< 時の流れに福音を伝えし者 >

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦開始まで、後8分30秒♪」

 

「・・・やけに機嫌がいいわね、ルリルリ?」

 

「そ、そうですか?」

 

「グラビィティ・ブラストへのバイパス接続開始。

 ・・・怪しい、怪しいですよね、ユリカさん?」

 

「エネルギーチャージと共に山陰から出てグラビティ・ブラスト発射!!

 ど〜〜〜んと、やっちゃって下さい!!

 さて・・・ルリちゃん、正直に言って!!

 何があったの?」

 

「え・・・予定作戦ポイントまで、17,000。

 ひ、秘密です(ポッ!!)」

 

「・・・ルリルリ、まさかアキト君に。」

 

「何でもありません!! ミナトさん!!」

 

「相転移エンジン全システム問題無し。

 ディストーション・フィールド出力13%ダウン。

 最終セーフティ解除!!

 ルリちゃん・・・正直に答えてよ。

 何があったの?」

 

「・・・よ、予定作戦ポイントまで1500。」

 

「・・・ミスター、これが戦艦のブリッジでする会話か?」

 

「・・・全ての元凶は彼ですからね。」

 

(彼・・・テンカワ アキト。

 ・・・僕、いや僕達の敵!!) By 影の薄い人

 

「・・・ル〜リ〜ちゃ〜ん。」

 

「・・・ル〜リ〜ル〜リ」

 

「・・・予定作戦ポイントまで800。」

 

「どうして誤魔化すのかな? ルリちゃん?

 ユリカにも言えない事なのかな〜〜〜?」

 

 

 ドゴォォォオォォオォォォォォンンンンン!!!!

 

 

「何!? 何が起こったの!?」

 

「・・・敵弾発射。」

 

 

「へ!? 今頃!!」(ブリッジ全員) 

 

 

 キュイィィィィィィンンン!!!

 

 

 ドゴォォォォォォォォォンンンン!!!!

 

 

「敵弾は外れましたが損傷による爆発よって

 更に被害が起こっています。」

 

「ディストーション・フィールド消失!!」

 

「ルリちゃん、なんか遅れてるよ!!

 敵の攻撃は当たってるよ!!」

 

「ナナフシの攻撃は外れてます。

 その攻撃が来る前に別の攻撃が着弾しました。

 そのおかげでナデシコが軌道をずれてナナフシの攻撃を回避出来ましたが・・・」

 

「相転移エンジン停止!!」

 

「結局同じだよ〜!!」

 

 

 ピッ!!

 

 

『ナナフシの攻撃の正体は重力波レールガンである事が分かったわ。

 その直前に来た攻撃は高出力の加粒子砲みたいね。

 それもナデシコのセンサー外からの攻撃で・・・』

 

「イネスさん・・・説明御苦労さまです。

 って、今はそれどころじゃないんですってば!!」

 

「操舵不能!! 墜落します!!」

 

「補助エンジン全開。」

 

 

 ゴォォォォォォォォォォ!!

 

 

『ちょっと、私の説明を聞いてるの艦長?』

 

「聞いてる場合じゃ無いんですってば〜〜〜〜!!」

 

 

 ズザザザザザザザザザザザアアアアア・・・・

 

 

 

 

 

 

 

『威力は凄いけど、マイクロブラックホールの生成に時間がかかるから、

 暫らくはナナフシからの攻撃の心配はないわ。

 問題は先に来たの攻撃の方ね。

 ナデシコのディストーションフィールドを軽く破ってしまったし、

 今衛星を使って調べているけどかなりの距離から攻撃されたから、

 次の攻撃が何時始まるかわからない危険な状態だわ。』

 

 

 ピッ!!

 

 

「き、貴重な御意見どうも・・・

 未確認の敵の発見を急いで下さい。」

 

「タフですね・・・イネスさん。」

 

「あの人も謎な人よね・・・所でルリルリ♪」

 

「あ、私ちょっと用事が・・・それでは。」

 

 

 

 

 

 

 

「さて、これからどうしましょう・・・」

 

「やっぱり、エステバリスの出番かな。」

 

「対空攻撃システム・・・軍の迎撃部隊はコイツに全滅させられているのね。」

 

「あ、おられたのですか提督?」

 

「・・・悪かったわね、影が薄くて。」

 

「・・・それと、そんな大事な事早く言って下さい!!」

 

「あれ? 言って無かったかしら?」

 

「とにかく!! ナナフシの方は空からエステバリスを向かわせても、同じって事ですね。」

 

「う〜ん、空からも駄目・・・となると・・・」

 

 

 ピッ!!

