの…」

 

「聞く耳持ちません!!」

 

「ひぃぃぃぃぃぃっ!」

 

『暴れん坊将軍』になったカグヤはもう止まらない。

カグヤの破壊衝動によって次々に周りの景色が変貌してゆく。

 

「ホ、ホウメイ助けてー!」

「に、逃げますよ皆さん!ああ!?レンナさん、置いていかないで下さい!友達じゃなかったんですか!?」

「と、とにかく一時退避!」

「はいはい、荷物まとめてね」

「な、なんなの!?いったいなんなのよ!!」

 

すぐさま逃げ出す一同。

 

ちなみにアキトを含めたナデシコクルーは真っ先に逃げ出していた。

 

そんな訳でコスモスはカグヤの大暴れでブリッジ大破。

どのみち地球には下りれなくなった。

その為コスモスクルーの内、アカツキ、ガイ、イツキ、エリナ、ムネタケそして幾人かの生活班、整備班がナデシコに移ることに。

カイオウはその時点でコスモスの提督に昇格。

だが本人はかなり嫌そうだったとか。

また元々がナデシコクルーのアキトも再びナデシコのコック兼パイロットに復帰した。

それにユキナ、ラピスが便乗したことは言うまでもない。

レンナに関しては…前回の通りである。

 

 

 

また余談だがコスモスからナデシコに主要クルーが移った際、艦内の何処かで――

 

「あああああ!お、俺のゲキガンガーグッズが消えてやがるーー!!」

 

そんな悲鳴が響いたが誰も気にしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「とまあ涙ぐましい別れはこの辺にして」

「どの辺が?」

「あきとおにーちゃんが1番先に逃げてた」

流石のアキトも命は惜しいらしい。

「これで少しの間は静かになるか…。それに人身御供も置いてきたしな。大丈夫だろきっと」

「え?それって?」

「誰…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃のコスモス――

 

 

「アキトさまぁー!帰ってきてくださーーい!!」

 

「ぐぇぇぇぇぇぇぇぇ…ぐ、ぐるじい…じぬぅ〜…」

 

 

ぶんぶん振り回されるお子様が1人、カグヤの生贄となっていた。

 

 

 

「ハーリー君、今は耐えて」

「そうそう、若い内は苦労は買ってでもしろってね」

「ぐすっ…将来が楽しみね…」

「絶えろ。絶えるんだハーリー!」

【…ぶるぶる】

 

無論、誰一人として助けるものなどいない。

 

この後再びハーリーが医務室送りになったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

「まあいいではないか。そういう細かいことは」

「そうだね」

「うん」

ハーリーは既に過去の人となっていた。

 

「さーて、どうせ今回はろくに仕事もあるわけでなし。いっちょナデシコのてっぺんに大漁旗でも掲げて暇つぶしでもするか?」

 

ズゴッ!

 

「止めてください」

「う〜む、このナイスでベストな衝撃はプさんか」

只今アキトの頭上にはあのソロバンが乗っている。

「よくわかりますね」

「何時ものことだからなぁ…で、大明神プさん、健康優良児たるこのオレに何か用か?」

「誰が大明神ですか。誰が」

どす黒いオーラを漂わせるプロス。

勿論あのソロバンを再び振りかぶっているのは言うまでもない。

「……………こわい」

「ああっと、これは失礼。驚かせてしまいましたね。こんにちは、ラピスさん」

「…………………………うん、こんにちは、

「…………………………………………………………プロスペクターです」

「プ」

「……………流石はテンカワさんの妹さんですね、そっくりです」

『もう疲れました』といった表情をするプロス。

「はっはっはっ、プさん、まあ宜しくしてやってくれ。で、何か用か?」

「ええ。ですがここではちょっと…私の部屋に来ていただけませんか?」

「…痛いことしない?」

「しませんから来てください」

「ん〜しかしこの後オレは…はい、行きます

「いいでしょう。では、ユキナさんとラピスさんも一緒にどうぞ。お茶菓子も出しますから」

宇宙対応正義のソロバンをびゅんびゅん振り回しながら絶好の笑顔をつくるプロス。

その表情の裏に隠されている思惑は読み取れそうになかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、テンカワさん、ユキナさん、ラピスさん、そしてレンナさん」

