これはおそらくこれから起こりうるであろう未来のお話。

 

物語の舞台は今からおよそ10年後になる…予定。

 

あくまで予定予定である。

 

『予定は未定であって決定ではない』と何処かの生物が言っていたような気がするがそんなことはどうでもいい。

 

とにかく、興味がある方はご覧あれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の3号機 外伝

何処かの若夫婦騒動記

 

 

 

 

 

 

 

 

どがっしゃぁぁぁぁぁぁん!!!

破壊音が辺りに響き渡る。

毎度のことだが。

 

 

そして、その発生源たる場では…

ぎぅぅぅぅぅ!!

1人の女性が男を縛り上げていた。

 

「ふっふっふっ、アキトぉ?昨日は一体何処に行ってたのかぁ?折角の休日だったのに…私すっごく気になるなぁ?」

「ぐぉぉぉぉ…い、いやちょっとヤボ用という名の重要な密談があったりなかったり…」

「へぇ〜、私の事より大事な用事なんてあるんだぁ〜。ふ〜〜〜〜〜ん」

ぎぎゅぅぅぅぅぅぅっ!!!

ぐげぇぇぇぇぇっ!!わ、わかりましたぁ!しょ、正直に言います!じ、実は…!」

「実は?」

「じ、実は………息が…出来んの…よ……がくっ」

「あら…落ちちゃった」

普通死ぬぞ。

 

…とまあ、それはさて置き。

何処でもありそうな夫婦の日常会話を繰り広げるこの2人。

約10年後のアキトとユキナだったりする。

特にユキナは少女から大人へと変化を果たした姿であり、初めてあった頃は起伏がほとんど無かった身体も今はそれなりである。

この10年で大人の色気を獲得した、22歳の彼女がそこにいた。

ただしやっていることは昔と全く変わっていないのがたまにキズである。

で、結局この2人、あの後色々あって結ばれていたりするのだが…前途多難なのは何時もの事だと思ってほしい。

 

ちなみにユキナのアキトに対する呼び名だが当初は『まいだーりんだったらしいが、

そう呼ぶとアキトが正常に作動しなくなる為しぶしぶ呼び名をアキトに戻したとか。

 

 

「さて、どうせ3分くらいしたら目を覚ますだろうし…観察でもしますか…じろじろ」

ユキナの擬音を口にする癖、未だ健在のようである。

「しっかし何時見ても童顔だよね〜家の旦那様は。ふにふに」

アキトの青い顔をつんつん触りながらニヤケ顔のユキナ。

なんだかんだで結構惚れているようだ。

しかしアキト、10年経ってもあの頃と全然顔が変わっていなかったりする。

改造手術でも受けたのだろうか?

 

からんころ〜ん゛!

「は〜い、申し訳ありませんがまだ開店してませんよー…でも、このベル、何時聞いても違和感あるなぁ〜」

だったら設置するな。

 

 

さて、実はこの2人、喫茶店を開いていたりする。

当初は中華料理屋にするつもりだったらしいがなんとお隣さんも中華の店。

しかもそれがホウメイの店だと知り、顎が外れそうな勢いで驚いたとか。

そんな訳で急遽路線変更。

ユキナの案で、お隣は中華を中心に何でも出す店だから全然別方向でここはファンシーなお菓子屋さんにしようというのがあったらしいが

流石にアキトが待ったをかけ、どうにか喫茶店に落ち着いたらしい。

ホウメイの手伝いもあってなんとか開店、名を『喫茶・魂入(こんにゅう)』と言う。

…何か入れられそうで怖い。

 

 

「おはようございます」

「ユキナ、来た」

「あ、なぁ〜んだ、ルリにラピスかぁ」

 

