「ま、なんというか…久しぶり?」

「はい、お久しぶりです。でも本当に変わってませんね、アキトさん」

 

ニッコリ微笑みながらアキトに挨拶を交わす女性。

いや、まだ少女と呼ぶべきか。

出で立ちは真っ白なドレスを着込み真っ白な帽子を頭に乗せ、

更にその様相に合わさって肩に沿って揃えられた金髪と白い肌が衣服に良く映えている。

美少女と呼んで申し分ないだろう。

 

「ったりめぇよ、オレは何時でも元気百倍! これ昔から伝わる火星古来のことわざデス」

「ふふ、相変わらず変に面白い方ですね、アキトさんは」

「そうか? まあ誉め言葉と取っておこう。…だがそんなことよりちょっといいか?」

「はい、なんでしょう」

「…この縦穴はいったいなんだ? おもいっきり落っこちてしまったぞ」

「ああコレですか。野獣捕獲用の罠です

「野獣!?」

「食料の現地調達というやつですね。まあ、ですけど」

「嘘かい!」

 

どうやら少女はかなりイイ根性をしているようだ。

アキトがツッコミ役に回るくらいに。

 

「まったく…しかし随分と会わない内に逞しくなったもんだな。ちょっと前までは少し歩くだけで咳き込んでいただろ?」

「いえ、そんなことはありませんよ? 今でも身体は弱いままです。ここにいるのも療養を兼ねてなのですから。

 信じられないというのなら試しに吐血の1つでも決行しますか?」

「全力で止めろ。頼むから。…………で、その病人がなんでこんな所にいるんだ?」

「実は散歩していたら無償に穴が掘りたくなってしまって、気が付いたらこんな深さに…」

「…もしかして出られないとか?」

「正解っ、流石アキトさん。もう数時間ここで佇んでいたます。

 ほらさっきアキトさんが助かったのも私が休む為に用意した木の葉の山のおかげ♪」

「…………どぅわれかぁぁぁぁ!!たぁすけてぇぇぇぇぇっ!!!!!」

「どうせならここで心中してみますか? 今なら簡単に逝けますよ? 

 ああ…愛し合う2人が世を儚んで…素敵…」

「いぃぃやぁぢゃあああぁぁぁぁっ!!!!!!!」

 

いきなり大ピンチに陥ってしまうアキトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の3号機

その35

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりアキトがいないとつまらないな〜」

「そうですよね。折角海に来たのに」

 

不満を漏らすのはユリカとメグミ。

木陰で休みながらそんな会話をしていた。

 

「こういう事は今じゃなきゃ出来ないのにな〜」

「わかります。若い内にやりたい事やらないと後悔しますもんね」

「うんうん、そうだよね。あんまり年取っちゃったらもう手遅れだもんね」

「艦長、それ誰かのこと指してません?」

「え?…そ、そんなことないよ。あははは」

「そうですよね、あの人の事なんか言ってませんよね。あーあ…でもやっぱり手遅れにはなりたくないな〜」

「へえ、誰が手遅れなのかじっくりと説明してもらたいわね」

「「―――!!」」

 

その後、砂浜から恐怖にかられた悲鳴が聞こえたらしい。

 

「…バカですね」

「もしくは自業自得とも言う」

 

そんな光景を見ていたルリとレンナの感想でした。

 

 

 

 

 

 

 

そして話題に上っていたアキトはというと――

 

 

 

「誰かいないのかぁぁぁぁ! ヤジンーー! 今こそお前の出番だぞーーーっ!!」

 

必死だった。

 

とにかく全力で声を張り上げる。

よほどこの状況が脱したいようだ。

 

 

だがその呼び掛けられている当人はというと――

 

「おわぁぁぁぁっ!? な、なんだこの植物はぁぁぁぁぁっ!? 

 き、牙がある!? 牙があるぅぅぅ!! げっ!? こ、こっちにくるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ジャングルで未知の植物のエサになりかけていた。

こちらも大ピンチのようだ。

 

 

「ちっ…使えん奴め」

「何がです?」

「いや、なんでもない。ちょっとまっつぁおになるくらいの出来事が何処かで繰り広げられているだけだ」

「そうですか」

「それよりも…おおーい誰かいないのかぁー!? 助けてくれないとコイツの命はねえぞ!

 オラァ! 今すぐ食料と盗難用の車と金を用意しろ、1時間以内だ!」

「…立てこもり犯ですか。そして私は悲劇のヒロイン…す・て・き

 

突如人質になってしまったアクアはあっちの世界にトリップしクネクネしだした。

勿論アキトはそんなアクアを無視してひたすら叫びまくる。

そしてそんな声が聞こえたのか上から呼びかける声が聞こえてきた。

 

「おぉーい、どこやー」

「おお、来やがったぁ! ココだぞぉぉぉー! 早くせい!!」

「アキトさんったら。私を助けたいがためにそんなに必死になって…やっぱり私達の絆は生きているんですね

「だずげでぇぇぇぇぇぇ!!」

 

