ビー! ビー! ビー!

【緊急警報! 緊急警報!】

 

突如コスモス内に鳴り響く非常音。

途端にクルーの表情が引き締まる。

 

「何事です!?」

「月基地周辺に木星蜥蜴と思われる機影出現! コスモスに出動要請が来ています!」

「もうっ! 折角アキト様との愛が溢れる時間を過ごしていましたのに!

 仕方ありませんわね…ホウショウ、戦闘配置へ移行! ワタクシもすぐにブリッジへ向かいます!」

「了解!」

「アキト様、申し訳ありませんがカグヤは一旦戻ります。

 ですがそう時間は掛かりませんので待っていてくださいね?

 ふふふ…ワタクシとアキト様の時間を邪魔する輩は、例え相手が世界であろうと抹殺します!

 行きますわよ〜っ!

 

物騒な事を言いながら意気揚揚とブリッジへ走り去ってゆくカグヤ。

だがアキトからの労いの言葉は無かった。

 

「おーい、アキトさーん、大丈夫ー?」

「おいおい、アキ坊のやつ、物を食いながら白目剥いてるぞ」

「よっぽど『あーん♪』攻撃が効いたんだろうねぇ…」

 

「………………」

 

この時ばかりは『木星蜥蜴さんアリガトウ』とアキトは心の中で何度も感謝していた。

もし敵が現れるのが後、数分遅かったら間違いなく発狂していただろう。

運のいい奴である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の3号機

その41

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その娘をこちらに渡せ! 渡してもとりあえず一発殴るがな! つーか蹴る! 絞める! 打ちのめす!

「警備の人達はお寝んね中よ。呼んでも無駄だから観念しなさい」

「はっはっは、俺が作ったガスは強力だぞ。数時間は目覚めねえ筈だから風邪をひかないようにちゃーんと毛布かけてやれよ?」

 

5色のアフロを振りかざし、北辰と山崎に向かい指を突きつけるアフレンジャー。

一見かっこ良さげだが、どうにも違和感がある。

 

「くっ、また出ましたね!」

「また!? よく出るのか!?」

「ええ、先日は訪問販売にいらっしゃいましたよ」

「何を売りつける気だ!?」

 

アフレンジャーはどうも常連さんらしい。

 

「まあそれはそれとして…で、アフレンジャーさん。今回は一体何用ですか? 健康食品なら間に合ってますよ?」

「知れたことですね! か弱くも美しき女の子に不埒な行いをするところだったではありませんか!」

「そうですわよ! この目でしかと見届けましたわ!」

「…だったら見てないでさっさと出てくればいいのに」

 

『………』

 

痛い沈黙が下りる。

 

「ふ、ふふふ…まあそこはヒーローのお約束というやつで…と、とにかくだ、その娘を放せ!」

「だそうですが…ラピスさん、あの方々について行きますか?」

「怪しいから、

「なにぃ!?」

 

レッドAは驚愕に打ちひしがれた。

心なしか赤いアフロもしおれている。

 

「くぅ…い…いいツッコミだお嬢さん!

「さっきのはツッコミか?」

「さあ?」

 

思わずヒソヒソ話をしてしまう北辰と山崎。

レッドA、かなりいっぱいいっぱいだ。

 

「おのれどうしたら!?」

「落ち着きなさいよレッドA」

「まったくですわ。さて…と、あなた達、ここはおとなしく言うことを聞きさない。

 そうすれば、これ以上は何もしませんわ。ええ、全く、これっぽっちも。

 まあ、ちょっと艦を粉微塵に爆破するかもしれませんが♪」

 

突然物騒な話をするピンクA。

とてもヒーローのセリフとは思えない発言だ。

もしかしたらピンクAはこの中で一番の危険人物かもしれない。

 

「…それは問答無用で皆殺しと解釈していいのだな?」

「おいおい、それは誤解だぞ。ただ艦を爆破するだけだ。

 ほらよく言うだろう? 金の切れ目が緑の切れ目って。

 ちなみにだぞ。じゃないからな。そこの所、間違えるなよ」

「今の状況にその言葉は関係あるのか?」

「さあ? 美しさを共有できるのなら理解出来るのかもしれませんがね」

 

さっぱり会話が成り立たない。

いつもこんな状態なのだろうか。

 

「やれやれ、仕方ありませんね。邪魔をするというのなら北辰さんが容赦しませんよ。そうですよね、北辰さん?」

「貴様は自分でなんとかしようと思わんのか…

 とにかくその通りだ。もっともここに忍びこんだ時点で貴様らは死すべき運命にあるがな」

「あっはっはっは! こいつは大笑いだぜ泣かせるな!

『どっちだよ』

 

思わず全員でツッコミだ。

 

「なんだぁ? 俺達は死亡確定だとぉ? はっ、つまりは永遠に寝てろよゲス共ってことか?

