< 時の流れに福音を伝えし者 >

 

 

 

 

 

第八話.『温めの「冷たい方程式」・・・ここからが本当の始まり、だ。』

やれやれですね・・・

 

 

 

 

 

「もう直ぐだよね・・・アキトが帰って来るのは。」

 

「そうだね、火星脱出から八ヶ月・・・過去と同じ事象が起こるとすれば・・・」

 

「じゃあ・・・今日はこれ位にしておきましょうか。

 予定の80%は完了してるし、後は仕上げだけね。」

 

「そうしよう、近頃は大分警戒がキツクなってきたし。

 十分に注意をしておいて損は無いしね。」

 

「ふふふ・・・まだまだ余裕があるくせに。

 でも、私も疲れたからもう寝る。

 通信を切るね・・・お休みハーリー。」

 

「ああ、お休みラピス・・・」

 

 

 

 

 

 

「・・・帰って来るんですね艦長・・・いや、ルリさん。

 アキトさんと一緒に。

 僕は・・・僕はやっぱり、彼には勝てないのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回も目が覚めれば・・・

 戦闘の真っ只中だった。

 

 第四次月攻略戦

 

 

 

 ピッ!!

 

 

『おはよう御座います、アキトさん。』

 

「ああ、おはようルリちゃん。」

 

 俺はぼやける頭を、強く左右に振って覚醒させる。

 そして、俺は周りの現状を素早く確認する。

 

 ・・・ご丁寧にも、また展望室に飛んでるな。

 過去と完全に同じ状況か。

 しかし・・・ルリちゃんって結構タフだな。

 俺より先に気が付いてるし。

 

『シンジさんもそこにいるんですね。』

 

 俺の左側にはシンジくんが丸まって気を失っていた。

 右側には、イネスさんが

 シンジくんのさらに左側にはユリカが気を失った状態で寝ていた。

 

「ここにいるってことは本能的に展望台にジャンプして来たみたいだな。

 てことはシンジくんはA級ジャンパーなんだろうな。」

 

『そのようですね。

 という事はシンジさんもエリナさんに目を付けられますね。』

 

「シンジくんには悪いが仕方ないな・・・」

 

 この時のあの人ならボソンジャンプの為なら手段を選ばなかったからな・・・

 

 ふと、寝息を立てているシンジくんが見ていると唸って寝返りをうつ。

 

「しかしシンジくんってこうして見ると中性的な顔をしてるな。

 言っちゃ悪いけどなんだか可愛い感じがして女の子みたいだよな・・・」

 

 俺はルリちゃんを見ると目を見開いて信じられないと言った顔をして俺の方を見ていた。

 ま、まさか・・・

 

『し、信じられません!!

 アキトさん!! そこまで見境無しになってしまったんですか!!』

 

「ち、ちがう!! 俺はただ思ったことを言っただけで・・・」

 

『こんな時のアキトさんの言葉は

 【ムネタケ副提督がまともになったと言う】よりも・・・

 【イズミさんが面白いギャグを言う】よりも・・・

 【ヤマダさんがヒーローになる】よりも・・・

 全然信用できません!!!』

 

 支離滅裂だよ、ルリちゃん・・・

 だけど俺ってそこまで信用がないのか・・・

 

「と、取り合えず最初にユリカを起こそう。

 外は戦闘中だしな・・・」

 

 俺はルリちゃん刺すような視線を背中に浴びながら

 かなり激しくユリカの身体を揺さぶる。

 

「おい、ユリカ起きろ!! 起きろってば!!」

 

 お、反応があったぞ。

 

「う〜〜〜ん、アキト〜〜〜〜」

 

 ゴロッ・・・

 

 寝言を言いながら横に転がる。

 

 ・・・そして、それっきり動かないユリカ。

 

「何だよ?

 ・・・まだ寝てるのか、コイツ?」

 

 寝言で返事を返すな!! 紛らわしい!!

 

「えっ!! アキト!!

 ・・・そんな駄目よ、まだ正式に付き合ってる訳じゃ無いし。

 でも、アキトなら・・・私。」

 

 ・・・本当に寝言か? ユリカ?

 

 俺は疑いの眼差しで、馬鹿な事を言っているユリカを睨む。 

 

『・・・で、どうするんですかアキトさん。』

 

 鋭い視線を俺に向け続けるルリちゃん・・・

 ユリカが起きるまでずっと監視をするつもりなのか?