 

 

『ナナフシのマイクロブラックホールの生成時間は12時間。

 17時に攻撃を受けたから、次ぎの攻撃は明朝5時になるわね。

 そして・・・』

 

「はいはい!! 貴重な御意見有難うございました!!」

 

 

『待ちなさい!! まだ重要な話は終わってないの!!

 先に来た謎の攻撃、その正体がわかったわ。』

 

「それで、一体何だったんです?」

 

「これよ。」

 

 

 ピッ!!

 

 

「・・・なにこれ?」

 

『常識を疑うのも無理はないけど

 あの加粒子砲を撃ったのは間違いなくこのプリズム形状の物体よ。』

 

「それで、これは一体何なんですか?」

 

「使徒ですよ、あれは。」

 

『「え!?」』

 

 

 

 

 

 

 ブリッチでは再び会議が行われた。(イネスさんはデータ採取のため通信で参加)

 

『それでシンジくん、あれは本当に使徒なの?

 前回のとはまったく形が違うわよ。』

 

 画面に表示された使徒を見ながらイネスさんがそう言うと

 他の皆も頷く。

 

「使徒はそれぞれ姿が違うんです。

 それも人型から魚みたいな物、アメーバみたいな物までいるんです。」

 

「それであの使徒はどういう奴なの?」

 

 今度は艦長が聞いてくる。

 

「あの使徒は見ての通り格闘能力はありませんが強力な加粒子砲を持っています。

 接近戦を捨てた遠距離戦に特化した使徒です。」

 

『その使徒だけどだんだんこっちに向かって来てるわ。

 運よく山影に不時着したおかげで使徒の攻撃範囲から外れる事ができた。

 幸い使徒の進行速度はかなり遅いけど、あと一時間もすれば射程内に入ってしまう。

 そしたらナナフシにやられる前にアウトよ。』

 

「じゃあエステバリス隊を二手に分けてそれぞれと向かわせますか?」

 

「それはやめた方がいいですよ。」

 

 僕はジュンさんの考えを否定する。

 

『その通りよ、あの使徒の加粒子砲はナナフシの重力波レールガン程の威力はないかわりに

 ある程度連射が出来る筈よ。

 それでもエステバリスに直撃したらディストーション・フィールドごと

 加粒子砲に飲み込まれて消し炭になるわ。』

 

「それじゃあ打つ手無いじゃないですか〜。」

 

 艦長が諦めたように気の無い声を出す。

 

「大丈夫ですよ艦長。

 僕が使徒の方を何とかしますから皆さんはナナフシの方を何とかして下さい。」

 

「え? シンジくんが一人で?」

 

 だってそれしかないでしょ。

 ナデシコが健在だってラミエルに勝てるかどうか・・・

 たった十数秒間隔で加粒子砲を撃ってくるから

 グラビティ・ブラストで撃ち合っても間に合わないよ。

 

『そうしてくれると助かるわシンジくん。

 例えアキトくんでもエステに乗っている以上勝てる可能性が低いわ。

 艦長、時間が無いからシンジくんにはすぐに出てもらったほうがいいわ。

 私達はナナフシに専念しましょう。』

 

「・・・わかりました。

 アキトに出来ないって言うのは認めたくないですけど、

 使徒の事はシンジくんに一任します。」

 

「了解。」

 

 僕は艦長に言われそう答える。

 なんだか始めて艦長が戦闘指揮らしいことを言ったような気がする。

 

『それじゃあさっそくエヴァで出てちょうだい。

 使徒の情報はナデシコからエヴァに送り続けるから。』

 

「わかりました。」

 

「シンジくん、頑張ってね。」

 

「ちゃんと帰って来てね。」

 

「はい。」

 

 ヒカルさんとミナトさんに励まされながら、僕は格納庫へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 僕はエヴァのコクピットに座りながらイネスさんから使徒の情報を聞いていた。

 

『今ナデシコがいるのは使徒から見て山の向こう。

 つまり山影から出るまでは使徒の攻撃の心配はないわ。

 そこまでは山より上空に出ないように低空飛行をして近づけるわ。

 そのあとの事は全てあなたに任せるしかないわ。』

 