ルリにラピス。この2人、現在お隣のホウメイの家でやっかいになっている。

当初はアキトとユキナの所に住む事になっていたらしいが流石に結婚生活を邪魔する訳にもいかずホウメイの承諾を得て現在に至る、という訳だ。

そして2人共、何故かここでウェイトレスのバイトをしていたりする。

その原因というかキッカケを作ったのはこのユキナだ。

ルリとラピスをある所から引き抜いたらしい。

ただその手段がかなり強引だった為、色々あったらしいが、その際ある強烈夫婦の支援が有りかなり楽に事が運んだと本人は言っている。

その際の詳細は未だに謎だ。


「何だはないんじゃないですか?就業時間前に来るのは常識ですよ?」

「まあそうだけど…でもまだ2時間前だよ?」

「…基本なんです」

そっぽを向きながらちょっと汗を掻くルリ。

「ホントは暇だったから冷やかしに来ただけ」

「ほほぉ…じぃーーーー」

ラピスが漏らした真実にジト目でルリを睨むユキナ。

しかし他にやる事無いのかこの2人。

「まあ、それもあるんですが」

「あ、開き直った」

「ちょっと副業の方をここでやろうかと思いまして」

「副業?アレまだやってたの?」

「ええ、結構楽しいですよ?ユキナさんもやります?」

「いい。頭痛くなるから」

「ユキナ勉強嫌いだもんね」

「ラピス、余計なこと言わなくていいの。ぺしぺし」

ラピスのツッコミにチョップでお返しをするユキナ。

この2人も当然未だ仲良し、と言うよりもう義理の姉妹だ。

「さあラピス、そんなおバカさんはほおっておいてやる事やっちゃいますよ」

「ルリ、もう今日は帰っていいよ。ちなみに明日から永遠に来なくていいよ」

「…今日も綺麗ですねユキナさん」

「セリフ棒読み」

「気のせいです」

何処かで聞いた事のあるような会話である。

 

「…ここに来る人ってみんなあきとおにーちゃん化してないかな?」

…そうか、喫茶の名はそこから来ているのか。

 

 

 

そんなこんなで時は過ぎ、もうじき開店時間である。

「…」

「…アキトさん、まだ寝てるんですか?いい加減に起きないともうすぐ開店ですよ?もしかしてそのまま接客する気ですか?」

「あ〜気にしないで。この人、時々こういう衝動に駆られるって寝言で言ってたから」

それは本意なのか?

「ホントはただ気絶してるだけ」

「もう、仕方ないなぁ…えい!」

ぐりぃ!

「!!…ぐほはぁぁぁ!!!?」

アキト、悶えながら床を転がる。

「感心ですね。マスター自ら床の掃除をするとは」

「…しかも全身で」

「流石は私の旦那様!感心感心」

そんな周りの発言など当然耳に入らないアキトは5分ほど悶えてようやく止まる。

「げほげほっ…はふぅ〜…ようやく落ち着いた」

「はい、お水」

「お、ハテナすまんな……ごくごく…って違う!」

「何?」

「何じゃない!何ださっきのは!?誰かを激しく思い出すぞ!」

「あーだってコレ、その誰かからの直伝だもん♪」

「納得です。こう、手刀の決め具合が中々イイ感じでした」

「うん、そっくり」

「全く…何教えてんだベ…」

ピーピーピー

「あ、アキトさん。待ってください」

「む、なんだノリ3世?しかもこの音は一体?」

「今、レンナさんの事をあだ名で言おうとしましたね?」

「おう、それがどうした?」

「先ほど大陸間弾道ミサイルにロックされたと報告が入りました。命が惜しければ何も言わずに静観していてください」

「…………………ヤツめ。それはもはやツッコミの域を脱しているぞ」

というより常に見張られているのか…。

 

「はいはい、とにかくもう開店の時間だよ。準備準備」

「そうですね」

「うん、わかった」

「…ミサイルに狙われながら仕事すんのか」

スリル満点である。

 

「はい、オープンっと」

ユキナが表に看板を出し、『喫茶・魂入』開店である。

 

からんころ〜ん゛!

どうやら早速お客のようだ。

独特のベルが鳴り開店と同時に客が入ってきた。

「やっほーアキトーっ!ユリカ、また来ちゃった〜♪」

「投げ!」

ぶんっ!

「うひゃぁぁぁぁぁっ!?

がちゃーん!

「うーわんわん!」

「きゃー!アキトー!カイトー!助けてー!!」

どこか遠くで犬と女性のおいかけっこが始まった。

 

「ふ〜危ない所だった」

「「「…」」」

ユキナの突然の所業に口をあんぐりと開けて呆然とするアキト、ルリ、ラピス。

と、そこへ。

「アキト様〜カグヤが参りましたわ〜♪」

「もういっちょ!」

ぶんっ!

「なんですのぉぉぉぉぉぉっ!?

がちゃーん!