泣きながら助けを求めるアキト。

どうやらやせ我慢していたようだ。

しかしここまで必死なのも珍しい。

 

「あーこないなトコにおった。生きとるかー?」

「おーう、ギリギリで無事だぞーだから早く助けてくれぇーあと数秒もすれば生命の危険が訪れるかもしれない程の状況だー!」

「…ん? 男の声? 兄ちゃん誰やー?」

「その声はメイちゃんね。私も居るわよー」

「ありゃ? アクア姉ちゃんも一緒なんや。まあいいわ、ほな今助けるかんなー」

 

そんな声が聞こえたかと思うとスルスルとロープが下りてきた。

どうやらこれに掴まれということらしい。

 

「…まあ、原因は多大にアクのお嬢に有る訳だがオレが先に上るというのもアレだからな。ほれ先に行け」

「まあ…これは愛ですね

「………………………………………………もう何でもいいから先に行け」

「…アキトさん」

「なんじゃ」

「そう言ってホントは上っていく私のスカートの中を覗く気ですね? もうエッチなんだから♪」

「…」

 

ほんの数分の会話で一日分の精神力を使い切ったアキトだった。

 

 

 

 

「ふぃ〜ようやく出られた」

「ほんまや。なんでこないな穴に2人して落ちとったんや?」

「…それを話すと軽く一ヶ月という膨大な時間を浪費する事になりかねないのであまり喋りたくない」

「…複雑なんやな」

「ああ複雑なんだ」

「初対面なのにイキナリ意気投合してますね」

「…コク」

 

アキトとメイと呼ばれた先程の声の主はひたすら話し込んでいた。

会ったばかりなのに何故かもう打ちとけ合っている。

そんな光景を傍目にアクアに同意するかのように横で首を振る小さい影が1つ。

 

「あら、ミコト君も居ましたの。もしかして私を探しに?」

「…コク」

「そう、ありがとう」

「…」

 

アクアに誉められて恥ずかしかったのか俯いてしまうミコトと呼ばれた寡黙な男の子。

見た限りでは男の子か女の子判別出来ない様相をしている。

長めの髪もあいまって中性的な容姿の子供だ。

そしてコテコテの関西弁で喋りまくりアキトと話込む少女。

こちらはひたすら元気いっぱい。

短めに切りそろえた髪がふわふわ揺れていた。

 

「で、アクのお嬢よ。この子供らはなんなんだ? こんなジャングルとは凄まじく不適合な感じだぞ?」

「この子だちですか? もう何を今更。この子たちは私とアキトさんの子供じゃないですか♪」

「嘘をつけぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!」

 

アクアの言葉に1秒も掛からない速度で突っ込むアキト。

流石に譲れないラインがあるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

「むっ!」

「ユキナどうしたの?」

「うん、なんだか今、頭の中が『ピキーン!』っていった!」

「あら大変、頭痛ね。じゃあ頭痛薬と…念の為 注射でも打ってあげましょうか♪ 今度のは前よりいい感じよ? うふふふふ」

「いぃぃぃぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

おもいっきり悲鳴を上げて逃げ惑うユキナ。

ちなみにイネスが現れた時点でラピスは姿を消していた。

逃げ足はアキトと同格かそれより上なのかもしれない。

 

「…哀れですね」

「いや、むしろ場外乱闘でしょ」

 

ジュースを飲みながらその光景を傍観するルリとレンナだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「とにかく戻りましょうか。流石に泥だらけになってしまいましたから」

「誰のせいだよ」

「兄ちゃん、んな細いこと気にしとったらアクア姉ちゃんとは付き合えないで?」

「…コクコク」

「そうだな」

「何だか凄く失礼なこと言ってませんか?」

「「全然」」

「…フルフル」

 

アクアのニッコリした睨みに全力で否定するアキトとお子様2人。

しかしアキトは子供相手だと適応能力が飛躍的にアップする。

自分も根が子供だからだろうか?

 

「おーいたいた。おーいお前らー」

「む、誰だ?」

「あ、おとーちゃんの声」

「『おとーちゃん』?」

「ええ、この子達の親ですよアキトさん」

「…てめえ、やっぱり騙してやがったな」

「ほほほ」

「アクア姉ちゃん、さっきまで慰謝料がどうとか言って兄ちゃんを困らせておったからなぁ」

「…コク」

「そんな事言いながら便乗してオレの子供のふりしてたじゃねーかお前等」

「知らんなぁ」

「…フルフル」

「………疲れた」

 

どうやら一応の解決はしたようだがアキトの気力は限界値に達そうとしている。

まだまだ油断出来ない状況なのに大変なことだ。

 

「で、その『おとーちゃん』とやらは何処だ?」

「…え〜と、あ、あそこにおるやん。よー見てみ?」

「何?…何も見えんぞ」

 

アキトが辺りを見回すが全てジャングルの木々と草ばかり。

周りは全て緑色に埋め尽くされていた。

 

「兄ちゃん目悪いんか? だったらしゃーないけど」

「何を言う! オレの目は世界が認めるファーストクラス級だぞ!? そんじょそこらの目ん玉と一緒にするな!」

「…はぁ? なんやそれ」

「ほらアキトさん、あそこですよ。よーく見てください」

「んん〜?…おわっ!?