 よーし、よく言った。ならば…建前なぞいらぬわ! 俺に必要なのは愛のリビドーだけだ! 張り倒される覚悟は俺らにあるのか!?」

 

ゲスッ

 

「もういいからレッドAは黙ってて」

「…おう」

 

情けない声を出すレッドA。

そんなやりとりが行われる光景を傍目で見ていたラピスは何かに気付いた。

どこかで見たことがあるようなやり取りなのだろう、その証拠にアフレンジャーを驚きの目で見ている。

 

「…あ」

「おや、ラピスさんどうかしましたか?」

「もしかして…」

「はい?」

「パパにママ、それとナルシーに、緑な医者に、

 あきとおにーちゃんと心中しようとした危険度ランクSの女の人?」

 

1話で正体がバレバレだ。

 

『………』

 

またもアフレンジャーに痛い沈黙が下りる。

 

「何!? そうなのか!?」

「おやおや、これはまた千客万来という所でしょうか」

 

どうやらこの2人は本気で気付いていなかったようだ。

 

「は…はははっ、す、すまないなお嬢さん。確かに俺はそのステキ紳士に似ているかもしれない…

 しかし、残念ながら人違いだ!  むしろ別人! ある意味核弾頭だ!!

 私の名はアフロ超人・レッドA!

「私の名は専属マネージャー・ブルーF!

「美しき私はメイク専門・イエローL!

「俺は衣装担当・グリーンE!

「最後に登場、振り付け及び台本及び監督を勤め上げるピンクR!

 

 

 

 

『A・F・L・E・R…アフラー!』

 

 

 

 

『我等、アフラー支援団体・アフロ組!』

 

 

 

 

『参上!』

 

 

 

チュドドォン!!!!!

 

 

またも起こる5色の爆発。

アフロが爆風になびく。

 

「名前変わってる」

 

だがラピスは冷静だ。

そして苦し紛れの言い訳をするアフレンジャー。

カッコイイポーズをしたところで、体はプルプル震え、冷や汗を掻くその姿は情けなさ倍増。

明らかに動揺している。

 

「なんだ、違うのか」

「いや〜結局、誰なんでしょうねぇ」

 

なんと北辰と山崎は全く疑いを持たずにアフレンジャーの言い訳を信じてしまった。

この2人、近いうちに絶対サギにあうことだろう。

 

「…じー」

 

ラピスはそんな言葉に耳を貸さず、未だアフレンジャーを凝視している。

それがかなりのプレッシャーなのか、アフレンジャーの後頭部にはでっかい汗が付いていた。

 

「ふん…まあこの際、貴様等の正体など知ったことではない。

 要は貴様等を消せばいいだけのこと…」

 

気まずい雰囲気に対し、北辰は気を落ち着かせ冷静に対処する。

数々の修羅場をくぐり抜けた経験が活かされているのだろう。

どのような場面でこんな状況に立ち会ったのかは不明だが。

 

「おや、悪あがきですか? 美しくないですね」

「ほざいていろ…そこに居るな六人衆。遠慮はいらぬ、奴らを滅せよ!」

 

かっこよくマントをなびかせ、背後にいる筈の六人衆に呼びかける。

咄嗟に身構えるアフレンジャー。

そしてのん気に茶をすする山崎に、お茶菓子をつまみながらアフレンジャーを見つめるラピス。

場面は一部を除いて緊迫して行く。

 

「あーすみません隊長」

「…は?」

 

だが北辰の間抜けな声で緊張感は一気に霧散してしまった。

 

「何を言っている!? さっさと奴等を殺らんか!」

「今良いところなんです。だからダメです」

「い、いいところ?」

「はい…お、我の番だな…よ…1、2、3…よし! 専用の機体を頂いたぞ!」

「くっ…やるな。我なぞまだ下っ端だぞ?」

「ふっふっふっ、だが我には敵うまい。なにせこちらはナナコさんを頂いているからな」

「甘いわ。我は研究所を建設中だぞ? すぐにナナコさんもついてくるわ」

「ふん、甘いのは貴様等だ。我はジョーの形見を所有しているのだぞ? これ以上の物があるか」

「頼みます。次に4が出れば我はトップでゴールできるのです…!」

 

六人衆は人生ゲーム(ゲキガンガー編)の真っ最中だった。

 

「…………主バッタ」

 

ガションッ

 

ぷちっ

 

六人衆はゲームではなく現実で終焉を迎えてしまった。

 

「北辰さん、まだ主バッタと一緒だったんですか?」

「ふ…愛着が沸いてしまってな。今では良き相棒よ」

「はぁ…でも艦内で歩きまわられると後始末が大変なんですが…」

「気にするな」

『あの〜』

「「はい?」」

『そろそろいいかな?』

「おお、そうだったそうだった…では最初からということで」

「うむ……さあ、その子を離せ! 抵抗しなければ痛い目にはあわないぞ?」

「そうよ、今見過ごせば根性焼き程度にしてあげるわ!」

 

背後のスプラッタな情景を見ないようにして話を進める一同。

いい根性をしている。

 

