< 時の流れに福音を伝えし者 >

 

 

 

 

 

第三話.『早すぎる「さよなら」!・・・なんて言わせない!!』

さよならなんて悲しいですもんね

 

 

 

 

 

 さて・・・この戦闘でガイの運命が決まる。

 俺とルリちゃんとシンジくんはその事で相談するはずだった。

 が・・・

 

「・・・全治二ヶ月だそうです。」

 

「・・・惨めだな、ガイ。」

 

「・・・騒いでただけで終わっちゃいましたね。」

 

 ナデシコに乗ってから一回も戦闘に参加する事なく、医務室にガイは入院した。

 原因は前回の反撃時の転倒・・・

 ではなく、クルーの皆に踏まれたからだ。

 何と言うか・・・未来を知る身としては有り難いが・・・

 

「・・・お見舞いにでも、行って来ますか?」

 

「そうだな。」

 

「会って数日ですけど、多分元気だと思いますよ。 あの性格なら・・・」

 

 シンジくんの言ったとおり、医務室の前に来るだけでガイの声が聞こえた。

 医務室に入って見舞いだというと、ガイは泣いて喜んだ。

 

 ・・・まあ、騒がしい奴だからな皆敬遠してるんだろう(汗)

 

 しかし・・・俺達は何も干渉をしていないのに未来は変わりつつある。

 何故だ?

 いや・・・何もしてないが故、か?

 俺はあのムネタケ副提督の叛乱時の反撃に、過去と違い音頭を取らなかった。

 それだけで・・・既に未来は変わりつつある。

 

 

 そしてナデシコは、連合宇宙軍の地球防衛ラインの突破を開始した・・・

 

 

 

 

 

 ドォォォォォォォ・・・

 

 ナデシコのディストーション・フィールドに、ミサイルの着弾する音が微かに聞こえる。

 

「第4防衛ラインを突破・・・」

 

 残りは第3、第2、第1だな。

 だが確か第3防衛ラインには・・・

 

「絶対に来ますよアキトさん。」

 

「ああ、来るだろうな・・・出来れば穏便に、ナデシコに同乗して欲しいんだが。」

 

「誰が来るんですか?」

 

 そう言えば、まだシンジくんにはこの後のことを言ってなかったな。

 

「副長のジュンだよ。 ほら、ユリカと一緒にいた男だ。」

 

「ああ、あの人ですか。 そういえば近頃見かけませんでしたね。」

 

「ユリカさんがトビウメに行った時に置き去りにされたんですよ。

 ジュンさんはユリカさんのことが好きらしいんですが、ユリカさんに全く相手にされてません。

 ・・・だいたい、ユリカさんに置き去りにされた時点で諦めませんか、普通?」

 

 結構、キツイ事言うなルリちゃん。

 多分、本当にユリカはジュンの事を忘れてただけだと思うぞ。

 悪気は無いんだって。

 

 ・・・そっちの方が酷い、な。

 

 

「そう言えば・・・プロスさんから、火星に行く説明を聞いた訳だが。

 今考えると、無謀な事を考えたもんだよな。

 過去では単純に火星に行ける、と喜んだものだが。」

 

 敵の占領下の星に、たった一隻の戦艦で乗り込む。

 確かに軍人が聞いたら、呆れるような話だよな。

 

 ・・・普通の人が聞いても呆れるか。

 

「火星って今、木星の勢力圏なんですよね。

 戦艦一隻でよく戻ってこれましたね。」

 

「まあ、帰りはチューリップを通ってきたからな。

 かなりぼろぼろだったけど・・・」

 

「それでも・・・今回もアキトさんは、ナデシコに乗って火星に行くのでしょう?」

 

「当たり前だよルリちゃん。

 ・・・火星にはアイちゃんが待ってるんだから。」

 

「アイちゃんって誰ですか?」

 

「ああ、アイちゃんっていうのは・・・」

 

 俺がシンジくんにアイちゃんの事を教えようとした時・・・乱入者のお陰で途絶えた。

 

「ア〜キ〜ト〜!!

