∞黒のお姫様∞

第三話:動き出す運命

 

 

 

 

「おい、アキト!!

 チンジャオロース一つ!!」

 

「はい!! サイゾウさん!!」

 

 サイゾウさんが厨房で調理している俺に言う。

 俺は地球に来て一年サイゾウさんの雪谷食堂に泊り込みでお世話になっていた。

 

「アキト〜!!、チャーハン一つ追加。」

 

 一年前に知り合ったこの女の子もここで一緒に働いている。

 この子の名前はテンカワメノウ、俺の妹らしい。

 と言っても血の繋がった妹ではなく父さん達が死ぬ直前に自分達の養子にしたらしい。

 これまで会えなかったのは養子にした直後に父さん達が死んでしまい

 この子の迎えが誰も来なかったのが原因らしい。

 

「こら、アキト!!

 もたもたしてねえで早くしろ!!」

 

「は、はい!!」

 

 サイゾウさんに言われ俺は調理を進める。

 その時・・・

 

 

 ドガァァァァァンンン!!!

 

 

               ジュゴォォォォォンンン!!!

 

 

「また始まったよ、木星蜥蜴と連合軍。」(客A)

 

「機動性が違うんだからさ、止めりゃいいのに。」(客B)

 

 

 あっ・・・あっ・・・

 

 蜥蜴・・・黄色いロボット・・・

 

 火星の皆が・・・アイちゃんが・・・

 

 

   ガク、ガク、ガク

 

 

 お玉を持った手が震える。

 こうなるんだ、一年前から・・・

 火星の皆が目の前で殺された時から・・・

 恐いんだ、戦闘が始まると体が震えだして・・・

 

「やれやれ、またかよ。

 メノウちゃん、アキトの代わりをしてやってくれ。」

 

「はい、ほらアキト。

 ここはいいから奥で休んでて。」

 

「・・・・・・うん。」

 

 ・・・情けない、いつもそう思う。

 サイゾウさん迷惑ばかり掛けて

 妹のメノウちゃんにまで情けないところを見せて・・・

 

 

 

 

 

 

 店の閉店時間になり私は暖簾(のれん)を下ろしに外に出ていた。

 

《マスター》

 

「・・・フレイア」

 

《過去の記録から明日の早朝ナデシコが発進しますよ。》

 

「わかってる、結局アキトのトラウマは治す事が出来なかったわね。」

 

《どうするんです、今の状態の彼ではとても自分から戦艦に乗るとは思えないのですが。》

 

「仕方ないわ、無理に連れて行くのもなんだし。

 一応話だけしてついて来るなら良し、来ないなら置いていくしかね。」

 

《・・・彼次第と言うことですか。》

 

「最初から強制するつもりもなかったし。」

 

 私はフレイアとの話を終わらせて店の中に戻った。

 

 

 

 

 

 

「・・・戦艦?」

 

 私はアキトに店を出て戦艦ナデシコでコックをやる事を告げた。(パイロットの事は言っていない。)

 ちなみにナデシコではパイロット兼コック兼整備士(自分の機体のみ)をする事になっている。

 

「ええ、今日お店を出てその船に乗るわ。」

 

「そんないきなり・・・」

 

「サイゾウさんにはもう話してあるの。

 アキトに言えなかったのはアキトの準備が出来てなかったから。」

 

「俺の?」

 

「ええ、出来たらアキトにもその戦艦に乗ってコックをやってほしいの。

 でもアキトにはあのトラウマがあるでしょ。

 戦艦だから確実に木星蜥蜴戦う事になるわ。

 だからこの一年の内にトラウマを治してもらおうと思ったけど駄目だった。」

 

 トラウマの事を話すとアキトは俯いて黙り込んでしまった。

 私も昔かなり気にしてからな〜。

 

 私は横においてあった荷物を持って立ち上がった。

 

「地図を渡しておくから、もし来る気になったら来て。

 そこでプロスさんと言う人を呼んでくれたら入れてもらえるから。」

 