「やれやれ、こうなったら…北辰さん」

「なんだ?」

「ええ、ようやく元に戻ったんですからリハビリついでにあの方々の始末をお願いできますか?」

「何? …まあいいだろう。元よりそのつもりだからな。

 山崎、ラピスはお前に託す。こいつ等の相手は我と主バッタに任せておけ」

「わかりました。ですが、折角ですので僕も協力しますよ」

「貴様がか? 止めておけ、素人が居ても邪魔なだけだ」

「いえ、僕は特になにもしませんよ。ただ北辰さんの協力をするだけです」

「…どういう意味だ?」

「言ったじゃないですか、『リハビリついで』って」

「何?」

「話はもういいか!? 今、天啓が下りた! お前らキルユー!!」

 

レッドAの声と共に颯爽と駆け出すアフレンジャー。

途端、北辰も身構え戦闘態勢をとる。

 

「こちらも負けていられないね! 行けトカゲ怪人!」

「誰がトカゲ怪人だ! ん? な、なんだ身体が勝手に…!?」

「いや〜ただ元に戻すのもつまらないですからリモコンで操れるようにしてみました♪

 

 

 

 

「山崎━━━━━━━━━っ!!!」

 

 

 

 

北辰の声が響き渡る木連の艦。

今、決戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、そこのー」

「…え?」

 

激しい戦いを見守っていたラピスに、どこからともなく声が掛けられる。

それはまだ幼い少女の声だった。

 

「…誰?」

「ウチラはな…のエンゼルちゃんや〜!

「…コク」

「へ?」

 

ラピスの前に突如として現れた2人のお子様は、金色と銀色の服で全身を包み、

頭に輪っかを乗せ、背中に羽根を生やしていた。

ついでに弓矢も持っている。

 

「そのエンゼルが何か用?」

「な〜に言ってんのや! ほら、早よう逃げるで!」

「…コクコク」

「え? え?」

 

何かもわからぬまま問答無用で手を引かれるラピス。

戦闘のどさくさに紛れて、ラピスゲットだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「状況は!?」

「遅いぞ艦長」

「本当です。それとカグヤ様、いったいアキトさんとどこまで行ったんですか? 気になりますね〜」

「ポッ…そんなこと言えませんわ……ちょっと食堂までですけど」

「言ってる上に何か間違ってるわね」

「はぅ…アキト君かわいそう…」

「って、そんなことより状況は!」

「はい。基地に敵が出ました」

「省略しすぎです!」

 

非常時なのでエマのはしょり状況説明、発動である。

 

「俺が報告しよう。まず月基地周辺に木星蜥蜴の無人兵器が多数出現。

 基地の残留部隊が迎撃に向かった。

 だが運の悪いことに月基地、ネルガル所有の区に木星蜥蜴と思われる機動兵器が先程出現した。

 おそらくタイミングを見計らっての登場だろうな。

 これは先日、地球でナデシコのエステ隊と一戦交えたモノと同型と考えていい。

 俺達の任務はそいつの迎撃だ。

 敵は一体のみだが、まだ増援も考えられる。油断するなよ艦長」

「わかりました…ハーリー君、コスモスの整備状況はどうなってます?」

「はい。コスモス動けません

 

『は?』

 

カグヤを含めたブリッジクルー、硬質化する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、この程度か? やはり地球の軍など恐るるに足らず!

 見ていろ九十九! 地球で散ったお前に代わり、この俺が任務を完遂してみせる!」

 

僅かに残っていた部隊を全滅させる程の破壊力を持つ機動兵器を操るのは、

木連にて九十九とバカコンビを結成していた片割れ、月臣元一朗。

あれから数ヶ月。

九十九は全然変わっていなかったが、この男は少々成長したようだ。

 

「俺は自分のナナコさんへの想い、そして我が友へのレクイエムを叫び、さらけ出そう!! 今、ここで!!」

 

そんなことをコクピット内で言い出す。

やはり全然変わっていないようだ。

しかも完全に九十九は死人扱いされる始末。

 

「さあ聞け! 俺の熱い魂の慟哭を…!」

 

ドゴォォン!

 

そんな語りは突如来襲したミサイルで幕を下ろされた。

 

「ぐ…な、何者だ! 俺の叫びを邪魔する愚か者は!」

「よー…イモ売りー…」

「うわっ、テンション低っ」

 

本日のアキトは、普段のテンションと比べると500分の1ほどだ。

 

「只今、心に深い傷をおったオレはスーパーブルーモードのため復旧のメドがたちそうにない。

 思考回路が完全にぶっ飛んでいるので戦闘どころではないのだ…。

 はぁ〜〜〜〜〜〜〜…なぁ、モノは相談だが」

「な、なんだ?」

「引いてくれ。今日のオレはマリアナ海溝よりふかぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜く、どん底なんだ。

 静かに溶けさせてくれ…」

「な、なにがあったか知らんが…そうおめおめと引き下がれるか! やる気が無いのなら貴様が帰れ!」

「じゃあそうさせてもらうわ…」

「本当に帰るな! そして俺の叫びを聞け!!」

「あーもーごちゃごちゃと…とりあえず叫びたいなら、どっか遠くでやってくれるか?

 へなちょこなお前の語りなんぞ聞きたくもないしな。

 どうしても叫びたいなら俺が1万キロくらい離れてからにしてくれ」

「…のヤロォ…! ん? というかお前はテンカワ・アキト! 何故お前が!?