「がるるるるる…ぐわぁぁぁ!」

「なんのー!」

どこかで猛獣と美女の格闘戦が始まった。

 

「やれやれ、木連式柔を体得しといて良かったよ」

「…ユキナさん」

「…ユキナ」

「ぐっじょぶ!!」

ユキナに呆れるルリとラピスであったがアキトは親指上げて満面の笑みだ。

 

ドドドドドドド…!!

ばぁん!…からんころーん゛!

「ユキナちゃん酷いじゃない!いきなりぶん投げるなんて!」

「そうですわ!玉のお肌に傷かついたらどうしてくれますの!?」

ユリカ、カグヤ帰還。

ちっ…帰ってきた…いや〜つい押し売りと勘違いしちゃって。あはははは」

何か言ったような気がするが、ユキナは笑って誤魔化した。


「もーう、気をつけてよね!ぷんぷん!」

で、元気一杯、10年前から全然変わっていないユリカと。

 

「全く、次やったらタダじゃすみませんわよ?」

ユキナを親の仇のように睨みつける明日香のご令嬢、カグヤである。

 

この2人、何時も暇さえあればここに入り浸っている迷惑もいいとこの常連なのだ。

 

「はいはい、ユリカさん、カグヤさんいらっしゃい。いつものですね?」

「うん!ルリちゃんそれでお願い!」

「ええ、ワタクシもそれで結構です」

「はい…アキトさん、三十路リーチの2人、いつものです」

「「余計な事言わない!!」」

どうやら気にしているらしい。

「そうですか?わかりました。では…行き遅れの2人いつものです」

「「もっとダメ!!」」

ルリ、遊んでいるな?

「はぁ〜…それにしてもあの2人、未だ未練たらたらだよね〜」

「うん、いっつもあきとおにーちゃんの事見てる」

「いい加減に諦めればいいのにね〜。そんなんだから未だに彼氏の1人も出来ずに今年で…」

「「今年で…何?」」

「う、ううん。なんでもない」

ユキナの1人事を話題の2人は当然聞き漏らす訳がなく、殺気をユキナにぶつけていた。

実は何かの達人なのだろうか?

「これでよし。ほい2人共、特製モーニングセット(活殺自在風味)ね」

「わーい!ありがとうアキト!」

「ふふ、アキト様の料理が食べられるなんて幸せですわ」

ちなみに『活殺自在』だが、読んで字の如く『生かすも殺すも思いのまま』という意味だ。

勿論この名は、

「たーんと召し上がれ2人共!」

ユキナが付けた。

一体どうなるのやら…。

 

「…あ!そういえばアキト!」

ひゅっ

さくっ

「…ハテナよ。呼ぶのは構わん。だが…フォークを投げるな!

「いや〜条件反射でつい…ぽりぽり」

「…ユキナ、相変わらずいい腕」

「…アキトさん、額にフォークが刺さっているのに元気ですね」

ちなみに流血もしている。

「まあ、それは置いといて…さっきの話の続き!昨日は一日中何処行ってたの!?」

「う…いやな、それは…」

「それは?ずい、ずい」

ユキナがをびゅんびゅん振り回しながらずいずい迫る!

フォークが刺さったアキト、再びピンチ!

 

からんころ〜ん゛!

そんな場面にまたも独特のベルが鳴る。

「やっほ〜」

「あ、ヒカルさん。いらっしゃい」

「いらっしゃい」

「や、ルリルリにラピス。さぁーてと、今日は…おーやってるねー」

「ええ、いつもの事ですが」

「うん、いつもの事」

「いやいや、あの2人のお陰でネタに苦労せずに済むからね♪テンカワ夫婦様様!」

「という事はまたネタに詰まったんですね?」

「また?」

「う゛…………あはははは、でもたまにだよ?たまに?今日はここで何かが起こるって受信してね?だから!うんうん」

「また電波ですか…」

これも未だ健在らしい。

「それで注文は?」

「あ、そうだね。じゃあ…このラピス特性ピーチケーキセットで」

「うん、わかった。…でもヒカル、朝からこんなもの食べてたらまた太るよ?」

「う゛う゛っ……ら、ラピス、最近ツッコミきついね〜」

「本当の事を言っただけ。じゃ準備してくる」

「ええ、お願いします」

すたすたと用意をする為に奥へ引っ込むラピス。

その際に当のテンカワ夫婦の横を通り過ぎたが全く目もくれない。

日調茶飯事の為、慣れてしまったようだ。

 