 地図をアキトに渡して私は食堂を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 俺、どうしたらいいんだ。

 メノウちゃんの言う通りこんな状態じゃ戦艦に乗ったって・・・

 

「おい、アキト。」

 

 俺の後ろには何時の間にかサイゾウさんがいた。

 

「お前クビだ。」

 

「へ?」

 

「この時世だ、臆病者のパイロット雇ってるって噂たっちゃあ

 売り上げも落ちちまうからよ。」

 

「だから前も言ったようにこれは・・・」

 

「そうは言っても世間はそう見ちゃくれねえよ。

 それにお前は行くところがあるんだろ。」

 

「でも、俺・・・戦艦なんて。」

 

「馬鹿言ってんな!!

 自分の妹を独りで行かせちまう気か!!

 そうしたらお前は本当の臆病もんだぞ!!」

 

「!! そうっスね。

 俺、メノウちゃんを追いかけます。」

 

「おお、それでこそ兄貴ってもんだ。

 ほれ、一年分の給料だ、餞別に持ってけ。」

 

「ありがとうございます、サイゾウさん。」

 

「礼は言いからさっさと行け。」

 

「はい!!」

 

 俺は急いで荷物をまとめ自転車に乗り

 メノウちゃんが渡してくれた地図にそって走り出した。

 

 

 

 

 俺が目的地に向かう途中

 俺のすぐ傍を車が通り過ぎた。

 

「うわっ、あぶねえじゃねえか。」

 

  ガコン!!

 

          ガタッ  ガタッ

 

 そう言った直後車のトランクに押し込まれていた荷物が俺目掛けて転がってきた。

 

「へ!?」

 

   バコン!!

 

 直前になって荷物が開き中身まで降り注いだ。

 

「う〜・・・何でこんな目に。」

 

 車が停まって中から二十歳くらいの男女が出て来た。

 

「すみません、すみません、お怪我はありませんか。」

 

「ああ、大丈夫だよ!!

 それより俺急いでるんだ!!」

 

 俺は散らばった荷物を大急ぎでひとまとめにして女性の方に渡した。

 

「それじゃ、俺はもう行くからな。」

 

 そう言って俺はさっさとその場を後にした。

 

「ほへ〜、はやーい。」

 

 残された女性はそうぼやいていた。

 ちなみに例の写真は置き去りにされた(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は今ナデシコのオペレーター席に座ってナデシコのチェックを行っています。

 右の席にはミナトさんが左の席にはメグミさんが座っています。

 

 懐かしいですね。

 

 

「ちょっと!! それどういうこと!!」

 

 ・・・後ろの方ではムネタケが騒いでいます。

 

 やかましいですね。

 まあすぐいなくなりますから良しとしますか。

 

 プシュー!!

 

 そこへ誰かがブリッチに入ってきました。

 

「プロスさん、その子誰ですか?」

 

「なんだか、ルリちゃんに似ているはね。」

 

 振り向いて確認すると驚きました。

 プロスさんの連れていた子は幼くなっていますが間違いなくラピスです。

 

「えー、彼女はラピス ラズリさんといいまして

 この船のサブオペレーターをやってもらう事になっております。」

 

「こんな小さい子を乗せちゃってもいいんですかプロスさん。」

 

「本来は乗せる予定ではなかったのですが

 彼女がどうしても乗りたいといいまして。」

 

「(こくん)」

 

 ラピスは無言で頷きます。

 

「とはいえまだ幼いので

 この子を見ててあげてくれませんか?」

 

「別にいいですよねミナトさん。」

 

「ええ、ルリちゃんもいるんだしね。」

 

「そうですか、それではお願いします。」

 

 ピピッ!!