 まさかここにユキナ達が居るのか!? おい、聞いているのか!?」

 

只今のアキト、かなりブルーになり体育座りをしながらコクピットでイジケ中。

それにシンクロして乗ってきたエステ(月面フレーム)も座り込む。

はっきり言って情けない。

 

「おのれはぁ…! ええい、ならば貴様を九十九の元へ送り、他のヤツから聞き出す!!」

「いや、変態の所はお断りだ」

 

その頃、ナデシコ某所にて、

『人権って何ですか?』

という呟きがあったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキト機被弾!」

「ああ!? アキト様ぁ!」

 

コスモスブリッジにて戦況を見守る面々。

整備がほとんど終わっていない状態で動けないコスモスは完全に張子の虎状態。

この状態ではどうにもならないという事で、唯一のパイロットであるアキトを出撃させようという案が出された。

勿論、カグヤは猛反対したが、クルー全員一致の可決によりカグヤの意見は無視。

そんな訳でアキトを無理矢理出撃をさせたのだ。

だが本日のアキト、普段よりテンション急下降のため完全に役立たず。

お陰で、戦況を見守るカグヤは叫びっぱなしである。

 

「カグヤ様! これ以上はアキトさんが危険です! 撤退命令を!」

「しかし今引けば月基地、それに居住区までも被害にあうことになるぞ!?」

「!!…た、大変です! 新たに敵機影確認! どうやら月面軍との交戦であぶれた木星蜥蜴の団体さんのようです!

 数は…軽く100を超えています!」

「ちょ、ちょっと、支援は無いの!?」

「既に全部出払っています!」

「…ああ無情…しくしく」

「………仕方ありません。こうなればアレを使わせてもらいます!」

『え?』

 

カグヤの言葉に思わず聞き返してしまったクルー一同。

だがそんな事をお構いなしにカグヤは命令を下す。

 

「ホウショウ! ワタクシ達は隣のドックへ移ります! 至急準備を!」

「え? ええ? ま、まさかカグヤ様!?」

「細かい話は後です! アキト様とついでに月基地のピンチなのですよ!? 今、アレを使わなくて何時使うのです!」

「月基地はついでなんですか!? し、しかし、アレを所有しているのは…」

「お黙りなさい! ええい、もういいです! ワタクシ1人でもやってみせますわ!」

「ちょ、ま、待ってください、カグヤ様ー! くっ…カオル、リサコ…覚悟、決めるわよ…?」

「ああ、付き合うよ…」

「うう…生きて帰れるかしら…」

「やれやれ、俺はここに残って戦況報告とテンカワに指示を出す。ハーリーも残れ、いいな?」

「は、はい!」

【よっし、ハーリー、頑張ろー!】

 

踊るウィンドウを傍目にカグヤを追い、ブリッジを跳び出してゆくカグヤガールズの面々。

カイオウとハーリー、アメノホヒはその背中を見守りながらネルガルのロゴ入り扇子をかざし、三三七拍子を送っていた。

 

 

 

 

 

 

「カグヤ様、八割です」

わかりません! 誰か代わりに説明して!」

「はい、いいですかー? 現在はねー? 全体の八割方しか出来てないのー、ごめんねー。

 だからケンカするのはちょっと無謀かなーとお姉さんは思うの。わかったかなー?」

「その教育番組のような説明は止めなさい!」

「はぅ…いいわ、私が説明するわよ。

 この艦はまだ80%ほどしか完成していないわ。

 でも未完成といっても飛ぶことは可能だし武器管制も使用も可能。

 未完成部分は専用のユニットをまだ搭載していないことと、

 ナデシコのオモイカネや、コスモスのアメノホヒのようなAIをまだ搭載していないということだけなんだけど、コレが1番の問題。

 つまり、マニュアルでしか動かせないわけ。

 ついでに言っとくけど、ネルガルのお偉いさんがさっきからギャーギャー煩く叫んでるわよ?

 どうするの、カグヤ艦長?」

「わかりました。動ければそれで十分です。それにネルガルとは契約は済んでいるから何を言われてもOKよ。

 ま、そんなに煩いのなら『現契約を破棄して明日香インダストリーを敵に回してもいいのか?』と電文をうってあげなさい!

 さあ行きますわよ…皆、覚悟は宜しくて?」

 

カグヤの言葉に一斉に頷くカグヤガールズ。

その目は決意に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第5艦隊はどうした!?」

「ほぼ壊滅状態! 包囲網突破されます!」

 

月基地司令部。

ここでは突如始まった木星蜥蜴の進行でてんやわんや。

あちこちで書類が崩れたり、お茶がこぼれたり、裸踊りをするなど混乱状態だ。

 

「たたたたた大変です! サラシナ参謀ーっ!」

「何事だ騒々しい! また木星蜥蜴の増援か!?」

「それどころじゃありません! コスモス艦長のカグヤ・オニキリマルが例の艦を持ち出しました!!」

「よし、晒せ! そして詫びろ!」

「晒す!? え? ちょっと!? 何、その貼り付け台!? しかも荒縄!? え? え? ええーっ!!?」

 

とにかく大混乱である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アキト様、今カグヤが参りますわ! ナデシコ級4番艦『シャクヤク』…発進!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長、月基地より入電。

 現在、月基地周辺と内部にて木星蜥蜴と交戦中。

 しかも内部に居るのは、前に出たアレと同型と思われる兵器です。

 なんとかエステバリスが踏ん張っているようですが、どうなるかわからないとの事。

 ナデシコに支援要請が来ています」

「ええ!? まさかその兵器って…プロスさん! あのシスコンは!?