 

アクアの指差した先をじっくり見てみるとある部分に目玉が浮いていた。

はっきり言って怖い。

限りなく怖い。

 

「な、なんなんだ…?」

「アキトさん、紹介しますわ。このお方は私の専属医モトギ・カズマさん。さっきも言った通りこの子達の父親です」

「おう客か、珍しいな。しかもアクア嬢の知り合いのようだが…ふ〜ん、なるほどねぇ」

「…あー、人を珍獣を見るような目で見るのは勝手だが…その前に聞きたい事がある」

「ん、何だ?」

「アンタは何でカメレオンみたいに保護色バリバリでいるんだ?」

「ああ、気にするな。ちょっと緑好きなだけだ」

「限度があるだろう限度が」

「そうかぁ? まあ気にするな。あっはっはっは」

「こういう方なんです。だから作る薬なんかも全部緑だったりするんですよ。本当、変な方ですよね。うふふふふ」

 

カズマは全身緑色の服を着込み、髪を緑に染め、顔には緑色のマスクを被り、目は緑色のコンタクトをし、葉っぱを両手に持って大笑い。

アクアもつられるように一緒に笑っていた。

ジャングルに2人の笑い声がこだました瞬間、それを聞いた野鳥達は一目散に飛び去っていく。

きっと危険動物が近くに居ると察知したのだろう。

 

「…帰りたい」

「もう無理やで兄ちゃん」

「…コク」

 

罠に掛かった時点でアキトの運命は決まっていたようだ。

哀れである。

 

「そういえばここに来る途中凄まじい植物の群れと出くわしたんだが、アレいったいなんなんだ? 原始に憧れでもあるのか?」

「ああアレ。いやぁ〜実は余った薬品を肥料代わりに撒いたらなんだかイイ感じに成長しちゃって。あっはっはっは、参ったね」

「郷里に帰れお前は。そしてポリスにゲットされてこい」

「ホント、困ったものですよね」

「お前もそれでいいのか?」

「ええんちゃう?」

「…コク」

 

イネスの同類気質を持つモトギ・カズマ。

勿論のこと、アキトの中で危険人物にリストアップされていた。

そしてナデシコクルー並にのん気な面々はその足でアクアの屋敷に向かうことに。

まだまだ波乱の予感である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははははは! どうしました!? これで終わりですか!?」

「ア、アオイ君…元気だね」

「ち、ちきしょぉ…強えぇ…」

「もうへとへとだよ〜」

 

ビーチバレーを繰り広げる面々だがその中でも生まれ変わったジュンは完全に圧勝していた。

何気に白い歯が輝いている。

 

「アオイさん、素敵です!」

「ありがとうイツキ君! くぉぉぉ、力がみなぎる! さあ次の相手は誰ですか!?」

「えいっ」

 

ぷすっ

ぱたっ

 

「やれやれ、ちょっとやりすぎたわね。イツキちゃん、手伝ってくれる?」

「…え?」

 

この後、海の家の謎の部屋にて絶叫が響きわたったらしい。

 

「…静かになりましたね」

「ナデシコで静かだったこと有ったっけ?」

 

ヤキソバを食べながらひと時の静けさを満喫するルリとレンナだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあどうぞ」

「ほぉ〜これは凄いな」

 

アクア達の住む屋敷へと案内されたアキトだったが、ここへ来る途中あちこちに罠が仕掛けてあり度々アキトのみが

引っ掛かり死の直前まで置いこまれたがそこは脅威的な悪運で乗り切るという離れ業を見せつけ賞賛を浴びた。

つくづくしぶとい男である。

そして今はアクアの手料理を振舞ってもらいパクついているという状況だ。

 

「さて、アキトとかいったな。お前アクア嬢と知り合いなんて、お前よほどの資産家か何かか?」

「いんや、ごく普通の新聞配達員だ。朝早いのは骨が折れるぞ?」

「なるほど…………………………いや、何か間違ってるような気がする」

「何言っとんのや、この兄ちゃん」

「…コク」

カズマは軽めのノリツッコミで反応し、お子様2人はツッコミを使用した。

 

「でもなあ、アクア嬢はクリムゾン家のご令嬢だぞ? 普通の一般庶民が知り合いになれるような人じゃねぇんだぞ?」

「一般庶民じゃない! ごく普通のパラグライダー乗りだ!」

「さっきと違うやん」

「…コク」

「…お前、変キャラだな? とにかくそういう訳だ。いったいどうやって知り合ったんだ? 是非とも2人の馴初めを聞かせてもらいたいねぇ」

「そんな馴初めなんて照れますわ…」

「違う違う」

 

頬に手を当てて上品に照れるアクア。

アキトが否定するが聞いてはいなようだ。

 