3人に加えてレンナも呼び出されたようだ。

「早速ですがあなた方にお尋ねします…本当の事を教えて頂けませんか?」

『え…?』

「皆さんは火星から逃げてきたという事ですが、それに関しては不可解な点が多すぎます。

まずあなた方が乗っていたという船の出所、フクベ提督の行方、テンカワさん以外の遺伝子情報が無い等々」

「それは…」

「えっと…」

「う〜ん」

流石に言葉に詰まる。

「気にするなプさん!この大宇宙から比べれば遥かに些細な事だ。だからその辺を考慮してそろそろ…いえ、どうぞ続けて下さいませ

嫌な気配を感じ取ったのか素直に引き下がるアキトだった。

「コホン、そしてなにより1番気がかりなのはラピスさんの存在です」

『…』

もう沈黙のみでしか抵抗出来ない面々。

そしてプロスの語りは続く。

「テンカワさんの妹という事でしたので確認の為DNA鑑定を行いました。

ま、あのテンカワさんの妹というのは俄かにも信じがたい事でしたので100回くらい見直しましたが」

「それには同意します」

「待てや」

信用ゼロのアキトだった。

「しかし、普通でしたらあり得ない事です。テンカワ夫妻は今から10年程前に亡くなっている筈。

なのに妹のラピスさんはどう見ても8歳前後、計算が合いません。どう考えてもこれは…」

「…もういいです」

「レン…」

「いいの?」

心配なのかレンナに目線を向けるユキナとラピス。

「大丈夫よ2人共」

そんな2人の手に両手をかせねニッコリ笑って安心させる。

「…それではお話しして頂けますか?」

「はい…でも…」

「わかっていますよ。この事は秘密にしておきますから」

笑みを浮かべながらお茶を煎れるプロス。

だがそのお茶の渡し方が例のソロバンを使ってなのはかなり頂けない。

お陰でアキトはぷるぷる震える手で受け取らざるを得なかった。

「ではお話しします…」

「うむ。だが呪いをかけるなよ?」

げんっ!

「かけるかっ!」

「アキト…ここは真面目なとこ」

「あきとおにーちゃん、黙ってて」

「ぬぅ…」

かたなしである。

 

 

 

 

 

「そうですか」

レンナの口より語られた数々の出来事を一言も漏らさずに聞いていたプロスの第一声がこれだった。

「はい…でもあまり驚かれないんですね」

「ははは、まあそこは年の功と申しましょうか。しかしテンカワ博士が生存していらっしゃったとは…」

「あの人達には随分とご迷惑をかけてしまいました」

「うむ!というよりこっちが迷惑千万だったような気がするぞ」

「まー出会いからして追いかけっこだったしね〜」

「覆面バイク…」

確かにアレはインパクト大だろう。

「ま、まあ色々とあったようですが、あの方々もそうしたいからそのような行動をとったのでしょうし、あまり気にしない方が良いかと思いますよ」

「はぁ…」

「それは無理だろ」

「う〜ん、アキトのお父さんは根に持つタイプのような気がするな〜」

「うん。朝ごはんの焼海苔を取られたからって一日中あきとおにーちゃんの事を愚痴愚痴言ってた」

子供なアキト父だった。

「しかし、やはりこの事は皆さんには話さない方がいいでしょうね。何しろ地球で木星蜥蜴は謎の侵略者となっていますから。

それが同じ地球人だとわかったらどうなるか…しかもユキナさんは木連の方ですし、もし軍に知られでもしたら…」

「もう、手遅れみたいよ?」

「エ、エリナ女史?」

突如乱入してきた人物に驚きの表情を浮かべる。

思わずあのソロバンの封印を解くところだったようだ。

「意外そうな顔ね」

「まあそれは…ですが手遅れとは?」

「ほら」

エリナが手を上げると無数のウィンドウが開き始めた。

そのウィンドウには驚きの表情を浮かべるクルーが映っている。

「な…」

「ええ?」

「何?」

そしてレンナ達も驚く。

「いや、今までの全部嘘なんだけどね」

『それこそ嘘つけーっ!!』

アキトの誤魔化しにクルー全員でのツッコミが炸裂した。

 

 

「はぁ、やれやれね。この映像が流れてたから私もここに来たんだけど…全部話されちゃった…あーあ、どうするのよ…」

怒りを通り越して呆れの表情を浮かべるエリナ。

「え、映像が?ここは普通では解除出来ないセキュリティになっている筈ですが」

「あーもしかして」

「またアナタですか、テンカワさん!」

ずいっと近寄ってきたプロス。

腰が抜けそうになりつつもなんとか踏みとどまる。

「い、いやね?ここに来る前にノリ3世に連絡を入れておいたんだよ」

「ルリさんに?何故です?」

決まってるだろうが!プさんの牙城拉致されたんだぞ!?絶体絶命のピンチだろうが!