 別に、俺は疚しい事をしてた訳じゃ無いんだ。

 そうだよな・・・なら、堂々としていよう・・・

 しかし、ユリカの寝顔を見るのも久しぶりだな。

 

 あの、屋台を出していた時間を思い出す・・・

 忘れる事を強制した、幸せな思い出の時間。

 ルリちゃんとユリカ、三人で屋台を引いて帰ったよな。

 同じ部屋で寝泊りして・・・

 

 ・・・今なら、あの時をやり直せる?

 いや、止そう。

 この想いは・・・封印したんだ。

 

「強行手段に出る。」

 

 ユリカの寝起きの悪さは、俺もルリちゃんもよく知っている。

 さて、どうするか?

 

『・・・目覚めの口付でもしますか?』

 

 ル、ルリちゃん? 何を言い出すんだよ。 

 

 ん!! 何故かユリカが顔を赤らめてる?

 お前まさか・・・

 

「・・・じゃあ、お言葉に甘えて。

 ついでにその先も、やっちゃおうか?」

 

「ほ、本当アキト!! でも、あの、その先って!! あ・・・」

 

 

 シーン・・・

 

 

『・・・馬鹿。』

 

 ルリちゃん・・・久しぶりだねその台詞。

 俺とルリちゃんの冷たい眼差しが、ユリカに突き刺さる。

 そして冷や汗をかきながら、ユリカが現状をルリちゃんに聞く。

 

「ル、ルリちゃん現状を報告!!」

 

 誤魔化したなユリカ。

 

『はい、ナデシコは通常空間に復帰しました。

 ・・・現在ナデシコ船外では戦闘中。』

 

「へ? 誰と誰が戦闘をしてるの?

 ・・・あれ? 私どうして展望室にいるの?」

 

 頭を捻りながらユリカがルリちゃんに質問をする。

 ・・・今の状況は、そんな呑気な事を言ってる場合ではないぞユリカ。

 

『モニターに出します・・・これ現場です、艦長。』

 

 ルリちゃんも、説明するより実際に見せる方が早いと考えたらしい。

 モニターには・・・連合宇宙軍と木星蜥蜴の戦闘が映しだされた。

 あ、一匹のバッタがドアップで飛んで来る・・・

 

「のええええええええ!!!」

 

 はしたないぞユリカ・・・お前、お嬢様育ちだろうが?

 

「ど、どーなってるの、これ?」

 

『本艦は現在月付近を航行中、木星蜥蜴の軍の真っ只中です。』

 

 どうやらチューリップから出現して、さほど時間はたってないみたいだな。

 俺はルリちゃんの報告を聞きながら、そう判断した。

 

「グ、グラビティ・ブラスト広域放射。

 直後にフィールドを張って後退!!」

 

『了解しました・・・』

 

 ん、ちょっと待てよ確か過去ではその命令を実行して・・・!!

 

「ル、ルリちゃん、ちょっとその命令・・・あ。」

 

 

 ゴワァァァァァァァァァァ!!!

 

 

 ドゴゴゴゴ!!

 

                バガガガガガッガア!!

 

 俺の目の前では、グラビティ・ブラストの広域放射で破壊される無人兵器の群れが・・・

 ついでに破壊される、連合宇宙軍の艦隊が・・・

 

「ルリちゃん・・・」

 

『大丈夫です、奇跡的にも連合宇宙軍に死人は出てません。』

 

 ・・・そ、そう?

 まさか、さっきのユリカの狸寝入りの報復じゃ無いよな?

 

『艦長、巻き込まれた連合宇宙軍の司令から、苦情の連絡が入ってます。』

 

「え、ええええええええええ!!!」

 

「無様ですね、艦長。」

 

 起きてたのか!! シンジくん!!

 一体何時から・・・

 

 

 

 その後、ユリカは連合宇宙軍の司令からさんざん嫌味と脅しを受け・・・

 いじけている所を更に、ジュンとゴートさんの小言に追撃をされていた。

 

『ふぇぇぇぇんんん、ごめんなさ〜〜〜い。』

 

『御免で済んだら戦争なんておきないよ、ユリカ。』

 

 うむ、名言だジュン。

 

『せめてブリッジにいれば、状況は見えた筈だ。』

 

『うううう、だって気が付いたら展望室にいたんだもん・・・』

 

 そして連合宇宙軍の艦隊は、傷付いたナデシコを残して去って行った。

 ・・・一応民間の船が困ってるんだから、助けろよな軍人さん。

 

『・・・これでユリカさんも反省するでしょう。』

 

「・・・やっぱりルリちゃん、解っててやったんだね。」

 

 俺はエステバリスに待機状態だったので、ブリッジの会話を通信で聞いていた。

 ルリちゃんに逆らうのは怖い、と俺は痛感した・・・

 

『そうだ!! ねえアキト!!