 もう!! 幾ら知り合いだからって、ルリちゃん達とばっかりお話しして!!

 私もアキトとお話しがしたい、したい、したい!!!」

 

 ・・・まあ天真爛漫と言えば聞こえはいいが。

 見かけは11才のルリちゃんと男の子のシンジくんに、本気で嫉妬するなよユリカ・・・

 でも、実際に俺はユリカを無意識の内に避けている。

 側に・・・ユリカの側にいるだけで苦しいんだ。

 胸が焼けるように、痛いんだ!!

 後姿を見る度に・・・走り寄って抱き締めたくなるんだ!!

 そんな、自分を抑えるのが・・・惨めで・・・嫌、なんだ。

 

 俺は、ユリカとは・・・

 

「何を話すんだよ・・・昔の事も今までの事も、全部話して聞かせただろ?」

 

 内心の葛藤を顔に出さず、俺はユリカに質問をする。

 

「う〜〜〜!!

 じゃ、ルリちゃん達と何を話してたか教えてよ!!」

 

「プライバシーの侵害です。」

 

「艦長も落ち着いてくださいよ。」

 

 あの冷めた目でユリカを見詰めながら、ルリちゃんが言い放ち

 シンジくんはそれに対してフォローをするが・・・

 

「う!! ルリちゃん恐い。

 でもでも!! そう!! 艦長命令ですよ!!」

 

「黙秘権を行使します。」

 

「艦長。 職権乱用ですよ、それは。」

 

 シンジくんもユリカのいい加減な行動に、さすがのフォローしない

 ルリちゃんの冷静な反撃にユリカは・・・

 

「え〜〜〜ん!!

 ル、ルリちゃん達が私を苛めるの、アキト〜〜〜〜!!!」

 

 ・・・そこで俺に頼るのか?

 凄く意図的なものを感じるのだが。

 

『敵機確認』

 

「有難うオモイカネ・・・艦長、第3防衛ラインに入りました。

 同時に敵機デルフィニウムを9機確認。

 後、10分後には交戦領域に入ります。」

 

 どうしますか? と目でユリカに問うルリちゃん。

 

「う〜ん、ディストーション・フィールドがあるから大丈夫だと思いたいけど。」

 

「今のフィールドの出力では、完全に敵の攻撃を防ぎ切れません。」

 

 こっちを見てるなユリカの奴。

 まあ最終的には、俺が出るしかないんだけどな。

 

「でも・・・あ、ヤマダさんがどうしてエステバリスに乗ってるんでしょう?」

 

 メグミちゃんの呟きに全員の返事は一致していた。

 

 

「うそ?」  (ブリッジ全員)

 

 

「前回、活躍できませんでしたからね。

 あの人の性格なら怪我していようとやりかねませんよ。」

 

 おいおい、シンジくん・・・

 ・・・そうだよな、そういう奴だったよな確か。

 

 ルリちゃんが慌てて表示した通信ウィンドウには・・・

 全身包帯男が、エステバリスに乗って飛び立とうとしている姿が映っていた。

 

 一応確認

 

「・・・ガイ、何をしてるんだ?」

 

『決まってるだろうが!!

 俺のこの熱い魂で!! 俺達の行く手の邪魔をする奴達を叩きのめ〜す!!』

 

「ヤマダ機、ナデシコから発進。

 ・・・どうします?」

 

 さすがに黙って見殺しには出来ない、よな。

 ウリバタケさんちゃんと止めたんだろうか、ガイの奴を?

 

「ユリカ・・・俺が出て連れ戻してくるよ。」

 

「ええ!! だめだよアキト、あぶないよ。

 そうだ!! シンジくん行ってよ。 エヴァってロボットがあるんでしょ。」

 

「ええ、一応僕もナデシコ所属のパイロットってことになってますから。」

 

「よかった。 じゃあ行ってらっしゃーい!!」

 

「行ってらっしゃーい・・・じゃない!!

 いくらなんでもシンジくんだけに行かせる気か、おまえは!!