「…まあいいか。じゃあ話してやる、よーく聞けよ? それはジョーイとエミリィが出会った頃に遡る」

「誰だよそれ」

「友達か?」

「…?」

「あ、居ましたねそんな人」

「…いや、アクのお嬢。オレがでっち上げた架空の人物を現実に持ってくるな」

「え? 居ませんでしたっけ?」

「…もういい」

 

本当に出会ってからずっと振り回されっぱなしだった。

アキトが心底疲れた表情をしていたのは言うまでもないだろう。

 

「あの頃オレはとある食堂で毎日せっせと車海老のように働いていた」

「…想像できん」

「…うちも」

「…コク」

「そしてある日、出前に出た帰りに自転車で人を轢いてしまってな。それがアクのお嬢だったのだ」

「…よく生きてなアクア嬢」

「前方不注意やん」

「…コク」

「いや、バックで走っていたから後方不注意だ!」

「「なんでやねん」」

「…コク」

 

『どうだ!』と言わんばかりの態度をとるアキトに思わずカズマも関西弁でツッコミ敢行。

何気にビシッと手の動作も入っている。

しかしアキトの自転車はつくづく高性能だ。

 

「確かにビックリしましたわ。突然後ろ向きで走ってくる自転車が私に激突したんですもの」

「うむ。で、そのまま放置岡持ちに詰めて持ち帰るの2択になったんだが…」

「…他の選択肢は浮かばなかったのか?」

「どっちでもアクア姉ちゃん、逝ってまうやん」

「…コク」

「結局 岡持ちに入れて食堂に戻ったんだ」

「入ったんか!?」

「…!」

「やるなアクア嬢」

 

人間ビックリショーもいいところだ。

どうやらアクアも只者ではないらしい。

 

「その後、介抱をしつつ謝罪したんだが」

「そうですわね。食堂のおじさんにナイフ投げならぬ包丁投げの的にされてましたから」

「…そんな奴しかいないのか?」

「信じられへん出来事ばっかりや」

「…コク」

「実はその後 アクのお嬢は迷子だった事が発覚してな」

「あーそういえば2年近く前にアクア嬢が行方不明になって大騒ぎになったことがあったな」

「すみません。あの時はついフラフラと出歩いていたら何時の間にかダンボールの中に収まってしまっていて…」

「アクア姉ちゃん器用やな」

「…コクコク」

「お付きのシークレットサービスもまさか探している人物がダンボールに入っているとは思わなかっただろうな…」

「まあそんな事があって本当ならさっさとポリスなんかに届け出て帰すべきだったんだろうが、

 アクのお嬢が帰りたくないって駄々をこねるから仕方なく暫くの間 食堂で預かったんだ」

「なるほどな〜そんでそのままズルズルと2人は…」

「そうです。まあすぐにシークレットサービスの皆さんに見つけてもらったんですがそこは上手く脅し…いえ、言い含めて食堂に残ったんです。

 その後も私達は…

 

『アキトさん、私こんなに親切にしてもらったの初めてです』

『よほど荒んだ環境で育ったんだな…』

 

『アキトさん、私に料理教えてくれませんか?』

『よし、まずはこの料理本を読破しろ。そうすれば修行完了だ』

 

『アキトさん、私 1人で寝るのが心細い…』

『そうなのか? じゃあこの呪いの仮面を部屋に置いておくといい。夜中にカタカタ鳴って静けさなどとは無縁になれるぞ』

 

『アキトさん、なんだか胸が苦しい…』

『そうか。じゃあこの軽めの布団を貸してやろう』

 

『アキトさん、あの木の葉が全て落ちたら私は…』

『夏真っ盛りなんだが…』

 

『アキトさん、少し疲れてしまいました…』

『仕方ない、ほれスッポンの生き血。元気になるぞ?』

 

『アキトさん。今日は部屋の鍵を開けておきますね』

『無用心だな。よし、ならば部屋の前にガードマン人形を置いておこう』

 

『アキトさん、一緒に臨死体験してみませんか?』

『何の冗談だ?』

 

…なんて事が色々とありまして。

でもあの数日間は今までにないほど充実していました。

あんな無意味に過ぎ去っていく毎日よりは遥かに…」

 

どうやらアクアにとってアキトと過ごした日々は何物にも変えがたい程の物だったようだ。

更にアキトの親切心が余程嬉しいことだったらしい。

しかしアクアの行動の速さは尋常ではない。

恐ろしい限りである。

 

「後半あんまわからへんかった」

「…コク」

「子供はわからなくていい…まあ世話なったってことか」

「そう…そうですね。わかりました、私はアキトさんの女なんですね」

「いや、何がわかったんだおまいは」

 

アクアの暴走に呆れるアキト。

モトギ親子は流石についていけないようだが…まあ無理もない。

 

「とりあえずコイツは置いといて。まあそんな訳で知り合いなのだ」

「そんなオレの女なんて…照れますわ」

「人の話聞いてんのか?」

「ああーそんな乱暴に…」

「おい、誰かこいつを止めてくれ」

「うう…いい話やないか…」

「…グスン」

「侍女長の悲劇が如実に現れていたな…くそっ…泣かせるなよ」

「今の話の何処に侍女長が居た? つーかお前らさっきまでツッコミまくってなかったか?」

「そして2人はそのまま愛の礎となり永遠に語り継がれるの…ああ、なんて素敵…」

「もういいから黙れUSA」

 