ならば予めその惨劇を最初から放送しておけば誰かが助けに……あ、あの、プさん?その最終形態になったソレはちょっと…」

 

 

ヒュンッ

 

 

 

ガゴォォォン!!!

 

 

 

「…私の名前が引導代わりです。迷わず地獄に落ちなさい」

 

一撃必殺だった。

 

 

 

「あーっと、そ、それでどうするの?艦内大混乱よ?」

とりあえず話を戻すエリナ。

勿論ヤバイ事になっているアキトは見ないように。

「………………………わかりました」

「レンナさん?」

「あら、どうするの?」

「歌って誤魔化します」

『止めい!』

即座にストップがかかった。

無理もない。

「ダメ?」

『ダメ!』

「ちっ…」

本気で残念そうだ。

「まあそれは置いていて。本当にどうするの?」

ウィンドウに映るクルーの顔はどれも愕然としていた。

それは先程の話を聞いてなのか、ツッコミを見てなのかはわからないが。

 

「…そんな」

「嘘だろ…」

「信じられない…」

 

そんな事を口にしながら悔しそうなクルー。

 

「み、みなさん、どうか落ちついてください。これは…」

 

『テンカワの言っていたことが本当だったなんて!』

 

『は?』

 

突然叫んだナデシコクルーの言葉に固まるプロス、レンナ、エリナ。

ちなみにユキナとラピスはアキトをつんつんしている。

 

「嘘だろ!?マジだったのかよ!」

「テンカワの言う事だから絶対でまかせだと思ってたのに!」

「うぁぁぁ!今月の給料ぶっ飛んだぁぁ!!」

口々に叫びだすクルー。

 

「…これは一体?」

「説明しましょう!」

「出たわね」

「…イ、イネスさん」

プロスの疑問の言葉に誘われるように現れたイネスはとってもイイ顔をしていた。

「実は地球に下りる前、アキト君が『木星蜥蜴は木連という国の奴らが送り込んでくる機械だ』なんてポロっと口にしたのよ。

勿論そんなこと誰も信じない。そこでアキト君が賭けをしたのよ」

「か、賭け?」

「ええ。アキト君のいう事が真実かどうか賭けするってね。そしてナデシコクルーの大半は嘘に、アキト君は真実に。

まあ本人が真実を知っているのならそっちに賭けるわよね」

『…』

目が点になる3人。

「そして、レンナちゃんから語られた事が引き金となってこの状態」

「…な、なんと」

「テンカワ君、あなたって人は…」

「アキトのやつ…」

 

だが当のアキトは――

 

「…」

「やったー!お金持ち♪お金持ち♪」

「…ユキナ嬉しそう」

話を聞いて嬉しがるユキナを見つつアキトをつんつんするラピス。

これがこの子なりの介抱なのだろう。

「ふふ〜ん、これで当面の生活は安定だね!流石は私の未来の旦那様!」

上機嫌になり踊り狂うユキナ。

ラピスもつられて小躍りしている。

「でもまだまだ!私の面倒を一生見てもらうには全然足りないよ?頑張ってねアキトっ!」

「ユキナ…」

ちょっと呆れたといった表情のラピスだった。

「…」

そしてアキトは未だ屍中である。

 

 