「分かりました、使徒の攻撃はフィールドを傾けて受け流せば十分耐えられますんで、

 そのまま接近してこっちの攻撃が届くところまできたら使徒を攻撃します。」

 

 最もS2ドライブの出力を上げれば加粒子砲の直撃にも耐えられるATフィールドを作り出せるけど。

 

『単純だけど確実な作戦ね。

 ナナフシの方は私達に任せてその後はゆっくり戻ってくればいいわ。』

 

「分かりました。」

 

 イネスさんと話が終わり通信を切る。

 サキエルの次はラミエルか。

 確かミストは自分達をマリオネットエンジェルって言ってたっけ。

 てことはラミエルにも人の姿をした者がいるってことか。

 マリオネットエンジェル・・・操り人形の天使か。

 彼等は操られるだけって事かな?

 もし彼等の中にゼーレに反抗的な人がいたら説得出来るかも?

 

 

 ピッ!!

 

 

「あ、アキトさん。」

 

『シンジくん、ほんとに一人で大丈夫なのか。』

 

「ええ、それにエステバリスじゃアキトさんでもラミエルに接近するのは無理でしょ。」

 

『ラミエルって、使徒の名前か?』

 

 そう言えば名前までは話してなかったっけ。

 

「ええ、ちなみに先日のはサキエルという名前です。

 その名前が彼等の使徒としての本来の名前です。」

 

『彼等・・・シンジくんがテニシアン島で戦ったっていう奴か。

 そのあと出て来た使徒のはそいつが乗ってたって言ってたけど

 今度も乗っているのか?』

 

「まだわかりません。

 あの時は直接コンタクトの取れる距離にいて

 向こうが応えてくれたからわかっただけですから。

 でもおそらく乗っている筈です。

 遠隔操作くらいなら出来るかもしれませんが

 それだと戦闘までは対処出来ないでしょうから。」

 

『そうか、とにかくそっちの方は頼む。

 俺達はナナフシの方を必ず何とかするから。』

 

「はい。」

 

 アキトさんとの通信が切れ僕は発進準備に取りかかる。

 でも、ラミエルまでの距離はかなりある。

 接近するまでかなり時間が掛かるかもしれない。

 

 ・・・ある程度近づいて、あの技で止めを刺すか。

 さっきできたばかりで完成度は低いけど命中精度はそれなりにあるし

 あとは隙を突いてタイミングとそのあとさえ注意すれば大丈夫かな。

 

 戦闘方法を考え終わると僕は重力カタパルトから発進した。

 

 

 

 

 

 

 ゴゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウ!!!

 

 

 山影を低空飛行で移動しつつ僕はナデシコから送られてくる情報でラミエルの位置を確かめていた。

 そろそろラミエルの有効射程内に入るので僕は森の中に不時着した。

 

 さてと、これからどうしよう?

 ATフィールドを張って攻撃の瞬間が分かるようにするか。

 それとも張らずに気配を消して近づこうか?

 

 ATフィールドの応用で自分に当たる光のみを遮断すれば肉眼では見えない光学明細が出来るけど

 使徒あいてではATフィールド自体が感知されるから意味がない。

 

 やっぱりATフィールドと気配を消してこっちの攻撃範囲まで近づく方法でいこう。

 

 僕はエヴァが無意識に放出するATフィールドのエネルギーを最大限に抑える。

 他にもS2ドライブの出力も行動用とコクピットの電力分を補うだけの出力に下げた。

 そして僕は森の中を木を避けながら走り始めた。

 

 

 

 

 こちらの攻撃範囲はせいぜい5km。

 ラミエルは大体その十倍の50km。

 既にその50km圏内に入っているけどラミエルからの攻撃はない。

 どうやら気配を消す事には成功してるみたい。

 

 ラミエルが山影のナデシコに攻撃が届く位置まであと約十五分

 それまでに5km以内に近づかないと。

 間に合わなかったら、こっちに注意を引き付ければ何とかなるか。

 

 

 

 そしてあと10kmといったあたりで・・・

 

「!! マズイ!!」

 

 とても小さな感覚だがATフィールドに触れたような感じがした。

 その直後ラミエルから大きなエネルギーを感じた。

 

 

 ドゴオォォォオォォォォォンンンン!!!