 

九十九はナデシコ内でシスコンのレッテルを貼られてしまった。

事実なので仕方ないが、本人が『好きに呼べ!』と言ってしまったので今更撤回は不可能なのだ。

 

「ええ、現在は…」

「俺ならここにいる」

 

その声に反応し振り返れば、ブリッジ入り口に佇む男が1人。

それは紛れもなくシスコン男、白鳥九十九だった。

 

「ア、アンタ、どうやってあそこを抜け出したのよ!?」

「私は栄えある木連の兵士。アレ位の所などいつでも脱出可能ですよ。

 それで? 何か立て込んでいたようですが?」

「はい。今現在、月にて貴方が乗っていたモノと同型と思われる兵器と交戦中との連絡がありました。

 そこで聞かせてください。その兵器はもしかして…」

「か、艦長! そんなペラペラと情報を…!」

「まあまあエリナさん。ここは艦長に任せましょう」

「なるほど…状況は飲み込めました。

 間違いなく、それは私が乗ってきた艦から発進されたものでしょう。

 アレはまだ実験段階のモノですから建造されているのは2体のみなのです」

「ちょっとちょっとアンタ! それ本当なんでしょうね!?

 だいたい敵の筈なのになんでそんなペラペラ破竹の勢いで語りだすのよ? 怪しいわよ!」

 

エリナの疑惑に九十九は真剣な表情で見返した。

とても妹の前で顔から汁を噴出させ、土下座をしたヤツと同一人物だとは思えない。

 

「嘘ではありません!」

「ほぉ、それならば証拠でもあるのでしょうか?」

「ありませんが事実です!」

「…あのさ、なんで声を掛けるプロスさんが後ろに居るのに振り向かずに喋ってるの?」

「後ろなんか怖くて振り向ける筈ないでしょ!」

 

何故か魂の叫びだった。

余程凄いことをプロスにやられたのだろう。

既にトラウマと化しているようだ。

 

「しかし気になりますねぇ。何故、突然協力する気になったのですか?」

「…それは」

『それは?』

「ユキナがこの艦の一員だからです!」

『は?』

「この艦はユキナにとって地球での家も同然。

 ならば兄であるこの私にとっても家同然。

 ここまで言えば既におわかりでしょう…妹のユキナあるところに兄、白鳥九十九あり!

 そういうわけで、たった今から私とあなた達はお友達です。OK?」

 

この時、ナデシコクルーは一斉に同じことを考えた。

『この男、ただ者じゃない』と。

 

「なにをしているの! 月にテンカワ達が居るかもしれないんでしょ!?

 ボーっとしてないで急行しなさい!」

「へ? て、提督?」

 

気が付けば背後にムネタケが出現していた。

だがどこか雰囲気が違う。

 

「おお! ムネタケ殿!」

「白鳥君! 話は聞いたわ。アナタは今、この瞬間ナデシコの一員よ!」

「ハッ! この白鳥九十九、誠心誠意、頑張らせて頂きます!」

「頼むわね! さあ行くわよ! 正義の名の下に今こそ熱き魂をぶつけるのよ!」

「お任せを、ムネタケ殿!」

「私の燃える魂こそ正に生きる源!!」

「何人もこの理を壊すことできません!!」

「白鳥君!」

「ムネタケ殿!」

「「レッツ! ゲキガイン!!」」

 

なんとムネタケは九十九と一緒に居たことで熱血に毒されてしまった。

無論、そんな光景を見たものだからクルーは唖然呆然。

ついでにオモイカネも停止だ。

 

「ちょっと待てぇぇぇぇっ!! ゲキガンガーのことなら、このダイゴウジ・ガイを省くんじゃねぇ!

 2人だけで盛り上がるなんざ神が許しても俺が許さん!!」

「勿論よガイ。アナタも仲間よ」

「さあ手を取り合おうじゃないか。今こそ我等の結束を高める時!」

 

熱血が3人に増殖。

ブリッジの温度が軽く2度は上昇した。

 

 

 

「「「わっはっはっはっはっはっは!!!」」」

 

 

 

先行き不安である。

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに…妹もいいわよね!」

「ええ、最高です!」

「そこに関してはノーサンキューだ」

 

いらない部分まで毒されたムネタケだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実はなジブンにお願いがあんねん」

「お願い? …なに?」

 

こちらは現在、木連の艦内を逃走中のお子様3人。

警備の兵の殆どはアフレンジャーの手によって眠らされているので余裕だ。

そんな状況なのか、自称『金のエンゼル』がラピスに話しかけてきた。

 