 アキトはどうして私達が展望室にいたか、皆に説明出来ないかしら?』

 

 いや・・・説明は出来るが・・・

 ここで話せる様な内容じゃないぞユリカ?

 

「え、そんな事を言われても・・・俺も何が何だか・・・」

 

 ピッ!!

 

『私もその話に、興味があるな〜アキト君?』

 

 ヒカルちゃんが会話に乱入してきた・・・

 

 ピッ!!

 

『私も聞きたいです。

 大体非常識です、戦闘中に展望室に行くだなんて。』

 

 メグミちゃんも登場・・・だから、別にヤマシイ事はしてないって。

 

「・・・ほら、イネスさんも一緒に居たじゃないか!!

 イネスさんに説明し・・・そう言えば寝てたな、まだ。」

 

 

 

「う〜〜ん・・・」

 

 この時、イネスさんは幸せな夢の世界にいたそうだ・・・

 

 

 

 俺はあれだけユリカと一緒に騒いでいたのに、起きなかったイネスさんを思い出した。

 は、八方塞がりか?

 いや、待てよ・・・確か過去では、ここでリョーコちゃんが助けてくれた筈だ!!

 

 ピッ!!

 

『テンカワ・・・』

 

「リョ、リョーコちゃん!!

 リョーコちゃんは俺を信じ・・・」

 

『俺もその話に興味があるな。』

 

「・・・へ?」

 

 望みは全て断たれた・・・

 

 ・・・ルリちゃん、助けて。

 ユリカ、メグミちゃん、ヒカルちゃん、リョーコちゃんの四人の通信ウィンドウに囲まれながら・・・

 俺はルリちゃんに、目で助けを請う・・・が・・・

 

『私も聞きたいですね。』

 

 ・・・撃沈された。

 いや、まだだ・・・

 まだ俺を助けてくれる存在が・・・

 シンジくんがいた!!

 

 俺はシンジくんに通信をいれる

 

 ピッ!!

 

「シンジくん!! きみも展望台にいたんだから

 この状況を何とかするの手伝ってくれ!!」

 

『・・・・・・』

 

 シンジくん? ど、どうしたんだ?

 俯いたまま黙り込んで・・・

 

 俺はそのシンジくんの雰囲気に嫌な予感がしていた・・・

 

「・・・シンジくん?」

 

 プイッ!!

 

『・・・・・・悪かったですね!!

 女の子みたいな顔で可愛い感じがして!!!』

 

 顔を赤くして背けるところが可愛いって思ってしまうだが・・・

 ・・・って、そりゃまずいぞ!

 

「てっ、やっぱりシンジくんあの時起きてたのか!!」

 

『ルリちゃんに見せてもらったんですよ。

 僕が気がつくまでの間のことを・・・」

 

「そ、そうなのか・・・」

 

『アキトさん・・・』

 

「な、なんだ!?」

 

『・・・・・・見境無し。』

 

 ブチッ!!

 

「な!! シンジくんまで誤解しないでくれ!!」

 

 シンジくんは通信を切ってしまった。

 しかもさらっと爆弾を残して・・・

 

「・・・・・・」

 

 この後の展開を予想して俺の思考は停止していた。

 俺は何もしてない・・・はずなのに・・・

 

 他の画面からは俺にいろいろな視線が向かってきていた。

『シンジさん、やりますね。』

『アキトくん、そういう趣味があったの?

 たしかに気持ちは分からなくもないけど〜』

『悪いのはアキトさんだよ。 僕を女の子とか言って・・・』

『アキトさん、嘘ですよね!!

 展望室でそんなことがあっただなんて!!』

『そうですね。 今回はたっぷり懲りてもらいましょう。』

『テ、テンカワ!

 お、俺は、よ、よくわからねえんだけど

 そ、そういうのは間違ってると思うんだ・・・』

『自業自得だからね。』

『アキト、大丈夫だからね!!