 

 

 ラミエルから発射された加粒子砲はすぐ右を通り過ぎた。

 僕は気づいた直後に左に跳んでいたので何とかかわせたのだ。

 

 さっきのATフィールドの感じはおそらくATフィールドをセンサーとして約10km圏内に広げていたもの。

 僕が以前ATフィールドをセンサーとして扱ったとき、体に触れられるより繊細に感じる事が出来た。

 多分ラミエルもそれくらいはっきりとわかった筈だ。

 

 僕はS2ドライブの出力を上げ、何時でもATフィールドを張れるようにした。

 今まで以上の速さでラミエルに向かって走る。

 

 その時、第二射が発射された。

 僕はATフィールドを斜めに展開し加粒子砲を受け流した。

 加粒子砲は受け流した事で向きを変えて空に消えていった。

 

 

 

 その後も走りながら加粒子砲を受け流してラミエルに接近する。

 こっちの攻撃可能範囲まであと1000mを切った。

 

 

 900・・・

 

 800・・・

 

 700・・・

 

 600・・・

 

 500・・・

 

 400・・・

 

 300・・・

 

 200・・・

 

 100・・・

 

 0!!

 

 

 僕は急停止し十何発目かの加粒子砲を受け流す。

 加粒子砲が止んだと同時に僕は両腕をラミエルに向ける。

 両手を球を持つようして構え、そこにATフィールドを集め回転をくわえる。

 ATフィールドを圧縮し回転速度をどんどん上げる。

 

 アキトさんの『咆竜斬』の場合、ディストーション・フィールドを圧縮した物だから

 空間の大きな歪みが重力崩壊起こすのに対し、僕のATフィールドを圧縮した場合、

 物質化した物が出来てしまう。(一応AT物質と呼んでおく)

 だが物質の圧縮限界がくれば重力崩壊を起こす事が出来るけどあまりに時間が掛かり過ぎるので、

 僕の場合は圧縮に超高速回転をくわえる事で重力崩壊を起こす事にした。

 

 

 ドギュウゥゥゥウゥゥゥゥゥンンンン!!!!

 

 

 その時、再びラミエルから強力な加粒子砲が発射された。

 

 両手の中には紅い光球がプラズマを発生させながら小さくなりつつ超高速回転し

 米粒くらいに小さくなった直後、手の平に丁度納まる大きさの漆黒の球体が生まれた。

 

 

 

 「我流砲技!!! 第三門!!!

   漆黒の咆哮!!!!」

 

 

 

 

 グウオォォオォォォオォォォォォ!!!!

 

 

 

 エヴァの咆哮に似た音と共に、黒い球体から漆黒の閃光が発射された。

 漆黒の閃光であるマイクロブラックホールはラミエルの加粒子砲と衝突するが、

 加粒子砲を飲み込んで突き進み、ATフィールドをものともせず

 ラミエルの体の中のコアを確実に貫いた。

 

 貫いたマイクロブラックホールはそのまま空へと消え宇宙に消えた。

 マイクロブラックホールが大気圏内で蒸発したらとにかくとんでもない事になるからだ。

 

 浮遊していたラミエルはゆっくりと降下して地面に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 今、アキトさんはD・F・Sを構えてバーストモードに入ってます。

 D・F・Sの白い刃が真紅に染まり、

 機体を覆うディストーション・フィールドをD・F・Sにすべて集めたとき

 真紅の刃が漆黒に変化しました。

 始まりますね、トレーニングルームで見たあの光景が・・・

 

『皆ちょっといいかしら。』

 

 そこにイネスさんが話しかけて来ました。

 突然だったので緊張する雰囲気が崩れてしまいました。

 

「何ですか、イネスさん。

 こんな息の詰る状況で?」

 

『そうなんだけど、ちょっと気になる記録が観測されたの。

 今さっき、強力な重力波の変動をキャッチしたわ。

 この変動からしておそらくマイクロブラックホールみたいなのよ。』

 

「え!? まさかナナフシですか!!」

 

 ユリカさんが驚いたように声を上げます。

 この状態で撃たれたら間違いなくアウトですからね。

 

『いいえ、違うわ。

 生成までにはまだかなり時間の余裕があるわ。

 もしそうだとしたらとっく私達はこの世から消えてる。

 威力もナナフシより小さかったし

 変動源からしてこれは・・・」

 

「多分シンジさんですよ。」

 

「え?」

 

 シンジさんもあの技を使ったんですね。

 

『やっぱりシンジくんだったのね。

 位置からして彼か使徒だとは思っていたし

 その直後に使徒の動きが止まったから。』

 

「じゃあシンジくんは使徒を倒したのね。」

 

 今度はミナトさんが言います。

 ミナトさんって子供を気遣う性格ですからシンジさんを気にしてるんですね。

 私もそう見られてるみたいですけど。

 

『おそらくはね。

 ルリルリはシンジくんもマイクロブラックホールを生み出せるのは知っていたようね。

 でもシンジくんはどうやって生み出しているの?