 

 その時誰かのコミュニケが鳴りました。

 どうやらプロスさんの物のようです。

 

「あ、ちょっと待って下さい。

 ・・・・・・分かりました、すぐそちらに行きますので。

 用事が入りましたのでこの子のことよろしくお願いします。」

 

 そう言い残してプロスさんはブリッチを出て行きました。

 

「ラピス、あなたもこっちに来れてたんですね。」

 

「ルリモ来キテタンダ。」

 

「あれ、ルリちゃん達知り合いなの?」

 

「ええ、まあ。」

 

「アキトハドコ?」

 

「今はまだナデシコに乗ってません。

 でももうすぐ来る筈です。」

 

「アキト早ク会イタイ。」

 

「ねえねえ、アキトくんって誰?」

 

「ひみつです(//////)」

 

「(コクン)(//////)」

 

 

 

 

 

 

「始めましてテンカワさん、私がプロスペクターです。

 私の事はプロスとでも呼んで下さい。

 あなたの事はメノウさんから聞いております。」

 

「あの・・・メノウちゃんは今何処に?」

 

「今はまだこの船には乗っておりません。

 今夜中に荷物を持ってこられるといっておりましたので

 もうすぐ来られるでしょう。」

 

「そうですか・・・

 それでメノウちゃんは何でこの船に乗ったんですか?」

 

「詳しい事は知りません。

 まだこのことは極秘なのですがこの船は火星に行くのです。」

 

「火星に!?」

 

「はい、彼女は火星に用があるとしかおっしゃられなかったので。」

 

 火星に行ける・・・俺の故郷に。

 

「そう言えばあなたも火星出身でしたな。

 残念ながらナデシコの出港はまだ三日後でして。

 それまでは艦内を見回っていて下さい。

 それとこれを。」

 

 プロスさんは俺に時計のような物を渡した。

 

「これは?」

 

「コミュニケと言いまして、映像付きの通信機だと思って下さい。

 他のクルーもそれと同じ物を持っています。」

 

「はあ。」

 

 俺はそれを自分の手首に付けた。

 

「後であなたの仕事場にも案内しますので。」

 

 そう言い残してプロスさんは行ってしまった。

 仕方なく俺は船の中を適当に歩き回る事にした。

 

 

 

 

 

 

「どうやらアキトがナデシコに乗ってくれたみたいね。

 フィン、私達も行きましょ。」

 

《はーい。 ところでご主人様?

 私の出番は何時なの?》

 

「フィンとネオブラックサレナの出番はエステバリスが出てきてからよ。

 過去通りならアキトはエステバリスに乗ることでトラウマを克服する事ができたから。」

 

《でもご主人様はその時初めてエステバリスに乗ったんですよね。

 何の訓練も無しによく生き残れましたね。》

 

「ほんと、今思うとナデシコに乗って生き残れたのは

 奇跡よりも低い数値のような気がするわ・・・」

 

 

 

 

 

 

 俺は艦内をうろうろしている内に格納庫に出た。

 格納庫では何故かロボットが暴れていた。

 

 

『レェッゴォォッ、ゲェキガンガァァァ!!!』

 

 

「おいあんた、パイロットは三日後に乗船だろ!!

 それにそれはエステバリスだ!!」

 

 ロボットの整備士らしき人がメガホンを使って叫ぶ。

 

『いやあ、ホンモンのロボットに乗れるつうんで

 早めに来ちまいました。』

 

「いいからさっさと降りろ!!」

 

『フッ、諸君だけにお見せしよう。

 このガイ様のスーパーグレート必殺技を!!

 

 ガァァイ!! スゥパァァァナァッパァァァァァ!!!』

 

 

 そう叫んでロボットは変なポーズを取った。

 あぁ、そんな体勢を取ると・・・

 

 

    ドシィィィン!!!

 

 

「やっぱり倒れた。

 しっかしゲキガンガーか、懐かしいな。」

 

 そうしている内にロボットの中からパイロットが這い出してきた。

 

「ハハハハハ、すげーよな!!