「あのな、ある人に会ったらこう伝えて欲しいんや。『うち等はここにおる』ってな」

「それだけ?」

「…コク」

 

自称『銀のエンゼル』がその通りと首を縦に振る。

思わず首を傾けてしまったラピスだが、その子の目があまりにも真剣だったので自分も銀のエンゼルと同様に首を縦に振った。

 

「…わかった」

「ありがとな」

「で、その人って名前は?」

「ああ…それはな…」

「ほっほっほ、こっちじゃこっち」

 

金のエンゼルが名前を言おうとしたその時、前方より声が掛けられた。

その声の主は手招きをする黒い人影。

よくよく近づいてみれば、その人物の格好は先ほど現れた5人組とタメを張れる程、奇特な姿をしているのが見てとれる。

 

「…だれ?」

 

多少の警戒をしながら横にいる金のエンゼルに尋ねるラピス。

だが金のエンゼルは笑い顔のままだ。

 

「うちらの仲間や!」

「どうやら無事のようじゃのう」

「当たり前や! 見くびるんやないで?」

「ほっほっほっ、これはすまなかったな。…お? なにかなお嬢さん」

 

ジッと見られているのに気付いたのか、謎の人物がラピスに話し掛ける。

 

「…本当に仲間?」

「別に怪しい者ではないぞ? ちょっとバイザーで顔を隠したアフロな黒いおやっさんじゃ」

「…」

 

十分怪しかった。

ちなみにアフレンジャーと金、銀のエンゼルもそれぞれバイザーで顔を隠している。

 

「そうじゃな、ワシのことは『黒いおじーさま』とでも呼んでくれ」

「『黒いおじーさま』?」

「ふぉっふぉっふぉっ。さて、お喋りはおしまいじゃよ。すまんがな、色々あって一緒に連れては行けんのじゃ。

 君は先にこれでここを脱出するがよい」

「え?」

 

謎の人物の後ろには脱出用のポットが鎮座していた。

出発するのを今か今かと待っているように見える。

 

「ある程度時間が経つと救難信号を発するようになっておる。さあ乗り込むんじゃ」

「早くせな! いつ警備の奴らが目を覚ますかわからんで!」

「…コク」

「みんなはどうするの?」

「ワシらの事なら心配せんでいい。こう見えても結構強いんじゃぞ?」

「そうやそうや! だから早よ逃げ!」

「…コクコクッ」

「うん…あ、忘れてた」

「なんや?」

「私の他に、もう1人ここに捕まってるの」

「なんじゃと?」

「だから…」

「まかせとき! そいつもうちらが助け出したる!」

「…コクコク」

「ありがとう」

「ほれほれ、もう行きなされ」

「ラピス! 約束忘れんでな〜!」

「うん…!」

 

返事をすると、ラピスは脱出ポットの乗り込み、艦を離脱した。

その光景を何時までも見つる3人。

だがここで金のエンゼルが重大のことに気付く。

 

「あ〜〜〜〜〜〜! 約束の相手の名前言うの忘れとったぁぁっ!!!」

「…ガクッ」

「なんじゃ?」

 

後の祭だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ、へへ…やるな…」

「ええ、そちらこそ相変わらずの実力ですね」

 

場面は変わり、何故か疲れきったアフレンジャーとボロボロの北辰、そしてリモコンを持つ山崎が居る研究室だ。

未だ戦いは終わっていない。

ラピスが既にいないことに気付かずに。

 

「ふっふっふ、ですが北辰さんの実力はこんなもんじゃないですよ?

 さあGOです!」

 

山崎がリモコンを操作すると北辰は凄い勢いで突進を始めた。

だが当の北辰は全くの無反応。

どうやら気を失っているようだ。

 

「くそっ、このままじゃ埒が明かないな! グリーンA! 何か必殺の薬品は無いのか!?」

「さっきの攻防で大概使い果たしちまったよ!」

「ちなみに私の美しき薔薇爆弾も残り少ないです」

「あらあら、困りましたわね」

「とりあえず私の愛車で轢いとくわ

 

ゴシャッ!

 

北辰、真っ赤に咲く。

要回復薬だ。

 

「ふっふっふ、まだまだですね。

 北辰さんはこの程度では殺られませんよ?」

「や…ま…さ……きぃ…き…さまぁ……」

「再度GO!!」

 

北辰の呟きなど無視して操りまくる山崎。

既にゾンビ状態の北辰の安否が気遣われるところだ。

 

「ちぃっ、こうなれば最後の手段だ! お前ら、行くぞ!」

「「「「了解!」」」」

 

声が重なりあったと同時にアフレンジャーが光り輝きだした。

 

「な、何事ですか!? 直射光は目に悪いんですよ!?」

「…山崎、我を盾にするな…」

 

動揺する2人を差し置いてアフレンジャーの最後の手段が飛び出す。

 

 

 

『真・バトルモードにチェェェェンジ!』

 

 

シュパァァァァァン!!!!!