 アキトが間違った道に入っても

 私が戻してあげるからね!!』

 

 

「だからちが〜う!! 誤解なんだ〜!!」

 

 

 俺は間違っていないはず・・・間違ってないはずなんだ。

 なんで・・・なんで・・・なんで・・・

 

 俺は思考の迷路に迷い込んだ・・・

 

 

【敵、第ニ陣来ます。】

 

『有難うオモイカネ・・・艦長、敵第ニ陣が来ます。】

 

 ・・・助かった。

 俺は出会ってからはじめて、無人兵器に感謝した。

『逃げられましたね。』

『そうだね。 もう少し追いつめたかったけど・・・』

『仕方ありませんよ。
 でも、すぐに次の機会が来るでしょうし。』

『来なければそれでいいんだけど・・・』

『アキトさんですからね。』

『『はぁ・・・』』

 

 

 

 

 

 敵の大群が目の前に展開している・・・

 まさに雲霞の如く、だな。

 

『リョーコ、作戦は?』

 

『この数だぜ?

 各自戦況に応じて応戦だ!!』

 

『了解!!』 × 俺、シンジくん、ヒカルちゃん、イズミさん

 

 確かこの戦いの途中で、俺はアカツキ ナガレと出会うはずだな。

 それとナデシコ級戦艦コスモス、とも。

 エリナさんは今回も同行・・・してるだろうな。

 

 まあ良い。

 今は憂さ晴らしに無人兵器を落す!!

 俺はかなり好戦的な考えに取り憑かれていた。

 ほとんどさっきの八つ当たりなのだろうが・・・

 

 俺は盛大にスラスターの炎を宇宙に描きながら・・・

 獲物に襲いかかる豹の如く、貪欲に敵を殲滅しだした。

 

 

 

 

 ドゴゴゴン!!

 

 

『うっそ〜〜〜!!

 バッタさん達のフィールドが強化されてる〜!!』

 

 自分が撃墜したはずのバッタが、多数生き残ってるのを見てヒカルちゃんが叫ぶ。

 

『・・・進化する兵器、って訳ね。』

 

 冷静に現実を分析するイズミさん。

 

『僕は特に問題ありませんけど・・・』

 

 シンジくんがバッタを倒しながらとくに関係なさそうに言う。

 まあ、エヴァとエステバリスじゃ性能が違い過ぎるからな。

 

『へん!! だからどうした!!

 それなら拳で決着をつけてやるだけだ!!』

 

 何処か嬉そうなリョーコちゃん。

 

 

『そのと〜り!!

 男は拳で勝負だ!!』

 

 

 ・・・こ、この声は!!

 俺の視線の先には、アイツのエステバリスがあった。

 そして通信ウィンドウが開く。

 そこには、あの男が映っていた。

 

『て、てめーは確か!!』

 

『リョーコとイズミと私でフクロにした、男の人?』

 

『本当にパイロットだったのね。』

 

 

『だからあの時そう言っただろうが!!』

 

 

 ガイの叫びに、俺の鼓膜が悲鳴をあげる!!

 

「・・・もう少し、小さな声で話してくれガイ。」

 

『・・・うるさいですよ』

 

 シンジくんも抗議の声を上げる

 

『おう!! 待たせたなアキト!!

 お前の真の親友が、やっと戦場に復活したぜ!!』

 

『真の親友だって、アキトさん。

 その親友に対してはどう思ってるんです?』

 

 ・・・すまん、さっきまで存在すら忘れてた。

 

『テンカワ・・・友人は選べよ。』

 

『アキト君・・・この人、濃すぎるよ。』

 

『今迄何処にいたの、彼?』

 

 

『お前等が俺を再々入院させたんだろうが!!』

 

『無様な人』 By 戦闘中のシンジ

 ガイ・・・頼むから小声で喋ってくれ。

 しかも今は戦闘中だぞ。

 

「ガイ・・・その話はまた後で、全員で話して解決しよう。

 今は戦闘中だからな。」

 

『そ、そうだったな。

 ・・・これが、これが俺の初の木星蜥蜴との戦闘になるんだ!!

 アキト!!

 俺こそがナデシコの真のエースだという事をよく見てろよ!!』

 

『・・・馬鹿』 By ブリッジのルリ

 

「そ、そうか・・・まあ、また怪我をしない様に頑張ってくれ。」

 

『おう!! 任せとけって!!』

 

 そして俺達は戦闘に突入した。

 俺はかなりガイの行動に、不安を抱いていたが・・・

 

 

 

 

 ドババババババ!!

 

                                         ドドン!!