「はい、お待ちどう様」

「コーヒーはアメリカンでしたね」

「うん、ありがとー。おお、今日も美味しそうだね〜♪」

このラピスが作ったケーキ、実はここの名物だったりする。

何気にコレのお陰でここが維持されているらしい。

健気な妹である。

「うん。今日は上手く出来たと思う」

「そうですか。でも別にいいんですよ?適当に作っても

「わかった」

…そうでもないらしい。

 

で、お騒がせなテンカワ夫婦はと言うと…

「さあ、アキトぉ?正直に言えば吊るすだけで勘弁してあげるよ?ぎりぎり…!」

まだやっていた。

「いや、ハテナよ。そう言いながら鎖で締め付けるの止めてくれないか?流石に泣きそうだ…」

普通ならば骨の一本でも折れそうな勢いだがアキトは丈夫なのでその辺は問題無しである。

「ユキナちゃん!もうその辺で勘弁してあげてよ!」

「そうですわ!それではアキト様があまりにも不憫です!」

流石に助け舟を出すユリカとカグヤ。

だが抗議を上げる直前までモーニングセットを食べていたので口の周りがサラダのドレッシングで汚れていたりする。

勿論、迫力などといったものは皆無だ。

「大体ユキナちゃん酷いよ!私のアキトを縛るなんて!」

「全くですわ!ワタクシのアキト様を縛り、更に吊るすなんて言語道断!許しませんわよ!!」

「…2人共、何時からアキトがあんた達のものになったの?」

「「これは世の理なの(です)!!」」

そこまで断言出来るとは凄い自信だ。

「ほほぉ、よーく言ったもんだね〜」

ユキナ、目が座る。

「ふっふっふっ、2人共、コレ何だかわかる?」

不気味な笑いを浮かべ、懐から小さな瓶を取り出すユキナ。

「何それ?ただの小瓶じゃないの?」

「何ですの?まさか砂金か何かでそれでこの場を見逃せと仰るのではないでしょうね?」

「ふふ、まさかぁ〜。でもカグヤさん、それ半分アタリ」

「半分?では一体なんだと言うのです?」

「うんうん」

「2人共、さっき出したモーニングセット、キレイに食べてくれたみたいだね?」

「勿論!アキトの手料理だもん!残すわけないよユキナちゃん!」

「当然の事ですわ。残すなんてそんな罰当たりな事する訳がありません!」

エッヘンと胸を張る2人。

行動が似通っているのは長年連れ添っているからなのだろうか?

「じゃあさ、食後のコーヒーも当然いるよね?」

「うん、欲しいな!」

「そうですわね。何時ものとおり頂けます?」

「うん。でも返答次第では何時ものとおりって訳にはいかないな〜」

「「…は?」」

見事にハモリながら疑問顔の2人。

「実はね、この小瓶の中には何時も2人が使っているコーヒー用のミルクが入ってるんだ」

「そうなの?」

「…それがなんだと?」

「このミルク、解毒作用がある特別なものなの」

「「………………へ?」」

今、2人の時が止まった。

「何で解毒なのかというと、実はモーニングセットのサラダにかかっているドレッシングにはが入っていたんだよ!」

 

 

 

 

「「ええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!?」」

 

 

 

 

なんつーことを…。

「ふっふっふっ、知らなかったでしょー?いっつも笑顔で食べていた物が実は死と隣合わせなものなんて」

「うううううううううそだよねユキナちゃん!?」

「ほ、ほ、ほほほほほほほ、じょ、冗談がお好きですわね…」

「ううん、全然本気

ピシッ

ユリカ、カグヤ、石化する。

「ユキナ、それホント?」

「ふふ〜ん。イネスさんのお墨付き」

「…恐ろしい人ですねユキナさん」

「…これまた凄いね。よし、今日もいい感じでマンガ描けそう♪」

ユキナの暴挙に呆れ半分面白半分で傍観する、その他の面々。

 

「…ぶくぶく」

アキトは只今縛られながら泡吹いて気絶中。

 