 手があって足があって、自由自在に動くなんてよ!!!!」

 

「最新式のイメージフィードバックシステムだからだよ。

 これがありゃ子供でもう動かせら。」

 

「俺はガイ、ダイゴウジガイ。

 まっ、ガイって呼んでくれや。」

 

「遺伝子データにゃヤマダジロウ(山田二郎)てなってるぞ。」

 

「それは仮の名前、ダイゴウジガイは魂の名前だ。

 木星蜥蜴め来るならこい、このガイ様が相手だ。」

 

    ガクッ

 

 そう言って立ち上がったかと思うと突然崩れ落ちた。

 

「おい、おたくどうした?」

 

「いや・・・なんか・・・足が痛いんだなー・・・これが。」

 

「って、おたくこれ折れてるよ足。」

 

「なにー!! おーいそこの少年!!」

 

「へ、俺?」

 

「そのロボットの中に俺の宝物が入ってるんだ。

 すまんが取ってきてくれー。」

 

「はいはい。」

 

 俺はしぶしぶロボットのコクピットに向かった。

 中に入るとゲキガンガーの人形が座っていた。

 

「ったく、ゲキガンガーかよ。

 アイツほんとゲキガンマニアだな。」

 

 俺がコクピットの中に身を乗り出した時・・・

 

 

    ドガァァァァァァンンンン!!!!

 

 

 大きな騒音とともに艦全体が揺れてコクピットの中に倒れ込んじまった。

 

「な、何だ!?」 

 

『現在、敵機動兵器が地上軍が交戦中。

 クルーは所定の配置に着け。

 繰り返す・・・』

 

 交戦中・・・奴等が・・・木星蜥蜴が来た。

 冗談じゃない!! もう俺は穴蔵に閉じ込められるのはごめんだ!!

 

 俺はコクピットに乗り込みIFSでロボットを起動させた。

 

 

 

 

 

 

 木星蜥蜴の攻撃が始まりましたか。

 もうすぐアキトさんがエステバリスに乗って現れる筈です。

 

「ところでラピス。

 どうやってこの船に乗ったんですか?

 この頃ネルガルが見つけていたマシンチャイルドは私だけの筈ですよ。」

 

「ワタシニモワカラナイ

 コノ頃ノワタシハ研究所ニイタハズ。

 デモ気ガツイタラワタシハネルガルノ保護施設ニイタノ。

 ソコニハワタシ以外ニモタクサンノマシンチャイルドガイタ。

 ソノ後ハネルガルノ人ニナデシコニ乗リタイッテ頼ンダダケ。」

 

「よくそれで乗せてもらえましたね。

 でもどうして私達の過去と違っているのでしょう。」

 

「ワタシニハ分カル

 アキトガ助ケテクレタ。」

 

「あ、そうかもしれませんね。

 だとしたらこの世界に確実にアキトさんがいる筈です。」

 

「ルリ、アキトハ何時来ルノ?」

 

「もうすぐの筈です、この時アキトさんがエステに乗って囮になってくれましたから。」

 

「アキト、モウスグ会エル。」

 

 あ、来ました!!

 エレベーターが動いています!!

 でも一応報告しなきゃいけないんですよね。

 

「現在、エステバリスを乗せたエレベーターが地上に上昇しています。」

 

「え、他にパイロットがいたんですか?」

 

 ユリカさんがそう言います。

 そう言えばさっきまで作戦会議をしてましたね。

 

「おかしいですな? 現在乗船しているパイロットは

 ここで足を折っているヤマダさん「ダイゴウジガイ!!」だけの筈ですよ。

 地球で乗船するもう一人のパイロットはまだ乗船してませんし。」

 

 え? もう一人のパイロット?

 前回はヤマダさん一人だったはずです。

 

「オペレーター、エステバリスに通信を繋げるかね?」

 

「はい。」

 

 提督に言われて私は回線を開きます。

 言われなくても勝手に繋げたかったですけど

 そんな事したら怪しまれてしまいますからね。

 

 そしてブリッチの大画面にエステバリスのコクピット内が映し出されました。

 

『え?』

 

「誰かね君は?