「やれやれ…それで、イネス女史はどちらに?」

呆れながらもイネスに確認するプロス。

金銭関係はやはり気になるらしい。

「決まってるじゃない。アキト君によ」

「それは…良かったですね」

「ええ。これで新しい薬が調達できるわ…ふふふ」

不気味な笑みを浮かべながら退場するイネスだった。

「ちなみに僕もテンカワ君に賭けてたよ?」

何時の間に現れたのかアカツキも報告する。

「…当たり前でしょうが」

「会長は真実をご存知ですしね」

「ははは、しかし参ったねぇ。こんなに早くバレるなんて…いや、参った参った」

「…全然そんな風には見えないわよ。大体知ってたのなら事前に止めなさいよ全く!」

「いや〜流石に僕はまだそれほど顔が利いてないからねぇ、面白そうだったから便乗しちゃったよ。いや〜愉快愉快」

「アンタ、まさかテンカワ君達が木星から逃げてきた事を知ってて放置してたんじゃないでしょうね!?」

「さあね〜」

「やれやれ、参りましたなぁ」

「ま、後は頼んだよ2人共。さーて、臨時収入も入った事だし、これを使って1つ…」

立ち去ろうとしたアカツキをエリナが『わしっ』と掴み部屋に留めた。

「分かったわ。この件は何とかしてあげる。その代わり…分け前は9:1ね?」

「…エ、エリナ君?それはちょっと悪どくないかな?」

「誰がアンタの給料を管理してるんだっけ?ねえプロスペクター?」

「そうですね。いや〜助かります。最近色々と物入りで」

「………………………僕に自由は無いのか」

遠い目をしたアカツキだった。

 

 

 

勿論この2人も――

「流石はアキト!嘘はつかないよね!」

「アキトさんは真実しか語りませんもんね!」

こちらも小躍りしながら勝利に酔いしれるのはユリカとメグミ。

儲けた金は今後の活動資金になるのだろう。

なんの活動かは知らないが。

 

 

 

そしてこの人も――

「な、なんてこったぁぁっ!絶対に勝てる賭けだった筈なのに!これじゃあ新しい発明がぁぁぁ!!」

嘆いていた。

「…こうなったら、またちょろまかすか?」

そうでもないらしい。

逆境には強いウリバタケだった。

 

 

 

「バカ?」

そんな映像を傍で見つつツッコミを入れるのはご存知のルリ。

だがその本人もアキトに賭けていた事を内心喜んでいたりする。

 

 

 

 

 

現実味の薄い真実より目の前の事態が優先になるナデシコクルーだった。

 

 

 

 

 

「るんる〜ん♪よーし、これを使って思いっきりお洒落してアキトを…ぐふふふ」

臨時収入の使い道を妄想の中でシミュレートし不気味な笑いを浮かべるユリカ。

「艦長、変な笑いは止めてください」

「ダメよルリルリ、聞いてないわ」

「ふんふ〜ん♪えっと、これもいいかな〜?」

「メグミさんもですね」

「ホント、諦めの悪いこと」

苦笑しつつそんな2人を眺めるミナト。

勿論ルリは呆れている。

「…」

そして背後ではひたすら押し黙る副長の姿があった。

おそらく賭けで負け、更にユリカが先程から口にする男の名前に怒りを覚えているのだろう。

もはやいつ爆発してもおかしくない状態だった。

「そして…そして…いや〜ん!ユリカ恥ずかしい!」

ばんばん!

そんな事は全く気にも止めず悶えまくりながら目の前のコンソールをぶっ叩く。

【…ピッ】

「よーし!そうと決まったら早速!」

【グラビティー・ブラスト発射】

『へ?』

突然のウィンドウ表示にブリッジクルー全員の思考が停止したようだ。

 

 

 

そして黒き帯が白き世界を蹂躙してゆく。

 

 

 

「のわぁぁぁぁぁっ!?な、何事だぁぁぁ!?」

「て、敵襲ーっ!!」

「全速後退!急げ!」

「エステ隊の準備はまだか!?」

 

勿論大騒ぎになるナデシコ艦内。

先程まで別の意味で大騒ぎをしていたから尚更だ。

 

 

 

 

 

 

「何を考えてるのよアナタは!」

「しゅーん…」

エリナの怒声に小さくなるユリカ。

どうにか撤退は出来たが進行する為の道を絶たれ、立ち往生状態のナデシコ。

 

「しかしどうしますか?」

「そうね、こうなれば多少危険は伴うけど別の道を行くしかないわね」

「ほぉ…」

 

イネスの提案により別の道を行くことにはなったが、そこは先程までのようにお気楽にはいられない所だった。

 