「あ、ちなみに30分以内に解毒剤飲まないと手遅れだよ〜?」

「ユキナちゃん!それ今すぐちょーだい!!」

「いえ!こちらの方が先です!!」

石化を解除し一気にユキナに詰め寄るユリカとカグヤ。

だが…

ひゅんっ

がししっ

「ふええーん。何これー?」

「こ、こら!これ解きなさい!」

ユリカ、カグヤ、一瞬で縛られる。

「甘い甘い。まだまだだね2人共」

凄まじい縄術だ。

「ユキナちゃーん。解いてー。そしてそれ飲ませてー」

「は、早くしなさい!もしワタクシが死んだりしたらアナタも只ではすみませんよ!?」

「ふふーん♪どうしようかな〜」

ユキナ、得意気になる。

 

「ラピス、あの縛りの技、一体なんなんですか?常人とは思えない動きでしたよ?」

「うん、ママに教えてもらってたみたい」

「ああ、なるほど〜確かにあの人なら出来るかもね〜」

アキト母、何でも出来るんだな。

 

「あ、あああ…なんだか身体が痺れてきたぁ〜ゆ、ユキナちゃーん。早く〜」

「うああ…ほ、ほほ。そ、そうですわね。ゆ、ユキナさん?ここは大人しく引き下がる事にしますわ。ですからその解毒剤をおよこしなさい」

「え〜?よく聞こえないな〜」

「「すみませんでした!だから薬をくださいませユキナさん!」」

突如、卑屈になる2人。

悲しいものである。

「ん〜まあいいか。はい、じゃあ、あ〜んして?」

「「あ〜ん」」

「はい」

「「ごくっ…助かった〜(助かりました〜)」」

「うんうん、これに懲りたらもう私達にもうちょっかい掛けないでね?」

「ふっふっふっ、ユキナちゃん?そうはいかない…よ?」

「ほほほ、薬を飲んだらもうこっちのものですわ!よくもやってくれましたわね、覚悟しなさ…あれ?」

ぱたっぱたっ

「ユリカとカグヤ、倒れた」

「倒れましたね」

「うん、倒れたね」

人が倒れたのに全然動じないのもどうか…。

「甘いよ2人共。どうせこうなるだろうと思ってさっきの薬、解毒剤だけど眠り薬でもあるヤツを飲ませたんだよ?

ま、種明かしすればさっきの毒だけど、あれって多少身体が痺れる程度で本当は死ぬ事なんて有り得ないんだけどね。でも効果はテキメン!」

ユキナ、恐るべし。

「さてラピス。邪魔だからその2人、隅っこにでも置いといて」

「…わかった」

「ユキナさん、中々やりますね」

「はぁ〜昔と比べて随分変わったよね〜。やっぱりアキト君やアキト君の親に影響されたのかな〜」

あの親子に関わると誰でも強くなれるのだろうか?

「え〜と…ごそごそっと…お、あったあった。そんじゃ2人共、モーニングセットの代金だけど迷惑料も含めてちょっと割り増しで頂くね?」

「…ユキナ、たくましい」

「あきんどですね」

「うんうん、あれくらいじゃなきゃアキト君の奥さんは出来ないよね」

「そのお陰でオレは毎日このざまだぞ?」

アキト、ようやく復活。

「まあまあ、いいじゃない。なんだかんだで2人が居るからこそ、ここも繁盛してるんじゃない」

「まあそうでしょうね」

「ルリルリ、自信満々だねぇ」

「だって…ほら」

 

ルリが指差す方向には、

 

「ラピスちゃーん来たよ〜」

「こっち向いて〜」

「特製ケーキお代わりー」

「おールリちゃん、今日も綺麗だねぇ」

何時の間に来たのか、店は満員になっていた。

 

「とまあそんな感じです」

「なるほど」

「…そうだよねぇ。何故かこの2人目当ての客がここんとこ倍増してるんだよね」

「おう。ちょっと前まではハテナ目当ての客も居たんだが今じゃすっかりなりを潜めてるな」

「あれは…むぐむぐ」

「ラピス、それは言わない方がいいですよ?」

「むぐ」

こくんと頷くラピス。

「ははは、まあなんとなく想像はできるよね〜」

「…そうか?」

「「「うんうん」」」

「そうか」

「ほらほら皆、遊んでないで接客接客!それにヒカルさんも暇なら手伝っていって!」

はっ!?何か来た!これはいける!じゃあもう帰るね!!アキト君、ルリルリ、ラピス、ユキナちゃん、じゃーねー☆」

突如メガネが『キピーン』と光り、怪しげな雰囲気を漂わせるヒカル。

そしてそのまま脱兎の如く駆け出していってしまった。

「…ヒカル、お金払ってない。と言うより逃げた」

「あーいいよラピス。それに代金は次に来た時利子付きで払ってもらうから」

「ユキナさん、あきんど根性全開ですね」

「ああ、流石はオレの伴侶兼砲塔だ」

何故に砲塔?