  

                  ボカァァァンン・・・

 

 俺は快調にバッタやジョロを掃討していく・・・

 しかし、フィールドの強化はさすがに痛いな。

 俺にとっては、少々てこずる程度の事だが・・・

 

『む〜、このバッタさん達生意気!!』

 

『・・・以前ほど、有利に戦え無いわね。』

 

『殴る殴る殴る!!』

 

『秘技!! バッタ三枚下ろし〜♪』

 

 この三人は、経験も腕も一流だから大丈夫だろう。

 シンジくんにいたっては遊べるほどの余裕だ。

 

 で、ガイは・・・

 腕は一流だと思うんだけど。

 

 

『ガァイ!! スゥーパァー・・・ぐえ!!』

 

 

 ・・・ガイ、乱戦状態の戦場でいちいちポーズを決めながら戦うなよ。

 囲まれてるぞ、おい・・・

 あ、台詞の途中で攻撃を受けてる。

 

 

『うぉ!! おのれ卑怯な!!

 アキト!! 親友のピンチだぞ!!』

 

 

『だそうですけど、どうするんです? 親友のアキトさん。』

 

 ・・・なんだか親友を止めたくなったよ、俺。

 

 その時、包囲されているガイを助け出す機影が現れる!!

 

 ・・・ここで登場か、アカツキ!!

 しかし、ガイお前って・・・

 

『役立たずですね・・・』 By ブリッジのルリ

 

『無様ですね・・・』 By バッタを料理中のシンジ

 

 

 

『君達、下がりたまえ!! ここは危険だ!!』

 

『誰だよテメーは!!』

 

 突然の乱入者に驚くリョーコちゃん。

 その時・・・幾筋もの閃光が木星蜥蜴の軍を襲う!!

 

 

 ドゴォォォォオオォオオオンンンン!!!

 

 

『敵、二割がた消滅。』

 

『うっそ〜〜!!』

 

『第二波感知。』

 

 

 ドゴォォォォオオンンンン!!!

 

 

『す、凄い!!』

 

『多連装のグラビティブラスト、だと!!』

 

『そ、それじゃあ!!』

 

 

 そして、その後はコスモスの活躍により木星蜥蜴の軍は壊滅した。

 ・・・俺はストレスの発散をする事なく、ナデシコへと帰艦した。

 

「ふっ・・・ガイのせいで暴れる事が出来なかった。」

 

『近頃のアキトさん、凄く疲れてますね?』

 

 ・・・否定はしないよルリちゃん。

 

『僕はある程度遊べましたよ。』

 

 それはよかったねシンジくん・・・ハァ

 

 

 

 

 

 

 そして、ナデシコの格納庫にて・・・

 

「やあ、はじめましてナデシコの皆さん。

 俺はアカツキ ナガレ、コスモスから来た男さ。」

 

 そう挨拶し終わると同時に、何故か歯が光った。

 すぐにわかった・・・この人は加持さんと同類な人だと。

 でも何処となくカヲルくんにも似ているような・・・

 

 この人もアキトさんの親友らしいけど・・・

 アキトさんの親友ってかなり個性的な人ばかりですね。

 そういえば僕の親友といえば・・・

 

 トウジ=熱血馬鹿

 ケンスケ=ミリタリーオタク

 カオルくん=具体的には言えないがちょっと変な性格

 

 ・・・すみません、アキトさん。

 僕の親友達もけっこう濃い人達ばかりでした・・・

 

 

 そういえばさっきからウリバタケさんが

 アカツキさんの乗ってきたエステバリスに頬擦りをしていた。

 

「ウリバタケさん、なにやってるんですか?」

 

「おう、見てみろよこのエステバリス!! 新型だぜ!!

 顔が違うしジェネレーターもコンパクト!! その上お肌もすべすべなんだぜ!!

 こう頬擦りしたくなっちまうんだよ。 わかるだろお前なら!!」

 

「そ、そうですね・・・」

 

 ウリバタケさんもこういうところがナデシコクルーなんだよな。

 まあ、ほどほどにしといて下さいね。

 

 そこにアカツキさんがコクピットから降りてきた。

 

「僕にはわからないねえ。

 鉄の肌の何処がいいのか。

 僕はどちらかって言うと・・・」

 

 そう言っている途中にアカツキさんは僕の手を取り

 もう片手を僕の手の甲に乗せる。

 って、まさか・・・

 

「女性のすべすべな肌の方が好きだね。

 そう、例えば君みたいな可愛い娘なんかの。」

 