 一応、臨時パイロットなんだ、俺も出る!!」

 

「だってーーー!!」

 

 子供のように駄々をこねるユリカ。

 そんなユリカを俺は一睨みする。

 

「ふえーーーん。 わかったよ、アキトー

 だから、そんな恐い顔で睨まないでよー」

 

「わかった、わかった。 じゃあ行ってくる。」

 

「あっ! それと無茶はしないでよね。」

 

 その言葉はガイに言ってくれ、ガイに!!

 

 

 

 

 

 格納庫に来るとアキトさんはすぐに自分のアサルトピットの方に向かう。

 

 僕もエヴァに乗り込もうとした時、ウリバタケさんに呼び止められた。

 

「どうかしたんですか、ウリバタケさん?

 

「ああ、お前のエヴァはエステと違って重力波に対応してねえだろ。

 だから重力波カタパルトが使えねえんだよ。

 だから、今回もマニュアル発進になっちまうんだ。

 次からは対応できる装置、増設しといてやるから我慢してくれ。」

 

「すみません。 その時にはお手伝いしますんで。」

 

「ところで、エヴァって宇宙戦出来るのか?」

 

「ええ、宇宙に海底、マグマの中だって戦えますよ。」

 

「マグマん中はいくらなんでも無理だろ。」

 

 ウリバタケさんは笑っていっているが実際入ったことはあるんですよ、僕は・・・

 熱かったなあ、あの時は・・・

 

「それで武器のほうはどうする。

 みたところ肩にあるビーム砲と手甲のナイフくらいしか武器はねえがいいのか?

 エステの武器を持っていくか? そいつなら使えるだろ。」

 

「必要ないですよ。 エヴァにはまだ別の武器がありますから。」

 

「なに! 隠し武器か?

 やっぱりそういうのは、ここぞ!って時にだすもんだよな!!」

 

 ウリバタケさんが拳を握り締めて、よく解らない力説してきた。

 

「そ、それじゃあ僕ももう出ますんで・・・」

 

「おう! がんばれよ。」

 

 僕はウリバタケさんに手を振って応え、エヴァに乗ってカタパルトに向かった。

 

 

 

 ガイさんの発進から遅れる事10分、僕達もナデシコを発進する。

 あの人って僕達が止めなくても、結局自分で死んじゃうんじゃないかな?

 

 

 

 

 

 僕達が出撃するまでガイさんは逃げ続けていたみたいだ。

 無事な姿で必死に攻撃を避けている。

 こんな事になるなら始めから出なければいいのに、と思っていたら。

 

 

『何してるんだアキト!!

 親友のピンチだぞ!! 早く助けろ!!

 身体中が痛くて、気が遠くなる〜〜〜!!

 おお!! きみは病気の治療の為に戦いに身を投じてお金を稼ぐけなげな少年!!

 すまない! 俺の怪我が無ければ、きみに負担を掛けず出撃させることもなかったのに!!』

 

 

 

 と、僕達に言い放った・・・

 誰が【病気の治療の為に戦いに身を投じてお金を稼ぐけなげな少年】ですか!!

 僕は見た目はアルピノですが、いたって健康体です。

 何処でそんな設定になったんですか!!

 大体負担かけたくないなら、最初っから出ないでくださいよ!!

 

『はいはい・・・俺達が到着次第、牽制するから早くナデシコに帰艦しろよ。』

 

 アキトさんはガイさんの叫び声を軽くあしらう。

 

『おう!! 俺の囮としての役目はまっとうした!!

 後はお前達に任せるぞアキト!! 少年!! イテテテテ・・・』

 

 

 ゴォォォォォォォ!!

 

 

 フラフラと、見るからに危なそうな状態で、ガイさんはナデシコに帰還していく。

 

 無事に帰れるんでしょうか? 

 だいたい囮にすらなってませんよ、ガイさん

 入院期間が延びただけじゃないですか?

 

 

 

 

 その頃ナデシコのユリカとジュンが通信をしていた。

 

『ユリカ!! 今ならまだ間に合う!!