 所属と名前を言いたまえ。」

 

『テ、テンカワアキト、コックです。』

 

 画面に映し出されたのは間違いなくアキトさんでした。

 やっと見つけましたよ、アキトさん。

 

「チガウ。」

 

「え?」

 

 私の横でラピスがそう呟きました。

 

「何が違うんですか?」

 

「コノ人アキトジャナイ。

 似テイルケドチガウ。」

 

「何処が違うんですか?」

 

「コノ人ハアキトト同ジクライノ優シサヲ感ジル。

 デモ私ノ知ッテルアキトハモット強サノ中ニ優シサガアル。」

 

 ラピス・・・そうですね、私の知っているアキトさんはさらわれる前までのアキトさんです。

 それに対し私が最後に会ったアキトさんには強い威圧感を感じました。

 そのアキトさんとずっと一緒にいたのはラピスでしたね。

 悔しいけどラピスの方があのアキトさんの事をよく知っている筈です。

 このアキトさんは初めに会った時のアキトさんそのものです。

 じゃあ、私達の知っているアキトさんは何処に?

 

 

「あ〜、アキトだ〜!!

 さっき会ったのになんで教えてくれなかったの!!

 そっか十年ぶりだから恥ずかしかったんだよね!!

 相変わらず照れ屋さんなんだから!!」

 

 

『ちょ、ちょっと待て!!

 あんた誰だ!? 俺あんたの事なんか全然知らないぞ!?』

(ちなみにさっき会った事すらこのアキトは忘れている。)

 

「何言ってるのアキト。

 ほら、火星の草原でよく一緒に遊んだじゃない。」

 

『火星?・・・草原?・・・

 あ、思い出した!! ミスマルユリカ!!

 チューリップ組のミスマルユリカ!!』

 

「やっぱり覚えていてくれたんだ!!

 さっすが私の王子様!!」

 

『おい、ちょっと待て!!

 お前まだそんな事言ってるのか?』

 

「でもアキトを囮になんて出来ない、危険すぎるもの。」

 

『なんだそりゃ!! 囮って何だ!?』

 

「そうよね、アキトの決意の硬さ。

 女の勝手でどうこう出来るものじゃないわよね。」

 

『勝手に話を進めるな!!』

 

「わかった。 ナデシコと私達の命あなたに預けるわ。

 必ず生きて、帰って来てね。」

 

 そう伝えてユリカさんはテンカワさんとの通信を切ってしまいました。

 ユリカさん、昔からこんな自分勝手な人でしたね。

 自分の都合の言いように解釈する。

 いくら相手が私の知ってるアキトさんじゃないとはいえ

 すごく腹が立って来ました。

 

「ルリちゃん、急いでナデシコの発進に取り掛かって。」

 

 ユリカさんが私に命令します。

 

「・・・・・・」

 

「・・・ルリちゃん?」

 

「・・・了解。」

 

 しなくてはいけない事とはいえユリカさんの命令に従うのが何だか癪です。

 

 

 そうしている内にテンカワさんも地上に出て逃げ回り始めました。

 この人は昔のアキトさんなのでテンカワさんと呼ぶ事にします。

 

 

 

 そう言えばさっきプロスさんがもう一人のパイロットといってましたね。

 注水完了までまだ時間がありますから、少し調べてみましょう。

 オモイカネ、クルーの乗員名簿からパイロットを検索。

 ・・・これですね。

 

 

【テンカワメノウ パイロット兼コック兼整備士予定 

『年齢:十五歳 性別:女 コック乗船予定のテンカワアキトの妹・・・

 

 

 私の目の前に顔写真と簡単なプロフィールが表示されました。

 テンカワさんの妹!! それにテンカワさんが乗船に予定されていた!?