 

 

光が収まると同時に上がる高らかな笑い声。

 

 

『わはははははは!!』

 

 

そして、五色の影。

 

 

 

 

『スーパーウルトラミラクルヒーロー! アフレンジャーっ、推参!!』

 

 

 

 

ズバァァン!!!!!

 

 

 

どうやらパワーアップしたようだ。

何気に爆発音もアレンジされている。

 

「こ、これは侮れませんね! いったいどのようなパワーアップを!?」

「はっはっは、知りたいか? そうかそうか、それはそうだろう。

 いーか、よく聞け? 俺達の進化した力、それは…」

「それは…」

「…! …!」

 

喉を鳴らし、次の言葉を待つ。

北辰は光に目をやられ悶絶中。

そしてアフレンジャーは予想だにしない答えを返してきた。

 

「名前の最後に『っ』がついた!」

「…他には?」

「アフロ、1.5倍増量!」

「……他は?」

「腰のくびれが良くなる!」

「………で?」

「次もリクエスト宜しく!」

「…………」

 

それを聞いた山崎、思わず膝を付く。

 

「敵わない…」

「待ておい! 何故そうなる!?」

 

ようやく復活した北辰。

思わず突っ込むが、山崎はうな垂れたまま。

しかし北辰はさっきまでのダメージが今は全く無いようだ。

もはや人間の領域を超えている。

 

「こりゃしめた! 今の内に終わらせるぞ!」

「「「「おう!」」」」

「ボランティア活動は疲れるな!」

「「「「そうだね!」」」」

 

それを見るや否や一斉に飛び掛るアフレンジャー。

しかしこの仕事、ボランティアで行っているようだ。

別の仕事は無かったのだろうか。

 

「ちっ…!」

 

北辰は駆け寄ってくるアフレンジャーに思わず身構えるが、既に5人の影は目の前だ。

 

「うわぁぁぁぁ〜…なーんてね♪」

 

ポチッ

 

「ぐあっ!?」

 

「なに!?」

「あら?」

「なんと!」

「なんだ!?」

「あらら〜」

 

イタズラっ子の笑みを浮かべる山崎がリモコンのドクロスイッチを押した瞬間、北辰が突如として苦しみだした。

うずくまったその背中が異様に蠢きだす。

 

 

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛━━━━━━っっ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ウゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾッ!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

「「「「「うぎゃあああああああああああ!!!!!!!!!!!」」」」」

 

 

 

 

木連の艦内に今度はアフレンジャーの遺伝子レベル悲鳴が木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドドドドドドドドッ!!!!!!

 

「ん? なんや〜?」

「…?」

「むぅ、もしや警備兵が起きたか? まだもう1人を助け出していないのにのぅ」

 

突然響いてきた地響きに背後を振り向く黒いおじーさまと金と銀のエンゼル。

そして地響きを立てて現れたのは5色のアフロ。

 

「おや? 終わったんかの?」

「それどころじゃないですよぉぉぉぉっ!」

「は?」

 

レッドAの悲痛な叫びに思わず唖然とする黒いおじーさま。

 

「後ろを見ればわかります!」

「後ろ〜?」

「…?」

「いったい何………!!」

 

言われた通り後ろを見た瞬間、3人は一瞬にして凍りついた。

 

「ほら、シャイな僕らが次に取る行動は…?」

『逃げるのみ!』

 

全力で逃げ出す色とりどりの面々。

背後に迫るモノはゆっくりと追いすがってゆく。

 

 

 

 

元の研究室。

 

「あっはっはっはっは、ヴィクトリーですね♪」

 

そこには陽気に笑う山崎がいた。

何故か防護服を着て。

 

「…あら? ラピスさんがいませんね〜。

 参りました、どうやら既に連れ去られてしまいましたか…まあもう1人居ますし、別にいいか。

 う〜ん、今回は痛み分けですね…でも次は負けませんよ〜!

 この白衣に刺繍されている『生涯マッド』の文字は伊達ではありませんからねーっ! はっはっはっ!!」

 

異様に闘志を燃やす山崎。

数分後に現れた北辰にぶん殴られるとはまだ気付かずに。

 

ちなみにアフレンジャーと黒いおじーさまと金と銀のエンゼルが見たモノは、

絵にすると確実にモザイクがかかってしまう程のものなので表現不可能である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目覚めたオレは我が目を疑った。ここは正しく、あの時、あの場所だったからだ。

 そして感じる草の匂い、風の声、星の輝き。

 オレは…帰ってきた…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…つまりお前は何が言いたいんだ?」

「あーすまん、少々動揺してしまった。気にするな」

「全くだ。いきなり別の話が始まったのかと思ったぞ」

 

こちらも未だ決着がつかないアキトと月臣。

余程の激戦だったのか周囲は瓦礫の山。

だが、ちゃっかりアキトの気力は普段のレベルまで回復している。

不思議なヤツだ。

 

「しかし、おふざけもここまでだ! お前の機体はもうボロボロ、俺のダイマジンはまだ余力がある…更に…上を見てみろ!」

 

言われた通り上空を見上げれば無数のバッタやジョロの影。

後、数分もすれば一斉に飛び掛ってくることだろう。

 

「無人兵器がもうすぐココを制圧する! この勝負貰ったな!」

「イモ売り!」

「なんだ! と言うよりそのイモ売りっての止めろ!」

「聞いてくれ! オレは、オレはな…お前が約束してくれると信じてるんだよ!

