機動戦艦ナデシコ
〜Remember_memory〜






プロローグ





ここは広大な宇宙の何処か・・・
周りに見えるのは小さな小惑星と星の煌きだけだった

その漆黒の宇宙とは相反する色彩で「それ」は存在していた
「それ」の名前は「ユーチャリス」・・・かの有名な悪魔、「漆黒の王子様」が駆る戦艦だった


あの火星で起こった「火星の後継者」との戦いから約半年、彼はユーチャリスに共に乗る桃色の少女「ラピス・ラズリ」
そしてユーチャリスの思考を司る、オモイカネ級AI「ダッシュ」と目的のない、そして終わることのない航海をしていた・・・



「・・・アキト」

「どうした?ラピス」

ほとんど会話のない静かな戦艦に、久方ぶりともいえる会話・・・
それも常に無口だったラピスからの質問にアキトは興味を抱いた


「アキトは会いに行かないの、彼女に?」

「・・・そのことか・・・俺は会いに行かないんじゃない、行けないんだ・・・俺は、俺の手は穢れすぎた。

ユリカを救うためとはいえ、多くの命を消し去ってきた・・・
そんな俺にユリカに会う資格なんてないよ・・・」

「・・・そう」

ラピスからの返事はそれだけだった
しかしラピスと俺の意識はつながっている・・・気づいたかな、俺の「嘘」に

確かに俺はユリカに会う「資格」がないと思っている・・・はじめはさっき言った理由だった
そのはずだった、しかし少しずつ・・・そう少しずつ変わってきてしまった
もしかすると本当は、はじめから「そう」だったのかもしれない・・・と、最近思い始めた


俺が会いにいけない理由とは・・・


ビー、ビー、ビー、ビー

『ボース粒子増大、何かがボソンアウトします』

「なんだと?」

突然の警報に俺の思考は中断された。誰だ、やってくるのは!!
・・・いや、よく考えろこんなところまで来るのは、いや追いかけてくるのは俺の中では二人

その中の一人はこんなところまではこれない、病院にいるはずなのだからな
ということは、もう一人しかいないじゃないか!!


「アキト!!この反応はナデシコCだよ!!」

「・・・やはりか」

ラピスの言葉を聞き終わる前に、特徴的なラインと共に「あの」戦艦が姿を現した。



『アキトさん!!』

「・・・やっぱり君か、ルリちゃん・・・」


ユーチャリスのモニターに映ったのはナデシコCの艦長である、ホシノ・ルリだった







「アキトさん、どうして帰ってきてくれないんですか!!どうしてユリカさんに会ってあげないんですか!!
答えてくださいよ、アキトさん!!」

「・・・・ラピス、ジャンプの準備を」

「わかったよ、アキト」

『アキトさん!!』

ルリちゃんが必死な顔で話しかけてくる

「ルリちゃん・・・だめなんだよ、俺にはユリカと会う資格がない・・・そう俺は血を浴びすぎたんだ」

『それでも!!それでもユリカさんは会いたいはずです!!
復讐の事ならば、ユリカさんは受け入れてくれるはずですよ!!』

「ルリちゃん、だめなんだよ・・・それよりも、もっと・・・
もっと完全にユリカを裏切ってしまうことを俺はやってしまっていたんだ」

『えっ?ど、どうゆうことですか?』

「それは・・」

『ジャンプシークエンス準備完了。いつでもジャンプできるよ、アキト』

ダッシュの言葉に遮られてしまったか・・・しかしよかったのかもしれない、俺の想いを言わずにすんだのだから


「ダッシュすぐにジャンプだ。これ以上ここにいる必要はないからな」

『だめ!!アキトさん行かないで!!
お願いですから・・・「私」達のところに帰ってきてください!!!』

・・・ルリちゃん・・・ごめん

俺はジャンプ先をイメージし、ボソンジャンプを開始する

・・・しかし問題が発生してしまった


「だめ、アキト。ナデシコとの距離が近すぎる
このままじゃナデシコが巻き込まれるよ!!」

「なんだと!!ルリちゃん、ユーチャリスから離れろ!!
このままだとジャンプに巻き込まれてしまう!!」


『でも、アキトさんが!!アキトさんはどうするんですか!!』

「・・・なるようにしかならないさ。ジャンプのイメージが崩れた・・・
どこへ跳ぶか分からない、ランダムジャンプになってしまうんだよ」

『そんな・・・アキトさん・・・』

モニターにルリちゃんの哀しみに崩れる顔がある
彼女にはこんな顔は似合わないな・・・もっともこんな顔にしたのは俺なんだけどな


「さぁルリちゃん、早く離れるんだ!!
でなければ突然のジャンプに処理をしていない人間は・・・死ぬぞ」

『!!ハーリー君ユーチャリスから離れてください!!』

『わっかりました!!』


「だめ、もう間に合わないよ」

「くっ!!だめか
・・・恨むなら俺を恨んでくれよ、ナデシコ!!」

その言葉を最後にすべては虹色に包まれてしまった

最後の瞬間に俺の頭に浮かんでいたのは

最愛の妻であるミスマル・ユリカ・・・ではなく

今の今まで顔を見合わせていた電子の妖精・・・

そう・・・「ホシノ・ルリ」だった・・・





広大な漆黒の宇宙に存在していた

二つの白い戦艦は消えてしまった

どこに『跳んだ』のか、いや本当に『跳べた』のか

しかし虹色の「ヒカリ」がおさまった時に、そこにあったのは

無限に広がる漆黒の大宇宙だけであった・・・












あとがき


こんにちは、始めまして
新参者のシルヴィアです

初の投稿です

どうなるかわかりません(笑)

どうぞ温かい目でごらんいただきください