 

 いえ、そんなことよりこの顔写真。

 容姿や髪型などは見覚えありませんがこの瞳と雰囲気

 何処かで見たような・・・

 

「・・・アキト。」

 

「へ!?」

 

 横でラピスがまた呟きました。

 

「・・・って、どういうことですか!?」

 

「コノ人・・・感ジガアキトニ似テル。」

 

「で、でも、この人女性ですよ!?

 この人がアキトさんなわけないです!!」

 

「ウン、デモサッキノ人ヨリモズット似テル。」

 

 そんな・・・でも、あのアキトさんはラピスの方がよく知っています。

 ラピスが言う事が本当だとしたらいったいどうして・・・

 

 その時、オモイカネが何かを発見しました。

 

「オモイカネ、どうしたの?」

 

《サボセ港遠洋から高速で飛来する物体あり。》

 

「映像に出してください。」

 

《OK》 《了解》 《まかして》

 

 オモイカネがそう応えた後、映像が映し出されました。

 

「!!、これは!?」

 

「ブラックサレナ。」

 

 ラピスの言う通りあれはアマテラスの時に見たアキトさんの機体です。

 多少違うところもありますが間違いありません。

 

「何だろあの黒いロボット?」

 

「新手の敵か!?」

 

 他のブリッチクルーもこの機体に気がつきました。

 

「艦長、所属不明機から通信が入っています。

 どうしますか?」

 

「繋げて下さい、味方かもしれません。」

 

 そして今度はブラックサレナのコクピットが映し出されました。

 

「あら?」

 

「女の子?」

 

「サングラス?」

 

 乗っていたのはさっきプロフィールを見ていたテンカワメノウさんでした。

 ・・・それも、アキトさんのと同じバイザーを付けて。

 

『こちらナデシコ所属パイロットのテンカワメノウです。』

 

「おや、メノウさんあなたでしたか。

 ところでその機体は一体何ですかな?」

 

『私の私物ですよ。

 ちょっとこれを取りに行っていたので。』

 

「そうでしたか、ですが丁度よかった。

 今ナデシコが攻撃を受けてましてね。

 あなたのお兄さんがエステに乗って囮をやってもらっているのですよ。

 さすがに素人だけでは心配なのであなたにも時間稼ぎをして頂けませんか?」

 

『もちろんそのつもりです。』

 

 そう言い残して通信は切られました。

 

「プロスさん、今の子誰なんですか?」

 

 メグミさんがプロスさんに尋ねます。

 

「彼女は地球で乗船するもう一人のパイロットです。

 それとさっき囮に出たテンカワアキトさんの妹さんだそうです。」

 

「え? でもアキトに妹はいない筈だよ。」

 

 ユリカさんがプロスさんの話に疑問を抱きます。

 

「何でも義理の兄妹だそうですよ。」

 

「でも、あんな子にパイロットが出来るの?」

 

「我が社のロボット、エステバリスはイメージフィードバックシステムを導入してまして、

 IFSさえあれば子供でも動かせるのです。

 あの機体は我が社の物ではありませんが、おそらくIFS対応の物でしょう。

 メノウさんには何度かエステバリスのテストパイロットをしてもらった事がありまして

 彼女に敵うパイロットは独りもいませんでした。

 ですのでその心配はまったくありません。」

 

 プロスさんがさり気なくエステの宣伝をしながら答えます。

 それにしても・・・

 

「あの人がますますアキトさんである可能性が出て来てしまいましたね。

 信じたくありませんが・・・」

 

「ウン。」

 

 でもあの人がこの船に来て確認すれば分かる事です。

 あなたが本当にアキトさんなのなら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はロボットの足についているキャタピラを動かして何とか逃げ回っていた。

 いつもの震えは今はなくなっていた。

 こんな状況下で震えてなんかとてもいられなかった。

 だからって・・・

 

「十分も逃げつづけられる訳がないだろ!!

 コンチクショー!!」

 

    ドギャァァンン!!!