この道はいつ座礁してもおかしくない程の突出した地形でしかも入り組んだ道。

更に無人兵器に見付かる可能性も大いにある。

そんな訳でエステ隊は先行して偵察に出ているのだが――

 

「でもよぉ…こんなに視界が悪いんじゃ俺達が偵察に出ても仕方ねぇんじゃないか?」

 

リョーコが文句を言うのは無理もない。

外は激しいブリザードが吹き荒れ視界は無いに等しい。

この状態では偵察等に出ても殆ど無意味だ。

 

「まあまあリョーコ君。ここは我慢我慢」

「へいへい…っと、そういえばお前、コスモスから移ってきたんだよな?」

「そうだけど…それが?」

「名前なんだっけ?」

がくっ

思わずエステでこけてしまったようだ。

「ま、またテンカワ君みたいなボケを…でも、言ってなかったかな?」

「あーあん時はどたばたしてたから聞いてなかったしな」

「はーい、私も同じー」

ポロロ〜ン♪

「右に同じ〜」

「そ、そうかい…」

「ホント、マイペースですよね…」

「へっ…この程度でガタガタ言ってたらナデシコには乗れねえぜ?」

何故かガイは悟っていた。

「そいうや、おめぇらも新しいパイロットだよな?」

「おうおう、オレはお前らより先にナデシコに乗ってたんだぞ?知らねぇのか?」

「知らねぇ」

「よーし、ならば聞け!俺は天が選びたる勇士!太陽よりも熱い最高に燃える漢!その名も…

「ヤマダ君でしょ」

「ヤマダさんですよね」

「なんだヤマダってーのか」

「宜しくねヤマダ君」

ポロ〜ン♪

「よ〜ろしく〜」

「あーちなみにこいつは普段ただのバカでエステに乗っていない時は全くの役立たずだ。だがゲキガンガーが絡むとそのバカが

熱血バカに様変わりし、更に鬱陶しくなる。対処法はゲキガンガーのアイテムを盾にするといい。効果は抜群だ。

それと本人も語っていたが、腹いせに太陽にほおりこむのもアリだ」

『なるほど』

納得だった。

「お、お前らぁぁぁぁ!俺はダイゴウジ・ガイだぁ!魂の名前なんだぁぁぁぁ!!」

本当に魂の叫びを上げるガイ。

だが誰も聞いちゃいない。

 

「よし、ついでだ!オレが互いを紹介してやる!」

『誰も頼んじゃいねえよ』

思わず全員でツっこむが勿論アキトはそんな事気にしない。

「まずここにいる緑頭のべらんめぇ女はスバル・リョーコ。こう見えても結構純情で最近女性クルーに言い寄られて大変らしいぞ」

ざくっ

「一言多い」

アキトエステにナイフの一突きがヒット。

アサルトピットに直撃していたら流血沙汰になるところだ。

「…つ、次」

だがアキトはめげない。

「こちらのメガネっ娘はアマノ・ヒカル。趣味でマンガを描いているのだが電波で描くせいかかなり内容はアレだ。

またその際に部屋に入ると数日間行方不明になるので注意と覚えておけ」

キュピーン!

「ふふふ…アキト君。後で部屋にGOだね」

「…遠慮したい」

おそらく後で拉致られるのは確定だろう。

「そして、ここでウクレレを弾きながら自分に浸っているのはマキ・イズミ。

オレとはいい友人兼相方だ。そのギャグセンスは一線を超えているともっぱらの噂らしい」

ペポロン♪

「お褒めいただき感謝〜ならばここで1つ。テンカワ君の人生の相方は現12歳の白鳥ユキナ嬢〜はっきり言って幼女なのにいいのかな〜

欲情しちゃダメなのよ〜浴場に忍びこんだらそこまでだ〜」

「……………………………いい唄だ」

アキトは何故か感動した。

「では気を取り直して、この長髪男はアカツキ・ナガレ。ネルガルの会長なのに何故かパイロットで秘書に頭が上がらないごく潰しだ。

結構腹黒い上にスケコマシなので近づくことはお勧めしない」

「………言うねぇ」

コメカミがひくついているのが見て取れる。

「そして最後はイツキ・カザマ」

「はい」

「えーと……………………………………特徴なし。以上!