「そんじゃ、お店再開!」

「「「おー!」」」

「あ、それとアキトぉ?お店終わったらお話の続きしようねぇ?」

「…おー」

一気にテンション急下降のアキトであった。

平和である。

 

 

 

そして、その後…

 

 

 

 

 

「はい!という訳で今日はこれからブレイクしそうなお店をこのメグミハラ・レイナが直撃リポートしちゃいまーす!

おお!丁度いい所に何だか良い雰囲気のお店を発見しました!早速入ってみようと…」

「メグミさん、隣の店でやって」

 

 

 

 

 

「こんにちはアキト君。ちょっと新薬が出来たから実験に付き合ってくれない?」

「そこで寝ている2人(ユリカ&カグヤ)を自由に使っていいよ。ちなみに返品は不可だからねイネスさん」

 

 

 

 

 

「やっほー来ちゃったー♪ごめんね〜?実は学校のクラブの子達も一緒なんだ〜。だから知り合いのよしみでちょっとまけて?」

「ミナトさん、先週も同じこと言ってなかった?」

 

 

 

 

 

「ユキナー!調子はどうだー!?アキト君とは上手くいってるかー!?もし何かあったらこの兄…」

がんっ!!

「ラピス、これ生ゴミに出してきて」

「わかった」

 

 

 

 

 

「アキトー!頼まれてたヤツ出来たぞー!!」

「おお!タイヤ班長!アレが出来たのか!?」

「おうさ!設計、製作など諸々で1ヵ月掛けて作った力作よ!さあ、とくと見よ!!」

ぐしゃっ!!!

「あ、ごめーん。踏んじゃった」

「「あぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」

「ルリ、これ燃えないゴミかな?」

「そうですね。じゃあ分別して出しておきます」

 

 

 

 

 

「ユゥリィカァァァァァァァッ!!!!!

ユリカは何処に行ったぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

「お、おじさん!落ち着いて!ここにユリカが居るとは限らないんですから!」

「折角、見合いの話を山ほど持ってきたのに…何処に行ってしまったんだぁぁぁっ!!!

「え!?見合い!?ユリカがですか!!?」

「勿論だともアオイ君!もはや一刻の猶予もならん!今すぐユリカの捜索に当たってくれ!!」

「え?…いや、でも…」

「アオイ君!こんな事を頼めるのは友人の君だけなのだよ!!」

「ゆ、友人…」

「そうだとも!君はユリカの友人、いや親友ではないか!!」

「…」

 

ぷちっ

 

「ふ、ふ、ふ…なんじゃとゴルァァァァァァ!!!!

「おお!?あ、アオイ君!?どうしたのかね!?しかもその警棒は一体!!?おおお!!!?」

 

「はいはい、表で好きなだけ暴れてね」

 

 

 

 

 

「ミスター、またここで打ち合わせなのか?」

「いやはや、社の改装工事が未だ終わりませんので仕方ないのですよ。はい」

「全く不便で仕方ないわね!」

「はっはっはっ、参ったね〜。ねえ月臣君?」

「…私にその手の話題を振られても困ります」

 

「また来たね」

「ええ、来ましたね」

「ほとんど毎日来る」

「おう、ネルガル組揃ってどうした?いよいよ倒産でもしたか?」

どがごぐぎゃっ!!!!!