 ナデシコを地球に戻すんだ!!』

 

「・・・駄目なのジュン君。

 ここが、ナデシコが私の居場所なの。

 ミスマル家の長女でもなく、お父様の娘でもない・・・

 私が、私らしくいられる場所はこのナデシコにしか無いの。」

 

『・・・そんなに。

 解った、ユリカの決心が変わらないのなら。』

 

「解ってくれたの、ジュン君!!」

 

 

『あの機体をまず破壊する!!』

 

 

 ジュンの目線の先には、ふらつく様に逃げるガイのエステバリスがあった。

 

 

 

 

 そして僕達の目の前で、ガイさんの機体に向けて複数のミサイルが発射された。

 

 

『くっ!! だから無茶をするなと!!!!』

 

 

 アキトさんはライフルをガイさんに向かうミサイル群に向ける。

 

 

 ドンドンドンドンッ、ドドンッ!!!

 

 

 ・・・すごい!!

 アキトさんはガイさんに向かったミサイルを、ライフルのピンポイント射撃で全て叩き落とした!

 でもアキトさん、実力隠すの忘れてるんじゃ・・・

 

『ガイ!! 今のうちに逃げろ!!』

 

『お、おう!! しかし凄い腕前だなアキト。

 お前本当にコックか?』

 

 やっぱり実力ばれっちゃってますよ。

 どうするんですか? アキトさん。

 

『・・・今はそんな事言ってる場合じゃないだろ!!

 俺が敵を牽制するから、早くナデシコに!!』

 

 その言葉を証明するかのように、アキトさんは一瞬の内に三機の敵を落す!!

 

 

 ドドン!!  ドン!!

 

 

 アキトさんの射撃から、逃れる事も出来ず

 背後のブースターを破壊され、地表へ向けてゆっくりと降下していく。

 脱出装置くらいあるだろうし、死にはしないと思う。

 

『わ、解った!!』

 

 そう言い残してガイさんはナデシコに向かう。

 敵はアキトさんを相手にするのは無理と考えて僕のエヴァのほうに向かってきた。

 

 僕はアキトさんほどの操縦技術はないけど、使徒と闘っていた時よりずっと強くなってる自信があるんだから。

 

 ウリバタケさんにも隠し武器って言っちゃたし

 ちょっとだけエヴァの力を見せて上げますよ。

 

 僕は接近してくるジュンさん以外の機体に向かって行く。

 デルフィニウムからは複数のミサイルが打ち出された。

 

「アビリティ『シャムシェル』」

 

 エヴァの両手首から光の鞭が伸びる。

 その鞭で着弾しそうなミサイルを真っ二つに切り裂いていく。

 

 そしてデルフィニウムとエヴァの距離がどんどん近づく。

 

 

「シッ!!」

 

 

 デルフィニウムと交差し通り過ぎる。

 エヴァが後ろのほうを振り替えると、次の瞬間

 デルフィニウムが一機、コクピット以外がバラバラに別れ始めていた。

 

 デルフィニウムと交差した瞬間に、僕は音速の速さの鞭で切り裂いたのだ。

 残った機体も驚いて無防備にもその場に停滞している。

 

「さてと、アキトさんとジュンさんはどうなってるかな。」

 

 エステバリスとジュンさんの乗るデルフィニウムが向かい合い対峙していた。

 

「説得中ってところかな? ・・・おっと。」

 

 向こうのほうを気にかけている隙を狙って、残りのデルフィニウムが遠距離からミサイルを撃ってきた。

 僕は反射的にそれをかわすと再びデルフィニウムに突撃し、また一機バラバラに切り裂く。

 

 ほんとなら全機まとめてバラバラに出来るんだけど、倒した機体の回収をしてもらわなきゃいけないから手加減している。

 これだけやったら戦意喪失してるかな。

 

「あれ、帰っちゃうの?」

 

 残ったデルフィニウムが戦闘不能の機体を回収してステーションのほうに戻っていった。

 

「まいっか、あとはジュンさんだけど

 アキトさんが説得しているから問題無いか。」

 

 その時、コミュニケにルリちゃんからの通信が入った。 

 