 

 俺は振り向きざまに敵ロボットに向かって拳を振りかぶる。

 すると腕が飛んで敵ロボットを倒した。

 

「スッゲー!! ゲキガンパンチみてー!!」

 

 腕をワイヤーで巻き戻しながら感動していた時に隙を突かれて

 上空から大量の黄色いロボットが俺目掛けて降り注いで来た。

 

「うわぁあぁぁあぁぁ!!!」

 

 とても避けられそうにもなく俺は声を上げ身を丸めた。

 

 

 ドガガガガァァァァアァァアァンンンン!!!!

 

 

 すごい音が鳴り響くが俺自身への衝撃は全くなかった。

 見ると俺の前に迫っていたロボットが全て火を上げて目の前に墜落していた。

 そして少し上空に腕が銃になっている黒いロボットがいた。

 

『アキトの仕事は囮でしょ。

 別に戦う必要はないんだから。』

 

「メノウちゃん!?」

 

 黒いロボットから通信が来て、

 画面にはサングラスのような物を付けたメノウちゃんがいた。

 

「何でメノウちゃんがロボットに乗ってるんだ!?」

 

『それはアキトも同じでしょ。

 私はナデシコでパイロットもする事になっているから。』

 

「メノウちゃんがパイロット!?」

 

『それよりもうすぐナデシコが海の中から現れる筈よ。

 海の方に跳んで。』

 

「わ、わかった。」

 

 俺は高くジャンプして海の方に向かった。

 海面には大きな影が浮かび上がっておりそこに降りた。

 それと同時にナデシコが浮かび上がって来てその上に立った。

 メノウちゃんもすぐ後から付いて来た。

 

 

 ドギュウゥゥゥゥウゥゥゥゥンンン!!!!

 

 

 その直後、ナデシコが黒い光を放って木星蜥蜴をすべて破壊した。

 

「スッゲー!!」

 

 俺は再び蜥蜴を倒した事に感動した。

 

 ピッ!!

 

 メノウちゃんから再び通信が入る。

 

『アキト、聞いておくけど本当にナデシコに乗ってよかった?

 戦争に巻き込まれるのも覚悟の上で。』

 

「そりゃあ、戦争に巻き込まれるの嫌だけど

 メノウちゃんを一人で行かせるわけにはいかないじゃないか。

 俺のたった一人の妹なんだから。」

 

『・・・そっか、ありがとう。』

 

 メノウちゃんが微笑んでそう答える。

 

「い、いや、当然の事だしね(//////)」

 

 

 

 

 

 

 ピッ!!

 

 私はアキトの返事を聞いて通信を切った。

 

「ハァ、なんだか騙しちゃったような気がする。」

 

《いいんじゃないですか。 ご主人様がナデシコに乗せなくたって

 はじめから干渉しなければ結局ナデシコに乗ったでしょうし。》

 

 フィンが私の言葉の意味に気づき答えてくれる。

 

「そうよね、でも嫌な気分には変わりないし。」

 

《今更そんな事言ったってしょうがないですよ人生前向き、前向き。》

 

「フフ、そうよね。 ありがとうフィン、

 過去の事より先の事を考えたほうがいいわよね。」

 

 お礼を言うとフィンはえへへと可愛い仕草をとって照れる。

 

 そうよね。 先の事を考えたほうがいいわよね。

 これからの事を・・・

 

 

 

 

 

 

第四話:予知しなかった再会に続く




 

∞あとがき∞

 

 お久しぶりです、SIMUです。

 ラグナロクオンラインというネットゲームにハマってしまって執筆がどんどん遅れております。

 頑張って書かないといつの間にか忘れられてしまいそう・・・

 やっと執筆再開出来てきたので次回の投稿も早くなるように頑張らないと。

 次回の更新を期待していてください。

 それでは・・・

 

 

 

 

 

 

代理人の感想

ユリカヘイトは程ほどに。

いじめ、かっこわるい。