「ええ?」

脇役の性だった。

「どうだ、分かりやすかったろう?」

『とっても』

返事をしつつアキトににじり寄ってくる一同。

「…オーラを漂わせるのは戦闘中だけと相場が決まっている筈だが?」

『今は戦闘前の準備状態だから問題無し』

「なるほど」

アキト納得。

『では遠慮なく』

ザシュッ

バンバンッ

ペロロ〜ン♪

ゲシゲシッ

ドゴゴゴゴゴゴッ

『せーの』

ドガァッ!!

「…」

パイロット総出でのツッコミ炸裂。

折角プロスの一撃から復活を果たしたアキトだったが再び撃沈したようだ。

 

 

「…」

ちなみにイツキはその光景を見て呆然としていた。

どうやらこのような突発的な状況にはキャパシティーが追いつかないらしい。

 

 

偵察に出ている筈なのに、何時の間にかエステでど突き漫才が繰り広げられてしまったある日の寒空だった。

 

 

 

「さーて、じゃあ偵察を再開するか」

「そうだね」

「よし、二手に分かれて…」

リョーコが指示を出そうとしたその時――

 

どがぁっ!

 

氷を飛び散らせ四方八方から無人兵器が現れた。

「なっ!ふ、不意打ちかよ!」

「氷の中からいっぱい出てきたよー」

ポロロ〜ン♪

「舞い寄る感情を持たぬ機械達…なのよね?命を勘定されたくはないけど」

「う〜ん、あのサイズに人が乗っているとは思えないけどね〜」

「だけどよぉ、結局はアレ作ったのは同じ人間なんだろ?しかもそいつ等はゲキガンガー好きだって言うじゃねーか。どうもなぁ」

「なんだかやりづらいですね…」

木星蜥蜴の正体を知った面々。

流石に戸惑いはあるようだ。

 

「おりゃ」

ぱんっ

びしっ

どかーん!

「うむ!」

『お、お前は鬼かぁぁぁぁぁっ!!』

問答無用でバッタを葬り去ったアキトに呆れながらもツッこむ一同。

 

ペロロ〜ン♪

「テンカワ君。それおいしすぎ」

だがイズミは何故か感心していた。

 

しかしあれほどのツッコミを受けて立ち上がってみせたアキトのエステ。

主人に似たのだろうか?

 

「んな事言ってる場合じゃないだろうが。攻められてんだから戦うのは道理だろ?」

「そりゃそうだけどよぉ…」

「安心せい。相手は所詮無人兵器。人が乗っている訳でも、やられたら相手が痛がる訳でもなし。今はとにかく任務を果たさなきゃいかんだろうが」

「テンカワ君、珍しく真面目な意見だねぇ」

「ふっ…バカを言え。オレはいつでも真面目だ。そう『高層ビルで窓拭きのバイトをするケニア人』のように」

『どんな例えだよ』

戦闘中なのに思わずツッコミを入れてしまうのはもはや止められないようだ。

ぽろろ〜ん♪

「私なら『整理整頓を日課にする佐伯さん47歳』といった所かしら?」

「む…やるなタマゴ」

「ふふふ、1人だけおいしい所を取ろうとしてもダメよ」

対抗意識満々のイズミだった。

 

そんなやりとりをしつつ徐々に敵を殲滅していく。

どうやらアキトの言葉がきっかけとなり本来の調子を取り戻したようだ。

だが一向に敵の減る気配が無い。

やがて序々にダメージを受けていく。

 