『シンジさん、もうすぐ第二次防衛ラインに差し掛かります。

 大量のミサイルがきます。 ナデシコにそろそろ戻らないと危ないですよ。』

 

「アキトさんはどうするの? ジュンさんの説得はまだ終わってないみたいだけど。」

 

『あ! それなら大丈夫ですよ。 たった今アキトさんがナデシコに向かってジュンさんを蹴り飛ばしましたから。』

 

「へっ!?」

 

 見るとデルフィニウムがエステバリスに蹴り飛ばされてナデシコに向かっていた。

 そしてルリちゃんにかわり、アキトさんからも通信が入った。

 

『シンジくん、もうすぐミサイルが降ってくる。

 きみはナデシコに戻ってくれ。』

 

「アキトさんはどうするんですか?」

 

『今のナデシコのディストーションフィールドじゃ全てのミサイルに耐えられない。

 俺はミサイルを少しでも減らす。』

 

 そういって、アキトさんはミサイルのほうに向かい合う。

 ミサイルを打ち落とすのか。 普通のパイロットなら出来ない芸当ですよ。

 

「でも、いくらアキトさんでも数が多すぎますよ。

 ライフル一丁じゃすぐに弾切れになります。

 僕も突き合わせてください。」

 

『ミサイル群に突っ込むことになるんだぞ!』

 

「大丈夫ですよミサイルの百個や二百個、ATフィールドで防げます。

 エヴァの力を舐めないでくださいよ。」

 

『そうか・・・』

 

 

 

 

 

「ルリちゃん、聞いているか!」

 

 

 ピッ!!

 

 

『はい、アキトさん。』

 

「俺達はミサイルを破壊しつつ、回避行動に出る!!

 ナデシコのエネルギー供給フィールド内での回避行動だからな、かなり制限されるだろう!!

 それでも、ディストーション・フィールドは解除しないようにと、ユリカに伝えてくれ!!」

 

 

 ピッ!!

 

 

『そんな!! アキト無理だよ!!

 今直ぐにディストーション・フィールドを解くから、早く帰って来てよ!!』

 

 突然ユリカの通信が、俺とルリちゃんの会話に割り込みをしてくる。

 

「今からでは間に合わない。

 ここでディストーション・フィールドを解けば、ナデシコが撃沈されるぞ。

 ・・・大丈夫だ、俺を信じろユリカ。」

 

 無言の時間を、お互いが感じる・・・

 ユリカ、真っ直ぐな瞳は変わらないな。

 

『・・・私、信じたからねアキト。

 だから、だから、もし嘘だったら怒るからね!!』

 

「ああ、ブリッジで待ってろ・・・バリア衛星に突入する前には、ちゃんと合流するさ。」

 

 俺は笑いながら、ユリカにそう宣言をした。

 

『うん、うん・・・絶対だよ。』

 

『ミサイル・・・来ます。

 アキトさん、私も信じてますから。

 シンジさんも頑張ってください。』

 

『ありがと、ルリちゃん。 気遣ってくれて。

 アキトさんも艦長も僕のこと忘れてるんだもん。』

 

『あはは・・・べっ、別に忘れてた訳じゃないよ、シンジくん。』

 

 俺は別に忘れてた訳じゃ・・・

 苦笑いしながら言っても説得力ないぞ、ユリカ。

 

「とにかく・・・リハビリがてらに、真剣にやるか!

 いくぞ! シンジくん!!」

 

『はい! 僕も全力でやらしてもらいますよ!!』

 

 俺達は頭上から降って来るミサイルの群れを睨みつけた。

 

 

 ゴワァァァァァァアアアアア!!!