「ぐぎょっ!?」

「はっはっはっ、テンカワさん、面白い冗談ですな〜」

「何時からうちは組になったんだ?」

「アキト君?いい加減にしないと次は無いわよ?」

「いや〜月臣君。なんだか手が痛いんだけど?」

「…無理してツッコミを入れるからです。折れてますよコレ」

 

「もういいから、さっさと頼むもん頼んで帰ってね」

 

 

 

 

 

「おーう!アキトー!!顔出しにきたぞー!!」

「はぁ〜疲れましたねー」

「全くイツキの言うとおりだぜ。なんで服買うだけの筈がヤマダのオモチャ屋巡りに付き合わなきゃいけねえんだ?」

「だから俺の名はダイゴウジ・ガイだっての!」

「そうそう!イツキちゃんとリョーコちゃんの言うとおり!ホント疲れた疲れた」

「サブロウタさん…荷物持ってるのボクなんですけど…」

「ハーリー、男は細かいことを気にしちゃダメなんだぜ?」

「細かくないです。ヤマダさんも騒いでないで荷物半分もってくださいよ〜」

「ダイゴウジ・ガイだ!」

 

「あんたら煩いから持ち帰りで宜しく」

「それには賛同します」

「近所迷惑」

「…大人しく帰れ。しっしっ」

 

「「「「「冷たっ」」」」」

 

 

 

 

 

ぽろろ〜ん♪

「今日はもう終わり!また明日!!」

ぱたんっ!

「…」

ひぅぅぅぅぅ…

 

 

 

 

 

 

とまあ、とっかえひっかえでナデシコクルーとその他で関わり合いになった連中が毎日のようにやってくるのである。

 

騒がしいことこの上ない日常が繰り広げられる『喫茶・魂入』であった。

 

 

 

 

 

 

「終わったね〜」

「ええ、今日も疲れました」

「う〜もう帰ってお風呂入って寝たい…」

「ふっ、すべからくデリケート直撃な奴等だな!」

流石に疲れ気味の女性陣に労いらしき言葉を掛けるアキト。

本当に全然変わっていない。

「それでは今日はこれであがりますね」

「帰る」

「はい、ごくろーさま」

「おう!明日も頼むぞ2人共!俺が楽できるように!!

 

さささっ

アキトの声に反応したユキナ、ルリ、ラピスが何かの配置についた!

 

「いくよー!レシーブ!」

べしっ

「ぼっ!?」

 

「トス」

ぽーん

「ぶっ!?」

 

「後は任せたよラピス!」

「任せましたよラピス」

 

「うん…たぁ!

ラピスが飛び上がる!

 

「あたーっく!!」

 

ばきょ!!!

 

「ぎびゅびょ!?」

 

どがしゃぁぁぁぁん!!

 

アキト、心半ばに散る。

 

「「よーっし」」

ぱしっ

ハイタッチをかますユキナとルリ。

 

「…手…イタイ…」

ラピス、手を抑えてうずくまり目はウルウルしている。

流石に兄妹とはいえ頑丈さは雲泥の差のようだ。

 

「大体アキトさん、アナタが1番働かなくてどうするんですか」

「アキト。いい加減にしないと怒るよ?」

「あきとおにーちゃん、サボリはダメ」

「…がんばります」

「「「よし」」」

女性には勝てぬアキトであった。

 

「それでは私達は帰りますね」

「あきとおにーちゃん、ユキナ、バイバイ」

「はーい、お疲れ様!ゆっくり休んでねー」

「おう、ウメさんに宜しく…」

忘れている方もいるかもしれないがウメとはホウメイの事である。

 

 

 

…帰り道にて。

 

「そういえばルリって国に帰らないの?」

「実家ですか?まあ確かに両親が居る所が一番なのでしょうが…帰るには条件が必要なんです」

「条件?」

「そうです。母が帰ってくるのなら婿を連れて戻って来いと言ってくれちゃったりするんですよ」

「…大変」

「本当に大変ですよ。でもまあ当分帰る気はありませんけどね」

「そうなの?」

「ええ。なによりここで働いていれば少なくとも退屈という目には会いそうにありませんし」

「うん…そうだね」

そう言ってお騒がせな夫婦が経営する店を見やる2人。

確かに退屈はしそうにない。

「それに現在の生活レベルも決して低くありませんし」

「…ルリ、今日は幾ら儲けたの?」

「アキトさんとユキナさんには内緒ですよ?…これだけです」

指の数で本日の儲け分を見せるルリ。

「…桁が違う」

「ふふ、コレくらい軽いものです」

一体なにをやっているのか気になる所である。

「でもそんなに儲けてどうするの?」

「そうですね、老後の為の貯蓄という事にしておきますか」

「…ルリ、おばさん臭い」

ぴくっ

ルリのコメカミがひくつく。

「ラ〜ピ〜ス〜?そんな事を言う口はこれですか?ん?んん?」

「ふひ、ひはひ、ひはひ」

顔は笑っているが目は全然笑っていないルリ。

ラピスの頬を左右に引っ張り仕返しである。

「よく伸びる頬ですね。えいえい」

「はひへ、ふひ〜」

この2人も結構な仲良しのようだ。

 