「拙いな…こんな調子じゃその内ナデシコまで被害を受けるぞ」

「そうだねぇーこのままだと大使さん助けられないよー?」

ポロロ〜ン♪

「すみません、どうやらこれまでのようです。さようなら、さようなら」

「イ、イズミ君、流石にそれはどうかと思うなぁ」

「あーうっとおしい!同じゲキガンガーを愛する者じゃねーのか!?…って、機械に言っても無駄か!ったくよぉ!!」

「リョーコさん!どうするんですか!?このままじゃジリ貧です!」

「…くそっ!仕方ねぇ!おいテンカワ!」

「なんじゃ!今オレは雪祭り出展作品の構想を練っている最中だ。邪魔をせんでもらおうか」

「…」

バンッ

ビスッ

リョーコが撃ったライフルの弾がアサルトピットの真横に直撃した。

後でウリバタケが煩いだろうが、リョーコはそんな事『知ったこっちゃねえ』といった風だ。

「いいか?」

「い、イエッサ!」

最高の敬礼をするアキトだった。

ついでにエステも敬礼していた。

「テンカワ、お前なんだかんだで一番こいつ等の特性を知ってるみたいだな」

「まあな。アソコに数ヶ月居たわけだし。嫌でも顔を合わせていたしなぁ」

「よし。テンカワ、お前が大使を探してこい」

「なぬ?」

アキトはショッキングフェイスを発動させた。

「奴らの特性を知ってるなら裏もかけるだろ?それを利用して大使の救出をしてこい」

「む!それは見せ場だな!?オレにスポットライトが当たるという事だな!?」

「…なんでもいいから行ってこい。ほれ、これが座標データだ」

「よっしゃあ!ならばテンカワ・アキト、一世一代の大博打に逝きます!」

雄叫びを上げつつ全速力で戦線を離脱する。

 

「…やっぱ、止めときゃよかったか?」

後の祭りだった。

 

 

 

 

 

 

「なんとか片付きましたね…」

「ナデシコの方はどうだぁー?」

「こっちには目立った被害はありませんよ!大丈夫でーす!」

「ですがテンカワ機の反応が未だ見当たりません」

ユリカの声に僅かに肩の力が抜けるクルーだったが、ルリの一言で再び緊張が走る。

「リョーコさん、お疲れでしょうがアキトと大使の探索に出てもらえませんか?」

「へいへい。まだ動けるやつだけで探索に出るよ」

「お願いします」

こういう状況下では真面目な艦長さんのユリカだった。

 

あれからなんとか無人兵器群を殲滅したが肝心の大使救出に向かったアキトが何時まで経っても帰ってこない。

その為、未だ誰1人素直に勝利を喜べないでいた。

 

「アキト…」

「あきとおにーちゃん…」

「大丈夫よ2人共。アキトが2人を残してどっかに行く訳ないじゃない」

「レンナの言う通りよ。だから安心しなさい。ね?」

「「うん…」」

レンナとミナトの励ましもあまり効果が無いようだ。

 

 

 

 

 

「…あ」

「どうしたのルリちゃん。アキト、見付かった?」

「いえ、そうではないんですが…少し先に煙が見えます」

『煙?』

「はい。映像に出します」

確かにルリの言う通り、氷山の向こうから煙のようなものが見える。

「あ、テンカワ機の反応ありました。あの煙が出ている所のようです」

「まさかエステが炎上してるんじゃないでしょうね」

「エリナさん!縁起でもない事言わないでください!」

「とにかく行ってみましょう」

「そうね」

 

 

 

だがナデシコが目撃したのは炎上するエステバリスではなく――

 

 

 

「う〜む、いいダシ出てるわ」

鍋をつつくアキトの姿だった。

 

 

『…』

流石に呆然とする一同。

 

 

「ねえねえアキト、これ何?」

「あきとおにーちゃん、コレ美味しいの?」

「おお2人共来たか。いやぁ、大使が全然見付からなくてな、だったらこっちから何か合図でも出せば気付くだろうと思って狼煙を上げていた所だ」

「で、この鍋は?」

「おう、ただ焚き火をするだけじゃ勿体無いからな。その辺でウロウロしていたシロクマを掴まえて鍋にしてみた」

どうやらアキトのエステには調理道具一式が常備されているようだ。

「へ〜クマ鍋」

「…食べていい?」

「待って!」

「イ、イツキさん?」

「いつの間に…」

「ぬぅ…瞬間移動能力の持ち主だったか…見誤っていたな」

何か間違っていた。

「ほらほら、そんなに一気に全部入れちゃダメ!ちゃんと順番通り入れないと生煮えになっちゃうわよ!」

「そ、そうなのか?」

「あーまどろっこしぃ!貸して!まずはよく煮なきゃいけない肉類から入れて、次に…」

手際よく鍋の材料を入れていくイツキ。

「イツキさんて…」

「おう、アレだな」

「アレ?」

「ああ、俗に言う」

『鍋奉行』

「…それ偉いの?」

それは人それぞれの捕らえ方次第だろう。

「おお、いい感じだね。では早速…」

ぴしゃっ!