 シンジくんのエヴァはD・F・Sもディストーション・フィールドも持ってないわよ。』

 

「確かフィールドの圧縮と高速回転で生み出したっていってました。」

 

『なるほどね、空間の歪みで重力崩壊を起こして作るアキトくんに対して、

 シンジくんはフィールドの高圧縮と超高速回転による遠心力でシュバルツシルト半径を広げることで

 マイクロブラックホールを生み出したと言う訳ね。

 シンジくんもかなりの非常識だと言う事がよくわかったわ。』

 

「アキトさんとシンジさんがシュミレーターでマイクロブラックホールを撃ち合っていたときはかなり驚きましたよ。」

 

『それは恐いわね。

 現実でやられたら大災害になるのが目に見えるわ。』

 

 シュミレーターのステージは月面でしたけど

 撃ち合いで月の三割が消し飛んでいました。

 満月前の欠けた月を間近で見た気分でしたよ。

 

 あ、そろそろアキトさんの方も攻撃に入るみたいです。

 

 

『咆えろ!! 我が内なる竜よ!!

 秘剣!! 咆竜斬!!!

 

 

 竜をかたどったマイクロブラックホールはディストーションフィールドを突き破り

 一直線に地面を深く抉りながら直線上にいた数千の戦車を破壊し

 最後に山を中心から上半分削り取り、空の彼方に消えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 墜落したラミエルは体を再生させる様子も無く倒れていた。

 完全にコアを破壊出来たみたい。

 

 僕は少し調べるためにラミエルの残骸まで来ていた。

 

「もしかしたらコクピットがあるかもしれないと思ったけど

 やっぱりコアに入り込んで操ってたのかな?」

 

 僕の場合だがコアの中に入ってエヴァを動かすことも出来る。

 その時はコクピットでシンクロするよりも高い実力を出す事が出来る。

 

 僕は八面の平面を一つずつ調べていく。

 そして何面目かで他の面と違う材質の面があった。

 

「ここの面、切れ目がある。

 もしかして外れるのかな。」

 

 見渡してもスイッチらしい物が見つからなかったので

 エヴァの腕を突き刺して装甲(?)を引っこ抜いた。

 その下からは遠い過去に見覚えのあるものが見えた。

 

「これはもしかしてエントリープラグ?

 多少、形が変わっているけど間違いない。

 やっぱりエヴァのシンクロシステムが使徒にも活かされてたのか。」

 

 エントリープラグ周辺にもイジェクトスイッチの様な物はなかったので

 プラグをエヴァの力で無理矢理引っこ抜いた。

 

 ガコン!!

             ゴトン!!

 

 プラグをゆっくり地面に置き、僕もエヴァのコクピットから降りた。

 

 エントリープラグの構造は大体同じだったので

 すぐに閉開ハンドルがわかった。

 

 ハンドルは少し熱くなっていたがそんなに気にする事でも無く僕はハンドルを回した。

 開けた途端、中から懐かしのL・C・Lが流れ出てきた。

 

 僕はデジャブを感じた。

 過去のラミエル戦の時に綾波のエントリープラグをこじ開けたときのだ。

 今度はラミエルの方のプラグを開ける事になったけど。

 

 L・C・Lの流出が止まると僕はエントリープラグの中を覗き込んだ。

 プラグの内部もスロットと多少のスイッチがあるだけで僕が知っているのと特に変わりない。

 

 そして座席には一人の少女が気を失っていた。

 打ち抜かれたダメージのフィードバックで気を失ったんだと思う。

 

「この子がラミエルの力を持つマリオネットエンジェル・・・」

 

 黄色いショートカットの髪にほっそりとしたスタイル。

 外見の年齢からすれば僕と同じくらい。

 この子が着ている懐かしのプラグスーツはラミエルの色に合わせて水色一色だ。

 

 

 

 

 

 

「僕はこの子をゼーレから切り離すことが出来るのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十一話 その3に続く