もう止まらなかった。

ついでにモトギ親子も止まらなかった。

アメリカ人アクアの暴走はまだまだ続きそうである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらウリバタケさん、こんな所でどうしたの?」

「あーイネスさんか。いやちょっと新しい発明を考え中なんだが…どうも行き詰っちまってなぁ」

「そう…ならこの特製ドリンク飲む? 頭がスッキリするわよ?」

「…ちなみに聞くが、そのドリンクの瓶はなんで無印なんだ?」

「これは私の手作りだからに決まってるじゃない♪」

「…いらねぇ」

「あら遠慮しなくてもいいのよ。さあどうぞ」

「かき氷にかけるんじゃねぇ!…うわ、すげえ色

「そうかしら、美味しそうじゃない?」

「ならアンタが食え」

「遠慮するわ」

「…おい」

 

その後、特製ドリンクがかけられたかき氷は廃棄処分された。

また何故かそのかき氷を捨てた地面の雑草が腐乱したと後にイネスはレポートに書き記す。

 

「…脅威ですね」

「人外生物でも作る気なのかしら」

 

そしてやっぱりイネスの奇行を焼きとうもろこしを食べながら観察するルリとレンナだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでアキトさん、私の作った料理はどうですか?」

「う〜〜〜〜む…9点」

「あら…」

 

ちょっとがっかりするアクア、どうやら結構自信があったらしい。

あれからどうにか落ち着いた…というよりアキトが無理矢理落ち着かせた面々。

ようやく静かに食事に入ったがアクアはアキトにベッタリ。

モトギ親子は食べるのに専念した為、完全に2人の世界が出来上がっていた。

 

「え〜おいしいやん」

「…コク」

「うむ、美味いぞ? これで9点は低すぎないか?」

 

何気に便乗してアクアの料理を食べていたモトギ親子がアキトの批評に不満を漏らす。

流石に聞き逃せない言葉だったようだ。

 

「おいおい勘違いするな。オレは10点満点中の9点と言ったんだ」

「あ〜なるほどなぁ〜」

「…コク」

「おお、それなら好評価だな。良かったなアクア嬢」

「…納得いきませんわ」

「「「なぬ?」」」

「…?」

「納得いきません。私が自ら作った料理が満点ではないなんて…アキトさん、何処に落ち度があったか聞かせてもらえますか?」

 

そう言いながら『ずずいっ』と詰め寄ってくる。

目が怖かったのかアキトはすぐに視線を逸らしたが。

 

「ぬぅ、ならば言おう。俺が満点にしなかった理由、それは…」

「「「それは?」」」

「…?」

「裏があるだろ」

「「「なに?」」」

「…?」

 

アキトの呟きに思わず聞き返す一同。

そしてアキトは魂の叫びを上げた。

 

「絶対裏があるだろ!? そうだ、そうに決まってる! あの時も何かある度オレが恩を売られていたじゃないか!!

 そうだ、あれは初めてオレがアクのお嬢の料理を褒めた晩…………うわぁぁぁぁ! 思い出すだけでも怖いぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

突如叫びだしたと思ったら今度は部屋の隅でぷるぷる震えだすアキト。

余程のことがあったようだ。

 

「…あの、アキトさん?」

「なんじゃい」

「今は別に何もしませんよ」

「…嘘だ」

「本当ですよ」

「…信用できん」

「ではこの目を見てください。これが嘘を言っている目に見えますか?」

「むぅ…じ――――――――――――――…」

「…ポッ」

「頬を赤らめるな…わかった…信じよう…と思う」

「良かった♪ ではこれで10点満点ですね?」

「まあそう…か?」

「万事解決だな」

「ほんま手間の掛かる兄ちゃんやなぁ〜」

「…コク」

 

何とか場も落ち着き和やかな雰囲気が漂うがアキトのみ何故か引いていた。

それはアクアの目の色が変わった事に気付いたからである。

ついでに表情も激変していた。

そんな様相をアキトが敏感に感じ取ったのは言うまでも無く、続いてモトギ親子も後ずさりしていた。

 

「うふふ…ねえ、ア・キ・ト・さん」

「な、なにか?」

「そろそろ参りましょうか」

「何処へかな…?」

「愛の果てへ」

 

ヤバ気な言葉が飛び出した。

勿論アキトは引きまくっている。

 

「……………断っていいか?」

「駄目です」

「激しく拒否したいんだが…」

「では、今までの恩を返すという事で」

「ぬあ!? ひ、卑怯だぞ!?」

「ええ、そうかもしれません…でも恩は返さないといけませんよね。人として

「ぐぅ!?」

「納得していただけましたか? さて、カズマさん」

「な、何かな?」

「薬の効き目はどれくらいで?」

「そうだな…そろそろだろ」

「く、薬?…お、おおお? な、なんだか身体が動かないような気がしなくもなく…いとおかし」

「いや、いとおかしって使い方間違ってるぞ。大体どの辺に情緒があるんだ?」

「…あの辺り」

 

動かない身体を無理矢理動かして窓の外を指すアキト。

 

「ジャングルだな」

「情緒あるだろう?」

「どう思う?」

「わからんへん」

「…ふるふる」

「だそうだ」

「そうか」

 

心底残念な表情をする。

どうやら本気だったようだ。

 

「さあ、お話は終わりましたね。では参りましょうか。カズマさん、暫く庭園の方へ行っていてもらえますか? 

