破壊そして蹂躙し尽くされた宇宙コロニー。

 いやコロニーだった場所。

 あちこちで火の手があがり、そして爆発が起きていた。

 

 「なあユリカ…いったい俺達が何をしたと言うのだろうな?」

 

 外界とは反対に静まりかえったサレナのコクピット。

 しかしその問いに答える者はもういない…

 

「いったい何処で俺達は間違いを犯したんだろうな?」

 

 血に塗れし復讐鬼が最後に手にしたのは最愛の女性の亡骸

 

「俺達がA級ジャンパーだった事か?俺が君を守る力が無かった事か?それとも君が俺に出会ってしまった事か?」

「こんな事なら『遺跡』を破壊すれば良かったかな…?」

 

 悲しき復讐鬼の独白に答えるものはもういない…そうもういないのだ……

 

 「さあユリカ…一緒に行こう……もう決して離さないから……」

 

 そう呟き最愛の女性…ユリカにそっと口付けをする

 あたりに虹色の光が広がりそして――――――

 

 

 

機動戦艦ナデシコ

時の帰還者

 

 

 

 

幻想的に輝く空。

遥かに見える紅き地平線。

そして眼下に広がる廃墟と化したコロニー。

彼が見た最初の光景はこれだった。

 

「ここは……ユートピアコロニー………?」

 

かつて多くの人で賑わい、そして栄えていた仮初の理想郷。

 

「しかし…此処に出て来るとはな……」

 

ユートピアコロニーを見下ろせる場所に位置する丘、そして其処にかつて広がっていたはずの草原。

かつてユリカを後ろに乗せ共に走った草原、すなわちここは失われた幸せを象徴する場所。

 

「もう捨てたはずの思い出なのに…俺も甘いと言うか何と言うか……そう思わないか?ユリカ」

 

ユリカの……妻の乱れた髪を整えながら呟く。

 

「5年越しの新婚旅行、最初は火星ユートピアコロニーとはな…」

 

苦笑交じりに呟きながら次のジャンプに備えて計器のチェックを命じる。

 

《機体に異常無し――現在地2195年火星ユートピアコロニー――ジャンプフィールド展開》

 

サレナに新しく積んだ縮小版オモイカネ級コンピューターオモイカネプラス、

通称『プラス』が機体のチェックと現在地及び現在の西暦を教えてくれる。

 

《システムオールグリーン―――ジャンプフィールド展開完了》

 

その他にもラピスの代わりに俺にリンクしてくれている。

ラピスとのリンクを切っている今、『プラス』とのリンクが俺の生命線と言っても過言では無い。

此処まで考えて何か重大な事を聞き逃している気がした。

 

「……?システムに異常は無かったし、ジャンプフィールドにも問題なかったし……

 でもなんか聞き逃している様な……」

《復唱しましょうか?》

「あぁ頼む」

《機体に異常無し――現在地2195年火星ユートピアコロニー――システムオールグリーン―――

 ジャンプフィールド展開完了》

「機体に異常無し、現在地は2195年の火星ユートピアコロニー……」

 

海よりも深い沈黙がコクピットを包む。

 

 

 

 

 

「2195年だと――――!!!!」

 

《イエス、マスター》

 

 

 

 

 

「…帰って来てしまったのか?」

 

呆然と呟く、2195年つまりそれはナデシコの出航の一年前だ

 

過去に跳ばされた―――つまり此処からなら歴史を変えられる訳だ、あの完全に狂っていたあの時代のあの結末を。

いま俺の手元には携帯用のジャンプフィールド発生装置とブラックサレナが有るつまり今現在、

俺の敵となり得る者…は存在しない訳だ…

例え今、北辰と戦うとしてもまず負けはしないだろう。

こちらには5年後のエステバリス『ブラックサレナ』がある、そしてあちらには『夜天光』が無い、

さらに生体ボソンジャンプもできる。

 

「変えれる…変えれるのか……?」

 

昔…2週間前にジャンプした時の事が脳裏を過ぎる。

あの時も…何とか歴史を変えようとしたが変えれなかった……助けようとしたイツキさんも結局助けれなかった。

またあの繰り返しなのか……

 

 

否!!  断じて否!!!

 

 

それが嫌だから…理不尽な運命にもて遊ばれるのが嫌だから……

悪魔に魂を売り渡してまで手にした『力』なんだから――――

 

「変えれるのか…では無い変えなくてはいけないんだ!!!」

 

幻想的に輝く空。

遥かに見える紅き地平線。

そして眼下に広がる廃墟と化したコロニー。

かつての…無くした幸せを象徴する場所で―――新たな誓いが生まれた。

 

 

 

 

 

時は2195年、火星ユートピアコロニー跡……止まっていた時は今ゆっくりと動き出した。

 

 

 

―――翌日―――

 

「それじゃユリカ行ってくるよ…もう離さない――――

 なんて言ったのに、ほんとゴメンだか……だけどもう『肝心な時に何もでき無かった』って後悔したく無いんだ

 ………だから――――俺はもう一度乗るよ『ナデシコ』に」

 

一晩かけて作った墓に向かって呟く、ただ墓石も十字架も立てずに墓と言うにはあまりに簡素なものでは有るが

 

――もう神も仏も信じる気にはなれない為、仕方が無いと言えば仕方が無い。

 

「だけどユリカ信じてくれ、俺は必ず此処に戻ってくるからな!」

 

ここまで言って一呼吸空ける。

 

「それじゃ――――行って来ます」

 

ジャンプフィールド展開完了、あたりを虹色の光が包み込みジャンプする瞬間

 

 

 

 

―――――アキトお土産忘れたらユリカ、プンプンだからね―――――

 

 

 

 

昔と変わらぬ…あの頃のユリカの声を聞いた気がする…………

 

 

続く?(いきなり疑問形)

 

 

後書き

どうも霜月です。何とか第一話を書き上げる事が出来ました。

なんか逆行しています。

さて先に謝っておきましょうか、さっそく遊んでしまいました。ゴメンなさい。

なんせ話は進まないし相変われずシリアスですから……

え…?何処で遊んだか?フフフフフ…それは秘密です……ではなく、

お話の中に漫画のネタ(某ガンマンの漫画)を折りこんでしまいました。

まあやってみたらやってみたで大して違和感が無かったので正式に採用してしまいました。

分かった人はニヤリと笑って下さい、其れこそ劇場版アキト君の様に……

こういう事はまた突発的にやってしまうでしょうがおおめに見て下さい、お願いします。

それでは会えたら第二話の後書きで。

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

霜月さんからの投稿です!!

さて逆行は出来ました。

しかし、今後はどうやって歴史を変えていくのでしょうね?

やはり、まずはアカツキの脅迫からかな(笑)

絶対、一番先に被害者になる男ですからね・・・御愁傷様(爆笑)

それにしても某ガンマンガ・・・もしかして、アレかな?(自信ないけど)

 

では、霜月さん!! 投稿有難うございました!!

 

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