 

 

 そして、俺達と雪崩のようなミサイルとの戦いが始まった。

 

 こちらは、ナデシコのディストーション・フィールドに接触したらアウト。

 ナデシコからのエネルギー供給フィールドから出れば、何時か地球に落ちてアウト。

 勿論、ミサイルの直撃を貰えば即アウト、だ。

 

「そういえば・・・」

 

 俺はシンジくんにコミュニケで通信を入れる。

 

『どうしたんですか、アキトさん?』

 

「いや、ナデシコからのエネルギー供給フィールドのことを考えてて思い出したんだが

 エヴァのエネルギーは大丈夫なのか?」

 

『エヴァのエネルギーは半永久式のS2ドライブを使用しています。

 エネルギー切れの心配は大丈夫ですよ。』

 

「そうか、エステじゃエネルギー供給フィールド外に出られない。

 シンジくんは先行してミサイル群を突破してくれ。

 だけど俺の分も残しておいてくれよ。」

 

『わかりましたよ、アキトさん。 それじゃ、また後で・・・』

 

 そういって、シンジくんのエヴァは先行してミサイル群に飛び込んでいった。

 通った後には連続して爆発していくのが見えた。

 

 

「久しぶりの緊張感だな・・・楽しめそうだ。」

 

 昔、この過去の時点での俺は、戦いが嫌で仕方が無かった・・・

 今は・・・

 無力な俺は、逆に存在価値が無いんだ!!

 

 

 ドウッ!!  ドゥ!!

 

 

 近づいて来たミサイルをライフルで撃墜し・・・

 ディストーション・フィールドを張った拳で、直接叩き落し・・・

 ミサイルの隙間と隙間を、縫う様に回避する・・・

 

 至近距離でのミサイルの爆発に、俺のエステバリスは木の葉の様に舞い。

 回避行動の急激なGに身体が軋む。

 だが・・・その苦痛も、今の俺には全てが懐かしい感覚。

 あの、復讐に焦れた時の・・・

 そして・・・

 

 

 

 

「第2防衛ライン突破・・・」

 

「ルリちゃん・・・アキトは・・・」

 

「テンカワ機、イカリ機、応答願います!!」

 

「メグちゃん・・・アキト、応答が・・無い。」

 

「艦長・・・残念ですが、あのミサイルとディストーション・フィールドの板挟みです。

 一流・・・いや連合軍のエースパイロットでも、生存は不可能ですよ。」

 

「・・・そんな、プロスさん。」

 

「僕が、僕が変な意地を張ったばっかりに!!」

 

「ジュン君・・・アキトはそんな事・・・」

 

「アキトさんが信じられないんですか、艦長?」

 

「ルリちゃん?」

 

「アキトさんは強い人です。

 約束を必ず守る人です。

 私はアキトさんを信じています。」

 

「・・・私も、私もアキトを信じてる!!

 それはルリちゃんにも負けないんだから!!」

 

「・・・それでこそ、艦長です。」

 

『テンカワ機、イカリ機発見!!』

 

「オモイカネ!! 何処?」

 

『ナデシコより更に上空にて発見』

 

「なんですと!!

 ・・・信じられん人達ですな。

 イカリさんのエヴァの能力については未知数ですが、

 テンカワさんはなんとも・・・」

 

「・・・ナデシコを待ちきれずに、上空に逃げ出したって事?」

 

「そうですよミナトさん。

 エネルギー供給フィールドを突破して、先にミサイルの包囲網から脱出されてたんです。」

 

「良かった・・・アキト。

 やっぱり約束を守ってくれたんだ!!」

 

 

 歓声に包まれるブリッジ・・・

 俺達はルリちゃんの誘導に従い、ナデシコに帰艦・・・

 そして着艦した直後に、極度の集中と疲労の為俺は気を失った。

 

 この身体にまだ慣れてない分、無理が祟った様だ。

 これは、早く鍛え直さないと駄目だな。

 

 と、そんな事を考えながら、俺の意識は闇に包まれた。

 

 

 

 気が付くと俺は、医務室のベットで寝ていた・・・

 

「気がつきましたか、アキトさん。」

 

 俺のベットの横にはシンジくんが椅子に座っていた。

 

「ああ、やっぱり未来のからだのようにはいかないな。

 これくらいで倒れちまうなんてな。

 シンジくんは大丈夫なのか?」

 

「はい、このとおり大丈夫です。」

 

「そうか・・・ガイは?」

 