 オレがいなくても1人で時計の電池を変える作業をこなすって! だから誓え! 約束するって誓え!」

「訳わからんし、だいたいそんなこといちいち誓うか!」

「だから誓え! 昔話風に!!」

「強制すんな! しかも余計わからん!!」

「何故わかってくれない! オレの考えが信じられないと!?」

「安心しろ! お前の感性は常軌を逸しているからな!」

「深く考えると悲しくなりそうなコメントをサンキュー!」

 

深く考えなくても明らかにバカにされている。

だがそんなバカに突如、勝利の女神は舞い降りた。

 

 

シュバァァァァァァッ!!!!!

 

 

「な…!」

 

一瞬で消え去った無人兵器に元一朗は驚愕の表情を作る。

そして姿を現すのは新しき白亜の艦、シャクヤク。

 

「アキト様〜! お待たせしましたわ〜!!」

 

勝利の女神と化したカグヤ登場だ。

アキトにとっては恐怖の女王様以外の何物でもないが。

 

「バカな…あれだけの軍勢が一瞬で!? くっ、先程の会話は時間稼ぎか…!!」

 

無人兵器の群れは、シャクヤクの大口径グラビティ・ブラストの一撃で一瞬にして全滅。

その威力を目の当たりにした瞬間だった。

 

「俺もここまでか…!」

「もうさがさないでください」

「なんでお前の方が追い込まれてるんだ!?」

「ふっ…燃えさかるロープを綱渡りする事なんていつものことだし」

「…イヤな人生だな」

 

月臣、親身になって同情する。

 

「ああ…! 全身寒気ゾクゾク!」

「そこまで嫌なのか…? アレに乗ってるヤツっていったい…」

 

再び上空に漂うシャクヤクに目を向け呆然とする元一朗。

だがその行為が命取りとなった。

 

ズゴォォォン!!

 

「ぬぁぁぁっ!!?」

 

突如のミサイル来襲。

月臣の機体は派手にぶっ飛び、近くの壁にめり込んだ。

ついでにアキトの機体も巻き込まれてめり込んでいる。

 

そして問答無用の命令を下すシャクヤクのブリッジ。

軽く小躍りをしそうな勢いの女、カグヤ・オニキリマルは満面の笑みを浮かべていた。

 

「よし! 命中ですわ! 次のミサイル用意!」

「し、しかしカグヤ様。あそこは月シェルターも近くにありますし、あまり大規模な攻撃は…」

「お黙りなさい! アキト様があそこまでやられて静観など出来ますか!」

「…さっきのミサイルでアキト君も一緒にぶっ飛ばしたような…」

「カオル、気にしちゃダメよ。それに満身創痍なんて、テンカワ君にとってはいつものことじゃない。ねえテンカワ君? …しくしく、かわいそうに」

「それもそうね」

 

酷い言い草だ。

そして続くカグヤの愛という名の暴走。

続くミサイル来襲に怯む元一朗の乗るダイマジン。

その攻撃は的確で余計な建物を壊さず、月臣の機体のみに命中させている。

普段はボケでもやるときはやるようだ。

 

「さあ、あと一息です! 一気に決めてしまいなさい!」

「よっし! これで終わり…!」

 

ッガァァァァァァン!!!!

 

カオルが最後の攻撃を仕掛けようとしたその時、轟音と共にシャクヤクの船体が大きく傾いた。

 

「くぅっ…! 何事ですか!?」

「か、格納庫付近に被弾!」

「はぅぅっ…こ、これは…さっきの無人兵器の残骸に隠れて木連の戦艦が居るわ。どうやらアレが攻撃してきたようね」

「なんですって!? どうして気付かなかったの!?」

 

カグヤの叱咤に答えたのは後頭部をポリポリかきつつ、テヘヘ笑いを浮かべる武器管制とオペレーターをこなす女。

 

「あー攻撃に夢中で、それ以外なーんにも見てなかった」

 

カオル・ムラサメその人だ。

 

「「この、すっとこどっこいっ!!」」

 

「しくしく…カオルのバカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキト…とラピス、そしてカグヤとカグヤガールズの運命はどっちだ!? 続くような続かないような思わなくも無きにしも非ず。

 

あとがきです。

こんにちは、彼の狽ナす。

 

え〜2回連続で、

 

 

ごめんなさい(土下座)

 

 

もう何がなにやら(汗)

いいのかなと思う今日この頃でした(爆)

 

今回の殉職者。

○六人衆

 

 

 

 

代理人の感想

死んだのかーっ!

まぁヤマサキがいるし、あれやらこれやらやるかもですが(爆)

 

 

 

 

後、取り合えずガイが妹に走らなかった事にはちょっぴり安堵してたり(笑)。