 や、やっぱりぃぃぃぃ・・・

 どうしてこうなるのさぁ。

 

「・・・・・・」(格納庫内のアカツキさん以外全員)

 

 アカツキさんの言葉に格納庫内の人が全員沈黙しちゃってます。

 当然なんでしょうね

 

「お、おや、僕何か変なこと言ったかい?」

 

 アカツキさんもまわりの雰囲気に戸惑っています。

 

「・・・・・・アカツキさん。」

 

「な、なんだい・・・」

 

「・・・僕・・・男です。」

 

「・・・・・・」

 

 今度こそ完全に格納庫内が沈黙した。

 

 そして最初に再機動を果たしたのはアカツキさんだった。

 

「そ、そうだったのか・・・す、すまなかったね・・・

 そ、それじゃあ、僕は艦長に挨拶があるから・・・」

 

 そういって逃げるよう格納庫から出て行った。

 

「・・・・・・プッ!」

 

 最初は誰だったのかわからないが

 格納庫内は沈黙から大笑いが響き渡った。

 

 

「ぶははははっははは!!!!」(格納庫内)

 

 

 それははたから見たら面白いか見知れませんけどね・・・

 僕は女の子に間違えられたんですよ!!

 

 ポンッ!!

 

 誰かが撲の肩を叩いた。

 振り向いてみるとそこにはヒカルさんがいた。

 

「あ、あのねシンジくん。

 間違えられたのは悪いんだけど、しかたないんじゃない。

 シンジくんは可愛いんだし・・・」

 

 ヒカルさんが慰めてくれるのはいいんですけど・・・

 

「誉め言葉として受け取っておきます・・・ううぅ」

 

 全然慰めになってないよ・・・

 

 そりゃ僕は中性的な顔なのは自覚しているけど

 なんで一日に二度も言われなきゃいけないのさ!!

 

 

 

 

 

 

 その頃ユリカさんは、ネルガルの偉い人達と何か話し合いをしていたらしい。

 

『では、良い返事を期待するよ。』

 

「はあ、取り敢えずクルーの皆と相談します。」

 

 なんだかいろいろあるんですね、艦長も・・・

 そういえば艦長の仕事って指揮以外にあるのかな?

 そういえばユリカさんも仕事の辺りがミサトさんに似ているような・・

 

 

 

 

 

 

「チューリップを通り抜けると、瞬間移動する・・・とは限らないのね。」

 

 起きたんです、イネスさん。

 今、僕達は主要なメンバーが集まってブリッジで会議をしている。

 

「少なくとも火星での戦いから、8ヶ月が経過しているのは事実よね。」

 

 本当に八ヶ月も時間が過ぎたんだ・・・

 

「ちなみに、その間に連合軍とネルガルは和解し・・・

 戦艦を作って月面を奪還。

 で、私の見解では!!」

 

「ああ、それはまたの話しで!!」

 

 見事にイネスさんの話を切りましたね、プロスさん。

 

「それでネルガル本社は、連合軍と共同戦線をする事になりまして・・・

 ね、艦長。」

 

「あ、それで・・・ナデシコは地球連合海軍 極東方面に編入されます。」

 

 暗い表情で、ネルガル本社からの今後の方針を告げるユリカさん。

 

「私達に軍人になれって言うの?」

 

「ま、一時的な共同戦線みたいなものかな。」

 

 アカツキさん、今度はミナトさんを口説くんですか?

 さっきあんなドジしたのに懲りない人だな〜。

 しかも僕の時と同じことしてるし・・・

 

 

 しばし観戦・・・ (ミナト VS アカツキ)

 

 

 見事撃沈、無様ですね。

 まあ、ナデシコでの掴みはもう完璧ですね。

 女たらしという認識がされただけでしょうけど・・・

 

 まあ、アキトさんにはかなわないでしょうけど・・・

 

「シンジくん、それはどういう意味だい?」

 

「・・・言葉通りの意味ですよ。」

 

「まったくです。 自覚がある分アカツキさんのほうがましです。」

 

「・・・どういうことだ?」

 

「・・・馬鹿。」 By ルリ&シンジ

 

 アキトさんとこの話題をしてると頭が痛くなるよ。

 何時になったら自覚してくれることやら。

 

 見るとアキトさんは、未だ頭を捻って理解せずにいた。

 

 

 

「・・・天然、ですかアキトさん。」

 

 ルリちゃんの呟きもアキトさんは理解しないんだろうな〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第八話 その2に続く