 シンジくんは俺のベットの向こう側を指差す。

 そこには気持ちよさそうに、寝息をたてているガイ。

 それを見て、俺もさすがに少し腹が立った。

 

 お前・・・もう少し落ち付いてくれよ。

 こっちの身が持たないぞ。

 そう思いつつ、俺は再び意識を手放した。

 最後にシンジくんの声が聞こえたような気がしたが・・・

 

 

 

 暫くして、見舞いに来たユリカとルリちゃんに、バリア衛星の突破とムネタケの脱走を聞いた。

 隣には大鼾をかくガイがいる・・・という事は。

 

 ・・・取り敢えず、未来は変わった様だ。

 

「アキト!! やっぱりアキトは私の王子様だね!!」

 

「・・・そんなの俺の柄じゃないよユリカ。」

 

「でも、本当にお疲れ様でしたアキトさん。」

 

「ああ、有難うルリちゃん。」

 

「それでねアキト!! 私が・・・」

 

「御免、ユリカ・・・

 ちょっと眠らせてく、れ・・・」

 

 何かを言いかける二人を制して、俺はまた眠りに落ちた。

 ・・・今日一日くらい休んでも、誰も文句は言われないだろう。

 これから先の事を考えれば、休める時に休んでおきたいしな。

 

「お休みなさい、アキトさん。」

 

「・・・お疲れ様、お休みアキト。」

 

 大切な・・・二人に見守られながら。

 俺は深い眠りについた・・・

 今後の難解な問題を、少しでも忘れる様に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

第四話に続く

 

 

 

 


 

 あとがき

 現在、執筆絶好調のSIMUです。

 今のところ順調に書き進み

 感想のメールも幾つか頂け、幸福な状態です。

 

 それで今回は現在のエヴァの設定については説明します。

 

 

 

【名称】

 エヴァンゲリオン初号機・改

 

【詳細】

 サードインパクトの影響で初号機の肉体がほとんど駄目になり

 シンジが全人類の知識を使って作り直した。

 

 以前の初号機の体はコアを残してすべて破棄

 コアを元にして新たな肉体を形成

 その際コアを力を使って軽少化させ、肉体もかなり小さくなっている。

 全長は大体10m前後、エステバリスの月面フレームと大体同じくらいだと思う・・・

 

 容姿は前みたいに上半身に重心がいっておらず低くなっているので

 バランスが取れた体格をしている。

 装甲は前より増えて甲冑の様になっている。

 全身カラーのは以前と同じ紫、顔の部分は特に変わっておらず角も残っている。

 

【装備】

 元ウエポンラックの部分にはヤシマ作戦で使ったライフルと同じ陽子砲が取り付けられている。

 背中にはスラスターが付けられているが、これは基本的に飛行時の加速の為。

 手甲にはプログレシッブナイフが取り付けられていて、使用しない場合は手甲の中に収納されている。

 そして動力にはもちろん半永久式のS2ドライブが搭載されている。

 だが、初号機はシンジと一緒にサードインパクトの中心にいた為

 ただでさえ強力なS2ドライブがさらに普通の数倍の出力を出せる特別な物に変化している。

 

【能力】

 シンジの使徒としての能力がそのまま使える。

 背中から紅い翼を生やして飛行できる。

 普段は一対二枚の羽根だがS2ドライブの出力に比例して最大十八対三十六枚の羽根になる。

 

 

 

 ちなみにエヴァのS2ドライブが暴走したら地球が確実に消滅するほどのエネルギーが出ます。

 普段のS2ドライブの出力は5〜10%程度です。

 100%は基本的に出せません。 エヴァの体の方がエネルギーに耐えられませんから・・・

 今のところのエヴァの設定はこんなところです。

 何か面白い武装ネタがあったらメール送ってください。

 パワーが強くても武装はそれほどじゃありませんから・・・

 

 それじゃあ第四話も見てください。

 

 

 

代理人の感想

あ〜、そう言えばこの頃の時ナデってかなり露骨にルリ中心だったよなー(苦笑)。

これが結構痛くて・・・・げふんげふん。