 

 

 

「さぁてアキト。昨日は何処に行ってたの?正直にちゃっちゃと白状してね?」

この時ユキナの手には例によって縄が握られていたことは言うまでも無い。

「おう、それか。実はちょっとノリ3世とラピUに付き合ってもらって買い物を…」

「ええ!ま、まさか浮気じゃないでしょうね!?こんなに可愛い奥さんが居るのに…しくしく」

ユキナ、泣き出す。

縄をびゅんびゅん回しながら。

「待て待て!実はなちょっとコレを探すのを手伝ってもらっただけなのだよ!」

「え?…あ、これって」

ユキナの手に渡されたもの、それは…

「ティーカップ?」

「ああ。前欲しいって言ってたろ?」

「でも…どうして?」

「ほらもうすぐお前の誕生日だろうが。店がある日は暇が無いからな、先に買ってきておいたんだ。

本当は当日に渡すつもりだったんだがなぁ〜。全く、折角のびっくりどっきり大作戦(唯一無二風味)が台無しだ」

「あ、アキトぉ…うるうる」

ユキナ、今度は嬉し泣き。

ちなみに縄はもう無い。

「嬉しいよぉ!!がしっ」

そしてアキトに勢いよく飛びつくユキナ。

「ふっ、明日はきっとパーフェクトゲームだ !」

何の?

 

 

「えへへ〜、じゃあ折角貰ったんだし1番良いところに飾ろうかな♪」

暫くして落ち着いたのか、ユキナがティーカップを持ってスキップをかましながら店の食器棚に向かう…が。

 

かしゃーん…

 

棚から落ちた皿の割れる音が妙に遠く聞こえた。

 

「へ?」

 

そこには先程のユキナ・ルリ・ラピスのトリプルアタックによってもはや帰らぬ存在となった食器棚が無残な姿で転がっていた。

当然、中の食器も一緒に。

 

 

「ああああーーーー!!!!!!!」

 

 

その日遅く、ユキナの悲鳴が店内に響きわたったとか。

 

 

 

 

結局、翌日は休業となり一日中買い物になった。

だがユキナはそれでも終始ご満悦だったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談 その1

ヒカルが今回の出来事をネタにしたマンガが何故か総ボツをくらったらしい。

 

後日談 その2

しばらくの間ユリカとカグヤが行方不明になったが、再び現れた時は以前よりも元気になっていたとか。

 

後日談 その3

『喫茶・魂入』は常にミサイルに狙われているという物騒な噂が流れたが、アキトがミサイル祭りを催したら何故か大盛況になったとか。

勿論ウリバタケが協力したのは言うまでもない。

 


 

 

 

 

 

終りですよ…終わり!

 

あとがきです。


こんにちは、彼の狽ナす。

という訳で外伝その2『何処かの若夫婦騒動記』をお送りしました。

今回の外伝は黄昏あーもんどさんのリクエストにお答えして書いたものです。

…あ、そういえば外伝その1もナイツさんのリクエストでした(汗)

ナイツさん、黄昏あーもんどさん、ありがとうです。

 

 

さて、今回の話は本編『その26』にて結ばれる事がたぶん確定の2人があのまま上手くいったら…

というのを想像出来る限り書いたものです。

だからコレは確実な未来ではないかもしれません。

今後の展開次第ではこのままになるかもしれないし、違う世界になるかもしれません。

………まあ外伝はあくまで外伝と言うことで(滝汗)

…ん?異聞の方が正しいのでしょうか?……まあいいか(爆)

 

あ、後、作中でユリカがカイトの名を言っていますがアレはの名前です!

そう、うちのカイト、犬です!!(極爆)

申し訳ない(汗)

 

…で、では、そろそろ本編の執筆に戻ります。

本編でまたお会いしましょう!

 

 

代理人の感想

平和だねぇ・・・・(ズズッ)。

 

(かこーん、と鹿威しの音がどこからともなく響く)

 

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なお、「どこが?」という突っ込みは例によって却下(爆)。