「まだダメです!アカツキさん、貴方はもう少し忍耐という事について学ぶべきです!!」

「…そ、そうなのかい?」

アカツキも何時の間にか鍋につられて来たようだ。

ついでに言えば捜索に出ていたパイロットの面々も集まってきている。

「でも、そろそろ頃合っぽいぞ?」

「ダメです!まだすぐに煮える野菜を入れていません!それを入れて一煮立ちさせるまでは何人たりとも触らせません!!」

「そ、そうか」

リョーコ気押される。

「だがよう、もういいだろー?いい加減に食おうぜ?俺今日はろくにメシ食ってねえから腹減ってしょうがねえよ」

「ヤマダさん…待て!」

「オレは犬か!と言うよりオレの名はガイだ!!」

「ウルサイ!」

がづっ!

「ぎゅぶ!?」

ガイ、氷上に沈む。

「とにかく私が良いと言うまで絶対に手を付けないように!」

『は、は〜い』

全員、何故か正座をして鍋が出来るのを待っている。

相当イツキに迫力があったらしい。

しゅぱぱぱぱぱぱぱ…

「…アクを取るの凄い手さばきだな」

「うん…手の動きが見えないよ」

ぽろろ〜ん♪

「達人芸なり〜」

「いや、あれはもはや神の領域だな」

「アキト、鍋の神様って居るの?」

「そういうことじゃないと思う…」

ひゅぱぱぱぱぱぱ…!

今度は物凄い手さばきで野菜を入れていくイツキ。

その背後には異様なオーラがにじみ出ていたとか。

 

ぐつぐつぐつ…

「…」

イツキ、瞑想に入る。

 

『…』

他の面々はそんなイツキが怖くて話掛けられない。

 

「…」

そしてガイは北極海のオブジェと化す。

 

だがそんな中でも箸をわしわし動かしつつ『じー』っと鍋を凝視する腹空きお子様2人。

先程までアキトを心配していた顔が今ではほこほこしている。

 

「おお、そうだ。おーい、お前らも下りてきて食うかー?シロクマが結構大きかったから肉なら大量にあるぞー?」

ブリッジクルーにも呼びかけるアキト。

その辺の事は忘れていないらしい。

 

「…何か言ってるわよ?」

「何だか心配した自分がバカらしくなってきました」

「食べますか?」

「…もうなんだっていいです」

結局クルーもご相伴に預かることにしたようだ。

 

 

その後、鍋が出来上がったのはいいが外は寒いので格納庫に移動してクマ鍋祭りとなり、その日は大変盛り上がったとか。

 

 

「おや、そういえば提督が見当たりませんね」

「ほっとけほっとけ。食いたくねえんだろ」

「そうですな」

 

 

その頃ムネタケはというと――

「…」

何故か白目を向いて立ちながら気絶していた。

 

 

「あれ、この変な機械と名札なに?」

「ああ、シロクマがつけてたものだ。最近じゃシロクマもファッションにこだわるらしいな」

「そうなの?」

「さあ?」

 

 

 

 

なお救出する筈だった親善大使が今食べているシロクマだと知ったのは翌日のことだったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカばっか…もぐもぐ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキト…とナデシコクルーの運命はどっちだ!?続くような続かないような思わなくも無きにしも非ず。

 

あとがきです。

こんにちは、彼の狽ナす。

はい、そんな訳で本日のお鍋は『クマ鍋』でした(誤爆)

すみません(泣)

今回の話は木連の真実を話すという事で終わりにするつもりが何故かこんな展開に…(汗)

まあいいか(爆)

 

さて、次回は…いよいよ元から壊れのあの方の登場!

実は当初のヒロイン予定だったのはここだけの話!

でも今じゃ見る影もなし!(笑)

 

ではっ

 

 

 

代理人の感想

どわははははははははははははははははははは(大爆笑)

 

例の親善大使、SSでは実験動物だったりなんだりいろいろな扱いを受けていますが、

食っちまったのはまさしく

 

 

 

(くうぜん)絶後(ぜつご)

((c)ろくごまるに)

 

 

と言うほかない偉業でしょう!(爆)

どう言う意味でイギョーなのかはさておき。

 

 

 

>「絶えろ。絶えるんだハーリー!」

絶えるんですか(爆)