 これからは大人の時間です」

「はいはい。おう、2人共遊びにいくぞ」

「わかったー」

「…コク」

 

アキトとアクアを残し立ち去るモトギ親子。

アキトが恨みがましい目で睨んでいたが完全に無視のようだ。

 

「…薄情モン…」

「うふふふふ…さあアキトさん行きましょうか…愛の墓標へ

「嘘つき〜何もしないっていったじゃないか〜」

「ええしませんでしたよ、さっきまでは。それに私言いましたよね、今は何もしないって。

 私の今は前後10秒間隔です」

「おお、これは盲点…って、関心してる場合じゃね〜…た、たすけてぇ〜…我が妹よ〜…兄がピンチだぞ〜…今何してる〜?」

 

 

その頃 呼ばれた当人はというと―――

 

 

「えいえいえい!」

 

ブンブンブン!

 

「ほほほ、当たらないわよラピスちゃん。さあこのイネス印スペシャルオイル塗りましょうね〜♪ 

 肌はあんまり焼かない方がいいのよ? ほら遠慮せずに♪」

「や〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 

イネスに対し必死の抵抗をしていた。

しかしイネスの反応速度は尋常ではない。

いったい何者なのだろうか。

 

「…イネスさん、嬉しそうですね」

「きっとサドなのよ」

 

やっぱり傍で静観するルリとレンナだった。

 

「あなた達、さっきから見てるだけみたいだけど暇ならこのオイルの説明をしてあげましょうか?

「「結構です」」

 

『…』

 

そして既に犠牲者と成り果てたユリカとメグミ、ユキナ、ジュンは砂浜で屍となり果てていた。

何をしたのかはイネスにしかわからない。

何気にウリバタケとパイロットの面々が線香をあげているのはご愛嬌だろう。

 

「…平和ですな」

「…そうだねぇ」

 

プロス、ホウメイはウリバタケが建てた海の家でお茶を飲みつつナデシコ特有のわびさびを味わっていた。

大人の余裕である。

 

ポロロ〜ン♪

「オーイエ〜ここは海の家〜くっくっく」

 

本当に平和だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おとーちゃーん、ほらでっかい虫」

「…!」

「おー良かったなー」

 

ピピッ…ぶちっ

 

「どれどれ見せてみろー」

 

ピピピピピピピピピッ!

 

「あーなんだようるせえな」

 

問答無用で切った通信端末が再び軽快な音を立てて鳴り響く。

『早く出んかオラァ!』といった感じだ。

カズマが仕方なく端末を操作すると画面に1人の女性が映し出された。

 

「あんた! さっき誰かも確認せずに切ったでしょ!?」

「いえ、確認してから切りました」

「余計悪いわよ!」

 

ヒステリックに叫びまくる長めの金髪、相手を見透かすような瞳を持ち、深紅のスーツを着こなす女性。

かなりの美人なのだがその形相がそれを台無しにしていた。

 

「まあまあ、ちょっとしたお茶目ですよ。しかし驚きましたね、シャロンさんがここに連絡入れるなんて初めてじゃないですか?」

「ふん、悪かったわね。私としても連絡なんてしたくも無かったんだけど事情が事情だから仕方ないわよ」

「事情?」

「そう。ちょっとしたモノが最近出来てね、少し実験をしようと思うのよ」

「ほー実験、どうぞご自由に。それじゃ」

「って、切るな! これ以上ふざけた態度取るとリストに載せるわよ?」

「さあなんなりとシャロン・ウィーリドン嬢」

 

突如卑屈になるカズマ。

しかし一気に態度を変貌させる程のリストとはいったいなんなのだろうか?

 

「…まあいいわ。ねえ、そっちにネルガルの新造戦艦が駐留してるわよね」

「あーナデシコですか? 何だか知りませんが居ますよ?」

「それはこっちから軍に手を回して呼び寄せたのよ。折角の面白い見世物、観客は多い方がいいじゃない?」

「どうりで使用人連中がまとめて休暇を取った訳だ…いったい何をする気ですかシャロンさん」

「楽しいことよ。あ、一応言っておくけど巻き込まれたくなかったらアクアを連れてさっさとそこを離れることね」

「またそんな自分勝手な…いい加減にしないと私も黙っていませんよ?」

「へぇ、いい度胸じゃない。私にたて突く気?」

「事と次第によってはね」

「面白冗談だこと。ま、やれるだけやってみなさい」

「へいへい、言われんでもなんとかしますよ」

「ふん…まあ、私のリストに載ったことがあなたとアクアの運の尽きね。それじゃせいぜい頑張ってね」

「やれやれ、これは困ったことになったな…」

 

通信が切れた画面を呆然と見つめ佇むカズマ。

 

「おーミコト見てみぃ! この虫、おかしな形やなぁ!」

「…コク」

 

そんな親の心 子知らず。

お子様2人はのん気だった。

 

 

 

 

 

 

 

「さあアキトさん、今こそ2人の愛を永遠に誓いましょう」

「近い魔性?」

「…それでもいいならそうしますが?」

「いや、どちらも断る」

「ふふ…『一目会ったその時から恋の花咲く事もある』世間一般では言いますし、もう止まりません。では…」

「人の話を聞け〜〜〜!!」

「もう、何が不満なんですか?」

「不満だらけだ!」

「何故ですか? 私と一緒になれば不自由な暮らしはもうしなくていいのですよ? 

 あんな戦艦に乗って命を危険に晒すこともなくなります。それとも…私に魅力が無いのでしょうか?」

 

上目遣いでアキトを見つめるアクア。

これは流石に効果絶大。

ちょっと気圧され気味のアキトだが、そこはなんとか踏みとどまり反論する。

 

「バ、バカモノ! 金でモノは買えても愛は買えんぞ!

 ナデシコにはオレが乗りたいから乗っていると思いたい訳だし。

 それに魅力? そんなもん一緒にいれば後からついてくるわい!!」

「まあ♪ それでは私と一緒にいてくれるんですね? 嬉しい!」

「あうぁ!? すみません訂正します! 一緒にいても未来永劫わかりそうにありませんっ!」

「そ、そんな…未来永劫 片時も離れずに居てくださるなんて…私は幸せ者です…」

「おーい、勝手に脳内変換するなー」

「では愛の語らいはこの辺にして…」

 

一通り会話が終了するとアクアは近くにあった引き出しからある物をとりだした。

そしてそれをアキトに見せ付けながら一歩一歩近づいて行く。

 

「…なあ、ソレを今すぐ片付けてくださった暁には全人類から高評価を得るに違いないとオレの中で演説されているんですが、

 何ゆえそんなものを持ち出しますかな? ギャグ?」

「だって何事も最初が肝心ですし♪」

「………………………いやーーっ! 勘弁してーーーっ!!」

 

アキトがジタバタもがきながら逃げようとしたその時、

ソレはやってきた。

 

 

 

 

 

ズドゴォォォォォォォン!!!

 

 

 

 

 

 

「な、何事ですか!?」

「何かが落ちてきたみたいですね」

「あれは…チューリップ?」

『チューリップ!?』

 

突然の出来事に我に変えるナデシコクルー。

流石に半分死体となっていた面々も復活し即座にナデシコへ乗船を開始する。

そしてそれはこちらでも同じこと――

 

「さあアキトさん。コレをはめれば万事解決ですよ?」

「…おい、アクのお嬢。さっきの轟音聞こえなかったのか?」

「どのような事も今の私達を止める事は出来ませんっ」

 

――ではないようだ。

チューリップなんてなんのその、キッパリ言い切りアキトに迫るアクア。

だがそれでも邪魔は入るもの。

 

「アクア嬢大変だ! ジャングルにチューリップが…って、なにやってんだお前等?」

「おお、何故か用意してあった婚約指輪の強制交換中だ。

 助けてくれたらオレの秘蔵品の1つをやらんこともないぞ? と言うか助けろ」

「…婚約というよりは困惑って感じだな」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

 

「さあ、アクのお嬢! とりあえず非難しようか!」

「そうですね、ここで2人共々 炎の中で永遠に結ばれるというのも捨てがたいですが先ずは互いの心を1つにですね!」

「アクア姉ちゃん、よーわからん」

「…コク」

 

そしてアキト達は部屋を飛び出していく。

カズマを1人残して。

 

「…紙一重だったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「状況はどうなっていますか?」

「ああ、今のところ特に異常なしだ」

「こっちもだね。チューリップが落ちてきたお陰でそこらは壊滅しちゃってるけど例のお嬢様が居そうな屋敷には被害は及んでいないみたいだよ」

 

すぐさま帰還したと同時にエステ隊を発進し、落ちてきたチューリップの調査を行うナデシコ。

だが動く気配が未だ無いようで周りを巡回するのみのようだ。

しかし事が事だったのかすぐさま行動を開始してしまった為 全員水着姿で仕事をしていた。

凄まじい違和感である。

 

「そういえばアキトとの連絡取れました?」

「いえ、未だ音信不通です」

「アキト大丈夫かな…」

「大丈夫よユキナちゃん。前みたいな極寒じゃないから少なくとも凍え死んだりはしてないわよ」

「そうですな。あの屋敷が無事ならばほぼ大丈夫でしょう。テンカワさん達はあそこを目指していた筈ですから」

「でもアキトって方向音痴だし」

『…』

 

ミナトとプロスの励ましもユキナの呟きで無意味なものと化した。

かなりブルーな空気がブリッジに漂う。

 

ポロロ〜ン♪

「こちらマキ・イズミ。何処にいてもマキ・イズミ。でもあそこだけは勘弁だ〜…くっくっく」

「…イズミさん、何か?」

ポロン♪

「テンカワ君はっけ〜ん。ついでに目標の令嬢も一緒みたいね…」

「本当ですか!? ルリちゃん、映像出せる?」

「…はい」

 

ルリがコンソールを操作しブリッジ中央に映像が映し出される。

そこに映っているのは紛れもなくテンカワ・アキト。

だが映像に映ったのは緊張感の欠片も無い姿だった。

 

「だぁー! 何故おぶさる!?」

「だって、私そんなに早く走れませんし…それにそろそろお薬を飲まないと魂が抜けそうな気が…」

「なにぉぉぉぉ!? おい、あの緑色のヘンチキな医者は何処に行った!?」

「とーちゃんか? う〜ん、まあ気が向いたら出てくるやろ」

「…コク」

「今すぐ出てこんかぁぁぁぁぁっ!!!」

 

とにかく色々混乱した映像がナデシコのブリッジに流れる。

暫く沈黙が続いたが何とか復活を果たしたプロスがクルーをけしかける。

 

「あーもうあっちはほおっておきましょう」

「そうですね。無事みたいだし」

「アキト〜また女なの〜? いい加減にしないと怒るよぉ?」

「ぬぅ!? ハテナ、見ていたのか!?」

「まあまあユキナちゃん、その辺は後でたっぷり問いただせばいいわよ」

「そうそう。アキト君、ご愁傷さま」

「あら、アキトさんこの方々はいったい…?」

 

コミュニケを通じて緊張感の全く無い会話をする横で落ちてきたチューリップの口が開きだす。

そして開ききったチューリップから出てきたのはアキト達には見覚えのあるモノだった。

 

「「「あ」」」

「…あ」

 

「ん?どうしたんだいレンナ君にユキナ君、ラピス君も。おや、テンカワ君も固まってるね…アレを知っているのかい?」

「間違いない、アレだ」

「うん、アレね」

「アレだね」

「アレ」

「アレ? アレって?」

 

4人のアレ発言に疑問の声を上げるユリカ。

そしてそのアレはゆっくりとその全貌を現す。

そう、アレは木連脱出時に出てきた巨大無人兵器。

 

 

「「「主バッタ」」」

「…でっかいバッタ」

 

 

「ぬ、主バッタ?」

「な、何だそりゃあ?」

「ただの大きいバッタじゃないのぉ?」

ペロロン♪

「ちょっと硬いわねこのお肉。そりゃ、筋張った肉だからね…ぷっ…くくくっ」

 

ばびゅぅぅぅぅぅぅぅぅ…

 

『…』

 

最高潮に達していた緊張感は一気に霧散した。

マキ・イズミ、恐るべし。

 

「まあ、それはさて置き、何でアレがここに?」

「さ、さあ?」

「…あ、まさか」

「もしかして…」

 

レンナとラピスが何か思い付いたその時、主バッタの背中に人影が現れた。

勿論それは木連脱出時に最後の砦となった人物。

 

 

「「「ああーっ!」」」

「…あー」

 

 

 

「くっくっくっ…やっと会えたな…」

 

 

 

「おやおや、もしかして知り合いかい?」

「アキト〜アレ何〜? 生物?」

「ああ、アイツはまさしく」

「うん、間違いないね」

「あの時2等身で現れた」

「えっと…」

 

 

 

 

 

「「「トカゲ男!!!」」」

 

「…変な顔」

 

 

 

 

 

 

「我の名は北辰だと言っておろうが!!」

 

 

 

SD北辰、再登場である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキト…とアクア、そして北辰の運命はどっちだ!?続くような続かないような思わなくも無きにしも非ず。

 

あとがきです。

こんにちは、彼の狽ナす。

そんな訳でリクエストがあったSD北辰&主バッタ再登場です(爆)

今回はアクアは暴走するわオリキャラは登場するわでもう大変でした(汗)

前回言っていたアクアの設定、そして今回登場したモトギ親子の設定は人物設定集をご覧ください。

だいたいこんな感じというのが伝わってくるかと思います。

 

またオリキャラを提供してくださったやんやんさん、ありがとうございます。

多少のアレンジはしましたが軸は残っていますのでw

 

とにかく次回に続く!

ではっ

 

 

 

 

代理人の感想

SDのまんまかいっ!

 

まぁそっちのほうが面白いからいいんですが(なら突っ込むな)

 

>「やっぱり嘘だったのか」

断定できなかったってことは心当たりはあるって事かね?(爆)

しかし、アキト18歳でこの大きさの子供ということは小学生のときに作ったってことになるなぁ(連爆)。

それでも断定できなかったってことはひょっとして本当に心当たりが?(核爆)